(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112113
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240813BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240813BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016987
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】新井 裕介
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA05
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB07
4E168CB13
4E168CB23
4E168DA02
4E168DA24
4E168DA45
4E168JA12
(57)【要約】
【課題】被加工物に対するレーザ加工の加工状態をリアルタイムで評価可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】被加工物(ウェーハW)に対してレーザヘッド16を相対移動させつつレーザヘッド16から被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を被加工物に照射して、被加工物のストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域SP1,SP2を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置10において、レーザ加工中に、レーザヘッドにより被加工物の内部に集光されるレーザ光の加工点で発生するプラズマ光を検出する検出センサ(フォトダイオード20,36)と、レーザ加工中に、検出センサの検出信号に基づいてレーザ加工領域の加工状態を評価する評価部48と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつ前記レーザヘッドから前記被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を前記被加工物に照射して、前記被加工物のストリートに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置において、
前記レーザ加工中に、前記レーザヘッドにより前記被加工物の内部に集光される前記レーザ光の加工点で発生するプラズマ光を検出する検出センサと、
前記レーザ加工中に、前記検出センサの検出信号に基づいて前記レーザ加工領域の加工状態を評価する評価部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記検出センサが、前記レーザヘッドとは別体で設けられている請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記レーザヘッドが、
前記レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する対物レンズと、
前記対物レンズに入射する前記レーザ光の光路に配置され、前記被加工物から前記対物レンズに入射した前記プラズマ光の一部を前記光路から分岐させる光分岐素子と、
を備え、
前記検出センサが、前記レーザヘッドに設けられており、前記光分岐素子により分岐された前記プラズマ光を検出する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記レーザヘッドが、
前記レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光する対物レンズと、
前記対物レンズに入射する前記レーザ光の光路に配置され、前記被加工物から前記対物レンズに入射した前記プラズマ光の一部を前記光路から分岐させる光分岐素子と、
を備え、
前記検出センサが、
前記レーザヘッドとは別体で設けられた第1検出センサと、
前記レーザヘッドに設けられており、前記光分岐素子により分岐された前記プラズマ光を検出する第2検出センサと、
を含む請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記被加工物には複数の第1ストリートと複数の第2ストリートとが互いに交差して格子状に形成されており、
前記レーザ加工が、前記第1ストリートごとに前記第1ストリートに沿って前記被加工物の内部に前記レーザ加工領域を形成する第1レーザ加工と、前記第1レーザ加工の完了後に前記第2ストリートごとに前記第2ストリートに沿って前記被加工物の内部に前記レーザ加工領域を形成する第2レーザ加工と、を含み、
前記評価部が、前記第2レーザ加工中に前記第1ストリートと前記第2ストリートとの交点では、前記加工状態として、前記第2レーザ加工による前記レーザ加工領域の形成の有無を評価する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記レーザ光がパルスレーザ光であり、
前記評価部が、前記検出センサの前記検出信号から前記プラズマ光の発光周期、発光強度、発光タイミング、及び発光時間の少なくともいずれか1つを検出した結果に基づいて、前記加工状態の評価を実行する請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザ加工中に前記検出センサの検出信号に基づいて、前記レーザヘッドから出射される前記レーザ光の出射条件を補正して、前記加工点で発生する前記プラズマ光の発光状態を一定に保つ補正制御部を備える請求項1から5のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつ前記レーザヘッドから前記被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を前記被加工物に照射して、前記被加工物のストリートに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置において、
前記レーザ加工中に、前記レーザヘッドにより前記被加工物の内部に集光される前記レーザ光の加工点で発生するプラズマ光を検出する検出センサと、
前記レーザ加工中に、前記検出センサの検出信号に基づいて前記レーザ加工領域の加工状態を評価する評価部と、
前記レーザ加工中に前記検出センサの検出信号に基づいて、前記レーザヘッドから出射される前記レーザ光の出射条件を補正して、前記加工点で発生する前記プラズマ光の発光状態を一定に保つ補正制御部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項9】
被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつ前記レーザヘッドから前記被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を前記被加工物に照射して、前記被加工物のストリートに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工方法において、
前記レーザ加工中に、前記レーザヘッドにより前記被加工物の内部に集光される前記レーザ光の加工点で発生するプラズマ光を検出する検出工程と、
前記レーザ加工中に、前記検出工程で検出した検出信号に基づいて前記レーザ加工領域の加工状態を評価する評価工程と、
を有するレーザ加工方法。
【請求項10】
被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつ前記レーザヘッドから前記被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を前記被加工物に照射して、前記被加工物のストリートに沿って前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工方法において、
前記レーザ加工中に、前記レーザヘッドにより前記被加工物の内部に集光される前記レーザ光の加工点で発生するプラズマ光を検出する検出工程と、
前記レーザ加工中に、前記検出工程で検出した検出信号に基づいて、前記レーザヘッドから出射される前記レーザ光の出射条件を補正して、前記加工点で発生する前記プラズマ光の発光状態を一定に保つ補正制御工程と、
を有するレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物のストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物であるシリコンウェーハ(以下、ウェーハと略す)は、複数のデバイスが格子状のストリート(加工ライン、切断予定ラインともいう)によって格子状に区画されており、ウェーハをストリートに沿って割断(分割)することにより個々のデバイスが製造される。ウェーハを複数のデバイス(チップ)に割断する前工程として、レーザ加工装置によるウェーハのレーザ加工が実行される。
【0003】
例えば特許文献1及び特許文献2に記載のレーザ加工装置は、ウェーハの内部に集光点を合わせた状態でレーザ光をストリートに沿って照射して、ストリートに沿ってウェーハの内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工(内部集光加工ともいう)を実行する。これにより、レーザ加工領域からウェーハの厚さ方向に亀裂(クラックともいう)が伸展するので、後工程の割断工程においてウェーハが各デバイス(チップ)に割断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-107334号公報
【特許文献2】特開2016-21519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2に記載のレーザ加工装置によるレーザ加工によってウェーハの内部にレーザ加工領域を形成した場合に、このレーザ加工領域から伸展する亀裂の伸展状態(長さ等)が適正であれば、後工程の割断工程においてウェーハが各デバイス(チップ)に適正に割断される。一方、レーザ加工の条件出しが不十分であると、レーザ加工領域からの亀裂の伸展が弱まり、割断後のカットラインが蛇行したり、或いはチッピングが発生したりする。特に格子状のストリートの交点では、先のレーザ加工により形成されたレーザ加工領域から伸展した亀裂によって後のレーザ加工時にレーザ光が散乱等されることで、レーザ加工領域からの亀裂の伸展が弱まり易い。また、レーザ光の強度が強すぎると、レーザ加工で発生した残渣がレーザヘッドの対物レンズに付着してレンズ汚れが発生する虞がある。
【0006】
そこで、亀裂の伸展状態が適正になるようにレーザ加工の条件出しを実行する必要がある。この際に従来では、サンプルウェーハに対してレーザ加工を実行して、このサンプルウェーハを割断して断面の亀裂を実際に確認する必要があった。或いは従来では、ウェーハの割断後に各デバイスを画像検査装置で検査することで、レーザ加工の加工状態(亀裂伸展状態)の異常の有無を確認していた。このように従来では、製品ウェーハのレーザ加工中にその加工状態の変化をリアルタイムで検出することができなかった。
【0007】
また、レーザ加工装置で多数のウェーハのレーザ加工を実行する際に、ウェーハの厚み異常及びレーザ加工装置によるレーザ加工の加工高さ制御異常などが原因でレーザ加工の加工不良が発生することがある。このような加工不良がレーザ加工時に発生すると、レーザ光の焦点がウェーハ内部から外れることでウェーハ内部にレーザ加工領域が生成されない場合ある。この場合には、後工程においてウェーハを分断して個片化することができず(ウェーハの未分断)、デバイスを破棄していたのでデバイス量産加工の歩留まりが低下してしまう。このため、製品ウェーハのレーザ加工中にその加工状態(ウェーハ内部にレーザ加工領域が形成されているか否か)をリアルタイムで検出することが求められている。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被加工物に対するレーザ加工の加工状態をリアルタイムで評価可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工装置は、被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつレーザヘッドから被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を被加工物に照射して、被加工物のストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置において、レーザ加工中に、レーザヘッドにより被加工物の内部に集光されるレーザ光の加工点で発生するプラズマ光を検出する検出センサと、レーザ加工中に、検出センサの検出信号に基づいてレーザ加工領域の加工状態を評価する評価部と、を備える。
【0010】
このレーザ加工装置によれば、レーザ加工中にレーザ加工領域の加工状態をリアルタイムで評価可能である。
【0011】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、検出センサが、レーザヘッドとは別体で設けられている。これにより、被加工物の内部で発生したプラズマ光を検出センサで直接検出することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光を被加工物の内部に集光する対物レンズと、対物レンズに入射するレーザ光の光路に配置され、被加工物から対物レンズに入射したプラズマ光の一部を光路から分岐させる光分岐素子と、を備え、検出センサが、レーザヘッドに設けられており、光分岐素子により分岐されたプラズマ光を検出する。被加工物に対するレーザヘッドのワークディスタンスが十分に確保できない場合でも被加工物の内部で発生したプラズマ光を検出センサで検出することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光を被加工物の内部に集光する対物レンズと、対物レンズに入射するレーザ光の光路に配置され、被加工物から対物レンズに入射したプラズマ光の一部を光路から分岐させる光分岐素子と、を備え、検出センサが、レーザヘッドとは別体で設けられた第1検出センサと、レーザヘッドに設けられており、光分岐素子により分岐されたプラズマ光を検出する第2検出センサと、を含む。これにより、被加工物の内部で発生したプラズマ光を2種類の検出センサで検出することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、被加工物には複数の第1ストリートと複数の第2ストリートとが互いに交差して格子状に形成されており、レーザ加工が、第1ストリートごとに第1ストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成する第1レーザ加工と、第1レーザ加工の完了後に第2ストリートごとに第2ストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成する第2レーザ加工と、を含み、評価部が、第2レーザ加工中に第1ストリートと第2ストリートとの交点では、加工状態として、第2レーザ加工によるレーザ加工領域の形成の有無を評価する。これにより、第1ストリートと第2ストリートとの交点において第2レーザ加工によるレーザ加工領域の形成の有無を評価可能である。
【0015】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザ光がパルスレーザ光であり、評価部が、検出センサの検出信号からプラズマ光の発光周期、発光強度、発光タイミング、及び発光時間の少なくともいずれか1つを検出した結果に基づいて、加工状態の評価を実行する。
【0016】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザ加工中に検出センサの検出信号に基づいて、レーザヘッドから出射されるレーザ光の出射条件を補正して、加工点で発生するプラズマ光の発光状態を一定に保つ補正制御部を備える。これにより、レーザ加工中にレーザ光の出射条件をリアルタイムで補正することで、レーザ加工領域の加工状態を一定に保つことができる。
【0017】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工装置は、被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつレーザヘッドから被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を被加工物に照射して、被加工物のストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置において、レーザ加工中に、レーザヘッドにより被加工物の内部に集光されるレーザ光の加工点で発生するプラズマ光を検出する検出センサと、レーザ加工中に、検出センサの検出信号に基づいてレーザ加工領域の加工状態を評価する評価部と、レーザ加工中に検出センサの検出信号に基づいて、レーザヘッドから出射されるレーザ光の出射条件を補正して、加工点で発生するプラズマ光の発光状態を一定に保つ補正制御部と、を備える。
【0018】
このレーザ加工装置によれば、レーザ加工中にレーザ光の出射条件をリアルタイムで補正することで、レーザ加工領域の加工状態を一定に保つことができる。
【0019】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工方法は、被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつレーザヘッドから被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を被加工物に照射して、被加工物のストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工方法において、レーザ加工中に、レーザヘッドにより被加工物の内部に集光されるレーザ光の加工点で発生するプラズマ光を検出する検出工程と、レーザ加工中に、検出工程で検出した検出信号に基づいてレーザ加工領域の加工状態を評価する評価工程と、を有する。
【0020】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工方法は、被加工物に対してレーザヘッドを相対移動させつつレーザヘッドから被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を被加工物に照射して、被加工物のストリートに沿って被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工方法において、レーザ加工中に、レーザヘッドにより被加工物の内部に集光されるレーザ光の加工点で発生するプラズマ光を検出する検出工程と、レーザ加工中に、検出工程で検出した検出信号に基づいて、レーザヘッドから出射されるレーザ光の出射条件を補正して、加工点で発生するプラズマ光の発光状態を一定に保つ補正制御工程と、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、被加工物に対するレーザ加工の加工状態をリアルタイムで評価することができる。また、ウェーハ内部にレーザ加工領域が形成されているか否かをリアルタイムで確認することができるので、デバイス量産加工の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態のレーザ加工装置の概略図である。
【
図2】レーザ加工装置による加工対象のウェーハの平面図である。
【
図3】
図2に示したウェーハの一部の断面図である。
【
図4】第1実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】ウェーハの内部へのレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
【
図6】ウェーハの内部へのレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
【
図7】ウェーハの内部への複数層のレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
【
図8】ウェーハの内部への複数層のレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
【
図9】第1実施形態のレーザ加工装置によるウェーハのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図9中のステップS5の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】ストリートCH1に対する2層のレーザ加工後に交点近傍で実行されるストリートCH2に対する1層目のレーザ加工を説明するための説明図である。
【
図12】ストリートCH1に対する2層のレーザ加工後に交点近傍で実行されるストリートCH2に対する2層目のレーザ加工を説明するための説明図である。
【
図13】ストリートCH1に対する2層のレーザ加工後に交点近傍で実行されるストリートCH2に対する2層目のレーザ加工を説明するための説明図である。
【
図14】ストリートCH1に対する2層のレーザ加工後に交点近傍で実行されるストリートCH2に対する2層目のレーザ加工を説明するための説明図である。
【
図15】第2実施形態のレーザ加工装置のブロック図である。
【
図16】第3実施形態のレーザ加工装置を示した図である。
【
図17】第4実施形態のレーザ加工装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のレーザ加工装置10の概略図である。
図1に示すように、レーザ加工装置10は、被加工物であるウェーハW(例えばシリコンウェーハ)を複数のチップ4(
図2参照)に割断する割断プロセスの前工程として、ウェーハWに対してレーザ加工(内部集光加工)を施す。なお、図中のXYZ方向は互いに直交し、このうちX方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(ウェーハWの厚み方向)である。またθ方向は、Z方向を回転軸とする回転方向である。
【0024】
図2は、レーザ加工装置10による加工対象のウェーハWの平面図である。
図3は、
図2に示したウェーハWの一部の断面図である。
図2及び
図3に示すように、ウェーハWは製品ウェーハである。このウェーハWには、複数のストリートCH1と複数のストリートCH2とが互いに交差して格子状に形成されている。これにより、ウェーハWは、各ストリートCH1,CH2により複数の領域に区画されている。この区画された各領域にはチップ4を構成するデバイス層6が設けられている。なお、ストリートCH1は本発明の第1ストリートに相当し、ストリートCH2は本発明の第2ストリートに相当する。また、
図2中の符号CRはストリートCH1とストリートCH2との交点である。
【0025】
レーザ加工装置10は、レーザ加工により、最初にストリートCH1ごとにストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1を形成し、次いでストリートCH2ごとにストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P2を形成する。
【0026】
図1に戻って、レーザ加工装置10は、テーブル12(XYZθステージともいう)と、移動機構14と、レーザヘッド16と、赤外線カメラ18と、フォトダイオード20と、モニタ22と、制御装置24と、を備える。
【0027】
テーブル12は、不図示のバックグラインドテープ等を介して、ウェーハWのデバイス層6が設けられている側の表面を吸着保持するチャックテーブルである。これにより、ウェーハWは、その表面とは反対側の裏面が後述のレーザヘッド16と対向するようにテーブル12に保持される。
【0028】
移動機構14は、アクチュエータ及びモータ等により構成されており、後述の制御装置24の下、テーブル12をXYZ方向に移動させたり、或いはテーブル12をθ方向に回転させたりする。移動機構14は、レーザ加工時にはテーブル12をX方向(加工送り方向)に移動させる。なお、移動機構14は、テーブル12及びウェーハWに対してレーザヘッド16をXYZθ方向に相対移動可能であれば特に限定されず、例えば、レーザヘッド16を移動させてもよい。
【0029】
レーザヘッド16は、テーブル12のZ方向上方側の位置(ウェーハWの裏面に対向する位置)に配置されており、後述の制御装置24により制御される。このレーザヘッド16は、ウェーハWの内部に集光点を合わせてレーザ光LをウェーハWに向けて照射することで、ストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1を形成すると共に、ストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P2を形成する。
【0030】
レーザヘッド16は、レーザ光源30と、対物レンズ32と、ハーフミラー34と、フォトダイオード36と、を備える。
【0031】
レーザ光源30は、レーザ加工用のレーザ光L(パルスレーザ光)を出射する。このレーザ光源30及びレーザ光Lの条件としては、例えば、レーザ光源30が半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ、波長が波長:1.1μm、レーザ光スポット断面積が3.14×10-8cm2、発振形態がQスイッチパルス、繰り返し周波数が80~120kHz、パルス幅が180~280ns、出力が8Wである。
【0032】
対物レンズ32は、レーザ光源30から出射されたレーザ光LをウェーハWの内部に集光する。これにより、レーザ加工によってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1,P2が形成される。また、レーザ加工の加工点SPでは、プルーム(蒸気)が発生して、このプルームがレーザ光Lで加熱されることでプラズマ光LPが発生する。
【0033】
ハーフミラー34は、本発明の光分岐素子に相当するものであり、レーザ光源30と対物レンズ32との間のレーザ光Lの光路OP1、すなわち対物レンズ32に入射するレーザ光Lの光路OP1に配置されている。このハーフミラー34は、光路OP1から光路OP2を分岐させる。これにより、ハーフミラー34は、ウェーハWの内部から対物レンズ32を介して入射するプラズマ光LPの一部を光路OP2に分岐させることで、プラズマ光LPをフォトダイオード36に入射させる。なお、ハーフミラー34の代わりにプリズム等の公知の光分岐素子(ビームスプリッタ)を用いてもよい。
【0034】
フォトダイオード36は、本発明の検出センサ及び第2検出センサに相当するものであり、光路OP2上に配置されている。このフォトダイオード36は、ハーフミラー34により分岐されたプラズマ光LPの一部を検出(光電変換)して、プラズマ光LPの検出信号を後述の制御装置24へ出力する。
【0035】
赤外線カメラ18は、レーザヘッド16と一体(別体でも可)に設けられている。この赤外線カメラ18は、ウェーハWのレーザ加工前にはウェーハWに形成されているアライメント基準を撮影して、このアライメント基準の撮影画像データを制御装置24へ出力する。ここでいうアライメント基準とは、レーザ加工装置10がウェーハWのストリートCH1,CH2の位置を認識するための基準であり、例えば、ストリートCH1,CH2、或いはアライメントマーク(図示は省略)等の公知の基準が用いられる。なお、アライメント基準は、赤外線カメラ18で撮影可能であれば、ウェーハWの内部、表面、及び裏面等の任意の位置に設けられていてもよい。
【0036】
フォトダイオード20は、本発明の検出センサ及び第1検出センサに相当するものであり、レーザヘッド16とは別体に設けられている。フォトダイオード20は、既述のフォトダイオード36とは異なり、ウェーハWの内部で発生したプラズマ光LPを直接検出(対物レンズ32等を介さずに検出)して、このプラズマ光LPの検出信号を後述の制御装置24へ出力する。なお、フォトダイオード20の位置及び角度(姿勢)は、プラズマ光LPが検出できるように予め調整されている。また、フォトダイオード20を複数設けてもよい。
【0037】
モニタ22は、赤外線カメラ18から入力された撮影画像データ、及びレーザ加工装置10の各設定画面等を表示する。
【0038】
制御装置24は、移動機構14、レーザヘッド16(レーザ光源30、フォトダイオード36)、赤外線カメラ18、及びフォトダイオード20などのレーザ加工装置10の各部の動作を統括的に制御する。これにより、制御装置24は、ウェーハWに対するレーザヘッド16のアライメント、ストリートCH1,CH2ごとのレーザ加工、レーザ加工領域P1,P2の加工状態の評価、及びレーザ光源30からのレーザ光Lの出射条件の補正などを制御する。
【0039】
図4は、第1実施形態の制御装置24の機能ブロック図である。
図4に示すように、制御装置24には、既述の移動機構14、レーザヘッド16(レーザ光源30、フォトダイオード36)、赤外線カメラ18、及びフォトダイオード20の他に、操作部27及び記憶部28が接続されている。
【0040】
操作部27は、公知のキーボード、マウス、及び操作ボタン等が用いられ、オペレータによる各種操作の入力を受け付ける。
【0041】
記憶部28には、制御装置24の制御プログラム(図示は省略)の他に、評価用データテーブル54及び補正用データテーブル56が記憶されている。評価用データテーブル54は、後述の評価部48によるレーザ加工の加工状態の評価に用いられる。補正用データテーブル56は、後述の補正制御部50が実行するレーザ光源30からのレーザ光Lの出射条件の補正に用いられる。
【0042】
制御装置24は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置により構成され、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置24の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0043】
制御装置24は、不図示の制御プログラムを実行することで、検出制御部40、レーザ加工制御部42、信号取得部44、加工位置判別部46、評価部48、補正制御部50、及び表示制御部52として機能する。以下、本実施形態において「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0044】
検出制御部40は、レーザ加工装置10の各部を制御して、テーブル12に保持されているウェーハWのストリートCH1,CH2の位置(XY面内での向きを含む)を検出するアライメント検出を実行する。
【0045】
最初に検出制御部40は、移動機構14及び赤外線カメラ18を制御して、ウェーハWのアライメント基準の撮影画像データを取得(撮影)する。例えば検出制御部40は、ウェーハWの公知の設計情報に基づいて移動機構14を駆動して、赤外線カメラ18をウェーハWのアライメント基準を撮影可能な位置に相対移動させる。この移動後に検出制御部40は、赤外線カメラ18にアライメント基準を含むウェーハWの撮影を実行させる。これにより、赤外線カメラ18によりウェーハWのアライメント基準の撮影画像データが取得され、この撮影画像データが赤外線カメラ18から検出制御部40に出力される。
【0046】
次いで、検出制御部40は、赤外線カメラ18から入力された撮影画像データからアライメント基準を公知の画像認識法で検出することにより、ウェーハWの各ストリートCH1,CH2の位置を検出する。
【0047】
レーザ加工制御部42は、移動機構14及びレーザヘッド16を制御して、ウェーハWのストリートCH1,CH2ごとにレーザ加工を実行する。このレーザ加工は、各ストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1(
図5参照)を形成する第1レーザ加工と、各ストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P2(
図5参照)を形成する第2レーザ加工と、を含む。
【0048】
図5及び
図6は、ウェーハWの内部へのレーザ加工領域P1,P2の形成を説明するための説明図である。
図5及び
図6に示すように、レーザ加工制御部42は、検出制御部40によるアライメント検出結果に基づいて、移動機構14を駆動してテーブル12をθ方向に回転させることにより、互いに交差するストリートCH1,CH2のうちのストリートCH1をX方向(加工送り方向)に平行にする。次いで、レーザ加工制御部42は、検出制御部40によるアライメント検出結果に基づいて、移動機構14を駆動してテーブル12の位置調整を行うことで、レーザヘッド16の光軸を第1番目のストリートCH1の一端に位置合わせするアライメントを実行する。
【0049】
レーザ加工制御部42は、上述のアライメント完了後、レーザヘッド16を制御して、レーザ光LをウェーハWの裏面から所定の深さ位置に集光させることで、この集光点にレーザ加工領域P1を形成する。
【0050】
次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動して、テーブル12をX方向に移動させる。これにより、ウェーハWの内部にレーザ光Lを集光させた状態で、ウェーハWに対してレーザヘッド16がX方向に相対移動される、すなわち第1番目のストリートCH1に沿ってレーザヘッド16がウェーハWに対してX方向に相対移動される。その結果、第1番目のストリートCH1に沿ってウェーハWの内部に1層(単層)のレーザ加工領域P1が形成される。また、レーザ加工領域P1が形成されると、このレーザ加工領域P1を起点としてウェーハWの厚さ方向(Z方向)に亀裂Kが発生する。
【0051】
レーザ加工制御部42は、レーザ加工領域P1(レーザ加工領域P2)の層数が単層である場合には、第1番目のストリートCH1に対応するレーザ加工領域P1の形成後、移動機構14を駆動して、レーザヘッド16の光軸を第2番目のストリートCH1の一端に位置合わせ(アライメント)する。そして、レーザ加工制御部42は、レーザヘッド16によりウェーハWの内部にレーザ光Lを集光させた状態で、移動機構14を駆動してテーブル12をX方向に移動させる。これにより、第2番目のストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1が形成される。
【0052】
以下同様に、全てのストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P1が形成され、第1レーザ加工が完了する。レーザ加工制御部42は、第1レーザ加工の完了後、移動機構14を駆動して、テーブル12を90°回転させることにより、各ストリートCH2をX方向に平行にする。そして、レーザ加工制御部42は、既述の第1レーザ加工の同様に、移動機構14及びレーザヘッド16等を制御して、全てのストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域P2を形成する第2レーザ加工を実行する。
【0053】
図7及び
図8は、ウェーハWの内部への複数層のレーザ加工領域P1,P2の形成を説明するための説明図である。
図7及び
図8に示すように、レーザ加工制御部42は、ウェーハWが厚い場合には、ストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの内部に複数層(2層以上)のレーザ加工領域P1,P2の形成を実行する。この場合には、レーザ加工制御部42は、ストリートCH1ごとに複数層のレーザ加工領域P1を連続して実行すると共に、ストリートCH2ごとに複数層のレーザ加工領域P2を連続して実行する。
【0054】
具体的にレーザ加工制御部42は、既述の
図5及び
図6で説明したように第1番目のストリートCH1に対応する1層目のレーザ加工領域P1の形成後、レーザヘッド16から出射されるレーザ光Lの集光位置をウェーハWの内部で1層目のレーザ加工領域P1よりも浅い位置(Z方向上方側の位置)に変更する。次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動してテーブル12をX方向に移動させることで、2層目のレーザ加工領域P1の形成を繰り返し実行する。これにより、第1番目のストリートCH1に沿って2層目のレーザ加工領域P1が形成される。以下同様に、3層目以降のレーザ加工領域P1を第1番目のストリートCH1に沿って形成可能である。
【0055】
そして、レーザ加工制御部42は、残りのストリートCH1,CH2についても同様に、ストリートCH1,CH2ごとに複数層のレーザ加工領域P1,P2を形成する。
【0056】
本実施形態のレーザ加工装置10は、ウェーハWに対するレーザ加工を実行する場合にはレーザ加工領域P1,P2の加工状態をリアルタイムに評価する。ここでレーザ加工領域P1,P2の加工状態の評価とは、ウェーハWをストリートCH1,CH2に沿って割断する際の起点となる亀裂K(レーザ加工領域P1,P2)が適正に形成された否かを評価することである。なお、この加工状態の評価には、レーザ加工領域P1,P2から伸展する亀裂Kの伸展状態を評価することも含まれる。
【0057】
具体的にはレーザ加工装置10は、レーザ加工中にウェーハWの内部の加工点SPで発生するプラズマ光LPをリアルタイムで検出して解析することでレーザ加工領域P1,P2の加工状態をリアルタイムで評価する。また、レーザ加工装置10は、プラズマ光LPをリアルタイムで検出した結果に基づいて、レーザ光源30から出射されるレーザ光Lの出射条件をリアルタイムで補正する。
【0058】
信号取得部44は、レーザ加工中にフォトダイオード20,36を作動させて、フォトダイオード20,36から出力されるプラズマ光LPの検出信号であるプラズマ光検出信号を評価部48及び補正制御部50へ繰り返し(連続的に)出力する。なお、本実施形態ではレーザ加工用のレーザ光Lとしてパルスレーザ光を用いるので、プラズマ光検出信号にはプラズマ光LPを示す信号が周期的に発生する。
【0059】
加工位置判別部46は、レーザ加工中に移動機構14及びレーザヘッド16を監視することで、XY面内でのレーザヘッド16のレーザ光Lの集光位置と、Z方向におけるレーザ光Lの集光位置と、を繰り返し取得する。これにより、加工位置判別部46は、レーザ加工の加工位置[XY面内での位置、Z方向の加工深さ位置(加工高さ位置)]をリアルタイムで判別可能である。また、加工位置判別部46は、第2レーザ加工中にレーザ光Lの集光位置(加工点SP)が既述のストリートCH1とストリートCH2との交点CR(
図2参照)に位置しているか否かを判別可能である。そして、加工位置判別部46は、レーザ加工の加工位置を判別するごとに、この加工位置の判別結果を評価部48及び補正制御部50へ逐次出力する。
【0060】
評価部48は、レーザ加工中に信号取得部44からフォトダイオード20,36ごとのプラズマ光検出信号が繰り返し入力されるごとに、これらプラズマ光検出信号を解析した結果に基づいてレーザ加工領域P1,P2の加工状態を評価する。具体的には評価部48は、プラズマ光検出信号の解析結果に基づいて評価用データテーブル54を参照することで、レーザ加工領域P1,P2の加工状態を評価する。
【0061】
プラズマ光検出信号の解析結果には、例えば、プラズマ光検出信号を解析して得られるプラズマ光LPの発光強度、発光タイミング、発光時間(期間、長さ)、及びプラズマ発光周期の少なくともいずれか1つが含まれる。また、この解析結果に、プラズマ光検出信号から検出可能なプラズマ光LPの形状が含まれてもよい。さらに、フォトダイオード20,36の代わりに、プラズマ光LPの波長情報(色情報)を取得可能な撮像手段でプラズマ光LPを検出した場合には、プラズマ光検出信号の解析結果にプラズマ光LPの波長情報が含まれてもよい。
【0062】
評価用データテーブル54には、レーザ加工領域P1,P2の加工状態を評価するための評価用データが予め実験又はシミュレーション等で求められて記憶されている。この評価用データは、既述のプラズマ光検出信号の解析結果と、レーザ加工領域P1,P2の加工状態の評価結果(例えばレーザ加工領域P1,P2の生成状態及び加工効率)との組み合わせを複数記憶している。これにより、評価部48は、信号取得部44からフォトダイオード20,36ごとのプラズマ光検出信号が繰り返し入力されるごとに、これらプラズマ光検出信号を解析した解析結果に基づいて評価用データテーブル54を参照することで、レーザ加工領域P1,P2の加工状態を評価可能である。その結果、レーザ加工領域P1,P2が適正に生成されているか否かを評価可能である。
【0063】
特に第2レーザ加工中にストリートCH2に沿った第2レーザ加工の加工点SPが交点CRに達すると、第1レーザ加工で先に交点CRに形成されたレーザ加工領域P1によりレーザ光Lが散乱等されることで、レーザ加工領域P2及び亀裂Kが適正に形成されない場合がある。この場合には、交点CRにおいてレーザ加工領域P1から伸展した亀裂Kとレーザ加工領域P2から伸展した亀裂Kとの接続状態が不十分になり、交点CRでの割断が正常に実行されないおそれがある。そこで評価部48は、加工位置判別部46から入力される加工位置の結果に基づいて第2レーザ加工の加工点SPが交点CRに位置する場合には、レーザ加工領域P2が適正に形成されているか否かを評価する。
【0064】
補正制御部50は、レーザ加工中にレーザ光源30から出射されるレーザ光Lの出射条件を必要に応じて補正する。レーザ光Lの出射条件には、レーザ光Lのパワー、レーザ光Lの周波数、及びレーザヘッド16内の光学系の光学条件の少なくともいずれか1つが含まれる。
【0065】
具体的には補正制御部50は、レーザ加工中に信号取得部44及び加工位置判別部46からプラズマ光検出信号と加工位置の判別結果とが入力されるごとに、レーザ加工(加工点SP)のZ方向の加工深さ位置の判別と、加工深さ位置に対応したプラズマ光LPの発光状態の判別と、レーザ光Lの出射条件の補正と、を実行する。
【0066】
最初に補正制御部50は、レーザ加工中に加工位置判別部46から繰り返し入力される加工位置の判別結果に基づいて、レーザ加工(加工点SP)のZ方向の加工深さ位置(以下、単に加工深さ位置という)をリアルタイムで判別する。そして、補正制御部50は、加工深さ位置の判別結果に基づいて、補正用データテーブル56を参照することで、加工点SPの加工深さ位置に対応したプラズマ光LPの発光状態を判別する。
【0067】
補正用データテーブル56には、予め実験又はシミュレーション等で求められた、加工点SPの加工深さ位置と、この加工深さ位置に対応したプラズマ光LPの発光状態との組み合わせが複数記憶されている。ここでプラズマ光LPの発光状態には、既述のプラズマ光検出信号の解析結果と同様の項目、例えばプラズマ光LPの発光強度、発光タイミング、発光時間、発光周期、及び形状の少なくともいずれか1つが含まれる。これにより、補正制御部50は、加工深さ位置の判別結果に基づいて補正用データテーブル56を参照することで、加工深さ位置に対応したプラズマ光LPの発光状態(以下、基準発光状態という)を判別可能である。
【0068】
次いで、補正制御部50は、レーザ加工中に信号取得部44からフォトダイオード20,36のプラズマ光検出信号が繰り返し入力されるごとに、これらプラズマ光検出信号と、先の基準発光状態の判別結果とに基づいて、レーザ光源30から出射されるレーザ光Lの出射条件を必要に応じて補正する。具体的には補正制御部50は、プラズマ光検出信号を解析して得られる現在の加工点SPでのプラズマ光LPの発光状態が基準発光状態で一定に保たれるように、レーザ加工制御部42を介してレーザ光源30からのレーザ光Lの出射条件を補正する。
【0069】
このように補正制御部50は、レーザ加工中のプラズマ光検出信号の解析結果と加工深さ位置の判別結果とに基づいて、レーザ光源30のレーザ光Lの出射条件をリアルタイムで補正する所謂フィードバック制御を実行する。ここで、加工点SPでのプラズマ光LPの発光状態と、レーザ加工領域P1,P2の加工状態(生成状態及び加工効率)との間には一定の関係が成り立つ。このため、上述のフィードバック制御によって加工点SPの加工深さ位置ごとにレーザ加工領域P1,P2の加工状態が一定に保たれる。
【0070】
表示制御部52は、赤外線カメラ18から入力された撮影画像データ、及びレーザ加工装置10の各設定画面等をモニタ22に表示させる。また、表示制御部52は、ウェーハWのレーザ加工中において、評価部48によるレーザ加工領域P1,P2の加工状態の評価結果に基づいて、レーザ加工領域P1,P2の加工状態に異常が発生した場合には、その旨を示す警告情報58をモニタ22に表示させる。
【0071】
なお、レーザ加工制御部42は、評価部48によるレーザ加工領域P1,P2の加工状態の評価結果に基づいて、この加工状態に異常が発生した場合にはウェーハWのレーザ加工を停止する。
【0072】
[第1実施形態の作用]
図9は、本発明のレーザ加工方法に係る第1実施形態のレーザ加工装置10によるウェーハWのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
図10は、
図9中のステップS5の処理(評価部48による評価処理及び補正制御部50による補正処理)の流れを示すフローチャートである。
【0073】
図9に示すように、加工対象のウェーハW(製品ウェーハ)がテーブル12に吸着保持されると、制御装置24の検出制御部40が作動する。検出制御部40は、移動機構14及び赤外線カメラ18を制御して、ウェーハWのアライメント基準の撮影画像データを取得する。そして、検出制御部40は、この撮影画像データを解析して、ウェーハWの各ストリートCH1,CH2の位置を検出するアライメント検出を行う(ステップS1)。
【0074】
アライメント検出が完了するとレーザ加工制御部42が作動して、ストリートCH1のレーザ加工処理を開始する。
【0075】
最初にレーザ加工制御部42は、検出制御部40によるアライメント検出結果に基づき、移動機構14を駆動して、レーザヘッド16の光軸を第1番目のストリートCH1の一端に位置合わせするアライメントを実行する(ステップS2)。このアライメントが完了すると、レーザ加工制御部42は、レーザヘッド16を制御して、レーザ光LをウェーハWの裏面から所定の深さ位置に集光させる。これにより、第1レーザ加工が開始されて、ウェーハWの内部にレーザ加工領域P1が形成される(ステップS3)。
【0076】
次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動して、テーブル12をX方向に移動させることで、ウェーハWに対してレーザヘッド16をX方向に相対移動させる(ステップS4)。これにより、ウェーハWの内部に第1番目のストリートCH1に沿ったレーザ加工領域P1が形成される。なお、レーザ加工制御部42は、ウェーハWが厚い場合には、移動機構14及びレーザヘッド16を制御して、第1番目のストリートCH1に沿った複数層のレーザ加工領域P1を形成する。
【0077】
ウェーハWの第1レーザ加工が開始されると、制御装置24の信号取得部44、加工位置判別部46、評価部48、及び補正制御部50が作動する。これにより、第1レーザ加工中にレーザ加工領域P1の加工状態の評価処理と、レーザ光源30から出射されるレーザ光Lの出射条件の補正処理と、が実行される(ステップS6)。
【0078】
図10に示すように、信号取得部44が、第1レーザ加工中にフォトダイオード20,36を作動させて、フォトダイオード20,36からのプラズマ光検出信号の取得を繰り返し実行する(ステップS10、本発明の検出工程に相当)。また同時に加工位置判別部46が、第1レーザ加工中に移動機構14及びレーザヘッド16を監視することで、第1レーザ加工の加工位置の判別と、評価部48及び補正制御部50への加工位置の判別結果の出力と、を繰り返し実行する(ステップS10)。これにより、第1レーザ加工中に、加工点SPで発生するプラズマ光LPと、加工位置とがリアルタイムで検出される。
【0079】
評価部48は、信号取得部44から入力されるプラズマ光検出信号を解析した解析結果に基づいて評価用データテーブル54を参照して、レーザ加工領域P1の加工状態(生成状態及び加工効率)をリアルタイムに評価する(ステップS11,S12、本発明の評価工程に相当)。この際に評価部48は、加工位置判別部46から入力される加工位置の判別結果に基づいて、加工位置ごとのレーザ加工領域P1の加工状態を評価可能である。
【0080】
表示制御部52は、評価部48によるレーザ加工領域P1の加工状態の評価に基づいて、レーザ加工領域P1の加工状態に異常が発生した場合には(ステップS13でYES)、その旨を示す警告情報58をモニタ22に表示させる(ステップS14)。これにより、オペレータに対して異常の発生を報知することができる。なお、この場合には、レーザ加工制御部42がウェーハWの第1レーザ加工を停止させる。
【0081】
一方、補正制御部50は、加工位置判別部46から入力される加工位置の判別結果に基づいて補正用データテーブル56を参照することで、加工点SPの加工深さ位置に対応したプラズマ光LPの基準発光状態を判別する。
【0082】
次いで、補正制御部50は、信号取得部44から入力されるプラズマ光検出信号を解析して現在の加工点SPでのプラズマ光LPの発光状態を判別し、この発光状態が基準発光状態で一定に保たれるようにレーザ加工制御部42を介してレーザ光源30のレーザ光Lの出射条件を補正する(ステップS11,S15、本発明の補正制御工程に相当)。これにより、第1レーザ加工中にプラズマ光LPの発光状態、すなわちレーザ加工領域P1の加工状態が一定に保たれるようにレーザ光Lの出射条件がリアルタイムで補正される。
【0083】
そして、レーザ加工領域P1の加工状態に異常が発生してない場合には(ステップS13でNO)、
図9のステップS6進む。
【0084】
図9に戻って、第1番目のストリートCH1に対する単層又は複数層の第1レーザ加工が完了するまで、既述のステップS4及びステップS5(ステップS10からステップS15)までの処理が繰り返し実行される(ステップS6でNO)。以下同様に、残りのストリートCH1に対する第1レーザ加工と、レーザ加工領域P1の加工状態の評価と、レーザ光Lの出射条件の補正と、が繰り返し実行される(ステップS7でYES、ステップS2からステップS6)。
【0085】
レーザ加工制御部42は、全てのストリートCH1の第1レーザ加工が完了すると、既述のアライメント検出結果に基づいて移動機構14を駆動して、レーザヘッド16の光軸を第1番目のストリートCH2の一端に位置合わせするアライメントを実行する(ステップS7でYES、ステップS2)。
【0086】
次いで、レーザ加工制御部42の制御の下、レーザヘッド16によるウェーハWの内部へのレーザ光Lの集光と、移動機構14によるテーブル12をX方向の移動とが開始されることで、第2レーザ加工が開始される(ステップS3)。これにより、ウェーハWの内部に第1番目のストリートCH2に沿ったレーザ加工領域P2が形成される。なお、レーザ加工制御部42は、ウェーハWが厚い場合には、移動機構14及びレーザヘッド16を制御して、第1番目のストリートCH2に沿った複数層のレーザ加工領域P2を形成する。
【0087】
そして、第2レーザ加工中にも既述の第1レーザ加工時と同様に、評価部48によるレーザ加工領域P2の加工状態の評価と、補正制御部50によるレーザ光Lの出射条件の補正と、が繰り返し実行される(ステップS5)。既述の通り第2レーザ加工では、交点CRにおいてレーザ加工領域P2及び亀裂Kが適正に形成されないおそれがあるが、評価部48により交点CRにおける適正なレーザ加工領域P2及び亀裂Kの有無をリアルタイムで評価可能である。また、補正制御部50によってレーザ光Lの出射条件の補正(例えば出力補正)を実行することで、交点CRのレーザ加工領域P2及び亀裂Kを適正に形成可能である。
【0088】
第1番目のストリートCH2に対する単層又は複数層の第2レーザ加工が完了するまで、既述のステップS4及びステップS5(ステップS10からステップS15)までの処理が繰り返し実行される(ステップS6でNO)。以下同様に、残りのストリートCH2に対する第2レーザ加工と、レーザ加工領域P2の加工状態の評価と、レーザ光Lの出射条件の補正と、が繰り返し実行される(ステップS7でYES、ステップS2からステップS6)。これにより、ウェーハWの全てストリートCH1,CH2のレーザ加工が完了する(ステップS7でNO)。
【0089】
以上のように第1実施形態のレーザ加工装置10では、製品ウェーハであるウェーハWのレーザ加工中にフォトダイオード20,36を用いて加工点SPで発生するプラズマ光LPをリアルタイムで検出することで、レーザ加工領域P1,P2の加工状態をリアルタイムで評価可能である。その結果、従来のサンプルウェーハを用いた加工状態の評価を実行する必要がなくなるので、異常が発生した場合には直ぐにオペレータに報知することができる。これにより、不良となるウェーハW(製品ウェーハ)を減らすことができる。
【0090】
また、フォトダイオード20,36を用いて加工点SPで発生するプラズマ光LPをリアルタイムで検出することで、加工点SPでのプラズマ光LPの発光状態が基準発光状態で一定に保たれるように、レーザ光源30のレーザ光Lの出射条件をリアルタイムで補正することができる。その結果、加工深さ位置ごとにレーザ加工領域P1,P2の加工状態が一定に保たれる。
【0091】
さらに、第1実施形態のレーザ加工装置10では、ウェーハWの厚み異常及びレーザ加工装置10によるレーザ加工の加工高さ制御異常などが原因でレーザ加工の加工不良が発生して、ウェーハWの内部にレーザ加工領域P1,P2が生成されない場合であっても、そのことをリアルタイムに確認することができる。このため、後工程においてウェーハの未分断が発生してデバイス量産加工の歩留まりが低下することが防止される。その結果、デバイス量産加工の歩留まりを向上させることができる。
【0092】
さらにまた、第1実施形態のレーザ加工装置10では、先のレーザ加工により形成されたレーザ加工領域P1,P2から伸展した亀裂Kによって後のレーザ加工時にレーザ光Lが散乱等されることにより発生するレーザ加工の加工不良をリアルタイムに確認することができる。
【0093】
例えば既述の
図8に示したように、ストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの内部に1層目のレーザ加工領域P1を形成した後、2層目のレーザ加工領域P2を形成する場合において、1層目のレーザ加工領域P1からの亀裂伸展に異常が発生(亀裂Kが長く形成)することがある。この場合には、2層目のレーザ加工時のレーザ光Lが1層目のレーザ加工領域P1から伸展した亀裂K内に焦点を結ぶことで、レーザ光LがウェーハWに吸収されず、2層目のレーザ加工でレーザ加工領域P2及び亀裂Kが生成されない虞がある。その結果、後工程の割断工程において、ウェーハWをチップに個片化できない未分断の発生要因となる。さらに、1層目の亀裂Kの内部で反射した2層目のレーザ加工のレーザ光Lが角度をもってウェーハWの表面側(パターン面側)に飛散し、デバイスパターン・回路部に熱ダメージを与えて回路破損に至る虞がある。
【0094】
さらに、2層目のレーザ加工のレーザ光Lが1層目のレーザ加工で形成された亀裂Kの影響を受けずに加工を継続していたとしても、ストリートCH1とストリートCH2との交点CRでレーザ加工の加工不良が発生する虞がある(後述の
図11から
図14参照)。
【0095】
図11は、ストリートCH1に対する2層のレーザ加工後に交点CR近傍で実行されるストリートCH2に対する1層目のレーザ加工を説明するための説明図である。
図12から
図14は、ストリートCH1に対する2層のレーザ加工後に交点CR近傍で実行されるストリートCH2に対する2層目のレーザ加工を説明するための説明図である。なお、
図11中の符号A1は1層目のレーザ加工の加工送り方向を示し、
図12から
図14中の符号A2は2層目のレーザ加工の加工送り方向を示す。また、
図11から
図14中の符号K(CH1)は、ストリートCH1に対する2層のレーザ加工で形成された亀裂を示す。
【0096】
図11から
図13に示すように、ストリートCH1に対する2層のレーザ加工後、ストリートCH2に対するレーザ加工が開始され、さらにストリートCH2に対する2層目のレーザ加工が開始される。この2層目のレーザ加工が1層目のレーザ加工で形成された亀裂Kの影響を受けずに進行していた場合であっても、
図14に示すように、2層目のレーザ加工が亀裂K(CH1)と直交するエリア(交点CR近傍)に達すると、レーザ加工の加工不良が発生する場合がある。
【0097】
具体的には2層目のレーザ加工で形成される亀裂Kが亀裂K(CH1)に直交する直前に、この亀裂Kがレーザ加工によって先に亀裂形成が進行して亀裂K(CH1)とつながる現象が発生する場合がある。このケースでは2層目のレーザ加工のレーザ光LがウェーハWに吸収/減衰されないまま亀裂K(CH1)に照射される。この亀裂K(CH1)に高強度のレーザ光Lが照射されると、
図14中の矢印A3で示すようにレーザ光Lの反射光の飛散距離が増える傾向があり、高い確率でデバイス破損(熱ダメージ領域100の発生)に至る。また、図中の符号Qで示すようにレーザ加工領域P2が生成されない領域が発生するおそれがある。なお、このような亀裂形成が交点CR付近で先行する事象は、レーザ出力の変動や加工高さ位置の微小変化に依存するもので、突発的に発生することから現象を掴むのが困難である。
【0098】
このような熱ダメージによる熱ダメージ領域100は、従来では画像検査装置で検出していたが、微小な熱ダメージ領域100については画像検査装置による検出が困難であった。これに対して第1実施形態のように加工点SPで発生するプラズマ光LPをリアルタイムで検出することで、微小な熱ダメージ領域100であってもその発生を明確に捉えることができる。また同様に、レーザ加工領域P2及び亀裂Kが生成されない事象についても明確に捉えることができる。
【0099】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態のレーザ加工装置10のブロック図である。
図15に示すように、第2実施形態のレーザ加工装置10は、レーザ加工中にウェーハWの裏面の凹凸に対応してこの裏面とレーザヘッド16との間の距離であるワークディスタンスを一定に保つAF(Autofocus)機能を有している。
【0100】
なお、第2実施形態のレーザ加工装置10は、AFユニット60を備えており、さらに制御装置24がAF制御部62として機能する点を除けば、上記第1実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0101】
AFユニット60は、例えば公知のピエゾユニットが用いられ、後述のAF制御部62の下でレーザヘッド16をZ方向に変位可能である。
【0102】
AF制御部62は、例えば、レーザ加工中に不図示の測距センサ(赤外線カメラ18でも可)がレーザヘッド16からウェーハWの裏面までの距離を測定した結果に基づいて、レーザ加工中にワークディスタンス(対物レンズ32のZ方向の焦点位置)が一定に保たれるように、AFユニット60を駆動する公知のAF制御を実行する。
【0103】
このようなAF制御を実行した場合には、ウェーハWの裏面の変位が大きい部分(例えばウェーハWの外縁部など)ではAFユニット60の発振(ハンチング現象が発生)することがある。この場合であっても、評価部48が信号取得部44から繰り返し入力されるプラズマ光検出信号に基づいてプラズマ発光周期をモニタリングすることで、AFユニット60の発振を検出可能である。
【0104】
[第3実施形態及び第4実施形態のレーザ加工装置]
図16は、第3実施形態のレーザ加工装置10を示した図である。
図17は、第4実施形態のレーザ加工装置10を示した図である。上記各実施形態のレーザ加工装置10では、ウェーハWのレーザ加工中に2種類のフォトダイオード20,36を用いてプラズマ光LPをリアルタイムで検出しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0105】
例えば
図16に示すように、第3実施形態のレーザ加工装置10は、上記各実施形態のレーザ加工装置10からフォトダイオード36を省略したものである。このため、第3実施形態のレーザ加工装置10は、レーザ加工中にフォトダイオード20によりプラズマ光LPを検出した結果のみに基づいて、評価部48によるレーザ加工領域P1,P2の加工状態の評価と、補正制御部50によるレーザ光Lの出射条件の補正と、を実行する。フォトダイオード20はウェーハWの内部で発生したプラズマ光LPを直接検出(対物レンズ32等を介さずに検出)可能であるので、フォトダイオード36のように対物レンズ32等を介してプラズマ光LPを検出する場合と比較してプラズマ光LPの検出精度を高めることができる。
【0106】
また、
図17に示すように、第4実施形態のレーザ加工装置10は、上記各実施形態のレーザ加工装置10からフォトダイオード20を省略したものである。このため、第4実施形態のレーザ加工装置10は、レーザ加工中にフォトダイオード36によりプラズマ光LPを検出した結果のみに基づいて、評価部48によるレーザ加工領域P1,P2の加工状態の評価と、補正制御部50によるレーザ光Lの出射条件の補正と、を実行する。対物レンズ32が精密レンズである場合にはワークディスタンスを十分に確保できないので、フォトダイオード20ではプラズマ光LPの検出が難しくなる。このため、この場合には、レーザヘッド16内の光路OP1から分岐した光路OP2上に配置されたフォトダイオード36によりプラズマ光LPの検出を行うことが好ましい。
【0107】
[その他]
上記各実施形態では、評価部48がプラズマ光検出信号の解析結果に基づいて評価用データテーブル54を参照することでレーザ加工領域P1,P2の加工状態を評価しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プラズマ光検出信号の解析結果とレーザ加工領域P1,P2加工状態の評価結果とを教師データとして機械学習させた学習済みモデルを予め生成する。そして、評価部48がプラズマ光検出信号の解析結果に基づいて学習済みモデルを用いてレーザ加工領域P1,P2の加工状態を評価してもよい。
【0108】
上記各実施形態では、フォトダイオード20,36を用いてプラズマ光LPを検出することでレーザ加工領域P1,P2の加工状態の評価と、レーザ光源30から出射されるレーザ光Lの出射条件の補正と、の双方を実行しているが、これらの一方のみ(評価のみ或いは補正のみ)を実行してもよい。
【0109】
上記各実施形態では、フォトダイオード20,36を用いてプラズマ光LPを検出しているが、公知の各種光検出センサ(撮像素子、カメラ)を用いてプラズマ光LPを検出してもよい。この際にプラズマ光LPをカラー撮像可能な撮像素子を用いた場合には、加工点SPで発生するプラズマ光LPの波長情報(色情報)に基づいてレーザ加工領域P1,P2の加工状態を評価可能である。
【符号の説明】
【0110】
4…チップ、6…デバイス層、10…レーザ加工装置、12…テーブル、14…移動機構、16…レーザヘッド、18…赤外線カメラ、20…フォトダイオード、22…モニタ、24…制御装置、27…操作部、28…記憶部、30…レーザ光源、32…対物レンズ、34…ハーフミラー、36…フォトダイオード、40…検出制御部、42…レーザ加工制御部、44…信号取得部、46…加工位置判別部、48…評価部、50…補正制御部、52…表示制御部、54…評価用データテーブル、56…補正用データテーブル、58…警告情報、60…AFユニット、62…AF制御部、100…熱ダメージ領域、CH1…ストリート、CH2…ストリート、CR…交点、K…亀裂、L…レーザ光、LP…プラズマ光、Nd…半導体レーザ励起、OP1…光路、OP2…光路、P1…レーザ加工領域、P2…レーザ加工領域、SP…加工点