(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112347
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】重合性液晶組成物および液晶重合膜
(51)【国際特許分類】
C09K 19/38 20060101AFI20240814BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240814BHJP
C08F 20/30 20060101ALI20240814BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240814BHJP
C08F 2/06 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C09K19/38
G02B5/30
C08F20/30
C08L33/14
C08F2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017254
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大槻 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宮川 永久
【テーマコード(参考)】
2H149
4H027
4J002
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AB12
2H149AB13
2H149DA03
2H149FA08Y
2H149FA24Y
2H149FA52Y
2H149FA58Y
2H149FD25
4H027BA12
4H027BD12
4H027BD24
4H027BE05
4J002BG071
4J002FD076
4J002FD317
4J002GP00
4J002GQ00
4J002HA05
4J011AA05
4J011HA03
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4J100AL08P
4J100AL66Q
4J100AL66R
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4J100BA08Q
4J100BA08R
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4J100BA15Q
4J100BA15R
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4J100BA40Q
4J100BA40R
4J100BC43P
4J100BC43Q
4J100BC43R
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4J100FA03
4J100FA19
4J100HA53
4J100HC36
4J100HC59
4J100JA39
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、良好な液晶分子の配向性、湿熱耐久性を兼ね備えた液晶重合膜、および該液晶重合膜を作製し得る重合性液晶組成物を提供することである。
【解決手段】 重合性液晶化合物、カルボジイミド化合物、および重合開始剤を含む重合性液晶組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶化合物、カルボジイミド化合物、および重合開始剤を含む重合性液晶組成物。
【請求項2】
前記カルボジイミド化合物が、環状カルボジイミドである、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
前記カルボジイミド化合物の含有量が、前記重合性液晶化合物100重量部に対して0.01~10重量部である、請求項1または2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
前記重合性液晶化合物が、(メタ)アクリロイルオキシを有する化合物である、請求項1または2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
前記重合開始剤が、ラジカル光重合開始剤である、請求項1または2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
さらに、界面活性剤、酸化防止剤および溶媒を含む、請求項1または2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の重合性液晶組成物の重合体からなる、液晶重合膜。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶重合膜を含む、光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶組成物、液晶重合膜、および光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性液晶組成物を硬化させて得られる液晶重合膜は、高い屈折率を有するために位相差フィルムを薄膜化出来ること、強固な架橋ネットワークを構築出来るために高い耐久性を有すること、などの特徴を有しているため、盛んに研究されている。
また、広い波長範囲での正確な光線波長の変換を可能にするために、逆波長分散特性を示す重合性液晶組成物が知られている。(特許文献1~4)
【0003】
【特許文献1】特開2010-031223号公報
【特許文献2】国際公開第2014/010325号
【特許文献3】特開2016-081035号公報
【特許文献4】特開2017-039907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶重合膜が位相差を良好に発現するためには、液晶重合膜中の液晶分子の配向性が保たれていることが求められる。
また、位相差フィルムは、例えば画像表示装置などに備えられる。画像表示装置は自動車室内などの、高温高湿となる場所で使用される。したがって、位相差フィルムは、高温高湿下にさらされても、光学的性質が変化しにくい、湿熱耐久性を有するものであることが求められ、特に面内レターデーションReの変化率が小さいものであることが求められる。
【0005】
そこで、本発明は、良好な液晶分子の配向性、および湿熱耐久性を兼ね備えた液晶重合膜、および該液晶重合膜を作製し得る重合性液晶組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、重合性液晶化合物とともに、カルボジイミド化合物、および重合開始剤を含む重合性液晶組成物を用いると、形成される液晶重合膜の湿熱耐久性が良好となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0007】
[1]重合性液晶化合物、カルボジイミド化合物、および重合開始剤を含む重合性液晶組成物。
[2]前記カルボジイミド化合物が、環状カルボジイミドである、[1]に記載の重合性液晶組成物。
[3]前記カルボジイミド化合物の含有量が、前記重合性液晶化合物100重量部に対して0.01~10重量部である、[1]または[2]に記載の重合性液晶組成物。
[4]前記重合性液晶化合物が、(メタ)アクリロイルオキシを有する化合物である、[1]または[2]に記載の重合性液晶組成物。
[5]前記重合開始剤が、ラジカル光重合開始剤である、[1]または[2]に記載の重合性液晶組成物。
[6]さらに、界面活性剤、酸化防止剤および溶媒を含む、[1]または[2]に記載の重合性液晶組成物。
[7][1]または[2]に記載の重合性液晶組成物の重合体からなる、液晶重合膜。
[8][7]に記載の液晶重合膜を含む、光学素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐久性に優れた液晶重合膜の形成に用いられる重合性液晶組成物、および光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0010】
本開示において、「重合性液晶化合物」とは、重合性基を有し、かつ液晶性を有する化合物である。ここで、重合性基は、重合反応に関与する基を意味する。液晶性は、サーモトロピック液晶でもリオトロピック液晶でもよく、また、サーモトロピック液晶におけるネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。製造の容易さという観点から、液晶性は、サーモトロピック液晶におけるネマチック液晶が好ましい。
【0011】
本開示において、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、「アクリロイルオキシおよびメタアクリロイルオキシのいずれか一方または双方」の意味で使用される。「(メタ)アクリレート」についても同様である。
【0012】
本開示において、「固形分」とは、重合性液晶組成物から溶媒を除いた全ての成分をいい、例えば、常温で液状のモノマー等も固形分として取り扱う。
【0013】
本開示において、「液晶重合膜」とは、重合性液晶化合物が重合反応することで得られる重合体であり、膜状または板状のものである。重合反応は、熱や光等の外部エネルギーにより重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって反応が開始することが好ましい。
【0014】
本開示において、「位相差フィルム」とは、光学的異方性を有する素子であって、膜状または板状のものである。
【0015】
本開示において、「Re」とは、面内レターデーションを表す。Re=Δn・dの関係がある。
本開示において、「Δn」は液晶重合体の複屈折率である。Δn=nx-nyで表される値である。
ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。Reの測定波長は、別に断らない限り、550nmである。また、Re(λ)と表示した場合は、波長λnmにおける面内レターデーションを意味する。
【0016】
本開示において、「正波長分散特性」とは、Re(λ)が波長の増加に伴い減少する特性を意味し、下記の式(1)及び式(2)を満たす特性をいう。
Re(450)/Re(550)≧1.00 (1)
Re(650)/Re(550)≦1.00 (2)
【0017】
本開示において、「逆波長分散特性」とは、Re(λ)が波長の増加に伴い増加する特性を意味し、下記の式(1)及び式(2)を満たす特性をいう。
Re(450)/Re(550)<1.00 (1)
Re(650)/Re(550)>1.00 (2)
【0018】
本開示において、角度(例えば「90°」などの角度)、ならびにその関係(例えば、「平行」、「垂直」および「直交」など)は、本発明の効果を損なわない範囲内において誤差を含むものとする。例えば、厳密な角度±5°の範囲内で誤差を含むことを意味する。
【0019】
本開示において、「耐久性」とは、液晶重合膜の光学的性能および/または物理的性能の経時的な変化が抑制されることをいう。また、湿熱耐久性とは高温高湿の環境下における耐久性を意味する。
【0020】
本開示において、「配向性」とは、重合性液晶化合物などの液晶分子が、配向膜などの配向規制力や液晶相における液晶分子間の相互作用などに従い、方向性の秩序を保っている状態を意味する。結晶などの異物の存在や非液晶化合物の存在などにより、部分的または全体的に方向性の秩序が消失した状態を配向欠陥という。
液晶分子の配向形態は、ホモジニアス配向、チルト配向、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向およびツイスト配向などが挙げられる。
【0021】
本開示において、「可視光領域」とは、波長380nm~780nmの領域を意味する。
【0022】
本開示において「化合物(X)」とは、式(X)で表わされる化合物である。ここで「化合物(X)」中のXは文字列、数字、記号等である。
式(X)で表わされる化合物が複数存在するときは、「化合物(X)を含有する」との記載は、式(X)で表わされる化合物が複数含有してもいい。
【0023】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0024】
本開示において「室温」とは、15℃から35℃の範囲である。
【0025】
化学式中に下記の基の記載があった場合には、波線部が該基の結合位置である。ここで下記のArbitraryは任意の原子または基である。
【化1】
【0026】
[重合性液晶組成物]
本発明の重合性液晶組成物は、重合性液晶化合物、カルボジイミド化合物、および重合開始剤を含む。
本発明においては、前記重合性液晶組成物を用いることで、高い湿熱耐久性を有する液晶重合膜を得ることが出来る。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
まず、本発明者らは液晶重合膜の湿熱耐久性の低下は、溶媒および添加剤などに含まれる微量な酸や、重合反応時に重合開始剤の分解物などから生じるカルボキシル基などの酸性基を有する物質の存在により、重合性液晶化合物の加水分解反応が促進されることが原因であると推測している。
そのため、本発明においては、カルボジイミド化合物が系内に存在し得る酸や酸性基を有する物質と反応し、加水分解反応を抑制することが出来、その結果、湿熱耐久性が向上できたと考えられる。
【0027】
[重合性液晶化合物]
本開示の重合性液晶組成物が含有する重合性液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物であれば特に限定されない。ここで、重合性液晶化合物が有する重合性基の種類は特に制限されず、例えば、ビニル、ビニルオキシ、イソプロペニル、4-ビニルフェニル、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、オキシラニル、オキセタニル等が挙げられる。中でも、化合物の安全性や保存安定性および重合反応速度の速さの観点からラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ、およびメタクリロイルオキシを有する重合性液晶化合物が特に好ましい。
【0028】
本開示の重合性液晶化合物の種類は特に制限されないが、その形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶化合物)に分類できる。本開示では、いずれの液晶化合物を用いることもできる。2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、または、棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。溶媒への相溶性の観点から、棒状液晶化合物を用いることが好ましい。
【0029】
本開示の重合性液晶化合物は、正波長分散特性を示す重合性液晶化合物および逆波長分散特性を示す重合性液晶化合物のいずれの化合物も用いることができる。
逆波長分散特性を示す重合性液晶化合物は、光吸収スペクトルにおいて、波長300nmから400nmの間に極大吸収波長を有する。光重合開始剤の光吸収が、重合性液晶化合物の光吸収に阻害される。そのため、重合反応を開始するのに十分な量の活性ラジカルが発生せずに、重合反応が阻害される場合がある。従って、逆波長分散特性を示す重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物は、湿熱耐久性が特に低下しやすく、本開示の重合性液晶組成物を用いることが、好適である。
【0030】
本開示の正波長分散特性を示す重合性液晶化合物は式(A-1)で表される。
【化2】
【0031】
上記式(A-1)中、mは、0、1、2、3または4であり;
A
1およびA
2は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルで表される二価の環であり、該二価の環において、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1~10のアルキル、炭素数2~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のアルコキシカルボニル、炭素数1~10のアルカノイル、炭素数1~10のアルカノイルオキシ、または式(P-1)で表される一価基で置き換えられてもよく;
Z
1は、単結合、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-OCH
2CH
2O-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-OCOCH
2CH
2-、-CH
2CH
2OCO-、-COOCH
2CH
2-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH
3)-、-C(CH
3)=N-、-N=N-、-C≡C-、-CH=N-N=CH-、-C(CH
3)=N-N=C(CH
3)-、または炭素数4~20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも一つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよく;
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数1~20のアルコキシ、または式(P-1)で表される一価基であり、ただし、R
1およびR
2のうち少なくとも一つは式(P-1)で表される一価基である。
【化3】
式(P-1)中、Y
1は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-または-OCOO-であり;
Q
1は、単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも一つの-CH
2-は-O-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく;
P
1は、アクリロイルオキシ、またはメタクリロイルオキシである。
【0032】
本開示の逆波長分散特性を示す重合性液晶化合物は式(A-2)で表される。
【化4】
上記式(A-2)中、qおよびrは、それぞれ独立して、1、2、または3であり;
A
3およびA
4は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、または1,3-ジオキサン-2,5-ジイルで表される二価の環であり、該二価の環において、少なくとも一つの水素はフッ素、トリフルオロメチル、炭素数1~5のアルキル、炭素数2~5のアルケニル、炭素数1~5のアルコキシ、炭素数1~5のアルコキシカルボニル、炭素数1~5のアルカノイル、炭素数1~5のアルカノイルオキシ、または式(P-2)で表される一価基で置き換えられてもよく;
Z
3およびZ
4は、単結合、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-OCH
2CH
2O-、-CH
2CH
2COO-、-OCOCH
2CH
2-、-CH
2CH
2OCO-、-COOCH
2CH
2-、または炭素数4~20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも一つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよく;
Ar
1は、式(Ar-1)~式(Ar-6)のいずれかで表される二価基である。
【化5】
式(Ar-1)~式(Ar-6)中、X
1、X
3、X
4、X
5およびX
6は、それぞれ独立して、-CH
2-、-NH-、-O-、-S-、または-CO-であり、この-CH
2-または-NH-において、少なくとも一つの水素はフッ素、トリフルオロメチル、または炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく;
X
2およびX
7は、それぞれ独立して、-CH=、または-N=であり、-CH=における水素はフッ素、トリフルオロメチル、または炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく;
G
1、G
5およびG
6は、それぞれ独立して、単結合、-CH=CH-、-C≡C-、-N=CH-、-CH=N-、-NH-N=CH-、-CH=N-NH-、または-CH=N-N=CH-を介して結合しているπ電子の数が6~24である1価の基であり、この-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-NH-N=CH-、-CH=N-NH-、または-CH=N-N=CH-における水素は、炭素数1~10のアルキル、炭素数2~10のアルケニル、または式(P-2)で表される一価基で置き換えられてもよく;
G
2およびG
3は、それぞれ独立して、水素、トリフルオロメチル、シアノ、炭素数1~10のアルキル、炭素数2~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のアルコキシカルボニル、炭素数1~10のアルカノイル、炭素数1~10のアルカノイルオキシ、炭素数1~10のアルキルスルフィド、または式(P-2)で表される一価基であり;
G
4は、酸素、窒素、もしくは硫黄を含む5~7員環の複素環または環状ケトンであり;
G
7は、水素、トリフルオロメチル、シアノ、炭素数1~10のアルキル、またはπ電子の数が6~24である1価の基であり;
G
8は-CH=CH-、-C≡C-、1,4-フェニレン、フルオレン-2,7-ジイルおよびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価基であり;
R
5およびR
6は、少なくとも一つの1,4-シクロへキシレンを有する一価基である。
また、上記式(A-2)中、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルケニル、炭素数1~20のアルコキシ、または式(P-2)で表される一価基である。ただし、R
3およびR
4のうち少なくとも一つは式(P-2)で表される一価基である。
【化6】
式(P-2)中、Y
2は、単結合、-O-、-COO-、-OCO-または-OCOO-であり;
Q
2は、単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも一つの-CH
2-は、-O-、-COO-または-OCO-で置き換えられてもよく;
P
2は、アクリロイルオキシ、またはメタクリロイルオキシである。
【0033】
重合性液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善株式会社、平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性を有する化合物、並びに、特開2010-031223号公報、国際公開第2014/010325号、特開2016-081035号公報、および特開2017-039907号公報に記載された重合性液晶化合物等が挙げられる。
【0034】
本開示の重合性液晶組成物は、化合物(A-1)および化合物(A-2)の群より選ばれる重合性液晶化合物を少なくとも1つ含むことが好ましい。
良好な液晶分子の配向性の観点から、重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物中の固形分100重量に対して、70~99.5重量部である。好ましくは80~99重量部であり、より好ましくは85~97重量部である。
【0035】
[カルボジイミド化合物]
本開示の重合性液晶組成物は良好な湿熱耐久性の観点から、カルボジイミド化合物を含有する。本開示の重合性液晶組成物が含有するカルボジイミド化合物は、非環状の分子量400以下のモノカルボジイミド化合物やポリカルボジイミド化合物および環状カルボジイミド化合物から選択することができる。良好な液晶分子の配向性や湿熱耐久性およびイソシアネートガス揮散抑制の観点から、本開示の重合性液晶組成物は、環状カルボジイミド化合物を含有することが好ましい。
【0036】
本開示の環状カルボジイミド化合物は式(B-1)または式(B-2)で表される。
【化7】
上記式(B-1)および(B-2)中、Ar
2~Ar
7は、それぞれ独立して、1,2-フェニレン、またはナフタレン-1,2-ジイルで表される二価の環であり、該二価の環において、少なくとも一つの水素はフッ素、炭素数1~6のアルキル、炭素数1~6のアルコキシ、またはフェニルで置き換えられてもよく;
X
8~X
13は、単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-NH-、または-CH
2-であり;
L
1は、二価の連結基であり;
L
2は、四価の連結基である。
【0037】
式(B-1)の環状カルボジイミド化合物は、具体的には下記式(B-1-1)で表される化合物を挙げることができる。
【化8】
【0038】
式(B-2)の環状カルボジイミド化合物は、具体的には下記式(B-2-1)で表される化合物を挙げることができる。
【化9】
【0039】
カルボジイミド化合物の粒子径は、重合性液晶組成物中の分散性の観点から、好ましくは1mm以下である。良好な液晶分子の配向性の観点から、より好ましくは10μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。取り扱い時の安全性上の観点から、好ましくは10nm以上である。
カルボジイミド化合物の粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-750)により測定される。粒子径の数値は、体積基準の粒度分布に基づいて、メディアン系(D50)にて表記される。
【0040】
本開示の重合性液晶組成物中のカルボジイミド化合物の総含有重量は、液晶分子の配向性および湿熱耐久性の観点から、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部である。良好な液晶分子の配向性および良好な湿熱耐久性の観点から、より好ましくは0.1~5重量部である。
【0041】
[重合開始剤]
本開示の重合性液晶組成物は、重合速度を最適化するために重合開始剤を含有する。重合性液晶組成物の保存安定性の高さおよび重合速度の速さから、重合開始剤はラジカル光重合開始剤が好ましい。ラジカル光重合開始剤は、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、およびオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。良好な湿熱耐久性の観点から、オキシムエステル系光重合開始剤が特に好ましい。
【0042】
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オンなどが挙げられ、Omnirad184、Omnirad127、Omnirad907、Omnirad369、Omnirad379などの市販品を用いてもよい。ここでOmniradは、IGM Resins B.Vの商標である。
【0043】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられ、OmniradTPO、Omnirad819などの市販品を用いてもよい。ここでOmniradは、IGM Resins B.V社の商標である。
【0044】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)などが挙げられ、IrgacureOXE01、IrgacureOXE02、IrgacureOXE03、IrgacureOXE04、アデカアークルズN-1919、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930、アデカアークルズNCI-730などの市販品を用いてもよい。ここでIrgacureはBASFジャパン社の商標であり、アデカアークルズはADEKA社の商標である。
【0045】
本開示の重合性液晶組成物中の重合開始剤の総含有重量は、液晶分子の配向性、機械的強度および耐久性の観点から、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは1~30重量部である。良好な液晶分子の配向性、良好な機械的強度および良好な耐久性の観点から、より好ましくは2~15重量部である。本開示において光開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
[界面活性剤]
本開示の重合性液晶組成物は、良好な塗膜均一性のために界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、シリコーン系非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、ビニル系非イオン性界面活性剤、およびアクリル系非イオン性界面活性剤である。良好な機械的強度および良好な耐久性の観点から、重合性基を有する界面活性剤を用いてもよい。
【0047】
本開示の重合性液晶組成物中の界面活性剤の総含有重量は、液晶分子の配向性の観点から、重合性液晶化合物100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましい。良好な液晶分子の配向性の観点から、0.05~3重量部がより好ましく、0.1~1重量部がさらに好ましい。
【0048】
[酸化防止剤]
本開示の重合性液晶組成物は、経時変化抑制などの保存安定性のため、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤はフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、およびヒンダードアミン系酸化防止剤である。良好な保存安定性の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましく、水酸基のオルト位にt-ブチルを有するフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0049】
フェノール系酸化防止剤としては、3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸-n-オクタデシル、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]などが挙げられ、アデカスタブAO-30、アデカスタブAO-40、アデカスタブAO-50、アデカスタブAO-60、アデカスタブAO-80、Irganox1010、Irganox1076、Irganox1035、Irganox1726などの市販品を用いてもよい。ここでアデカスタブはADEKA社の商標であり、IrganoxはBASFジャパン社の商標である。
【0050】
本開示の重合性液晶組成物中の酸化防止剤の総含有重量は、保存安定性および耐久性の観点から、重合性液晶化合物100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましい。良好な保存安定性および良好な耐久性の観点から、0.05~0.5重量部がより好ましい。
【0051】
[溶媒]
本開示の重合性液晶組成物は、良好な塗膜均一性のために溶媒を含有することが好ましい。溶媒は、重合性液晶組成物に用いられる各成分とは反応せず、当該各成分を溶解または分散できる溶媒の中から適宜選択して用いることができる。エステル系溶媒、アミド系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、ケトン系溶媒などが、典型的な溶媒の成分である。
【0052】
エステル系溶媒とは、エステル結合を有する化合物であって、溶媒の成分となるものを指す。
酢酸ブチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸イソペンチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテートなどが挙げられる。
【0053】
アミド系溶媒とは、アミド結合を有する化合物であって、溶媒の成分となるものである。
N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、N-メチルカプロラクタム、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0054】
アルコール系溶媒とは、水酸基を有する化合物であって、溶媒の成分となるものである。
メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0055】
エーテル系溶媒とは、エーテル結合を有する化合物であって、溶媒の成分となるものである。
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0056】
炭化水素系溶媒は、ベンゼン、トルエン、アニソール、ヘプタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0057】
ハロゲン系溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタンなどが挙げられる。
【0058】
ケトン系溶媒とは、ケトン構造を有する化合物であって、溶媒の成分となるものである。
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルプロピルケトンなどが挙げられる。
【0059】
本開示の重合性液晶組成物中の溶媒の総含有重量は、保存安定性および塗膜均一性の観点から、重合性液晶組成物全重量に対して、50~95重量部が好ましい。良好な保存安定性および良好な塗膜均一性の観点から、60~90重量%が好ましく、65~85重量%がより好ましい。
溶媒は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上の溶媒の混合溶媒としてもよい。
【0060】
[その他の添加剤]
本開示の重合性液晶組成物は、良好な液晶分子の配向性および湿熱耐久性を損なわない限り、その他の添加剤を含有してもよい。
【0061】
本開示の重合性液晶組成物は、非液晶性の重合性化合物を含有してもよい。良好な液晶分子の配向性および湿熱耐久性の観点から、当該重合性液晶組成物中の非液晶性の重合性化合物の総量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、15重量部以下が好ましい。
【0062】
機械的強度の向上のため、3官能以上の非液晶性重合性化合物を添加してもよい。
3官能以上の非液晶性重合性化合物は、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0063】
液晶重合膜と基材の密着性向上のため、側鎖および/または末端に極性基を有する非液晶性重合性化合物を添加してもよい。
側鎖および/または末端に極性基を有する非液晶性重合性化合物は、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0064】
ビスフェノール構造又はカルド構造を有する重合性化合物の重合性液晶組成物への添加は、重合体の硬化度の向上及び液晶重合体のホメオトロピック配向を誘導する。
【0065】
機械的強度の向上のために、増感剤を添加してもよい。増感剤は、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエートなどが挙げられる。
【0066】
重合反応率の調整のため、連鎖移動剤を添加してもよい。連鎖移動剤の量が多い場合は、重合性液晶化合物の重合反応率が低下する。連鎖移動剤は、単官能チオール誘導体、多官能チオール誘導体およびスチレンダイマー誘導体などが挙げられる。
【0067】
重合性液晶組成物への紫外線吸収剤の添加は、重合性液晶組成物の耐候性を向上させる。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物またはヒドロキシフェニルトリアジン系化合物が好ましい。
重合性液晶組成物へのシランカップリング剤の添加は、液晶重合膜と基材との密着性を改善する。また、ホメオトロピック配向およびハイブリッド配向を誘導するためにも用いることができる。
【0068】
光学活性を有する化合物の重合性液晶組成物への添加は、ツイスト配向を誘導する。ツイスト配向を形成した液晶重合膜は、300~2000nmの波長領域における選択反射フィルム及びネガティブ型Cプレートとして使用できる。
光学活性を有する化合物の含有量を調整することで、特定の波長領域の光であって特定の円偏光を選択的に反射する、反射膜として用いることが出来る。光学活性を有する化合物の含有量の調整による当該反射の選択性の調整は、当業者による設計事項である。
【0069】
光学活性を有する化合物は、イソソルビドおよびイソマンニドなどの不斉炭素を有する化合物、ビナフチル構造及びヘリセン構造などを有する軸不斉化合物並びにシクロファン構造などを有する面不斉化合物などが、挙げられる。耐久性の観点から、この場合の光学活性を有する化合物は、重合性の化合物であることが好ましい。
【0070】
本開示の重合性液晶組成物は二色性色素を含有してもよい。二色性色素と複合化した液晶重合膜は、偏光板として使用することができる。
【0071】
偏光板として使用する場合の二色性色素は、300~700nmの範囲に極大吸収波長を有するものが好ましい。二色性色素として、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、アントラキノン色素などが利用できる。アゾ色素として、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、スチルベンアゾ色素などが挙げられる。
【0072】
本開示の液晶重合膜は、蛍光色素を含有してもよい。蛍光色素と複合化した液晶重合膜は、偏光発光型フィルムおよび波長変換フィルムとして使用できる。
【0073】
[基材]
ガラス、プラスチック、および金属などが、基材として利用できる。該ガラスや該金属は、表面にスリット状の加工を施してもよい。該プラスチックは、延伸処理並びに親水化処理および疎水化処理などの表面処理を施してもよい。
【0074】
基材上にホモジニアス配向、チルト配向、ハイブリッド配向およびツイスト配向の液晶重合膜を形成する場合は、重合性液晶組成物を基材に塗布する前に、基材に対し、表面処理を行い、液晶重合膜の配向を誘導する。(a)基材に対しラビング、(d)基材に対し酸化ケイ素を傾斜蒸着、(c)偏光UV照射などの方法が、該表面処理である。
【0075】
良好な液晶分子の配向性のため、基材上に配向膜を形成することが好ましい。
【0076】
以下の手順は、ラビング処理の例である。
(1)レーヨン、綿、ポリアミドなどの素材からなるラビング布を金属ロールなどに捲き付け、
(2)基材に該ロールを接し、
(3)該ロールを回転させながら基材表面と平行に該ロールを移動させる、又は該ロールを固定したまま基材を移動させる。
ラビング処理の前に、基材は、基材上に重合体の被膜を設け、該被膜上をラビングしてもよい。該被膜はポリイミド、ポリアミック酸またはポリビニルアルコールなどのラビング配向膜と呼ばれるものが用いられる。
【0077】
以下の手順は、該偏光UV照射の一例である。
(1)基材上に、光配向膜と呼ばれる重合体被膜を設け、
(2)基材に波長250~400nmの直線偏光を照射する。
良好な液晶分子の配向性および/または良好な機械的特性のため、基材は、加熱処理を施してもよい。
該光配向膜は、感光性基を含むポリイミド、ポリアミック酸またはポリアクリレートなどが用いられる。該感光性基またはそれを有する感光性化合物は、カルコン、シンナメート、シンナモイルまたはアゾであることが好ましい。
【0078】
[液晶重合膜]
本開示の液晶重合膜は、以下の工程で得る。
(1)重合性液晶組成物を基材上に塗布し、必要に応じて乾燥させて塗膜を形成させる。
(2)光、熱、触媒などの手段で該重合性液晶組成物を重合させ、液晶重合膜を得る。
これにより、塗膜中の重合性液晶組成物が液晶状態の配向形態のまま硬化する。
【0079】
重合性液晶組成物の基材への塗布は、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法およびダイコート法が用いられる。
【0080】
重合性液晶組成物から構成される塗膜を形成する際、溶媒を除去する乾燥工程を行う。溶媒を除去することにより、重合性液晶組成物の塗膜は、液晶相を誘起する。乾燥工程は熱処理することが好ましい。ホットプレートまたは乾燥炉の使用および温風又は熱風の吹き付けなどが該熱処理である。
【0081】
重合性液晶組成物を硬化させるため、電子線、光などが、利用できる。この場合、光の波長の範囲は、150~500nmが好ましく、250~450nmがより好ましく、300~400nmが最も好ましい。
【0082】
該光の光源として、低圧水銀ランプ、高圧放電ランプ、ショートアーク放電ランプが利用できる。殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライトなどが、該低圧水銀ランプである。高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが、該高圧放電ランプである。超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプなどが、該ショートアーク放電ランプである。
【0083】
本開示の液晶重合膜は、LCD用光学補償フィルム、λ/4波長板、λ/2波長板、偏向回折フィルム、偏光板、反射板などの光学素子に用いられる。
【実施例0084】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は公開した実施例のみに制限されない。
【0085】
1.用語の定義
実施例において、化合物(A-1-1)~(A-1-4)および化合物(A-2-1)~(A-2-4)は重合性液晶化合物である。
【0086】
式(A-1-1)~(A-1-4)の重合性液晶化合物の構造を以下に示す。
【化10】
化合物(A-1-1)は、特開2000-310715号公報に従い合成した。
化合物(A-1-2)は、Makromolekulare Chemie,(1991),192(1),59-74に従い合成した。
化合物(A-1-3)は、特開2003-238491号公報に従い合成した。
化合物(A-1-4)は、特開2013-253041号公報に従い合成した。
【0087】
式(A-2-1)~(A-2-4)の重合性液晶化合物の構造を以下に示す。
【化11】
化合物(A-2-1)は、特開2017-125009号公報に従い合成した。
化合物(A-2-2)は、特開2011-256304号公報に従い合成した。
化合物(A-2-3)は、国際公開第2014/065243号に従い合成した。
化合物(A-2-4)は、国際公開第2019/017444号に従い合成した。
【0088】
実施例において、「TCC-FP20M」は、帝人(株)製の環状カルボジイミド化合物、カルボジスタ(商標)TCC-FP20Mである。TCC-FP20Mの粒子径(D50)は3~5μmである。
実施例において、「DIPC」は、モノカルボジイミド化合物、ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドである。
実施例において、「V-02」は、日清紡ケミカル(株)製のポリカルボジイミド化合物、カルボジライト(商標)V-02である。
【0089】
実施例において、「OXE02」は、BASFジャパン(株)製の重合開始剤、Irgacure(商標)OXE02である。
実施例において、「NCI-930」は、(株)ADEKA製の重合開始剤、アデカアークルーズ(商標)NCI-930である。
【0090】
実施例において、「FTX-218」は、(株)ネオス製のフッ素系界面活性剤、フタージェント(商標)FTX-218である。
実施例において、「ポリフローNo.75」は、共栄社化学(株)製のアクリル系界面活性剤、ポリフロー(商標)No.75である。
【0091】
実施例において、「AO-60」は、(株)ADEKA製の酸化防止剤、アデカスタブ(商標)AO-60である。
【0092】
実施例において、「CHN」は、シクロヘキサノンである。
実施例において、「CPN」は、シクロペンタノンである。
【0093】
本開示の実施例において、「ワイヤーグリッド偏光板」は、ポラテクノ(株)製のUVT300Aである。
本開示の実施例において、「超高圧水銀灯」は、ウシオ電機(株)製のマルチライトUSH-250BYである。
本開示の実施例において、「365受光器」は、ウシオ電機(株)製のUVD-S365にウシオ電機(株)製のUIT-150-Aを接続したものである。
本開示の実施例において、直線偏光UVおよびUVの照射量は、365受光器を用いて測定した。
【0094】
2.光配向処理済み配向膜付きガラス基材の作製
光配向処理済み配向膜付きガラス基材を、以下の手順で作製した。
(1)ガラスに、光配向剤を、スピンコートし、
(2)得られたガラスを、スピンコートした面を上にして、80℃のホットプレートに置き、該光配向剤中の溶媒を除去することで塗膜を作製し、
(3)該塗膜に、空気雰囲気下において、室温で、塗布面の法線から、2000mJ/cm2の直線偏光UVを照射し、光配向処理済み配向膜付きガラス基材を得た。
直線偏光UVは、超高圧水銀灯からの光をワイヤーグリッド偏光板に透過させて得た。
【0095】
光配向剤は、式(J)で表されるシンナモイルを感光性基として有するポリアクリレートを5重量部と、シクロペンタノン95重量部からなる。
【0096】
【化12】
式(J)で表されるポリアクリレートは、特開2012-087286号公報に従い合成し、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
島津製作所製の島津LC-9A型ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、および昭和電工製のカラムShodex(商標登録) GF-7M HQ(展開溶媒はTHF、標準物質は分子量既知のポリスチレン)を用いた。
式(J)において、xは0.1であり、重量平均分子量は53700であった。
【0097】
3.重合性液晶組成物の調製
重合性液晶組成物は、以下の手順で調製した。
(1)表1に記載の重量比で、重合性液晶化合物、カルボジイミド化合物、光重合開始剤、界面活性剤、酸化防止剤および溶媒を混合し、
(2)0.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、重合性液晶組成物を得た。表1および表2に、調製した重合性液晶組成物の名称を記載した。
【0098】
【0099】
【0100】
4.液晶重合膜の作製
液晶重合膜を、以下の手順で作製した。
(1)重合性液晶組成物を、室温で、光配向処理済み配向膜付きガラス基材上にスピンコートし、
(2)70℃のホットプレート上にスピンコートされた部分を上にして、当該ガラス基材を、2分間静置し、
(3)室温で当該ガラス基材を1分間、静置し、
(4)当該ガラス基材に、基材の法線方向から500mJ/cm2のUVを照射し、液晶重合膜を作製した。作製した液晶重合膜の配向形態はホモジニアス配向となり、Reは140±10nmとなった。表3および表4に作製した液晶重合膜の名称を記載した。
【0101】
5.液晶重合膜の評価方法
【0102】
[配向性判定]
ライトボックス上に2枚の偏光板をクロスニコル条件となるように配置した。得られた液晶重合膜を2枚の偏光板の間に配置した。前記液晶重合膜を回転させながら、面状を目視観察にて評価した。
また、2枚の偏光板をクロスニコル条件となるように配置し、得られた液晶重合膜を2枚の偏光板の間に消光位に配置した。面状を偏光顕微鏡観察にて評価した。偏光顕微鏡は(株)ニコン社製のECLIPSE E600 POLを用いた。偏光顕微鏡観察では、前記液晶重合膜の中央部1cm角中における、配向欠陥に起因する輝点の数をカウントした。下記基準にて配向欠陥の状態を判断した。結果を表3および表4に記載した。
5:目視観察にて配向欠陥がなく、顕微鏡観察にて配向欠陥起因の輝点が10個未満
4:目視観察にて配向欠陥がなく、顕微鏡観察にて配向欠陥起因の輝点が10個以上50個未満
3:目視観察にて配向欠陥がなく、顕微鏡観察にて配向欠陥起因の輝点が50個以上
2:目視観察にて配向欠陥があり、ホモジニアス配向していない部分がある。
1:目視観察にて配向欠陥があり、全体的にホモジニアス配向していない。
【0103】
[ヘイズ評価]
目視観察および顕微鏡観察にて配向欠陥が確認されない場合でも、ヘイズ値が高い場合は、配向性が低下していると判断できる。ヘイズ値が高くなると光学特性の低下を生じる一因となる。
得られた液晶重合膜のヘイズ値は、日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH7000を用いて測定した。結果を表3および表4に記載した。
【0104】
[湿熱耐久性]
得られた液晶重合膜を温度120℃、相対湿度100%RH、2atm(0.203MPa)の条件下のプレッシャークッカー試験を12時間実施し、湿熱耐久性を評価した。試験実施前のRe(550)を初期Reとし、試験実施後のRe(550)を試験後Reとする。Reは、シンテック(株)製のOPIPRO偏光解析装置を用いて測定した。液晶重合膜のReは、偏光解析装置で、光の入射角を0°にして計測した。試験前後でのRe変化の絶対値を下記式にて計算し、下記基準にて評価した。結果を表3および表4に記載した。
|ΔRe|=|(試験後Re-初期Re)/初期Re|
5:|ΔRe|が10%未満
4:|ΔRe|が10%以上20%未満
3:|ΔRe|が20%以上30%未満
2:|ΔRe|が30%以上50%未満
1:|ΔRe|が50%以上
【0105】
【0106】
【0107】
表3および表4に示す結果から、本開示のカルボジイミド化合物を含有する重合性液晶組成物(C-1)~(C-11)より得られた液晶重合体(F-1)~(F-11)はカルボジイミド化合物を含有しない重合性液晶組成物(CC-1)~(CC-4)より得られた液晶重合体(CF-1)~(CF-4)と比較すると、湿熱耐久性が優れることが分かった。
環状カルボジイミド化合物を含有する重合性液晶組成物(C-1)~(C-6)より得られた液晶重合体(F-1)~(F-6)は、良好な配向性を有し、かつ良好な湿熱耐久性を有することが分かった。