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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112707
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】自動測定装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20240814BHJP
   G01B 5/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
G01B5/00 L
G01B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017945
(22)【出願日】2023-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】山地 政吏
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA02
2F062AA04
2F062AA21
2F062CC23
2F062EE01
2F062EE09
2F062FF13
2F062FF17
2F062GG09
2F062GG15
2F062HH21
2F062MM08
(57)【要約】
【課題】安価で使い勝手がよい接触式の測定器を自動化する自動測定装置を提供する。
【解決手段】
自動測定装置は、ワークに接離するように進退する可動要素の変位を検出してワーク寸法を測定する測定器と、可動要素の進退を動力によって自動化する自動操作部と、ワークを保持するワーク保持部と、を備える。ワーク保持部は、可動部材の進退方向に沿う方向に長さを有する保持軸を有し、保持軸がワークの穴に挿入された状態で、ワークを保持軸で吊り下げるように保持する。可動要素がワークに当接したときに、ワークと可動要素との互いの当接面が密接するように、ワークが保持軸に沿って平行移動する位置変更と、ワークが回転する姿勢変更と、を許容する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに接離するように進退する可動要素の変位を検出してワーク寸法を測定する測定器と、
前記可動要素の進退を動力によって自動化する自動操作部と、
ワークを保持するワーク保持部と、を備え、
ワーク寸法を自動的に測定する自動測定装置であって、
前記ワーク保持部は、
前記可動部材の進退方向に沿う方向に長さを有する保持軸を有し、前記保持軸がワークの穴に挿入された状態でワークを保持し、
前記可動要素が前記ワークに当接したときに、前記ワークと前記可動要素との互いの当接面が密接するように、前記ワークが前記保持軸に沿って平行移動する位置変更と、ワークが回転する姿勢変更と、を許容する
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動測定装置において、
前記ワーク保持部は、
前記保持軸がワークの穴に挿入された状態で、ワークを前記保持軸で吊り下げるように保持する
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動測定装置において、
前記ワーク保持部は、
前記保持軸が突き出るように設けられている第一把持面を有する第一フィンガーと、
前記保持軸を通す穴が設けられている第二把持面を有する第二フィンガーと、を有し、
ワークの穴に前記保持軸を挿入した状態で、前記第一把持面と前記第二把持面とでワークを挟む把持状態と、前記把持状態を解除した吊り下げ状態と、を切り替えられる
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動測定装置において、
前記測定器はさらに固定要素を有し、前記可動要素と前記固定要素とが所定測定圧で前記ワークに密接したときにワーク寸法を測定値として取得するものであり、
前記ワーク保持部は、
前記測定器の前記固定要素と前記可動要素との間にワークを保持するにあたって、
前記保持軸をワークの穴に通し、さらに、前記ワークが前記固定要素に接触した状態になるようにワークを保持する
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動測定装置において、
前記ワーク保持部は、
さらに、前記保持軸を低摩擦でスライドするスライド補助具を有し、
前記スライド補助具によってワークを支持する
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動測定装置において、
前記ワーク保持部は、
前記保持軸を軸方向に前後移動させるか、または、前記保持軸を振動させる保持軸駆動手段を備える
ことを特徴とする自動測定装置。
【請求項7】
ワークに接離するように進退する可動要素の変位を検出してワーク寸法を測定する測定器と、
前記可動要素の進退を動力によって自動化する自動操作部と、
前記可動部材の進退方向に沿う方向に長さを有する保持軸を有し、前記保持軸をワークの穴に通した状態でワークを保持するワーク保持部と、を備え、
ワーク寸法を自動的に測定する自動測定装置の制御方法であって、
前記自動操作部が、前記可動部材と前記ワークとが接触するように前記可動部材を前進させ、
前記ワーク保持部は、前記測定器に予め設定された測定圧以下の圧力で前記ワークが前記保持軸に沿って平行移動する位置変更とワークが回転する姿勢変更とを許容し、
前記ワークと前記可動部材とが密接して、前記ワークと前記可動部材との間に所定の測定圧が発生したときに、測定値を取得する
ことを特徴とする自動測定装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの寸法を測定するための小型の測定器を用いてワークを自動的に測定する自動測定装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの寸法を測定する測定器(測定工具)としてマイクロメータやノギスが知られている。これら接触式の測定器(測定工具)は、その使い易さ、測定の安定性、比較的安価である等の利点があり、広く利用されている。ただ、ワークと可動要素(スピンドルや測定ジョー)とを適切に密着させ、さらに、常に同じ測定圧を掛けながら測定しなければならないため、どうしても人手による手動測定ということになる。そのため、このような接触式の測定工具による測定には人手と時間が掛かる。
【0003】
手動測定の代替手段として、生産現場において、エアマイクロメータやレーザースキャンマイクロメータ等の非接触式測定機器を用いるものが提案されている(特開平8-14871)。しかしながら、エアマイクロメータやレーザースキャンマイクロメータは、それ自体が極めて高価であり、また、メンテナンスがやや難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-14871
【特許文献2】特開平10-89903
【特許文献3】特開2019-100904
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接触式測定を自動化するにあたって、これまでにもモータ動力を使用するような種々の提案はあるものの広く一般に普及するほど実用化に成功した事例はなかった(特開平10-89903)。また、三次元測定機(CMM)等を利用すれば接触式測定の自動化はもちろんできるが(特開2019-100904)、数千万円から数億円の投資が必要なのであり、マイクロメータやノギスで行なっているような測定の代替に採用するのは妥当とは言えない。
【0006】
本発明の目的は、安価で使い勝手がよい接触式の測定器を自動化する自動測定装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動測定装置は、
ワークに接離するように進退する可動要素の変位を検出してワーク寸法を測定する測定器と、
前記可動要素の進退を動力によって自動化する自動操作部と、
ワークを保持するワーク保持部と、を備え、
ワーク寸法を自動的に測定する自動測定装置であって、
前記ワーク保持部は、
前記可動部材の進退方向に沿う方向に長さを有する保持軸を有し、前記保持軸がワークの穴に挿入された状態でワークを保持し、
前記可動要素が前記ワークに当接したときに、前記ワークと前記可動要素との互いの当接面が密接するように、前記ワークが前記保持軸に沿って平行移動する位置変更と、ワークが回転する姿勢変更と、を許容する
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一実施形態では、
前記ワーク保持部は、
前記保持軸がワークの穴に挿入された状態で、ワークを前記保持軸で吊り下げるように保持する
ことが好ましい。
【0009】
本発明の一実施形態では、
前記ワーク保持部は、
前記保持軸が突き出るように設けられている第一把持面を有する第一フィンガーと、
前記保持軸を通す穴が設けられている第二把持面を有する第二フィンガーと、を有し、
ワークの穴に前記保持軸を挿入した状態で、前記第一把持面と前記第二把持面とでワークを挟む把持状態と、前記把持状態を解除した吊り下げ状態と、を切り替えられる
ことが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態では、
前記測定器はさらに固定要素を有し、前記可動要素と前記固定要素とが所定測定圧で前記ワークに密接したときにワーク寸法を測定値として取得するものであり、
前記ワーク保持部は、
前記測定器の前記固定要素と前記可動要素との間にワークを保持するにあたって、
前記保持軸をワークの穴に通し、さらに、前記ワークが前記固定要素に接触した状態になるようにワークを保持する
ことが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、
前記ワーク保持部は、
さらに、前記保持軸を低摩擦でスライドするスライド補助具を有し、
前記スライド補助具によってワークを支持する
ことが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態では、
前記ワーク保持部は、
前記保持軸を軸方向に前後移動させるか、または、前記保持軸を振動させる保持軸駆動手段を備える
ことが好ましい。
【0013】
本発明の自動測定装置の制御方法は、
ワークに接離するように進退する可動要素の変位を検出してワーク寸法を測定する測定器と、
前記可動要素の進退を動力によって自動化する自動操作部と、
前記可動部材の進退方向に沿う方向に長さを有する保持軸を有し、前記保持軸をワークの穴に通した状態でワークを保持するワーク保持部と、を備え、
ワーク寸法を自動的に測定する自動測定装置の制御方法であって、
前記自動操作部が、前記可動部材と前記ワークとが接触するように前記可動部材を前進させ、
前記ワーク保持部は、前記測定器に予め設定された測定圧以下の圧力で前記ワークが前記保持軸に沿って平行移動する位置変更とワークが回転する姿勢変更とを許容し、
前記ワークと前記可動部材とが密接して、前記ワークと前記可動部材との間に所定の測定圧が発生したときに、測定値を取得する
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】自動測定装置の全体構成を示す図である。
図2】自動マイクロメータ部の外観斜視図である。
図3】制御ユニット部の機能ブロック図である。
図4】ワークを自動測定する自動測定動作のフローチャートである。
図5】測定工程の手順を示すフローチャートである。
図6】ハンド部でワークを把持している状態を示す図である。
図7】ハンド部でワークを把持している状態の断面図である。
図8】ハンド部によってワークを測定器部の測定領域に差し入れた状態を例示する図である。
図9】ハンド部がワークをリリースして、保持軸でワークを吊り下げ状態に保持している様子を示す図である。
図10】スピンドルとアンビルとでワークを挟んだ状態を示す図である。
図11】第二実施形態を示す図である。
図12】第二実施形態におけるワーク測定動作のフローチャートである。
図13】第二実施形態における測定工程の手順を示すフローチャートである。
図14】変形例1における測定工程の手順を示すフローチャートである。
図15】変形例2における測定工程の手順を示すフローチャートである。
図16】リング治具を例示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を説明する。
図1は、自動測定装置100の全体構成を示す図である。
本発明の第一実施形態に係る自動測定装置100は、測定器部200と、自動操作部300と、ロボットアーム部400と、制御ユニット部500と、を備える。
測定器部200と自動操作部300との組み合わせを自動測定器部110とする。
本第一実施形態では、マイクロメータ(測定器部)200と自動操作部300との組み合わせユニットを自動マイクロメータ部(自動測定器部)110と称することにする。
【0016】
(測定器部200)
図2は、自動マイクロメータ部110の外観斜視図である。
測定器部200は、実際にワークWの寸法を測定する測定器であって、本実施形態の測定器部200は、いわゆるマイクロメータ200である。
マイクロメータ200は、元来、手動で操作する小型の測定器であり、本実施形態の測定器部200として、現在市販されているマイクロメータ200を利用することもできる。
簡単にマイクロメータ200の構成を説明しておく。
マイクロメータ200は、U字形フレーム(固定要素)210と、スピンドル(可動要素)220と、シンブル部230と、変位検出部240と、を有する。
【0017】
U字形フレーム210は、U字の一端の内側にアンビル211を有する。スピンドル220は、U字形フレーム210の他端側に設けられ、アンビル211に対して軸方向進退可能に設けられている。スピンドル220の一端側端面には、ワークWに当接するための測定面が設けられている。アンビル211の他端側端面にもワークWに当接するための測定面が設けられている。測定面は、平坦面に加工され、例えば、超硬合金材やセラミックで形成されている。スピンドル220は、シンブル部230の回転操作によって軸方向進退するように送り移動されるものである。
【0018】
アンビル211とスピンドル220との間の領域を測定領域とする。測定領域にある測定対象物(ワークW)をアンビル211の測定面とスピンドル220の測定面とによって所定測定圧で挟み込み、そのときのスピンドル220の変位(位置)からワークWの寸法を測定値として得る。スピンドル(可動部材)220が進退する軸線を測定器部200の測定軸とする。
【0019】
スピンドル220の送り方式としては、スピンドル220自体が回転する回転送り式と、スピンドル220自体は回転しない直動送り式と、がある。回転送り式では、スピンドル220自体に雄ネジを設けておいて、U字形フレーム210側に雌ネジを設けておく。シンブルとスピンドル220とが一体回転するように両者を係合させておき、シンブルの回転操作によってスピンドル220を回転させる。すると、スピンドル220がネジ送りによって進退する。直動送り式では、シンブル部230の内側に送りネジを切っておいて、スピンドル220には前記送りネジに係合するピンを設けておく。スピンドル220を回り止めした状態でシンブル部230を回転させると、ピンと送りネジとの係合によってスピンドル220が送られる。本実施形態に採用するマイクロメータ200のタイプとしては、回転送り式でも直動送り式でもよい。
【0020】
シンブル部230は、U字形フレーム210の他端側においてスピンドル220の他端に配置されている。シンブル部230は、回転操作によってスピンドル220を進退させる操作部である。
ここで、本実施形態に採用するマイクロメータ200としては、シンブル部230とスピンドル220との間に定圧機構を有するタイプが好ましい。
定圧機構は、予め設定された負荷がスピンドル220にかかったときに、シンブル部230とスピンドル220との係合を解除してシンブル部230をスピンドル220に対して空転させるものである。測定時に定圧機構を常に同じように適正に作動させることにより測定時の測定圧を一定にし、測定精度(繰り返し精度)を高く保つことができる。定圧機構は市販のマイクロメータ200にも組み込まれており、例えば、特許3115555、特許3724995、特許5426459、特許5270223にも開示されている。定圧機構としては、シンブル部230とスピンドル220との間に所定負荷以上の力が掛かったときに滑りが生じるようにしたラチェット機構や、シンブルの外スリーブと内スリーブとの間に所定負荷以上で滑りが生じるように介装した板バネ等で構成できる。
【0021】
さらに、本実施形態に採用するマイクロメータ200としては、スピンドル220にかかる負荷を検出する測定圧検出機構を有することが好ましい。
例えば、特許3751540、特許4806545、特許7208717に測定圧検出機構が開示されている。測定圧検出機構としては、歪みゲージ等でスピンドル220にかかる負荷を直接または間接的に検出してもよいし、前記定圧機構が作動したことでスピンドル220に掛かる負荷が所定値になったことを検出するようにしてもよい。測定圧検出機構は、所定測定圧を検出したときには信号(測定圧信号)を出力する。例えば、変位検出部240は、測定圧検出機構で所定測定圧が検出されたことを受けて、測定値(変位量)のサンプリング(ラッチ)を行なう。
【0022】
変位検出部240は、スピンドル220の変位量(あるいは位置)を検出する。変位検出部240は、ロータリエンコーダやリニアエンコーダによって構成される。
【0023】
なお、変位検出部240としては、エンコーダではなく、アナログ式(目盛式)でもよい。この場合、自動化するにあたっては、目盛をデジタルカメラ等で読み取って、画像解析(画像認識)で測定値を読み取るようにしてもよい。この場合、アナログ式目盛、デジタルカメラおよび画像解析部(画像認識部)によって変位検出部240が構成されているとしてもよい。
【0024】
さらに、U字形フレーム210のおもて面には測定値を表示する表示パネル部や操作用のスイッチが設けられていてもよい。また、U字形フレーム210内に内蔵された電気回路部の機能として、有線または無線通信で測定値を外部出力する測定値出力機能が搭載されている。
【0025】
(自動操作部300)
自動操作部300は、モータ(駆動機器)310の動力によってスピンドル(可動要素)220の進退を自動化する。自動操作部300は、モータ310と、動力伝達部320と、を備える。
【0026】
モータ310としては、回転子の回転を出力軸に取り出す通常の電動モータ310でよい。モータ310は、制御パルスで正回転および逆回転の回転角(回転数)をある程度制御できることが好ましい。また、モータ310は、トルク検出機能を有していてもよい。(モータのトルク検出自体は、印加電流(印加電圧)の増減からトルクを求めるなど種々の方式が知られている。)モータ310としては、ステッピングモータを採用できる。(もちろんサーボモータや同期モータでもよいのであってモータ310の構造や駆動方式は特段限定されない。)
【0027】
動力伝達部320は、固着環321と、回転板322と、伝達リンク棒323と、を備える。
【0028】
固着環321は、シンブル部230に外嵌している。回転板322は、モータ310の回転子の回転軸と同期して回転するように設けられている。伝達リンク棒323は、固着環321と回転板322とを繋いでおり、伝達リンク棒323の一端が固着環321に固定され、他端が回転板322に固定されている。伝達リンク棒323は、スピンドル220の中心軸(測定軸)と平行である。回転板322がモータ310によって回転すると、その回転は伝達リンク棒323によって固着環321に伝達され、固着環321が回転板322と同期して回転する。
【0029】
(ロボットアーム部400)
ロボットアーム部400は、いわゆる多関節型のロボットアームであり、先端にワークWを保持するハンド部401(ワークW保持部)を有する。ロボットアーム部400は、加工されたワークWを掴み、ワークWを測定器部200の測定領域に運ぶ。
【0030】
ここで、本実施形態における測定対象物(ワークW)というのは、穴を有していて、その穴の中心線の方向が測定対象面に対して垂直になっている。例えば、ディスク状(円盤状)の砥石(ディスク研削砥石、ディスク切断砥石)がその一例であり、ディスク砥石Wの厚み(外寸、外側寸法)を本実施形態の自動測定装置100で検査測定する。なお、測定対象物(ワークW)としては、中心に貫通孔を有する比較的薄い円盤状の部材であることが好適ではあるが、これに限らない。穴は貫通孔でなくてもよいし、穴がワークWの中心にある必要もないし、ワークWを薄い偏平なものに限るものでもない。
【0031】
ハンド部401は、接離する方向に移動可能に設けられた二つのフィンガー410、420を有する。二つのフィンガーを第一フィンガー410と第二フィンガー420とする。
第一フィンガー410および第二フィンガー420は、互いに対向する側の面において、ワークWを両側から挟んで保持するための平坦な面を有している。互いに対向する側の面において第一フィンガー410の平坦面を第一把持面411とし、第二フィンガー420の平坦面を第二把持面421とする。さらに、第一フィンガー410において、第一把持面411は、第一把持面411に対して垂直に立設された柱状(円柱状)の保持軸412を有している。
【0032】
第二フィンガー420において、第二把持面421は、保持軸412を通すように設けられた穴422を有する。(第二フィンガー420の穴422は例えば図7の断面図に表れる。)
保持軸412をワークWの穴に通した状態で、第一フィンガー410と第二フィンガー420とを接近させてワークWを第一把持面411と第二把持面421とで挟み込むと、ハンド部401でワークWをしっかり固定して把持できる。また、保持軸412をワークWの穴に通した状態で、第一フィンガー410と第二フィンガー420とを互いに少し離間させると、ワークWが保持軸412から吊り下がったようになる。このとき、ワークWは、保持軸412に沿って平行移動(並進移動)できる。また、ワークWは、保持軸412に交差する仮想線に平行な仮想軸を回転軸とした回転の姿勢変更ができる。(ワークの回転を許容できる程度に保持軸の外周とワーク穴の内周との間には隙間ができるように、保持軸はワーク穴の径よりも少し小さめにしておく。)
【0033】
(制御ユニット部500)
図3は、制御ユニット部500の機能ブロック図である。
制御ユニット部500は、コンピュータ(CPU(中央処理装置)や所定プログラムを格納したROM、RAMを有するいわゆるコンピュータ端末)に組み込まれたハードまたはソフトウェアによって構成される。
制御ユニット部500は、測定器部200、自動操作部300およびロボットアーム部400と有線または無線で通信接続され、測定器部200、自動操作部300およびロボットアーム部400の動作を制御する。動作制御プログラム(測定用パートプログラム)がコンピュータ端末にインストールされ、プログラムの実行により測定動作の制御が実現される。
プログラムの供給方法は限定されず、プログラムを記録した(不揮発性)記録媒体をコンピュータに直接差し込んでプログラムをインストールしてもよく、記録媒体の情報を読み取る読取装置をコンピュータに外付けし、この読取装置からコンピュータにプログラムをインストールしてもよく、インターネット、LANケーブル、電話回線等の通信回線や無線によってコンピュータに供給されてもよい。
【0034】
制御ユニット部500は、測定動作制御部510と、ロボットアーム駆動制御部520と、中央制御部530と、を備える。
【0035】
測定動作制御部510は、自動マイクロメータ部(測定器部200と自動操作部300)110による測定動作を制御する。測定動作制御部510は、駆動制御部511と、測定値取得部512と、を備える。
【0036】
駆動制御部511は、自動操作部300のモータ(駆動機器)310の駆動を制御するものであり、スピンドル(可動要素)220の進退を制御する。測定値取得部512は、測定器部200の測定値を得る。すなわち、測定値取得部512は、変位検出部240の検出値を受信し、スピンドル220の変位(位置)から測定対象物(ワークW)の寸法を測定値として得る。
【0037】
ロボットアーム駆動制御部520は、ロボットアーム部400の動作を制御する。中央制御部530は、測定動作制御部510とロボットアーム駆動制御部520とを統合的に制御する。
【0038】
(測定動作)
自動測定装置100でワークWの寸法を自動測定する動作を説明する。
ワークWとしてディスク砥石Wを例とし、ディスク砥石Wの厚みを検査測定する。
図4は、一つのワークWを測定する測定動作のフローチャートである。
まず、ロボットアーム駆動制御部520からの動作指令により、ロボットアーム部400がディスク砥石Wをマイクロメータ200の測定領域に運搬する(運搬工程ST110)。
このとき、ロボットアーム部400は、図6図7に例示のように、ハンド部401でディスク砥石Wを把持する。
図6は、ハンド部401でワークWを把持している状態を示す図である。
図7は、ハンド部401でワークWを把持している状態の断面図である。
第一フィンガー410の保持軸412はディスク砥石Wの穴を通り、さらに、保持軸412は第二フィンガー420の穴422に通り、この状態で第一フィンガー410の第一把持面411と第二フィンガー420の第二把持面421とを接近させて、ディスク砥石Wを挟み込む。ハンド部401で挟んだディスク砥石Wをマイクロメータ200の測定領域に運搬する。
【0039】
図8は、ハンド部401によってワークWをマイクロメータ(測定器部)200の測定領域に差し入れた状態を例示する図である。
ディスク砥石Wの厚みを測るのだから、図8のように、薄いディスク砥石Wがマイクロメータ200の測定軸に対して垂直な姿勢になるようにする。言い換えると、ディスク砥石Wのおもて面から裏面に貫く方向をディスク砥石Wの厚み方向とすると、ディスク砥石Wの厚み方向がマイクロメータ200の測定軸と平行になるようにする。ハンド部401の第一フィンガー410の保持軸412もマイクロメータ200の測定軸に平行になるようにする。
【0040】
ディスク砥石Wはマイクロメータ200の測定領域のなかに運搬されればよいのであるが、なるべくアンビル211に近い方にディスク砥石Wを位置させておくのがよい。
【0041】
次に、ロボットアーム部400は、ハンド部401の第一フィンガー410と第二フィンガー420とを離間させて、ディスク砥石Wを両側から挟み込んでいる状態(把持状態)を解除する(リリース工程ST120)。すなわち、ハンド部401は、測定器部200の測定領域にディスク砥石Wがある状態で、保持軸412でディスク砥石Wを吊り下げた状態に保持する。これにより、ハンド部401は、ディスク砥石Wの平行(並進)移動および回転を許容するようにディスク砥石を保持する。図9は、ハンド部401がディスク砥石Wをリリースして、保持軸412でディスク砥石Wを吊り下げ状態に保持している様子を示す図である。このとき、第一フィンガー410の第一把持面411は、アンビル211よりもスピンドル220から遠い側に移動する。ディスク砥石Wは、保持軸412に載っているから保持軸412と一緒に移動することになる。すると、図9に例示のように、ディスク砥石Wはアンビル211に接触し、アンビル211にもたれかかったようになる。このようにして測定対象物(ディスク砥石W)が測定器部200(マイクロメータ200)の測定領域に自動運搬され、吊り下げられた状態で保持される。
【0042】
続いて、ディスク砥石Wを測定器部200(マイクロメータ200)で自動測定する。
駆動制御部511からの駆動指令により、モータ(駆動機器)310の駆動制御が行われ、これにより、スピンドル220が自動的に進退してディスク砥石Wの寸法(厚み)が自動的に取得される。
図5は、測定工程(ST200)の手順を示すフローチャートである。
測定工程(ST200)において、まずは、第一前進工程(ST210)を行う。第一前進工程(ST210)では、スピンドル220がディスク砥石Wに最初に接触するまで(最初の接触を検知できるまで)スピンドル220をアンビル211に向けて前進させる。第一前進工程(ST210)では、測定効率を向上させるため、高速にモータ310を駆動してスピンドル220をできるだけ速く移動させるのがよい。モータ310の回転速さは、例えば、180rpmである。(あるいは100rpm~200rpm程度である。)
【0043】
ここで、ディスク砥石Wは保持軸412に吊り下げられた状態であって、堅固に固定されているわけではない。
スピンドル220が前進していってディスク砥石Wに当たると、ディスク砥石Wを規制しているのは保持軸412との点接触における小さい摩擦力だけであるから、ディスク砥石Wは所定測定圧以下の力でスピンドル220に押されて平行移動(並進)も回転もする。そして、図10に例示のように、スピンドル220がディスク砥石Wをアンビル211に向けて押し、スピンドル220の測定面とアンビル211の測定面とで挟み込んだ状態となる。このとき、アンビル211にもたれるように傾いていたディスク砥石Wは、スピンドル220の測定面とアンビル211の測定面とに挟まれて立ち上がるように回転する姿勢変更をするだろう。
【0044】
先の運搬工程(ST110)、リリース工程(ST120)では、ディスク砥石W(ワークW)をアンビル211(固定要素)に近い位置に運搬し、さらにアンビル211に接触するようにリリースした。
これにより、ディスク砥石Wがスピンドル220に押されて移動する並進(平行)移動距離をできる限り小さくしている。理想的には、ディスク砥石Wがアンビル211に最初から接触していれば、ディスク砥石Wの並進(平行)移動距離がほぼゼロでよくなる。もしも、逆に、ディスク砥石Wをスピンドル220に近い方に運搬してしまうと、ディスク砥石Wはアンビル211に向けてスピンドル220によって長い距離を押されることになる。すると、保持軸412とディスク砥石Wとの摩擦力が小さいとしても何万回と測定を繰り返すなかでは保持軸412あるいはディスク砥石Wが損傷する事故が起きる懸念がある。したがって、運搬工程ST110でディスク砥石Wを測定領域に運ぶ際、および、リリース工程ST120でディスク砥石Wをリリースする際には、測定領域のなかでスピンドル220とアンビル211との真ん中よりはアンビル211寄りにディスク砥石Wをリリースすることが好ましいし、もっとも好ましくは、ディスク砥石Wをリリースしたときにディスク砥石Wがアンビル211に接触した状態になっていることである。
【0045】
さて、アンビル211の測定面とスピンドル220の測定面とでディスク砥石Wを挟み込んで、スピンドル220の測定面がディスク砥石Wの面に最初に密接したとき、スピンドル220がディスク砥石Wに接触したことが検知される(ST220:YES)。スピンドル220がディスク砥石Wに接触したことは、例えば、モータ310の印加電流(印加電圧)からモータ310トルクを求め、トルクが所定値を越えたらスピンドル220がディスク砥石Wに接触したとしてもよい。あるいは、変位検出部240による検出値をモニターし、駆動信号を送っているのに検出値の増加が停止したら、スピンドル220がディスク砥石Wに接触したとしてもよい。スピンドル220がディスク砥石Wに接触したことを検知した場合(ST220:YES)、第一前進工程(ST210)を停止して、第一後退工程(ST230)に移行する。
【0046】
第一後退工程(ST230)では、スピンドル220をわずかに逆方向に後退させる。これにより、第一前進工程(ST210)でスピンドル220がディスク砥石Wに接触した後、その勢いでスピンドル220がディスク砥石Wに食い込むのを回避する。第一後退工程(ST230)でスピンドル220を後退させる距離は極僅か、例えば0.01mm-0.02mm位でよい。第一後退工程(ST230)でスピンドル220を後退させる速さはできる限り速くしてもよい。例えば、スピンドル220の回転速さを100rpm-200rpm、進む速さでいうと1mm/s-2mm/sとしてもよい。
【0047】
ここでは、第一後退工程としてスピンドル220を後退させているが、後退に代えて、停止としてもよい。
【0048】
第一後退工程(ST230)でスピンドル220をわずかに戻した後、第二前進工程(ST240)によってスピンドル220を再び前進させる。第二前進工程(ST240)ではゆっくりと(低速、微動で)スピンドル220を前進させる。
【0049】
第二前進工程(ST240)におけるスピンドル220の送り速さは、低速(微動)であることが好ましい。例えばスピンドル220がネジ送りとして、スピンドル220の回転速さを10rpm-20rpmとする。スピンドル220の進む速さでいうと、0.1mm/s-0.2mm/sとしてもよい。
【0050】
スピンドル220の測定面とアンビル211の測定面とでディスク砥石Wの表裏面をしっかり密着して挟むことでディスク砥石Wの位置および傾きが自動(自律)調整される。そして、ラチェット機構(定圧機構)が作動する。すなわち、ラチェット機構(定圧機構)が作動するようにモータ310がシンブル部230を回転駆動することにより、スピンドル220とアンビル211とがディスク砥石Wの表裏面に所定測定圧で当たった状態となる。第二前進工程(ST240)では、予め決まった分だけモータを駆動させるものとし、つまり、先の第一後退工程(ST230)で戻した分に相当する距離分スピンドルを前進させ(測定面再接触工程(ST241))、さらに、定圧機構が確実に作動する分だけモータ(シンブル部)を回転させる(測定圧印加工程(ST242))。これにより、定圧機構の作動が毎回同じにコントロールでき、アンビル211とワークWとの接触(密接)、スピンドル220とワークWとの接触(密接)が確実になり、そして、アンビル211およびスピンドル220からワークWにかかる測定圧が毎回同じになる。
【0051】
第二前進工程(ST240)は、ディスク砥石Wの姿勢調整という機能があるのでワーク姿勢の自動(自律)調整工程と言い換えてもよい。
【0052】
ワーク(ディスク砥石)Wは、アンビル211とスピンドル220とによって所定測定圧で挟まれることにより、図9のようにアンビル211にもたれて傾斜していた姿勢から、図10のように立ち上がった姿勢になる。図9の状態のときはワーク(ディスク砥石)Wの穴の内周面は保持軸412に接触していたが、ワーク(ディスク砥石)Wが回転して図10のように起立したとき、ワーク(ディスク砥石)Wの穴の内周は保持軸412から離れる。したがって、ワーク(ディスク砥石)Wがアンビル211とスピンドル220とによって所定測定圧で挟まれたとき(図10)、実質的に、ワーク(ディスク砥石)Wはアンビル211およびスピンドル220のみによって支えられている。このとき、ワーク(ディスク砥石)Wには保持軸412から余計な力が掛からず、ただ、アンビル211とスピンドル220とによって所定測定圧でしっかり挟まれているだけである。ワークの自律的な姿勢調整の過程で、ワークがアンビル211とスピンドル220とに密着して所定測定圧がしっかり掛かると同時に、ワークが保持軸から離れてワークに所定測定圧以外の余計な力が掛からないようにもなる。なお、ワーク(ディスク砥石)Wがアンビル211とスピンドル220とによって所定測定圧で挟まれたとき(図10)にワークが保持軸から離れることは理想的な一実施形態なのであって、本発明に必須というわけではない。
【0053】
この状態で変位検出部240がスピンドル220の変位(位置)を検出する。測定値取得部512は、スピンドル220の変位(位置)からディスク砥石Wの厚み(外寸)の測定値を得る(ST250)。測定値を取得した後、第二後退工程(ST260)においてスピンドル220を後退させる。これで一つのディスク砥石Wの測定値を得た。
【0054】
測定が終わったディスク砥石Wをハンド部401で再度把持し、ワークを運搬(ST300)し測定領域から外す。これで一つのディスク砥石Wの測定が終了である。全てのワークW(ディスク砥石W)の測定が完了するまでST110に戻ってST110-ST300を繰り返す。
【0055】
このような本実施形態の自動測定システム100によれば、ワークWの測定作業が自動化される。本実施形態の自動測定装置100は、接触式の小型の測定器(小型の測定工具)であるマイクロメータ200を自動化するものである。まず、マイクロメータ200は接触式であるので、測定安定性が極めて高い。また、マイクロメータ200は一般的な工場には既にあると期待できるものである。マイクロメータ200の歴史は長く、世の中にも広く普及しており、測定作業者にとって最も馴染みがある測定器といってもよい。作業者はマイクロメータ200の校正作業など必要な取り扱いに十分に習熟しており、測定器本体であるマイクロメータ200の取り扱いのために改めて難しい作業手順を覚えたり、訓練したりする必要はほぼない。したがって、自動測定の導入にあたり費用や手間を極力抑えることができ、人手不足の解消に資するところ大である。
【0056】
これまでにも自動測定装置100は種々提案されてきたが、その多くは非接触式の測定工具を用いるものであった。例えば、エアマイクロメータやレーザースキャンマイクロメータ等を用いるものが多かった。しかし、このような非接触式測定機器は極めて高価であり、また、メンテナンスがやや難しい。この点、マイクロメータ200を自動化できる本実施形態の自動測定装置100は安価でかつ扱いやすいという利点がある。
【0057】
これまで接触式の小型の測定器(小型の測定工具)の代表であるマイクロメータ200の自動化が難しかった理由の1つは、ワークWを両側から正しく挟んで接触面(測定面)をなじませることが難しかった点にある。この点、本実施形態では、ワークWを保持軸412に吊り下げた状態とし、スピンドル220に押されたときに並進(平行)移動と回転とで位置および姿勢を変更できるようにしている。また、接触検知と定圧機構とを利用し、スピンドル220の前進と後退を数段階で行ない、特に、測定面(接触面)をしっかりなじませて(密着させて)、所定の測定圧を掛ける工程を行なっている(ST240)。通常、手動でシンブルを回転させる際は、一定の速さで回転させて、そのまま一定の回転で定圧をかけて測定するものであり、バック(後退)したり、定圧機構をゆっくりと高速との二段階で作動させたりするようなことはないが、条件を変えた繰り返しの実験により手動操作とは違う制御工程を工夫したことで自動測定でも安定した測定値を得られるようになった。これによりマイクロメータ200の自動化が実現できた。また、モータ制御によって常に同じ動きでワークWを測定することができるようになるので、作業者ごとの習熟度や動きの癖で測定値に差が生じるような問題もない。
【0058】
(第二実施形態)
上記第一実施形態では、ワークWがスピンドル220に押されたときにワークWが保持軸412を摺動(スライド)できることを想定しているが、ワークWに比較的重量や厚みがあったりすると、ワークWと保持軸412との間の摩擦力が大きくなって、自律的なワークWの位置調整および姿勢調整がうまくできない可能性もある。そこで、第二実施形態として、ワークWを保持する保持軸412にスライド補助具としてのリニアブッシュ430を設ける。さらに、スピンドル220の測定面とアンビル211の測定面とでワークWの表裏面を密着して挟んだときにワークWの位置調整および姿勢調整を促進するように、保持軸412を軸方向に往復移動させる。
【0059】
図11は、第二実施形態を示す図である。
図11において、第一実施形態のハンド部401との対比でいうと、第二実施形態におけるワーク保持部は、第一フィンガー410の対向グリッパである第二フィンガー420を省略している。第一フィンガー410と第二フィンガー420とで挟み込まないのは、ワークWが比較的重く、自重だけでふらつかずに安定すると考えられるためである。もちろん、ワーク保持部(ハンド部401)が第一実施形態と同様に第二フィンガー420を備えることを排除しない。
【0060】
保持軸412には、リニアブッシュ430が設けられている。リニアブッシュ430自体は低摩擦転がり直動案内機構として知られている。リニアブッシュ430は、外筒部431と、外筒部431の内部に保持されたボールベアリング432と、を有している。そして、ワークWとして厚めのディスク砥石Wをワーク保持部で保持する場合、ワークWの穴をリニアブッシュ430の外筒部431に引っ掛けて、リニアブッシュ430の外筒部431でワークW(厚めのディスク砥石W)を保持する。
【0061】
図12図13は、第二実施形態におけるワーク測定動作のフローチャートである。
図12において、第二実施形態では、第二フィンガー420を省略したので、第一フィンガー410と第二フィンガー420とを開くリリース工程は省略している。
図13の測定工程において、ST210-ST260は第一実施形態で説明したものと同じである。
第二実施形態でも、測定面再接触工程(ST241)において、再度スピンドル220をゆっくり前進させてスピンドル220とアンビル211とでディスク砥石Wを挟み込み、ディスク砥石Wの位置および傾きが自動(自律)調整されるようにする。このとき、第一フィンガー410(つまり保持軸412)を軸線方向に往復(図11中の矢印A)させることにより(保持軸駆動工程ST243)、リニアブッシュ430と保持軸412との滑り移動を促進する。これにより、スピンドル220からディスク砥石Wに掛かる小さな圧力(所定測定圧以下の力)によってディスク砥石Wの位置および傾きが自動(自律)調整されることを促進する。そして、定圧機構が作動して所定測定圧がディスク砥石Wに印加できたことを検知したら、保持軸駆動を停止し、測定値を取得する(ST250)。
【0062】
ここでは、保持軸412を軸線方向に往復移動させるのは第一フィンガー410であるから、第一フィンガー410により保持軸駆動手段が構成されている。あるいは、第一フィンガー410を含むハンド部401により保持軸駆動手段が構成されていると解釈されてもよい。
【0063】
この第二実施形態によれば、やや重量があるワークWであっても、ディスク砥石Wの位置および傾きが自動(自律)調整されるようにし、正しい測定圧で正しくワークWを測定することができるようになる。
【0064】
(変形例1)
ここで、第二前進工程(ST240)を細分すれば、先の第一後退工程(ST230)で戻した分に相当する距離分スピンドル220を前進させる工程(測定面再接触工程(ST241))と、さらに、定圧機構が確実に作動する分だけモータ(シンブル部)を回転させる工程(測定圧印加工程(ST242))と、に分けられる。上記第二実施形態の説明では、第二前進工程(ST240)(測定面再接触工程+測定圧印加工程)の間は保持軸を駆動(往復移動)し続けることを想定している。変形例1としては、図14のフローチャートに例示するように、第二前進工程(ST240)のなかの前半に相当する測定面再接触工程(ST241)に同期して保持軸駆動工程(ST243)を実行し、定圧機構を作動させて測定圧を印加するとき(測定圧印加工程ST242)には保持軸駆動を停止するとしてもよい。
【0065】
(変形例2)
あるいは、図15のフローチャートに例示するように、保持軸駆動を停止した状態で、測定値を取得(ST250)する直前に、再度、決められた回数分定圧機構を作動させるようにモータ(シンブル部)を回転させるようにしてもよい(測定圧印加工程ST244)。ワークの重量やリニアブッシュの摩擦との兼ね合いなど総合的に考えて保持軸駆動を停止するタイミング、定圧機構を作動させるタイミングや回数を設定するようにする。
【0066】
(変形例3)
第二実施形態では、測定工程において、リニアブッシュ430と保持軸412との滑り移動を促進するように保持軸412を往復移動するとしたが、保持軸412の往復移動を省略してもよい。保持軸412を往復移動させてリニアブッシュ430の移動すなわちワークWの移動を促進するのは、静摩擦よりも動摩擦の方が小さいと期待できるからである。したがって、ワークWの重量がそこまで重くなくて、リニアブッシュ430と保持軸412との静摩擦力が設定された所定測定圧よりも十分小さいのであれば、保持軸412の往復移動は省略してもよい。
【0067】
(変形例4)
第二実施形態、変形例1,2では、保持軸を軸線方向に往復移動させるとしたが、変形例4としては、保持軸を軸線方向に往復移動させることに代えて、保持軸に微小振動を与えるとしてもよい。(微小)振動の方向としては、保持軸の軸線方向に沿う方向の微小振動でもよいし、軸線方向に対して交差(直交)する方向の微小振動としてもよい。この場合、保持軸駆動手段として保持軸または第一フィンガーに振動モータ等を設けてもよい。
【0068】
(変形例5)
第二実施形態、変形例1-4では、保持軸にリニアブッシュ(スライド補助具)を設けるとしたが、変形例5としては、リニアブッシュを省略してもよい。すなわち、保持軸によって直にワークを吊り下げ支持し、さらに、保持軸(第一フィンガー)を軸線方向に往復移動させるあるいは微小振動させるとしてもよい。ワークが軽かったりワークの厚みが薄かったりする場合は、保持軸に直接ワークを吊り下げるようにしても保持軸とワークとの摩擦はそれほど大きくはない。そして、保持軸を往復移動あるいは微小振動を加えることで、ワークの位置および姿勢変更を促進し、スピンドルおよびアンビルの測定面とワークとの密接を促進できる。
【0069】
本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
測定器としては、マイクロメータ200を例に説明したが、マイクロメータヘッド、ノギスとしてもよい。
ディスク砥石のように寸法を検査測定したい測定対象物そのものに穴があれば、そのワークの穴に保持軸を通してワークを保持することができる。
もしも、寸法を検査測定したい測定対象物そのものに穴がない場合、リング治具を用意し、リング治具を測定対象物に取り付けて、リング治具の穴に保持軸を通すとしてもよい。このとき、治具(リング治具)と測定対象物とを合わせてワークと解釈されたい。リング治具600というのは、例えば図16に例示のように、一端にリング部610を有し他端にクリップのような取付部620を有し、リング部610と取付部620とを連結部630で連結したもので、取付部(クリップ部)を検査測定対象物の縁に取り付けることで穴のない検査対象物に保持用の穴(リング)を付加できるものである。取付部620は、クリップの他、吸盤、磁石、付け外し可能な粘着材などでもよい。
【符号の説明】
【0070】
自動測定装置 100
自動測定器部(自動マイクロメータ部) 110
測定器部(マイクロメータ) 200
U字フレーム 210
アンビル 211
スピンドル 220
シンブル部 230
変位検出部 240
自動操作部 300
モータ 310
動力伝達部 320
固着環 321
回転板 322
伝達リンク棒 323
ロボットアーム部 400
ハンド部 401
第一フィンガー 410
第一把持面 411
保持軸 412
第二フィンガー 420
第二把持面 421
穴 422
リニアブッシュ 430
外筒部 431
ボールベアリング 432
制御ユニット部 500
測定動作制御部 510
駆動制御部 511
測定値取得部 512
ロボットアーム駆動制御部 520
中央制御部 530
リング治具 600
リング部 610
取付部 620
連結部 630
ディスク砥石(ワーク) W
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図15
図16