(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111879
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20240813BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240813BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20240813BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240813BHJP
【FI】
B24B7/04 A
H01L21/304 631
H01L21/304 601Z
B24B1/00 Z
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016552
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳一
【テーマコード(参考)】
3C043
3C049
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA12
3C043BA14
3C043BA15
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3C049AA04
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3C049BA02
3C049BA07
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3C049CB01
4E168AE02
4E168CB07
4E168DA24
4E168DA43
4E168HA01
4E168JA12
5F057AA02
5F057BA11
5F057CA15
5F057DA11
5F057DA22
5F057DA31
(57)【要約】
【課題】従来の方法に比べて研削砥石の下端の縁部の摩耗が抑制される被加工物の加工方法を提供する。
【解決手段】第1面と第1面とは反対側の第2面とを有する板状の被加工物を加工して、円板状の薄板部と、薄板部を囲み薄板部よりも厚い環状の厚板部と、を形成する際に適用される被加工物の加工方法であって、被加工物を透過する波長のレーザービームを、薄板部となる領域と第2面との間の環状の変質予定領域に照射することにより、変質予定領域を変質させる変質ステップと、それぞれが砥粒を含む複数の研削砥石が配列された研削ホイールを用いて被加工物を第2面側から研削することにより、円板状の薄板部と、薄板部を囲み薄板部よりも厚い環状の厚板部と、を形成する研削ステップと、を含み、変質予定領域は、薄板部となる領域と厚板部となる領域との境界に沿って、厚板部となる領域よりも内側の位置に設定される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と該第1面とは反対側の第2面とを有する板状の被加工物を加工して、円板状の薄板部と、該薄板部を囲み該薄板部よりも厚い環状の厚板部と、を形成する際に適用される被加工物の加工方法であって、
該被加工物を透過する波長のレーザービームを、該薄板部となる領域と該第2面との間の環状の変質予定領域に照射することにより、該変質予定領域を変質させる変質ステップと、
該変質ステップの後に、それぞれが砥粒を含む複数の研削砥石が配列された研削ホイールを用いて該被加工物を該第2面側から研削することにより、円板状の該薄板部と、該薄板部を囲み該薄板部よりも厚い環状の該厚板部と、を形成する研削ステップと、を含み、
該変質予定領域は、該薄板部となる領域と該厚板部となる領域との境界に沿って、該厚板部となる領域よりも内側の位置に設定される被加工物の加工方法。
【請求項2】
該変質予定領域は、該第2面からの距離が異なる複数の位置のそれぞれに設定される請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該研削ステップは、
それぞれが砥粒を含む複数の第1研削砥石が配列された第1研削ホイールを用いて該被加工物を該第2面側から研削することにより、円板状の第1薄板部と、該第1薄板部を囲み該第1薄板部よりも厚い環状の第1厚板部と、を該被加工物に形成する第1研削ステップと、
該第1研削ステップの後に、それぞれが該第1研削砥石に比べて小さな平均粒径の砥粒を含む複数の第2研削砥石が配列された第2研削ホイールを用いて該被加工物を該第2面側から研削することにより、該第1薄板部よりも直径が大きく薄い円板状の第2薄板部と、該第2薄板部を囲み該第2薄板部よりも厚い環状の第2厚板部と、を該被加工物に形成する第2研削ステップと、を有し、
該変質ステップでは、該第1厚板部となる領域よりも内側の環状の第1変質予定領域と、該第2厚板部となる領域よりも内側の環状の第2変質予定領域と、の一方又は両方を変質させる請求項1又は請求項2に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
該研削ステップは、
それぞれが砥粒を含む複数の第1研削砥石が配列された第1研削ホイールを用いて該被加工物を該第2面側から研削することにより、円板状の第1薄板部と、該第1薄板部を囲み該第1薄板部よりも厚い環状の第1厚板部と、を該被加工物に形成する第1研削ステップと、
該第1研削ステップの後に、それぞれが該第1研削砥石に比べて小さな平均粒径の砥粒を含む複数の第2研削砥石が配列された第2研削ホイールを用いて該第1薄板部を該第2面側から研削することにより、該第1薄板部よりも直径が小さく薄い円板状の第2薄板部と、該第2薄板部を囲み該第2薄板部よりも厚い環状の第2厚板部と、を該第1薄板部に形成する第2研削ステップと、を有し、
該変質ステップでは、該第1厚板部となる領域よりも内側の環状の第1変質予定領域と、該第2厚板部となる領域よりも内側の環状の第2変質予定領域と、の一方又は両方を変質させる請求項1又は請求項2に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハのような板状の被加工物を加工する際に適用される被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型で軽量なデバイスチップを実現するために、集積回路等のデバイスが表面側に設けられたウェーハを薄く加工する機会が増えている。例えば、ウェーハの表面側をチャックテーブルで保持し、砥粒を含む研削砥石が固定された研削ホイールと、チャックテーブルと、を互いに回転させて、純水等の液体を供給しながらウェーハの裏面側に研削砥石を押し当てることで、このウェーハが研削され薄くなる。
【0003】
ところで、上述の方法によりウェーハの全体が薄くなると、ウェーハの剛性も大幅に低下して、後の工程でのウェーハの取り扱いが難しくなる。そこで、ウェーハよりも直径が小さな研削ホイールを用いて、デバイスが設けられたウェーハの中央側(内側)の領域を研削し、外縁側(外側)の領域を研削せずにそのまま残すことで、研削後のウェーハの剛性をある程度に高く保つ技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の技術では、砥粒を含む研削砥石が固定された研削ホイールによりウェーハの中央側の領域が研削され、このウェーハに、円板状の薄板部と、薄板部を囲み薄板部よりも厚い環状の厚板部と、が形成される。一方で、被加工物の薄板部と厚板部との境界に近い部分は、研削ホイールの半径の方向に沿って外側に位置する研削砥石の下端の縁部のみにより研削されるので、この研削砥石の下端の縁部が摩耗し、丸みを帯び易い。
【0006】
このように摩耗して下端の縁部が丸みを帯びた研削砥石によりウェーハのような被加工物が研削されると、被加工物の薄板部と厚板部との境界の部分に研削砥石の縁部の形状が転写され、この境界の部分が丸みを帯びてしまう。つまり、薄板部の端が厚くなって、製品としての品質を満たさなくなる。
【0007】
よって、本発明の目的は、被加工物を加工して薄板部と厚板部とを形成する際に、従来の方法に比べて研削砥石の下端の縁部の摩耗が抑制される被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、第1面と該第1面とは反対側の第2面とを有する板状の被加工物を加工して、円板状の薄板部と、該薄板部を囲み該薄板部よりも厚い環状の厚板部と、を形成する際に適用される被加工物の加工方法であって、該被加工物を透過する波長のレーザービームを、該薄板部となる領域と該第2面との間の環状の変質予定領域に照射することにより、該変質予定領域を変質させる変質ステップと、該変質ステップの後に、それぞれが砥粒を含む複数の研削砥石が配列された研削ホイールを用いて該被加工物を該第2面側から研削することにより、円板状の該薄板部と、該薄板部を囲み該薄板部よりも厚い環状の該厚板部と、を形成する研削ステップと、を含み、該変質予定領域は、該薄板部となる領域と該厚板部となる領域との境界に沿って、該厚板部となる領域よりも内側の位置に設定される被加工物の加工方法が提供される。
【0009】
好ましくは、該変質予定領域は、該第2面からの距離が異なる複数の位置のそれぞれに設定される。
【0010】
本発明の一側面において、該研削ステップは、それぞれが砥粒を含む複数の第1研削砥石が配列された第1研削ホイールを用いて該被加工物を該第2面側から研削することにより、円板状の第1薄板部と、該第1薄板部を囲み該第1薄板部よりも厚い環状の第1厚板部と、を該被加工物に形成する第1研削ステップと、該第1研削ステップの後に、それぞれが該第1研削砥石に比べて小さな平均粒径の砥粒を含む複数の第2研削砥石が配列された第2研削ホイールを用いて該被加工物を該第2面側から研削することにより、該第1薄板部よりも直径が大きく薄い円板状の第2薄板部と、該第2薄板部を囲み該第2薄板部よりも厚い環状の第2厚板部と、を該被加工物に形成する第2研削ステップと、を有し、該変質ステップでは、該第1厚板部となる領域よりも内側の環状の第1変質予定領域と、該第2厚板部となる領域よりも内側の環状の第2変質予定領域と、の一方又は両方を変質させることがある。
【0011】
また、本発明の一側面において、該研削ステップは、それぞれが砥粒を含む複数の第1研削砥石が配列された第1研削ホイールを用いて該被加工物を該第2面側から研削することにより、円板状の第1薄板部と、該第1薄板部を囲み該第1薄板部よりも厚い環状の第1厚板部と、を該被加工物に形成する第1研削ステップと、該第1研削ステップの後に、それぞれが該第1研削砥石に比べて小さな平均粒径の砥粒を含む複数の第2研削砥石が配列された第2研削ホイールを用いて該第1薄板部を該第2面側から研削することにより、該第1薄板部よりも直径が小さく薄い円板状の第2薄板部と、該第2薄板部を囲み該第2薄板部よりも厚い環状の第2厚板部と、を該第1薄板部に形成する第2研削ステップと、を有し、該変質ステップでは、該第1厚板部となる領域よりも内側の環状の第1変質予定領域と、該第2厚板部となる領域よりも内側の環状の第2変質予定領域と、の一方又は両方を変質させることがある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面にかかる被加工物の加工方法では、被加工物を透過する波長のレーザービームを環状の変質予定領域に照射して、この変質予定領域を変質させるので、被加工物を研削する際には、変質された後の脆い変質予定領域が、研削砥石の下端の縁部によって研削される。つまり、変質予定領域を変質させない場合に比べて研削砥石の下端の縁部にかかる負荷が小さくなるので、従来の方法に比べて研削砥石の下端の縁部の摩耗が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、被加工物に保護部材が貼付される様子を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、被加工物がレーザー加工装置のチャックテーブルにより保持される様子を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、被加工物にレーザービームが照射される様子を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、レーザービームにより変質した後の被加工物の一部を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、被加工物が研削装置のチャックテーブルにより保持される様子を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、被加工物が粗研削される様子を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、粗研削された後の被加工物の一部を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、被加工物が仕上げ研削される様子を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、仕上げ研削された後の被加工物の一部を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、レーザービームにより変質した後の被加工物の一部を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、被加工物が粗研削される様子を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、粗研削された後の被加工物の一部を模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、被加工物が仕上げ研削される様子を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図14は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、仕上げ研削された後の被加工物の一部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本実施形態にかかる被加工物の加工方法は、板状の被加工物の中央側(内側)の領域を研削して、この被加工物を、中央側の領域が窪んだ凹状に加工する際に用いられる。本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、まず、被加工物に保護部材が貼付される(貼付ステップ)。
図1は、板状の被加工物11に保護部材21が貼付される様子を模式的に示す斜視図である。
【0015】
図1に示されるように、被加工物11は、例えば、シリコン(Si)等の半導体で構成される円板状のウェーハである。つまり、被加工物11は、円形状の表面(第1面)11aと、表面11aとは反対側の円形状の裏面(第2面)11bと、を有している。被加工物11の表面11a側は、互いに交差する複数のストリート(分割予定ライン)13で複数の小領域に区画されており、各小領域には、集積回路(IC:Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。
【0016】
本実施形態では、この被加工物11のデバイス15が形成された領域(デバイス領域)に対応する部分が裏面11b側から研削され薄くなる一方で、残りの環状の領域(外周領域)は研削されずにそのまま残る。つまり、被加工物11は、裏面11b側から凹状に加工される。
【0017】
なお、本実施形態では、シリコン等の半導体で構成される円板状のウェーハが被加工物11として用いられるが、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等は、この態様に制限されない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料で構成される基板等が被加工物11として用いられ得る。同様に、被加工物11に形成されるデバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等も、上述の態様に制限されない。被加工物11には、デバイス15が形成されていなくてもよい。
【0018】
被加工物11に貼付される保護部材21は、代表的には、被加工物11と概ね同等の直径を持つ円形状のテープ(フィルム)、樹脂基板、被加工物11と同種又は異種のウェーハ等である。つまり、保護部材21は、円形状の表面21aと、表面21aとは反対側の円形状の裏面21bと、を有している。
【0019】
例えば、この保護部材21の表面21a側には、被加工物11に対する接着力を示す接着層が設けられる。この場合には、
図1に示されるように、保護部材21の表面21a側を被加工物11の表面11aに密着させることで、保護部材21は、被加工物11の表面11aに貼付される。これにより、被加工物11を裏面11b側から研削する際に表面11aに加わる衝撃が保護部材21により緩和され、被加工物11のデバイス15等が保護される。
【0020】
ただし、被加工物11にデバイス15が形成されていない場合等には、必ずしも被加工物11に保護部材21が貼付されなくてよい。また、本実施形態の一連の工程における被加工物11の取り扱い易さを高めるために、被加工物11よりも直径が大きなテープ等の保護部材21が使用され、この保護部材21の外縁部に、被加工物11を囲む環状のフレームが固定されてもよい。
【0021】
例えば、被加工物11の表面11aに保護部材21が貼付された後には、この保護部材21を介して被加工物11がレーザー加工装置のチャックテーブルにより保持される(第1保持ステップ)。
図2は、被加工物11がレーザー加工装置2のチャックテーブル4により保持される様子を模式的に示す断面図である。
【0022】
図2に示されるように、レーザー加工装置2は、被加工物11を保持できるように構成されたチャックテーブル4を備えている。チャックテーブル4は、例えば、金属やセラミックス等を用いて形成された円板状の枠体6を含む。枠体6の上面側には、円形状の開口を上端に持つ凹部6aが形成されている。この凹部6aには、セラミックス等を用いて多孔質の円板状に形成された保持板8が固定されている。
【0023】
保持板8の上面8aは、概ね平坦に形成されており、被加工物11等を保持する保持面として機能する。また、保持板8の下面側は、枠体6の内部に設けられた流路6bや、枠体6の外部に配置されたバルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。そのため、保持板8の上面8aに保護部材21の裏面21bを接触させた状態で、バルブを開き、吸引源の負圧を作用させると、この保護部材21の裏面21bがチャックテーブル4により吸引される。
【0024】
すなわち、被加工物11は、裏面11bが上方に露出するように、保護部材21を介してチャックテーブル4に保持される。なお、被加工物11の表面11aに保護部材21が貼付されていない場合には、保持板8の上面8aに被加工物11の表面11aを直に接触させてバルブを開き、吸引源の負圧を作用させればよい。
【0025】
枠体6の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。チャックテーブル4は、この回転駆動源が生じる力によって、上面8aの中心が回転の中心となるように、鉛直方向に沿う軸の周りに回転する。また、枠体6は、例えば、ボールねじ式のチャックテーブル移動機構(不図示)により支持されており、チャックテーブル4は、このチャックテーブル移動機構が生じる力により、水平方向に移動する。
【0026】
被加工物11がチャックテーブル4で保持された後には、この被加工物11を部分的に変質させるように、被加工物11を透過する波長のレーザービームが被加工物11に照射される(変質ステップ)。具体的には、被加工物11の内部に設定された環状の変質予定領域を変質させるように、レーザービームが被加工物11に照射される。
図3は、被加工物11にレーザービーム23が照射される様子を模式的に示す断面図である。
【0027】
図3に示されるように、チャックテーブル4の上方には、レーザー発振器(不図示)により生成されたレーザービーム23を、チャックテーブル4により保持された被加工物11へと導くレーザー加工ヘッド10が配置されている。レーザー発振器は、例えば、レーザー発振に適したNd:YAG等のレーザー媒質を含み、被加工物11を透過する波長のパルス状のレーザービーム23を所定の繰り返し周波数で生成する。
【0028】
レーザー加工ヘッド10は、レーザー発振器から放射されたパルス状のレーザービーム23を被加工物11へと導くミラーやレンズ等の光学系を備えており、例えば、チャックテーブル4の上方の所定の高さの位置にレーザービーム23を集光させる。レーザービーム23を被加工物11の内部に集光させると、被加工物11のレーザービーム23が集光された部分で多光子吸収が生じ、この部分(被加工物11のレーザービーム23が集光された部分)が変質する。
【0029】
このような原理で環状の変質予定領域11cを変質させる際には、対象の変質予定領域11cの上方にレーザー加工ヘッド10が配置されるように、チャックテーブル4の水平方向の位置がチャックテーブル移動機構により調整される。また、対象の変質予定領域11cにレーザービーム23が集光するように、レーザー加工ヘッド10の光学系等が調整される。
【0030】
そして、
図3に示されるように、レーザー加工ヘッド10が被加工物11に向けてレーザービーム23を放射している状態で、回転駆動源がチャックテーブル4を回転させる。すなわち、レーザービーム23の集光点が変質予定領域11cに沿った環状の軌跡を描くように、被加工物11に対してレーザービーム23の集光点が移動する。
【0031】
これにより、集光された状態のレーザービーム23が対象の変質予定領域11cに照射され、対象の変質予定領域11cは、このレーザービーム23により変質する。なお、レーザービーム23により変質した変質領域は、被加工物11の他の領域に比べて脆く、また、研削され易い。よって、変質予定領域11cが適切な位置に設定されることで、例えば、被加工物11の研削に使用される研削砥石の摩耗を制御することが可能になる。
【0032】
本実施形態では、被加工物11は、その中央側(内側)の領域が裏面11b側から研削されることにより凹状に加工される。すなわち、被加工物11には、円板状の薄板部と、薄板部を囲み薄板部よりも厚い環状の厚板部と、が形成される。一方で、この薄板部と厚板部との境界に近い部分の研削には、実質的に、研削砥石の下端の縁部のみが寄与するので、被加工物11を研削して薄板部と厚板部とを形成する際には、研削砥石の下端の縁部が摩耗して丸みを帯び易い。
【0033】
そこで、本実施形態では、後に被加工物11の研削に使用される研削砥石の下端の縁部の摩耗を抑制できる位置に、変質予定領域11cが設定される。具体的には、変質予定領域11cは、薄板部となる領域と裏面11bとの間の、研削により除去されるべき領域に設定される。より詳細には、変質予定領域11cは、薄板部となる領域と厚板部となる領域との境界に沿って、厚板部となる領域よりも内側の位置に設定される。
【0034】
図4は、レーザービーム23により変質した後の被加工物11の一部を模式的に示す断面図である。本実施形態では、後述するように、粗い砥粒を含む研削砥石により被加工物11を研削する粗研削と、粗研削の後に細かい砥粒を含む研削砥石により被加工物11を研削する仕上げ研削と、の2段階で被加工物11が研削される。
【0035】
よって、本実施形態では、粗研削により除去される領域と、仕上げ研削により除去される領域と、のそれぞれに変質予定領域11cが設定される。そして、各変質予定領域11cにレーザービーム23が照射されることで、粗研削により除去される第1変質領域11dと、仕上げ研削により除去される第2変質領域11eと、が形成される。
【0036】
具体的には、第1変質領域11dが形成される第1変質予定領域11c-1は、
図4に示されるように、粗研削により第1薄板部11fとなる領域と第1厚板部11gとなる領域との境界に沿って、第1厚板部11gとなる領域よりも内側の位置に設定される。言い換えれば、第1変質予定領域11c-1は、第1薄板部11fとなる領域の環状の外縁部の直上に設定される。
【0037】
また、第2変質領域11eが形成される第2変質予定領域11c-2は、
図4に示されるように、仕上げ研削により第2薄板部11hとなる領域と第2厚板部11iとなる領域との境界に沿って、第2厚板部11iとなる領域よりも内側の位置に設定される。言い換えれば、第2変質予定領域11c-2は、第2薄板部11hとなる領域の環状の外縁部の直上に設定される。
【0038】
ただし、被加工物11に設定される変質予定領域11cの位置や数量等は、これらに限定されない。例えば、被加工物11には、第1変質予定領域11c-1と第2変質予定領域11c-2との一方のみが設定されてもよい。すなわち、第1変質予定領域11c-1と第2変質予定領域11c-2との一方のみがレーザービーム23によって変質することがある。
【0039】
また、本実施形態では、裏面11bから所定の距離の位置に第1変質予定領域11c-1が設定されているが、裏面11bからの距離が異なる複数の位置のそれぞれに第1変質予定領域11c-1が設定されてもよい。同様に、本実施形態では、裏面11bから所定の距離の位置に第2変質予定領域11c-2が設定されているが、裏面11bからの距離が異なる複数の位置のそれぞれに第2変質予定領域11c-2が設定されてもよい。
【0040】
例えば、環状の変質予定領域11cにレーザービーム23が照射され、被加工物11の変質予定領域11cに相当する部分が変質した後には、被加工物11が保護部材21を介して研削装置のチャックテーブルに保持される(第2保持ステップ)。
図5は、被加工物11が研削装置12のチャックテーブル14により保持される様子を模式的に示す断面図である。
【0041】
図5に示されるように、研削装置12は、被加工物11を保持できるように構成されたチャックテーブル14を備えている。チャックテーブル14は、例えば、セラミックス等を用いて形成された円板状の枠体16を含む。枠体16の上面側には、円形状の開口を上端に持つ凹部16aが形成されている。この凹部16aには、セラミックス等を用いて多孔質の円板状に形成された保持板18が固定されている。
【0042】
保持板18の上面18aは、例えば、円錐の側面に相当する形状に構成されており、被加工物11等を保持する保持面として機能する。なお、円錐の頂点に相当する保持板18の上面18aの中心18bと、保持板18の上面18aの外周縁と、の高さの差(高低差)は、10μm~30μm程度である。本実施形態では、この保持板18の上面18aに、保護部材21の裏面21bが接触する。
【0043】
保持板18の下面側は、枠体16の内部に設けられた流路16bや、枠体16の外部に配置されたバルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。そのため、保持板18の上面18aに保護部材21の裏面21bを接触させた状態で、バルブを開き、吸引源の負圧を作用させると、この保護部材21の裏面21bがチャックテーブル14により吸引される。
【0044】
すなわち、被加工物11は、裏面11bが上方に露出するように、保護部材21を介してチャックテーブル14に保持される。なお、被加工物11の表面11aに保護部材21が貼付されていない場合には、保持板18の上面18aに被加工物11の表面11aを直に接触させてバルブを開き、吸引源の負圧を作用させればよい。
【0045】
枠体16の下部には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。チャックテーブル14は、この回転駆動源が生じる力によって、上面18aの中心18bが回転の中心となるように、鉛直方向に沿う軸、又は鉛直方向に対して僅かに傾いた軸の周りに回転する。また、枠体16は、チャックテーブル移動機構(不図示)によって支持されており、チャックテーブル14は、このチャックテーブル移動機構が生じる力によって、水平方向に移動する。
【0046】
被加工物11がチャックテーブル14で保持された後には、被加工物11のデバイス15が形成された領域(デバイス領域)に対応する領域が、裏面11b側から粗研削される(第1研削ステップ)。
図6は、被加工物11が粗研削される様子を模式的に示す断面図である。
【0047】
図6に示されるように、研削装置12のチャックテーブル14よりも上方の位置には、第1研削ユニット(粗研削ユニット)20が配置されている。第1研削ユニット20は、例えば、筒状のスピンドルハウジング(不図示)を含む。スピンドルハウジングの内側の空間には、柱状のスピンドル22が収容されている。
【0048】
スピンドル22の下端部には、例えば、被加工物11よりも直径の小さな円板状のマウント24が設けられている。マウント24の下面には、マウント24と概ね直径が等しい円環状の第1研削ホイール(粗研削ホイール)26が、ボルト(不図示)等で固定されている。
【0049】
第1研削ホイール26は、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属を用いて形成された円環状のホイール基台28を含む。ホイール基台28の円環状の下面には、このホイール基台28の周方向に沿って複数の第1研削砥石(粗研削砥石)30が固定されている。すなわち、複数の第1研削砥石30は、被加工物11よりも小さな直径(第1直径)の環状の領域に配列されている。各第1研削砥石30は、例えば、ダイヤモンド等でなる大きめの砥粒が樹脂等でなる結合剤中に分散された構造を有している。
【0050】
この第1研削砥石30を含む第1研削ホイール26で被加工物11が研削されると、単位時間当たりに被加工物11を除去できる量が多くなる一方で、被加工物11の被研削面側に傷又は歪を含むダメージ層が形成され易くなる。スピンドル22の上端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。第1研削ホイール26は、この回転駆動源が生じる力によって、鉛直方向に沿う軸、又は鉛直方向に対して僅かに傾いた軸の周りに回転する。
【0051】
第1研削ホイール26の傍、又は第1研削ホイール26の内部には、第1研削砥石30等に対して研削用の液体(代表的には、水)を供給できるように構成されたノズル(不図示)が設けられている。スピンドルハウジングは、例えば、第1研削ユニット移動機構(不図示)によって支持されており、第1研削ユニット20は、この第1研削ユニット移動機構が生じる力によって、鉛直方向に移動する。
【0052】
第1研削ユニット20(第1研削ホイール26)で被加工物11を研削する際には、まず、第1研削ユニット20の直下にチャックテーブル14が移動する。より具体的には、デバイス15が形成された領域の直上に第1研削ホイール26(全ての第1研削砥石30)が配置されるように、チャックテーブル移動機構がチャックテーブル14を水平方向に移動させる。
【0053】
その後、チャックテーブル14と第1研削ホイール26とがそれぞれ回転し、第1研削ユニット20(第1研削ホイール26)が下降する。つまり、第1研削ホイール26と被加工物11とが相互に回転しながら、被加工物11の裏面11bと交差する方向に相対的に移動する。なお、この際には、ノズルから第1研削砥石30等に液体が供給される。これにより、
図6に示されるように、第1研削砥石30が裏面11b側から被加工物11に接触し、被加工物11の研削が開始される。
【0054】
なお、具体的な研削の条件に大きな制限はない。例えば、効率の良い被加工物11の研削を実現するためには、チャックテーブル14の回転数が、100rpm~600rpm、代表的には、300rpmに設定され、第1研削ホイール26の回転数が、1000rpm~7000rpm、代表的には、4500rpmに設定され、第1研削ユニット20の下降の速さ(研削送り速度)が、0.8μm/s~10μm/s、代表的には、6.0μm/sに設定される。
【0055】
図7は、粗研削された後の被加工物11の一部を模式的に示す断面図である。第1研削ユニット20による被加工物11の研削が進行すると、被加工物11の第1研削砥石30が接触した部分が薄くなり、残りの部分の厚みが維持される。つまり、被加工物11のデバイス15が形成された領域に対応する部分が薄くなり、円板状の第1薄板部11fとなる。また、被加工物11のデバイス15が形成された領域を囲む領域(外周領域)に対応する部分の厚みが維持され、第1薄板部11fを囲む環状の第1厚板部11gとなる。
【0056】
なお、本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、第1薄板部11fとなる領域の環状の外縁部の直上に、脆く研削されやすい第1変質領域11dが形成されている。第1変質領域11dは、主に、第1研削ホイール26の半径の方向に沿って外側に位置する第1研削砥石30の下端の縁部により研削されるので、この第1変質領域11dが形成されない従来の方法に比べて、第1研削砥石30の下端の縁部の摩耗は抑制される。
【0057】
粗研削が終了すると、第1変質領域11dは被加工物11から完全に除去される。ただし、第1厚板部11gには、被加工物11の半径の方向に沿って外側に位置する第1変質領域11dの一部が残留してもよい。第1厚板部11gは後の工程において除去されるので、第1変質領域11dの一部が第1厚板部11gに残留したとしても、デバイスチップ等の製品は影響を受けない。
【0058】
また、
図7に示されるように、第1研削砥石30によって研削された第1薄板部11fの裏面11b側には、傷又は歪を含むダメージ層11jが発生する。このダメージ層11jは、被加工物11の力学的な強度(抗折強度等)を低下させるので、ダメージ層11jが存在する領域をデバイスチップ等の製品に使用することはできない。
【0059】
そこで、上述した粗研削の後には、この粗研削により発生したダメージ層11jを除去できるように、第1薄板部11fと第1厚板部11gとが裏面11b側から仕上げ研削される(第2研削ステップ)。
図8は、被加工物11が仕上げ研削される様子を模式的に示す断面図である。
【0060】
図8に示されるように、研削装置12のチャックテーブル14よりも上方の位置には、第1研削ユニット20とは別の第2研削ユニット(仕上げ研削ユニット)40が配置されている。第2研削ユニット40は、例えば、筒状のスピンドルハウジング(不図示)を含む。スピンドルハウジングの内側の空間には、柱状のスピンドル42が収容されている。
【0061】
スピンドル42の下端部には、例えば、被加工物11よりも直径の小さな円板状のマウント44が設けられている。マウント44の下面には、マウント44と概ね直径が等しい円環状の第2研削ホイール(仕上げ研削ホイール)46が、ボルト(不図示)等で固定されている。
【0062】
第2研削ホイール46は、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属を用いて形成された円環状のホイール基台48を含む。ホイール基台48の円環状の下面には、このホイール基台48の周方向に沿って複数の第2研削砥石(仕上げ研削砥石)50が固定されている。すなわち、複数の第2研削砥石50は、被加工物11よりも小さな直径(第2直径)の環状の領域に配列されている。
【0063】
各第2研削砥石50は、例えば、ダイヤモンド等でなる小さめの砥粒が樹脂等でなる結合剤中に分散された構造を有している。具体的には、第2研削砥石50に含まれる砥粒の大きさ(代表的には、平均粒径)は、第1研削砥石30に含まれる砥粒の大きさに比べて小さい。
【0064】
この第2研削砥石50を含む第2研削ホイール46で被加工物11が研削されると、第1研削ホイール26で被加工物11が研削される場合に比べて、単位時間当たりに被加工物11を除去できる量が少なくなる一方で、ダメージ層は生じ難い。スピンドル42の上端側には、モーター等の回転駆動源(不図示)が連結されている。第2研削ホイール46は、この回転駆動源が生じる力によって、鉛直方向に沿う軸、又は鉛直方向に対して僅かに傾いた軸の周りに回転する。
【0065】
第2研削ホイール46の傍、又は第2研削ホイール46の内部には、第2研削砥石50等に対して研削用の液体(代表的には、水)を供給できるように構成されたノズル(不図示)が設けられている。スピンドルハウジングは、例えば、第2研削ユニット移動機構(不図示)によって支持されており、第2研削ユニット40は、この第2研削ユニット移動機構が生じる力によって、鉛直方向に移動する。
【0066】
第2研削ユニット40(第2研削ホイール46)で被加工物11を研削する際には、まず、第2研削ユニット40の直下にチャックテーブル14が移動する。より具体的には、第2研削ホイール46の複数の第2研削砥石50のいずれかが、第1薄板部11fの外側の縁(第1厚板部11gの内側の縁)よりも外側の領域の直上に配置されるように、チャックテーブル移動機構がチャックテーブル14を水平方向に移動させる。
【0067】
その後、チャックテーブル14と第2研削ホイール46とがそれぞれ回転し、第2研削ユニット40(第2研削ホイール46)が下降する。つまり、第2研削ホイール46と被加工物11とが相互に回転しながら、被加工物11の裏面11bと交差する方向に相対的に移動する。なお、この際には、ノズルから第2研削砥石50等に液体が供給される。これにより、
図8に示されるように、第2研削砥石50が裏面11b側から第1厚板部11gに接触し、被加工物11の研削が開始される。
【0068】
なお、具体的な研削の条件に大きな制限はない。例えば、効率が良く精度の高い被加工物11の研削を実現するためには、チャックテーブル14の回転数が、100rpm~600rpm、代表的には、300rpmに設定され、第2研削ホイール46の回転数が、1000rpm~7000rpm、代表的には、4000rpmに設定される。
【0069】
被加工物11の研削が進行し、第2研削砥石50と接触する第1厚板部11gの内側の部分が除去された後には、第2研削砥石50は、第1薄板部11fにも接触する。すなわち、本実施形態では、第1厚板部11gのみが研削された後に、第1薄板部11f(及び第1厚板部11g)を含む領域が裏面11b側から研削される。
【0070】
ここで、第1厚板部11gのみが研削される段階で第2研削砥石50にかかる研削の負荷は、第1薄板部11fを含む領域が研削される段階で第2研削砥石50にかかる研削の負荷に比べて小さい。よって、第1厚板部11gのみが研削される段階では、第1薄板部11fを含む領域が研削される段階に比べて、第2研削ユニット40の下降の速さ(研削送り速度)を高めることが可能である。
【0071】
例えば、第1厚板部11gのみが研削される段階の第2研削ユニット40の下降の速さが、0.8μm/s~5.0μm/sに設定され、第1薄板部11fを含む領域が研削される段階の第2研削ユニット40の下降の速さが、0.1μm/s~0.8μm/sに設定される。このように、第1厚板部11gのみが研削される段階において第2研削ユニット40の下降の速さが高められることにより、研削に要する時間の増加が抑制される。
【0072】
図9は、仕上げ研削された後の被加工物11の一部を模式的に示す断面図である。
図9に示されるように、被加工物11の第1薄板部11fを含む領域の研削が進行すると、この領域が更に薄くなり、第1薄板部11fよりも直径が大きく薄い円板状の第2薄板部11hとなる。また、第2薄板部11hを囲む領域に対応する部分の厚みが維持され、第2薄板部11hを囲み第2薄板部11hよりも厚い環状の第2厚板部11iとなる。
【0073】
なお、本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、第2薄板部11hとなる領域の環状の外縁部の直上に、脆く研削されやすい第2変質領域11eが形成されている。第2変質領域11eは、主に、第2研削ホイール46の半径の方向に沿って外側に位置する第2研削砥石50の下端の縁部により研削されるので、この第2変質領域11eが形成されない従来の方法に比べて、第2研削砥石50の下端の縁部の摩耗は抑制される。
【0074】
仕上げ研削が終了すると、第2変質領域11eは被加工物11から完全に除去される。ただし、第2厚板部11iには、被加工物11の半径の方向に沿って外側に位置する第2変質領域11eの一部が残留してもよい。第2厚板部11iは後の工程において除去されるので、第2変質領域11eの一部が第2厚板部11iに残留したとしても、デバイスチップ等の製品は影響を受けない。
【0075】
以上のように、本実施形態にかかる被加工物の加工方法では、被加工物11を透過する波長のレーザービーム23を環状の第1変質予定領域11c-1及び第2変質予定領域11c-2に照射し、これらを変質させることで、他の領域に比べて脆い第1変質領域11d及び第2変質領域11e(変質された後の脆い変質予定領域11c)を形成するので、被加工物11を研削する際には、第1研削砥石30及び第2研削砥石50の下端の縁部によって、それぞれ、脆い第1変質領域11d及び第2変質領域11eが研削される。
【0076】
これにより、第1変質予定領域11c-1及び第2変質予定領域11c-2を変質させない場合に比べて第1研削砥石30及び第2研削砥石50の下端の縁部にかかる負荷が小さくなるので、従来の方法に比べて第1研削砥石30及び第2研削砥石50の下端の縁部の摩耗が抑制される。
【0077】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施され得る。例えば、上述した実施形態では、第1研削砥石30を用いる粗研削と第2研削砥石50を用いる仕上げ研削との双方により被加工物11が研削されているが、本発明にかかる被加工物の加工方法では、粗研削のみ、又は、仕上げ研削のみにより被加工物11が研削されてもよい。
【0078】
また、第1研削砥石30を用いる粗研削と第2研削砥石50を用いる仕上げ研削とは、上述した実施形態とは異なる態様で適用されてもよい。被加工物11に設定される変質予定領域11cの位置や数量等は、粗研削及び仕上げ研削の態様に合わせて調整される。
図10は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、レーザービーム23により変質した後の被加工物11の一部を模式的に示す断面図である。
【0079】
図10に示されるように、変形例にかかる被加工物の加工方法では、粗研削により第1薄板部11fとなる領域と第1厚板部11gとなる領域との位置や形状が、上述した実施形態とは異なっている。また、仕上げ研削により第2薄板部11hとなる領域と第2厚板部11iとなる領域との位置や形状が、上述した実施形態とは異なっている。
【0080】
ただし、この変形例にかかる被加工物の加工方法でも、粗研削により第1薄板部11fとなる領域と第1厚板部11gとなる領域との境界に沿って、第1厚板部11gとなる領域よりも内側の位置に第1変質予定領域11c-1が設定される。つまり、第1変質領域11dが形成される第1変質予定領域11c-1は、第1薄板部11fとなる領域の外縁部の直上に設定される。
【0081】
また、仕上げ研削により第2薄板部11hとなる領域と第2厚板部11iとなる領域との境界に沿って、第2厚板部11iとなる領域よりも内側の位置に第2変質予定領域11c-2が設定される。つまり、第2変質領域11eが形成される第2変質予定領域11c-2は、第2薄板部11hとなる領域の外縁部の直上に設定される。
【0082】
その後の粗研削の手順は、上述した実施形態と同様である。
図11は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、被加工物11が粗研削される様子を模式的に示す断面図であり、
図12は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、粗研削された後の被加工物11の一部を模式的に示す断面図である。
【0083】
また、粗研削の後の仕上げ研削の手順も、上述した実施形態と同様である。ただし、この変形例では、仕上げ研削において第1厚板部11gは研削されずにそのまま残る。すなわち、この変形例では、第1薄板部11fの一部が第2研削砥石50により研削され、第1薄板部11fよりも直径が小さく薄い円板状の第2薄板部11hと、第2薄板部11hを囲み第2薄板部11hよりも厚い環状の第2厚板部11iと、が形成される。
【0084】
図13は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、被加工物11が仕上げ研削される様子を模式的に示す断面図であり、
図14は、変形例にかかる被加工物の加工方法において、仕上げ研削された後の被加工物11の一部を模式的に示す断面図である。
図14に示されるように、本実施形態では、第1薄板部11fの一部が第2研削砥石50により研削されずに、そのまま第2厚板部11iとして被加工物11に残るので、ダメージ層11jの一部も被加工物11に残る。
【0085】
また、上述した実施形態及び変形例において、被加工物11は、第1研削ホイール26で被加工物11が研削される際に被加工物11を保持するチャックテーブルと、第2研削ホイール46で被加工物11が研削される際に被加工物11を保持する別のチャックテーブルと、を備える研削装置を用いて研削されてもよい。同様に、被加工物11は、第1研削ユニット20を備える研削装置と、第2研削ユニット40を備える別の研削装置と、を用いて研削されてもよい。
【0086】
その他、上述した実施形態及び各変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施され得る。
【符号の説明】
【0087】
11 :被加工物
11a :表面(第1面)
11b :裏面(第2面)
11c :変質予定領域
11c-1 :第1変質予定領域
11c-2 :第2変質予定領域
11d :第1変質領域
11e :第2変質領域
11f :第1薄板部
11g :第1厚板部
11h :第2薄板部
11i :第2厚板部
11j :ダメージ層
13 :分割予定ライン(ストリート)
15 :デバイス
21 :保護部材
21a :表面
21b :裏面
2 :レーザー加工装置
4 :チャックテーブル
6 :枠体
6a :凹部
6b :流路
8 :保持板
8a :上面
10 :レーザー加工ヘッド
12 :研削装置
14 :チャックテーブル
16 :枠体
16a :凹部
16b :流路
18 :保持板
18a :上面
18b :中心
20 :第1研削ユニット(粗研削ユニット)
22 :スピンドル
24 :マウント
26 :第1研削ホイール(粗研削ホイール)
28 :ホイール基台
30 :第1研削砥石(粗研削砥石)
40 :第2研削ユニット(仕上げ研削ユニット)
42 :スピンドル
44 :マウント
46 :第2研削ホイール(仕上げ研削ホイール)
48 :ホイール基台
50 :第2研削砥石(仕上げ研削砥石)