(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112306
(43)【公開日】2024-08-20
(54)【発明の名称】送出装置、受信装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/2662 20110101AFI20240813BHJP
H04N 21/2362 20110101ALI20240813BHJP
H04N 21/434 20110101ALI20240813BHJP
H04N 21/4545 20110101ALI20240813BHJP
H04N 19/46 20140101ALI20240813BHJP
H04N 19/33 20140101ALI20240813BHJP
【FI】
H04N21/2662
H04N21/2362
H04N21/434
H04N21/4545
H04N19/46
H04N19/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016393
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2023017194
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】岩村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 敦郎
【テーマコード(参考)】
5C159
5C164
【Fターム(参考)】
5C159MA32
5C159RB01
5C159RC11
5C159UA02
5C159UA05
5C164FA04
5C164MA02S
5C164MB13S
5C164MB42S
5C164SB15P
5C164SC03P
5C164UB11P
5C164UB36S
5C164UC15P
(57)【要約】
【課題】マルチレイヤ符号化を利用して視聴者に適切なサービス提供を行うことを可能とする。
【解決手段】送出装置(1)は、マルチレイヤ符号化により複数のレイヤのビットストリームを生成する生成手段(11)と、前記生成手段により生成された前記複数のレイヤのビットストリームを多重化してマルチレイヤビットストリームを出力する多重化手段(13)と、を備え、前記多重化手段は、受信側における非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報を前記マルチレイヤビットストリームに多重化する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレイヤ符号化により複数のレイヤのビットストリームを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記複数のレイヤのビットストリームを多重化してマルチレイヤビットストリームを出力する多重化手段と、を備え、
前記多重化手段は、受信側における非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報を前記マルチレイヤビットストリームに多重化する
送出装置。
【請求項2】
前記非リアルタイム再生は、ビットストリームの録画を含む
請求項1に記載の送出装置。
【請求項3】
前記非リアルタイム再生は、録画されたビットストリームの再生を含む
請求項1に記載の送出装置。
【請求項4】
前記非リアルタイム再生は、復号されたビットストリームを再符号化したうえで録画するトランスコード録画を含む
請求項1に記載の送出装置。
【請求項5】
前記複数のレイヤは、ベースレイヤと、1つ又は複数のエンハンスメントレイヤとを含み、
前記多重化手段は、前記非リアルタイム再生を許可するか否かを、少なくとも前記1つ又は複数のエンハンスメントレイヤのそれぞれについて指定する前記情報を前記マルチレイヤビットストリームに多重化する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の送出装置。
【請求項6】
前記多重化手段は、各レイヤセットを構成するレイヤを示すレイヤセット情報と、前記非リアルタイム再生を許可するか否かを前記レイヤセット単位で指定する前記情報と、を前記マルチレイヤビットストリームに多重化する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の送出装置。
【請求項7】
前記生成手段は、
主映像をベースレイヤとして符号化し、前記ベースレイヤのビットストリームを出力するベースレイヤ符号化手段と、
上乗せ情報が重畳された主映像をエンハンスメントレイヤとして符号化し、前記エンハンスメントレイヤのビットストリームを出力するエンハンスメントレイヤ符号化手段と、を備える
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の送出装置。
【請求項8】
送出側におけるマルチレイヤ符号化により得られたマルチレイヤビットストリームを受信する受信装置であって、
前記マルチレイヤビットストリームに多重化されている複数のレイヤのビットストリームを分離する分離手段と、
受信側における非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報を前記マルチレイヤビットストリームから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記情報に基づいて、前記非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについて前記非リアルタイム再生を行う非リアルタイム再生手段と、を備える
受信装置。
【請求項9】
前記非リアルタイム再生手段は、前記非リアルタイム再生としてビットストリームの録画を行う録画手段を含み、
前記録画手段は、前記取得手段により取得された前記情報に基づいて、前記非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについて前記録画を行う
請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
前記非リアルタイム再生手段は、前記非リアルタイム再生として、録画されたビットストリームの再生を行う再生手段を含み、
前記再生手段は、前記取得手段により取得された前記情報に基づいて、前記非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについて前記再生を行う
請求項8に記載の受信装置。
【請求項11】
前記非リアルタイム再生手段は、前記非リアルタイム再生として、復号されたビットストリームを再符号化したうえで録画するトランスコード録画を行うトランスコード録画手段を含み、
前記トランスコード録画手段は、前記取得手段により取得された前記情報に基づいて、前記非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについて前記トランスコード録画を行う
請求項8に記載の受信装置。
【請求項12】
前記複数のレイヤは、1つ又は複数のエンハンスメントレイヤを含み、
前記取得手段は、前記非リアルタイム再生を許可するか否かを前記1つ又は複数のエンハンスメントレイヤのそれぞれについて指定する前記情報を前記マルチレイヤビットストリームから取得する
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項13】
前記取得手段は、各レイヤセットを構成するレイヤを指定するレイヤセット情報と、前記非リアルタイム再生を許可するか否かを前記レイヤセット単位で指定する前記情報と、を前記マルチレイヤビットストリームから取得する
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項14】
前記非リアルタイム再生手段は、ユーザが指定したサービスに対応するレイヤセットであって、且つ前記非リアルタイム再生が許可されたレイヤセットについて前記非リアルタイム再生を行う
請求項13に記載の受信装置。
【請求項15】
コンピュータを請求項8に記載の受信装置として機能させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像伝送システムで用いる送出装置、受信装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送の映像伝送では、基本的に1チャンネル1映像しか伝送できないモードを用いてきた。例えば、現在の4K8K衛星放送で用いられているHEVC(High Efficiency Video Coding)と呼ばれる符号化方式では、Main10プロファイルと呼ばれる符号化ツール群を用いて映像が伝送されている。また、HEVCでは、複数の映像をレイヤ状に伝送するScalable Main 10プロファイルと呼ばれるツール群が存在する。これは、ベースレイヤとしてMain10プロファイル相当の映像を伝送しながら、上位レイヤ(エンハンスメントレイヤ)として追加的な映像を重畳することができる符号化の仕組みである。同様に、最新の符号化方式であるVVC(Versatile Video Coding)においても、Main10プロファイルに加えて、複数レイヤの映像伝送を実現するMultilayer Main10プロファイルが開発されている。
【0003】
このようなマルチレイヤ符号化の技術では、ベースレイヤを基本のストリームとし、その差分映像をエンハンスメントレイヤとして伝送する。マルチレイヤ符号化は、マルチレイヤ符号化又は階層符号化と称されることもある。受信側は、ベースレイヤ単体での復号に加え、ベースレイヤ及びエンハンスメントレイヤを組み合わせて復号することも可能である。マルチレイヤ符号化によれば、例えば、複数のレイヤのビットストリームを利用して復号すると高い品質の映像が再生されるのに対し、一部のレイヤ(ベースレイヤ)のビットストリームのみを復号しても低い品質の映像が再生可能である。
【0004】
マルチレイヤ符号化の第1の応用例として、ベースレイヤに対して品質向上のためのエンハンスメントレイヤを伝送することで、品質の異なる(低品質、高品質)映像サービスを実現するSNRスケーラブルがある。第2の応用例として、ベースレイヤ(低解像度映像)に対して解像度向上のためのエンハンスメントレイヤ(高解像度映像)を伝送する空間スケーラブルがある。空間スケーラブルによれば、2K映像と4K映像とのセットや、4K映像と8K映像とのセット等、異なる解像度の放送サービスを効率的に同時に伝送可能である。第3の応用例として、ベースレイヤに対してフレームレート向上のためのエンハンスメントレイヤを伝送する時間スケーラブル(Temporal Scalable)がある。
【0005】
特許文献1には、マルチレイヤ符号化(特に、SNRスケーラブル)を応用して映像の上乗せサービスを実現する技術が記載されている。具体的には、主映像をベースレイヤとして符号化するとともに、字幕や解説映像等の上乗せ情報(すなわち、副映像)を主映像に重畳した映像をエンハンスメントレイヤとして符号化し、ベースレイヤ及びエンハンスメントレイヤのそれぞれのビットストリームを送出する。このような方法によれば、ベースレイヤのみを受信する受信装置は主映像のみを再生可能である一方、ベースレイヤ及びエンハンスメントレイヤを受信する受信装置は、ベースレイヤのみの復号を行うことで主映像を、ベースレイヤ及びエンハンスメントレイヤの両方を復号することで副映像付きの主映像をそれぞれ再生可能となり、受信したいサービスの選択を受信装置側で行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
受信装置の中には、録画機能等の非リアルタイム再生機能を有するものが存在する。上述のようなマルチレイヤ符号化を利用した映像上乗せサービスでは、緊急地震速報等の速報情報の映像を上乗せすることがあるが、このような情報は、非リアルタイム再生に不向きであるといえる。例えば、非リアルタイム再生により速報情報が視聴者に提示されると、視聴者に誤解や混乱を生じさせる懸念がある。
【0008】
そこで、本発明は、マルチレイヤ符号化を利用して視聴者に適切なサービス提供を行うことが可能な送出装置、受信装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る送出装置は、マルチレイヤ符号化により複数のレイヤのビットストリームを生成する生成手段と、前記生成手段により生成された前記複数のレイヤのビットストリームを多重化してマルチレイヤビットストリームを出力する多重化手段と、を備え、前記多重化手段は、受信側における非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報を前記マルチレイヤビットストリームに多重化することを要旨とする。
【0010】
第2の態様に係る受信装置は、送出側におけるマルチレイヤ符号化により得られたマルチレイヤビットストリームを受信する受信装置であって、前記マルチレイヤビットストリームに多重化されている複数のレイヤのビットストリームを分離する分離手段と、受信側における非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報を前記マルチレイヤビットストリームから取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記情報に基づいて、前記非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについて前記非リアルタイム再生を行う非リアルタイム再生手段と、を備えることを要旨とする。
【0011】
第3の態様に係るプログラムは、コンピュータを第2の態様に係る受信装置として機能させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マルチレイヤ符号化を利用して視聴者に適切なサービス提供を行うことが可能な送出装置、受信装置、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る放送システムの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る送出装置の構成例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る重畳部の動作例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る制御情報生成部の第1動作例を説明するための図である。
【
図5】実施形態に係る制御情報生成部の第2動作例を説明するための図である。
【
図6】実施形態に係る制御情報生成部の第3動作例を説明するための図である。
【
図7】実施形態に係る受信装置の第1構成例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る受信装置の第2構成例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る受信装置の第3構成例を示す図である。
【
図10】実施形態の第1変更例を説明するための図である。
【
図11】実施形態の第2変更例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態に係る映像伝送システムである放送システムについて説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。以下において、映像伝送システムの一例として放送システムについて説明する。放送システムは、送出装置から受信装置へ放送伝送路を介して一方向の配信を行うシステムである。しかしながら、映像伝送システムは放送システムに限定されない。映像伝送システムは、送出装置と受信装置とが通信回線を介して双方向の通信を行うシステム、例えば、インターネット経由で映像伝送を行うネット配信システムであってもよい。
【0015】
(放送システム)
図1は、実施形態に係る放送システム10の構成を示す図である。放送システム10は、映像伝送システムの一例である。放送システム10は、送出装置1と受信装置2とを有する。
図1では、受信装置2を1つのみ図示しているが、受信装置2の数は複数であってもよい。送出装置1は、番組映像データを符号化して送出する。受信装置2は、符号化された番組映像データを受信して再生(復号を含む)する。実施形態において、放送システム10は、マルチレイヤ符号化を用いて放送の映像伝送を行う。
【0016】
マルチレイヤ符号化では、ベースレイヤ(以下、「BL」と表記する)を基本のストリームとし、その差分映像をエンハンスメントレイヤ(以下、「EL」と表記する)として伝送する。
図1において、複数のEL(EL#1乃至EL#n)を伝送する例を図示しているが、伝送するELは1つのみであってもよい。ここで、「#」が付された数字は、ビットストリームの識別子(ストリーム番号)を意味する。なお、ELの最大数nは、2以上の整数であって、サービスによって符号化方式で定められる。受信装置2は、BL単体での復号だけではなく、BL及びELを組み合わせて復号することも可能である。
【0017】
マルチレイヤ符号化の方式には、HEVCにおけるScalable Main 10プロファイルを用いることができる。Scalable Main 10プロファイルは、BLとしてMain10プロファイル相当の映像を伝送しながら、ELを追加してBLの映像に重畳することができる符号化の仕組みである。或いは、マルチレイヤ符号化の方式には、VVCにおけるMultilayer Main10プロファイルを用いてもよい。Multilayer Main10プロファイルでは、上述のScalable Main 10プロファイルと同様に、Main10プロファイルに対して複数レイヤの伝送を実現するプロファイルであり、複数のレイヤの映像伝送が可能である。このようなマルチレイヤ機能を備えた符号化技術では、映像の本サービスとなるBLに対して上位レイヤであるELの映像を重畳することができる。なお、マルチレイヤ符号化としてHEVCのScalable Main 10プロファイルやVVCのMultilayer Main10プロファイルを例に挙げたが、HEVCやVVCに限定されるものではなく、他の符号化方式を用いてもよい。
【0018】
送出装置1は、マルチレイヤ符号化(特に、SNRスケーラブル)を応用して映像の上乗せサービスを実現する。具体的には、送出装置1は、主映像をBLとして符号化するとともに、字幕や解説映像等の上乗せ情報(すなわち、副映像)を主映像に重畳した映像をELとして符号化し、BL及びELのそれぞれのビットストリーム(以下、単に「ストリーム」とも称する)を送出する。このような方法によれば、BLのみを受信する受信装置2は主映像のみを再生可能である一方、BL及びELを受信する受信装置2は、BLのみの復号を行うことで主映像を、BL及びELの両方を復号することで副映像付きの主映像をそれぞれ再生可能となり、受信したいサービスの選択を受信装置2側で行うことが可能となる。
【0019】
ここで、上乗せ情報とは、主映像の一例である番組映像に上乗せして提示する情報である。上乗せ情報は、提示に即時性が要求される情報であってもよい。上乗せ情報は、画面の一部のみを占有する情報であり、例えば、時報や緊急地震速報と呼ばれる情報やニュース速報と呼ばれる情報が上乗せ情報に相当する。上乗せ情報は、字幕(例えば、災害や事件・事故を知らせるテロップ)であってもよい。字幕は、数字を含む文字、図形、若しくは記号、又はこれらの組み合わせからなる。但し、上乗せ情報は、緊急地震速報やニュース速報等の速報サービスに限定されるものではなく、他の情報であってもよい。上乗せ情報は、多言語字幕サービスにおける字幕であってもよいし、主映像サービスに関する解説映像サービスにおける解説映像であってもよい(特許文献1参照)。
【0020】
実施形態に係る受信装置2は、録画機能等の非リアルタイム再生機能を有する。上述のようなマルチレイヤ符号化を利用した映像上乗せでは、緊急地震速報等の速報情報の映像を上乗せすることがあるが、このような情報は、非リアルタイム再生に不向きであるといえる。例えば、非リアルタイム再生により速報情報が視聴者に提示されると、視聴者に誤解や混乱を生じさせる懸念がある。
【0021】
実施形態に係る送出装置1の概要について説明する。
【0022】
実施形態に係る送出装置1は、ビットストリーム生成部11(生成手段)と、制御情報生成部12と、多重化部13(多重化手段)とを有する。ビットストリーム生成部11は、マルチレイヤ符号化により複数のレイヤのビットストリームを生成する。当該複数のレイヤは、1つのチャンネル(1つの番組)に属する。制御情報生成部12は、受信装置2における非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報を含む制御情報を生成する。レイヤセットとは、1つのサービスに属する1つ又は複数のレイヤからなるセットをいう。通常、1つのサービス(例えば、速報サービス、多言語字幕サービス、又は解説映像サービス)は、BLと、1つ又は複数のELとの組み合わせにより構成される。多重化部13は、ビットストリーム生成部11により生成された複数のレイヤのビットストリームと、制御情報生成部12により生成された制御情報とを多重化してマルチレイヤビットストリームを出力する。なお、レイヤセットは、例えばVVC規格におけるOutput Layer Set(OLS)と同義であってもよい。OLSは、マルチレイヤ符号化において、複数のレイヤがある際に、復号側がどのレイヤを実際に映像出力すべきかを示す情報である。
【0023】
これにより、非リアルタイム再生に不向きな上乗せ情報(例えば、速報情報)を伝送するレイヤ又はレイヤセットのビットストリームについて、非リアルタイム再生がなされないように制御することが可能になる。例えば、非リアルタイム再生により速報情報が視聴者に提示されることを抑制でき、視聴者に誤解や混乱を生じさせることを防止可能になる。よって、マルチレイヤ符号化を利用して視聴者に適切なサービス提供を行うことが可能である。なお、受信装置2は、非リアルタイム再生が許可されないレイヤ又はレイヤセットについて、非リアルタイム再生が禁止されるものの、リアルタイム再生を行うことは可能である。
【0024】
実施形態では、非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報は、非リアルタイム再生の可否をレイヤ単位又はレイヤセット単位で示す1ビットのフラグにより構成される。すなわち、制御情報は、レイヤ単位で設定されるフラグからなるフラグ群又はレイヤセット単位で設定されるフラグからなるフラグ群を含む。以下において、当該フラグを「非リアルタイム再生可否フラグ」と称する。但し、非リアルタイム再生可否フラグは、1ビットのフラグに限定されず、複数ビットのシンタックス要素であってもよい。
【0025】
受信装置2における非リアルタイム再生は、ビットストリームの録画を含む。非リアルタイム再生可否フラグは、受信装置2におけるビットストリームの録画を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報であってもよい。これにより、非リアルタイム再生に不向きなレイヤ又はレイヤセットのビットストリームが受信装置2において録画されることを防止可能になる。
【0026】
受信装置2における非リアルタイム再生は、録画されたビットストリームの再生を含む。非リアルタイム再生可否フラグは、受信装置2における録画ビットストリームの再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報であってもよい。これにより、非リアルタイム再生に不向きなレイヤ又はレイヤセットのビットストリームが受信装置2において録画されることを許可しつつ、当該レイヤ又はレイヤセットのビットストリームが再生されることを防止可能になる。そのため、受信装置2において、録画するビットストリームを非リアルタイム再生可否フラグに基づいて抽出する処理が不要になる。
【0027】
受信装置2における非リアルタイム再生は、受信装置2で復号されたビットストリームを再符号化したうえで録画するトランスコード録画を含んでもよい。非リアルタイム再生可否フラグは、受信装置2におけるトランスコード録画を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報であってもよい。これにより、非リアルタイム再生に不向きなレイヤ又はレイヤセットのビットストリームが受信装置2においてトランスコード録画により録画されることを防止可能になる。
【0028】
ビットストリーム生成部11によりビットストリームが生成される複数のレイヤは、1つ又は複数のELを含む。多重化部13は、非リアルタイム再生を許可するか否かを1つ又は複数のELのそれぞれについて指定する情報をマルチレイヤビットストリームに多重化してもよい。例えば、制御情報生成部12は、レイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグを各ELに対して生成し、多重化部13は、レイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグを各ELに対して付与する。これにより、非リアルタイム再生可否をレイヤ単位できめ細かく制御することが可能である。
【0029】
多重化部13は、各レイヤセットを構成するレイヤを示すレイヤセット情報と、レイヤセット単位の非リアルタイム再生可否フラグと、をマルチレイヤビットストリームに多重化してもよい。例えば、レイヤセット情報は、レイヤセットの識別子と、当該レイヤセットを構成する各レイヤの識別子とを含む。非リアルタイム再生可否フラグをレイヤセット単位で付与することにより、非リアルタイム再生可否フラグをレイヤ単位で付与する場合に比べて、伝送する非リアルタイム再生可否フラグの量を削減可能である。
【0030】
実施形態に係る受信装置2の概要について説明する。受信装置2は、送出装置1におけるマルチレイヤ符号化により得られたマルチレイヤビットストリームを受信する。
【0031】
実施形態に係る受信装置2は、分離部21(分離手段)と、制御情報取得部22(取得手段)と、非リアルタイム再生部23(非リアルタイム再生手段)と、リアルタイム再生部24と、操作部25とを有する。
【0032】
分離部21は、受信したマルチレイヤビットストリームに多重化されている複数のレイヤのビットストリームを分離する。制御情報取得部22は、受信装置2における非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報(実施形態では、非リアルタイム再生可否フラグ)をマルチレイヤビットストリームから取得する。非リアルタイム再生部23は、制御情報取得部22により取得された非リアルタイム再生可否フラグに基づいて、非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについて非リアルタイム再生を行う。すなわち、非リアルタイム再生部23は、非リアルタイム再生可否フラグに基づいて、非リアルタイム再生が許可されていないレイヤ又はレイヤセットについて非リアルタイム再生を行わないように制御される。
【0033】
リアルタイム再生部24は、受信ビットストリームをリアルタイムで再生(すなわち、録画を介さずに再生)する。リアルタイム再生部24は、非リアルタイム再生が許可されないレイヤ又はレイヤセットについても、リアルタイム再生を行うことは可能である。
【0034】
操作部25は、受信装置2に対するユーザ(視聴者)の操作を受け付ける。このようなユーザ操作は、受信するチャンネル(番組)を指定する選局操作、録画するチャンネル(番組)を指定する選局操作、及び当該チャンネルにおけるサービスを指定するサービス選択操作を含む。当該サービスは、例えば番組映像である主映像サービスと、上乗せサービス(例えば、速報サービス、多言語字幕サービス、又は解説映像サービス)とを含む。非リアルタイム再生又はリアルタイム再生の対象となるレイヤ(レイヤセット)は、ユーザが指定する上乗せサービスに応じて変化する。
【0035】
非リアルタイム再生部23は、ユーザが指定したサービスに対応するレイヤセットであって、且つ、非リアルタイム再生可否フラグにより非リアルタイム再生が許可されたレイヤセットについて非リアルタイム再生を行ってもよい。例えば、非リアルタイム再生部23は、非リアルタイム再生可否フラグにより録画が許可されたレイヤセットのうち、ユーザが指定したサービスに対応するレイヤセットのみを録画してもよい。或いは、非リアルタイム再生部23は、非リアルタイム再生可否フラグにより非リアルタイム再生が許可された全てのレイヤについて非リアルタイム再生を行ってもよい。
【0036】
このように、実施形態に係る放送システム10によれば、BLのみを受信する受信装置2は主映像サービスのみを再生可能となり、BL及びELを受信する受信装置2はBLのみの復号を行うことで主映像サービスを、ELを復号することで上乗せ情報付きの映像を再生可能となり、受信したいサービスの選択を受信装置2で行うことが可能となる。
【0037】
また、実施形態に係る放送システム10によれば、非リアルタイム再生に不向きな上乗せ情報(例えば、速報情報)を伝送するレイヤ又はレイヤセットについて、非リアルタイム再生がなされないように制御することが可能になる。例えば、非リアルタイム再生により速報情報が視聴者に提示されることを抑制でき、視聴者に誤解や混乱を生じさせることを防止可能になる。よって、マルチレイヤ符号化を利用して視聴者に適切なサービス提供を行うことが可能である。
【0038】
なお、
図1では、便宜上、BLビットストリームとELビットストリームを分割して図示したが、符号化方式の仕様に従って1本のストリームとして合成されたストリームでもよい。例えば、BLビットストリーム及びELビットストリームを多重化する(伝送する)パケット単位でBLビットストリーム及びELビットストリームに分割し処理を行ってもよい。
【0039】
(送出装置)
図2は、実施形態に係る送出装置1の構成例を示す図である。送出装置1は、ビットストリーム生成部11と、制御情報生成部12と、多重化部13とを有する。なお、ELが1つのみである一例を示しているが、ELは複数であってもよい。
【0040】
ビットストリーム生成部11は、BL符号化部111と、重畳部112と、EL符号化部113とを有する。
【0041】
BL符号化部111は、主映像の入力信号をBLとして符号化し、BLのビットストリームを多重化部13に出力する。また、BL符号化部111は、主映像に対応する局部復号映像を重畳部112及びEL符号化部113に出力する。BL符号化部111は、送出しているBLビットストリームの映像フォーマットや符号化情報としてELと共有するパラメータをEL符号化部113に出力してもよい。
【0042】
重畳部112は、主映像に対応する局部復号映像に上乗せ情報(すなわち、副映像信号)を重畳し、上乗せ情報が重畳された主映像である上乗せ情報付き映像信号をEL符号化部113に出力する。なお、重畳部112は、主映像に対応する局部復号映像に上乗せ情報を重畳する場合に限らず、主映像に対して直接的に上乗せ情報を重畳してEL符号化部113に出力してもよい。重畳部112は、上乗せ情報が入力されていない場合(入力信号が黒一色のような映像情報として内容を含まないような場合)、主映像に対応する局部復号映像をそのままEL符号化部113に出力してもよい。
【0043】
図3は、実施形態に係る重畳部112の動作例を示す図である。重畳部112は、
図3(a)に示す字幕情報を上乗せ情報として
図3(b)に示す番組映像(主映像)に重畳し、
図3(c)に示す上乗せ情報付き番組映像を出力する。ここでは、上乗せ情報は、地震速報を示す字幕であるとしているが、字幕に限定するものではなく、時報や解説映像等における図や映像等であってもよい。
【0044】
EL符号化部113は、上乗せ情報が重畳された主映像である上乗せ情報付き映像信号をELとして符号化し、ELのビットストリームを出力する。EL符号化部113は、上乗せ情報が重畳された番組映像の全体的な提示領域(すなわち、フレーム全体)を、BLを参照するインターレイヤ予測により符号化する。インターレイヤ予測とは、ELを符号化する際にBLを参照する予測をいう。インターレイヤ予測により、BLに対する差分映像をELとして伝送できる。例えば、
図3(c)に示す上乗せ情報付き番組映像をELとして符号化する場合、BLは
図3(b)に示すような番組映像であるため、差分は
図3(a)に示す上乗せ情報である。そのため、EL符号化部113は、インターレイヤ予測により上乗せ情報を効率的且つ速やかに符号化してELのビットストリームを生成可能である。ここで、EL符号化部113は、BLとの差分がゼロである領域をインターレイヤ予測に制限してもよい。なお、上乗せ情報が入力されていない場合、EL符号化部113は、予測処理を省略し差分が無いことを示すビットストリームを生成してもよい。
【0045】
なお、実施形態では、BLとELとで同じ解像度・同じフレームレートの映像を符号化するSNRスケーラブルを利用し、上乗せ情報を効率的に符号化している。なお、一般的なSNRスケーラブルは、BLに生じる符号化劣化を補償する情報をELとして符号化するものであるが、実施形態では、上乗せ情報を効率的に符号化するためにSNRスケーラブルの技術を利用している。
【0046】
制御情報生成部12は、受信装置2における非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する非リアルタイム再生可否フラグを含む制御情報を生成し、当該制御情報を多重化部13に出力する。
【0047】
図4は、実施形態に係る制御情報生成部12の第1動作例を説明するための図である。ここでは、ビットストリーム生成部11が複数のELのビットストリームを生成する場合を想定する。レイヤ#0はBLであり、レイヤ#1,#2,#3のそれぞれはELである。
図4に示す動作例では、制御情報生成部12は、非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位で指定する非リアルタイム再生可否フラグを各レイヤについて生成する。非リアルタイム再生可否フラグが“1”の場合には、対応するレイヤの非リアルタイム再生が可能であることを意味し、非リアルタイム再生可否フラグが“0”の場合には、対応するレイヤの非リアルタイム再生が不可であることを意味する。
図4に示す動作例では、レイヤ#0,#1,#3のそれぞれは非リアルタイム再生が可能であり、レイヤ#2は非リアルタイム再生が不可である。但し、このフラグの設定は逆であってもよい(“0”が非リアルタイム再生可、“1”が非リアルタイム再生不可であってもよい)。
【0048】
図5は、実施形態に係る制御情報生成部12の第2動作例を説明するための図である。
図5に示す動作例では、制御情報生成部12は、レイヤ#0について非リアルタイム再生可否フラグを生成しない点で、上述の第1動作例とは異なる。すなわち、本動作例では、レイヤ#0(BL)は、非リアルタイム再生が可能なレイヤとして暗黙的に設定される。制御情報生成部12は、非リアルタイム再生を許可するか否かをレイヤ単位で指定する非リアルタイム再生可否フラグを各ELについて生成する。
【0049】
図6は、実施形態に係る制御情報生成部12の第3動作例を説明するための図である。
図6に示す動作例では、制御情報生成部12は、各レイヤセットを構成するレイヤを示すレイヤセット情報(
図6(a))と、レイヤセット単位の非リアルタイム再生可否フラグ(
図6(b))とを含む制御情報を生成する。
図6(a)に示すレイヤセット情報では、レイヤセット#0がレイヤ#0,#1,#2により構成され、レイヤセット#1がレイヤ#0,#1により構成され、レイヤセット#2がレイヤ#0,#3により構成されている。
図6(b)に示すレイヤセット情報では、レイヤセット#0は非リアルタイム再生が不可であり、レイヤセット#1,#2は非リアルタイム再生が可能である。このように、レイヤ毎に非リアルタイム再生可否フラグを設定するのではなく、レイヤセットごと(すなわち、サービスごと)に非リアルタイム再生可否フラグを設定する。例えば、あるサービスがレイヤ#0乃至#3のレイヤセットであり、他のサービスがレイヤ#0乃至#7のレイヤセットである場合には、上述の第1動作例では、レイヤ毎に非リアルタイム再生可否フラグを設定することで、8つの非リアルタイム再生可否フラグを設定する必要があるが、第3動作例のようにサービス毎に非リアルタイム再生可否フラグを設定することで、2つの非リアルタイム再生可否フラグの設定で済む。
【0050】
多重化部13は、制御情報と、BLのビットストリームと、ELのビットストリームと、ほかのメディアとを多重化して送出する。BLとELのストリームを合成するか個別に伝送するかは符号化方式、伝送方式による。ここで、多重化部13は、所定の多重化方式を用いて各ビットストリームを多重化してマルチレイヤビットストリームを送出する。所定の多重化方式は、例えば、MPEG-2やMPEG-4のTransport stream(TS)であってもよいし、MPEG Media Transport(MMT)であってもよい。所定の多重化方式は、これらに限定されず、例えばCMAF(Common Media Application Format)など、複数のストリームを同期して伝送できる多重化方式であればよい。多重化部13は、BLビットストリーム及びELビットストリームのそれぞれにストリーム識別子を付与してもよい。
【0051】
多重化部13は、マルチレイヤビットストリームを、伝送路を介して送出する。伝送路については、例えばBLビットストリーム及びELビットストリームを放送電波やネットワークを用いた同一経路で伝送してもよいし、一部のストリーム(例えばBLビットストリーム)を放送波で伝送しつつ残りのストリーム(例えばELビットストリーム)をネットワークで伝送するというように異経路で伝送してもよい。多重化部13は、非リアルタイム再生可否フラグを、対応するビットストリームに個別に含めて送出してもよい。多重化部13は、非リアルタイム再生可否フラグを、各ビットストリームとは独立した制御情報として送出してもよい。制御情報は、デジタル放送で用いられているService Information(SI)情報、例えば、MMT-SIであってもよい。この場合、制御情報は、Package Access(PA)メッセージであってもよい。制御情報は、PAメッセージに含まれるテーブル、例えば、MMTパッケージテーブル(MPT)やイベント情報テーブル(EIT)であってもよい。
【0052】
(受信装置)
実施形態に係る受信装置2の第1構成例乃至第3構成例について説明する。
【0053】
(1)受信装置の第1構成例
図7は、実施形態に係る受信装置2の第1構成例を示す図である。
図7に示す受信装置2は、分離部21と、制御情報取得部22と、非リアルタイム再生部23Aとを有する。非リアルタイム再生部23Aは、録画部23A1と、再生部23A2とを有する。再生部23A2は、上述のリアルタイム再生部24と共通化されていてもよい。
【0054】
分離部21は、送出装置1から受信したマルチレイヤビットストリームに多重化されている複数のレイヤのビットストリーム及び制御情報を分離する。当該複数のレイヤは、BLと、1つ又は複数のELとからなる。分離部21は、制御情報を制御情報取得部22に出力し、BL及びELのそれぞれのビットストリームを録画部23A1に出力する。
【0055】
制御情報取得部22は、制御情報を取得し、取得した制御情報を録画部23A1に出力する。制御情報は、レイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグ(
図4、
図5参照)、又は、レイヤセット単位の非リアルタイム再生可否フラグ及びレイヤセット情報(
図6参照)を含む。
【0056】
録画部23A1は、制御情報取得部22により取得された制御情報に基づいて、非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについて録画を行う。録画部23A1は、録画ストリーム選択部231aと、記録媒体231bとを有する。録画ストリーム選択部231aは、制御情報取得部22により取得された制御情報に基づいて、非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットを選択(抽出)し、選択したレイヤ又はレイヤセットのビットストリームを記録媒体231bに記録させる。記録媒体231bは、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)を含み、録画ストリーム選択部231aにより選択されたレイヤ又はレイヤセットのビットストリームを記録(録画)する。
【0057】
録画部23A1は、第1モードとして、受信したビットストリームのうち、非リアルタイム再生可否フラグが録画可能であることを示すすべてのレイヤについて録画してもよい。制御情報がレイヤセット単位の非リアルタイム再生可否フラグ及びレイヤセット情報(
図6参照)を含む場合、録画部23A1は、第2モードとして、非リアルタイム再生可否フラグが録画可能であることを示すレイヤ又はレイヤセットのうち、ユーザが指定したサービスに係るレイヤセットに属するレイヤのみを録画してもよい。また、上記2つの録画モードをユーザが設定により切り替えられるように構成してもよい。
【0058】
再生部23A2は、録画部23A1により録画されたレイヤ又はレイヤセットのビットストリームを再生する。再生部23A2は、当該レイヤ又はレイヤセットのビットストリームを復号する復号部232aを有する。復号部232aは、BLのみが録画された場合、BLのビットストリームを単独で復号し、復号映像を出力(提示)する。復号部232aは、BL及び対応する1つ又は複数のELが録画された場合、BL及びELを組み合わせて復号し、復号映像を出力(提示)する。復号部232aは、BL復号手段とEL復号手段とを含む。BL復号手段は、BLビットストリームから番組映像を復号する。EL復号手段は、ELビットストリームから、上乗せ情報が重畳された番組映像を復号する。ここで、EL復号手段は、上乗せ情報が重畳された番組映像の全体的な提示領域(フレーム全体)を、BLを参照するインターレイヤ予測により復号してもよい。ELビットストリームは、BLに対する差分映像として上乗せ情報を符号化したストリームであるため、EL復号手段は、BL復号手段が復号する番組映像を参照して、差分としての上乗せ情報を番組映像に重畳(合成)し、上乗せ情報付き番組映像を復号する。
【0059】
ここで、主映像サービスにレイヤ#0の復号が必要であり、副映像サービスにレイヤ#0及びレイヤ#1の復号が必要である場合を例に、具体的な非リアルタイム再生可否フラグの設定と録画部23A1の制御の詳細を説明する。ここでは、非リアルタイム再生可否フラグがレイヤ単位で設定される場合を想定する(
図4参照)。
【0060】
レイヤ#0の非リアルタイム再生可否フラグを“1”、レイヤ#1の非リアルタイム再生可否フラグを“0”に設定した場合、録画部23A1は、レイヤ#0の録画を行い、レイヤ#1の録画は行わない。そのため、レイヤ#0のみの復号が必要な主映像サービスは録画・再生が可能となるが、レイヤ#1の復号が必須である副映像サービスは録画による再生を不可とすることができ、生放送受信時のみ表示させることが可能となる。
【0061】
主映像サービスにレイヤ#0の復号が必要であり、第1副映像サービスにレイヤ#0及びレイヤ#1の復号が必要であり、第2副映像サービスにレイヤ#0、レイヤ#1、及びレイヤ#2の復号が必要である場合を想定する。そのような場合において、レイヤ#0及びレイヤ#1の非リアルタイム再生可否フラグに“1”、レイヤ#2の非リアルタイム再生可否フラグに“0”が設定された場合には、録画部23A1は、レイヤ#0及びレイヤ#1のみを録画し、レイヤ#2の録画を行わない。これにより、主映像サービス及び第1副映像サービスは録画・再生可能となるが、レイヤ#2の復号が必須となる第2副映像サービスは録画による再生を不可とすることができ、生放送受信時のみ表示させることが可能となる。
【0062】
(2)受信装置の第2構成例
図8は、実施形態に係る受信装置2の第2構成例を示す図である。ここでは、上述の第1構成例との相違点について説明する。
【0063】
図8に示す受信装置2では、非リアルタイム再生部23Bの録画部23B1は、制御情報取得部22が取得する非リアルタイム再生可否フラグに基づくストリーム選択を行う手段を有していない。一方、再生部23B2は、制御情報取得部22が取得する非リアルタイム再生可否フラグに基づくストリーム選択を行う再生ストリーム選択部232bを有する。再生部23B2は、制御情報取得部22により取得された非リアルタイム再生可否フラグに基づいて、非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについて再生を行う。
【0064】
このように、
図8に示す受信装置2の非リアルタイム再生部23Bは、録画不可となるよう制御する代わりに、録画したストリームのうち、録画不可であるレイヤを再生できないように構成される。上述の第1構成例のように録画を不可とする場合には、マルチレイヤビットストリームのうち、録画するレイヤのみを抽出する必要があるが、第2構成例では、非リアルタイム再生可否フラグによる再生制御のみを行えばよく当該抽出が不要となる。
【0065】
(3)受信装置の第3構成例
図9は、実施形態に係る受信装置2の第3構成例を示す図である。ここでは、上述の第1及び第2構成例との相違点について説明する。
【0066】
図9に示す受信装置2では、非リアルタイム再生部23Cは、復号されたビットストリームを再符号化したうえで録画するトランスコード録画を行う手段を有する。非リアルタイム再生部23Cは、制御情報取得部22により取得された非リアルタイム再生可否フラグに基づいて、非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについてトランスコード録画を行う。
【0067】
具体的には、非リアルタイム再生部23Cは、復号部23C1と、再符号化部23C2と、録画部23C3と、再生部23C4とを有する。非リアルタイム再生部23Cは、分離部21から出力されたマルチレイヤビットストリームを復号部23C1において復号し、レイヤごとの復号映像を取得する。例えば、復号部23C1は、BLの主映像信号と、BL及びELのレイヤセットの上乗せ情報付き映像信号とを再符号化部23C2に出力する。
【0068】
再符号化部23C2は、制御情報取得部22により取得された非リアルタイム再生可否フラグに基づいて、非リアルタイム再生が許可されたレイヤ又はレイヤセットについて再符号化を行う。例えば、レイヤ#0の非リアルタイム再生可否フラグが“1”、レイヤ#1の非リアルタイム再生可否フラグが“0”の場合には、再符号化部23C2は、レイヤ#0の復号映像のみを再符号化する。一方、レイヤ#0及びレイヤ#1のそれぞれの非リアルタイム再生可否フラグが“1”の場合には、再符号化部23C2は、レイヤ#0及びレイヤ#1の復号映像を用いたマルチレイヤ符号化を行うことでマルチレイヤビットストリームを得る。レイヤ数が3以上の場合にも、非リアルタイム再生可否フラグが録画可能であることを示すレイヤの復号映像のみを用いてマルチレイヤ符号化することでマルチレイヤビットストリームを得る。なお、再符号化部23C2の簡略化のために、再符号化部23C2は、各レイヤの復号映像のうち、非リアルタイム再生可否フラグが録画可能であることを示すレイヤの復号画像をそれぞれシングルレイヤ符号化するよう構成されてもよい。
【0069】
録画部23C3は、再符号化部23C2により得られた1つ又は複数のレイヤのビットストリームを録画する。
【0070】
再生部23C4は、録画部23C3により録画されたビットストリームを再生する。
【0071】
(第1変更例)
上述の実施形態では、制御情報が、レイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグ(
図4、
図5参照)、又は、レイヤセット単位の非リアルタイム再生可否フラグ及びレイヤセット情報(
図6参照)を含む一例について説明した。
【0072】
第1変更例では、制御情報は、
図10に示すように、レイヤセット情報(
図10(a))と、レイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグ(
図10(b))とを含む。具体的には、各レイヤセットのうち最上位のレイヤについてのみ、レイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグを付与する。
【0073】
図10の例では、レイヤセット#0における最上位レイヤはレイヤ#2であり、レイヤセット#1における最上位レイヤはレイヤ#1であり、レイヤセット#2における最上位レイヤはレイヤ#3である。その場合、制御情報生成部12は、各最上位レイヤ(レイヤ#1,#2,#3)についてレイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグを生成する。
【0074】
受信装置2は、最上位レイヤが非リアルタイム再生可能であるレイヤセットを非リアルタイム再生可能であると判定し、最上位レイヤが非リアルタイム再生不可であるレイヤセットを非リアルタイム再生不可であると判定する。
図10の例では、受信装置2は、最上位レイヤ#2が非リアルタイム再生不可であるレイヤセット#0を非リアルタイム再生不可であると判定し、最上位レイヤ#1が非リアルタイム再生可能であるレイヤセット#1を非リアルタイム再生可能であると判定し、最上位レイヤ#3が非リアルタイム再生可能であるレイヤセット#2を非リアルタイム再生可能であると判定する。
【0075】
或いは、各レイヤセットのうち最下位のレイヤから順にレイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグを付与してもよい。
図10(a)の例において、レイヤセット#0乃至#2のすべてを非リアルタイム再生不可とする場合、レイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグとして、最下位レイヤであるレイヤ#0の非リアルタイム再生可否フラグを“0”とし、それよりも上位のレイヤの非リアルタイム再生可否フラグを伝送しない。例えば、レイヤセット#0及び#1を非リアルタイム再生不可とし、レイヤセット#2を非リアルタイム再生可能とする場合、レイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグとして、レイヤ#0,#3の非リアルタイム再生可否フラグを“1”とし、レイヤ#1の非リアルタイム再生可否フラグを“0”とし、レイヤ#2の非リアルタイム再生可否フラグを伝送しない。
【0076】
(第2変更例)
制御情報は、受信側で受信及び再生が必須であるレイヤ又はレイヤセットを示す情報をさらに含んでもよい。受信及び再生を必須とするか否かをレイヤ単位又はレイヤセット単位で指定する情報は、受信及び再生の要否をレイヤ単位又はレイヤセット単位で示す1ビットのフラグにより構成される。すなわち、制御情報は、レイヤ単位で設定されるフラグからなるフラグ群又はレイヤセット単位で設定されるフラグからなるフラグ群を含む。以下において、当該フラグを「受信必須フラグ」と称する。但し、受信必須フラグは、1ビットのフラグに限定されず、複数ビットのシンタックス要素であってもよい。
【0077】
例えば、緊急地震速報や災害情報など、重要度の高い上乗せ情報については、受信装置2が主映像サービスと副映像サービスとのいずれを選択しているかにかかわらず、受信及び再生することが望ましい。そこで、第2変更例では、マルチレイヤ符号化されたビットストリームの各レイヤ(又は各レイヤセット)に対して受信必須フラグを導入し、受信必須フラグが当該レイヤの受信が必須である旨を示す場合には、受信装置2が設定する受信するレイヤ(受信するサービスの種別)によらず、当該レイヤを受信及び再生する。
【0078】
図11は、第2変更例に係る制御情報の一例を示す図である。制御情報は、レイヤ単位の受信必須フラグと、レイヤ単位の非リアルタイム再生可否フラグとを含む。受信必須フラグが“1”の場合には、対応するレイヤの受信及び再生が必須であることを意味し、受信必須フラグが“0”の場合には、対応するレイヤの受信及び再生が必須ではないことを意味する。但し、このフラグの設定は逆であってもよい(“0”が非リアルタイム再生可、“1”が非リアルタイム再生不可であってもよい)。なお、
図11の例では、受信必須フラグをレイヤ単位で設定する一例を示しているが、受信必須フラグをレイヤセット単位で設定してもよい。
【0079】
(その他の実施形態)
送出装置1が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、受信装置2が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。送出装置1が行う各処理を実行する回路を集積化し、送出装置1を半導体集積回路(チップセット、SoC)により構成してもよい。受信装置2が行う各処理を実行する回路を集積化し、受信装置2を半導体集積回路(チップセット、SoC)により構成してもよい。
【0080】
本開示で使用されている「に基づいて(based on)」、「に応じて(depending on/in response to)」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」、「のみに応じて」を意味しない。「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」及び「に少なくとも部分的に基づいて」の両方を意味する。同様に、「に応じて」という記載は、「のみに応じて」及び「に少なくとも部分的に応じて」の両方を意味する。「含む(include)」、「備える(comprise)」、及びそれらの変形の用語は、列挙する項目のみを含むことを意味せず、列挙する項目のみを含んでもよいし、列挙する項目に加えてさらなる項目を含んでもよいことを意味する。また、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。本開示において、例えば、英語でのa,an,及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0081】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 :送出装置
1 :放送システム
2 :受信装置
10 :放送システム
11 :ビットストリーム生成部
12 :制御情報生成部
13 :多重化部
21 :分離部
22 :制御情報取得部
23 :非リアルタイム再生部
23A :非リアルタイム再生部
23A1 :録画部
23A2 :再生部
23B :非リアルタイム再生部
23B1 :録画部
23B2 :再生部
23C :非リアルタイム再生部
23C1 :復号部
23C2 :再符号化部
23C3 :録画部
23C4 :再生部
24 :リアルタイム再生部
25 :操作部
111 :BL符号化部
112 :重畳部
113 :EL符号化部
231a :録画ストリーム選択部
231b :記録媒体
232a :復号部
232b :再生ストリーム選択部