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特開2024-112452電線防水構造体及び電線防水構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112452
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】電線防水構造体及び電線防水構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/70 20060101AFI20240814BHJP
   H01R 4/72 20060101ALI20240814BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20240814BHJP
   H02G 15/18 20060101ALI20240814BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01R4/70 G
H01R4/72
H01R43/00 Z
H02G15/18 006
H02G1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017461
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】神谷 晋司
【テーマコード(参考)】
5E051
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5E051GA01
5E051GA06
5G355AA03
5G355BA15
5G355CA06
5G355CA17
5G375AA02
5G375BA26
5G375BB48
5G375CA02
5G375CA13
5G375CB08
5G375DB09
5G375DB33
(57)【要約】
【課題】溶融した加熱溶融体が熱収縮チューブから漏出することを防ぎ、接続ジョイント部付近の耐炎性を確保すること。
【解決手段】導体である芯線部6と絶縁体である被覆部7とを有する複数の電線3における芯線部6同士が接続された接続ジョイント部を覆う第1熱収縮チューブ11と、第1熱収縮チューブ11の内側に備えられ、熱溶融する加熱溶融体21と、第1熱収縮チューブ11を覆う第2熱収縮チューブ31とを備え、熱収縮した第1熱収縮チューブ11は、接続ジョイント部4に跨って配置されるとともに、熱収縮した第2熱収縮チューブ31は、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yにおいて少なくとも、熱溶融した加熱溶融体21が漏れ出し易い漏出個所を覆うように配置された。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体である芯線部と絶縁体である被覆部とを有する複数の電線における前記芯線部同士が接続された接続ジョイント部を覆う第1熱収縮チューブと、
前記第1熱収縮チューブの内側に備えられ、熱溶融する加熱溶融体と、
前記第1熱収縮チューブを覆う第2熱収縮チューブとを備え、
熱収縮した前記第1熱収縮チューブは、前記接続ジョイント部に跨って配置されるとともに、熱収縮した前記第2熱収縮チューブは、前記第1熱収縮チューブの前記電線に沿う長手方向おいて、熱溶融した前記加熱溶融体が漏れ出し易い漏出個所を少なくとも覆うように配置されたことを特徴とする
電線防水構造体。
【請求項2】
前記第1熱収縮チューブは、長手方向の途中部に開口部を備え、
熱収縮した前記第2熱収縮チューブは、前記第1熱収縮チューブの長手方向において少なくとも前記開口部を覆うように配置された
請求項1に記載の電線防水構造体。
【請求項3】
前記開口部は、前記接続ジョイント部の近傍に配置された
請求項2に記載の電線防水構造体。
【請求項4】
熱収縮した前記第2熱収縮チューブは、熱収縮した前記第1熱収縮チューブよりも長手方向に長く、かつ熱収縮して前記第1熱収縮チューブを長手方向の全長に亘って覆うように配置された
請求項2又は請求項3に記載の電線防水構造体。
【請求項5】
導体である芯線部と絶縁体である被覆部とを有する複数の電線における前記芯線部同士が接続された接続ジョイント部を、熱溶融する加熱溶融体が内側に備えられた第1熱収縮チューブで覆う第1被覆工程と、
前記第1熱収縮チューブの前記電線に沿う長手方向において少なくとも、熱溶融した前記加熱溶融体が漏れ出し易い漏出個所を第2熱収縮チューブで覆う第2被覆工程と、
加熱器で前記第1熱収縮チューブと前記第2熱収縮チューブとを加熱して熱収縮させる加熱工程とをこの順で行う
電線防水構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第2被覆工程において、熱収縮した状態で前記第1熱収縮チューブよりも長手方向に長い前記第2熱収縮チューブは、前記第1熱収縮チューブを長手方向の全長に亘って覆うように配置され、
前記加熱工程において、前記第1熱収縮チューブを、該第1熱収縮チューブの長手方向の端部から前記接続ジョイント部が位置する途中部に向けて順に加熱する
請求項5に記載の電線防水構造体の製造方法。
【請求項7】
前記第1熱収縮チューブは、前記途中部に開口部を備えた
請求項6に記載の電線防水構造体の製造方法。
【請求項8】
導体である芯線部と絶縁体である被覆部とを有する複数の電線における前記芯線部同士が接続された接続ジョイント部を、熱溶融する加熱溶融体が内側に備えられた第1熱収縮チューブで覆う第1被覆工程と、
加熱器で前記第1熱収縮チューブを加熱して熱収縮させる第1加熱工程と、
前記第1熱収縮チューブの前記電線に沿う長手方向において少なくとも、熱溶融した加熱溶融体が漏れ出し易い漏出個所を第2熱収縮チューブで覆う第2被覆工程と、
加熱器で前記第2熱収縮チューブを加熱して熱収縮させる第2加熱工程とをこの順で行う
電線防水構造体の製造方法。
【請求項9】
前記第2被覆工程において、熱収縮した状態で前記第1熱収縮チューブよりも長手方向に長い前記第2熱収縮チューブは、前記第1熱収縮チューブを長手方向の全長に亘って覆うように配置され、
前記加熱工程において、前記第1熱収縮チューブを、該第1熱収縮チューブの長手方向の端部から前記接続ジョイント部が位置する途中部に向けて順に加熱する
請求項8に記載の電線防水構造体の製造方法。
【請求項10】
前記第1熱収縮チューブは、前記途中部に開口部を備えた
請求項9に記載の電線防水構造体の製造方法。
【請求項11】
前記第2加熱工程において、前記第2熱収縮チューブを、該第2熱収縮チューブの長手方向の前記途中部から端部に向けて順に加熱する
請求項10に記載の電線防水構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱収縮チューブを用いた電線防水構造体及び電線防水構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両に搭載されるワイヤーハーネスは、導体である芯線部と絶縁体である被覆部とを有する複数の電線を備えており、複数の電線における芯線部同士が接続された接続ジョイント部の防水性を確保する必要がある。
【0003】
このため、電線防水構造体に関して、例えば、特許文献1には、内周面に加熱溶融体が設けられた熱収縮チューブによって接続ジョイント部の周辺を覆う状態とし、熱収縮チューブを加熱により収縮させるとともに、加熱により溶融した加熱溶融体を接続ジョイント部と熱収縮チューブとの隙間に充填することで接続ジョイント部を止水する技術が提案されている。
【0004】
しかし、熱収縮チューブを加熱した際に、加熱溶融体は、溶融して流動性が高くなるため、熱収縮チューブの長手方向の両端部から熱収縮チューブの外側へ漏出し易くなる。耐炎性を有する熱収縮チューブの外側へ、一般に熱収縮チューブと比して耐炎性に劣ることがある加熱溶融体が漏出した場合、接続ジョイント部付近の耐炎性を確保することが困難となるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-72943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこでこの発明は、溶融した加熱溶融体が熱収縮チューブから漏出することを防ぎ、接続ジョイント部付近の耐炎性を確保することができる電線防水構造体及び電線防水構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、導体である芯線部と絶縁体である被覆部とを有する複数の電線における前記芯線部同士が接続された接続ジョイント部を覆う第1熱収縮チューブと、前記第1熱収縮チューブの内側に備えられ、熱溶融する加熱溶融体と、前記第1熱収縮チューブを覆う第2熱収縮チューブとを備え、熱収縮した前記第1熱収縮チューブは、前記接続ジョイント部に跨って配置されるとともに、熱収縮した前記第2熱収縮チューブは、前記第1熱収縮チューブの前記電線に沿う長手方向において、熱溶融した前記加熱溶融体が漏れ出し易い漏出個所を少なくとも覆うように配置された電線防水構造体であることを特徴とする。
【0008】
前記漏出個所とは、前記第1熱収縮チューブや前記第2熱収縮チューブが熱収縮することによって、前記第1熱収縮チューブの内側に備えた、熱溶融した前記加熱溶融体が該第1熱収縮チューブの外側へ漏れ出すおそれがある箇所であり、例えば、前記第1熱収縮チューブの長手方向の端部や後述する開口部を示す。また、熱収縮した第2熱収縮チューブは、熱収縮した前記第1熱収縮チューブと長手方向の長さが短い場合に限らず、同じであっても長くてもよい。
【0009】
前記第1熱収縮チューブの内側に備えられた加熱溶融体は、前記第1熱収縮チューブの内層に備えた構成に限らず、第1熱収縮チューブによって接続ジョイント部を覆った状態において、第1熱収縮チューブの内面と接続ジョイント部とのうち少なくとも一方に塗布するなどして備えた構成も含む。
【0010】
この発明により、第1熱収縮チューブ或いは第2熱収縮チューブの端部等の一部から外側へ、これら第1、第2熱収縮チューブと比して耐炎性に劣ることがある加熱溶融体が漏れ出すことがなく、第1熱収縮チューブと第2熱収縮チューブの内側に収めることができるため、接続ジョイント部の周辺の耐炎性を確保することができる。
【0011】
詳しくは、第1熱収縮チューブの端部等の一部から加熱溶融体が外側へ漏れ出すことを、該一部に配置された第2熱収縮チューブによって抑制されるため、耐炎性を有する第1熱収縮チューブと第2熱収縮チューブの内側に、これら第1、第2熱収縮チューブと比して耐炎性に劣ることがある加熱溶融体を収めることができるため、接続ジョイント部の周辺の耐炎性を確保することができる。
【0012】
この発明の態様として、前記第1熱収縮チューブは、長手方向の途中部に開口部を備え、熱収縮した前記第2熱収縮チューブは、前記第1熱収縮チューブの長手方向において少なくとも前記開口部を覆うように配置されてもよい。
【0013】
前記途中部は、第1熱収縮チューブの端部よりも中間部寄りの部分である。
また、前記開口部は、前記第1熱収縮チューブの前記途中部に一つ或いは複数備えてもよい。前記開口部を前記第1熱収縮チューブに対して複数形成する場合には、前記第1熱収縮チューブの長手方向と周方向のうち少なくとも一方向に沿って複数形成してもよい。
【0014】
この発明により、前記接続ジョイント部の周辺の耐炎性をより一層確保することができる。
【0015】
詳しくは、前記第1熱収縮チューブの内側で熱溶融した前記加熱溶融体は、第1熱収縮チューブが熱収縮することによって前記接続ジョイント部の周辺に充填される。一方、前記加熱溶融体のうち、前記接続ジョイント部の周辺の充填に要する必要分以外の余剰分は、第1熱収縮チューブが熱収縮することによって前記第1熱収縮チューブの長手方向の途中部に備えた前記開口部を通じて前記第1熱収縮チューブの外側へと意図的に漏出させることができる。
【0016】
これにより、前記接続ジョイント部の周辺に有する前記加熱溶融体が第1熱収縮チューブの端部ではなく開口部から漏出するように前記加熱溶融体の漏出箇所をコントロールすることができる。
すなわち、熱溶融した前記加熱溶融体が前記第1熱収縮チューブの長手方向の端部から外側へ漏出することを抑制することができる。
【0017】
さらに、前記第1熱収縮チューブの長手方向において少なくとも前記開口部を覆うように配置された、熱収縮した前記第2熱収縮チューブによって、前記開口部を通じて前記第1熱収縮チューブの外側へ漏出された余分な加熱溶融体を外側から覆うことができる。
従って、前記接続ジョイント部の周辺の耐炎性をより一層確保することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記開口部は、前記接続ジョイント部の近傍に配置されてもよい。
【0019】
前記接続ジョイント部の近傍とは、前記接続ジョイント部の長手方向の少なくとも一部に対して、熱収縮された第1熱収縮チューブに設けられた開口部が重複する部位を示す。
【0020】
この発明により、前記第1熱収縮チューブの熱収縮時に、前記第1熱収縮チューブの内側の空気が前記接続ジョイント部の近傍に備えた前記開口部を通じて外側へ排出され、前記接続ジョイント部の周辺に空気だまりが残留しないため、前記接続ジョイント部の周辺に加熱溶融体を隙間なく充填させることができる。
【0021】
またこの発明の態様として、熱収縮した前記第2熱収縮チューブは、熱収縮した前記第1熱収縮チューブよりも長手方向に長く、かつ熱収縮して前記第1熱収縮チューブを長手方向の全長に亘って覆うように配置されてもよい。
【0022】
この発明により、熱収縮した前記第1熱収縮チューブと、熱収縮した状態で前記第1熱収縮チューブを長手方向の全長に亘って覆う前記第2熱収縮チューブとで、前記接続ジョイント部を2重で覆うことができるため、前記接続ジョイント部の周辺の耐炎性を確保することができる。
【0023】
また本発明は、導体である芯線部と絶縁体である被覆部とを有する複数の電線における前記芯線部同士が接続された接続ジョイント部を、熱溶融する加熱溶融体が内側に備えられた第1熱収縮チューブで覆う第1被覆工程と、前記第1熱収縮チューブの前記電線に沿う長手方向において少なくとも、熱溶融した前記加熱溶融体が漏れ出し易い漏出個所を第2熱収縮チューブで覆う第2被覆工程と、加熱器で前記第1熱収縮チューブと前記第2熱収縮チューブとを加熱して熱収縮させる加熱工程とをこの順で行う電線防水構造体の製造方法であることを特徴とする。
【0024】
この発明により、前記接続ジョイント部を覆った状態の前記第1熱収縮チューブと、第1熱収縮チューブの少なくとも漏出個所を覆った状態の前記第2熱収縮チューブとを前記加熱器でまとめて加熱して熱収縮させるため、前記接続ジョイント部の周辺の耐炎性を確保した電線防水構造体をスムーズに製造することができる。
なお、前記第1熱収縮チューブは、前記電線に沿う長手方向の途中部に開口部を備えても備えていなくてもよい。
【0025】
この発明の態様として、前記第2被覆工程において、熱収縮した状態で前記第1熱収縮チューブよりも長手方向に長い前記第2熱収縮チューブは、前記第1熱収縮チューブを長手方向の全長に亘って覆うように配置され、前記加熱工程において、前記第1熱収縮チューブを、該第1熱収縮チューブの長手方向の端部から前記接続ジョイント部が位置する途中部に向けて順に加熱してもよい。
【0026】
前記加熱器は、前記第1熱収縮チューブを長手方向の端部から中央部に向けて順に加熱する際に、該長手方向の端部から中央部へと移動しながら加熱してもよいが、長手方向に移動せずに例えば、所定の位置から姿勢変更させながら加熱したり、例えば、第1加熱器、第2加熱器…など複数の加熱器を長手方向の端部から中央部へ並列に配置し、これら複数の加熱器を第1加熱器、第2加熱器…の順に作動させることで加熱してもよい。また、前記加熱器に対して前記電線を長手方向に沿って移動させて前記第1熱収縮チューブ等を加熱してもよい。
【0027】
この発明により、前記接続ジョイント部の防水性および前記接続ジョイント部の周辺の耐炎性を確保した電線防水構造体を製造することができる。
【0028】
詳しくは、前記第1熱収縮チューブは、その長手方向の端部から前記接続ジョイント部に向けて順に加熱されることで収縮するため、第1熱収縮チューブの内側で熱溶融した加熱溶融体を接続ジョイント部の側へと寄せることができる。
【0029】
これにより、前記接続ジョイント部の周辺に加熱溶融体をしっかりと充填して接続ジョイント部の止水性を確保することができる。さらに、前記第1熱収縮チューブの長手方向の端部の側で熱溶融した加熱溶融体の量を低減できるため、前記第1熱収縮チューブの長手方向の端部から熱溶融した加熱溶融体が漏出し難くすることができる。
【0030】
従って、前記接続ジョイント部の防水性および前記接続ジョイント部の周辺の耐炎性を確保した電線防水構造体を製造することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記第1熱収縮チューブは、前記途中部に開口部を備えてもよい。
この発明により、前記接続ジョイント部の防水性および接続ジョイント部の周辺の耐炎性をより一層確保した電線防水構造体を製造することができる。
【0032】
詳しくは、前記第1熱収縮チューブの長手方向における、接続ジョイント部の側に寄せられた前記加熱溶融体のうち、余分な加熱溶融体は、接続ジョイント部が位置する前記開口部から前記第1熱収縮チューブの外側へと意図的に漏出させることができる。
【0033】
よって、熱溶融した前記加熱溶融体が前記第1熱収縮チューブの端部ではなく前記開口部から漏出するように前記加熱溶融体の漏出箇所をコントロールして、熱溶融した前記加熱溶融体が前記第1熱収縮チューブの長手方向の端部から外側へ漏出することを抑制することができる。また、開口部から漏出した前記加熱溶融体は、熱収縮した前記第1熱収縮チューブによって外側から覆われる。
【0034】
加えて、前記第1熱収縮チューブの熱収縮時に、前記第1熱収縮チューブの内側の空気を、前記接続ジョイント部の近傍に備えた前記開口部を通じて外側へ排出して前記接続ジョイント部の周辺の空気だまりを排除できる。
【0035】
従って、前記接続ジョイント部の防水性および接続ジョイント部の周辺の耐炎性をより一層確保した電線防水構造体を製造することができる。
【0036】
本発明は、導体である芯線部と絶縁体である被覆部とを有する複数の電線における前記芯線部同士が接続された接続ジョイント部を、熱溶融する加熱溶融体が内側に備えられた第1熱収縮チューブで覆う第1被覆工程と、加熱器で前記第1熱収縮チューブを加熱して熱収縮させる第1加熱工程と、前記第1熱収縮チューブの長手方向において少なくとも、熱溶融した加熱溶融体が漏れ出し易い漏出個所を第2熱収縮チューブで覆う第2被覆工程と、加熱器で前記第2熱収縮チューブを加熱して熱収縮させる第2加熱工程とをこの順で行う電線防水構造体の製造方法であることを特徴とする。
【0037】
この発明により、前記接続ジョイント部を覆う前記第1熱収縮チューブを加熱した後、前記第1熱収縮チューブの少なくとも漏出個所を覆う前記第2熱収縮チューブを加熱することで、前記第1熱収縮チューブと前記第2熱収縮チューブとの夫々をしっかりと熱収縮させることができるため、前記接続ジョイント部の周辺の耐炎性を確保した電線防水構造体を確実に製造することができる。
【0038】
この発明の態様として、前記第2被覆工程において、熱収縮した状態で前記第1熱収縮チューブよりも長手方向に長い前記第2熱収縮チューブは、前記第1熱収縮チューブを長手方向の全長に亘って覆うように配置され、前記加熱工程において、前記第1熱収縮チューブを、該第1熱収縮チューブの長手方向の端部から前記接続ジョイント部が位置する途中部に向けて順に加熱してもよい。
【0039】
この発明により、前記接続ジョイント部の防水性および前記接続ジョイント部の周辺の耐炎性を確保した電線防水構造体を製造することができる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記第1熱収縮チューブは、前記途中部に開口部を備えてもよい。
この発明により、前記接続ジョイント部の防水性および接続ジョイント部の周辺の耐炎性をより一層確保した電線防水構造体を製造することができる。
【0041】
またこの発明の態様として、前記第2加熱工程において、前記第2熱収縮チューブを、該第2熱収縮チューブの前記途中部から端部に向けて順に加熱してもよい。
【0042】
この発明により、前記接続ジョイント部の止水性をより一層確保することができる。
詳しくは、前記第2加熱工程において、第2熱収縮チューブを長手方向の途中部から端部に向けて熱収縮させることで、第1熱収縮チューブと第2熱収縮チューブとの間の空気を第2熱収縮チューブの端部から外側へ排出することができる。
従って、接続ジョイント部の周辺に充填された加熱溶融体に空気だまりが残留し難くなり、前記接続ジョイント部の止水性をより一層確保することができる。
【発明の効果】
【0043】
この発明によれば、溶融した加熱溶融体が熱収縮チューブから漏出することを防ぎ、接続ジョイント部付近の耐炎性を確保することができる電線防水構造体及び電線防水構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本実施形態の電線防水構造体を備えた端子付き電線の一部断面図
図2】(a)は接続ジョイント部を熱収縮前の第1熱収縮チューブと第2熱収縮チューブで覆った状態の端子付き電線を示す一部断面図、(b)は(a)中のX1部拡大部図
図3】(a)は本実施形態の第1被覆工程の様子を一部断面で示す説明図、(b)は本実施形態の第2被覆工程の様子を一部断面で示す説明図
図4】(a)は本実施形態の加熱工程の初期の様子を一部断面で示す説明図、(b)は本実施形態の加熱工程の終了直前の様子を一部断面で示す説明図、(c)は(b)中のX2部拡大部図
図5】(a)は変形例1の第1加熱工程の初期の様子を一部断面で示す説明図、(b)は変形例1の第1加熱工程の直後の様子を一部断面で示す説明図、(c)は第2被覆工程の様子を一部断面で示す説明図、(d)は、第2被覆工程直後の様子を一部断面で示す説明図
図6】(a)は変形例1の第2加熱工程の初期の様子を一部断面で示す説明図、(b)は変形例1の第2加熱工程の中期の様子を一部断面で示す説明図、(c)は(b)中のX3部拡大部図
図7】変形例1の電線防水構造体を備えた端子付き電線の一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0045】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。なお、図中、矢印Yは端子付き電線2の長手方向を示すものとする。さらに、図中、矢印Yaは長手方向一方側、矢印Ybは長手方向他方側を夫々示すものとする。
【0046】
車両等に搭載される本実施形態のワイヤーハーネス1には、図1に示すような端子付き電線2を備えている。本実施形態の端子付き電線2は、複数の電線3と、複数の電線3を接続する接続ジョイント部4において電線3同士を接続する端子金具5と、接続ジョイント部4を止水する電線防水構造体10とを備えている。
【0047】
電線3は、導体である芯線部6と、芯線部6の外周を被覆する絶縁体である被覆部7とを備えている。各電線3は、接続ジョイント部4において被覆部7が除去され、被覆部7から芯線部6が露出して形成されている。
【0048】
端子金具5は、導通性を有するとともに、加締め変形前の状態において各電線3の露出した芯線部6に対して挿通可能な内径を有する円筒状に形成されている。そして、各電線3は、接続ジョイント部4において露出した芯線部6を束ねた状態で端子金具5を加締めることで圧着接続されている。
各電線3は、本実施形態のように端子金具5を用いた圧着接続に限らず、ワイヤボンダを用いた超音波接合や、加熱工具を用いたはんだ付けまたはろう付け等によって接続してもよい。
【0049】
本実施形態においては、2本の電線3(3a,3b)を有し、2本のうち一方の電線3aは、長手方向Yの中間部において芯線部6が露出しており、他方の電線3bは、長手方向Yの端部において芯線部6が露出している。そして、これら2本の電線3の露出した芯線部6同士が1つの端子金具5によって圧着接続されている。なお、本実施形態の端子金具5は、接続ジョイント部4、すなわち各電線3の露出した芯線部6を束ねた部分の長手方向Yの中間部に配置されている。
【0050】
接続ジョイント部4を止水する電線防水構造体10は、第1熱収縮チューブ11と加熱溶融体21と第2熱収縮チューブ31とを備えている。
第1熱収縮チューブ11は、加熱により収縮する、すなわち熱収縮するチューブであり、例えば、ポリエチレンや他のポリエチレン系樹脂などの熱溶融性樹脂で形成され、耐水性および難燃性を有している。
【0051】
熱収縮した第1熱収縮チューブ11は、接続ジョイント部4の長手方向Yの長さと同一の長さ、或いはより長い長さを有する筒状に形成されている。
【0052】
本実施形態における、熱収縮した第1熱収縮チューブ11は、図1に示すように、接続ジョイント部4に跨って配置可能に接続ジョイント部4の長手方向Yの長さより長い長さを有する円筒状に形成されている。
【0053】
図2(a)(b)に示すように、第1熱収縮チューブ11は、長手方向Yの途中部に開口部12を備えている。開口部12は、第1熱収縮チューブ11の周面の所定箇所に貫通して形成され、第1熱収縮チューブ11に1つ備えている。
【0054】
本実施形態の開口部12は、接続ジョイント部4の近傍、詳しくは、接続ジョイント部4の長手方向Yの中間部4mにおける、周方向の所定箇所に配置され、第1熱収縮チューブ11の周面の所定箇所において正面視正円形状に貫通形成されている。
【0055】
もっとも開口部12は、例えば、溶融した加熱溶融体21を第1熱収縮チューブ11の内側から外側へ漏出させたい量、第1熱収縮チューブ11の強度、加熱溶融体21の粘度等に応じて適宜の大きさ、形状、数で備えることができる。例えば、開口部12は、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの途中部に複数備えてもよい。その場合、開口部12は、第1熱収縮チューブ11の長手方向Y或いは周方向に列状あるいは千鳥状に配置してもよい。また、開口部12は、正円形状に限らず、長手方向Y又は周方向に長い長穴形状等他の形状であってもよい。
【0056】
開口部12は、例えば、第1熱収縮チューブ11の周面の所定箇所をピン等により打ち抜くことにより、周面の所定箇所に貫通形成することができる。
さらに、第1熱収縮チューブ11に対して複数の開口部12を形成する場合には、図示省略するが、第1熱収縮チューブ11の内部空間を隔てて対向する周面を互いに重合させ、重合する周面をピン等により打ち抜くことにより、重合する周面の夫々に開口部12を同時に貫通形成することができる。
【0057】
このような開口部12の形成方法を採用することで、第1熱収縮チューブ11に対して複数の開口部12を効率よく形成することができるため好ましいが、このような開口部12の形成方法に限定せず、他の形成方法を採用してもよい。
【0058】
加熱溶融体21は、ポリオレフィン系樹脂もしくはポリエステル樹脂などの熱溶融性樹脂で形成されている。本実施形態の加熱溶融体21は、第1熱収縮チューブ11および第2熱収縮チューブ31と比して耐炎性に劣るが耐水性を有している。加熱溶融体21は、基材層に相当する第1熱収縮チューブ11の内部の少なくとも一部に備えている。本実施形態の加熱溶融体21は、図2(a)に示すように、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの全長および全周に亘って備え、第1熱収縮チューブ11の内層を形成している。
なお、図2(a)に示すように、熱収縮前の第1熱収縮チューブ11は、内側に加熱溶融体21を備えた状態で接続ジョイント部4の外周を覆うことが可能な内径を有する円筒状に形成されている。
【0059】
第2熱収縮チューブ31は、第1熱収縮チューブ11と同様に加熱により収縮するチューブであり、例えば、ポリオレフィン系樹脂もしくはナイロン系樹脂などの熱溶融性樹脂で形成され、耐水性および難燃性を有している。
【0060】
熱収縮前の第2熱収縮チューブ31は、図2(a)に示すように、熱収縮前の第1熱収縮チューブ11の外周を覆うことができる内径を有する筒状に形成されている。熱収縮した第2熱収縮チューブ31は、図1に示すように、熱収縮した第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの長さと同一の長さ、もしくはより長い長さに形成される。
これらにより、熱収縮した第2熱収縮チューブ31は、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの少なくとも開口部12を覆うように配置される。
【0061】
本実施形態における、熱収縮した第2熱収縮チューブ31は、図1に示すように、熱収縮した第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの長さより長い長さに形成され、かつ熱収縮した第1熱収縮チューブ11を長手方向Yの全長に亘って覆うように配置されている。
【0062】
続いて、端子付き電線2の接続ジョイント部4に電線防水構造体10を備える方法、すなわち、電線防水構造体10の製造方法について図2(a)、図3(a)(b)、図4(a)(b)(c)を用いて説明する。
電線防水構造体10の製造方法は、第1被覆工程と第2被覆工程と加熱工程とをこの順で行う。
【0063】
第1被覆工程では、図3(a)中の白抜き矢印で示すように、端子付き電線2における接続ジョイント部4を熱収縮前の第1熱収縮チューブ11で覆う。その際、図3(b)に示すように、熱収縮前の第1熱収縮チューブ11を接続ジョイント部4の長手方向Yに跨って配置する。さらに、本実施形態においては、開口部12が接続ジョイント部4の長手方向Yの中間部4mに、すなわち、接続ジョイント部4に備えた端子金具5と長手方向Yと略一致するように配置する。
【0064】
第2被覆工程では、図3(b)中の白抜き矢印で示すように、第1熱収縮チューブ11の少なくとも端部11tおよび開口部12を第2熱収縮チューブ31で覆う。本実施形態においては、図2(a)に示すように、熱収縮前の第1熱収縮チューブ11を長手方向Yの全長に亘って第2熱収縮チューブ31で覆う。これにより、接続ジョイント部4は、長手方向Yの全長に亘って熱収縮前の第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31とで2重に覆われた状態となる。
【0065】
加熱工程では、接続ジョイント部4を覆った状態で第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31とをヒータ40で加熱してまとめて熱収縮させる。
【0066】
具体的にヒータ40は、熱収縮前の第2熱収縮チューブ31に対して周方向における所定の部位に配置されるとともに、ヒータ40に備えた熱源が第2熱収縮チューブ31に熱を付与可能な姿勢で配置されている。図4(a)に示すように、ヒータ40(40a,40b)は、一対が備えられ、一方のヒータ40aは、長手方向Yの一方の側の端部31tに配置されるとともに、他方のヒータ40bは、長手方向Yの他方の側の端部31tに配置されている。
【0067】
そして、一対のヒータ40を作動させることによって第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31との夫々の長手方向Yの両端部11t,31tを加熱して熱収縮させる。
さらに、図4(a)(b)中の太矢印に示すように、一対のヒータ40を作動させた状態で第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31の長手方向Yの両端部11t,31tから中間部11m,31mへ長手方向Yに沿って移動させる。
【0068】
これにより、接続ジョイント部4の長手方向Yの端部4tから中間部4mに向けて、第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31とが熱収縮するとともに、第1熱収縮チューブ11の内側に備えた加熱溶融体21が熱溶融していく。
【0069】
熱溶融した加熱溶融体21は、流動性を有するため、第1熱収縮チューブ11が長手方向Yの端部11tから中間部11mに向けて徐々に熱収縮することによって接続ジョイント部4の長手方向Yの中間部4mへと流動する。
【0070】
そして、第1熱収縮チューブ11の内側において、長手方向Yの中間部11mの側へ寄せられた加熱溶融体21のうち余分な加熱溶融体21aは、図4(c)中の太矢印に示すように、第1熱収縮チューブ11の中間部11mに備えた開口部12から第1熱収縮チューブ11の外側、すなわち、第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31との間の空間へと漏出する。
【0071】
ヒータ40によって、第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31とを長手方向Yの中間部11m,31mまで熱収縮すると、第1熱収縮チューブ11によって接続ジョイント部4の周辺の加熱溶融体21が略隙間なく覆われる。
【0072】
さらに、熱収縮した第2熱収縮チューブ31によって、第1熱収縮チューブ11および、開口部12から漏出した余分な加熱溶融体21aが略隙間なく覆われる。
ヒータ40による加熱を停止すると、加熱溶融体21が硬化し、図1に示すような電線防水構造体10を製造することができる。
【0073】
上述した実施形態の電線防水構造体10および電線防水構造体10の製造方法について奏する作用効果は以下のとおりである。
【0074】
上述した実施形態の電線防水構造体10は、図1に示すように、熱収縮した第1熱収縮チューブ11が、接続ジョイント部4に跨って配置されるとともに、熱収縮した第2熱収縮チューブ31が、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの全長に亘って配置されることにより、第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31との2重で接続ジョイント部4を覆うことができる。
【0075】
このため、加熱溶融体21が第1熱収縮チューブ11の端部11t等の一部から外側へ漏れ出した場合においても、耐炎性を有する第2熱収縮チューブ31の内側に収めることができ、接続ジョイント部4の周辺の耐炎性を確保することができる。
【0076】
本実施形態の第1熱収縮チューブ11は、長手方向Yの中間部11mに開口部12を備え、熱収縮した第2熱収縮チューブ31は、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの少なくとも開口部12に覆うように配置されたため、接続ジョイント部4の周辺の耐炎性をより一層確保することができる。
【0077】
詳しくは、第1熱収縮チューブ11の内側で熱溶融した加熱溶融体21のうち余分な加熱溶融体21aを、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの中間部11mに備えた開口部12から第1熱収縮チューブ11の外側へと漏出することができるため、接続ジョイント部4の周辺に有する加熱溶融体21の充填量をコントロールすることができる。
【0078】
これにより、第1熱収縮チューブ11の内側に備えた加熱溶融体21によって接続ジョイント部4をしっかりと覆うことができるとともに、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの端部11tから熱溶融した加熱溶融体21が外側へ漏出することを抑制することができる。
【0079】
さらに、熱収縮した第2熱収縮チューブ31は、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの少なくとも開口部12に配置されるため、開口部12を通じて第1熱収縮チューブ11の外側へ漏出された余分な加熱溶融体21aを、耐炎性を有する第2熱収縮チューブ31によって覆うことができる。
従って、接続ジョイント部4の周辺の耐炎性をより一層確保することができる。
【0080】
本実施形態の開口部12は、図2に示すように、接続ジョイント部4の近傍に配置されたため、図4(b)(c)に示すように、第1熱収縮チューブ11の熱収縮時に、第1熱収縮チューブ11の内側の空気が接続ジョイント部4の近傍に備えた開口部12から、第1熱収縮チューブ11の外側へ抜け出し、接続ジョイント部4の周辺に空気だまりが残留しないため、接続ジョイント部4の周辺に加熱溶融体21を万遍なく充填させることができる。
【0081】
本実施形態の熱収縮した第2熱収縮チューブ31は、図1に示すように、熱収縮した第1熱収縮チューブ11よりも長手方向Yに長く、かつ熱収縮して第1熱収縮チューブ11を長手方向Yの全長に亘って覆うように配置されたため、熱収縮した第1熱収縮チューブ11と、該熱収縮した第1熱収縮チューブ11を長手方向Yの全長に亘って覆う第2熱収縮チューブ31とで、接続ジョイント部4の全体を2重で覆うことができる。
【0082】
これにより、例えば、第1熱収縮チューブ11の内側に備えた加熱溶融体21が熱溶融して第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの端部11tや開口部12から外側へ漏出しても、該漏出した加熱溶融体21を第2熱収縮チューブ31によって覆うことができる。
従って、接続ジョイント部4の周辺の耐炎性を確保することができる。
【0083】
上述した実施形態の電線防水構造体10の製造方法は、図4(a)(b)に示すように、加熱工程において接続ジョイント部4を覆った状態の第1熱収縮チューブ11と、第1熱収縮チューブ11の少なくとも一部を覆った状態の第2熱収縮チューブ31とを、ヒータ40でまとめて加熱して熱収縮させるため、耐炎性を確保した電線防水構造体10をスムーズに製造することができる。
【0084】
また、上述した実施形態の電線防水構造体10の製造方法は、図4(a)(b)に示すように、加熱工程において、長手方向Yの途中部に開口部12を備えた第1熱収縮チューブ11を、該第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの端部11tから接続ジョイント部4が位置する開口部12に向けて順に加熱するため、接続ジョイント部4の防水性および耐炎性を確保した電線防水構造体10を製造することができる。
【0085】
詳しくは、第1熱収縮チューブ11は、その長手方向Yの端部11tから接続ジョイント部4に向けて順に熱収縮していくため、第1熱収縮チューブ11の内側で熱溶融した加熱溶融体21を接続ジョイント部4の端部11tから開口部12が位置する中間部11mへと寄せることができる。
【0086】
これにより、接続ジョイント部4の周辺に接続ジョイント部4をしっかりと充填して接続ジョイント部4の止水性を確保することができる。さらに、熱溶融した加熱溶融体21を接続ジョイント部4の開口部12の側へと寄せることで第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの端部11tの側において熱溶融した加熱溶融体21の量を低減できる。よって、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの端部11tから熱溶融した加熱溶融体21が漏出し難くなる。
【0087】
加えて、第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの端部11tから中間部11mの側に寄せられた加熱溶融体21のうち余分な加熱溶融体21aは、空気だまりと共に中間部11mに位置する開口部12から第1熱収縮チューブ11の外側へと排出される。これにより、接続ジョイント部4周辺の空気だまりを排除できるとともに、第1熱収縮チューブ11の内側に備えた加熱溶融体21の量をコントロールして第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの端部11tから熱溶融した加熱溶融体21がより一層漏出し難くなる。
【0088】
従って、接続ジョイント部4の防水性および接続ジョイント部4の周辺の耐炎性を確保した電線防水構造体10を製造することができる。
【0089】
続いて、上述した実施形態の電線防水構造体10の製造方法の変形例1に係る電線防水構造体10aの製造方法について説明する。但し、上述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0090】
(変形例1)
変形例1の電線防水構造体10aの製造方法は、第1被覆工程と第1加熱工程と第2被覆工程と第2加熱工程とをこの順で行う。
【0091】
第1被覆工程では、熱収縮前の第1熱収縮チューブ11が接続ジョイント部4の長手方向Yに跨って配置されるように接続ジョイント部4を熱収縮前の第1熱収縮チューブ11で覆う。第1被覆工程は、上述した製造方法の第1被覆工程と同じ要領であるため、詳細な説明は省略する。
【0092】
第1加熱工程では、図5(a)(b)に示すように、第1熱収縮チューブ11を、ヒータ40を用いて加熱することにより熱収縮させる。第1加熱工程は、上述した製造方法の加熱工程と同じ要領で第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの端部11tから中間部11mに位置する開口部12に向けて順に加熱して熱収縮させるが、第2熱収縮チューブ31で覆っていない状態で第1熱収縮チューブ11に対して加熱する。
【0093】
その際、上述した製造方法の加熱工程と同様に、第1熱収縮チューブ11の内側で熱溶融した加熱溶融体21は、図5(b)に示すように、接続ジョイント部4の側へと流動し、余分な加熱溶融体21aは、開口部12から漏出する。
【0094】
第2被覆工程では、図5(c)(d)に示すように、熱収縮した第1熱収縮チューブ11の少なくとも一部を第2熱収縮チューブ31で覆う。当例では、第2熱収縮チューブ31は、図5(d)に示すように、熱収縮した第1熱収縮チューブ11の長手方向Yの全長に亘って覆い、かつ長手方向Yの中間部11mが、接続ジョイント部4の中間部4mと一致するように配置される。
【0095】
第2加熱工程では、図6(a)(b)に示すように、第2熱収縮チューブ31を、該第2熱収縮チューブ31の長手方向Yの中間部31mから端部31tに向けて順に加熱する。
詳しくは、一対のヒータ40は、長手方向Yにおける、接続ジョイント部4の中間部4mに配置される。そして、一対のヒータ40を作動させることによって第2熱収縮チューブ31の長手方向Yの中間部31mを加熱して熱収縮させる。
さらに、一対のヒータ40を作動させた状態で、一方のヒータ40aを第2熱収縮チューブ31の長手方向Yの中間部31mから一方側の端部31tへ、他方のヒータ40bを第2熱収縮チューブ31の長手方向Yの中間部31mから他方側の端部31tへ何れも長手方向Yに沿って移動させる。
【0096】
これにより、図7に示すように、第2熱収縮チューブ31が長手方向Yの中間部31mから端部31tに向けて熱収縮することで、第2熱収縮チューブ31によって、開口部12から漏出した加熱溶融体21および第1熱収縮チューブ11を、これらに対して略隙間なく覆うことができる。この状態で、加熱溶融体21が硬化することで図7に示すような電線防水構造体10aを製造することができる。
【0097】
上述した変形例1の電線防水構造体10aの製造方法は、第1加熱工程において、図5(a)(b)に示すように、接続ジョイント部4を覆う第1熱収縮チューブ11を加熱して熱収縮させた後、第2加熱工程において、図6(a)(b)に示すように、熱収縮した第1熱収縮チューブ11を覆った状態で第2熱収縮チューブ31を加熱することで、第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31とをまとめて加熱する場合と比較して第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31との夫々をしっかりと熱収縮させることができる。
従って、接続ジョイント部4の周辺の耐炎性を確保した電線防水構造体10aを確実に製造することができる。
【0098】
上述した変形例1の電線防水構造体10aの製造方法は、図6(a)(b)に示すように、第2加熱工程において、第2熱収縮チューブ31を、長手方向Yにおける、接続ジョイント部4が位置する中間部4mから端部4tに向けて順に加熱する。
【0099】
このような製造方法により、接続ジョイント部4の止水性をより一層確保することができる。
詳しくは、第2加熱工程において、第2熱収縮チューブ31を長手方向Yの中間部31mから端部31tに向けて熱収縮させることで、図6(c)中の太矢印に示すように、第1熱収縮チューブ11と第2熱収縮チューブ31との間の空気Aを、第2熱収縮チューブ31の端部31tから第2熱収縮チューブ31の外側へ排出することができる。
従って、接続ジョイント部4の周辺に充填された加熱溶融体21に空気だまりが残留し難くなり、接続ジョイント部4の止水性をより一層確保することができる。
【0100】
この発明の構成と、上述した実施形態との対応において、漏出個所は、第1熱収縮チューブ11の端部11tおよび開口部12に対応し、同様に
加熱器は、ヒータ40(40a,40b)に対応し、
第1熱収縮チューブにおける、電線に沿う長手方向の途中部は、第1熱収縮チューブ11における長手方向Yの中間部11mに対応し、
第2熱収縮チューブの長手方向の途中部は、第2熱収縮チューブ31の長手方向Yの中間部31mに対応する。
【0101】
この発明は、上述した実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
例えば、本発明の第1熱収縮チューブは、第1熱収縮チューブ11のように開口部12を設けた構成に限らず、設けなくてもよい。
このように、第1熱収縮チューブに開口部12を設けない場合においても、加熱溶融体21が第2熱収縮チューブの端部から外側へ漏出することがなく、熱収縮した第1熱収縮チューブと第2熱収縮チューブとで接続ジョイント部4をしっかりと覆うことができる。
【0102】
具体的には、加熱器を用いて第1熱収縮チューブを長手方向の中央部から端部の順に熱収縮させことによって、第1熱収縮チューブの内側に備えた、熱溶融した加熱溶融体21を第1熱収縮チューブの端部から漏出させる。さらに、その後、熱収縮した第1熱収縮チューブを第2熱収縮チューブで長手方向の全長に亘って覆い、加熱器を用いて第2熱収縮チューブを長手方向の端部から中央部へ向けて熱収縮させてもよい。これにより、第1熱収縮チューブの端部から漏出した加熱溶融体21を、熱収縮した第2熱収縮チューブによって、該第2熱収縮チューブの端部から漏出することなく覆うことができる。
【0103】
また、本発明に備えた、熱収縮した第2熱収縮チューブは、第1熱収縮チューブの長手方向において少なくとも漏出個所を覆うように配置されていれば、第1熱収縮チューブ11に跨って覆うように配置された構成に限らず、例えば、端部11tや開口部12のみを覆うように配置されてもよい。
【0104】
さらにまた、本発明の加熱器は、上述したヒータ40のように、第1熱収縮チューブ11を長手方向Yの端部11tから中間部11mに向けて順に加熱する際に、該長手方向Yの端部11tから中間部11mへと移動しながら加熱してもよいが、長手方向Yに移動せずに例えば、所定の位置から姿勢変更させながら加熱したり、長手方向Yに沿って複数の加熱器を備えて順に作動させることで加熱してもよい。
【0105】
また、電線防水構造体の製造方法の各工程は、作業者が例えば、工具、治具等を用いて適宜手作業で行ってよく、或いは、例えば、モータ等の駆動源を用いて端子付き電線2、第1熱収縮チューブ11、第2熱収縮チューブ31、ヒータ40等を自動搬送するモータ等を備える等して自動化してもよい。
【符号の説明】
【0106】
3(3a,3b)…電線
4…接続ジョイント部
6…芯線部
7…被覆部
10,10a…電線防水構造体
11…第1熱収縮チューブ
12…開口部
21…加熱溶融体
31…第2熱収縮チューブ
40(40a,40b)…ヒータ
11m…第1熱収縮チューブにおける長手方向の中間部
11t…第1熱収縮チューブの長手方向の端部
31m…第2熱収縮チューブの長手方向の中間部
Y…長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7