(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112582
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】レーザ装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0687 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
H01S5/0687
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017721
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 慶
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤司
(72)【発明者】
【氏名】金堂 晃久
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173SE01
5F173SF10
5F173SF34
5F173SF43
5F173SF72
5F173SF74
(57)【要約】
【課題】それぞれがレーザ光を出力する複数の光源部を備えているレーザ装置において、好適な周波数制御を実現する技術を提供すること。
【解決手段】レーザ装置は、Nを3以上の整数として、それぞれが出力するレーザ光の周波数を変更可能なN個の光源と、N個の前記レーザ光のそれぞれの周波数に対応するモニタ値を取得するモニタ部と、N個の前記モニタ値のそれぞれに基づく制御量を前記N個の光源のそれぞれに順次供給することによって前記N個のレーザ光のそれぞれの周波数をそれぞれの目標周波数に近づける制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記光源を制御する間隔を1周期とした場合に、前記N個の光源のうち少なくとも一つの光源である第1光源を少なくとも一つの第1周期で制御し、前記N個の光源のうち前記第1光源以外の少なくとも一つの光源である第2光源を第1周期よりも長い第2周期で制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nを3以上の整数として、それぞれが出力するレーザ光の周波数を変更可能なN個の光源と、
N個の前記レーザ光のそれぞれの周波数に対応するモニタ値を取得するモニタ部と、
N個の前記モニタ値のそれぞれに基づく制御量を前記N個の光源のそれぞれに順次供給することによって前記N個のレーザ光のそれぞれの周波数をそれぞれの目標周波数に近づける制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記光源を制御する間隔を1周期とした場合に、前記N個の光源のうち少なくとも一つの光源である第1光源を少なくとも一つの第1周期で制御し、前記N個の光源のうち前記第1光源以外の少なくとも一つの光源である第2光源を第1周期よりも長い第2周期で制御する
レーザ装置。
【請求項2】
前記第1周期はN周期よりも短く、前記第2周期はN周期よりも長い
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記第1光源は、前記第2光源よりも周囲の熱変化が大きい
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項4】
複数の前記第1光源を有し、
前記制御部は、周囲の熱変化がより大きい前記第1光源をより短い周期で制御する
請求項3に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記N個のレーザ光は互いに周波数が異なり、
前記第1光源が出力するレーザ光の周波数は、前記N個のレーザ光の周波数が周波数軸において成す周波数列の両端以外の周波数であり、前記第2光源が出力するレーザ光の周波数は、前記周波数列において、両端の周波数である
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項6】
複数の前記第1光源を有し、
前記制御部は、前記周波数列の中心周波数により近い周波数のレーザ光を出力する前記第1光源をより短い周期で制御する
請求項5に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記モニタ部は、N個の前記モニタ値を取得する共通のモニタ部を有する
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項8】
Nを3以上の整数として、それぞれが出力するレーザ光の周波数を変更可能なN個の光源を備えるレーザ装置の制御方法であって、
前記レーザ光の周波数に対応するモニタ値を取得するモニタステップと、
前記モニタ値に基づく制御量を前記光源に供給することによって前記レーザ光の周波数を目標周波数に近づける制御を行う制御ステップと、
を備え、
前記モニタステップと前記制御ステップとを、前記光源ごとに実行し、
前記制御ステップでは、前記光源を制御する間隔を1周期とした場合に、前記N個の光源のうち少なくとも一つの光源である第1光源を少なくとも一つの第1周期で制御し、前記N個の光源のうち前記第1光源以外の少なくとも一つの光源である第2光源を第1周期よりも長い第2周期で制御する
レーザ装置の制御方法。
【請求項9】
前記第1周期はN周期よりも短く、前記第2周期はN周期よりも長い
請求項8に記載のレーザ装置の制御方法。
【請求項10】
前記第1光源は、前記第2光源よりも周囲の熱変化が大きい
請求項8に記載のレーザ装置の制御方法。
【請求項11】
前記レーザ装置は、複数の前記第1光源を有し、
前記制御ステップでは、周囲の熱変化がより大きい前記第1光源をより短い周期で制御する
請求項10に記載のレーザ装置の制御方法。
【請求項12】
前記N個のレーザ光は互いに周波数が異なり、
前記第1光源が出力するレーザ光の周波数は、前記N個のレーザ光の周波数が周波数軸において成す周波数列の両端以外の周波数であり、前記第2光源が出力するレーザ光の周波数は、前記周波数列において、両端の周波数である
請求項8に記載のレーザ装置の制御方法。
【請求項13】
前記レーザ装置は、複数の前記第1光源を有し、
前記制御ステップでは、前記周波数列の中心周波数により近い周波数のレーザ光を出力する前記第1光源をより短い周期で制御する
請求項12に記載のレーザ装置の制御方法。
【請求項14】
前記レーザ装置は、N個の前記モニタ値を取得する共通のモニタ部を有する
請求項8に記載のレーザ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出力するレーザ光の周波数を変更可能なレーザ装置において、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有する周波数フィルタを用いて、レーザ光の周波数を制御する技術が開示されている(特許文献1)。レーザ光の周波数を所望の周波数に制御する技術は周波数ロック制御とも呼ばれ、周波数フィルタを透過したレーザ光のパワーの検出結果に基づくフィードバック制御によって実現される。具体的には、周波数フィルタを透過したレーザ光のパワーの検出結果が、周波数フィルタの透過率スペクトルが成す周波数弁別カーブによってレーザ光の周波数と対応づけられることよって、レーザ光の周波数の検出と制御が実行される。
【0003】
一方、互いに周波数が異なる多数のレーザ光を出力できる波長可変光源が開示されている。このような光源は多波長光源や多波長レーザ装置とも呼ばれる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-140304号公報
【特許文献2】特開2021-68823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多波長レーザ装置が、それぞれがレーザ光を出力する複数の光源を備えている場合、光源によって熱環境が異なる場合がある。この場合、周囲の熱変化が大きい光源は、周囲からの熱の流入量または周囲への熱の流出量が多いため、当該光源が出力するレーザ光の周波数が変動しやすいという課題がある。また、多波長レーザ装置が出力する複数のレーザ光の周波数が周波数軸において成す周波数列の両端以外の周波数のレーザ光は、その両隣に他の周波数のレーザ光が存在する。この場合、当該両端以外の周波数のレーザ光の周波数が変動すると、その両隣の周波数のレーザ光に対して影響を及ぼすので、両端の周波数が変動する場合よりも影響が大きい。この影響とは、たとえば、周波数スペクトル同士の重なりとなって現れる。このような重なりは、レーザ光が高速変調されてスペクトルが広がっている場合に顕著になる。そして、このような重なりは、チャネル間クロストークなどの不具合の原因になるので好ましくない。そこで、周波数列において両隣に他の周波数のレーザ光が存在するレーザ光は、より高精度に周波数制御されることが好ましい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、それぞれがレーザ光を出力する複数の光源部を備えているレーザ装置において、好適な周波数制御を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、Nを3以上の整数として、それぞれが出力するレーザ光の周波数を変更可能なN個の光源と、N個の前記レーザ光のそれぞれの周波数に対応するモニタ値を取得するモニタ部と、N個の前記モニタ値のそれぞれに基づく制御量を前記N個の光源のそれぞれに順次供給することによって前記N個のレーザ光のそれぞれの周波数をそれぞれの目標周波数に近づける制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記光源を制御する間隔を1周期とした場合に、前記N個の光源のうち少なくとも一つの光源である第1光源を少なくとも一つの第1周期で制御し、前記N個の光源のうち前記第1光源以外の少なくとも一つの光源である第2光源を第1周期よりも長い第2周期で制御する、レーザ装置である。
【0008】
前記第1周期はN周期よりも短く、前記第2周期はN周期よりも長くてもよい。
【0009】
前記第1光源は、前記第2光源よりも周囲の熱変化が大きくてもよい。
【0010】
複数の前記第1光源を有し、前記制御部は、周囲の熱変化がより大きい前記第1光源をより短い周期で制御してもよい。
【0011】
前記N個のレーザ光は互いに周波数が異なり、前記第1光源が出力するレーザ光の周波数は、前記N個のレーザ光の周波数が周波数軸において成す周波数列の両端以外の周波数であり、前記第2光源が出力するレーザ光の周波数は、前記周波数列において、両端の周波数であってもよい。
【0012】
複数の前記第1光源を有し、前記制御部は、前記周波数列の中心周波数により近い周波数のレーザ光を出力する前記第1光源をより短い周期で制御してもよい。
【0013】
前記モニタ部は、N個の前記モニタ値を取得する共通のモニタ部を有してもよい。
【0014】
本発明の一態様は、Nを3以上の整数として、それぞれが出力するレーザ光の周波数を変更可能なN個の光源を備えるレーザ装置の制御方法であって、前記レーザ光の周波数に対応するモニタ値を取得するモニタステップと、前記モニタ値に基づく制御量を前記光源に供給することによって前記レーザ光の周波数を目標周波数に近づける制御を行う制御ステップと、を備え、前記モニタステップと前記制御ステップとを、前記光源ごとに実行し、前記制御ステップでは、前記光源を制御する間隔を1周期とした場合に、前記N個の光源のうち少なくとも一つの光源である第1光源を少なくとも一つの第1周期で制御し、前記N個の光源のうち前記第1光源以外の少なくとも一つの光源である第2光源を第1周期よりも長い第2周期で制御する、レーザ装置の制御方法である。
【0015】
前記第1周期はN周期よりも短く、前記第2周期はN周期よりも長くてもよい。
【0016】
前記第1光源は、前記第2光源よりも周囲の熱変化が大きくてもよい。
【0017】
前記レーザ装置は、複数の前記第1光源を有し、前記制御ステップでは、周囲の熱変化がより大きい前記第1光源をより短い周期で制御してもよい。
【0018】
前記N個のレーザ光は互いに周波数が異なり、前記第1光源が出力するレーザ光の周波数は、前記N個のレーザ光の周波数が周波数軸において成す周波数列の両端以外の周波数であり、前記第2光源が出力するレーザ光の周波数は、前記周波数列において、両端の周波数であってもよい。
【0019】
前記レーザ装置は、複数の前記第1光源を有し、前記制御ステップでは、前記周波数列の中心周波数により近い周波数のレーザ光を出力する前記第1光源をより短い周期で制御してもよい。
【0020】
前記レーザ装置は、N個の前記モニタ値を取得する共通のモニタ部を有してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、好適な周波数制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレーザ装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、第1制御例における光源#1~光源#4についての制御周期を説明する図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した制御を実行する際のフローチャートの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、光源が3個または5個の場合の制御周期の例を説明する図である。
【
図5】
図5は、周囲熱変化と制御周期との関係の例を示す図である。
【
図6】
図6は、周囲熱変化と制御周期との関係の別の例を示す図である。
【
図7】
図7は、周囲熱変化と制御周期との関係のさらに別の例を示す図である。
【
図8】
図8は、周囲熱変化と制御周期との関係のさらに別の例を示す図である。
【
図9】
図9は、レーザ光の周波数と制御周期との関係の例を示す図である。
【
図10】
図10は、レーザ光の周波数と制御周期との関係の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付し、重複説明を適宜省略している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0024】
(実施形態)
[レーザ装置の構成]
図1は、実施形態に係るレーザ装置の構成を示す図である。レーザ装置10は、4個の光源1a、1b、1c、1dと、光出力部2と、光スイッチ部3と、光合波部4と、モニタ部5と、制御部6と、基台7と、を備えている。
【0025】
光源1a、1b、1c、1dは、制御部6による制御の下、それぞれがレーザ光L1、L2、L3、L4を出力する。レーザ光L1、L2、L3、L4の周波数は、制御部6の制御によって変更可能である。レーザ光L1、L2、L3、L4の周波数は、同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。光源1a、1b、1c、1dは、Nを3以上の整数として、それぞれが出力するレーザ光の周波数を変更可能なN個の光源部の一例である。
【0026】
光源1aは、特許文献1に開示されるような構成を有する、バーニア効果を利用したレーザ素子またはレーザモジュールである。ただし、光源1aは、出力するレーザ光L1の周波数が変更可能であればその構成は限定されない。
【0027】
光源1aは、変更部1aaを備える。変更部1aaは、少なくとも一つのマイクロヒータを有する。変更部1aaは、制御部6から供給される電流によって発熱し、光源1aを局所的に加熱することによって、レーザ光L1の周波数を変更する。すなわち、制御部6は、制御量である電流に対応する電力を光源1aに供給することによってレーザ光L1の周波数を制御する。
【0028】
光源1bは、変更部1baを備える。光源1cは、変更部1caを備える。光源1dは、変更部1daを備える。これらの光源および変更部は、光源1aおよび変更部1aaと同様の構成を有し、同様の周波数制御が可能なので、説明を省略する。
【0029】
光出力部2は、光源1a~1dのそれぞれから入力されたレーザ光L1~L4のそれぞれを2分岐して、分岐した一方をレーザ装置10の外部に出力するとともに、分岐した他方を光スイッチ部3に出力する。光出力部2はたとえば溶融型光カプラまたは導波路型光カプラを有するが、これには限定されない。
【0030】
光スイッチ部3は、光スイッチ3a、3b、3c、3dを備える。光スイッチ3aは、制御部6による制御の下、光源1aから光出力部2を経由して入力されたレーザ光L1を出力するON状態と、レーザ光L1を遮断するOFF状態とで動作状態が切り替わる。光スイッチ3bは、制御部6による制御の下、光源1bから光出力部2を経由して入力されたレーザ光L2を出力するON状態と、レーザ光L2を遮断するOFF状態とで動作状態が切り替わる。光スイッチ3cは、制御部6による制御の下、光源1cから光出力部2を経由して入力されたレーザ光L3を出力するON状態と、レーザ光L3を遮断するOFF状態とで動作状態が切り替わる。光スイッチ3dは、制御部6による制御の下、光源1dから光出力部2を経由して入力されたレーザ光L4を出力するON状態と、レーザ光L4を遮断するOFF状態とで動作状態が切り替わる。
【0031】
光スイッチ3a、3b、3c、3dは、たとえば半導体光増幅器を有する。半導体光増幅器は、逆バイアス電圧を掛けることによって、入力されたレーザ光を吸収して遮断し、順バイアス電圧を掛けて閾値以上の電流を供給することによって、入力されたレーザ光を増幅して出力するので、光スイッチとして利用できる。ただし、光スイッチ3a、3b、3c、3dは、半導体光増幅器を有するものに限られない。
【0032】
光合波部4は、レーザ光L1、L2、L3、L4のうち入力されたレーザ光を1つの出力ポートからレーザ光L5として出力する。本実施形態では、光スイッチ3a、3b、3c、3dの動作制御によって光合波部4にはレーザ光L1、L2、L3、L4のうちいずれか一つが入力される。光合波部4は、たとえば多モード干渉型(MMI)カプラを有するが、これには限定されない。
【0033】
モニタ部5は、光分岐部5aと、周波数フィルタ5bと、PD(Photo Diode)5c、5dを備えている。
【0034】
光分岐部5aは、光合波部4から入力されたレーザ光L5を2つのレーザ光L6、L7に分岐する。レーザ光L6は周波数フィルタ5bに出力され、レーザ光L7はPD5dに出力される。光分岐部5aは、たとえば溶融型光カプラまたは導波路型光カプラを有するが、これには限定されない。
【0035】
周波数フィルタ5bは、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、レーザ光L6をレーザ光L6の周波数に応じた透過率で透過する。周波数フィルタ5bを透過したレーザ光L6は、PD5cに入力する。なお、周波数フィルタ5bとして、入力する光の周波数に対して周期的な透過特性を有するエタロンフィルタやMZI(Mach-Zehnder Interferometer)フィルタやリング共振器フィルタを有するが、これらには限定されない。
【0036】
PD5cは、周波数フィルタ5bを透過したレーザ光L6を受光し、当該レーザ光L6の強度に応じた値の電流を制御部6に出力する。PD5dは、レーザ光L7(レーザ光L1、L2、L3またはL4と同一の周波数を有し、レーザ光L1、L2、L3またはL4の強度と対応する強度を有する)を受光し、当該レーザ光L7の強度に応じた値の電流を制御部6に出力する。そして、PD5c、5dからそれぞれ出力された電流は、制御部6による周波数ロック制御(レーザ光L1、L2、L3およびL4の周波数をそれぞれの目標周波数に近づけるための制御)に用いられる。PD5cの受光強度の値またはそれに対応する電流の値は、レーザ光の周波数に対応するモニタ値の一例である。また、モニタ部5は、Nが4の場合のN個のモニタ値を取得する共通のモニタ部の一例である。
【0037】
つぎに、制御部6の構成について説明する。制御部6は、たとえばユーザインターフェースを備えた上位の制御装置と接続されており、当該上位の制御装置を介したユーザからの指示にしたがって、レーザ装置10の動作を制御する。
【0038】
制御部6は、ハードウェアとして、演算部6aと記憶部6bとを備える。演算部6aは、たとえばCPUなどのプロセッサを含んでおり、制御のための各種演算処理を行う。記憶部6bは、演算部が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータ等が格納されるROMなどの記憶部を備えている。記憶部6bは、演算部が演算処理を行う際の作業スペースや演算部の演算処理の結果等を記憶する等のために使用されるRAMなどの記憶部を備えている。
【0039】
さらに、制御部6は、ハードウェアとして、トランスインピーダンスアンプ(TIA)6c、6d、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)6e、6f、および電流出力型のデジタル-アナログコンバータ(DAC)6g、6h、6i、6j、6kを備え、さらにDC電源や入出力インターフェイスなどの、制御部に必要な構成を適宜備えている。
【0040】
TIA6cは、PD5cから入力された電流を電圧信号に変換する。ADC6eは、TIA6cから入力されたアナログの電圧信号をデジタルの電圧信号に変換する。TIA6dは、PD5dから入力された電流を電圧信号に変換する。ADC6fは、TIA6dから入力されたアナログの電圧信号をデジタルの電圧信号に変換する。
【0041】
DAC6gは、演算部6aから入力されたデジタルの電圧信号をアナログの電流信号に変換して光源1aの変更部1aaに出力する。これにより光源1aが出力するレーザ光L1の周波数が制御される。DAC6hは、演算部6aから入力されたデジタルの電圧信号をアナログの電流信号に変換して光源1bの変更部1baに出力する。これにより光源1bが出力するレーザ光L2の周波数が制御される。DAC6iは、演算部6aから入力されたデジタルの電圧信号をアナログの電流信号に変換して光源1cの変更部1caに出力する。これにより光源1cが出力するレーザ光L3の周波数が制御される。DAC6jは、演算部6aから入力されたデジタルの電圧信号をアナログの電流信号に変換して光源1dの変更部1daに出力する。これにより光源1dが出力するレーザ光L4の周波数が制御される。DAC6kは、演算部6aから入力されたデジタルの電圧信号をアナログの電流信号に変換して光スイッチ部3に出力する。これにより光スイッチ部3における光スイッチ3a、3b、3cおよび3dが制御される。
【0042】
上記のように構成された制御部6は、周波数ロック制御や、光スイッチ部3の切替制御などを行う機能を有する。制御部6の機能は、たとえば、制御部6の演算部6aが記憶部6bに記憶されたプログラムおよびデータを用いてプログラムを実行することによってハードウェアとソフトウェアとが協働して実現されてもよいし、制御部6のハードウェアの機能として実現されてもよい。
【0043】
基台7は、光源1a、1b、1c、1dを搭載している。基台7は、たとえばペルチェ素子のような温度制御器を備えていてもよい。基台7が温度制御器を備えている場合、制御部6は、光源1a、1b、1c、1dのそれぞれに設けられた温度センサによってモニタされた温度に基づいて、光源1a、1b、1c、1dの温度が所定の温度範囲内になるように温度制御器を制御してもよい。
【0044】
[レーザ装置における個々の光源の周波数ロック制御]
つぎに、レーザ装置10における個々の光源の周波数ロック制御の一例について説明する。以下では、光源1aを周波数ロック制御する場合について説明する。
【0045】
はじめに、制御部6は、光スイッチ3aをON状態にし、光スイッチ3b、3c、3dをOFF状態にする切替制御を行う。これにより、光スイッチ部3から出力されるレーザ光はレーザ光L1のみとなり、光合波部4から出力されるレーザ光L5もレーザ光L1となる。また、PD5c、5dから出力される電流も、レーザ光L1に基づいた電流である。
【0046】
制御部6は、たとえば上位の制御装置からの指示信号を受けたり記憶部6bに記憶された設定値を読み出したりして、レーザ光L1の周波数の制御における目標値として目標周波数を設定する。
【0047】
つづいて、制御部6は、目標周波数を、周波数フィルタ5bが成す周波数弁別カーブに当てはめることによって、目標値を取得する。周波数フィルタ5bが成す周波数弁別カーブの情報は、実験等によって予め取得され、たとえばテーブルデータや関係式などの形式にて記憶部6bに記憶されている。
【0048】
つづいて、制御部6は、ADC6e、6fから入力された電圧信号から第1比をモニタ値として取得する。第1比は、レーザ光L1の周波数に相当するモニタ値である。
【0049】
第1比は、PD5dの受光強度に対するPD5cの受光強度の比に相当する。ただし、第1比として、PD5cの受光強度の代わりにPD5cの受光強度に補正係数を適用した値を使用してもよいし、PD5dの受光強度の代わりにPD5dの受光強度に補正係数を適用した値を使用してもよい。このような補正係数は、実験等によって予め取得され、テーブルデータや関係式などの形式にて記憶部に記憶されている。また、補正係数の適用とは、たとえば、加算、減算、乗算、除算のいずれかまたはそれらの組み合わせの演算による適用である。
【0050】
つづいて、制御部6は、目標値とモニタ値との差分を算出して取得する。
【0051】
つづいて、制御部6は、目標値とモニタ値との差分に基づいて指示値に対応する電圧信号を生成する。電圧信号は比例積分微分(PID)制御やPI制御に基づいて生成される。つづいて、制御部6は指示値に対応する電圧信号がDAC6gによって変換された電流信号を光源1aの変更部1aaに供給する。このとき、制御部6は、目標値とモニタ値との差の絶対値が小さくなるよう、すなわち目標値とモニタ値とが近づくような電圧信号を生成する。これによってフィードバック制御としての周波数ロック制御が実現される。電流信号は、モニタ値に基づく制御量の一例である。
【0052】
制御部6は、一度には光源1a、1b、1c、1dのうちいずれか一つに電流信号を供給して周波数ロック制御し、その後その他の光源の周波数ロック制御を、1つずつに電流信号を順次供給して行う。以下では、制御部6が周波数ロック制御を行う間隔を1周期と定義する。
【0053】
[レーザ装置の第1制御例]
つぎに、制御部6によるレーザ装置10の具体的な制御として第1制御例について説明する。なお、以下では、光源1a、1b、1c、1dを、それぞれ光源#1、光源#2、光源#3、光源#4と記載する場合がある。また、光スイッチ3a、3b、3c、3dを、それぞれ光スイッチ#1、光スイッチ#2、光スイッチ#3、光スイッチ#4と記載する場合がある。
【0054】
光源1a、1b、1c、1dは、レーザ光の出力動作中には発熱する。
図1に示すように、光源1aおよび光源1dは、一方の隣にのみ他の光源が存在するが、光源1bおよび光源1cは、両隣に他の光源が存在する。したがって、光源1bおよび光源1cは、発熱する他の光源からの熱流入が光源1aおよび光源1dよりも大きいので、光源1aおよび光源1dよりも周囲の熱変化が大きい光源と言うことができる。光源1b(光源#2)および光源1c(光源#3)は第1光源の一例であり、光源1a(光源#1)および光源1d(光源#4)は第2光源の一例である。
【0055】
このような第1光源は、出力するレーザ光の周波数が第2光源よりも変動しやすい。そこで、制御部6は、光源#1~光源#4について、#1→#2→#3→#4→#1→#2→#3→#4→・・・のように昇順に順次制御し、各光源を均等に4周期ずつで制御する代わりに、以下の制御を行う。
【0056】
図2は、第1制御例における光源#1~光源#4についての制御周期を説明する図である。制御部6は、
図2に示すように、第1光源である光源#2、光源#3を3周期ごとに周波数ロック制御する。また、制御部6は、第2光源である光源#2、光源#3を6周期ごとに周波数ロック制御する。このように制御部6が第1光源を第2光源よりも短い周期で周波数ロック制御を行うことによって、出力するレーザ光の周波数がより変動しやすい第1光源を、第2光源よりも頻繁に制御する。ここで、3周期とは、第1光源を制御する少なくとも1つの第1周期の例であって、4周期よりも短い周期の一例である。また、6周期とは、第2光源を制御する第2周期の一例であって、4周期よりも長い周期の一例である。光源#1~光源#4の制御の順序の情報は、たとえば実験等によって予め取得され、記憶部6bに記憶されている。
【0057】
図3は、
図2に示した制御を実行する際のフローチャートの一例である。制御部6は、ステップS101において、光源#1~光源#4に対するレーザ光の目標周波数に基づいて、変更部1aa、1ba、1ca、1daのそれぞれに対する初期設定を実行する。これにより、光源#1~光源#4がそれぞれ出力するレーザ光の周波数が、目標周波数またはその近傍の周波数に制御される。
【0058】
つづいて、制御部6は、ステップS102において、光スイッチ#1~光スイッチ#4の動作状態を制御する。具体的には、制御部6は、光スイッチ#1をON状態に設定し、光スイッチ#2~光スイッチ#4をOFF状態に設定する。
【0059】
つづいて、制御部6は、ステップS103において、光源#1が出力するレーザ光L1に基づくモニタ値を取得する(モニタステップ)。
【0060】
つづいて、制御部6は、ステップS104において、第2制御定数を用いて光源#1に対する制御電流値を設定する。制御電流値は、目標値とモニタ値とを近づけるように設定される。制御電流値の設定は、制御電流値を実現するためにDAC6gに出力する電圧信号の設定により行われる。ここで、第2制御定数とは、たとえばPID制御における比例定数、微分定数、積分定数のことであり、第2光源を6周期で制御するために設定された制御定数である。
【0061】
つづいて、制御部6は、ステップS105において、制御電流を変更部1aaに供給する(制御ステップ)。これにより、光源#1が周波数ロック制御される。
【0062】
つづいて、制御部6は、ステップS106において、光スイッチ#2をON状態に設定し、光スイッチ#1、光スイッチ#3、光スイッチ#4をOFF状態に設定する。
【0063】
つづいて、制御部6は、ステップS107において、光源#2が出力するレーザ光L2に基づくモニタ値を取得する(モニタステップ)。
【0064】
つづいて、制御部6は、ステップS108において、第1制御定数を用いて光源#2に対する制御電流値を設定する。制御電流値の設定は、制御電流値を実現するためにDAC6hに出力する電圧信号の設定により行われる。ここで、第1制御定数とは、たとえばPID制御における比例定数、微分定数、積分定数のことであり、第1光源を3周期で制御するために設定された制御定数である。たとえば、第1制御定数における積分定数は、第2制御定数における積分定数の1/2程度に設定されている。
【0065】
つづいて、制御部6は、ステップS109において、制御電流を変更部1baに供給する(制御ステップ)。これにより、光源#2が周波数ロック制御される。
【0066】
つづいて、制御部6は、ステップS110において、光スイッチ#3をON状態に設定し、光スイッチ#1、光スイッチ#2、光スイッチ#4をOFF状態に設定する。
【0067】
つづいて、制御部6は、ステップS111において、光源#3が出力するレーザ光L3に基づくモニタ値を取得する(モニタステップ)。
【0068】
つづいて、制御部6は、ステップS112において、第1制御定数を用いて光源#3に対する制御電流値を設定する。制御電流値の設定は、制御電流値を実現するためにDAC6iに出力する電圧信号の設定により行われる。
【0069】
つづいて、制御部6は、ステップS113において、制御電流を変更部1caに供給する(制御ステップ)。これにより、光源#3が周波数ロック制御される。
【0070】
つづいて、制御部6は、ステップS114において、光スイッチ#4をON状態に設定し、光スイッチ#1~光スイッチ#3をOFF状態に設定する。
【0071】
つづいて、制御部6は、ステップS115において、光源#4が出力するレーザ光L4に基づくモニタ値を取得する(モニタステップ)。
【0072】
つづいて、制御部6は、ステップS116において、第2制御定数を用いて光源#4に対する制御電流値を設定する。制御電流値の設定は、制御電流値を実現するためにDAC6jに出力する電圧信号の設定により行われる。
【0073】
つづいて、制御部6は、ステップS117において、制御電流を変更部1daに供給する(制御ステップ)。これにより、光源#4が周波数ロック制御される。
【0074】
つづいて、制御部6は、光源#2の周波数ロック制御のためにステップS118~S121を実行する。ステップS118~S121はステップS106~S109と同じなので説明を省略する。
【0075】
つづいて、制御部6は、光源#3の周波数ロック制御のためにステップS122~S125を実行する。ステップS122~S125はステップS110~S113と同じなので説明を省略する。その後、制御はステップS102に戻る。
【0076】
上記のように、制御部6は、モニタステップと制御ステップとを、光源#1~光源#4ごとに順次実行する。
【0077】
以上のように構成されたレーザ装置10および制御部6が実行する第1制御例による制御方法によれば、出力するレーザ光の周波数がより変動しやすい光源#2、光源#3を光源#1、光源#4よりも頻繁に制御するので、より好適な周波数制御が実現される。
【0078】
また、レーザ装置10は、光源#1~光源#4に対応する4個のモニタ値を取得する共通のモニタ部であるモニタ部5を備えているので、光源#1~#4に対応する4個のモニタ値をそれぞれ別のモニタ部で取得する構成と比較して、以下のような利点を有する。
【0079】
すなわち、モニタ部が取得するモニタ値は、同じ周波数のレーザ光に対するモニタ値であっても、経年的や温度依存によるモニタ部の特性の変化に応じて変化し得る。それぞれの光源に対応するモニタ値をそれぞれ別のモニタ部で取得する場合、特性の変化の程度や傾向はモニタ部ごとに違う場合があるので、取得されるモニタ値の変化の傾向や変化量なども光源ごとに違ってしまう場合がある。この場合、周波数ロック制御を行っても、周波数軸上で隣接するレーザ光同士の相対的な周波数間隔が変化してしまう。
【0080】
これに対して、レーザ装置10では、共通のモニタ部5でモニタ値を取得するので、モニタ部の特性の変化もモニタ値に対して共通の変化として影響する。その結果、周波数ロック制御を行った場合の周波数間隔の変化が抑制される。レーザ装置10の用途によっては、レーザ光の周波数間隔が変動しないことが重視される場合があるので、共通のモニタ部5でモニタ値を取得する構成はそのような用途に対して好適である。また、共通のモニタ部5を備える構成では、光源ごとにモニタ部を備える構成よりも、レーザ装置の専有面積や消費電力を削減できる。
【0081】
なお、実施形態に係るレーザ装置において、光源の数は3以上であれば特に限定はされない。以下では、光源の数が4以外の場合について説明する。
【0082】
図4は、光源が3個または5個の場合の制御周期の例を説明する図である。
図4(a)は光源が光源#1~光源#3の3個の場合である。光源#1~光源#3は、
図1における光源#1~光源#3のような位置関係にあるとする。この場合、光源#2は両隣に他の光源が存在するので第1光源として制御を行う。光源#1および光源#3は、一方の隣にのみ他の光源が存在するので第2光源として制御を行う。この場合、制御部は、
図4(a)に示すように、第1光源である光源#2を2周期ごとに周波数ロック制御する。また、制御部は、第2光源である光源#1、光源#3を4周期ごとに周波数ロック制御する。2周期は少なくとも一つの第1周期の一例であり、4周期は第2周期の一例である。
【0083】
図4(b)は光源が光源#1~光源#5の5個の場合であり、光源#1~#4は、
図1における光源#1~光源#4のような位置関係にあり、光源#5は光源#4に対して光源#3とは反対側に配置されているとする。この場合、光源#2~光源#4は両隣に他の光源が存在するので第1光源として制御を行う。光源#1および光源#5は、一方の隣にのみ他の光源が存在するので第2光源として制御を行う。したがって、制御部は、
図4(b)に示すように、第1光源である光源#2~光源#4を4周期ごとに周波数ロック制御する。また、制御部は、第2光源である光源#1、光源#5を8周期ごとに周波数ロック制御する。4周期は少なくとも一つの第1周期の一例であり、8周期は第2周期の一例である。
【0084】
図5は、周囲熱変化と制御周期との関係の例を示す図である。
図5(a)~(c)は、レーザ装置が、周囲熱変化が互いに異なる4つの光源を有する場合に、制御周期として1つの第1周期と1つの第2周期の2つの制御周期を設定する場合を示している。
図5(a)は、三角形で示す2つの光源を第1周期で制御し、丸で示す2つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図5(b)は、三角形で示す3つの光源を第1周期で制御し、丸で示す1つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図5(c)は、三角形で示す1つの光源を第1周期で制御し、丸で示す3つの光源を第2周期で制御する例を示している。
【0085】
図6は、周囲熱変化と制御周期との関係の別の例を示す図である。
図6は、レーザ装置が、周囲熱変化が互いに異なる4つの光源を有する場合に、制御周期として3つの第1周期と1つの第2周期の4つの制御周期を設定し、制御する例を示している。三角形、四角形、六角形が第1制御周期の光源を示し、丸が第2制御周期の光源を示す。
図6のように、周囲熱変化が互いに異なる光源のそれぞれに対して互いに異なる制御周期を設定してもよい。
図6が示す制御は、レーザ装置が複数の第1光源を有する場合に、制御部が、周囲の熱変化がより大きい第1光源をより短い周期で制御する一例である。
【0086】
図7は、周囲熱変化と制御周期との関係のさらに別の例を示す図である。
図7(a)~(e)は、レーザ装置が、周囲熱変化が互いに異なる5つの光源を有する場合に、制御周期として2つの第1周期と1つの第2周期の3つの制御周期を設定し、制御する例を示している。
図7(a)は、三角形で示す2つの光源をより短い第1周期で制御し、四角形で示す1つの光源をより長い第1周期で制御し、丸で示す2つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図7(b)は、三角形で示す1つの光源をより短い第1周期で制御し、四角形で示す3つの光源をより長い第1周期で制御し、丸で示す1つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図7(c)は、三角形で示す1つの光源をより短い第1周期で制御し、四角形で示す1つの光源をより長い第1周期で制御し、丸で示す3つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図7(d)は、三角形で示す3つの光源をより短い第1周期で制御し、四角形で示す1つの光源をより長い第1周期で制御し、丸で示す1つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図7(e)は、三角形で示す1つの光源をより短い第1周期で制御し、四角形で示す2つの光源をより長い第1周期で制御し、丸で示す2つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図7が示す制御は、レーザ装置が複数の第1光源を有する場合に、制御部が、周囲の熱変化がより大きい第1光源をより短い周期で制御する一例である。
【0087】
図8は、周囲熱変化と制御周期との関係のさらに別の例を示す図である。
図8(a)~(c)は、レーザ装置が、周囲熱変化が互いに異なる4つの光源を有する場合に、制御周期として2つの第1周期と1つの第2周期の3つの制御周期を設定し、制御する例を示している。
図8(a)は、三角形で示す1つの光源をより短い第1周期で制御し、四角形で示す1つの光源をより長い第1周期で制御し、丸で示す2つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図8(b)は、三角形で示す2つの光源をより短い第1周期で制御し、四角形で示す1つの光源をより長い第1周期で制御し、丸で示す1つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図8(c)は、三角形で示す1つの光源をより短い第1周期で制御し、四角形で示す2つの光源をより長い第1周期で制御し、丸で示す1つの光源を第2周期で制御する例を示している。
図8が示す制御は、レーザ装置が複数の第1光源を有する場合に、制御部が、周囲の熱変化がより大きい第1光源をより短い周期で制御する一例である。
【0088】
[実施形態に係るレーザ装置の第2制御例]
つぎに、実施形態に係るレーザ装置10の第2制御例について説明する。以下では、光源#1~光源#4がそれぞれ出力するレーザ光L1~L4のそれぞれの周波数f1~f4は、
図9に示すように、互いに異なり、かつf1<f2<f3<f4となるような周波数であるとする。f1、f2、f3、f4は、たとえば、それぞれ191.35THz、191.5THz、191.65THz、191.8THzである。
【0089】
この場合、f1~f4が周波数軸において成す周波数列の両端以外の周波数のレーザ光であるレーザ光L2、L3は、その両隣に他の周波数のレーザ光が存在する。具体的には、レーザ光L2については、周波数列において両隣に他の周波数のレーザ光L1、L3が存在し、レーザ光L3については、周波数列において両隣に他の周波数のレーザ光L2、L4が存在する。したがって、レーザ光L2、L3の周波数が変動すると、両隣の周波数のレーザ光に対して影響を及ぼすので、両端の周波数が変動する場合よりも影響が大きい。
【0090】
そこで、レーザ装置10の第2制御例では、周波数列の両端以外の周波数であるレーザ光L2、L3をそれぞれ出力する光源#2、光源#3については、第1光源として第1周期で周波数ロック制御する。また、周波数列の両端の周波数であるレーザ光L1、L4をそれぞれ出力する光源#1、光源#4については、第2光源として第2周期で周波数ロック制御する。
【0091】
具体的には、
図9において四角形で示すレーザ光L2、L3をそれぞれ出力する光源#2、光源#3については、第1周期で周波数ロック制御し、
図9において丸で示すレーザ光L1、L4をそれぞれ出力する光源#1、光源#4については、第2周期で周波数ロック制御する。
【0092】
このような制御は、たとえば
図2に示す場合と同様に、光源#1~光源#4について、#1→#2→#3→#4→#2→#3→#1→#2→#3→#4→・・・のように順次制御することによって実現される。また、このような制御は、
図3に示すようなフローチャートで実現される。
【0093】
以上のように構成されたレーザ装置10および制御部6が実行する第2制御例による制御方法によれば、出力するレーザ光の周波数の変動の影響が大きい光源#2、光源#3を光源#1、光源#4よりも頻繁に制御するので、より好適な周波数制御が実現される。また、レーザ装置10は、光源#1~光源#4に対応する4個のモニタ値を取得する共通のモニタ部であるモニタ部5を備えているので、周波数ロック制御を行った場合の周波数間隔の経年変化等が抑制される。
【0094】
なお、第2制御例を実行するレーザ装置において、光源の数は3以上であれば特に限定はされない。以下では、光源の数が4以外の場合について説明する。
【0095】
図10は、光源が3個または5個の場合の制御周期の例を説明する図である。
図10(a)は光源が光源#1~光源#5の5個の場合を示す。光源#1~光源#5が出力するレーザ光の周波数は、
図10(a)において記号F1、F2、F3、F4、F5で示される周波数の関係であるとする。この場合、四角形で示す光源#2~光源#4は、周波数列において両隣に他の周波数の光源が存在するので第1光源として第1周期で制御を行う。丸で示す光源#1および光源#5は、周波数列において一方の隣にのみ他の周波数の光源が存在するので第2光源として第2周期で制御を行う。
【0096】
図10(b)は光源が光源#1~光源#5の5個の場合を示す。光源#1~光源#5が出力するレーザ光の周波数は、
図10(b)において記号F6、F7、F8、F9、F10で示される周波数の関係であるとする。この場合、三角で示す光源#3は、周波数列において両隣に他の周波数の光源が存在し、かつ周波数列の中心周波数なので、第1光源としてより短い第1周期で制御を行う。四角で示す光源#2、光源#4は、第1光源としてより長い第1周期で制御を行う。丸で示す光源#1および光源#5は、第2光源として第2周期で制御を行う。
図10(b)は、制御部が、周波数列の中心周波数により近い周波数のレーザ光を出力する第1光源をより短い周期で制御する例を示している。
【0097】
図10(c)は光源が光源#1~光源#3の3個の場合を示す。光源#1~光源#3が出力するレーザ光の周波数は、
図10(c)において記号F11、F12、F13で示される周波数の関係であるとする。この場合、四角形で示す光源#2は、第1光源として第1周期で制御を行う。丸で示す光源#1、光源#3は、第2光源として第2周期で制御を行う。
【0098】
なお、たとえば
図2に示す制御では、第1光源(光源#2、光源#3)を周波数ロック制御する周期は3周期で一定であるが、途中で違う周期、たとえば2周期に変化させてもよいし、変化させた周期を元の3周期に戻してもよい。第2光源(光源#1、光源#4)を周波数ロック制御する周期についても変化させたり元に戻したりしてもよい。
【0099】
また、制御の1周期の時間的な長さについては、制御を実行している間一定でもよいし、途中で変化させたり元に戻したりしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態の第1制御例では、光源#2、光源#3が、光源#1、光源#4よりも周囲の熱変化が大きい光源としているが、光源#1、光源#4が、光源#2、光源#3よりも周囲の熱変化が大きい光源の場合がある。その場合とは、たとえばレーザ装置10が他の機器と一緒に筐体に組み込まれた場合に、周囲に発熱や吸熱する機器がある場合である。そのような場合は、光源#1、光源#4を第1光源として第1周期で周波数ロック制御し、光源#2、光源#3を第2光源として第2周期で周波数ロック制御してもよい。
【0101】
また、たとえば初期設定としては光源#2、光源#3を第1光源として第1周期で周波数ロック制御し、光源#1、光源#4を第2光源として第2周期で周波数ロック制御する設定としておき、レーザ装置10が実際に稼働している環境に応じて、第1光源であるか第2光源であるかの設定を変えてもよい。設定の変更は、制御部6の記憶部6bに記憶された設定情報を書き換えることで実施することができる。また、光源#1~光源#4が温度センサを備えている場合は、レーザ装置10が実際に稼働している環境における光源#1~光源#4の温度を温度センサでモニタし、その結果に基づいて第1光源であるか第2光源であるかの設定を変えてもよい。たとえば、温度センサでのモニタの結果、温度の標準偏差が比較的大きい光源については第1光源として設定を変更または維持し、温度の標準偏差が比較的小さい光源については第2光源として設定を変更または維持してもよい。
【0102】
また、上記第1制御例と第2制御例とを合わせた制御を行ってもよい。この場合は、たとえば相対的な周波数間隔の精度が高まるように第1光源であるか第2光源であるかの設定や制御の周期の設定を行ってもよい。
【0103】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
1a、1b、1c、1d:光源
1aa、1ba、1ca、1da:変更部
2 :光出力部
3 :光スイッチ部
3a、3b、3c、3d:光スイッチ
4 :光合波部
5 :モニタ部
5a :光分岐部
5b :周波数フィルタ
5c、5d:PD
6 :制御部
6a :演算部
6b :記憶部
6c、6d:TIA
6e、6f:ADC
6g、6h、6i、6j、6k:DAC
7 :基台
10 :レーザ装置
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7:レーザ光