(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112598
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】研磨装置およびガラス基板
(51)【国際特許分類】
B24B 21/10 20060101AFI20240814BHJP
B24B 21/20 20060101ALI20240814BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240814BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20240814BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B24B21/10
B24B21/20
B24B49/10
B24B49/14
C03C19/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017742
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真之
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
4G059
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034BB92
3C034CA16
3C034CA19
3C034CB04
3C034DD07
3C034DD08
3C158AA05
3C158AA14
3C158AA16
3C158AB04
3C158AC02
3C158AC04
3C158BA05
3C158BA06
3C158BA08
3C158CA06
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA17
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC03
(57)【要約】
【課題】比較的高い研磨速度を有する上、大型のワークに対しても適正に研磨できる研磨装置。
【解決手段】研磨装置は、研磨ベルトと、前記研磨ベルトのおもて面を第1の水平方向に移動させることが可能な複数のローラーと、前記ローラーを回転駆動させる駆動モーターと、第1の定盤および第2の定盤であって、前記第1の定盤と前記第2の定盤の間には、前記研磨ベルトの前記おもて面と対面するように被加工対象となるワークが保持される、第1の定盤および第2の定盤と、前記第2の定盤を、前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向に移動させることが可能な走行機構と、前記第1の定盤または前記第2の定盤を昇降させる昇降機構と、前記昇降機構に設けられた荷重検出器と、を有する。前記荷重検出器は、前記ワークの研磨中、該ワークの被研磨面に対する荷重を把握し、該荷重を適正な範囲に維持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨装置であって、
おもて面およびうら面を有し、前記おもて面に砥粒が担持された研磨ベルトと、
回転により、前記研磨ベルトの前記おもて面を第1の水平方向に移動させることが可能な複数のローラーと、
前記ローラーを回転駆動させる駆動モーターと、
相互に対向して配置される第1の定盤および第2の定盤であって、
前記第1の定盤は、前記研磨ベルトのうら面側に配置され、
前記第2の定盤は、前記研磨ベルトのおもて面側に配置され、
前記第1の定盤と前記第2の定盤の間には、前記研磨ベルトの前記おもて面と対面するように被加工対象となるワークが保持される、第1の定盤および第2の定盤と、
前記第2の定盤を、前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向に移動させることが可能な走行機構と、
前記第1の定盤または前記第2の定盤に機械的に接続され、接続された前記第1の定盤または前記第2の定盤を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構に設けられた荷重検出器と、
を有し、
前記荷重検出器は、前記ワークの研磨中、該ワークの被研磨面に対する荷重を把握し、該荷重を適正な範囲に維持する、研磨装置。
【請求項2】
前記ワークの研磨中、前記荷重検出器により把握された荷重に基づいて、
(i)前記第1の定盤もしくは第2の定盤が昇降され、または
(ii)前記ワークの研磨時間、前記第1の定盤もしくは前記第2の定盤の圧力、および前記研磨ベルトの移動速度の少なくとも一つが調整され、
これにより、前記荷重が適正な範囲に維持される、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記ワークの研磨完了時点での前記第1の定盤または前記第2の定盤のうち前記昇降機構に接続された方の高さレベル、前記ワークの加工時間、および前記研磨ベルトの移動速度の少なくとも一つを把握し、
次のバッチにおけるワークの研磨の際に、前記高さレベル、前記ワークの加工時間、および前記研磨ベルトの移動速度の少なくとも一つに基づいて加工条件が設定され、研磨が開始される、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記研磨ベルトは、ループ状の研磨ベルトである、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項5】
さらに、前記研磨ベルトの前記ワークと非接触の位置において、前記研磨ベルトの表面温度を測定することが可能な温度測定器を有する、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項6】
さらに、前記研磨ベルトの弛みを低減する張力付与機構を有する、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記第1の定盤は、上定盤であり、前記第2の定盤は、下定盤である、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記下定盤は、前記第1の水平方向の寸法が100mm~2300mmの範囲である、請求項7に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記ワークは、ガラス基板であり、
当該研磨装置は、さらに、欠点除去システムを有し、該欠点除去システムは、
欠点測定用ガラス基板の被研磨面に対し、研磨量を変えて徐々に研磨を実施し、被研磨面の深さ方向における欠点分布を把握し、
前記欠点測定用ガラス基板の前記被研磨面において、最小の研磨量で最小の欠点数が得られる最適研磨量を把握する
ように操作され、
当該研磨装置は、前記最適研磨量に基づいて、実際のガラス基板の被研磨面を研磨する、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項10】
相互に対向する第1の表面および第2の表面を有し、
前記第1の表面には、少なくとも一つの凸部と、少なくとも一つの凹部が存在し、
前記凸部における最も低い位置の高さレベルと、前記凹部における最も高い位置の高さレベルの差は、50μm以上である、ガラス基板。
【請求項11】
前記第1の表面の各凹部には、一つの方向に沿って相互に平行に延在する複数の研磨痕が存在する、請求項10に記載のガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置およびガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工対象(ワーク)の表面を高精度に研磨することが可能な研磨装置として、ラップ研磨装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
ラップ研磨装置では、上定盤に設置された研磨パッドと、下定盤に設置された研磨パッドとの間にワークが配置される。次に、両研磨パッドがワークの上下面と接触するように、上定盤および下定盤が配置され、ワークの上下面に押圧が付与される。次に、ワークに自転を加えながら、上定盤と下定盤を相互に反対方向に回転させることにより、ワークを両面側から研磨することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラップ研磨装置では、高精度の研磨表面を得ることができる。
【0006】
しかしながら、ラップ研磨装置では、重厚な部材である上定盤および下定盤を高速で回転させることは、装置構成上難しいという問題がある。そのため、ラップ研磨装置によるワークの研磨速度は、あまり高くすることができず、その結果、研磨加工に多くの時間がかかってしまう。また、ラップ研磨装置では、上定盤の中心に回転軸(非研磨利用領域)が設けられるため、上定盤の半径以下の寸法のワークしか装置内に配置できず、大型のワークを研磨することは難しいという問題がある。
【0007】
このような背景から、大型のワークであっても、より高い研磨速度で精密に研磨することが可能な研磨装置が求められている。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、比較的高い研磨速度を有する上、大型のワークに対しても適正に研磨することが可能な研磨装置を提供することを目的とする。また、本発明では、そのような研磨装置により製造されるガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、
研磨装置であって、
おもて面およびうら面を有し、前記おもて面に砥粒が担持された研磨ベルトと、
回転により、前記研磨ベルトの前記おもて面を第1の水平方向に移動させることが可能な複数のローラーと、
前記ローラーを回転駆動させる駆動モーターと、
相互に対向して配置される第1の定盤および第2の定盤であって、
前記第1の定盤は、前記研磨ベルトのうら面側に配置され、
前記第2の定盤は、前記研磨ベルトのおもて面側に配置され、
前記第1の定盤と前記第2の定盤の間には、前記研磨ベルトの前記おもて面と対面するように被加工対象となるワークが保持される、第1の定盤および第2の定盤と、
前記第2の定盤を、前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向に移動させることが可能な走行機構と、
前記第1の定盤または前記第2の定盤に機械的に接続され、接続された前記第1の定盤または前記第2の定盤を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構に設けられた荷重検出器と、
を有し、
前記荷重検出器は、前記ワークの研磨中、該ワークの被研磨面に対する荷重を把握し、該荷重を適正な範囲に維持する、研磨装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、比較的高い研磨速度を有する上、大型のワークに対しても適正に研磨することが可能な研磨装置を提供することができる。また、本発明では、そのような研磨装置により製造されるガラス基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態による研磨装置の概略的な側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による研磨装置の概略的な上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による研磨装置が備える欠点除去システムに関する処理を概略的に示したフロー図である。
【
図4】本発明の別の実施形態による研磨装置の概略的な側面図である。
【
図5】本発明のさらに別の実施形態による研磨装置の概略的な側面図である。
【
図6】本発明のさらに別の実施形態による研磨装置の概略的な側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態による研磨装置を用いて製造されたガラス基板の一例の模式的な斜視図である。
【
図8】
図7に示したガラス基板を製造する際の研磨ベルトとワークの位置関係を模式的に示した上面図である。
【
図9】本発明の一実施形態による研磨装置を用いて製造された別のガラス基板の一例の模式的な斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態による研磨装置を用いて製造されたさらに別のガラス基板の一例の模式的な斜視図である。
【
図11】
図10に示したガラス基板を製造する際の研磨ベルトとワークの位置関係を模式的に示した上面図である。
【
図12】
図10に示したガラス基板を製造する際の研磨ベルトとワークの位置関係を模式的に示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前述のように、ラップ研磨装置では、重厚な部材である上定盤および下定盤を高速で回転させることは現実的ではなく、そのためワークの研磨速度をあまり高くすることができないという問題がある。また、ラップ研磨装置では、大型のワークを研磨することは難しいという問題がある。
【0013】
これに対して、本発明の一実施形態では、研磨装置であって、
おもて面およびうら面を有し、前記おもて面に砥粒が担持された研磨ベルトと、
回転により、前記研磨ベルトの前記おもて面を第1の水平方向に移動させることが可能な複数のローラーと、
前記ローラーを回転駆動させる駆動モーターと、
相互に対向して配置される第1の定盤および第2の定盤であって、
前記第1の定盤は、前記研磨ベルトのうら面側に配置され、
前記第2の定盤は、前記研磨ベルトのおもて面側に配置され、
前記第1の定盤と前記第2の定盤の間には、前記研磨ベルトの前記おもて面と対面するように被加工対象となるワークが保持される、第1の定盤および第2の定盤と、
前記第2の定盤を、前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向に移動させることが可能な走行機構と、
前記第1の定盤または前記第2の定盤に機械的に接続され、接続された前記第1の定盤または前記第2の定盤を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構に設けられた荷重検出器と、
を有し、
前記荷重検出器は、前記ワークの研磨中、該ワークの被研磨面に対する荷重を把握し、該荷重を適正な範囲に維持する、研磨装置が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態による研磨装置では、ワークは、砥粒が設置された研磨ベルトを用いて研磨される。すなわち、本発明の一実施形態による研磨装置では、ローラーに接続された駆動モーターによりローラーが回転され、これにより研磨ベルトが移動され、ワークが研磨される。
【0015】
この場合、ラップ研磨装置のように上定盤および下定盤を回転させてワークを研磨する方式とは異なり、単に研磨ベルトの移動速度を高めるだけで、ワークの研磨速度を高めることができる。従って、本発明の一実施形態による研磨装置では、ラップ研磨装置に比べて有意に高いワーク研磨速度を得ることが可能となる。
【0016】
ただし、研磨ベルトの高速移動によりワークを研磨する方式では、研磨ベルトに接着された砥粒の消耗、劣化が激しく、新鮮な研磨ベルトと、何回か使用された研磨ベルトでは、研磨能力に有意な差異が生じるおそれがある。その場合、同じ研磨時間で研磨を実施しても、研磨後のワークの仕上がりに差異が生じる可能性がある。
【0017】
しかしながら、本発明の一実施形態による研磨装置は、さらに、荷重検出器を有する。荷重検出器は、研磨中のワークに印加される荷重を把握できる。
【0018】
従って、本発明の一実施形態による研磨装置では、測定された荷重が所定の範囲から逸脱し、または逸脱するおそれが場合、例えば、昇降機構を昇降させて第1の定盤および/または第2の定盤の押圧を変更することができる。その結果、各ワークに対して同様の荷重を印加した状態で研磨を実施することができる。
【0019】
あるいは、研磨時間、第1の定盤/第2の定盤の圧力、および研磨ベルトの移動速度などを所定の値から変更することにより、各ワークに対する荷重を安定化させてもよい。
【0020】
また、本発明の一実施形態による研磨装置では、研磨ベルトの全長を大きくするだけで、大型のワークの研磨にも対応できる。従って、ラップ研磨装置のようなワークサイズに対する制約が少なく、より大きなワークに対しても、高速で精密な研磨をすることができる。
【0021】
以上の効果により、本発明の一実施形態では、比較的高い研磨速度を有する上、大型のワークに対しても適正に研磨することが可能な研磨装置を提供することができる。
【0022】
(本発明の一実施形態による研磨装置)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態についてより詳しく説明する。
【0023】
図1および
図2には、本発明の一実施形態による研磨装置の構成を模式的に示す。
図1には、本発明の一実施形態による研磨装置の概略的な側面図が示されており、
図2には、本発明の一実施形態による研磨装置の概略的な上面図が示されている。なお、
図1および
図2では、図面が不明瞭になることを避けるため、一部の構成部材は省略されている。
【0024】
図1および
図2に示すように、本発明の一実施形態による研磨装置(以下、「第1の装置」と称する)100は、研磨ベルト110と、複数のローラー120、121と、駆動モーター125と、上定盤130と、下定盤140と、走行機構150と、昇降機構160と、荷重検出器165を有する。なお、
図2においては、昇降機構160および荷重検出器165は、省略されている。
【0025】
研磨ベルト110は、無端ループ形状で構成され、該研磨ベルト110の左右に設けられた各ローラー120、121により、移動可能に支持される。研磨ベルト110は、おもて面112およびうら面114を有し、おもて面112には、研磨用の砥粒が設置されている。砥粒は、例えば、ダイヤモンドまたはホワイトアルミナ等で構成されてもよい。
【0026】
ローラー120は、駆動モーター125(
図1には示されていない)に接続されており、該駆動モーター125を作動させることにより、ローラー120、さらにはローラー121を、
図1の矢印f1の方向に回転することができる。またこれに伴い、研磨ベルト110の下側は、矢印F1の方向(Y方向)に移動される。逆に、研磨ベルト110の上側は、矢印F1とは反対方向に移動され、これにより、ローラー120、121の回転の間、研磨ベルト110の移動(この場合、「回転」とも称される)が継続される。
【0027】
なお、
図1および
図2には示されていないが、第1の装置100は、さらに、張力付与機構を有してもよい。張力付与機構は、研磨ベルト110の弛みをなくし、稼働中の研磨ベルト110が張力維持状態で回転されるように機能する。
【0028】
張力付与機構は、例えば、エアシリンダ等であってもよい。
【0029】
下定盤140は、ワーク(図示されていない)を支持する役割を有する。下定盤140には、走行機構150が接続されている。走行機構150は、水平面(XY平面)内で、下定盤140を移動させることができる。例えば、
図2に示した例では、走行機構150により、下定盤140は、矢印F2の方向(X方向)またはその逆方向に移動できる。
【0030】
走行機構150は、例えば、直線案内レールを有するリニアガイド等で構成されてもよい。
【0031】
一方、上定盤130は、研磨ベルト110のおもて面112を、下定盤140に保持されたワークの被研磨面に押し付ける役割を有する。このため、上定盤130には、昇降機構160が機械的に結合されている。すなわち、上定盤130は、昇降機構160により、下降方向(Z方向)または上昇方向に移動できる。
【0032】
昇降機構160の構成は、特に限られない。昇降機構160は、例えば、サーボシリンダのような、一般的な装置で構成されてもよい。
【0033】
なお、
図2に示した例では、ワークの加工前の状態であるため、下定盤140は、上面視、上定盤130とは離れた位置にある。しかしながら、ワークを加工する際には、上定盤130および下定盤140は、上面視、相互に対向するように配置される。
【0034】
また、昇降機構160には、荷重検出器165が設置される。前述のように、荷重検出器165は、ワークに印加される荷重を把握する役割を有する。
【0035】
荷重検出器165の構成は、特に限られない。荷重検出器165には、一般的なロードセルなどが使用されてもよい。
【0036】
次に、このような構成を有する第1の装置100を用いてワークの被研磨面を研磨する方法について説明する。なお、ここでは、一例として、ワークの被研磨面の全体を一様に研磨する方法について説明する。
【0037】
ワークの被研磨面全体を研磨する際には、まず、第1の装置100の下定盤140の上にワークが載置される。ワークは、上面視、下定盤140の領域に収まる寸法を有する。
【0038】
ワークの位置ずれを防止するため、下定盤140には、位置ずれ防止手段が設けられてもよい。例えば、下定盤140の上面に吸引機構を設けた場合、ワークの被研磨面とは反対の面を下定盤140の上面に吸着させ、ワークの位置を固定することができる。ただし、位置ずれ防止手段の構成は特に限られず、任意の位置ずれ防止手段が利用されてもよい。
【0039】
次に、走行機構150を用いて、下定盤140が矢印F2の方向に移動される。下定盤140は、上面視、上定盤130と重なり合う位置まで移動される。なお、これにともない、下定盤140の上に載置されたワークも、上定盤130の下側に移動される。
【0040】
次に、駆動モーター125の駆動により、ローラー120、121が矢印f1の方向に回転を開始する。
図1に示すように、これに伴い、研磨ベルト110も「回転」を開始し、研磨ベルト110の下側は、矢印F1の方向に移動する。
【0041】
必要な場合、冷却剤がノズル(図示されていない)から吐出され、ワークの被研磨面の冷却が開始されてもよい。
【0042】
次に、昇降機構160の作動により、上定盤130が下降され、上定盤130が所定の高さレベルに移動される。また、荷重検出器165が測定を開始する。そして、上定盤130を介して研磨ベルト110のおもて面112がワークの被研磨面に当接されると、ワークの研磨が開始される。
【0043】
ワークの研磨中、荷重検出器165は、ワークに印加される荷重を検知し、その値が所定の範囲に含まれるかどうかを判断する。
【0044】
そして、荷重検出器によって、荷重の値が所定の範囲からずれていると判断された場合、研磨条件が変更される。
【0045】
例えば、荷重の値が所定の値よりも低い場合、昇降機構160により、上定盤130が下降される。また逆に、荷重の値が所定の値よりも高い場合、昇降機構160により、上定盤130が上昇される。
【0046】
あるいは、研磨時間、上定盤130/下定盤140の圧力、および研磨ベルト110の移動速度などが所定の値から増減されてもよい。
【0047】
このように、ワークの研磨中、被加工面に対する荷重が常時測定され、これに基づいて、所定の対応が行われ、荷重が適正な範囲に維持される。
【0048】
なお、ワークの全長(X方向の寸法)が研磨ベルト110の幅(X方向の寸法)よりも大きい場合、走行機構150を用いて、下定盤140を矢印F2の方向に移動させたまま、ワークの研磨が実施されてもよい。これにより、全長が大きなワークに対しても、被研磨面の研磨を行うことができる。この場合、研磨中の走行機構150による下定盤140の移動速度は、例えば、5mm/秒~50mm/秒の範囲であってもよい。
【0049】
その後、所定時間経過後に、昇降機構160により上定盤130が上昇され、研磨ベルト110がワークと当接しなくなると、研磨が完了される。
【0050】
このような工程により、ワークの被研磨面を研磨することができる。
【0051】
第1の装置100では、ローラー120、121の回転速度を高めることにより、研磨ベルト110の回転速度を容易に高めることができる。従って、ラップ研磨装置では得られないような高速研磨が可能となる。
【0052】
また、第1の装置100では、荷重検出器165によって、研磨中のワークの荷重が把握されるため、荷重を適正な範囲に維持できる。従って、高速研磨中もワークに対して適正な研磨状態を維持することができる。その結果、所望の研磨面を有するワークを得ることができる。
【0053】
さらに、第1の装置100では、研磨ベルト110の全長(Y方向の寸法)を拡張することにより、大型のワークの研磨を実施することも可能となる。
【0054】
例えば、これに限られるものではないが、第1の装置100では、上面視、研磨ベルト110として全長(Y方向の長さ)が5000mm等の大きな寸法の研磨ベルトも利用できる。
【0055】
また、これに限られるものではないが、第1の装置100において、下定盤140の幅(Y方向の寸法)は、600mm~2300mmの範囲であってもよい。この場合、幅(Y方向の寸法)が550mm~2250mmの寸法を有する大型のワークを研磨することができる。
【0056】
なお、当然のことながら、小さなワークを研磨する場合、下定盤140の幅は100mm~600mmの範囲としてもよい。この場合、幅が50mm~550mmの範囲のワークを研磨することができる。
【0057】
なお、第1の装置100では、動作の開始の際、昇降機構160は、予め定められた高さレベル(以下、「初期設定高さL0」と称する)まで上定盤130を下降させる。また、予め定められた加工時間(以下、「初期設定加工時間T0」と称する)、および予め定められた研磨ベルト110の移動速度(以下、「初期設定移動速度R0」と称する)で、研磨が開始される。
【0058】
しかしながら、研磨ベルト110が繰り返し利用されると、研磨ベルト110のおもて面112の研磨能力が低下する。そのため、次の研磨バッチでは、初期設定高さL0、初期設定加工時間T0、および初期設定移動速度R0から研磨を開始すると、ワークに所定の荷重が印加できず、適正な研磨条件に移行するまで時間を要する場合があり得る。
【0059】
このような問題に対処するため、n回目のバッチにおけるワークの研磨終了時点での上定盤130の高さレベル(以下、「高さLE」と称する)、加工時間(以下、「加工時間TE」と称する)、および移動速度(以下、「移動速度RE」と称する)の少なくとも一つが測定、把握されてもよい。そして、(n+1)回目のバッチにおけるワークの研磨処理の際に、これらの測定された高さLE、加工時間TE、および移動速度REに基づいて、上定盤130の高さレベル、加工時間、および移動速度のような加工条件が調整、設定されてもよい。
【0060】
この場合、より迅速に適正な研磨条件に移行することができ、迅速な研磨が可能となる。
【0061】
また、
図1および
図2には示されていないが、第1の装置100は、さらに、研磨ベルト110の温度を計測することが可能な温度測定器を備えてもよい。そのような温度測定器は、研磨工程中、研磨ベルト110のおもて面112のワークと接触しない箇所で、温度を計測することができる。
【0062】
研磨ベルト110のおもて面112には、樹脂製の結合材を用いて砥粒が接着される。そのような結合材の一部は、熱に弱い場合がある。また、砥粒自体も熱により劣化が生じる場合がある。
【0063】
研磨中の研磨ベルト110のおもて面112の温度を管理することにより、研磨ベルト110のおもて面112のそのような劣化を防止することができる。例えば、測定される温度が所定の温度を超えた場合、冷却剤の量を増やしたり、研磨ベルト110の回転速度を抑制したりして、研磨ベルト110のおもて面112の温度を低減してもよい。
【0064】
また、
図1および
図2には示されていないが、ワークがガラス基板である場合、第1の装置100は、さらに、欠点除去システムを有してもよい。
【0065】
ここで、「欠点」とは、ガラス基板の表面および内部に存在する異物および気泡を意味する。
【0066】
欠点除去システムは、ガラス基板の被研磨面の欠点を抑制するための最適な研磨量を把握するように機能する。
【0067】
具体的には、欠点除去システムは、
図3に示すようなフローを実施するように構成される。
【0068】
図3には、欠点除去システムを用いて実施されるフローを概略的に示す。
【0069】
図3に示すように、欠点除去システムは、
(i)欠点測定用ガラス基板の被研磨面に対し、研磨量を徐々に変えて研磨を実施し、被研磨面の深さ方向における欠点分布を把握するステップ(ステップS110)と、
(ii)前記欠点測定用ガラス基板の前記被研磨面において、最小の研磨量で最小の欠点数が得られる最適研磨量を把握するステップ(ステップS120)と、
を有する。
【0070】
以下、各ステップについて、より詳しく説明する。
【0071】
(ステップS110)
まず、欠点測定用のガラス基板(以下、「参照ワーク」と称する)が準備される。参照ワークは、被研磨対象となるガラス基板と同様の組成、同様の寸法を有し、被研磨対象となるガラス基板と同じ製造ロットから選択されることが好ましい。
【0072】
次に、第1の装置100を用いて、所定の条件で、参照ワークの一方の被研磨面(以下、「第1の参照表面」と称する)が所定の量だけ研磨される(第1の研磨)。研磨後に、第1の参照表面上の欠点の数および分布等が記録される(第1の記録)。
【0073】
次に、第1の研磨と同じ条件で、参照ワークの第1の参照表面が所定の量だけ研磨される(第2の研磨)。研磨後に、第1の参照表面上の欠点の数および分布等が記録される(第2の記録)。
【0074】
このような操作を繰り返して、第1の参照表面の深さ方向における欠点分布を把握する。
【0075】
必要な場合、参照ワークの第1の参照表面とは反対の表面(以下、「第2の参照表面」と称する)に対しても同様の操作が実施されてもよい。
【0076】
(ステップS120)
次に、ステップS110で得られた結果から、第1の参照表面に露出する欠点数が最小となる研磨量(以下、「第1の最適研磨量」と称する)が把握される。
【0077】
必要な場合、第2の参照表面に対しても、欠点数が最小となる研磨量、すなわち第2の最適研磨量が把握されてもよい。
【0078】
その後は、第1の装置100により、ステップS120によって得られた第1の最適研磨量に基づいて、実際のガラス基板の被研磨面の研磨が実施される。
【0079】
また、必要な場合、被研磨面とは反対の側の表面に対して、第2の最適研磨量に基づいて、研磨が実施される。
【0080】
欠点除去システムを用いてこのような工程を実施することにより、欠点の少ない研磨面を有するガラス基板を製造することが可能となる。
【0081】
(本発明の別の実施形態による研磨装置)
次に、
図4を参照して、本発明の別の実施形態について説明する。
【0082】
図4は、本発明の別の実施形態による研磨装置(以下、「第2の装置」と称する)の構成を模式的に示した側面図である。なお、
図4では、図面が不明瞭になることを避けるため、一部の構成部材は省略されている。
【0083】
図4に示すように、第2の装置200は、前述の第1の装置100と同様の構成を有する。従って、
図4において、第1の装置100と同様の部材には、
図1および
図2に示した参照符号に100を加えた参照符号が付与されている。
【0084】
例えば、第2の装置200は、研磨ベルト210、上定盤230、下定盤240、走行機構250、昇降機構260、荷重検出器265を有する。
【0085】
ただし、第2の装置200では、研磨ベルト210の形態が第1の装置100の場合とは異なっている。
【0086】
すなわち、第2の装置200において、研磨ベルト210には、ループ形状の研磨ベルトではなく、ロール形態の研磨ベルトが使用される。
【0087】
具体的には、研磨ベルト210は、4つのローラー220、221、222、223により、巻き出し/巻き取り式に供給される。これらのローラーのうち、ローラー220およびローラー221は、研磨ベルト210を供給する側のローラーであり、ローラー222およびローラー223は、研磨ベルト210を巻き取る側のローラーであってもよい。ただし、研磨ベルト210が最終状態まで巻き取られた後は、ローラー220およびローラー221が研磨ベルト210を巻き取る側のローラーとなり、ローラー222およびローラー223が、研磨ベルト210を供給する側のローラーとなってもよい。
【0088】
第2の装置200の作動の際には、ローラー220およびローラー221がそれぞれ、矢印f1およびf2の方向に回転される。また、ローラー222およびローラー223がそれぞれ、矢印f3およびf4の方向に回転される。これにより、研磨ベルト210を矢印F1の方向に移動させることができる。
【0089】
前述のように、研磨ベルト210は、おもて面212およびうら面214を有し、おもて面212には研磨用の砥粒が設置されている。従って、第2の装置200においても、昇降機構260により上定盤230を下降させることによって、研磨ベルト210のおもて面212をワークの被研磨面に当接させ、該被研磨面を研磨することができる。
【0090】
また、第2の装置200は、荷重検出器265を有する。このため、前述のように、ワークの研磨中、被研磨面に対する荷重が常時測定され、これに基づいて、荷重が適正な範囲に維持される。
【0091】
このような第2の装置200においても、ワークに対して高速の研磨処理を実施し、高精度の研磨面を得ることができる。また、大型のワークに対しても、同様の研磨を実施することができる。
【0092】
(本発明のさらに別の実施形態による研磨装置)
次に、
図5を参照して、本発明のさらに別の実施形態について説明する。
【0093】
図5は、本発明のさらに別の実施形態による研磨装置(以下、「第3の装置」と称する)の構成を模式的に示した側面図である。なお、
図5では、図面が不明瞭になることを避けるため、一部の構成部材は省略されている。
【0094】
図5に示すように、第3の装置300は、前述の第1の装置100と同様の構成を有する。従って、
図5において、第1の装置100と同様の部材には、
図1および
図2に示した参照符号に200を加えた参照符号が付与されている。
【0095】
例えば、第3の装置300は、研磨ベルト310、上定盤330、下定盤340、走行機構350、昇降機構360、荷重検出器365を有する。
【0096】
ただし、第3の装置300では、昇降機構360および荷重検出器365の設置位置が第1の装置100の場合とは異なっている。
【0097】
すなわち、第3の装置300において、昇降機構360および荷重検出器365は、上定盤330ではなく、下定盤340の側に設置されている。
【0098】
第3の装置300により、ワークの研磨を行う際には、昇降機構360により、下定盤340が上昇され、これにより、ワークの被研磨面が研磨ベルト310のおもて面312と当接される。
【0099】
このような構成の第3の装置300においても、第1の装置100と同様の動作により、ワークに対して高速の研磨処理を実施し、高精度の研磨面を得ることができる。また、大型のワークに対しても、同様の研磨を実施することができる。
【0100】
(本発明のさらに別の実施形態による研磨装置)
次に、
図6を参照して、本発明のさらに別の実施形態について説明する。
【0101】
図6は、本発明のさらに別の実施形態による研磨装置(以下、「第4の装置」と称する)の構成を模式的に示した側面図である。なお、
図6では、図面が不明瞭になることを避けるため、一部の構成部材は省略されている。
【0102】
図6に示すように、第4の装置400は、前述の第1の装置100と同様の構成を有する。従って、
図6において、第1の装置100と同様の部材には、
図1および
図2に示した参照符号に300を加えた参照符号が付与されている。
【0103】
例えば、第4の装置400は、研磨ベルト410、上定盤430、下定盤440、走行機構450、昇降機構460、および荷重検出器465を有する。
【0104】
ただし、第4の装置400では、研磨ベルト410および走行機構450の配置場所が第1の装置100の場合とは異なっている。
【0105】
すなわち、第4の装置400において、研磨ベルト410は、おもて面412が上定盤430の側となり、うら面414が下定盤440の側となるように、上定盤430および下定盤440に対して配置されている。
【0106】
また、これに伴い、走行機構450は、上定盤430に接続され、上定盤430を
図6のX方向に移動するように機能する。
【0107】
このような構成の第4の装置400においても、第1の装置100と同様の動作により、ワークに対して高速の研磨処理を実施し、高精度の研磨面を得ることができる。また、大型のワークに対しても、同様の研磨を実施することができる。
【0108】
以上、第1の装置100~第4の装置400を例に、本発明の一実施形態による研磨装置の構成について説明した。
【0109】
しかしながら、本発明の一実施形態による研磨装置がこれらの構成に限られないことは、当業者には明らかである。
【0110】
例えば、前述の第3の装置300または第4の装置400において、ループ形状の研磨ベルトに代えて、
図4に示したようなロールの形態の研磨ベルトが適用されてもよい。
【0111】
この他にも各種変更が可能であることは、当業者には容易に把握できる。
【0112】
(ガラス基板)
前述のような本発明の一実施形態による研磨装置を使用してガラス基板を研磨した場合、その他のプロセスを実施しなくても、各種特徴的な形態の研磨面を有するガラス基板を得ることができる。
【0113】
以下、
図7~
図12を参照して、そのようなガラス基板の一例について説明する。
【0114】
(ガラス基板の第1の態様)
図7には、本発明の一実施形態による研磨装置を用いて研磨されたガラス基板(以下、「第1のガラス基板」と称する)の斜視図を示す。
【0115】
図7に示すように、第1のガラス基板1100は、相互に対向する第1の表面1112および第2の表面1114を有する。第1の表面1112は、研磨面であり、
図7には研磨後の形態が示されている。ただし、
図7では、第1の表面1112の凹凸が誇張して示されている。一方、第2の表面1114は、研磨面であっても、非研磨面であってもよい。
【0116】
第1のガラス基板1100の第1の表面1112は、略矩形状であり、上面視、相互に対向する第1の辺1102および第3の辺1106と、相互に対向する第2の辺1104および第4の辺1108と、を有する。
【0117】
第1の辺1102の寸法uは、例えば、50mm~2200mmの範囲である。また、第1の辺1102と直行する第2の辺1104の寸法vは、例えば、50mm~2200mmの範囲である。
【0118】
第1のガラス基板1100の第1の表面1112の側には、中央凹部1120と、第1の凸部1125aおよび第2の凸部1125bとが存在する。第1の凸部1125aおよび第2の凸部1125bは、相互に平行に延在し、それぞれ、第2の辺1104および第4の辺1108の側に、中央凹部1120を挟むようにして配置される。
【0119】
第1の凸部1125aおよび第2の凸部1125bにおける最も低い位置の高さレベルと、中央凹部1120の最も高い位置の高さレベルの差(以下、「段差d」とも称する)は、例えば、50μm以上である。段差は、60μm以上、300μm以下であってもよい。
【0120】
このような第1のガラス基板1100は、本発明の一実施形態による研磨装置を使用して製造することができる。以下、
図8を参照して、前述の第1の装置100を用いた場合を例に、第1のガラス基板1100の製造方法の一例について説明する。
【0121】
図8は、第1のガラス基板1100を製造する際の研磨ベルト110とワークPの相対的な配置関係を模式的に示した上面図である。
【0122】
第1のガラス基板1100を製造する際には、まず、矩形状のワーク(ガラス基板)Pが準備される。
【0123】
図8に示すように、ワークPは、被研磨面1502を有する。また、ワークPの被研磨面1502は、略矩形状であり、第1の辺1512~第4の辺1518を有する。
【0124】
ワークPは、第1の辺1512の長さが研磨ベルト110の幅Wよりも大きくなるように選定される。あるいは、ワークPの第1の辺1512の長さよりも小さな幅Wを有する研磨ベルト110が選定され、該研磨ベルト110が第1の装置100に挿着されてもよい。
【0125】
次に、
図8に示すような位置関係となるように、ワークPが配置される。すなわち、ワークPは、第2の辺1514および第4の辺1518が研磨ベルト110の幅Wの方向に対して垂直となり、かつ上面視、第2の辺1514および第4の辺1518が研磨ベルト110から露出される(「はみ出す」)ように配置される。
【0126】
このような配置でワークPを研磨することにより、ワークPの被研磨面1502のうち、研磨ベルト110と当接された領域のみが研磨できる。
図8の右側には、この工程において研磨されたワークPの被研磨面1502内の研磨領域Kを示す。
【0127】
なお、別の実施形態では、研磨ベルト110がワークPからはみ出さない範囲で、走行機構150を移動させながらワークPを加工することにより、研磨ベルト110の幅Wの方向において、研磨領域Kをより広げることも可能である。
【0128】
このようにして、研磨領域Kに対応する中央凹部1120と、非研磨領域に対応する第1の凸部1125aおよび第2の凸部1125bとを有する第1のガラス基板1100を製造できる。
【0129】
なお、上記の方法では、第1のガラス基板1100の第1の凸部1125aおよび第2の凸部1125bは、全く研磨処理されないままの状態となる。
【0130】
そのような状態を避ける必要がある場合、第1の装置100を用いて、研磨処理を2回実施してもよい。すなわち、1回目の研磨では、走行機構150を用いて下定盤140を移動させながら、ワークPの被研磨面1502の全体が研磨される。次に、2回目の研磨の際に、前述のように、ワークPの第2の辺1514および第4の辺1518が研磨ベルト110から露出されるようにして、ワークPが研磨ベルト110に対して配置され、この状態でワークPが研磨される。
【0131】
第1のガラス基板1100は、このような方法により製造されるため、第1の表面1112の中央凹部1120に、第2の辺1104および第4の辺1108に沿った複数の平行な研磨痕を有するという特徴がある。
【0132】
(ガラス基板の第2の態様)
次に、
図9には、本発明の一実施形態による研磨装置を用いて研磨された別のガラス基板(以下、「第2のガラス基板」と称する)の斜視図を示す。
【0133】
図9に示すように、第2のガラス基板1200は、相互に対向する第1の表面1212および第2の表面1214を有する。第1の表面1212は、研磨面であり、
図9には研磨後の形態が示されている。ただし、
図9では、第1の表面1212の凹凸が誇張して示されている。一方、第2の表面1214は、研磨面であっても、非研磨面であってもよい。
【0134】
第2のガラス基板1200の第1の表面1212は、略矩形状であり、上面視、相互に対向する第1の辺1202および第3の辺1206と、相互に対向する第2の辺1204および第4の辺1208と、を有する。
【0135】
第2のガラス基板1200の第1の表面1212側には、中央凹部1220と、4つのコーナー凸部1226とが存在する。各コーナー凸部1226は、上面視、第1の表面1212の4つのコーナー部に配置される。
【0136】
4つのコーナー凸部1126における最も低い位置の高さレベルと、中央凹部1220の最も高い位置の高さレベルの差(以下、「段差d」とも称する)は、50μm以上である。段差は、60μm以上、300μm以下であってもよい。
【0137】
このような第2のガラス基板1200は、本発明の一実施形態による研磨装置を使用して、以下のように製造することができる。
【0138】
まず、前述の第1のガラス基板1100と同様の方法により、ワークPの被研磨面1502を研磨する。これにより、2つの平行に延在する凸部を有するワークが形成される(
図7参照)。
【0139】
次に、1回目の研磨に対してワークPを90゜回転させた状態で、再度、ワークPの被研磨面1502を研磨する。この2回目の研磨では、ワークPは、上面視、第1の辺1512および第3の辺1516が研磨ベルト110の幅Wの方向に対して垂直となり、第1の辺1512および第3の辺1516が研磨ベルト110から露出されるように配置される。
【0140】
そのような配置でワークPを研磨することにより、
図9に示したような4つのコーナー凸部1226を有する第2のガラス基板1200を製造できる。
【0141】
(ガラス基板の第3の態様)
次に、
図10には、本発明の一実施形態による研磨装置を用いて研磨されたさらに別のガラス基板(以下、「第3のガラス基板」と称する)の斜視図を示す。
【0142】
図10に示すように、第3のガラス基板1300は、相互に対向する第1の表面1312および第2の表面1314を有する。第1の表面1312は、研磨面であり、
図10には研磨後の形態が示されている。ただし、
図10では、第1の表面1312の凹凸が誇張して示されている。一方、第2の表面1314は、研磨面であっても、非研磨面であってもよい。
【0143】
第3のガラス基板1300の第1の表面1312は、略矩形状であり、上面視、相互に対向する第1の辺1302および第3の辺1306と、相互に対向する第2の辺1304および第4の辺1308と、を有する。
【0144】
第3のガラス基板1300の第1の表面1312の側には、第1の中央凹部1320aおよび第2の中央凹部1320bと、第1の凸部1325a、第2の凸部1325b、および第3の凸部1325cとが存在する。
【0145】
第1の凸部1325a~第3の凸部1325cは、相互に平行に延在する。第1の凸部1325aおよび第2の凸部1325bは、それぞれ、第2の辺1304および第4の辺1308の側にそれぞれの辺と平行に延在するように配置される。一方、第3の凸部1325cは、第1の表面1312の略中央側に、第2の辺1304および第4の辺1308と平行に延在するように配置される。
【0146】
第1の凸部1325aと第3の凸部1325cの間に、第1の中央凹部1320aが区画され、第2の凸部1325bと第3の凸部1325cの間に、第2の中央凹部1320bが区画される。第1の中央凹部1320aと第2の中央凹部1320bは、相互に平行に延在する。
【0147】
第1の中央凹部1320aおよび第2の中央凹部1320bにおける最も高い位置の高さレベルと、第1の凸部1325a~第3の凸部1325cにおける最も低い位置の高さレベルの差(以下、「段差d」とも称する)は、50μm以上である。段差は、60μm以上、300μm以下であってもよい。
【0148】
このような第3のガラス基板1300は、本発明の一実施形態による研磨装置を使用して製造することができる。以下、
図11~
図12を参照して、前述の第1の装置100を用いた場合を例に、第3のガラス基板1300の製造方法の一例について説明する。
【0149】
図11および
図12は、第3のガラス基板1300を製造する際の研磨ベルト110とワークPの相対的な配置関係を模式的に示した上面図である。
【0150】
第3のガラス基板1300を製造する際には、まず、矩形状のワーク(ガラス基板)Pが準備される。
【0151】
図11に示すように、ワークPは、被研磨面1602を有する。また、ワークPの被研磨面1602は、略矩形状であり、第1の辺1612~第4の辺1618を有する。
【0152】
ワークPは、第1の辺1612の長さが研磨ベルト110の幅Wに対して十分大きくなるように選定される。あるいは、ワークPの第1の辺1612の長さに対して十分に小さな幅Wを有する研磨ベルト110が選定され、該研磨ベルト110が第1の装置100に挿着されてもよい。
【0153】
次に、
図11に示すような位置関係となるように、ワークPが配置される。すなわち、ワークPは、第2の辺1614および第4の辺1618が研磨ベルト110の幅Wの方向に対して垂直となり、かつ上面視、第2の辺1614および第4の辺1618が研磨ベルト110から露出される(「はみ出す」)ように配置される。
【0154】
また、ワークPは、上面視、第4の辺1618の側の研磨ベルト110からの露出領域R2が、第2の辺1614の側の研磨ベルト110からの露出領域R1に比べて、十分に大きくなるようにして、研磨ベルト110に対して配置される。
【0155】
例えば、
図11に示した例では、ワークPは、被研磨面1602において、露出領域R2が露出領域R1の約4倍となるようにして、研磨ベルト110に対して配置される。
【0156】
このような配置でワークPを研磨することにより、ワークPの被研磨面1602のうち、研磨ベルト110と当接された領域のみが研磨できる。
図11の右側には、この工程において研磨されたワークP内の研磨領域K1を示す。
【0157】
次に、走行機構150によりワークPを移動させ、研磨ベルト110に対して、
図12に示すような関係となるように、ワークPが配置される。すなわち、ワークPは、上面視、第4の辺1618の側の研磨ベルト110からの露出領域R4が、第2の辺1614の側の研磨ベルト110からの露出領域R3に比べて、十分に小さくなるようにして、研磨ベルト110に対して配置される。
【0158】
例えば、
図12に示した例では、ワークPは、被研磨面1602において、露出領域R4が露出領域R3の約1/4倍となるようにして、研磨ベルト110に対して配置される。
【0159】
このような配置でワークPを研磨することにより、ワークPの被研磨面1602のうち、研磨ベルト110と当接された領域のみが研磨できる。
図12の右側には、この工程において研磨されたワークP内の研磨領域K2を示す。
【0160】
このような2段階の研磨工程により、
図10に示したような、3つの凸部1325a~1325cにより仕切られた、研磨領域K1に対応する第1の中央凹部1320aおよび研磨領域K2に対応する第2の中央凹部1320bを有する第3のガラス基板1300を製造できる。
【0161】
第3のガラス基板1300は、このような方法により製造されるため、第1の表面1312の第1の中央凹部1320aおよび第2の中央凹部1320bに、第2の辺1304および第4の辺1308に沿った複数の平行な研磨痕を有する。
【0162】
ここで、複数のガラス基板を搬送する際、ガラス基板は、水平に積層されたり、傾斜状態で重ねて配置されることが一般的である。特に、近年は、廃棄物ロスの観点から、ガラス基板同士の間に、緩衝材を介在させずに、ガラス基板同士を直接積層することが好ましい。
【0163】
しかしながら、そのような状態でガラス基板を搬送した場合、ガラス基板同士が密着して、後にガラス基板同士を相互に分離させることが難しくなる場合がある。
【0164】
これに対して、前述の形態を有する第1のガラス基板1100~第3のガラス基板1130は、第1の表面1112、1212、1312に凸部を有するため、積層した際のガラス基板同士の密着を有意に軽減することができる。従って、搬送後に各ガラス基板を容易に分離することができる。
【0165】
また、ガラス基板が正方形またはこれに近い形状の場合、しばしば、ガラス基板の向き(縦横方向)の判別が難しくなる場合がある。このような混乱を回避するため、一般に、ガラス基板には、方向が判別できるマーカが設置される。
【0166】
一方、第1のガラス基板1100および第3のガラス基板1300は、第1の表面1112、1312に、多数の平行に延在する研磨痕を有する。このため、第1のガラス基板1100および第3のガラス基板1300では、第1の表面1112、1312が正方形に近い形状であっても、ガラス基板の向きを容易に識別することができる。従って、マーカの設置を簡略化したり、マーカを削除したりすることが可能となる。
【0167】
以上、
図7~
図12を参照して、本発明の一実施形態による研磨装置を用いて形成されるガラス基板の研磨面の形態の一例について説明した。
【0168】
しかしながら、これらの形態は、単なる一例であって、本発明の一実施形態では、各種形態の研磨面を有するガラス基板を製造できる。
【0169】
例えば、
図7~
図12に示したガラス基板1100~1300では、凸部の側壁は、ガラス基板の厚さ方向に対して略平行に延在する。しかしながら、凸部の側壁は、いかなるプロファイルを有してもよい。例えば、凸部の側壁は、ガラス基板の厚さ方向に対して傾斜した角度で延在してもよい。また、凸部の側壁は、直線状プロファイルに限られず、例えば、凹部に向かって徐々に高さが減少する曲線状のプロファイルを有してもよい。
【0170】
また、
図7~
図12に示したガラス基板1100~1300は、第1の表面1112、1212、1312がいずれも矩形状である。しかしながら、ガラス基板は、円形および楕円形など、各種形状を有してもよい。
【0171】
この他にも、各種態様が想定される。
【0172】
(本発明の一態様)
本発明は、以下の態様を有する。
【0173】
(態様1)
研磨装置であって、
おもて面およびうら面を有し、前記おもて面に砥粒が担持された研磨ベルトと、
回転により、前記研磨ベルトの前記おもて面を第1の水平方向に移動させることが可能な複数のローラーと、
前記ローラーを回転駆動させる駆動モーターと、
相互に対向して配置される第1の定盤および第2の定盤であって、
前記第1の定盤は、前記研磨ベルトのうら面側に配置され、
前記第2の定盤は、前記研磨ベルトのおもて面側に配置され、
前記第1の定盤と前記第2の定盤の間には、前記研磨ベルトの前記おもて面と対面するように被加工対象となるワークが保持される、第1の定盤および第2の定盤と、
前記第2の定盤を、前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向に移動させることが可能な走行機構と、
前記第1の定盤または前記第2の定盤に機械的に接続され、接続された前記第1の定盤または前記第2の定盤を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構に設けられた荷重検出器と、
を有し、
前記荷重検出器は、前記ワークの研磨中、該ワークの被研磨面に対する荷重を把握し、該荷重を適正な範囲に維持する、研磨装置。
【0174】
(態様2)
前記ワークの研磨中、前記荷重検出器により把握された荷重に基づいて、
(i)前記第1の定盤もしくは第2の定盤が昇降され、または
(ii)前記ワークの研磨時間、前記第1の定盤もしくは前記第2の定盤の圧力、および前記研磨ベルトの移動速度の少なくとも一つが調整され、
これにより、前記荷重が適正な範囲に維持される、態様1に記載の研磨装置。
【0175】
(態様3)
前記ワークの研磨完了時点での前記第1の定盤または前記第2の定盤のうち前記昇降機構に接続された方の高さレベル、前記ワークの加工時間、および前記研磨ベルトの移動速度の少なくとも一つを把握し、
次のバッチにおけるワークの研磨の際に、前記高さレベル、前記ワークの加工時間、および前記研磨ベルトの移動速度の少なくとも一つに基づいて加工条件が設定され、研磨が開始される、態様1または2に記載の研磨装置。
【0176】
(態様4)
前記研磨ベルトは、ループ状の研磨ベルトである、態様1乃至3のいずれか一つに記載の研磨装置。
【0177】
(態様5)
さらに、前記研磨ベルトの前記ワークと非接触の位置において、前記研磨ベルトの表面温度を測定することが可能な温度測定器を有する、態様1乃至4のいずれか一つに記載の研磨装置。
【0178】
(態様6)
さらに、前記研磨ベルトの弛みを低減する張力付与機構を有する、態様1乃至5のいずれか一つに記載の研磨装置。
【0179】
(態様7)
前記第1の定盤は、上定盤であり、前記第2の定盤は、下定盤である、態様1乃至6のいずれか一つに記載の研磨装置。
【0180】
(態様8)
前記下定盤は、前記第1の水平方向の寸法が100mm~2300mmの範囲である、態様7に記載の研磨装置。
【0181】
(態様9)
前記ワークは、ガラス基板であり、
当該研磨装置は、さらに、欠点除去システムを有し、該欠点除去システムは、
欠点測定用ガラス基板の被研磨面に対し、研磨量を変えて徐々に研磨を実施し、被研磨面の深さ方向における欠点分布を把握し、
前記欠点測定用ガラス基板の前記被研磨面において、最小の研磨量で最小の欠点数が得られる最適研磨量を把握する
ように操作され、
当該研磨装置は、前記最適研磨量に基づいて、実際のガラス基板の被研磨面を研磨する、態様1乃至8のいずれか一つに記載の研磨装置。
【0182】
(態様10)
相互に対向する第1の表面および第2の表面を有し、
前記第1の表面には、少なくとも一つの凸部と、少なくとも一つの凹部が存在し、
前記凸部における最も低い位置の高さレベルと、前記凹部における最も高い位置の高さレベルの差は、50μm以上である、ガラス基板。
【0183】
(態様11)
前記第1の表面の各凹部には、一つの方向に沿って相互に平行に延在する複数の研磨痕が存在する、態様10に記載のガラス基板。
【符号の説明】
【0184】
100 第1の装置
110 研磨ベルト
112 おもて面
114 うら面
120、121 ローラー
125 駆動モーター
130 上定盤
140 下定盤
150 走行機構
160 昇降機構
165 荷重検出器
200 第2の装置
210 研磨ベルト
212 おもて面
214 うら面
220~223 ローラー
230 上定盤
240 下定盤
250 走行機構
260 昇降機構
265 荷重検出器
300 第3の装置
310 研磨ベルト
312 おもて面
314 うら面
320、321 ローラー
330 上定盤
340 下定盤
350 走行機構
360 昇降機構
365 荷重検出器
400 第4の装置
410 研磨ベルト
412 おもて面
414 うら面
420、421 ローラー
430 上定盤
440 下定盤
450 走行機構
460 昇降機構
465 荷重検出器
1100 第1のガラス基板
1102 第1の辺
1104 第2の辺
1106 第3の辺
1108 第4の辺
1112 第1の表面
1114 第2の表面
1120 中央凹部
1125a 第1の凸部
1125b 第2の凸部
1200 第2のガラス基板
1202 第1の辺
1204 第2の辺
1206 第3の辺
1208 第4の辺
1212 第1の表面
1214 第2の表面
1220 中央凹部
1226 コーナー凸部
1300 第3のガラス基板
1302 第1の辺
1304 第2の辺
1306 第3の辺
1308 第4の辺
1312 第1の表面
1314 第2の表面
1320a 第1の中央凹部
1320b 第2の中央凹部
1325a 第1の凸部
1325b 第2の凸部
1325c 第3の凸部
1502 被研磨面
1512 被研磨面の第1の辺
1514 被研磨面の第2の辺
1516 被研磨面の第3の辺
1518 被研磨面の第4の辺
1602 被研磨面
1612 被研磨面の第1の辺
1614 被研磨面の第2の辺
1616 被研磨面の第3の辺
1618 被研磨面の第4の辺
K、K1、K2 研磨領域
P ワーク
R1~R4 露出領域