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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112186
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】半導体光デバイスおよび光集積素子
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/042 20060101AFI20240813BHJP
   H01S 5/22 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01S5/042 612
H01S5/22 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017089
(22)【出願日】2023-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 匡廣
(72)【発明者】
【氏名】清田 和明
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA22
5F173AA48
5F173AB61
5F173AD04
5F173AK21
5F173AR62
5F173AR72
5F173AR74
(57)【要約】
【課題】例えば、熱変形を抑制しながら電極における電気抵抗の増大や電極による放熱性の低下を抑制することが可能となるような、新規な改善された半導体光デバイスおよび光集積素子を得る。
【解決手段】半導体光デバイスは、例えば、第一方向と交差して広がる基板と、基板上で、第一方向に積層された第一クラッド層、コア層、および第二クラッド層をそれぞれ有し、第一方向と交差した第二方向に延びて当該第二方向または当該第二方向の反対方向に光を導波し、互いに第一方向および第二方向と交差した第三方向に離れて設けられた、複数の導波路構造と、導波路構造のそれぞれに対して基板とは反対側に設けられ、第一部位と、当該第一部位より第一方向における厚さが厚い第二部位と、を有した第一電極と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向と交差して広がる基板と、
前記基板上で、前記第一方向に積層された第一クラッド層、コア層、および第二クラッド層をそれぞれ有し、前記第一方向と交差した第二方向に延びて当該第二方向または当該第二方向の反対方向に光を導波し、互いに前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に離れて設けられた、複数の導波路構造と、
前記導波路構造のそれぞれに対して前記基板とは反対側に設けられ、第一部位と、当該第一部位より前記第一方向における厚さが厚い第二部位と、を有した第一電極と、
を備えた半導体光デバイス。
【請求項2】
前記第一電極として、第一幅で前記第二方向に延び、前記第二部位が少なくとも部分的に前記第一幅より狭い第二幅で前記第二方向に延びた第一電極を備えた、請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項3】
前記第一電極として、第一幅で前記第二方向に延び、前記第二部位が少なくとも部分的に前記第一幅より狭い第二幅で前記第二方向に延びるとともに前記第一部位と前記第二部位とが少なくとも部分的に前記第三方向に並んだ第一電極を備えた、請求項2に記載の半導体光デバイス。
【請求項4】
前記第一電極として、第一幅で前記第二方向に延び、前記第二部位が前記コア層と前記第一方向に並ぶ位置で少なくとも部分的に前記第一幅より狭い第二幅で前記第二方向に延びる第一電極を備えた、請求項2に記載の半導体光デバイス。
【請求項5】
前記第一電極として、第一幅で前記第二方向に延び、前記第二部位が少なくとも部分的に前記第一電極の前記第三方向における中央に対して前記第三方向または前記第三方向の反対方向にずれた位置で前記第一幅より狭い第二幅で前記第二方向に延びる第一電極を備えた、請求項2に記載の半導体光デバイス。
【請求項6】
前記第一電極として、前記第二方向に延び、前記第二部位が前記第一部位より前記第二方向に長く延びる第一電極を備えた、請求項2に記載の半導体光デバイス。
【請求項7】
前記第一電極として、前記第一部位および前記第二部位の一部を構成する第一層と、前記第二部位のうち前記第一層に対して前記導波路構造とは反対側の部分を構成する第二層と、を有した第一電極を備えた、請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項8】
前記導波路構造として、アクティブ導波路を構成する導波路構造を備えた、請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項9】
前記導波路構造として、折り返し導波路構造を介して光学的に接続された二つの導波路構造を備えた、請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項10】
前記折り返し導波路構造は、パッシブ導波路を構成する、請求項9に記載の半導体光デバイス。
【請求項11】
それぞれが、前記折り返し導波路構造と、当該折り返し導波路構造を介して光学的に接続された二つの導波路構造と、を含む複数の導波路構造アセンブリを備えた、請求項9に記載の半導体光デバイス。
【請求項12】
前記導波路構造として、前記第二方向に延びた溝を介して前記第三方向に並んだ二つの導波路構造を備えた、請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項13】
前記第一方向の反対方向に凹み前記基板に至る凹部が設けられ、
少なくとも部分的に当該凹部内に設けられた第二電極を備えた、請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項14】
前記第二電極は、第三部位と、当該第三部位より厚い第四部位と、を有した、請求項13に記載の半導体光デバイス。
【請求項15】
前記第四部位は、前記凹部の側面に沿って前記第一方向に延びた延部を有した、請求項14に記載の半導体光デバイス。
【請求項16】
前記導波路構造と、当該導波路構造に対応して設けられた電極対と、を有した半導体光増幅器を備えた、請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項17】
前記導波路構造と、当該導波路構造に対応して設けられた電極対と、を有した半導体発光素子を備えた、請求項1に記載の半導体光デバイス。
【請求項18】
請求項1~17のうちいずれか一つに記載の半導体光デバイスと、
前記半導体光デバイスの前記導波路構造と光学的に接続された導波路を有した光機能素子と、
を一体に備えた、光集積素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光デバイスおよび光集積素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザ素子や半導体光増幅器のような半導体光デバイスと、導波路を有した部位(以下、当該部位を光機能素子と称する)と、を一体に備えた光集積素子が、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-92262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の半導体光デバイスは、導波路構造を構成する半導体層と電極を構成する金属層とを有している。当該半導体光デバイスについては、製造時と作動時とで温度差が大きいと、半導体層の熱膨張係数と金属層の熱膨張係数とに差がある分、場所により熱収縮の程度差が生じ、半導体光デバイスが、所期の形状に対して歪んだ状態に変形してしまう虞がある。以下、このような変形を単に熱変形と称する。熱変形としては、例えば、半導体光デバイスが導波路構造の積層方向に凸または凹になるように変形する反りがある。
【0005】
導波路を一つだけ有する半導体光デバイスにあっては、上述したような熱変形が生じた場合にあっても、当該導波路と光学的に接続される他の光学素子等の導波路(以下、単に対応した導波路と称する)とを位置決めすることにより、当該導波路と対応した導波路との間での光学損失の低下を、抑制できる。しかしながら、複数の導波路を有する半導体光デバイスにあっては、熱変形が生じた場合、当該複数の導波路の相対的な位置関係が変化するため、各導波路と当該各導波路に対応した導波路との間での光学損失の低下を抑制するのが、難しくなる。
【0006】
上述したような熱変形は、例えば、電極を構成する金属層の体積を小さくすれば、抑制することができる。しかしながら、金属層の体積を小さくすると、電極の断面積が小さくなって電気抵抗が増大したり、電極の表面積が小さくなって放熱性が低下して所期の性能が得られ難くなったり、といった問題が生じる虞がある。
【0007】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、熱変形を抑制しながら電極における電気抵抗の増大や電極による放熱性の低下を抑制することが可能となるような、新規な改善された半導体光デバイスおよび光集積素子を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体光デバイスは、例えば、第一方向と交差して広がる基板と、前記基板上で、前記第一方向に積層された第一クラッド層、コア層、および第二クラッド層をそれぞれ有し、前記第一方向と交差した第二方向に延びて当該第二方向または当該第二方向の反対方向に光を導波し、互いに前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に離れて設けられた、複数の導波路構造と、前記導波路構造のそれぞれに対して前記基板とは反対側に設けられ、第一部位と、当該第一部位より前記第一方向における厚さが厚い第二部位と、を有した第一電極と、を備える。
【0009】
前記半導体光デバイスは、前記第一電極として、第一幅で前記第二方向に延び、前記第二部位が少なくとも部分的に前記第一幅より狭い第二幅で前記第二方向に延びた第一電極を備えてもよい。
【0010】
前記半導体光デバイスは、前記第一電極として、第一幅で前記第二方向に延び、前記第二部位が少なくとも部分的に前記第一幅より狭い第二幅で前記第二方向に延びるとともに前記第一部位と前記第二部位とが少なくとも部分的に前記第三方向に並んだ第一電極を備えてもよい。
【0011】
前記半導体光デバイスは、前記第一電極として、第一幅で前記第二方向に延び、前記第二部位が前記コア層と前記第一方向に並ぶ位置で少なくとも部分的に前記第一幅より狭い第二幅で前記第二方向に延びる第一電極を備えてもよい。
【0012】
前記半導体光デバイスは、前記第一電極として、第一幅で前記第二方向に延び、前記第二部位が少なくとも部分的に前記第一電極の前記第三方向における中央に対して前記第三方向または前記第三方向の反対方向にずれた位置で前記第一幅より狭い第二幅で前記第二方向に延びる第一電極を備えてもよい。
【0013】
前記半導体光デバイスは、前記第一電極として、前記第二方向に延び、前記第二部位が前記第一部位より前記第二方向に長く延びる第一電極を備えてもよい。
【0014】
前記半導体光デバイスは、前記第一電極として、前記第一部位および前記第二部位の一部を構成する第一層と、前記第二部位のうち前記第一層に対して前記導波路構造とは反対側の部分を構成する第二層と、を有した第一電極を備えてもよい。
【0015】
前記半導体光デバイスは、前記導波路構造として、アクティブ導波路を構成する導波路構造を備えてもよい。
【0016】
前記半導体光デバイスは、前記導波路構造として、折り返し導波路構造を介して光学的に接続された二つの導波路構造を備えてもよい。
【0017】
前記半導体光デバイスでは、前記折り返し導波路構造は、パッシブ導波路を構成してもよい。
【0018】
前記半導体光デバイスは、それぞれが、前記折り返し導波路構造と、当該折り返し導波路構造を介して光学的に接続された二つの導波路構造と、を含む複数の導波路構造アセンブリを備えてもよい。
【0019】
前記半導体光デバイスは、前記導波路構造として、前記第二方向に延びた溝を介して前記第三方向に並んだ二つの導波路構造を備えてもよい。
【0020】
前記半導体光デバイスは、前記第一方向の反対方向に凹み前記基板に至る凹部が設けられ、少なくとも部分的に当該凹部内に設けられた第二電極を備えてもよい。
【0021】
前記半導体光デバイスでは、前記第二電極は、第三部位と、当該第三部位より厚い第四部位と、を有してもよい。
【0022】
前記半導体光デバイスでは、前記第四部位は、前記凹部の側面に沿って前記第一方向に延びた延部を有してもよい。
【0023】
前記半導体光デバイスでは、前記導波路構造と、当該導波路構造に対応して設けられた電極対と、を有した半導体光増幅器を備えてもよい。
【0024】
前記半導体光デバイスでは、前記導波路構造と、当該導波路構造に対応して設けられた電極対と、を有した半導体発光素子を備えてもよい。
【0025】
また、本発明の光集積素子は、前記半導体光デバイスと、前記半導体光デバイスの前記導波路構造と光学的に接続された導波路を有した光機能素子と、を一体に備えてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、新規な改善された半導体光デバイスおよび光集積素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、第1実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な断面図である。
図2図2は、第1実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
図3図3は、第2実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
図4図4は、第3実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
図5図5は、図4のV-V断面図である。
図6図6は、第4実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
図7図7は、第5実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII断面図である。
図9図9は、第6実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な断面図である。
図10図10は、第6実施形態の半導体光デバイスの例示的かつ模式的な平面図である。
図11図11は、第7実施形態の半導体光デバイスと光機能素子とを備えた光集積素子の例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0029】
以下に示される複数の実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0030】
本明細書において、序数は、方向や、部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではないし、個数を限定するものでもない。
【0031】
各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。また、以下では、X方向を長手方向若しくは延び方向、Y方向を短手方向若しくは幅方向、Z方向を積層方向若しくは高さ方向と称する。
【0032】
また、各図は説明を目的とした模式図であって、各図と実物とでスケールや比率は、必ずしも一致しない。
【0033】
[第1実施形態]
[基本構成]
図1は、第1実施形態の半導体光デバイス100A(100)の断面図であり、図2は、半導体光デバイス100A(100)の平面図である。図1は、図2のI-I断面図である。
【0034】
図1,2に示されるように、半導体光デバイス100Aは、基板10と、二つの導波路構造20(20-1,20-2)と、電極30,40A(40)と、を備えている。電極40Aと、基板10と、導波路構造20-1と、絶縁層23と、電極30は、機能部101を構成し、電極40Aと、基板10と、導波路構造20-2と、絶縁層23と、電極30は、もう一つの機能部101を構成している。各機能部101について、基板10および電極40Aは共用されており、導波路構造20、絶縁層23、および電極30は、それぞれ設けられている。ただし、双方の機能部101の構造および機能は略同じであるため、以下では、片側(図1では左側)の機能部101についてのみ説明する。なお、本実施形態では、二つの機能部101の間には、溝100aが設けられている。
【0035】
基板10は、Z方向に略一定の厚さを有し、Z方向と交差して広がっている。基板10は、例えば、n-InPで作られる。導波路構造20、絶縁層23、および電極30を構成する各層は、公知の半導体プロセスによって、基板10上に、Z方向に積層される。Z方向は、積層方向、厚さ方向、または高さ方向と称されうる。Z方向は第一方向の一例である。
【0036】
基板10のZ方向の反対側の面上には、電極40が設けられる。電極40は、N側電極であって、コア層21bに対してZ方向の反対方向に離間している。電極40は、例えば、AuGe、Ni、およびAuを含んだ積層構造を有している。電極40は、第二電極の一例である。
【0037】
基板10の電極40とは反対側の面上には、クラッド層21a、コア層21b、およびクラッド層21cを有したメサ21が形成される。クラッド層21a、コア層21b、およびクラッド層21cは、基板10上に、Z方向にこの順に積層される。メサ21は、Y方向における略一定の幅およびZ方向における略一定の高さで、X方向に延びている。
【0038】
クラッド層21aは、基板10上に積層される。クラッド層21aは、例えば、n-InPで作られる。コア層21bは、クラッド層21a上に積層される。コア層21bは、例えば、n-InGaAsPを含んだ積層構造を有する。クラッド層21cは、コア層21b上に積層される。クラッド層21cは、例えば、p-InPで作られる。クラッド層21aは、第一クラッド層の一例であり、クラッド層21cは、第二クラッド層の一例である。
【0039】
メサ21は、Y方向およびY方向の反対方向に隣接した電流阻止層22a,22b、ならびにZ方向に隣接したクラッド層22cによって囲まれている。電流阻止層22aは、例えば、p-InPで作られ、電流阻止層22bは、例えば、n-InPで作られる。また、クラッド層22cは、例えば、p-InPで作られる。クラッド層22cは、第二クラッド層の一例である。
【0040】
クラッド層21a、コア層21b、クラッド層21c、電流阻止層22a,22b、およびクラッド層22cを有した導波路構造20は、絶縁層23で覆われている。絶縁層23には、メサ21に対してZ方向に重なる位置に、開口23aが設けられている。なお、導波路構造20および絶縁層23の構成は、この例には限定されない。
【0041】
導波路構造20は、それぞれ、X方向に延びており、光をX方向またはX方向の反対方向に導波する。また、二つの導波路構造20(20-1,20-2)は、互いにY方向に離れており、溝100aを介してY方向に並んでいる。X方向は、第二方向の一例であり、Y方向は、第三方向の一例である。
【0042】
各導波路構造20のクラッド層22cに対して基板10とは反対側には、導体で作られた電極30が設けられる。電極30は、P側電極であって、コア層21bに対してZ方向に離間している。電極30は、第一層30aと、当該第一層30a上に積層された第二層30bと、を有している。第一層30aは、絶縁層23に設けられた開口23aを介してクラッド層22cと接している。第一層30aは、薄膜層とも称され、第二層30bは、厚膜層とも称されうる。電極30は、第一電極の一例である。電極30は、電極40とともに、電極対を構成している。
【0043】
上述した構成の機能部101は、例えば、半導体光増幅器として機能することができる。これらの半導体光増幅器は、コア層21bの一端から入力された光を光増幅して、コア層21bの他端から出力する。したがって、半導体光デバイス100Aは、半導体光増幅器アレイとして構成されている。この場合、当該機能部101のコア層21bは、活性層とも称され、アクティブ導波路の一例である。
【0044】
[電極の構成]
ここで、図1に示されるように、第二層30bは、第一層30aを部分的に覆っている。これにより、電極30は、第一層30aだけの第一部位31と、第一層30aと第二層30bとを含み厚さが第一部位31より厚い第二部位32と、を有した構成となっている。ここで、仮に、電極30が厚い第二部位32のみで構成された場合、熱変形がより大きくなってしまう虞がある。逆に、電極30が薄い第一部位31のみで構成された場合、電極30の断面積がより小さくなって電気抵抗が増大したり、電極30の表面積がより小さくなって放熱性が低下したりする虞がある。この点、本実施形態によれば、電極30が、比較的薄い第一部位31と、比較的厚い第二部位32と、を有することにより、熱変形を抑制しながら、電気抵抗が増大したり、放熱性が低下したりするのを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態のように、Y方向に離れた複数の導波路構造20を有する場合、熱変形に応じて各導波路構造20のコア層21b同士の相対的な位置が変化すると、コア層21bと当該コア層21bに対応した導波路との間での光の結合効率の低下に影響を及ぼす。ここで、複数のコア層21bの相対的な位置の変化に対しては、X方向に向かうにつれて各層のZ方向の位置が変化する変形モード(以下、第一変形モードと称する)の熱変形より、Y方向に向かうにつれて各層のZ方向の位置が変化する変形モード(以下、第二変形モードと称する)の熱変形の方が、より大きな影響を与える。そこで、本実施形態では、図2に示されるように、電極30は、幅W1でX方向に延びるとともに、第二部位32は、幅W1より狭い幅W2で、X方向に延びている。言い換えると、第一部位31と第二部位32とはいずれもX方向に延びるとともに、互いにY方向に並んでいる。仮に、第二部位32がY方向に延びていると、当該第二部位32は製造時に対する作動時の温度低下によって、Y方向により長く収縮することになるため、半導体光デバイス100は、第一変形モードでの変形より第二変形モードでの変形が大きくなる。この点、本実施形態では、第二部位32はX方向に延びており、第二変形モードでの変形量をより小さくすることができるため、電極30における所要の電気伝導性および所要の放熱性を確保しながら、複数のコア層21bの相対的な位置の変化を抑制し、ひいては、コア層21bと当該コア層21bに対応した導波路との間での光の結合効率の低下を抑制することができる。幅W1は、第一幅の一例であり、幅W2は、第二幅の一例である。
【0046】
また、図2に示されるように、本実施形態では、第二部位32は、コア層21bとZ方向に重なる位置で、X方向に延びている。これにより、電極30がコア層21bとZ方向に重なる位置からずれて設けられた場合に比べて、電極30からコア層21bに対して電力をより効率良く供給することができる。
【0047】
また、図2に示されるように、本実施形態では、Z方向の反対方向に見た場合に、第二部位32は、電極30のX方向の中央に位置する中心線Cに対して、Y方向またはY方向の反対方向にずれている。第一部位31のZ方向の端面を、ワイヤボンディングによって配線(不図示)を接合する領域や、高さ位置を確認するためにプローブを接触する領域として活用する場合、当該第一部位31はより広く確保するのが好ましい。この点、本実施形態では、第二部位32が、電極30の中心線Cに対してY方向にずれた位置に設けられているため、電極30の中心線Cと重なる位置に設けられた場合に比べて、少なくとも一つの第一部位31のZ方向の端面をより広くすることができる。
【0048】
また、上述したように、電極30は、第一層30aと、第二層30bと、を有し、第一層30aは、第一部位31および第二部位32の一部を構成し、第二層30bは、第二部位32のうち第一層30aに対して導波路構造20とは反対側の部分を構成している。本実施形態によれば、厚さが異なる第一部位31と第二部位32とを有した電極30を、比較的簡単なプロセスによって構成することができる。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態によれば、例えば、熱変形を抑制しながら電極30における電気抵抗の増大や電極30による放熱性の低下を抑制することが可能となるような、新規な改善された半導体光デバイス100を得ることができる。
【0050】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の半導体光デバイス100B(100)の平面図である。本実施形態では、機能部101の構成自体は第1実施形態とは相違するものの、当該機能部101は、それぞれ、同様の導波路構造20と、電極30,40(図1参照)と、を有した、例えば半導体レーザのような半導体発光素子として作動する。これらの半導体発光素子は、コア層21bの一端から光を出力する。すなわち、本実施形態の半導体光デバイス100Bは、半導体発光素子アレイとして構成されている。半導体発光素子が半導体レーザである場合、各機能部101はレーザ共振器を構成する反射膜を備えている。また、半導体発光素子がDFB型の半導体レーザの場合、各機能部101はレーザ発振波長を定めるための回折格子層をさらに備えている。本実施形態でも、電極30は、第1実施形態と同様の構成を有している。よって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0051】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態の半導体光デバイス100C(100)の平面図である。また、図5は、図4のV-V断面図である。本実施形態では、二つの機能部101は、第1実施形態と同様の構成を有して、半導体光増幅器として作動するとともに、当該二つの機能部101の導波路構造20同士が、パッシブ導波路として機能するコア層21bを有した折り返し導波路構造50を介して光学的に接続されている。折り返し導波路構造50は、図5に示されるように、ハイメサ構造を有している。このような構成により、半導体光デバイス100Cは、全体として、半導体光増幅器として機能する。この半導体光増幅器は、一方の機能部101のコア層21bの一端から入力された光を光増幅して、もう一方の機能部101のコア層21bの一端から出力する。本実施形態でも、電極30は、第1実施形態と同様の構成を有している。よって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態の半導体光デバイス100D(100)の平面図である。本実施形態では、第3実施形態と同様の半導体光増幅器が、溝100aを介してY方向に並んでいる。すなわち、本実施形態の半導体光デバイス100Dは、半導体光増幅器アレイとして構成されている。本実施形態でも、電極30は、第1実施形態と同様の構成を有している。よって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
[第5実施形態]
図7は、第5実施形態の半導体光デバイス100E(100)の平面図である。本実施形態の半導体光デバイス100Eは、第3実施形態の半導体光デバイス100Cと同様の、二つの機能部101と、折り返し導波路構造50と、を備えており、当該半導体光デバイス100Cと同様に作動する。ただし、本実施形態では、電極30の構成が、第3実施形態と相違している。
【0054】
具体的に、第二部位32は、作用部32aと、パッド部32bと、延部32cと、を有している。作用部32aは、各機能部101において、コア層21bとZ方向に重なり、メサ21に対して電極を供給する。パッド部32bは、折り返し導波路構造50に対して二つの機能部101とは反対側に設けられている。パッド部32bには、ボンディングワイヤのような電力供給部材が接合される。延部32cは、作用部32aとパッド部32bとの間で、X方向に延びている。パッド部32bおよび延部32cは、複数の作用部32aについて共用されている。
【0055】
本実施形態では、第二部位32が、第一部位31よりもX方向に長く延びている。本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様に、電極30における所要の電気伝導性および所要の放熱性を確保しながら、Y方向に向かうにつれて各層のZ方向の位置が変化する第二変形モードでの変形量をより小さくすることができるため、複数のコア層21bの相対的な位置の変化を抑制し、ひいては、コア層21bと当該コア層21bに対応した導波路との間での光の結合効率の低下を抑制することができる。
【0056】
図8は、図7のVIII-VIII断面図である。図8に示されるように、本実施形態では、ハイメサ構造を有した折り返し導波路構造50の段差を、第一層30aと第二層30bとを含み第一部位31より厚い第二部位32(の延部32c)が跨いでいる。このような構成によれば、当該跨ぐ位置での電極30の断線を防止できるとともに、電気抵抗の増大を抑制できるという効果が得られる。
【0057】
[第6実施形態]
図9は、第6実施形態の半導体光デバイス100F(100)の断面図であり、図10は、半導体光デバイス100F(100)の平面図である。図9は、図10のIX-IX断面図である。本実施形態の半導体光デバイス100Fは、第3実施形態の半導体光デバイス100Cと同様の、二つの機能部101と、折り返し導波路構造50と、を備えており、当該半導体光デバイス100Cと同様に作動する。ただし、本実施形態では、N側電極としての電極40F(40)の構成が、上記第1~第5実施形態と相違している。
【0058】
具体的に、半導体光デバイス100Fには、二つの機能部101に対して溝100aを介して反対側に、Z方向の反対方向に凹み基板10に至る凹部100bが設けられており、電極40Fは、当該凹部100bの底面100b1および側面100b2に沿うように設けられている。
【0059】
電極40Fも、電極30と同様に、第一層40aと当該第一層40a上に積層された第二層40bとを有しており、これらにより、第一層40aだけの第三部位41と、第一層40aと第二層40bとを含み厚さが第三部位41より厚い第四部位42と、が構成されている。また、凹部100bを覆う絶縁層23のうち、底面100b1と重なる位置には、開口23bが設けられている。第一層40aは、開口23bを介して基板10と接している。
【0060】
また、図10に示されるように、電極40Fの第四部位42は、作用部42aと、パッド部42bと、延部42cと、を有している。作用部42aは、凹部100bの底面100b1において、基板10と接し、当該基板10に対して電極を供給する。パッド部42bは、作用部42aからX方向の反対方向に離れている。パッド部42bには、ボンディングワイヤのような電力供給部材が接合される。延部42cは、作用部42aとパッド部42bとの間で、X方向に延びている。
【0061】
そして、電極40Fにあっては、第四部位42は、第三部位41よりもX方向に長く延びている。このような構成によっても、上記第1実施形態と同様に、電極40Fにおける所要の電気伝導性および所要の放熱性を確保しながら、Y方向に向かうにつれて各層のZ方向の位置が変化する第二変形モードでの変形量をより小さくすることができるため、複数のコア層21bの相対的な位置の変化を抑制し、ひいては、コア層21bと当該コア層21bに対応した導波路との間での光の結合効率の低下を抑制することができる。
【0062】
また、図9,10に示されるように、本実施形態では、凹部100bの段差を、第三部位41より厚い第四部位42が跨いでいる。このような構成によれば、当該跨ぐ位置での電極40の断線を防止できるとともに、電気抵抗の増大を抑制できるという効果が得られる。
【0063】
[第7実施形態]
図11は、第7実施形態の光集積素子300の平面図である。光集積素子300は、第3実施形態の半導体光デバイス100C(100)と、光機能素子200と、を備えている。光機能素子200は、シリコンプラットフォームとも称されうる。
【0064】
当該半導体光デバイス100CのX方向の端面100cと、光機能素子200のX方向の反対方向の端面200aとが互いに面している。ここで、半導体光デバイス100Cは、第3実施形態の構成を備えている。よって、半導体光デバイス100C(100)にあっては、上記第3実施形態および上記第1実施形態と同様に、例えば、熱変形を抑制しながら電極30における電気抵抗の増大や電極30による放熱性の低下を抑制することができるという効果が得られる。このため、当該半導体光デバイス100C(100)を備えた光集積素子300にあっては、端面100cにおける二箇所のコア層21bのX方向の端部と、端面200aにおける二箇所のコア層200b(導波路)のX方向の反対方向の端部とを、より精度良く位置決めできるようになり、例えば、半導体光デバイス100と光機能素子200との間での結合損失をより低減することができるという効果が得られる。なお、光機能素子200の構成材料はシリコンに限定されず、他の半導体やガラスであってもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
10…基板
20,20-1,20-2…導波路構造
21…メサ
21a…クラッド層(第一クラッド層)
21b…コア層
21c…クラッド層(第二クラッド層)
22a…電流阻止層
22b…電流阻止層
22c…クラッド層(第三クラッド層)
23…絶縁層
23a…開口
23b…開口
30…電極(第一電極、電極対)
30a…第一層
30b…第二層
31…第一部位
32…第二部位
32a…作用部
32b…パッド部
32c…延部
40,40A,40F…電極(第二電極、電極対)
40a…第一層
40b…第二層
41…第三部位
42…第四部位
42a…作用部
42b…パッド部
42c…延部
50…折り返し導波路構造
100,100A~100F…半導体光デバイス
100a…溝
100b…凹部
100b1…底面
100b2…側面
100c…端面
101…機能部
200…光機能素子(異なる部品)
200a…端面
200b…コア層(導波路)
300…光集積素子
C…中心線(中央)
W1…幅(第一幅)
W2…幅(第二幅)
X…方向(第二方向)
Y…方向(第三方向)
Z…方向(第一方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11