IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2024-112769液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法
<>
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図1
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図2
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図3
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図4
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図5
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図6
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図7
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図8
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図9
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図10
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図11
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図12
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図13
  • 特開-液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112769
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20240814BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240814BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C09D11/322
H01M10/0562
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211117
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2023017333
(32)【優先日】2023-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】野口 宗
(72)【発明者】
【氏名】東 隆司
(72)【発明者】
【氏名】今永 之弘
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 綾
(72)【発明者】
【氏名】大屋 彼野人
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 俊也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 重雄
(72)【発明者】
【氏名】曽根 雄司
(72)【発明者】
【氏名】李 木馨
【テーマコード(参考)】
4J039
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
4J039AD03
4J039AD04
4J039AD09
4J039AD15
4J039BA13
4J039BA19
4J039BA21
4J039BA29
4J039BA30
4J039BA32
4J039BA33
4J039BA35
4J039BC12
4J039BE01
4J039BE22
4J039EA44
4J039GA24
5G301CD01
5H029AJ14
(57)【要約】
【課題】インクジェット法による吐出性能に優れた液体組成物の提供。
【解決手段】固体電解質と、分散媒とを含み、前記分散媒は、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、環を有する炭化水素又はフェニルエーテルである液体組成物である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質と、分散媒とを含み、
前記分散媒は、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、環を有する炭化水素又はフェニルエーテルであることを特徴とする液体組成物。
【請求項2】
前記分散媒は、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、環を有する炭化水素である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記分散媒は、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、フェニルエーテルである請求項1に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記分散媒が、水素原子以外の原子の数が10以下で構成されている請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項5】
前記分散媒が有する環は芳香環である請求項2に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記分散媒の沸点が、165℃以上である請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項7】
前記固体電解質の含有量は、前記液体組成物に対して50質量%以下である請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項8】
前記分散媒の含有量は、前記液体組成物に対して40質量%以上である請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項9】
さらにバインダーを含む請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項10】
さらに分散剤を含み、
前記分散剤は、イオン性吸着基を有する請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項11】
インクジェット用インク組成物である請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項12】
前記固体電解質のモード径が1.8μm以上である請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項13】
請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器。
【請求項14】
請求項13に記載の収容容器と、インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された液体組成物を吐出する吐出手段と、を有することを特徴とする固体電解質含有層の製造装置。
【請求項15】
インクジェットヘッドを用いて請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物を吐出する吐出工程を含むことを特徴とする固体電解質含有層の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の固体電解質含有層の製造方法により固体電解質含有層を形成する工程を含むことを特徴する電気化学素子の製造方法。
【請求項17】
前記電気化学素子が二次電池である請求項16に記載の電気化学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物、収容容器、固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法、及び電気化学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子、例えばリチウムイオン二次電池等の二次電池は、携帯機器、ハイブリット自動車、電気自動車等へ搭載され、需要が拡大している。また、各種ウェアラブル機器や医療用パッチに搭載する薄型電池に対するニーズが高まってきており、二次電池に対する要求が多様化している。その中でも固体電解質を利用した全固体電池は、安全性が高く急速充電が可能、高エネルギー密度などの利点があり、実用化が期待されている。
【0003】
例えば、固体電解質粒子を含む粒子状の固体電解質であって、前記固体電解質粒子は、少なくともSとLiとを含み、前記固体電解質粒子の粒径の平均が1.5μm以下、前記固体電解質粒子の90%以上の粒子の粒径が2.5μm以下である固体電解質が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、少なくとも硫黄元素及びリチウム元素を含み、レーザー回折式粒度分布測定方法により測定される体積基準平均粒子径が0.5μm以下であり、及び90%以上の粒子の体積基準粒子径が1.5μm以下である固体電解質微粒子が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
一方、近年では、材料コスト削減ならびに環境負荷低減の観点から、間欠塗工が容易であるインクジェット印刷を用いて電極合材層用液体組成物を塗布する製造方法が注目されている。しかしながら、インクジェット印刷は、一般に、低粘度な液体組成物の塗布を対象とした製造方法であり、高粘度タイプと謳われるインクジェットヘッドであっても液体組成物の粘度上限が200mPa・sと、従来のスラリー状電極合材層用液体組成物と比べて1/10~1/100倍も低い粘度水準が要求される。また、分散媒としては、成膜工程での乾燥やインクジェットヘッドからの吐出工程から、沸点範囲に制限がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、インクジェット法による吐出性能に優れた液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体組成物は、固体電解質と、分散媒とを含み、前記分散媒は、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、環を有する炭化水素又はフェニルエーテルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、インクジェット法による吐出性能に優れた液体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態の固体電解質含有層の製造方法の一例を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態の固体電解質含有層の製造装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態の固体電解質含有層の製造装置の他の一例を示す模式図である。
図4図4は、本実施形態の電極の製造方法の一例を示す模式図である。
図5図5は、液体吐出装置の変形例の一例を示す模式図である。
図6図6は、本実施形態の電極の製造方法の一例を示す模式図である。
図7図7は、液体吐出装置の変形例の一例を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態の負極の一例を示す断面図である。
図9図9は、本実施形態の正極の一例を示す断面図である。
図10図10は、本実施形態の固体電解質層と電極との積層体の一例を示す断面図である。
図11図11は、本実施形態の電極の他の一例を示す断面図である。
図12図12は、本実施形態の電気化学素子に用いる電極素子の一例を示す断面図である。
図13図13は、本実施形態の電気化学素子の一例を示す断面図である。
図14図14は、本実施形態の電気化学素子の一例である全固体電池を搭載した移動体の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(液体組成物)
本発明の液体組成物は、固体電解質と、分散媒とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0011】
本発明の液体組成物は、例えば、二次電池の固体電解質層形成用などとして用いることができる。また、前記二次電池の固体電解質層形成用液体組成物は、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池の固体電解質層を形成する際に用いることができる。
【0012】
<固体電解質>
固体電解質としては、電子絶縁性を有し、かつ、イオン伝導性を示すものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本明細書において電子絶縁性を有するとは、固体電解質層を介して正極と負極を対向させた際に短絡しない状態であることを表し、イオン伝導性を示すとは固体電解質層を介して正極と負極を対向させた際に電位差を与えるとイオンのみが移動することを表す。
【0013】
固体電解質の具体的な化合物例としては、例えばLixaLayaTiO〔xa=0.3~0.7、ya=0.3~0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbMbbmbnb(MbbはAl、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Ti、Ge、In、Snの少なくとも1種以上の元素でありxbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。)、LixcycMcczcnc(MccはC、S、Al、Si、Ga、Ge、In、Snの少なくとも1種以上の元素でありxcは0≦xc≦5を満たし、ycは0≦yc≦1を満たし、zcは0≦zc≦1を満たし、ncは0≦nc≦6を満たす。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3-2xe)MeexeDeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO-LiSO、LiO-B-P、LiO-SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4-3/2w)(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2-xhSiyh3-yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)などが挙げられる。
またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD1(D1は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)などが挙げられる。
また、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
【0014】
また、硫化物固体電解質も、高いイオン伝導性を有する観点で好ましく、高い可塑性を有することで、固体電解質粒子間同士、あるいは固体電解質および活物質間の間で、良好な界面を形成することができる点で、硫化物固体電解質がより好ましい。
【0015】
硫化物固体電解質としては、例えば、結晶系硫化物固体電解質とガラス系固体電解質に大別できる。結晶系硫化物固体電解質としては、例えば、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、Li9.612、Li、Li9.81Sn0.812.1912、Li9.42Si1.022.19.962.04、Li10Ge(P1-xSb12(0≦x≦0.15)、Li10SnP12、Li10.35[M11-xM21.351.6512(M1,M2=Si,Ge,Sn,As,Sbのいずれか,0≦x≦0.15)、Li11SiPS12、Li11AlP12、Li3.45Si0.450.55、LiPSX(X=Cl,Br,I)、LiPS(X=Cl,Br,I)、Li5.5PS4.5Cl1.5、Li5.35Ca0.1PS4.5Cl1.55、Li6+xSb1-xI(M=Si,Ge,Sn,0≦x≦1)、LiI、γ-LiPS、LiMS4(M=Ge,Sn,As)、Li4-xSn1-xSbxS(0≦x≦0.15)、Li4-xGe1-xPxS(0≦x≦0.15)、Li3+5x1-x(0≦x≦0.3)などが挙げられる。
【0016】
ガラス系硫化物固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-P、LiS-P-LiCl、LiS-SiS、LiS-SiS-P、LiS-SiS-Al、LiS-SiS-LiMO(M=Si,P,Ge)などが挙げられる。またガラス系硫化物固体電解質の一部が結晶化した、Li11ガラスセラミクスなども用いることができる。ここで、ガラス系硫化物固体電解質の各原料の混合比は問わない。
【0017】
本発明の液体組成物に用いる固体電解質の最大粒子径としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェット印刷用途を想定した場合には、インクジェットヘッドのノズル径よりも小さいことが好ましく、インクジェット吐出性をより高めることができる点で、インクジェットヘッドのノズル径よりも十分小さいことが好ましい。具体的には、液体組成物に含まれる固体電解質の最大粒子径と、インクジェットヘッドのノズル径との比(液体組成物に含まれる固体電解質の最大粒子径/インクジェットヘッドのノズル径)が、0.8以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。固体電解質の最大粒子径がこれらの範囲内にあると、液体組成物の吐出安定性が向上する。例えば液滴観察装置(EV1000(株式会社リコー製))の場合、ノズル径は40μmであり、このとき、液体組成物に含まれる固体電解質の最大粒子径は32μm以下であることが好ましく、24μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。なお、最大粒子径とは、計測された前記液体組成物における固体電解質の粒度分布の中で分布の最大値である径である。
固体電解質の最大粒子径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置マスターサイザー3000(マルバーン社製)などが挙げられる。
【0018】
本発明における固体電解質のモード径としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上3μm以下がより好ましい。固体電解質のモード径が0.1μm以上10μm以下であると、液体組成物を液体吐出方法により吐出する場合に、吐出不良を起こしにくい。前記好ましい範囲の中でも、前記モード径が1.8μm以上であると、イオン導電率も高くなりやすく、特に好ましい。なお、モード径とは、計測された前記液体組成物における固体電解質の粒度分布の中で分布の極大値である径である。
【0019】
本発明における固体電解質のD90としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出不良を起こしにくい点で、15μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましい。なお、D90とは、体積基準の累積90%粒子径である。
【0020】
固体電解質のモード径及びD90の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置マスターサイザー3000(マルバーン社製)などが挙げられる。
【0021】
前記固体電解質の液体組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、生産性の点から液体組成物全量に対して20質量%以上であることが好ましく、インクジェット法による吐出性の点から液体組成物全量に対して50質量%以下であることが好ましい。
【0022】
<分散媒>
前記分散媒は、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、環を有する炭化水素又はフェニルエーテルである。前記分散媒は、固体電解質を劣化させることを抑えることができる。また、沸点がある程度高いため、インクジェットヘッド上での乾燥を抑えられる点で、好ましい。
前記分散媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記分散媒は、固体電解質含有層の形成の際において、分散媒を揮発、乾燥させる必要があるため、分散媒の沸点をある程度抑えられる水素原子以外の原子の数が10以下で構成されている分散媒が好ましい。
【0024】
前記分散媒が有する環は、吐出性やデキャップ性のバランスが良い点で、芳香環であることが好ましい。
【0025】
前記分散媒の沸点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、デキャップ性がより優れる点で165℃以上が好ましく、乾燥性がより優れる点で190℃未満が好ましい。なお本明細書及び特許請求の範囲において分散媒の沸点とは、1気圧下で測定した沸点である。
【0026】
前記水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、環を有する炭化水素としては、特に制限はなく、目的に応じて芳香族もしくは脂肪族のものから適宜選択することができる。例えば、tert-ブチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、イソブチルベンゼン、ビニルトルエン、p-シメン、ジイソプロピルベンゼン、テトラリン、α-ピネン、β‐ピネン、カレン、p-メンタン、α‐テルピネン、リモネン、デカリン、メチルシクロペンタジエンダイマー、ビシクロヘキシル、メシチレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、フェニルエーテルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、フェネトール、4-メチルアニソール、アリルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
前記分散媒の液体組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェット法による吐出性の点から液体組成物全量に対して40質量%以上であることが好ましく、生産性の点から液体組成物全量に対して80質量%以下であることが好ましい。
【0029】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散剤、バインダーなどが挙げられる。
【0030】
<<分散剤>>
前記分散剤は、固体電解質を分散させるものである。
前記分散剤としては、固体電解質を分散できるものであれば、特に制限はないが、分散性の観点でイオン性吸着基をもつ分散剤が好ましい。また、前記分散剤は、固体電解質に対して反応しづらい材料であることが好ましい。本明細書及び特許請求の範囲において、固体電解質に対して反応しづらい材料とは、固体電解質と、材料と、を混合し、一定時間放置した場合に固体電解質のイオン導電率の変化が小さい材料のことをいう。前記イオン導電率の変化率としては、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0%であることが更に好ましい。
【0031】
前記分散剤としては、従来公知ものあるいは市販されているものが適宜使用できる。例えば、ポリエチレン系、ポリエチレンオキシド系、ポリプロピレンオキシド系、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール系、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子分散剤、ポリリン酸塩分散剤等の無機分散剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記分散剤の液体組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、固体電解質に対して、上限値としては5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、下限値としては0.1質量%以上であることが好ましい。前記分散剤の含有量が前記好ましい範囲内であると、固体電解質の表面機能を損なうことなく固体電解質の分散安定性を担保することができる。
【0033】
<<バインダー>>
前記バインダーは、不揮発成分同士を結合するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記バインダーは、前記分散媒中に分散していてもよく、前記分散媒中に溶解していてもよい。
【0034】
前記バインダーとしては、従来公知ものあるいは市販されているものが適宜使用できる。例えば、ポリ(ブチルメタクリラート)(PBMA)、ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリスチレン(SBS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記バインダーの液体組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100質量部の固体電解質に対して、0.1質量部~10質量部が挙げられる。
【0036】
<液体組成物の粘度及び固形分濃度>
[粘度]
前記液体組成物の粘度としては、液体吐出ヘッドから吐出することが可能な粘度であることが好ましく、上限値としては、100mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることが更に好ましい。また、下限値としては、5mPa・s以上であることが好ましい。上記下限値以上の粘度とすることで、塗布した液体組成物を乾燥させる工程で流動が抑制され、乾燥による膜厚ムラ、及び、組成ムラが抑制される。
【0037】
前記液体組成物の粘度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度計(Brookfield製、DV2T)を用い、回転数50rpmで、室温(25℃)にて測定することができる。
【0038】
[固形分濃度]
本明細書において、液体組成物の「固形分濃度」とは、液体組成物の総質量に対する、溶媒を除く含有成分の質量の質量百分率である。前記溶媒を除く含有成分とは、120℃、真空下において、重量減少を生じない成分のことをいい、固体電解質の他、分散剤などの粘弾性体も含まれる。
【0039】
前記液体組成物の固形分濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0040】
<液体組成物の製造方法>
液体組成物は、上記各成分を上記分散媒中に溶解又は分散させることにより製造することができる。
具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と上記分散媒とを混合することにより、液体組成物を調製することができる。
【0041】
前記液体組成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電気化学素子における電極合材層や固体電解質層等の固体電解質含有層を形成する材料として好適に用いることができる。例えば、二次電池の固体電解質層形成用液体組成物として、好適に用いることができる。
【0042】
前記液体組成物は、インクジェット用インク組成物として、好適に用いることができる。
【0043】
(電極)
本実施形態に関する電極(二次電池用の電極と称することもある。)は、電極基体と、電極基体上に形成された電極合材層と、を有する。前記電極合材層は、本実施形態の液体組成物を用いて形成されている。なお、電極合材層中に含まれている各成分は、上記液体組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、液体組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
本実施形態の電極では、本実施形態の液体組成物を使用しているので、電極合材層を集電体上に良好に形成することができる。
【0044】
<電極基体(集電体)>
電極基体を構成する材料としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、電極基体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などからなる電極基体を用い得る。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0045】
<電極の製造方法>
本実施形態の電極の製造方法は、本実施形態の液体組成物を、電極基体上に塗布する工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0046】
液体組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、インクジェット法やスプレーコート法、ディスペンサ法などの液体吐出方法や、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法が特に好ましい。インクジェット法を用いると、電極を非接触、自由な形状で製造できる。その結果、電極の生産過程における型抜きによる活物質の損失が少ない等の効果がある。この際、液体組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上の液体組成物の厚みは、乾燥して得られる電極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
【0047】
集電体上の液体組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上の液体組成物を乾燥することで、集電体上に電極合材層を形成し、集電体と電極合材層とを備える電極を得ることができる。
【0048】
(固体電解質層と電極との積層体)
本実施形態に関する固体電解質層と電極との積層体は、電極と、電極上に形成された固体電解質層と、を有する。前記固体電解質層は、本実施形態の液体組成物を用いて形成されている。なお、固体電解質層中に含まれている各成分は、上記液体組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、液体組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
本実施形態の積層体では、本実施形態の液体組成物を使用しているので、固体電解質層を電極上に良好に形成することができる。
なお、固体電解質層は、電極上に形成する以外は、上述した電極の製造方法と同様にして、形成することができる。
【0049】
(収容容器)
本発明の収容容器は、上記した本発明の液体組成物が収容された収容容器である。
前記収容容器の形状、構造、及び大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
以下では特にインクジェット法による固体電解質含有層の製造方法について説明する。
【0051】
(固体電解質含有層の製造装置、固体電解質含有層の製造方法)
本発明の固体電解質含有層の製造装置は、上記した本発明の収容容器と、インクジェットヘッド(「液体吐出ヘッド」と称することもある。)を用いて前記収容容器に収容された液体組成物を吐出する吐出手段と、を含み、必要に応じて、更にその他の構成を含む。
本発明の固体電解質含有層の製造方法は、インクジェットヘッドを用いて上記した本発明の液体組成物を吐出する吐出工程を含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
前記固体電解質含有層は、使用する固体電解質の種類に応じて、様々な層とすることができ、例えば、固体電解質層、電極合材層が挙げられる。
【0052】
<吐出手段、吐出工程>
前記吐出手段は、インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された液体組成物を吐出する手段である。
前記吐出工程は、インクジェットヘッドを用いて前記液体組成物を吐出する工程である。
前記吐出により、対象物上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。
前記対象物(以下、「吐出対象物」と称することがある。)としては、固体電解質含有層を形成する対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電極基体(「集電体」と称することもある。)、活物質層などが挙げられる。
【0053】
<その他の構成、その他の工程>
前記固体電解質含有層の製造装置におけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段などが挙げられる。
前記固体電解質含有層の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱工程などが挙げられる。
【0054】
-加熱手段、加熱工程-
前記加熱手段は、前記吐出手段により吐出された液体組成物を加熱する手段である。
前記加熱工程は、前記吐出工程で吐出された液体組成物を加熱する工程である。
前記加熱により、前記液体組成物層を乾燥させることができる。
【0055】
[基材に液体組成物を直接的に付与することで固体電解質含有層を形成する実施形態]
図1は、本実施形態に係る固体電解質含有層の製造方法の一例を示す模式図である。
液体組成物12Aは、液体吐出装置300のタンク307に貯蔵されており、タンク307からチューブ308を経由して液体吐出ヘッド306に供給される。なお、液体吐出装置の個数は、1個に限定されず、2個以上であってもよい。
固体電解質含有層を製造する際には、ステージ310上に、電極11’を設置した後、液体吐出ヘッド306から、液体組成物12Aの液滴を電極11’に吐出する。このとき、ステージ310が移動してもよく、液体吐出ヘッド306が移動してもよい。吐出された液体組成物12Aは固体電解質含有層12’となる。
また、液体吐出装置300は、液体組成物12Aが液体吐出ヘッド306から吐出されていない際に、乾燥を防ぐため、ノズルをキャップする機構が設けられていてもよい。
【0056】
図2は、本実施形態の固体電解質含有層の製造方法を実現するための固体電解質含有層の製造装置の一例を示す模式図である。
【0057】
図2の固体電解質含有層の製造装置は、上記した液体組成物を用いて固体電解質含有層を製造する装置である。固体電解質含有層の製造装置は、吐出対象物を有する印刷基材4上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する工程を含む吐出工程部10と、液体組成物層を加熱して固体電解質含有層を得る加熱工程を含む加熱工程部30を備える。固体電解質含有層の製造装置は、印刷基材4を搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、吐出工程部10、加熱工程部30の順に印刷基材4をあらかじめ設定された速度で搬送する。
前記電極基体や活物質層などの吐出対象物を有する印刷基材4の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0058】
吐出工程部10は、印刷基材4上に液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段であるインクジェット印刷法に応じた任意の印刷装置1aと、液体組成物を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された液体組成物を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。
【0059】
収容容器1bは液体組成物7を収容し、吐出工程部10は、印刷装置1aから液体組成物7を吐出して、印刷基材4上に液体組成物7を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、固体電解質含有層の製造装置と一体化した構成であってもよいが、固体電解質含有層の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、固体電解質含有層の製造装置と一体化した収容容器や固体電解質含有層の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0060】
収容容器1bや供給チューブ1cは、液体組成物7を安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0061】
加熱工程部30は、図2に示すように、加熱装置3aを有し、液体組成物層に残存する分散媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する分散媒除去工程を含む。これにより固体電解質含有層を形成することができる。加熱工程部30は、分散媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
【0062】
前記加熱装置3aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒーター、温風ヒーターなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
【0063】
また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物7に含まれる分散媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0064】
図3は、本実施形態の固体電解質含有層の製造方法を実現するための固体電解質含有層の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。
【0065】
液体吐出装置300’は、ポンプ3101と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
【0066】
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ3101と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に液体組成物を供給することも可能である。
【0067】
前記固体電解質含有層の製造装置を用いると、吐出対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。
【0068】
前記固体電解質含有層は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。前記電気化学素子における前記固体電解質含有層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、正極、負極、セパレータなどが挙げられる。
【0069】
本実施形態の電極の製造方法の一例を図4に示す。
電極100の製造方法は、液体吐出装置300’を用いて、電極基体11上に、液体組成物12Aを、順次吐出する工程を含む。
【0070】
まず、細長状の電極基体11を準備する。そして、電極基体11を筒状の芯に巻き付け、電極合材層12を形成する側が、図中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、電極基体11は、図中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の電極基体11の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、図1と同様にして、液体組成物12Aの液滴を、順次搬送される電極基体11上に吐出する。
【0071】
なお、液体吐出ヘッド306は、電極基体11の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されていてもよい。次に、液体組成物12Aの液滴が吐出された電極基体11は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、加熱機構309に搬送される。その結果、電極合材層12が形成され、電極100が得られる。その後、電極100は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
【0072】
加熱機構309は、電極基体11の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0073】
加熱機構309としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒーター、赤外線ヒーター、ファンヒーター等が挙げられる。なお、加熱機構309は、複数個設置されていてもよい。また、重合のための紫外線による硬化装置が設置されていてもよい。
【0074】
また、電極基体11に吐出された液体組成物12Aは加熱されることが好ましく、加熱する際には、ステージにより加熱してもよいし、ステージ以外の加熱機構により加熱してもよい。加熱機構は、電極基体11の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0075】
加熱温度は特に制限はない。加熱により液体組成物12Aが乾燥して電極合材層が形成される。
【0076】
また、図5のように、タンク307は、タンク307A、307Bに接続されたタンク313A、313Bからインクを供給してもよく、液体吐出ヘッド306は、複数のヘッド306A、306Bを有してもよい。
【0077】
[基材に液体組成物を間接的に付与することで固体電解質含有層を形成する実施形態]
図6~7は、本実施形態の固体電解質含有層の製造装置としての、付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図6は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図7は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す構成図である。
図6に示した印刷部400’は、中間転写体4001を介して基材に液体組成物層を転写することで基材上に固体電解質含有層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0078】
印刷部400’は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004および清掃ユニット4005を備える。
インクジェット部420は、複数のヘッド401を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド401は、転写ドラム4000に支持された中間転写体4001に液体組成物を吐出し、中間転写体4001上に液体組成物層を形成する。各ヘッド401は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド401は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド401は、放射状に配置される。
【0079】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド401による液体組成物の吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、液体組成物の粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層を加熱する。液体組成物層を加熱することで、乾燥させて、固体電解質含有層を形成する。また、分散媒が除去され、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上の液体組成物層が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0080】
図7に示した印刷部400’’は、中間転写ベルト4006を介して基材に液体組成物層を転写することで基材上に固体電解質含有層を形成する、インクジェットプリンタである。
印刷部400’’は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド401から液体組成物の液滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上に液体組成物層を形成する。中間転写ベルト4006に形成された液体組成物層は、加熱ユニット4007によって加熱され、乾燥することで固体電解質含有層を形成し、中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0081】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化した固体電解質含有層は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c、4009d、4009e、4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド401に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド401からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0082】
<負極>
図8に、本実施形態の負極の一例を示す。
負極101は、負極基体111の片面に、負極合材層121が形成されている。負極100の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状等が挙げられる。負極基体111を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅などが挙げられる。
なお、負極合材層121は、負極基体111の両面に形成されていてもよい。
負極は上述した固体電解質含有層の製造装置を用いて製造することができる。
【0083】
<正極>
図9に、本実施形態の正極の一例を示す。
正極20は、正極基体21の片面に、正極合材層22が形成されている。正極20の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状等が挙げられる。正極基体21を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、チタン、タンタル等が挙げられる。
なお、正極合材層22は、正極基体21の両面に形成されていてもよい。
正極は上述した固体電解質含有層の製造装置を用いて製造することができる。
【0084】
(電気化学素子)
本実施形態の電気化学素子は、電極上に、固体電解質を少なくとも含む層を有し、必要に応じて更にその他の構成を有する。
前記固体電解質は、上記した液体組成物における固体電解質と同様である。
【0085】
前記電気化学素子は、正極と、負極と、固体電解質を少なくとも含む層との他に、外装などのその他の構成を有することができる。前記電気化学素子は、固体電解質を少なくとも含む層として本発明の液体組成物を用いたものである。
【0086】
以下では、電気化学素子の一例として、リチウムイオン二次電池である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
【0087】
<電極>
前記二次電池に使用し得る電極としては、特に限定されることなく、二次電池の製造に用いられている既知の電極を用いることができる。具体的には、既知の製造方法を用いて集電体上に電極合材層を形成してなる電極を用いることができる。
電極が有する電極合材層は、図10で示すような開口部223を有していてもよい。図9は、本実施形態の固体電解質層と電極との積層体の一例を示す断面図である。前記固体電解質層と電極との積層体は、基体221と前記基体221上に配される電極合材層220とを有する電極235と、前記電極合材層220上に配される固体電解質層230と、を有する。
前記開口部223の数としては、1つ以上であることが好ましく、複数であることがより好ましい。
前記開口部223は、電極合材層表面から基体表面まで電極合材層を貫通するものであってもよく、基体表面まで貫通していなくてもよい。
前記開口部223には材料224が充填されていてもよく、何も充填されていなくてもよい。前記開口部223に材料224が充填される場合、材料224は1種単独であってもよいし、2種以上を混合したものであってもよいが、いずれの場合であっても開口部に充填される材料は、電極合材層を構成する材料とは、含まれる化合物または組成が異なるものである。開口部に材料が充填される場合、イオン導電性を向上させる観点から、固体電解質層が含む固体電解質を有する材料が充填されていることが好ましく、固体電解質層と組成が同じ材料が充填されていることがより好ましい。
開口部を有する電極合材層は、塗布制御が容易であることから、電極合材層形成手段としてのインクジェットを用いることで好適に作製することができる。
【0088】
また、図11に示すように、基体221と電極合材層220との間には、リチウムと合金化する金属を含む接着層222を設けてもよい。図11は、本実施形態の電極の他の一例を示す断面図である。前記電極は、基体221と前記基体221上に配される電極合材層220との間に、接着層222を有する。
【0089】
<電解質>
前記二次電池に使用し得る、上述した本実施形態の固体電解質層以外の電解質としては、特に限定されることなく、二次電池の製造に用いられている既知の固体電解質または電解液を用いることができる。
【0090】
<外装>
外装は、電極と、固体電解質とを封止することができれば特に制限はない。
【0091】
(電気化学素子の製造装置、電気化学素子の製造方法)
本発明の電気化学素子の製造装置は、上記した本発明の固体電解質含有層の製造装置により固体電解質含有層を製造する固体電解質含有層製造部を含み、必要に応じて、更にその他の構成を含む。
本発明の電気化学素子の製造方法は、上記した本発明の固体電解質含有層の製造方法により固体電解質含有層を形成する工程を含み、必要に応じて、更にその他の構成を含む。
【0092】
本実施形態の電気化学素子の製造装置及び電気化学素子の製造方法は、上記した固体電解質含有層製造部及び固体電解質含有層を形成する工程を本発明のものとする以外は、公知の手段及び方法を適宜選択することができる。
【0093】
本実施形態の電気化学素子は、例えば、正極と、負極とを、固体電解質を介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。
【0094】
図12に、本実施形態に関する電気化学素子に用いる電極素子の一例を示す。
電極素子40は、負極15と正極25が、固体電解質30Bを介して、積層されている。ここで、正極25は、負極15の両側に積層されている。また、負極基体11には、引き出し線41が接続されており、正極基体21には、引き出し線42が接続されている。
【0095】
負極15は、負極基体11Bの両面に、負極合材層12Bが形成されている。
正極25は、正極基体21の両面に、正極合材層22が形成されている。
なお、電極素子40の負極15と正極25の積層数は、特に制限は無い。また、電極素子40の負極15の個数と正極25の個数は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0096】
<電気化学素子>
図13に、本実施形態に関する電気化学素子の一例を示す。
電気化学素子1が固体電気化学素子である場合は、電極素子40に、固体電解質層51が形成されており、外装52により封止されている。電気化学素子1において、引き出し線41及び42は、外装52の外部に引き出されている。
【0097】
電気化学素子1の形状としては、特に制限はなく、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及び固体電解質層をスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及び固体電解質層を組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及び固体電解質層を積層したコインタイプなどが挙げられる。
【0098】
<電気化学素子の用途>
電気化学素子は、二次電池として好適に用いることができる。
電気化学素子の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、車両等の移動体;スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電気機器などが挙げられる。これらの中でも、車両、電気機器が特に好ましい。
前記移動体としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【0099】
[移動体]
図14に、本実施形態の電気化学素子の一例である全固体電池を搭載した移動体の一例を示す。移動体550は、例えば電気自動車である。移動体550はモーター551と、電気化学素子552と、移動手段の一例としての車輪553を備える。電気化学素子552は、上述した本実施形態の電気化学素子である。電気化学素子552は、モーター551に電力を供給することでモーター551を駆動する。駆動されたモーター551は、車輪553を駆動させることができ、その結果、移動体550は移動することができる。
以上の構成によれば、ピール強度に優れる電気化学素子からの電力により駆動するので、安全に移動体を移動させることができる。
移動体550は電気自動車に限られず、PHEVやHEV、又はディーゼルエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な機関車やバイクであってもよい。又、移動体は、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な、工場等で使用される搬送用ロボットであってもよい。また、移動体は、その物体全体が移動せず、一部のみが移動するもの、例えば、工場の製造ラインに配される、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用してアーム等が動作可能な組立ロボットであってもよい。
【実施例0100】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0101】
(合成例1:無機固体電解質1の合成)
無機固体電解質1として、アルジロダイト型硫化物固体電解質LiPSCl(LPSC)を文献1(Nataly Carolina Rosero-Navarro et al., Journal of Power Sources 396(2018)33.)に従い合成した。
【0102】
(合成例2:無機固体電解質2の合成)
無機固体電解質2として、Li10GeP12(LGPS)を文献2(J.Mater.Chem.A3,438-446(2015))に従い合成した。
【0103】
(実施例1~14及び比較例1~2)
分散媒、分散剤、及びバインダーとして、下記の材料を用意した。
【0104】
[分散媒]
・ p-シメン(関東化学製)
水素原子以外の原子の数 10、沸点 176℃
・ 1,2,4-トリメチルベンゼン(関東化学製)
水素原子以外の原子の数 9、沸点 169℃
・ (R)-(+)-リモネン(関東化学製)
水素原子以外の原子の数 10、沸点 176℃
・ フェネトール(東京化成工業製)
水素原子以外の原子の数 9、沸点 173℃
・ デカリン(関東化学製)
水素原子以外の原子の数 10、沸点 190℃
・ ブチルフェニルエーテル(東京化成工業製)
水素原子以外の原子の数 11、沸点 210℃
・ メシチレン(富士フィルム和光純薬製)
水素原子以外の原子の数 9、沸点 164℃
・ (1S)-(-)-α-ピネン(東京化成工業製)
水素原子以外の原子の数 10、沸点 155℃
・ テトラリン(関東化学製)
水素原子以外の原子の数 10、沸点 207℃
・ トルエン(関東化学製)
水素原子以外の原子の数 7、沸点 111℃
・ キシレン(関東化学製)
水素原子以外の原子の数 8、沸点 140℃
【0105】
[分散剤]
・ ソルスパース(SOLSPERSE) 3000(ルーブリゾール製)
・ マリアリムSC0708A(日油製)
【0106】
[バインダー]
・ ポリ(ブチルメタクリラート)(PBMA)(Aldrich製(910716))
・ ポリスチレン-block-ポリブタジエン-block-ポリスチレン(SBS)(Aldrich製(182877))
【0107】
<液体組成物の作製>
表1~4に示す材料と含有量(質量部)に基づき、常法により実施例及び比較例の液体組成物を調製した。
【0108】
[評価]
各実施例及び比較例の液体組成物について、粘度、粒径、各吐出評価、印刷後の乾燥性(以下、「乾燥性」と称することがある。)、イオン導電率を評価した。結果を表1~4に示した。
【0109】
<粘度>
粘度計(Brookfield製、DV2T)を用い、回転数50rpmで、室温(25℃)にて測定した液体組成物の粘度を表1~4に示す。
【0110】
<粒径>
粒度分布計(HORIBA製、LA-960)を用い、液体組成物を10,000倍に薄めて室温(25℃)にて測定した。液体組成物に含まれる固体電解質のモード径とD90を表1~4に示す。
【0111】
<吐出評価>
液体吐出装置EV1000S(リコー製)を用いて、液滴の飛翔を観察した。吐出性、連続吐出性、及びデキャップ性について、下記の評価基準で評価した。結果を表1~4に示す。
・ 吐出性
○ : 曲がり、抜けなし
△ : 一部曲がり、抜けあり
× : 曲がり、抜け多数
・ 連続吐出性
○ : 30分間連続吐出可能
△ : 3分間連続吐出可能
× : 連続吐出3分間未満
なお、「連続吐出可能」とは、所定時間吐出状態を維持できていることをいい、その吐出量は問わない。即ち、所定時間内において、吐出量は変化していてもよいし、変化していなくてもよい。
・ デキャップ性
○ : 5分放置後、再吐出可能
△ : 1分放置後、再吐出可能
× : 再吐出不可能
なお、「再吐出可能」とは、所定時間放置後に吐出できることをいい、その吐出量は問わない。即ち、放置前の吐出量と、再吐出時の吐出量は、変化していてもよいし、変化していなくてもよい。
【0112】
<印刷後の乾燥性>
SUS箔上に形成した膜(長さ80mm×幅70mm×厚み0.04mm)を、ホットプレート上で乾燥させ、下記の評価基準で評価した。結果を表1~4に示す。
○:80℃ 5分で乾燥可能
△:120℃ 5分で乾燥可能
×:120℃ 5分で乾燥不可
【0113】
<イオン導電率>
一部の液体組成物(実施例3、12~14)について、乾燥後、粉砕し、SolartronAnalytical製のCellTestSystem1400を用いて、イオン導電率を測定した。結果を表1、3に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
表1~4の結果より、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、環を有する炭化水素又はフェニルエーテルである分散媒を用いることにより、吐出評価の結果が良好となった。水素原子以外の原子の数が8以下で構成されるトルエンやキシレンを用いた場合は吐出性が劣る結果となった。
沸点が165℃未満の分散媒の場合、デキャップ性が若干劣る結果となった。また、沸点が190℃以上の分散剤を用いた場合は若干乾燥性が劣る結果となった。
また、同じ組成でも、粒径を大きくするとイオン導電率が大きくなる傾向であることもわかった。
【0119】
本実施形態に係る態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 固体電解質と、分散媒とを含み、
前記分散媒は、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、環を有する炭化水素又はフェニルエーテルであることを特徴とする液体組成物である。
<2> 前記分散媒は、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、環を有する炭化水素である前記<1>に記載の液体組成物である。
<3> 前記分散媒は、水素原子以外の原子の数が9以上で構成される、フェニルエーテルである前記<1>に記載の液体組成物である。
<4> 前記分散媒が、水素原子以外の原子の数が10以下で構成されている前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体組成物である。
<5> 前記分散媒が有する環は芳香環である前記<2>に記載の液体組成物である。
<6> 前記分散媒の沸点が、165℃以上である前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体組成物である。
<7> 前記固体電解質の含有量は、前記液体組成物に対して50質量%以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体組成物である。
<8> 前記分散媒の含有量は、前記液体組成物に対して40質量%以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体組成物である。
<9> さらにバインダーを含む前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体組成物である。
<10> さらに分散剤を含み、
前記分散剤は、イオン性吸着基を有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の液体組成物である。
<11> インクジェット用インク組成物である前記<1>から<10>のいずれかに記載の液体組成物である。
<12> 前記固体電解質のモード径が1.8μm以上である前記<1>から<11>のいずれかに記載の液体組成物である。
<13> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器である。
<14> 前記<13>に記載の収容容器と、インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された液体組成物を吐出する吐出手段と、を有することを特徴とする固体電解質含有層の製造装置である。
<15> インクジェットヘッドを用いて前記<1>から<12>のいずれかに記載の液体組成物を吐出する吐出工程を含むことを特徴とする固体電解質含有層の製造方法である。
<16> 前記<15>に記載の固体電解質含有層の製造方法により固体電解質含有層を形成する工程を含むことを特徴する電気化学素子の製造方法である。
<17> 前記電気化学素子が二次電池である前記<16>に記載の電気化学素子の製造方法である。
【0120】
前記<1>から<12>のいずれかに記載の液体組成物、前記<13>に記載の収容容器、前記<14>に記載の固体電解質含有層の製造装置、前記<15>に記載の固体電解質含有層の製造方法、又は前記<16>から<17>のいずれかに記載の電気化学素子の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0121】
1 電気化学素子
1a 印刷装置
1b 収容容器
1c 供給チューブ
3a 加熱装置
4 印刷基材
5 搬送部
7 液体組成物
10 吐出工程部
11 電極基体
11’ 電極
11B 負極基体
12 電極合材層
12’ 固体電解質含有層
12A 液体組成物
12B 負極合材層
15 負極
20 正極
21 正極基体
22 正極合材層
25 正極
30 加熱工程部
30B 固体電解質
40 電極素子
41 引き出し線
42 引き出し線
51 電解質層
52 外装
100 電極
101 負極
111 負極基体
121 負極合材層
220 電極合材層
221 基体
222 接着層
223 開口部
224 材料
230 固体電解質層
235 電極
300 液体吐出装置
300’ 液体吐出装置
304 送り出しローラ
305 巻き取りローラ
306 液体吐出ヘッド
307 タンク
308 チューブ
309 加熱機構
310 ステージ
311 バルブ
312 バルブ
313 外部タンク
314 バルブ
400’ 印刷部
400’’ 印刷部
401 ヘッド
420 インクジェット部
422 ヘッドモジュール
550 移動体
551 モーター
552 電気化学素子
553 車輪
621 圧胴
622 転写ローラ
3101 ポンプ
4000 転写ドラム
4001 中間転写体
4002 前処理ユニット
4003 吸収ユニット
4004 加熱ユニット
4005 清掃ユニット
4006 中間転写ベルト
4007 加熱ユニット
4008 清掃ローラ
4009a 駆動ローラ
4009b 対向ローラ
4009c 形状維持ローラ
4009d 形状維持ローラ
4009e 形状維持ローラ
4009f 形状維持ローラ
4009g 支持ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0122】
【特許文献1】特開2009-211950号公報
【特許文献2】特開2012-134133号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14