(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024111974
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016755
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】我妻 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】森下 さくら
(72)【発明者】
【氏名】中村 麻由子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将久
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA01
5F131BA19
5F131CA12
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB57
5F131DB72
5F131DB76
5F131DB82
5F131DD42
5F131DD82
5F131DD86
5F131HA09
5F131HA12
5F131HA13
5F131JA07
5F131JA08
5F131JA09
5F131JA12
5F131JA33
5F131KA06
5F131KA22
5F131KA55
5F131KA72
(57)【要約】 (修正有)
【課題】真空搬送室内で酸化するのを抑制する。
【解決手段】ウェハ処理装置1は、真空処理室41
1~41
6内の基板Wを処理する複数の処理モジュール40
1~40
6、ロードロック室12a、13a及び真空処理室及びロードロック室とゲートバルブG5
1~G5
6を介して接続される真空搬送室31を有し、基板搬送機構により、真空処理室及びロードロック室に対し、真空搬送室との間での基板の搬入出を真空雰囲気下で行う真空搬送モジュール30と、真空搬送室内に不活性ガスを導入する複数の給気口34
1~34
4と、真空搬送室内のガスを排出する排気口33
1~33
4と、給気口に接続されたガス供給機構及び排気口に接続された排気機構を制御し、不活性ガスの流れを形成する制御部と、を備える。制御部は、真空処理室から真空搬送室に搬出された直後の基板の位置が、平面視で不活性ガスの流れの上流になるように、ガス供給機構及び排気機構を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空処理室を有し、前記真空処理室内の基板に対して真空雰囲気下で処理を行う複数の処理モジュールと、
室内を真空雰囲気の空間と常圧雰囲気の空間との間で切り替えられるように構成されたロードロック室と、
前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室と仕切弁を介して接続される真空搬送室を有し、基板搬送機構により、前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室に対し、前記真空搬送室との間での前記基板の搬入出を真空雰囲気下で行う真空搬送モジュールと、
前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内に不活性ガスを導入する複数の給気口と、
前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内のガスを排出する排気口と、
前記給気口に接続されたガス供給機構及び前記排気口に接続された排気機構を制御し、前記真空搬送室内に前記不活性ガスの流れを形成する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記処理モジュールにより前記処理が行われ前記真空処理室から前記真空搬送室に搬出された直後の前記基板の位置が、平面視で前記不活性ガスの流れの上流になるように、前記ガス供給機構及び前記排気機構を制御する、基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板が前記真空搬送室内に位置する間、前記基板の位置が、平面視で前記不活性ガスの流れの上流になり続けるように、前記ガス供給機構及び前記排気機構を制御する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板が、前記真空搬送室内を前記基板搬送機構により移動中に、前記不活性ガスの流れが切り替わるように、前記ガス供給機構及び前記排気機構を制御する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板を前記真空処理室から前記真空搬送室に搬出する際、前記複数の前記給気口のうち、当該処理モジュールの前記仕切弁から近い給気口が用いられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記排気口を複数備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板を前記真空処理室から前記真空搬送室に搬出する際、前記複数の前記排気口のうち、当該処理モジュールの前記仕切弁から遠い排気口が用いられる、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
平面視で前記基板搬送機構を間に挟んで互い対向する前記給気口及び前記排気口を用いて、前記不活性ガスの流れが形成される、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記不活性ガスは、窒素ガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記排気口は、前記真空搬送室における搬送時の前記基板の位置より下側に設けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記給気口は、前記真空搬送室における搬送時の前記基板の位置より上側に設けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
基板処理装置内で基板を搬送する基板搬送方法であって、
前記基板処理装置は、
真空処理室を有し、前記真空処理室内の前記基板に対して真空雰囲気下で処理を行う複数の処理モジュールと、
室内を真空雰囲気と常圧雰囲気との間で切り替えられるように構成されたロードロック室と、
前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室と仕切弁を介して接続される真空搬送室を有し、基板搬送機構により、前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室に対し、前記真空搬送室との間での前記基板の搬入出を真空雰囲気下で行う真空搬送モジュールと、
前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内に不活性ガスを導入する複数の給気口と、
前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内のガスを排出する排気口と、を有し、
当該基板搬送方法は、
前記真空搬送室内に前記不活性ガスの流れを形成した状態で、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板を、前記真空搬送室内で搬送する工程を含み、
前記搬送する工程において、前記処理モジュールにより前記処理が行われ前記真空処理室から前記真空搬送室に搬出された直後の前記基板の位置が、平面視で前記不活性ガスの流れの上流とされる、基板搬送方法。
【請求項12】
前記搬送する工程において、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板が前記真空搬送室内に位置する間、前記基板の位置が、平面視で前記不活性ガスの流れの上流とされ続ける、請求項11に記載の基板搬送方法。
【請求項13】
前記搬送する工程において、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板が、前記真空搬送室内を前記基板搬送機構により移動中に、前記不活性ガスの流れが切り替えられる、請求項12に記載の基板搬送方法。
【請求項14】
前記基板処理装置は、前記排気口を複数備え、
前記搬送する工程における前記不活性ガスの流れの形成に、平面視で前記基板搬送機構を間に挟んで互いに対向する前記給気口及び前記排気口が用いられる、請求項11~13のいずれか1項に記載の基板搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の真空処理装置は、真空雰囲気下で基板に対して処理を行う真空処理室を含む処理モジュールと、真空雰囲気と常圧雰囲気との間で雰囲気を切り替えるためのロードロック室と、真空処理室とロードロック室との間に仕切り弁を介して設けられ、基板搬送機構により真空処理室とロードロック室との間で基板が搬送される真空搬送室と、を備える。さらに、上記真空処理装置は、上記処理が行われた処理済みの基板の搬送領域に沿って、当該搬送領域の幅全体に亘って、基板の被処理面側に不活性ガスを供給するように真空搬送室に設けられる不活性ガス供給部と、真空搬送室に設けられた排気口と、をさらに備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板搬送機構により真空雰囲気下で基板を搬送する真空搬送モジュールの真空搬送室に仕切弁を介して処理モジュールの真空処理室が接続された基板処理装置において、真空雰囲気下で処理され真空処理室から搬出された基板が、真空搬送室内で酸化するのを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、真空処理室を有し、前記真空処理室内の基板に対して真空雰囲気下で処理を行う複数の処理モジュールと、室内を真空雰囲気の空間と常圧雰囲気の空間との間で切り替えられるように構成されたロードロック室と、前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室と仕切弁を介して接続される真空搬送室を有し、基板搬送機構により、前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室に対し、前記真空搬送室との間での前記基板の搬入出を真空雰囲気下で行う真空搬送モジュールと、前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内に不活性ガスを導入する複数の給気口と、前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内のガスを排出する排気口と、前記給気口に接続されたガス供給機構及び前記排気口に接続された排気機構を制御し、前記真空搬送室内に前記不活性ガスの流れを形成する制御部と、を備え、前記制御部は、前記処理モジュールにより前記処理が行われ前記真空処理室から前記真空搬送室に搬出された直後の前記基板の位置が、平面視で前記不活性ガスの流れの上流になるように、前記ガス供給機構及び前記排気機構を制御する、基板処理装置である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板搬送機構により真空雰囲気下で基板を搬送する真空搬送モジュールの真空搬送室に仕切弁を介して処理モジュールの真空処理室が接続された基板処理装置において、真空雰囲気下で処理され真空処理室から搬出された基板が、真空搬送室内で酸化するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかる基板処理装置としてのウェハ処理装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図2】真空搬送モジュールの真空搬送室における給気口と排気口の配設位置の例を示す図である。
【
図3】真空搬送モジュールの真空搬送室内の雰囲気を制御する機構の配管系統の概略を説明するための図である。
【
図4】本実施形態にかかる真空搬送室内での基板の搬送形態に想到した経緯を説明するための図である。
【
図5】処理モジュールで処理が行われた基板の、真空搬送室内での搬送形態の一例を説明するための図である。
【
図6】処理モジュールで処理が行われた基板の、真空搬送室内での搬送形態の一例を説明するための図である。
【
図7】処理モジュールで処理が行われた基板の、真空搬送室内での搬送形態の一例を説明するための図である。
【
図8】処理モジュールで処理が行われた基板の、真空搬送室内での搬送形態の一例を説明するための図である。
【
図9】処理モジュールで処理が行われた基板の、真空搬送室内での搬送形態の一例を説明するための図である。
【
図10】真空搬送室内に形成される不活性ガスの流れの他の例を説明するための図である。
【
図11】給気口及び排気口が設けられる形態の他の例を示す図である。
【
図12】排気口が設けられる形態の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスでは、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」)等の基板に対して、成膜処理やエッチング処理等の処理が基板処理装置により行われる。基板処理装置は、処理モジュール、ロードロックモジュール及び真空搬送モジュールを備える。処理モジュールは、真空処理室を有し、真空処理室内の基板に対し真空雰囲気下で成膜処理等の処理を行う。ロードロックモジュールは、真空雰囲気の空間と常圧雰囲気の空間との間で基板を受け渡すためのものである。真空搬送モジュールは、真空搬送室及びロードロックモジュールと仕切弁すなわちゲートバルブを介して接続される真空搬送室を有し、基板搬送機構により基板を搬送し、処理モジュール及びロードロックモジュールに対し、真空搬送室との間での基板の搬入出を真空雰囲気下で行う。
【0009】
基板処理装置では、処理モジュールで処理された基板は、真空処理室から真空搬送室に搬出された後、ロードロックモジュール及び常圧雰囲気の空間を介して、搬送容器に搬送され格納される。
また、基板処理装置では、真空処理室内で用いられた処理ガスが真空搬送室に入り込むことを抑制するために真空搬送室を真空処理室に対して陽圧にする等の目的で、真空搬送室内に窒素ガス等の不活性ガスが導入されている。
【0010】
真空搬送室内は、上述のように、真空雰囲気とされ、不活性ガスが導入されるが、雰囲気中に微量の酸素が含まれる。そのため、真空処理モジュールで処理された後、真空搬送室に搬出された基板(以下、処理後基板という。)が、真空搬送室内の酸素により酸化することがある。特に、真空処理モジュールでの処理時の基板の温度が高い場合、上述の真空搬送室内での処理後基板の酸化は顕著である。その理由の1つとして、真空処理モジュールでの処理時の基板の温度が高い場合、処理後基板の温度も高くなり、真空搬送室内の酸素と処理後基板との反応が生じやすいことが挙げられる。また、真空処理モジュールでの処理時の基板の温度が高い場合、真空処理室と仕切弁との間や真空搬送室と仕切弁との間を封止する樹脂製のOリング等の封止部材も高温となり、封止部材の酸素透過率が高くなるため、真空搬送室内の酸素濃度が高くなる。これも、真空処理モジュールでの処理時の基板の温度が高い場合に真空搬送室内での処理後基板の酸化が顕著になる理由の1つである。
【0011】
そこで、本開示にかかる技術は、基板搬送機構により真空雰囲気下で基板を搬送する真空搬送モジュールの真空搬送室に仕切弁を介して処理モジュールの真空処理室が接続された基板処理装置において、処理後基板が、真空搬送室内で酸化するのを抑制する。
【0012】
以下、本実施形態にかかる基板処理装置及び基板搬送方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<ウェハ処理装置>
図1は、本実施形態にかかる基板処理装置としてのウェハ処理装置1の構成の概略を示す平面図である。
図2は、後述の真空搬送モジュールの真空搬送室における給気口と排気口の配設位置の例を示す図である。
図3は、後述の真空搬送モジュールの真空搬送室内の雰囲気を制御する機構の配管系統の概略を説明するための図である。
【0014】
ウェハ処理装置1は、基板としてのウェハWを複数収容可能な搬送容器としてのキャリアCが搬出入されるキャリアステーション10と、真空雰囲気下でウェハWに対して所定の処理を行う複数の処理モジュールを備えた処理ステーション11と、を一体に接続した構成を有している。キャリアステーション10と処理ステーション11は、例えば、2つのロードロックモジュール12、13を介して連結されている。
【0015】
ロードロックモジュール12、13は、真空雰囲気の空間と常圧雰囲気の空間との間でウェハWを受け渡すためのものである。これらロードロックモジュール12、13は、室内を常圧雰囲気と真空雰囲気との間で切り替えられるように構成されたロードロック室12a、13aを有する。ロードロックモジュール12、13は、後述する常圧搬送モジュール20と真空搬送モジュール30を連結するように設けられている。
【0016】
キャリアステーション10は、常圧搬送モジュール20とキャリア載置台21を有している。
【0017】
常圧搬送モジュール20は、室内が常圧雰囲気とされる常圧搬送室22を有する。常圧搬送室22は、ロードロックモジュール12、13のロードロック室12a、13aとゲートバルブG1、G2を介して接続されている。常圧搬送室22内には、常圧雰囲気下でロードロック室12a、13aとの間でウェハWを搬送する搬送機構23が設けられている。
【0018】
搬送機構23は、例えば、ウェハWを搬送時に略水平に保持する搬送アーム23aと、搬送アーム23aを回転可能に支持する回転台23bと、回転台23bを搭載した基台23cとを有している。また、常圧搬送室22の内部には、常圧搬送室22の長手方向に延伸するガイドレール23dが設けられている。基台23cはガイドレール23d上に設けられ、搬送機構23はガイドレール23dに沿って移動可能に構成されている。
【0019】
キャリア載置台21は、常圧搬送モジュール20において、ロードロックモジュール12、13の反対側の側面に設けられている。図示の例では、キャリア載置台21は、複数、例えば5つ設けられており、キャリア載置台21にはキャリアCが載置できるようになっている。キャリア載置台21に載置されたキャリアC内のウェハWは、常圧搬送モジュール20の搬送機構23の搬送アーム23aにより常圧搬送室22に対して搬入出される。
【0020】
処理ステーション11は、真空搬送モジュール30と処理モジュール401~406を有している。
【0021】
真空搬送モジュール30は、室内が減圧雰囲気すなわち真空雰囲気に保たれる真空搬送室31を有し、該真空搬送室31は、密閉可能に構成されており、例えば平面視において略多角形状(図の例では四角形状)をなすように形成されている。真空搬送室31は、ロードロックモジュール12、13と接続されている。具体的には、平面視における真空搬送室31の一辺部は、ロードロックモジュール12、13のロードロック室12a、13aとゲートバルブG3、G4を介して接続されている。真空搬送室31内には、本開示にかかる基板搬送装置として、ウェハWを搬送するウェハ搬送機構32が設けられている。真空搬送モジュール30は、ウェハ搬送機構32により、処理モジュール401~406の後述の真空処理室411~416及びロードロック室12a、13aに対し、真空搬送室31との間でのウェハWの搬入出を行う。
【0022】
ウェハ搬送機構32は、例えば、ウェハWを搬送時に略水平に保持する搬送アーム32aと、搬送アーム32aを回転可能に支持する回転台32bとを有している。
【0023】
真空搬送モジュール30の真空搬送室31の外側には、処理モジュール401~406、ロードロックモジュール12、13が、当該真空搬送室31の周囲を囲むように配置されている。
【0024】
以下では、平面視四角形状の真空搬送室31の4つの辺部のうち、ロードロックモジュール12、13が接続される辺部を第1辺部31aとし、それ以外の3つの辺部を、平面視における時計回転方向に沿って第1辺部31aに近い方から順に、第2辺部31b、第3辺部31c、第4辺部31dとする。
【0025】
第1辺部31aに対しては、ロードロックモジュール12が第2辺部31b側に配置され、ロードロックモジュール13が第4辺部31d側に配置される。
第2辺部31bに対しては、処理モジュール401が第1辺部31a側に配置され、処理モジュール402が第3辺部31c側に配置される。
第3辺部31cに対しては、処理モジュール403が第2辺部31b側に配置され、処理モジュール404が第4辺部31d側に配置される。
第4辺部31dに対しては、処理モジュール405が第3辺部31c側に配置され、処理モジュール406が第1辺部31a側に配置される。
【0026】
処理モジュール40
1~40
6はそれぞれ、ウェハWに対して、例えば成膜処理、拡散処理、エッチング処理等の所定の処理を真空雰囲気下で行う。具体的には、処理モジュール40
1~40
6はそれぞれ、例えば、高温(例えばウェハWの温度またはウェハWが載置されるステージ(図示せず)の温度が400℃以上)且つ真空雰囲気下で成膜処理を行う。また、処理モジュール40
1~40
6はそれぞれ、真空雰囲気下の室内でウェハWに対して上記処理が行われる真空処理室41
1~41
6を有する。真空処理室41
1~41
6はそれぞれ、真空搬送モジュール30の真空搬送室31と仕切弁としてのゲートバルブG5
1~G5
6を介して接続されている。
図2に示すように、ゲートバルブG5
1と真空搬送室31との間及びゲートバルブG5
6と真空搬送室31には、封止部材である樹脂製のOリング35が設けられている。図示は省略するが、ゲートバルブG5
2~G5
5それぞれと真空搬送室31との間や、ゲートバルブG5
1~G5
6と処理モジュール40
1~40
6との間にも、同様に、樹脂製のOリングが設けられる。
【0027】
また、
図1に示すように、ウェハ処理装置1には、制御部100が設けられている。制御部100は、例えばCPU等のプロセッサやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理装置1による後述のウェハ処理のための指令を含むプログラムが格納されている。このプログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部100にインストールされたものであってもよい。上記記憶媒体Hは、一時的なものであっても、非一時的なものであってもよい。
【0028】
さらに、ウェハ処理装置1では、複数(図の例では4つ)の排気口331~334と複数(図の例では4つ)の給気口341~344とが真空搬送室31に設けられている。具体的には、排気口331~334と給気口341~344とが、平面視で、真空搬送室31の外周部に設けられている。
排気口331~334はそれぞれ、真空搬送室31内のガスを排出するために用いられる。
また、給気口341~344はそれぞれ、真空搬送室31内に不活性ガスを導入するために用いられる。不活性ガスは例えば窒素ガスである。
【0029】
排気口331及び給気口341は、平面視で真空搬送室31における第1辺部31aと第2辺部31bが交わる角部に設けられている。
排気口332及び給気口342は、平面視で真空搬送室31における第2辺部31bと第3辺部31cが交わる角部に設けられている。
排気口333及び給気口343は、平面視で真空搬送室31における第3辺部31cと第4辺部31dが交わる角部に設けられている。
排気口334及び給気口344は、平面視で真空搬送室31における第4辺部31dと第1辺部31aが交わる角部に設けられている。
【0030】
また、
図2に示すように、排気口33
1、33
4は、例えば、真空搬送室31における搬送時のウェハWの位置より下側に設けられる。具体的には、排気口33
1、33
4は、例えば、真空搬送室31の底壁に、真空搬送室31内に開口するように設けられる。排気口33
2、33
3についても排気口33
1、33
4と同様である。
【0031】
一方、給気口341、344は、例えば、真空搬送室31における搬送時のウェハWの位置より上側に設けられる。具体的には、給気口341、344は、例えば、真空搬送室31の天壁に、真空搬送室31内に開口するように設けられる。給気口342、343についても給気口341、344と同様である。
【0032】
図3に示すように、排気口33
1~33
4は排気機構50に接続されている。排気機構50は、排気枝管51
1~51
4と排気主管52とを有する。排気枝管51
1~51
4は、排気口33
1~33
4毎に設けられ、その一端が対応する排気口33
1~33
4に接続され、その他端が排気主管52の一端に接続されている。排気主管52の他端はターボ分子ポンプ等からなる真空排気装置53に接続されている。
また、排気枝管51
1~51
4にはそれぞれ、当該排気枝管51
1~51
4を介した(すなわち排気口33
1~33
4を介した)真空搬送室31からの排気の実行/停止を切り換える開閉弁54
1~54
4が設けられている。排気主管52には、排気速度を調整する速度調整弁55が設けられている。
【0033】
一方、給気口341~344はガス供給機構60に接続されている。ガス供給機構60は、供給枝管611~614と供給主管62とを有する。供給枝管611~614はそれぞれ、給気口341~344毎に設けられ、その一端が対応する給気口341~344に接続され、その他端が供給主管62の一端に接続されている。供給主管62の他端は不活性ガスの供給源63に接続されている。
また、供給枝管611~614にはそれぞれ、当該供給枝管611~614を介した(すなわち給気口341~344を介した)真空搬送室31内への不活性ガスの供給の実行/停止を切り換える開閉弁641~644が設けられている。供給主管62には、ガス供給流量を調整する流量調整機構65が設けられている。流量調整機構65として、例えばマスフローコントローラ(MFC)を用いることができる。
【0034】
排気機構50及びガス供給機構60は制御部100により制御される。
【0035】
<ウェハ処理>
次に、以上のように構成されたウェハ処理装置1によるウェハ処理について説明する。なお、以下のウェハ処理は、制御部100の制御の下、行われる。
【0036】
まず、ウェハWが、搬送機構23の搬送アーム23aによって、キャリアCから取り出されると共に、ゲートバルブG1が開状態とされる。その後、ウェハWが、搬送アーム23aによって、ロードロックモジュール12のロードロック室12a内に搬入される。
【0037】
続いて、ゲートバルブG1が閉状態とされてロードロック室12aが密閉され、真空雰囲気とされる。
【0038】
ロードロック室12a内の圧力が所定の圧力以下となると、ゲートバルブG3が開状態とされ、ウェハWが、ウェハ搬送機構32の搬送アーム32aによって、ロードロック室12a内から受け取られ、ロードロック室12aから真空搬送室31へ搬出される。
【0039】
次に、ゲートバルブG3が閉状態とされた後、目的の処理を行う処理モジュールに対するゲートバルブ(ここでは、処理モジュール402に対するゲートバルブG52であるものとする。)が開状態とされる。続いて、搬送アーム32aによって処理モジュール402の真空処理室412にウェハWが搬入される。その後、ゲートバルブG52が閉状態とされ、処理モジュール402においてウェハWに所望の処理が行われる。
【0040】
所望の処理終了後、ウェハWは、真空処理室412内より陽圧(例えば100~200Pa)且つ真空の雰囲気となるよう不活性ガスの供給及び排気が行われた真空搬送室31内を搬送されて、ロードロック室13aに搬入される。このときの搬送形態の詳細については、後述する。
【0041】
そして、キャリアCからロードロック室12aへのウェハWの搬入の時とは逆の手順で、ロードロック室13aからキャリアCへのウェハWの搬出が行われ、一連のウェハ処理が終了する。
【0042】
<本実施形態にかかる搬送形態に至った経緯>
次に、処理モジュール40
1~40
6で処理されたウェハWの真空搬送室31内での搬送形態の例について、説明する。まず、この搬送形態に想到した経緯について説明する。
本発明者らは、本実施形態と異なる
図4に示すようなウェハ処理装置500を用いて試験を行った。
図4のウェハ処理装置500が備える真空搬送モジュール510の真空搬送室511には、本実施形態と異なり、排気口512及び給気口513が1つずつ設けられた。排気口512は、処理モジュール40
1寄りの角部に設けられ、給気口513は、排気口512の対角の位置となるよう、処理モジュール40
5寄りの角部に設けられた。
【0043】
試験では、処理モジュール401及び処理モジュール402のそれぞれを用いてウェハWに対し成膜処理を行った。また、試験では、成膜処理後のウェハWを、真空処理室411内及び真空処理室412内より陽圧且つ真空の雰囲気となるよう不活性ガスの供給及び排気が行われた真空搬送室511とロードロック室12a、13aのいずれかとを介して、キャリアCに戻した。
【0044】
この実験において、処理モジュール401で成膜処理されたウェハWでは、処理モジュール402で成膜処理されたウェハWに比べて、ウェハW上の膜の酸素濃度が高く、すなわち、酸化が進んでいた。特に、並列的な処理として給気口513に近い処理モジュール405等において成膜処理が高温で行われる場合、処理モジュール401で成膜処理されたウェハWでは酸化がより進んでいた。
【0045】
このような結果が得られた理由としては以下が考えられる。
すなわち、成膜処理後のウェハWが通過する真空搬送室511は、真空処理室41
1内及び真空処理室41
2内より陽圧且つ真空の雰囲気となるよう給気口513を介した不活性ガスの供給及び排気口512を介した排気が行われている。そのため、
図4において矢印Nで示すように、給気口513から排気口512に向かう不活性ガスの流れが形成されている。また、真空搬送室511内は真空雰囲気とはいえ雰囲気中に酸素が含まれる。この真空搬送室511内の酸素は、不活性ガスの流れにより移動し、不活性ガスの流れの下流側に集まる。したがって、真空搬送室511内における酸素濃度は、不活性ガスの流れの下流側である処理モジュール40
1に対するゲートバルブG5
1の付近で高くなっている。その結果、上述のように、処理モジュール40
1で成膜処理されたウェハWで酸化が進んだものと考えられる。
【0046】
また、給気口513に近い処理モジュール405において成膜処理が高温で行われる場合、給気口513に近いゲートバルブG55及びこのゲートバルブG55に用いられる樹脂製のOリングも高温となる。なぜならば、処理モジュール405において成膜処理が高温で行われる場合、真空処理室415の内壁への反応生成物の付着抑制等のために真空処理室415を形成する筐体も高温とされ、この筐体によりゲートバルブG55が加熱されるから、である。また、樹脂製のOリングは温度が高くなるにしたがって酸素透過率が上昇する。そのため、給気口513に近い処理モジュール405等において成膜処理が高温で行われる場合、低温で行われる場合に比べて、ゲートバルブG55に用いられる樹脂製のOリングから真空搬送室511内に透過する酸素量が増加する。その結果、真空搬送室511内における酸素濃度が、不活性ガスの流れの下流側である処理モジュール401に対するゲートバルブG51の付近でさらに高くなる。したがって、並列的な処理として給気口513に近い処理モジュール405において成膜処理が高温で行われる場合に、処理モジュール401で成膜処理されたウェハWで特に酸化が進んだものと考えられる。
【0047】
このような知見に基づき、本実施形態では、処理モジュール401~406で処理が行われたウェハWの真空搬送室31内での搬送を、以下で例示するように行う。
【0048】
<搬送形態の例1>
図5~
図8はそれぞれ、処理モジュール40
1、処理モジュール40
2、処理モジュール40
5及び処理モジュール40
6で処理が行われたウェハWの、真空搬送室31内での搬送形態の一例を説明するための図である。後述するように、真空搬送室31内での搬送の際、排気口33
1~33
4のうち一部が排気に用いられ、給気口34
1~34
4についても同様に一部が不活性ガスの供給に用いられる。
図5~
図8では、排気口33
1~33
4及び給気口34
1~34
4のうち、真空搬送室31内でのウェハWの搬送の際に排気やガス供給に用いられているものを白塗りで示し、用いられていないものを黒塗りで示す。また、
図5~
図8では、ゲートバルブG3、G4、G5
1~G5
6のうち、開状態のものを白塗りで示し、閉状態のものを黒塗りで示す。さらに
図5~
図8において、白塗り矢印は真空搬送室31内における不活性ガスの流れを示している。後述の
図9及び
図10においても同様である。
【0049】
<処理モジュール401の場合>
処理モジュール401で処理が行われたウェハWを真空搬送室31内で搬送する際は、まず、処理が行われ真空処理室411から真空搬送室31に搬出された直後のウェハWの位置が、平面視で不活性ガスの流れの上流となるよう、制御部100により排気機構50及びガス供給機構60が制御される。
【0050】
具体的には、例えば、処理モジュール40
1で処理が行われた後、ゲートバルブG5
1を開状態とする前に、
図5に示すように排気口33
3を介した排気及び給気口34
1を介した不活性ガスの供給が行われ真空搬送室31内が真空処理室41
2内より陽圧且つ真空の雰囲気となるよう、排気機構50及びガス供給機構60が制御される。これにより、給気口34
1から排気口33
3に向かう不活性ガスの流れが形成される。すなわち、複数の排気口33
1~33
4のうち、処理モジュール40
1に対するゲートバルブG5
1から遠く対角に位置する排気口33
3と、複数の給気口34
1~34
4のうち、ゲートバルブG5
1から最も近い給気口34
1とが用いられて、真空搬送室31内の不活性ガスの流れが形成される。さらに言い換えると、平面視でウェハ搬送機構32を間に挟んで(具体的には回転台32b)を間に挟んで互いに対向する排気口33
3と給気口34
1とが用いられて、真空搬送室31内の不活性ガスの流れが形成される。
次いで、ゲートバルブG5
1が開状態とされた後、ウェハWが、搬送アーム32aにより、真空処理室41
1から真空搬送室31に搬出されると共に、ゲートバルブG5
1が閉状態とされる。
なお、真空処理室41
1から真空搬送室31に搬出された直後のウェハWの位置とは、具体的には、例えば、真空処理室41
1に対するゲートバルブG5
1にウェハWが対向する位置である。
【0051】
その後、真空搬送室31内における不活性ガスの流れの向きが維持されたまま、ウェハWが、真空搬送室31からロードロック室13aに搬入される。
【0052】
具体的には、排気口333を介した排気及び給気口341を介した不活性ガスの供給が継続された状態で、ウェハWが、搬送アーム32aにより、ゲートバルブG4の前まで搬送される。次に、ゲートバルブG4が開状態とされ、搬送アーム32aによって、真空雰囲気のロードロック室13aに搬入される。そして、ゲートバルブG4が閉状態とされる。
【0053】
<処理モジュール402、405、406の場合>
処理モジュール402、405、406で処理が行われたウェハWを真空搬送室31内で搬送する際も、まず、処理が行われ真空処理室412、415、416から真空搬送室31に搬出された直後のウェハWの位置が、平面視で不活性ガスの流れの上流となるよう、排気機構50及びガス供給機構60が制御される。
【0054】
具体的には、例えば、処理モジュール40
2で処理が行われた後、ゲートバルブG5
2を開状態とする前に、
図6に示すように排気口33
4を介した排気及び給気口34
2を介した不活性ガスの供給が行われ真空搬送室31内が真空処理室41
2内より陽圧且つ真空の雰囲気となるよう、排気機構50及びガス供給機構60が制御される。これにより、給気口34
2から排気口33
4に向かう不活性ガスの流れが形成される。次いで、ゲートバルブG5
2が開状態とされた後、ウェハWが、搬送アーム32aにより、真空処理室41
2から真空搬送室31に搬出されると共に、ゲートバルブG5
2が閉状態とされる。
【0055】
また、処理モジュール40
5で処理が行われた場合は、その後、具体的には、例えば、ゲートバルブG5
5を開状態とする前に、
図7に示すように排気口33
1を介した排気及び給気口34
3を介した不活性ガスの供給が行われ真空搬送室31内が真空処理室41
5内より陽圧且つ真空の雰囲気となるよう、排気機構50及びガス供給機構60が制御される。これにより、給気口34
3から排気口33
1に向かう不活性ガスの流れが形成される。次いで、ゲートバルブG5
5が開状態とされた後、ウェハWが、搬送アーム32aにより、真空処理室41
5から真空搬送室31に搬出されると共に、ゲートバルブG5
5が閉状態とされる。
【0056】
処理モジュール40
6で処理が行われた場合は、その後、具体的には、例えば、ゲートバルブG5
6を開状態とする前に、
図8に示すように排気口33
2を介した排気及び給気口34
4を介した不活性ガスの供給が行われ真空搬送室31内が真空処理室41
6内より陽圧且つ真空の雰囲気となるよう、排気機構50及びガス供給機構60が制御される。これにより、給気口34
4から排気口33
2に向かう不活性ガスの流れが形成される。次いで、ゲートバルブG5
6が開状態とされた後、ウェハWが、搬送アーム32aにより、真空処理室41
6から真空搬送室31に搬出されると共に、ゲートバルブG5
6が閉状態とされる。
【0057】
処理モジュール402、405、406のいずれで処理が行われた場合も、真空処理室412、415、416から真空搬送室31へのウェハWの搬出後は、真空搬送室31内における不活性ガスの流れの向きが維持されたまま、ウェハWが、真空搬送室31からロードロック室13aに搬入される。
【0058】
なお、処理モジュール403で処理が行われたウェハWは、例えば、処理モジュール402で処理が行われた場合と同様に、真空搬送室31内を搬送される。また、処理モジュール404で処理が行われたウェハWは、例えば、処理モジュール405で処理が行われた場合と同様に、真空搬送室31内を搬送される。
【0059】
<搬送形態の例2>
図9は、処理モジュール40
2で処理が行われたウェハWの、真空搬送室31内での搬送形態の他の例を説明するための図である。
【0060】
処理モジュール402で処理が行われたウェハWを真空搬送室31内で搬送する際は、処理後のウェハWが、真空搬送室31内に位置する間、平面視で不活性ガスの流れの上流になり続けるよう、制御部100により排気機構50及びガス供給機構60が制御されてもよい。具体的には、処理後のウェハWが、真空搬送室31内をウェハ搬送機構32により移動中に、不活性ガスの流れが切り替わり、これにより、処理後のウェハWが、真空搬送室31内に位置する間、当該ウェハWの位置が、平面視で不活性ガスの流れの上流になり続けるよう、排気機構50及びガス供給機構60が制御されてもよい。
【0061】
この場合もまず、処理モジュール40
2で処理が行われ真空処理室41
2から真空搬送室31に搬出された直後のウェハWの位置が、平面視で不活性ガスの流れの上流となるよう、制御部100により排気機構50及びガス供給機構60が制御される。
具体的には、例えば、前述と同様に、処理モジュール40
2で処理が行われた後、ゲートバルブG5
2を開状態とする前に、
図9(A)に示すように排気口33
4を介した排気及び給気口34
2を介した不活性ガスの供給が行われ真空搬送室31内が真空処理室41
2内より陽圧且つ真空の雰囲気となるよう、排気機構50及びガス供給機構60が制御される。これにより、給気口34
2から排気口33
4に向かう不活性ガスの流れが形成される。
【0062】
その後、ウェハWが、真空搬送室31内を、ロードロック室12aに対するゲートバルブG3に向けて、搬送アーム32aにより移動される。そして、この移動の間、ウェハWの位置が、平面視で不活性ガスの流れの上流になり続けるよう、移動の途中で、真空搬送室31内の不活性ガスの流れが切り替えられるように、制御部100により排気機構50及びガス供給機構60が制御される。
【0063】
具体的には、例えば、ウェハWが、真空搬送室31における給気口34
2側の領域から給気口34
1側の領域に移動されると、
図9(B)に示すように排気口33
3を介した排気及び給気口34
1を介した不活性ガスの供給に切り替えられよう、排気機構50及びガス供給機構60が制御される。これにより、真空搬送室31内での不活性ガスの流れが、給気口34
1から排気口33
3に向かう流れに切り替えられる。
次いで、真空搬送室31内における不活性ガスの流れの向きが維持されたまま、ウェハWが、ロードロック室12aの近傍まで移動される。その後、ゲートバルブG3が開状態とされ、ウェハWが、真空搬送室31からロードロック室12aに搬入される。
このようにして、処理モジュール40
2での処理後のウェハWが、真空搬送室31内に位置する間、当該処理後のウェハWの位置を、平面視で不活性ガスの流れの上流側の領域内にし続けることができる。
【0064】
なお、処理モジュール401、403~405での処理後のウェハWについても、当該処理後のウェハWが真空搬送室31内に位置する間、当該処理後のウェハWの位置を、平面視で不活性ガスの流れの上流側の領域内内にし続けるようにしてもよい。
【0065】
<本実施形態の主な効果>
以上のように、本実施形態では、処理モジュール401~406のいずれかによる処理後のウェハWを真空搬送室31内で搬送する際、少なくとも、対応する真空処理室から真空搬送室31に搬出された直後の、処理後のウェハWの位置が、平面視で処理ガスの流れの上流側の領域内とされる。上記上流側の領域内は下流側の領域内に比べて、酸素濃度が低い。そのため、少なくとも、温度が高く酸化しやすい上記直後のウェハWが、高酸素濃度の雰囲気に曝されるのを抑制することができる。したがって、処理モジュールによる処理後のウェハWが真空搬送室31で酸化するのを抑制することができる。
また、ゲートバルブG51~G56に対して用いられた樹脂製のOリングでの酸素透過率が高い場合でも、温度が高く酸化しやすい上記直後のウェハWが、高酸素濃度の雰囲気に曝されるのを抑制することができ、処理後のウェハWが真空搬送室31で酸化するのを抑制することができる。具体的には、例えば、処理モジュール401での処理と平行して処理モジュール405において処理が高温で行われゲートバルブG55に対して用いられた樹脂製のOリングでの酸素透過率が高い場合でも、処理モジュール401による処理後のウェハWが真空搬送室31内で酸化するのを抑制することができる。
【0066】
さらに、本実施形態では、上述のように、処理モジュール401~406のいずれかによる処理後のウェハWが、真空搬送室31内に位置する間、当該処理後のウェハWの位置を、平面視で不活性ガスの流れの上流側側の領域内にし続けてもよい。すなわち、本実施形態では、処理モジュール401~406のいずれかによる処理後のウェハWが、真空搬送室31内を移動する際に、真空搬送室31内における相対的に酸素濃度が低く酸化しづらい領域を常に通過するようにしてもよい。この場合、上記処理後のウェハWが酸化するのをさらに抑制することができる。
【0067】
<不活性ガスの流れの他の例>
図10は、真空搬送室31内に形成される不活性ガスの流れの他の例を説明するための図である。
【0068】
以上の例では、処理モジュール40
1からウェハWが搬出される場合、複数の排気口33
1~33
4のうち、処理モジュール40
1に対するゲートバルブG5
1から最も遠い排気口33
3が用いられ、真空搬送室31内の不活性ガスの流れが形成されていた。しかしながら、処理モジュール40
1からウェハWが搬出される場合、複数の排気口33
1~33
4のうち、真空搬送室31内の不活性ガスの流れの形成に用いられるものは、ゲートバルブG5
1から最も近いものでなければ、すなわち遠いものであれば、最も遠い排気口33
3でなくてもよい。具体的には、処理モジュール40
1からウェハWが搬出される場合、真空搬送室31内の不活性ガスの流れの形成には、例えば、
図10に示すように、排気口33
4が用いられてもよい。ただし、処理モジュール40
1からウェハWが搬出される場合、真空搬送室31内の不活性ガスの流れの形成には、ゲートバルブG5
1から遠い排気口33
2~33
4のうち、最も遠い排気口33
3が用いられることが好ましい。
処理モジュール40
2~40
6からウェハWが搬出される場合も同様である。
【0069】
なお、
図5等の例では、平面視四角形状の真空搬送室31の対角線に沿って不活性ガスの流れが形成されている。それに対し、
図10では、平面視四角形状の真空搬送室31の辺部に沿って不活性ガスの流れが形成されており、具体的には、第1辺部31aに沿って給気口34
1から排気口33
4に向かう不活性ガスの流れが形成されている。このように、本開示の技術において、真空搬送室31内における不活性ガスの流れは、平面視四角形状の真空搬送室31の対角線に沿って形成されてもよいし、同真空搬送室31の辺部に沿って形成されてもよい。
【0070】
<給気口及び排気口が設けられる形態の他の例>
以下では、処理モジュール401~406を「処理モジュール40」とまとめて説明し、ゲートバルブG51~G56を「ゲートバルブG5」とまとめて説明する。
【0071】
図11は、給気口及び排気口が設けられる形態の他の例を示す図である。
以上の例では、給気口の数が処理モジュール40の数より少なかった。しかしながら、給気口の数は、処理モジュール40の数と同数であってもよいし、処理モジュール40の数を超えてもよい。例えば、給気口の数が、処理モジュール40の数と同数の場合、給気口は処理モジュール40毎に設けられる。また、
図11に示すように給気口34の数が、処理モジュール40の数を超える場合、例えば、給気口34は、処理モジュール40毎に設けられると共に、ロードロックモジュール12、13それぞれについて設けられる。
図11の例では、給気口34は、真空搬送室31の外周部における、処理モジュール40のゲートバルブG5、ゲートバルブG3、G4のうちの1つと対向する位置に設けられている。
【0072】
また、排気口33の数は、以上の例では、3以上(具体的には4つ)であったが、2つであってもよい。排気口33の数が2つの場合、例えば、1つの排気口33は、真空搬送室31の外周部におけるロードロックモジュール12、13側に設けられ、もう一方の排気口33は、上記外周部におけるロードロックモジュール12、13側とは反対側に設けられる。
【0073】
図12は、排気口が設けられる形態の他の例を示す図である。
さらに、排気口33の数は1つであってもよい。この場合、排気口33は、平面視における真空搬送室31の中心部に設けられる。また、この場合、ウェハ搬送機構32の回転台32bが排気口33に挿通されてもよい。
【0074】
排気口33が真空搬送室31の中心部に設けられる場合、平面視で排気口33と重なる領域をウェハWが通過しないように、真空搬送室31内でのウェハWの搬送が行われてもよい。
【0075】
<他の変形例>
以上の例では、処理モジュール401~406で処理されたウェハWが、真空搬送室31を介してロードロック室12a、13aに搬送されているが、真空搬送室31を介して、別の処理モジュール401~406に搬送されるようにしてもよい。
【0076】
また、以上の例では、ウェハWに成膜処理等の処理を行う処理モジュールの数は4つであったが、複数であれば、4つ以外であってもよい。
さらに、以上の例では、ウェハ搬送機構32が真空搬送室31内を搬送するウェハWの枚数は1枚であったが、ウェハ搬送機構に複数の搬送アームを設け、同時に複数枚(例えば2枚)のウェハWをウェハ搬送機構が搬送するようにしてもよい。この場合、複数枚の
ウェハWについて、真空処理室やロードロック室に対する搬入出を同時に行うようにしてもよい。
【0077】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0078】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0079】
なお、以下のような構成例も本開示の技術的範囲に属する。
(1)真空処理室を有し、前記真空処理室内の基板に対して真空雰囲気下で処理を行う複数の処理モジュール
と、
室内を真空雰囲気の空間と常圧雰囲気の空間との間で切り替えられるように構成されたロードロック室と、
前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室と仕切弁を介して接続される真空搬送室を有し、基板搬送機構により、前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室に対し、前記真空搬送室との間での前記基板の搬入出を真空雰囲気下で行う真空搬送モジュールと、
前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内に不活性ガスを導入する複数の給気口と、
前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内のガスを排出する排気口と、
前記給気口に接続されたガス供給機構及び前記排気口に接続された排気機構を制御し、前記真空搬送室内に前記不活性ガスの流れを形成する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記処理モジュールにより前記処理が行われ前記真空処理室から前記真空搬送室に搬出された直後の前記基板の位置が、平面視で前記不活性ガスの流れの上流になるように、前記ガス供給機構及び前記排気機構を制御する、基板処理装置。
(2)前記制御部は、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板が前記真空搬送室内に位置する間、前記基板の位置が、平面視で前記不活性ガスの流れの上流になり続けるように、前記ガス供給機構及び前記排気機構を制御する、前記(1)に記載の基板処理装置。
(3)前記制御部は、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板が、前記真空搬送室内を前記基板搬送機構により移動中に、前記不活性ガスの流れが切り替わるように、前記ガス供給機構及び前記排気機構を制御する、前記(2)に記載の基板処理装置。
(4)前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板を前記真空処理室から前記真空搬送室に搬出する際、前記複数の前記給気口のうち、当該処理モジュールの前記仕切弁から近い給気口が用いられる、前記(1)~(3)のいずれか1に記載の記載の基板処理装置。
(5)前記排気口を複数備える、前記(1)~(4)のいずれか1に記載の基板処理装置。
(6)前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板を前記真空処理室から前記真空搬送室に搬出する際、前記複数の前記排気口のうち、当該処理モジュールの前記仕切弁から遠い排気口が用いられる、前記(5)に記載の基板処理装置。
(7)平面視で前記基板搬送機構を間に挟んで互い対向する前記給気口及び前記排気口を用いて、前記不活性ガスの流れが形成される、前記(5)または(6)に記載の基板処理装置。
(8)前記不活性ガスは、窒素ガスである、前記(1)~(7)のいずれか1に記載の基板処理装置。
(9)前記排気口は、前記真空搬送室における搬送時の前記基板の位置より下側に設けられる、前記(1)~(8)のいずれか1に記載の基板処理装置。
(10)前記給気口は、前記真空搬送室における搬送時の前記基板の位置より上側に設けられる、前記(1)~(9)のいずれか1に記載の基板処理装置。
(11)基板処理装置内で基板を搬送する基板搬送方法であって、
前記基板処理装置は、
真空処理室を有し、前記真空処理室内の前記基板に対して真空雰囲気下で処理を行う複数の処理モジュールと、
室内を真空雰囲気と常圧雰囲気との間で切り替えられるように構成されたロードロック室と、
前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室と仕切弁を介して接続される真空搬送室を有し、基板搬送機構により、前記真空処理室それぞれ及び前記ロードロック室に対し、前記真空搬送室との間での前記基板の搬入出を真空雰囲気下で行う真空搬送モジュールと、
前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内に不活性ガスを導入する複数の給気口と、
前記真空搬送室に設けられ、前記真空搬送室内のガスを排出する排気口と、を有し、
当該基板搬送方法は、
前記真空搬送室内に前記不活性ガスの流れを形成した状態で、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板を、前記真空搬送室内で搬送する工程を含み、
前記搬送する工程において、前記処理モジュールにより前記処理が行われ前記真空処理室から前記真空搬送室に搬出された直後の前記基板の位置が、平面視で前記不活性ガスの流れの上流とされる、基板搬送方法。
(12)前記搬送する工程において、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板が前記真空搬送室内に位置する間、前記基板の位置が、平面視で前記不活性ガスの流れの上流とされ続ける、前記(11)に記載の基板搬送方法。
(13)前記搬送する工程において、前記処理モジュールにより前記処理が行われた前記基板が、前記真空搬送室内を前記基板搬送機構により移動中に、前記不活性ガスの流れが切り替えられる、前記(12)に記載の基板搬送方法。
(14)前記基板処理装置は、前記排気口を複数備え、
前記搬送する工程における前記不活性ガスの流れの形成に、平面視で前記基板搬送機構を間に挟んで互いに対向する前記給気口及び前記排気口が用いられる、前記(11)~(13)のいずれか1に記載の基板搬送方法。
【符号の説明】
【0080】
1 ウェハ処理装置
12a、13a ロードロック室
30 真空搬送モジュール
31 真空搬送室
32 ウェハ搬送機構
50 排気機構
60 ガス供給機構
100 制御部
331、332、333、334 排気口
341、342、343、344 給気口
401、402、403、404、406、406 処理モジュール
411、412、413、414、416、416 真空処理室
G3、G4、G51、G52、G53、G54、G56、G56 ゲートバルブ
W ウェハ