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特開2024-112265アンモニアガスの処理装置及び処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112265
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】アンモニアガスの処理装置及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/58 20060101AFI20240813BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240813BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240813BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20240813BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B01D53/58 ZAB
B01D53/78
B01D53/14 210
C02F1/58 H
B01D53/94 222
B01D53/94 400
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099411
(22)【出願日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2023017186
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】水畑 昌平
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4D038
4D148
【Fターム(参考)】
4D002AA13
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA35
4D020AA10
4D020BA23
4D020BB03
4D038AA08
4D038AB29
4D038BA02
4D038BB13
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC04
4D148CC51
4D148CC61
4D148DA03
4D148DA20
(57)【要約】
【課題】硫酸等に比べて取扱が容易で安全な中和剤を使用するアンモニアガスの処理装置及び処理方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るアンモニアガスの処理装置及び処理方法は、貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、貨物から揮発し又は機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを収容する除害装置6を備え、除害装置6内において、アンモニアガスが清水に吸収され、有機酸により中和され、中和された中和水が中和水保管タンク15に送られることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを収容する除害装置
を備え、
前記除害装置内において、前記液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又は前記アンモニアガスが清水に吸収され、有機酸により中和され、中和された中和水が中和水保管タンクに送られる
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
【請求項2】
清水及び有機酸から有機酸水溶液である中和液を製造し、この中和液の成分である前記清水及び前記有機酸を前記除害装置に供給する中和液製造装置を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項3】
清水及び有機酸からなる有機酸水溶液である中和液を貯蔵し、この中和液の成分である前記清水及び前記有機酸を前記除害装置に供給する中和液タンクを備えた
ことを特徴とする請求項1記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項4】
前記除害装置は、前記清水を供給され、
固体有機酸を貯蔵し、この固体有機酸を前記有機酸として前記除害装置に供給する中和剤タンクを備えた
ことを特徴とする請求項1記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項5】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを収容し、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を中和処理装置に送る除害装置と、
有機酸を貯蔵し、この有機酸を前記中和処理装置に供給する中和剤タンクと
を備え、
前記中和処理装置内において、前記有機酸により、前記アンモニア水が中和され、中和された中和水が中和水保管タンクに送られる
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
【請求項6】
前記中和処理装置の下流から、前記中和処理装置の上流への戻り配管を備えた
ことを特徴とする請求項5記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項7】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを収容し、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を中和水保管タンクに送る除害装置と、
有機酸を貯蔵し、この有機酸を前記中和水保管タンクに供給する中和剤タンクと
を備え、
前記中和水保管タンク内において、前記有機酸により、前記アンモニア水が中和される
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
【請求項8】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを収容し、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を、中和水保管タンクに送る除害装置と、
有機酸を貯蔵し、この有機酸を中和処理装置に供給する中和剤タンクと
を備え、
前記アンモニア水は、前記中和処理装置と前記中和水保管タンクとの間を循環され、循環される前記アンモニア水が、前記有機酸により中和される
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
【請求項9】
前記除害装置から前記中和水保管タンクへの前記アンモニア水の供給は、前記中和処理装置を経由して行われる
ことを特徴とする請求項8記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項10】
前記アンモニアが中和された中和水からアンモニアガスを発生させる還元剤供給装置と、
前記還元剤供給装置により発生されたアンモニアガスを、前記機関に接続される選択式還元触媒ユニットに供給する輸送部を備える
ことを特徴とする請求項1~9の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項11】
前記還元剤供給装置においてアンモニアガスが発生した後の中和剤残渣を、再利用される中和剤として保管する
ことを特徴とする請求項10記載のアンモニアガスの処理装置。
【請求項12】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを除害装置に収容させ、
前記除害装置内において、前記液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又は前記アンモニアガスを清水に吸収させ、有機酸により中和させ、中和された中和水を中和水保管タンクに送る
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
【請求項13】
清水及び有機酸から有機酸水溶液である中和液を中和液製造装置により製造し、この中和液の成分である前記清水及び前記有機酸を前記除害装置に供給する
ことを特徴とする請求項12記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項14】
清水及び有機酸からなる有機酸水溶液である中和液を中和液タンクに貯蔵し、この中和液の成分である前記清水及び前記有機酸を前記除害装置に供給する
ことを特徴とする請求項12記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項15】
前記除害装置に、前記清水を供給し、
固体有機酸を中和剤タンクに貯蔵し、この固体有機酸を前記有機酸として前記除害装置に供給する
ことを特徴とする請求項12記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項16】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを除害装置に収容させ、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を中和処理装置に送り、
有機酸を中和剤タンクに貯蔵し、この有機酸を前記中和処理装置に供給し、
前記中和処理装置内において、前記アンモニア水に前記有機酸により、前記アンモニア水を中和させ、中和された中和水を中和水保管タンクに送る
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
【請求項17】
前記中和処理装置の下流から、前記中和処理装置の上流への戻り配管を設けた
ことを特徴とする請求項16記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項18】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを除害装置に収容させ、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を中和水保管タンクに送り、
有機酸を中和剤タンクに貯蔵し、この有機酸を前記中和水保管タンクに供給し、
前記中和水保管タンク内において、前記有機酸により、前記アンモニア水を中和させる
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
【請求項19】
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを除害装置に収容させ、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を、中和水保管タンクに送り、
有機酸を中和剤タンクに貯蔵し、この有機酸を中和処理装置に供給し、
前記アンモニア水を、前記中和処理装置と前記中和水保管タンクとの間を循環させ、循環される前記アンモニア水を、前記有機酸により中和させる
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
【請求項20】
前記除害装置から前記中和水保管タンクへの前記アンモニア水の供給を、前記中和処理装置を経由して行う
ことを特徴とする請求項19記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項21】
前記アンモニアが中和された中和水から還元剤供給装置によってアンモニアガスを発生させ、
前記還元剤供給装置により発生されたアンモニアガスを、前記機関に接続される選択式還元触媒ユニットに供給する
ことを特徴とする請求項12~20の何れかに記載のアンモニアガスの処理方法。
【請求項22】
前記還元剤供給装置においてアンモニアガスが発生した後の中和剤残渣を保管し、中和剤として再利用する
ことを特徴とする請求項21記載のアンモニアガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物又はエンジン燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理方法に関し、詳しくは、硫酸等に比べて取扱が容易で安全な中和剤を使用する、アンモニアガスの処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球温暖化問題に伴い、船舶推進用エンジンの燃料として、液化アンモニアの利用が想定されている。液化アンモニアを燃料として利用した場合には、燃焼停止後の燃料配管内の残留ガスのパージや、異常時に燃焼範囲以内に収めるため、燃料供給系内を空にする必要が生ずることがある。また、アンモニアを貯留するタンクにおいては、自然入熱等によりボイルオフガスと呼ばれるアンモニアガスが発生する。アンモニアガスが生じるままにしておくとタンク内の圧力が上昇し設計圧力以上になるため、大気放出等により処理する必要がある。
【0003】
しかし、アンモニアガスは、可燃性及び毒性を有するので、アンモニアガスをそのまま大気放出すると、人体に影響を与える。そのため、大気中に放出する排気からは、アンモニアガスを除害装置によって除去する必要がある。
【0004】
なお、アンモニアガスを再液化してタンクに戻すことも行われている。しかし、再液化には大量の電力が必要であるので、エネルギー効率の観点から問題がある。
【0005】
特許文献1には、除害装置として、アンモニアガスを水に吸収させてアンモニア水として回収する方式が記載されている。回収したアンモニア水は、希釈するか、酸性の中和剤を使って中和するとしている。
【0006】
アンモニア水を中和する酸性の中和剤として、硫酸や硝酸などの強酸を用いることが知られている。
【0007】
なお、アンモニア水を中和したとしても、海洋環境への影響を考慮し、海域によっては排出規制により、船外に排出できない場合もあり、その場合には、中和水の船内での保管または処理が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6934555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、硫酸や硝酸といった強酸の中和剤は危険物質でもあるので、船内での使用及び保管には、極めて注意を要する。
【0010】
そこで、本発明の課題は、硫酸等に比べて取扱が容易で安全な中和剤を使用する、アンモニアガスの処理装置及び処理方法を提供することにある。
【0011】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
1.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを収容する除害装置
を備え、
前記除害装置内において、前記液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又は前記アンモニアガスが清水に吸収され、有機酸により中和され、中和された中和水が中和水保管タンクに送られる
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
2.
清水及び有機酸から有機酸水溶液である中和液を製造し、この中和液の成分である前記清水及び前記有機酸を前記除害装置に供給する中和液製造装置を備えた
ことを特徴とする前記1記載のアンモニアガスの処理装置。
3.
清水及び有機酸からなる有機酸水溶液である中和液を貯蔵し、この中和液の成分である前記清水及び前記有機酸を前記除害装置に供給する中和液タンクを備えた
ことを特徴とする前記1記載のアンモニアガスの処理装置。
4.
前記除害装置は、前記清水を供給され、
固体有機酸を貯蔵し、この固体有機酸を前記有機酸として前記除害装置に供給する中和剤タンクを備えた
ことを特徴とする前記1記載のアンモニアガスの処理装置。
5.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを収容し、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を中和処理装置に送る除害装置と、
有機酸を貯蔵し、この有機酸を前記中和処理装置に供給する中和剤タンクと
を備え、
前記中和処理装置内において、前記有機酸により、前記アンモニア水が中和され、中和された中和水が中和水保管タンクに送られる
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
6.
前記中和処理装置の下流から、前記中和処理装置の上流への戻り配管を備えた
ことを特徴とする前記5記載のアンモニアガスの処理装置。
7.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを収容し、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を中和水保管タンクに送る除害装置と、
有機酸を貯蔵し、この有機酸を前記中和水保管タンクに供給する中和剤タンクと
を備え、
前記中和水保管タンク内において、前記有機酸により、前記アンモニア水が中和される
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
8.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを収容し、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を、中和水保管タンクに送る除害装置と、
有機酸を貯蔵し、この有機酸を中和処理装置に供給する中和剤タンクと
を備え、
前記アンモニア水は、前記中和処理装置と前記中和水保管タンクとの間を循環され、循環される前記アンモニア水が、前記有機酸により中和される
ことを特徴とするアンモニアガスの処理装置。
9.
前記除害装置から前記中和水保管タンクへの前記アンモニア水の供給は、前記中和処理装置を経由して行われる
ことを特徴とする前記8記載のアンモニアガスの処理装置。
10.
前記アンモニアが中和された中和水からアンモニアガスを発生させる還元剤供給装置と、
前記還元剤供給装置により発生されたアンモニアガスを、前記機関に接続される選択式還元触媒ユニットに供給する輸送部を備える
ことを特徴とする前記1~9の何れかに記載のアンモニアガスの処理装置。
11.
前記還元剤供給装置においてアンモニアガスが発生した後の中和剤残渣を、再利用される中和剤として保管する
ことを特徴とする前記10記載のアンモニアガスの処理装置。
12.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを除害装置に収容させ、
前記除害装置内において、前記液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又は前記アンモニアガスを清水に吸収させ、有機酸により中和させ、中和された中和水を中和水保管タンクに送る
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
13.
清水及び有機酸から有機酸水溶液である中和液を中和液製造装置により製造し、この中和液の成分である前記清水及び前記有機酸を前記除害装置に供給する
ことを特徴とする前記12記載のアンモニアガスの処理方法。
14.
清水及び有機酸からなる有機酸水溶液である中和液を中和液タンクに貯蔵し、この中和液の成分である前記清水及び前記有機酸を前記除害装置に供給する
ことを特徴とする前記12記載のアンモニアガスの処理方法。
15.
前記除害装置に、前記清水を供給し、
固体有機酸を中和剤タンクに貯蔵し、この固体有機酸を前記有機酸として前記除害装置に供給する
ことを特徴とする前記12記載のアンモニアガスの処理方法。
16.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを除害装置に収容させ、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を中和処理装置に送り、
有機酸を中和剤タンクに貯蔵し、この有機酸を前記中和処理装置に供給し、
前記中和処理装置内において、前記アンモニア水に前記有機酸により、前記アンモニア水を中和させ、中和された中和水を中和水保管タンクに送る
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
17.
前記中和処理装置の下流から、前記中和処理装置の上流への戻り配管を設けた
ことを特徴とする前記16記載のアンモニアガスの処理方法。
18.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを除害装置に収容させ、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を中和水保管タンクに送り、
有機酸を中和剤タンクに貯蔵し、この有機酸を前記中和水保管タンクに供給し、
前記中和水保管タンク内において、前記有機酸により、前記アンモニア水を中和させる
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
19.
貨物又は船舶の機関の燃料として液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理方法であって、
前記貨物から揮発し又は前記機関の燃料の供給ラインに残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスを除害装置に収容させ、このアンモニアガスを清水に吸収させてアンモニア水とし、このアンモニア水を、中和水保管タンクに送り、
有機酸を中和剤タンクに貯蔵し、この有機酸を中和処理装置に供給し、
前記アンモニア水を、前記中和処理装置と前記中和水保管タンクとの間を循環させ、循環される前記アンモニア水を、前記有機酸により中和させる
ことを特徴とするアンモニアガスの処理方法。
20.
前記除害装置から前記中和水保管タンクへの前記アンモニア水の供給を、前記中和処理装置を経由して行う
ことを特徴とする前記19記載のアンモニアガスの処理方法。
21.
前記アンモニアが中和された中和水から還元剤供給装置によってアンモニアガスを発生させ、
前記還元剤供給装置により発生されたアンモニアガスを、前記機関に接続される選択式還元触媒ユニットに供給する
ことを特徴とする前記12~20の何れかに記載のアンモニアガスの処理方法。
22.
前記還元剤供給装置においてアンモニアガスが発生した後の中和剤残渣を保管し、中和剤として再利用する
ことを特徴とする前記21記載のアンモニアガスの処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硫酸等に比べて取扱が容易で安全な中和剤を使用する、アンモニアガスの処理装置及び処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
図2】還元剤供給装置におけるアンモニアの減少率を確認したグラフ
図3】本発明の第1の実施形態の改良形態(1)のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
図4】本発明の第1の実施形態の改良形態(2)のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
図5】本発明の第2の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
図6】本発明の第2の実施形態の改良形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
図7】本発明の第3の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
図8】本発明の第4の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
図9】本発明の第4の実施形態の改良形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す各実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
本発明は、貨物又は船舶の機関の燃料として、液化アンモニアを搭載する船舶におけるアンモニアガスの処理装置、及び、このアンモニアガスの処理装置において実行されるアンモニアガスの処理方法である。
【0016】
本発明は、アンモニア水の中和を、硫酸等の強酸に比べて取扱が容易で安全な中和剤を使用して行おうとするものである。本発明では、硫酸等に比べて取扱が容易で安全な中和剤として、有機酸、例えば、クエン酸(C・HO)を使用することができる。
以下の各実施形態では、有機酸としてクエン酸を用いているが、これに限られず、有機酸としては、ギ酸、酢酸、リンゴ酸、シュウ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、酪酸、フマル酸、プロピオン酸などを用いることができる。
【0017】
以下、本発明の実施形態を、アンモニア水の中和が行われる場所によって分類し、図面を参照して説明する。
第1の実施形態では、図1図3図4に示すように、除害装置6において中和が行われる。
第2の実施形態では、図5図6に示すように、中和処理装置23において中和が行われる。
第3の実施形態では、図7に示すように、中和水保管タンク15において中和が行われる。
第4の実施形態では、図8図9に示すように、中和水保管タンク15と中和処理装置23との間の循環過程において中和が行われる。
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。本発明の第1の実施形態のアンモニアガスの処理方法は、このアンモニアガスの処理装置により実行される。図1においては、液体の流路を実線で示し、気体の流路を点線で示している。後述する他の図面においても同様である。
【0019】
本実施形態のアンモニアガスの処理装置は、図1に示すように、液化アンモニアタンク1から、船舶の機関であるエンジン3に液化アンモニア燃料を供給する燃料の供給ラインから導入される液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガス(残留ガス)、または、図示しない貨物用アンモニアタンクから導入されるアンモニアガス(ボイルオフガス)を処理する。
【0020】
燃料の供給ラインは、燃料供給装置2と燃料配管4とからなり、燃料供給装置2が有する圧縮機やポンプ、熱交換器等により、燃料配管4を経て、エンジン3に液化アンモニア燃料を供給する経路である。なお、燃料供給装置2は、不要であれば設けなくともよい。また、燃料配管4は、燃料供給装置2からエンジン3にアンモニアガスを供給する供給配管と、エンジン3から燃料供給装置2に余剰のアンモニアガスを戻す戻り配管とからなっていてもよい。燃料供給装置2の液化アンモニアタンク1側及び燃料配管4のエンジン3側には、図示はしないが、燃料供給装置2の液化アンモニアタンク1側と燃料配管4のエンジン3側との間の区間を閉鎖できる開閉弁が設けられていてもよい。
【0021】
液化アンモニアタンク1は、エンジン3等に使用される燃料の一部であるアンモニアを備蓄する。アンモニアは、液化アンモニアタンク1の中においては液化アンモニアとして保管される。液化アンモニアの液体状態を維持するため、液化アンモニアタンク1は、内部を高圧、または低温に保持される。長期航海等により大量の液化アンモニアを船舶に搭載する場合、液化アンモニアタンク1としては、肉厚が薄く、かつ、加工しやすいフルレフ式(大気圧式)やセミレフ式(半加圧式)が主として用いられる。液化アンモニアタンク1内には、吸出しポンプがあり、この吸出しポンプにより、備蓄している液化アンモニアを燃料供給装置2への配管に送り出す。
【0022】
貨物用アンモニアタンクは、エンジン3等に使用される燃料ではなく、貨物としての液化アンモニアを備蓄する。液化アンモニアタンク1と同様に、貨物用アンモニアタンクの中において、液化アンモニアの液体状態を維持するため、貨物用アンモニアタンクは内部を高圧、または低温に保持される。大量の液化アンモニアを船舶に搭載する場合、貨物用アンモニアタンクとしては、肉厚が薄く、かつ、加工しやすいフルレフ式(大気圧式)やセミレフ式(半加圧式)が主として用いられる。
【0023】
エンジン3には、液化アンモニアタンク1から燃料供給装置2により、液化アンモニア燃料が供給される。また、エンジン3には、重油タンク12から重油燃料供給装置13により、パイロット燃料が供給されてもよい。重油タンク12内には、吸出しポンプがあり、この吸出しポンプにより、備蓄しているパイロット燃料を重油燃料供給装置13への配管に送り出す。
【0024】
パイロット燃料は、アンモニア燃料の燃焼開始時に、アンモニア燃料とともに燃焼され、燃焼室内を昇温して、アンモニア燃料を良好に燃焼させるものである。パイロット燃料は、燃焼室内が昇温してアンモニア燃料のみでの燃焼が可能な状態となったときには、供給を中止してよい。また、エンジン3が、始動時からアンモニア燃料のみでの燃焼が可能なものである場合には、パイロット燃料は不要である。
【0025】
燃料配管4には、開閉弁10を経て、窒素ガス供給装置11から窒素ガスが供給される。この窒素ガスは、燃料配管4を経て、燃料供給装置2にも供給される。この窒素ガスは、エンジン3の起動時、停止時及び緊急停止時に、燃料配管4内及び燃料供給装置2内に残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスをパージするものである。
【0026】
燃料配管4からは、エンジン3の起動時、停止時又は緊急停止時に、気液分離器4a及び開閉弁5を経て、残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスが除害装置6に導入される。また、燃料供給装置2からも、エンジン3の起動時、停止時又は緊急停止時及びメンテナンス時などに、開閉弁2aを経て、残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスが除害装置6に導入される。なお、燃料供給装置2内には、ポンプなどとともに、残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスの排出口に気液分離器が設けられている。
なお、燃料配管4及び燃料供給装置2から除害装置6に導入されるガスは、アンモニアガス及びパージガスである例えば窒素などとの混合気体である。本実施形態における処理は、混合気体中のアンモニア成分に対して行うことになる。
アンモニアガスが除害装置6に導入されるとき、燃料供給装置2の液化アンモニアタンク1側と燃料配管4のエンジン3側との間の区間は、開閉弁によって閉鎖される。また、貨物用アンモニアタンクからも、アンモニアガス(ボイルオフガス)が除害装置6に導入される。なお、パージのための窒素ガスは、除害装置6を経て、大気中に放出される。
【0027】
除害装置6では、アンモニアガスが清水に吸収されるとともに、有機酸により中和される。本実施形態では、除害装置6には、有機酸水溶液である中和液(例えば、クエン酸水溶液)製造装置14から、ポンプにより中和液が供給され、この中和液の成分として清水及び中和剤(有機酸)が供給される。
【0028】
中和液の成分である中和剤は、本実施形態では、固体(粉体)有機酸であるクエン酸である。固体(粉体)のクエン酸は、陸上で製造されたものである。なお、クエン酸は、常温では無色又は白色の固体である。中和剤は、中和液製造装置14に供給される。
【0029】
中和液の成分である清水は、例えば、船内の造水器によって生成され、中和液製造装置14に供給されるが、あらかじめ保管された清水を中和液製造装置14に供給してもよい。
【0030】
中和液製造装置14は、清水を供給され、中和剤(クエン酸粉体)を供給され、液体である中和液(クエン酸水溶液)を製造し、ポンプにより除害装置6に送る。除害装置6では、供給ラインから導入された残留した液化アンモニアが気化したアンモニアガス及び/又はアンモニアガスが、中和液製造装置14から送られた中和液に吸収され、中和される。
【0031】
除害装置6において液体である中和液を用いるには、例えば、攪拌槽またはスタティックミキサー等の配管中に、所定量の中和液を添加し、除害装置6内のpH値を確認しながら中和する。中和されたことは、除害装置6に設けられたpH計によって確認することができる。
【0032】
アンモニアガスを吸収し中和した中和水(クエン酸アンモニウム塩水溶液(HOC(COOH)(CHCOONH)))は、中和水保管タンク15に送られて保管される。除害装置6から中和水保管タンク15への送液は、オーバーフロー、重力による送液、または、ポンプを用いた送液の何れであってもよい。
保管された中和水は、排出規制のない海域であれば、船外に排出することができる。
【0033】
本実施形態においては、船舶におけるアンモニアガスの処理装置及びアンモニアガスの処理方法において、クエン酸などの有機酸を中和剤として使用するので、硫酸等を使用する場合に比べて取扱が容易で安全である。
【0034】
中和水保管タンク15に保管された中和水は、輸送ポンプ18aにより還元剤供給装置19に送り、この還元剤供給装置19において100℃~150℃の範囲で加熱し、アンモニアガスを発生させ、選択式還元触媒(SCR)ユニット17における還元剤として利用するようにしてもよい。中和水の加熱は、ヒータによってもよいし、エンジン3の排熱を利用してもよい。
【0035】
図2は、還元剤供給装置におけるアンモニアの減少率を確認したグラフである。
本発明者は、還元剤供給装置19においてアンモニアガスが発生することを確認するため、10%のクエン酸水溶液に5%のアンモニアを吸収させた中和水を加熱し、図2に示すように、アンモニア水溶液分の減少率を確認した。
加熱によりアンモニア水溶液分が減少してゆき、100℃以上で約90%分が減少し、150℃付近では90%を超える分が減少していることを確認した。これにより、100℃以上、特に150℃以上ではアンモニア水溶液分の減少率の変化が少なくなってクエン酸分が残っていることを確認した。
したがって、中和液は、100℃以上、特に150℃以上付近まで加熱することによって、還元剤として利用できるアンモニアガスを発生させることができることが確認された。
【0036】
還元剤供給装置19により発生されたアンモニアガスは、輸送部18を経て、換気ファン20により、エンジン3に接続された選択式還元触媒ユニット17に供給される。なお、換気ファン20は、別置きにしてもよい。選択式還元触媒ユニット17では、アンモニアガスは、パイロット燃料の排ガス中のNOと反応して、選択接触還元法(SCR:Selective Catalytic Reduction)による脱硝処理を行う。脱硝処理された排ガスは、大気中に排気される。後述する他の実施形態においても同様である。
【0037】
このように、中和水からアンモニアガスを発生させ、選択式還元触媒ユニット17において利用することにより、中和水を減容化することができる。また、中和水を陸揚げする操作が不要となり、海上への放流も不要となる。
【0038】
還元剤供給装置19からは、アンモニアガスが発生した後、中和剤残渣(有機酸成分)が排出される。この中和剤残渣は、回収して保管し、水に溶かして再度中和剤として利用することができる。なお、中和剤残渣は、焼却し、または、大気中に放出してもよい。
本実施形態においては、中和剤に有機酸を用いているので、還元剤供給装置19から排出される中和剤残渣は炭素分であり、中和剤残渣の回収における追加処理設備等は不要である。
中和剤に無機酸である硫酸を用いた場合には、硫黄が析出物となるので、粉塵爆発等の虞がある。また、触媒内で硫安が発生し、触媒内での目詰まりも懸念される。また、中和剤に無機酸である硝酸を用いた場合には、中和後にNOなどの有害なガスが発生するため、その処理設備の追加が必要になる。
【0039】
〔第1の実施形態の改良形態(1)〕
図3は、本発明の第1の実施形態の改良形態(1)のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。
【0040】
本改良形態(1)のアンモニアガスの処理装置は、図3に示すように、第1の実施形態における中和液製造装置14に代えて、中和液タンク9を設けた。
【0041】
中和液タンク9は、陸上で製造された中和液(クエン酸水溶液)を貯蔵しており、ポンプにより、除害装置6に中和液を供給する。除害装置6では、アンモニアガスが、中和液タンク9から送られた中和液の成分である清水に吸収され、中和液の成分である有機酸により中和される。
【0042】
〔第1の実施形態の改良形態(2)〕
図4は、本発明の第1の実施形態の改良形態(2)のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。
【0043】
本改良形態(2)のアンモニアガスの処理装置は、図4に示すように、中和剤及び清水を、第1の実施形態における中和液製造装置14にではなく、除害装置6に供給するようにしたものである。中和剤は、本改良形態(2)では、固体(粉体)有機酸であるクエン酸である。
【0044】
本改良形態(2)では、中和液の成分である清水は、例えば、船内の造水器によって生成され、清水タンク22に貯蔵してもよいし、あらかじめ清水をタンクに貯蔵しておいてもよい。清水タンク22からは、給水ポンプ22aにより、貯蔵している清水が除害装置6に供給される。除害装置6では、アンモニアガスが、清水タンク22から供給された清水に吸収、回収され、アンモニア水が生成される。除害装置6では、pH計によって、生成されたアンモニア水のpHを確認することができる。
【0045】
除害装置6においてアンモニア水が生成された後、中和剤が、除害装置6に供給される。除害装置6では、アンモニア水が、中和剤によって中和される。固体である中和剤を用いるには、攪拌槽へ固体供給装置で所定量の中和剤を添加し、除害装置6内のpH値を確認しながら、中和する。中和されたこと(pH8以下)は、除害装置6に設けられたpH計によって確認することができる。
【0046】
なお、固体である中和剤を用いたほうが、液体である中和液を用いる場合よりも、中和水の量(体積)が抑えられるので、中和水保管タンク15の容量を小さくすることができる。この場合には、除害装置6内に、反応熱を抑制するため熱交換器を設置し、液温度をさげることが好ましい。
【0047】
〔第2の実施形態〕
図5は、本発明の第2の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。本発明の第2の実施形態のアンモニアガスの処理方法は、このアンモニアガスの処理装置により実行される。図1図3図4と同一の符号は同一の構成であり、特に説明がない限り、図1図3図4における説明を援用しここではその説明を省略する。
【0048】
本実施形態のアンモニアガスの処理装置は、図5に示すように、清水タンク22からの清水を、第1の実施形態の改良形態(2)と同様に、給水ポンプ22aにより除害装置6に供給するが、第1の実施形態の改良形態(2)と異なり、中和剤又は中和液を中和剤タンク21に貯蔵し、中和剤タンク21からの中和剤又は中和液を中和処理装置23に供給するようにしたものである。
【0049】
中和剤タンク21は、陸上で製造された固体(粉体)の中和剤(クエン酸)、または、陸上で製造された液体の中和液(クエン酸水溶液)を貯蔵している。固体の中和剤を貯蔵する場合には、中和剤タンク21からは、図示しないスクリューコンベアなどの移送機器によって中和剤を送り出す。また、液体の中和液を貯蔵する場合には、中和剤タンク21からは、図示しないポンプによって中和液を送り出す。以降の実施形態及び改良形態における中和剤タンク21も同様である。
【0050】
除害装置6では、アンモニアガスが、清水タンク22から供給された清水に吸収、回収され、アンモニア水が生成される。除害装置6では、pH計によって、生成されたアンモニア水のpHを確認することができる。このアンモニア水は、中和処理装置23に供給される。除害装置6から中和処理装置23への送液は、オーバーフロー、重力による送液、または、ポンプを用いた送液の何れであってもよい。
【0051】
中和処理装置23では、アンモニア水が、中和剤タンク21から供給された中和剤又は中和液によって中和される。中和されたこと(pH8以下)は、中和処理装置23に設けられたpH計によって確認することができる。
【0052】
アンモニア水が中和剤又は中和液によって中和された中和水は、アンモニアガスが揮発しないように、中和水保管タンク15によって一次保管する。中和水保管タンク15に保管された中和水は、第1の実施形態と同様に、排出規制のない海域であれば、船外に排出することができ、または、輸送ポンプ18aにより還元剤供給装置19に送り、アンモニアガスを発生させ、選択式還元触媒ユニット17における還元剤として利用してもよい。
【0053】
固体である中和剤を用いる場合には、前述したように、攪拌槽へ固体供給装置で所定量の中和剤を添加し、中和処理装置23内のpH値を確認しながら、中和する。固体である中和剤を用いたほうが、液体である中和液を用いる場合よりも、中和水の量(体積)が抑えられるので、中和水保管タンク15の容量を小さくすることができる。この場合には、中和処理装置23内に、反応熱を抑制するため熱交換器を設置し、液温度をさげることが好ましい。
【0054】
なお、中和水保管タンク15には、中和水保管タンク15に収容された液体の一部を中和水保管タンク15から循環ポンプにより送り出し、この液体を中和処理装置23に戻す戻り配管を設けてもよい。この戻り配管により、中和が十分になされずアンモニア成分を含む液体が中和水保管タンク15に送られてしまった場合に、この液体を中和処理装置23に戻し、さらに中和を行うことができる。また、戻り配管により、中和水保管タンク15に送られる液体のpH値が7より低く(酸性に)なってしまっている場合には、この液体を中和処理装置23に戻し、中和前のpH値の高い(塩基性の)液体に混ぜて中和することができる。
【0055】
本実施形態においても、船舶におけるアンモニアガスの処理装置及びアンモニアガスの処理方法において、クエン酸などの有機酸を中和剤として使用するので、硫酸等を使用する場合に比べて取扱が容易で安全である。
【0056】
本実施形態においても、中和剤に有機酸を用いているので、還元剤供給装置19及び選択式還元触媒ユニット17を設けた場合において、還元剤供給装置19から排出される中和剤残渣は炭素分であり、中和剤残渣の回収における追加処理設備等は不要である。
【0057】
〔第2の実施形態の改良形態〕
図6は、本発明の第2の実施形態の改良形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。
【0058】
本改良形態は、図6に示すように、第2の実施形態において、中和処理装置23の下流から、中和処理装置23の上流への戻り配管23aを設けたものである。戻り配管23aは、中和処理装置23に収容された液体の一部を中和処理装置23から循環ポンプ23bにより送り出し、この液体を再び中和処理装置23に流入させる。
【0059】
本改良形態では、戻り配管23aにより、中和処理装置23内に中和が十分になされずアンモニア成分を含む液体が残留している場合に、この液体を中和処理装置23に再び流入させ、さらに中和を行うことができる。また、戻り配管23aにより、中和水保管タンク15に送られる液体のpH値が7より低く(酸性に)なってしまっている場合には、この液体を中和処理装置23に戻し、中和前のpH値の高い(塩基性の)液体に混ぜて中和することができる。
【0060】
〔第3の実施形態〕
図7は、本発明の第3の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。本発明の第3の実施形態のアンモニアガスの処理方法は、このアンモニアガスの処理装置により実行される。図1図3図6と同一の符号は同一の構成であり、特に説明がない限り、図1図3図6における説明を援用しここではその説明を省略する。
【0061】
本実施形態のアンモニアガスの処理装置は、図7に示すように、清水タンク22からの清水を、第2の実施形態と同様に、給水ポンプ22aにより除害装置6に供給するが、第1及び第2の実施形態と異なり、中和剤タンク21からの中和剤又は中和液を、中和水保管タンク15に供給するようにしたものである。
【0062】
除害装置6では、アンモニアガスが、清水タンク22から供給された清水に吸収、回収され、アンモニア水が生成される。除害装置6では、pH計によって、生成されたアンモニア水のpHを確認することができる。このアンモニア水は、アンモニアガスが揮発しないように、中和水保管タンク15に供給されて保管される。除害装置6から中和水保管タンク15への送液は、オーバーフロー、重力による送液、または、ポンプを用いた送液の何れであってもよい。
【0063】
中和水保管タンク15では、アンモニア水が、中和剤タンク21から供給された中和剤又は中和液によって中和される。中和水保管タンク15における保管は、アンモニア水成分が十分に中和されるまで行う。中和されたこと(pH8以下)は、中和水保管タンク15に設けられたpH計によって確認することができる。
【0064】
中和水保管タンク15に保管された中和水は、第1の実施形態と同様に、排出規制のない海域であれば、船外に排出することができ、または、輸送ポンプ18aにより還元剤供給装置19に送り、アンモニアガスを発生させ、選択式還元触媒ユニット17における還元剤として利用してもよい。
【0065】
本実施形態でも、固体である中和剤を用いることにより、液体である中和液を用いる場合よりも、中和水の量(体積)が抑えられ、中和水保管タンク15の容量を小さくすることができる。この場合には、中和水保管タンク15内に、反応熱を抑制するため熱交換器を設置し、液温度をさげることが好ましい。
【0066】
本実施形態においても、船舶におけるアンモニアガスの処理装置及びアンモニアガスの処理方法において、クエン酸などの有機酸を中和剤として使用するので、硫酸等を使用する場合に比べて取扱が容易で安全である。
【0067】
本実施形態においても、中和剤に有機酸を用いているので、還元剤供給装置19及び選択式還元触媒ユニット17を設けた場合において、還元剤供給装置19から排出される中和剤残渣は炭素分であり、中和剤残渣の回収における追加処理設備等は不要である。
【0068】
〔第4の実施形態〕
図8は、本発明の第4の実施形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。本発明の第4の実施形態のアンモニアガスの処理方法は、このアンモニアガスの処理装置により実行される。図1図3図7と同一の符号は同一の構成であり、特に説明がない限り、図1図3図7における説明を援用しここではその説明を省略する。
【0069】
本実施形態のアンモニアガスの処理装置は、図8に示すように、中和水保管タンク15に保管された中和水を、中和処理装置23との間で循環させるようにしたものである。
【0070】
本実施形態においても、清水タンク22に貯蔵された清水は、給水ポンプ22aにより除害装置6に供給される。除害装置6では、アンモニアガスが、清水タンク22から送られた清水に吸収、回収され、アンモニア水が生成される。除害装置6では、pH計によって、生成されたアンモニア水のpHを確認することができる。このアンモニア水は、中和水保管タンク15に供給され、その一部が中和水保管タンク15から循環ポンプ23bにより中和処理装置23に供給される。除害装置6から中和水保管タンク15への送液は、オーバーフロー、重力による送液、または、ポンプを用いた送液の何れであってもよい。
【0071】
中和処理装置23には、中和剤タンク21に貯蔵された中和剤又は中和液が供給される。中和処理装置23では、アンモニア水が、中和剤タンク21から供給された中和剤又は中和液によって中和される。中和されたこと(pH8以下)は、中和処理装置23に設けられたpH計によって確認することができる。アンモニア水が中和剤又は中和液によって中和された中和水は、アンモニアガスが揮発しないように、中和水保管タンク15に戻されて保管される。つまり、アンモニア水及び中和水は、中和水保管タンク15と中和処理装置23との間を循環する。
【0072】
中和水保管タンク15と中和処理装置23との間のアンモニア水及び中和水の循環は、アンモニア水成分が十分に中和されるまで行う。中和水保管タンク15に保管された中和水は、第1の実施形態と同様に、排出規制のない海域であれば、船外に排出することができ、または、輸送ポンプ18aにより還元剤供給装置19に送り、アンモニアガスを発生させ、選択式還元触媒ユニット17における還元剤として利用してもよい。
【0073】
本実施形態では、中和水保管タンク15からアンモニア水の一部を抜き出して中和処理装置23に供給するので、除害装置6からのアンモニア水の全量を一括して中和処理する第2の実施形態よりも、中和処理装置23の容量を低減できる利点がある。
【0074】
本実施形態でも、固体である中和剤を用いることにより、液体である中和液を用いる場合よりも、中和水の量(体積)が抑えられ、中和水保管タンク15の容量を小さくすることができる。この場合には、中和処理装置23内には、反応熱を抑制するため熱交換器を設置し、液温度をさげることが好ましい。
【0075】
本実施形態においても、船舶におけるアンモニアガスの処理装置及びアンモニアガスの処理方法において、クエン酸などの有機酸を中和剤として使用するので、硫酸等を使用する場合に比べて取扱が容易で安全である。
【0076】
本実施形態においても、中和剤に有機酸を用いているので、還元剤供給装置19及び選択式還元触媒ユニット17を設けた場合において、還元剤供給装置19から排出される中和剤残渣は炭素分であり、中和剤残渣の回収における追加処理設備等は不要である。
【0077】
〔第4の実施形態の改良形態〕
図9は、本発明の第4の実施形態の改良形態のアンモニアガスの処理装置の構成を示すブロック図である。
【0078】
本改良形態のアンモニアガスの処理装置は、図9に示すように、第4の実施形態(図8)において、除害装置6から中和水保管タンク15へのアンモニア水の供給を、中和処理装置23を経由して行うようにしたものである。その他は第4の実施形態(図8)と同様である。
【0079】
本実施形態では、中和処理装置23では、除害装置6から供給されたアンモニア水に、中和剤タンク21から中和剤又は中和液を供給して中和を開始し、アンモニア水及び中和水を中和水保管タンク15に供給する。中和処理装置23から中和水保管タンク15への送液は、オーバーフロー、重力による送液、または、ポンプを用いた送液の何れであってもよい。
【0080】
本実施形態では、第4の実施形態よりも早く中和が開始されるので、アンモニア水からのアンモニアガスの揮発のリスクがより抑えられる。
【0081】
中和水保管タンク15からは、第4の実施形態と同様に、収容した液体の一部が循環ポンプ23bにより中和処理装置23に再び供給される。つまり、アンモニア水及び中和水は、中和水保管タンク15と中和処理装置23との間を循環する。中和水保管タンク15と中和処理装置23との間のアンモニア水及び中和水の循環は、アンモニア水成分が十分に中和されるまで行う。
【符号の説明】
【0082】
1 液化アンモニアタンク
2 燃料供給装置
2a 開閉弁
3 エンジン
4 燃料配管
4a 気液分離器
5 開閉弁
6 除害装置
9 中和液(クエン酸水溶液)タンク
10 開閉弁
11 窒素ガス供給装置
12 重油タンク
13 重油燃料供給装置
14 中和液(クエン酸水溶液)製造装置
15 中和水保管タンク
17 選択式還元触媒(SCR)ユニット
18 輸送部
18a 輸送ポンプ
19 還元剤供給装置
20 換気ファン
21 中和剤タンク
22 清水タンク
22a 給水ポンプ
23 中和処理装置
23a 戻り配管
23b 循環ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9