(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112595
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】pH電極
(51)【国際特許分類】
G01N 27/36 20060101AFI20240814BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240814BHJP
G01N 27/26 20060101ALI20240814BHJP
G01N 21/47 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
G01N27/36 Z
G01N27/416 353Z
G01N27/26 391Z
G01N21/47 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017738
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長尾 信明
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059HH03
2G059KK01
2G059KK10
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】表面汚れ等により計測の応答性や精度が低下したときに、これを検出し、表面の汚れを除去することができるpH電極を提供する。
【解決手段】プローブ1の先端部にガラス膜4が設けられているpH電極において、該プローブ1内に、ガラス膜4に向って光を照射する発光素子21と、該ガラス膜4からの反射光を受光する受光素子22とを設け、受光素子22の受光光量に基づいてガラス膜への汚れ付着を検知するようにしたことを特徴とするpH電極。ガラス膜4の外面に光触媒が設けられており、発光素子21からUV光を照射する。受光素子22の受光光量が多いときにはUV発光量を多くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ先端部にガラス膜が設けられているpH電極において、
該プローブ内に、ガラス膜に向って光を照射する発光素子と、該ガラス膜からの反射光を受光する受光素子とを設け、
受光素子の受光光量に基づいてガラス膜への汚れ付着を検知するようにしたことを特徴とするpH電極。
【請求項2】
前記発光素子はUV光の発光素子であり、前記ガラス膜の外面に光触媒を付着させてある請求項1のpH電極。
【請求項3】
前記受光素子の受光光量を基準値と比較し、受光光量が基準値以上であるときに発光素子によるUV光の照射光量を増大させる制御手段を備えた、請求項2のpH電極。
【請求項4】
請求項3のpH電極によるpH測定方法であって、pH測定中に前記発光素子を常時作動させ、前記受光素子の受光光量が基準値以上になった場合に所定期間発光素子の発光光量を増大させるpH測定方法。
【請求項5】
請求項3のpH電極によるpH測定方法であって、pH測定中に前記発光素子を間欠的に作動させ、
発光素子作動中の受光素子の受光光量が基準値以上になった場合に、発光素子の発光時間を長くするpH測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH電極に係り、特にガラス膜の外面に酸化チタン等の光触媒が付着されているpH電極に関する。
【背景技術】
【0002】
pH電極のガラス膜に汚れが付着すると、pH電極の感度が低下したり、測定値の誤差が大きくなったりする。その対策として、pH電極のガラス膜の外面に酸化チタンを付着させて、pH電極に自己洗浄機能を具備させることが特許文献1、非特許文献1に記載されている。
【0003】
非特許文献1には、さらに、pH電極内にLEDを配置し、UV(紫外光)を酸化チタンに照射し、光触媒反応を促進させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】学会誌「EICA」第23巻 第2・3合併号(2018)P.69
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガラス膜に酸化チタンや、さらにはUV照射用LEDを設けても、ガラス膜の汚れを完全に防止することはできず、ガラス膜表面に徐々に汚れが付着する。
【0007】
本発明は、ガラス膜の表面汚れ等により計測の応答性や精度が低下したときに、これを検出し、表面の汚れを除去することができるpH電極を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] プローブ先端部にガラス膜が設けられているpH電極において、
該プローブ内に、ガラス膜に向って光を照射する発光素子と、該ガラス膜からの反射光を受光する受光素子とを設け、
受光素子の受光光量に基づいてガラス膜への汚れ付着を検知するようにしたことを特徴とするpH電極。
【0009】
[2] 前記発光素子はUV光の発光素子であり、前記ガラス膜の外面に光触媒を付着させてある[1]のpH電極。
【0010】
[3] 前記受光素子の受光光量を基準値と比較し、受光光量が基準値以上であるときに発光素子によるUV光の照射光量を増大させる制御手段を備えた、[2]のpH電極。
【0011】
[4] [3]のpH電極によるpH測定方法であって、pH測定中に前記発光素子を常時作動させ、前記受光素子の受光光量が基準値以上になった場合に所定期間発光素子の発光光量を増大させるpH測定方法。
【0012】
[5] [3]のpH電極によるpH測定方法であって、pH測定中に前記発光素子を間欠的に作動させ、
発光素子作動中の受光素子の受光光量が基準値以上になった場合に、発光素子の発光時間を長くするpH測定方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、pH電極内部に発光素子及び受光素子を設け、受光素子によって、ガラス膜からの反射光を受光し、受光量が所定値以上に増大した場合にガラス膜に汚れが発生したと判断する。
【0014】
また、本発明の一態様では、ガラス膜に光触媒を設けておき、所定以上の汚れを検知した場合には、pH電極内に設けたUV発光素子からのガラス膜へのUV照射量を増加させ、光触媒の自己洗浄機能を増強し、ガラス膜の清浄度を回復させる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係るpH電極のプローブの断面図である。
【
図2】実施の形態に係るpH電極のLED制御系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1,2を参照して実施の形態について説明する。
【0017】
図1は実施の形態に係るpH電極のプローブ1の構成を示すものであり、基端側のエンド部8を除いて断面図となっている。
【0018】
プローブ1は、それぞれガラス製の外管2及び内管3と、ガラス膜4とを有している。外管2及び内管3の先端部同士は封隔部3aによって封じられている。これにより、外管2と内管3との間の室5と、内管3内の室6とが区画形成されている。外管2には液絡部7が設けられている。室6はガラス膜4内のプローブ先端部内にまで広がっている。
【0019】
室5,6内にそれぞれ銀/塩化銀内極(内部電極)11,13が配置され、それらの検出電位はリード線11a,13aを介して取り出される。
【0020】
室5内には、温度補償用温度センサー12も配置されており、検出信号がリード線12aを介して取り出される。
【0021】
ガラス膜4の外面には光触媒として酸化チタンが付着されている。酸化チタンは微粒子状であってもよく、多孔質膜であってもよい。この酸化チタンの光触媒作用により、ガラス膜4の外面の自己洗浄機能が奏される。特に、この実施の形態では、次に説明する発光素子21からUV光が照射されることにより、自己洗浄機能が増強される。ガラス膜4の内部側に、ガラス膜4に向ってUVを照射する発光素子21と、ガラス膜4からの反射光を受光する受光素子(フォトダイオード)22とが設置されている。各素子21,22にはリード線21a,22aが連なっている。
【0022】
室5,6内は、pH7に調整された塩化カリウム溶液で満たされている。内極11,13の出力と、温度センサー12の検出温度とに基づいてpHが検出される。
【0023】
図2は、発光素子21及び受光素子22の駆動系を示すブロック図である。変換器30に設けられた発振器31からの発振周波数信号と、演算部34からの発光強度指示信号がドライバ32に支えられ、ドライバ32からリード線21aを介して駆動電流が発光素子21に与えられ、発光素子21がUV光をガラス膜4の内面に向って照射する。
【0024】
ガラス膜4の外面に汚れが付着していない場合、ガラス膜4からの反射光量は少ない。ガラス膜4の外面の汚れ付着量が多くなるほど、ガラス膜4からの反射光量が増大する。
【0025】
受光素子22は、反射光量に応じた受光信号をリード線22aを介して送信する。この受光信号は、エンド部8内のバンドパスフィルター23に伝わり、所定周波数帯域の信号がバンドパスフィルター23を通り、増幅器24で増幅された後、A/D変換部33でデジタル信号に変換され、演算部34に入力される。演算部34は、受光光量信号に基づいてドライバ32に制御信号を与える。
【0026】
発振器31からは、特定の周波数(例えば1kHz)の発振信号がドライバ32に出力されている。演算部34からの信号により、発光素子21が発光するのに十分な特定レベルの電流信号が、発振器31からの周波数で変調されて発光素子21に送られ、発光素子21が発光する。
【0027】
発光素子21からのUV照射光によってガラス膜4外面の光触媒が活性化し、ガラス膜4外面での有機物や微生物等の付着又は増殖が抑制される。この自己洗浄機能が十分な効果を発揮している場合、ガラス膜4外面は清浄な状態に保持され、発光素子21からのUV光はそのほとんどがガラス膜4を透過して水中に放出されるので、ガラス膜4と水の境界で発生する散乱光のレベルは弱い。
【0028】
何らかの原因によりガラス膜4表面での有機物等の付着又は増殖速度が、前記光触媒の酸化作用による自己洗浄機能を上回り、ガラス膜4表面に有機物等の汚れ物質の付着量が増加した場合、この汚れ物質によってガラス膜4表面での散乱量が増加し、受光素子22に受光される光量が増加し、受光素子22からの出力信号レベルが増加する。
【0029】
一般にpH電極が使用される環境では、自然光や室内光が計測環境に入射している可能性があり、UVと同波長のUV光も存在している。しかし、前記出力信号は前述のように特定の周波数で変調された信号であるため、特定の周波数のみを抽出するためのフィルター23によって散乱光のみが抽出され、これを増幅器24で増幅したのち、A/D変換器33でデジタル信号に変換して演算部(CPU)34に取り込まれる。
【0030】
演算部34では、この入力信号レベルをあらかじめ設けられた閾値レベルと比較する。前記ガラス膜4表面からの散乱光レベルが閾値レベルよりも上昇した場合には、ガラス膜4表面の汚れが所定値よりも増加したと判断する。そして、演算部34は、ドライバ32に対して、照射量を増加すべく出力電流の増加を指示するか、または、間欠的にUV照射を行っている場合には、照射する時間を長くする(発光デューティ比を大きくする)ように指示を行う。
【0031】
この動作により、発光素子21からガラス膜4表面に照射されるUV光量が増加し、前記ガラス膜4表面での光触媒による酸化作用の活性度が向上し、汚れの除去が行われることとなる。照射部34は、所定時間後に再びガラス膜4表面からの散乱光量に基づいて汚れ状態を判断する操作を繰り返す。
【0032】
上記実施の形態ではガラス膜4に光触媒を設けているが、本発明では光触媒が省略されてもよい。この場合も、発光素子21及び受光素子22によってガラス膜4外面の汚れを検知することができる。なお、この場合、発光素子は可視光を発光するものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 プローブ
2 外管
3 内管
4 ガラス膜
11,13 内部電極
12 温度補償用温度センサー
21 発光素子
22 受光素子