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特開2024-112402光ファイバ振動センシング装置及び光ファイバ振動センシング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112402
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】光ファイバ振動センシング装置及び光ファイバ振動センシング方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G01H9/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017373
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC12
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】本開示の光ファイバ振動センシング装置は、直線偏光光を送出する光源からの光を光伝送路の一端に入力し、前記光伝送路の他端からの光を第1の偏光子に入力し、前記第1の偏光子からの光を第1の受光器で受光して第1の振動信号を取得する順方向光ファイバ振動計と、前記光源からの光を前記光伝送路の他端に入力し、前記光伝送の一端からの光を第2の偏光子に入力し、前記第2の偏光子からの光を第2の受光器で受光して第2の振動信号を取得する逆方向光ファイバ振動計と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光光を送出する光源からの光を光伝送路の一端に入力し、前記光伝送路の他端からの光を第1の偏光子に入力し、前記第1の偏光子からの光を第1の受光器で受光して第1の振動信号を取得する順方向光ファイバ振動計と、
前記光源からの光を前記光伝送路の他端に入力し、前記光伝送の一端からの光を第2の偏光子に入力し、前記第2の偏光子からの光を第2の受光器で受光して第2の振動信号を取得する逆方向光ファイバ振動計と、
を備える光ファイバ振動センシング装置。
【請求項2】
前記第1の振動信号及び前記第2の振動信号をそれぞれAD変換後フーリエ変換し、フーリエ変換後の2つの信号の位相差を計算し、得られた位相差から遅延時間差を求め、当該遅延時間差から振動の発生位置を計算する振動位置測定計をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ振動センシング装置。
【請求項3】
前記順方向光ファイバ振動計及び前記逆方向光ファイバ振動計は、
前記光源と、
前記光源からの光を2つに分岐して第1の端子及び第2の端子から出力する光源分岐カプラと、
3端子を有し、第1の端子に入力される前記光源分岐カプラの第1の端子からの光を、第3の端子に接続される前記光伝送路の一端に入力し、前記第3の端子に接続される前記光伝送路の一端からの光を第2の端子に出力する第2の光合分岐カプラと、
3端子を有し、第1の端子に入力される前記光源分岐カプラの第2の端子からの光を、第3の端子に接続される前記光伝送路の他端に入力し、前記第3の端子に接続される前記光伝送路の他端からの光を第2の端子に出力する第1の光合分岐カプラと、
前記光伝送路と、
を共用して備え、
前記順方向光ファイバ振動計は、前記第1の光合分岐カプラの前記第2の端子からの光を前記第1の偏光子に入力し、前記第1の偏光子からの光を前記第1の受光器で受光して前記第1の振動信号を取得し、
前記逆方向光ファイバ振動計は、前記第2の光合分岐カプラの前記第2の端子からの光を前記第2の偏光子に入力し、前記第2の偏光子からの光を前記第2の受光器で受光して前記第2の振動信号を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ振動センシング装置。
【請求項4】
前記振動位置測定計は、
前記第1の受光器からの第1の振動信号の直流成分を遮断する第1の直流遮断フィルタと、
前記第2の受光器からの第2の振動信号の直流成分を遮断する第2の直流遮断フィルタと、
前記第1の直流遮断フィルタからの信号をAD変換し、第1のディジタル振動信号として出力する第1のAD変換器と、
前記第2の直流遮断フィルタからの信号をAD変換し、第2のディジタル振動信号として出力する第2のAD変換器と、
前記第1のAD変換器からの第1のディジタル振動信号及び前記第2のAD変換器からの第2のディジタル振動信号を解析して振動の発生位置を計算する解析部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ振動センシング装置。
【請求項5】
前記解析部は、
前記第1のディジタル振動信号及び前記第2のディジタル振動信号をそれぞれ一定時間取得し、
取得した前記第1のディジタル振動信号及び前記第2のディジタル振動信号をそれぞれ離散フーリエ変換して第1の離散周波数信号及び第2の離散周波数信号を得て、
得られた前記第1の離散周波数信号と前記第2の離散周波数信号との位相差を計算し、
前記位相差から遅延時間差を計算し、
計算した前記遅延時間差から振動の発生位置を計算する
ことを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ振動センシング装置。
【請求項6】
コンピュータに、
共用して備える光源、共用して備える光伝送路及び個別に備える2組の偏光子と受光器を用いて光の進行方向をそれぞれ逆にした順方向光ファイバ振動計からの第1の振動信号及び逆方向光ファイバ振動計からの第2の振動信号をそれぞれ一定時間取得するデータ取得工程と、
取得した前記第1の振動信号及び前記第2の振動信号をそれぞれ離散フーリエ変換して第1の離散周波数信号及び第2の離散周波数信号を得る離散フーリエ変換計算工程と、
得られた前記第1の離散周波数信号と前記第2の離散周波数信号との位相差を計算する離散周波数位相差計算工程と、
得られた前記位相差から遅延時間差を計算する離散周波数遅延時間差計算工程と、
計算した前記遅延時間差から振動の発生位置を計算する振動発生位置計算工程と、
を実行させる光ファイバ振動センシング方法。
【請求項7】
コンピュータに請求項6に記載の光ファイバ振動センシング方法を実行させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、偏光の回転を利用した光ファイバ振動センシング技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでの光ファイバ振動センシング技術としては、順方向及び逆方向の2つのマッハツェンダ型干渉計から得られる2つの干渉波形の相互相関関数により干渉波の到着時間差を計算し、振動の発生位置を特定する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。その他、位相OTDRやOFDRを用いた分布型音響センシング法が提案されている(例えば、非特許文献2、3参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】B.Kizlik, “Fibre Optic Distributed Sensor in Mach-Zehnder Interferometer Configuration”, Modern Problems of Radio Engineering, Telecommunications and Computer Science, pp. 128-130, 2002
【非特許文献2】J.C.Juarez et al., “Distributed fiber-optic intrusion sensor system,” Journal of Lightwave Technology, vol. 23, no.6, pp. 2081-2087, 2005.
【非特許文献3】Z.He et al., “Optical fiber distributed acoustic sensor: a review,” Journal of Lightwave Technology, vol. 39, no. 12, pp. 3671-3686, 2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1の技術では、2つのマッハツェンダ型干渉計により振動発生位置を特定するため、同一光ファイバケーブル内に2本の光ファイバが必要であった。また、非特許文献2又は非特許文献3の技術では、試験光を生成するために狭線幅レーザが必要であり、装置が高価になってしまう。
【0005】
本開示は、上記事情に着目してなされたもので、1本の光ファイバを利用し、簡易な装置構成とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、共通の光源、共通の光伝送路及び個別の2組の偏光子と受光器を用いて光の進行方向をそれぞれ逆にした順方向光ファイバ振動計からの振動信号及び逆方向光ファイバ振動計からの振動信号をそれぞれ取得することとした。
【0007】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、
直線偏光光を送出する光源からの光を光伝送路の一端に入力し、前記光伝送路の他端からの光を第1の偏光子に入力し、前記第1の偏光子からの光を第1の受光器で受光して第1の振動信号を取得する順方向光ファイバ振動計と、
前記光源からの光を前記光伝送路の他端に入力し、前記光伝送の一端からの光を第2の偏光子に入力し、前記第2の偏光子からの光を第2の受光器で受光して第2の振動信号を取得する逆方向光ファイバ振動計と、
を備える。
【0008】
本開示の光ファイバ振動センシング装置は、さらに振動位置測定計を備え、振動の発生位置を特定する。
【0009】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング装置は、
前記第1の振動信号及び前記第2の振動信号をそれぞれAD変換後フーリエ変換し、フーリエ変換後の2つの信号の位相差を計算し、得られた位相差から遅延時間差を求め、当該遅延時間差から振動の発生位置を計算する振動位置測定計を
さらに備える。
【0010】
具体的には、本開示の
前記順方向光ファイバ振動計及び前記逆方向光ファイバ振動計は、
前記順方向光ファイバ振動計及び前記逆方向光ファイバ振動計は、
前記光源と、
前記光源からの光を2つに分岐して第1の端子及び第2の端子から出力する光源分岐カプラと、
3端子を有し、第1の端子に入力される前記光源分岐カプラの第1の端子からの光を、第3の端子に接続される前記光伝送路の一端に入力し、前記第3の端子に接続される前記光伝送路の一端からの光を第2の端子に出力する第2の光合分岐カプラと、
3端子を有し、第1の端子に入力される前記光源分岐カプラの第2の端子からの光を、第3の端子に接続される前記光伝送路の他端に入力し、前記第3の端子に接続される前記光伝送路の他端からの光を第2の端子に出力する第1の光合分岐カプラと、
前記光伝送路と、
を共用して備え、
前記順方向光ファイバ振動計は、前記第1の光合分岐カプラの前記第2の端子からの光を前記第1の偏光子に入力し、前記第1の偏光子からの光を前記第1の受光器で受光して前記第1の振動信号を取得し、
前記逆方向光ファイバ振動計は、前記第2の光合分岐カプラの前記第2の端子からの光を前記第2の偏光子に入力し、前記第2の偏光子からの光を前記第2の受光器で受光して前記第2の振動信号を取得する
ことを特徴とする。
【0011】
具体的には、本開示の
前記振動位置測定計は、
前記第1の受光器からの第1の振動信号の直流成分を遮断する第1の直流遮断フィルタと、
前記第2の受光器からの第2の振動信号の直流成分を遮断する第2の直流遮断フィルタと、
前記第1の直流遮断フィルタからの信号をAD変換し、第1のディジタル振動信号として出力する第1のAD変換器と、
前記第2の直流遮断フィルタからの信号をAD変換し、第2のディジタル振動信号として出力する第2のAD変換器と、
前記第1のAD変換器からの第1のディジタル振動信号及び前記第2のAD変換器からの第2のディジタル振動信号を解析して振動の発生位置を計算する解析部と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
具体的には、本開示の
前記解析部は、
前記第1のディジタル振動信号及び前記第2のディジタル振動信号をそれぞれ一定時間取得し、
取得した前記第1のディジタル振動信号及び前記第2のディジタル振動信号をそれぞれ離散フーリエ変換して第1の離散周波数信号及び第2の離散周波数信号を得て、
得られた前記第1の離散周波数信号と前記第2の離散周波数信号との位相差を計算し、
前記位相差から遅延時間差を計算し、
計算した前記遅延時間差から振動の発生位置を計算する
ことを特徴とする。
【0013】
本開示では、順方向光ファイバ振動計及び逆方向光ファイバ振動計からの振動信号をそれぞれAD変換後フーリエ変換し、フーリエ変換後の2つの信号の位相差から遅延時間差を求め、当該遅延時間差より振動の発生位置を特定する。
【0014】
具体的には、本開示の光ファイバ振動センシング方法は、
コンピュータに実行させる、
共用して備える光源、共用して備える光伝送路及び個別に備える2組の偏光子と受光器を用いて光の進行方向をそれぞれ逆にした順方向光ファイバ振動計からの第1の振動信号及び逆方向光ファイバ振動計からの第2の振動信号をそれぞれ一定時間取得するデータ取得工程と、
取得した前記第1の振動信号及び前記第2の振動信号をそれぞれ離散フーリエ変換して第1の離散周波数信号及び第2の離散周波数信号を得る離散フーリエ変換計算工程と、
得られた前記第1の離散周波数信号と前記第2の離散周波数信号との位相差を計算する離散周波数位相差計算工程と、
得られた前記位相差から遅延時間差を計算する離散周波数遅延時間差計算工程と、
計算した前記遅延時間差から振動の発生位置を計算する振動発生位置計算工程と、
を備える。
【0015】
具体的には、本開示は、
コンピュータに、
上記記載の光ファイバ振動センシング方法を実行させるためのプログラム
である。
【0016】
なお、上記各開示の発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、1本の光ファイバを利用し、簡易な装置構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の光ファイバ振動センシング装置の構成の一例を示す図である。
図2】本開示の光ファイバ振動センシング装置の動作の例を示す図である。
図3】本開示の光ファイバ振動センシング装置の動作の例を示す図である。
図4】本開示の光ファイバ振動センシング方法の処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0020】
本開示の光ファイバ振動センシング装置の構成を図1に示す。図1において、101は直線偏光光を送出する光源、102は光源分岐カプラ、111は第1の光合分岐カプラ、112は第2の光合分岐カプラ、120は光伝送路を有する光伝送媒体、121は光伝送路、131は第1の偏光子、132は第1の受光器、141は第2の偏光子、142は第2の受光器、211は第1の直流遮断フィルタ、212は第2の直流遮断フィルタ、221は第1のAD変換器、222は第2のAD変換器、300は解析部である。光源分岐カプラ102、第1の光合分岐カプラ111及び第2の光合分岐カプラ112の丸付き数字はそれぞれの端子番号である。
【0021】
本開示の光ファイバ振動センシング装置は順方向光ファイバ振動計と逆方向光ファイバ振動計とを備える。順方向光ファイバ振動計は、直線偏光光を送出する光源101からの光を分岐して、光伝送路121の一端に入力し、光伝送路121の他端からの光を第1の偏光子131に入力し、第1の偏光子131からの光を第1の受光器132で受光する。逆方向光ファイバ振動計は、直線偏光光を送出する光源101からの光を分岐して、光伝送路121の他端に入力し、光伝送路121の一端からの光を第2の偏光子141に入力し、第2の偏光子141からの光を第2の受光器142で受光する。順方向光ファイバ振動計と逆方向光ファイバ振動計とでは、光伝送路121内の光の進行方向が逆である。
【0022】
振動位置測定計は、第1の受光器132からの第1の振動信号及び第2の受光器142からの第2の振動信号をそれぞれAD変換後、フーリエ変換し、フーリエ変換後の2つの信号の位相差から遅延時間差を求め、この遅延時間差より振動の発生位置を計算する。
【0023】
順方向光ファイバ振動計の動作を図2で説明する。図2では、光の流れを太矢印で示している。光源101が直線偏光光を送出する。光源分岐カプラ102は光源101からの光を2つに分岐して、その一つを第1の端子から出力する。第2の光合分岐カプラ112は、第1の端子に入力される光源分岐カプラ102の第1の端子からの光を、第3の端子に接続される光伝送路121の一端に入力する。光伝送路121は第2の光合分岐カプラ112からの光を伝搬する。第1の光合分岐カプラ111は、第3の端子に接続される光伝送路121の他端からの光を第2の端子に出力する。第1の光合分岐カプラ111からの光は、第1の偏光子131に入力される。第1の偏光子131は特定の方向の偏光光のみを通過させる。第1の受光器132は第1の偏光子131からの出力光を受光して、電気信号である第1の振動信号に変換する。
【0024】
逆方向光ファイバ振動計の動作を図3で説明する。図3では、光の流れを太矢印で示している。光源101が直線偏光光を送出する。光源分岐カプラ102は光源101からの光を2つに分岐して、その一つを第2の端子から出力する。第1の光合分岐カプラ111は、第1の端子に入力される光源分岐カプラ102の第2の端子からの光を、第3の端子に接続される光伝送路121の他端に入力する。光伝送路121は第1の光合分岐カプラ111からの光を伝搬する。第2の光合分岐カプラ112は、第3の端子に接続される光伝送路121の一端からの光を第2の端子に出力する。第2の光合分岐カプラ112からの光は、第2の偏光子141に入力される。第2の偏光子141は特定の方向の偏光光のみを通過させる。第2の受光器142は第2の偏光子141からの出力光を受光して電気信号である第2の振動信号に変換する。
【0025】
順方向光ファイバ振動計と逆方向光ファイバ振動計は、光源101、光源分岐カプラ102、第2の光合分岐カプラ112、第1の光合分岐カプラ111、光伝送路121を共用して備える。光伝送媒体120は例えば、光ファイバケーブルであり、光伝送路121は例えば、その光ファバケーブルに含まれる光ファイバである。順方向光ファイバ振動計は、第1の偏光子131及び第1の受光器132を個別に備え、逆方向光ファイバ振動計は、第2の偏光子141及び第2の受光器142を個別に備える。
【0026】
図2において、光伝送路121を有する光伝送媒体120に振動が印加されると、これに応じた振動が順方向光ファイバ振動計を構成する光伝送路121にも印加される。光伝送路121に印加された振動により、光伝送路121を伝搬する直線偏光光の偏光方向が回転させられ、第1の偏光子131で偏光方向の変動が出力強度の変動に変換される。
【0027】
このことから、順方向光ファイバ振動計では、付加された振動に応じた光強度の変動を観測することになる。同様に、図3において、逆方向光ファイバ振動計でも、付加された振動に応じた光強度の変動を観測することができる。
【0028】
本開示の振動位置測定計は、第1の受光器132からの第1の振動信号の直流成分を遮断する第1の直流遮断フィルタ211と、第2の受光器142からの第2の振動信号の直流成分を遮断する第2の直流遮断フィルタ212と、第1の直流遮断フィルタ211からの信号をAD変換し、第1のディジタル振動信号として出力する第1のAD変換器221と、第2の直流遮断フィルタ212からの信号をAD変換し、第2のディジタル振動信号として出力する第2のAD変換器222と、第1のAD変換器221からの第1のディジタル振動信号及び第2のAD変換器222からの第2のディジタル振動信号を解析して振動の発生位置を特定する解析部300と、を備えてもよい。
【0029】
第1の直流遮断フィルタ211で解析に不要な直流成分を遮断することによって、第1のAD変換器221のダイナミックレンジを小さくすることができる。第2の直流遮断フィルタ212でも同様である。第1のAD変換器221及び第2のAD変換器222のダイナミックレンジが許容されれば、第1の直流遮断フィルタ211及び第2の直流遮断フィルタ212は省略してもよい。また、第1の直流遮断フィルタ211と第1のAD変換器221との順番及び第2の直流遮断フィルタ212と第2のAD変換器222との順番は逆でもよい。逆の場合は、第1の直流遮断フィルタ211及び第2の直流遮断フィルタ212ではディジタル処理することになる。なお、第1の受光器132からの第1の振動信号及び第2の受光器142からの第2の振動信号と第1の直流遮断フィルタ211の出力信号及び第2の直流遮断フィルタ212の出力信号とは、直流成分を有するか否かという点だけで、本質的な差はないため、以下の説明では、第1の直流遮断フィルタ211の出力信号及び第2の直流遮断フィルタ212の出力信号をそれぞれ第1の振動信号及び第2の振動信号と称することがある。
【0030】
順方向光ファイバ振動計における光伝送路121における電界の振幅をEとすると、第1の偏光子131を通過後に第1の受光器132で観測される電界E(t)は
【数1】
となる。但し、φA1は光伝送媒体120を伝搬する光の偏角、φA2は第1の偏光子131の偏光角である。このとき、第1の受光器132の出力である第1の振動信号I(t)は、
【数2】
となる。ここで、振動を与える地点Pvにおいて、角周波数ων=2πfνの振動が付加されると、光伝送路121における偏光角が変化し、次式を得る。
【数3】
となる。ただし、Vは振動により与えられる偏光角変化の係数、θは第1の偏光子131の偏光角と光伝送路121を伝搬する光の偏光角の差である。
【0031】
数3を第一種ベッセル関数J(*)で級数展開すると次式を得る。
【数4】
【0032】
第1の直流遮断フィルタ211を通過後の第1の振動信号は、
【数5】
ただし、A’は第1の直流遮断フィルタ211を通過後の振幅を表す定数である。
【0033】
同様に、逆方向光ファイバ振動計における光を第2の受光器142で受信後に第2の直流遮断フィルタ212を通すと次式を得る。
【数6】
ただし、Vは振動により与えられる偏光角変化の係数、θは第2の偏光子141の偏光角と光伝送路121を伝搬する光の偏光角の差、B’は第2の直流遮断フィルタ212を通過後の振幅を表す定数である。
【0034】
ここで、第1の光合分岐カプラ111から第2の光合分岐カプラ112までの距離をLとし、振動の発生位置PvがL/2に等しいときの時刻を基準とする。このとき数5及び数6で得た第1の振動信号及び第2の振動信号に基準より時間差ΔTがあるとすると、
【数7】
【数8】
となる。
【0035】
数7及び数8の各周波数f=kων/2π(k=1、2、・・・、K)における位相差Δφには、時間差ΔTより以下で表される。
【数9】
数9はΔφ、fについての1次式である。計測値に誤差が含まれる可能性があるので、複数の周波数fについての位相差Δφを用いて、最小二乗法により回帰直線の回帰係数を計算することで、2πΔT即ち、時間差ΔTを求めることができる。
【0036】
推定した時間差をΔTバーとすると、第2の光合分岐カプラ112から振動の発生位置Pvまでの距離Lvは次式で求められる。
【数10】
但し、cは光速、nγは光伝送路121の屈折率である。
【0037】
本開示の解析部300の動作を図4に示す。データ取得工程700では、第1のAD変換器221でディジタル化された第1のディジタル振動信号I’(t)及び第2のAD変換器222でディジタル化された第2のディジタル振動信号I’(t)を一定時間取得し、メモリに格納する。格納したN点のデータを
【数13】
【数14】
とする。
【0038】
離散フーリエ変換工程701では、x及びxに離散フーリエ変換を行う。得られたデータを
【数15】
【数16】
とすると、第1の離散周波数信号XAk及び第2の離散周波数信号XBkは周波数f=(f/2N)×kにおける複素振幅を表す。但し、fはA第1のAD変換器221及び第2のAD変換器222のサンプリング周波数である。
【0039】
離散周波数位相差計算工程702では、次式により一定以上の振幅を持つ周波数fについて、位相差Δφを求める。
【数17】
但し、XThは閾値、Arg(X)はXの位相を表す。
【0040】
離散周波数遅延時間差計算工程703では、XThより大きい場合の位相差Δφ及び周波数fから次式に従って、遅延時間差の推定値ΔTバーを計算する。
【数18】
ただし、mは回帰直線を計算するために用いる周波数fと位相差Δφのペアの数、fバーはm個の周波数fの平均、Δφバーはm個の位相差Δφの平均である。
【0041】
振動発生位置計算工程704では、遅延時間差の推定値ΔTバーを用いて、式(10)により振動の発生位置Pvまでの距離Lvを求める。
【0042】
これにより、1本の光伝送路を利用して、高精度な振動位置の特定が可能となる。
【0043】
以上説明したように、本開示の光ファイバ振動センシング装置及び光ファイバ振動センシング方法は、簡易な構成で、振動が付加された位置を特定することが可能な光ファイバ振動センシングを実現することができる。
【0044】
本発明の解析部はコンピュータとプログラムによっても実現できる。コンピュータに実行させるプログラムを記録媒体に記録することも、通信ネットワークを通して提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
101:光源
102:光源分岐カプラ
111:第1の光合分岐カプラ
112:第2の光合分岐カプラ
120:光伝送媒体
121:光伝送路
131:第1の偏光子
132:第1の受光器
141:第2の偏光子
142:第2の受光器
211:第1の直流遮断フィルタ
212:第2の直流遮断フィルタ
221:第1のAD変換器
222:第2のAD変換器
300:解析部
図1
図2
図3
図4