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特開2024-112858磁性粒子含有組成物、磁性粒子含有膜及び電子部品
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  • 特開-磁性粒子含有組成物、磁性粒子含有膜及び電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024112858
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】磁性粒子含有組成物、磁性粒子含有膜及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/26 20060101AFI20240814BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240814BHJP
   H01F 1/37 20060101ALI20240814BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20240814BHJP
   H01F 3/08 20060101ALI20240814BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01F1/26
G03F7/004 501
H01F1/37
H01F27/255
H01F3/08
C09K3/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077238
(22)【出願日】2024-05-10
(62)【分割の表示】P 2021575667の分割
【原出願日】2021-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2020018098
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】宮田 哲志
(72)【発明者】
【氏名】石川 達郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透磁率に優れた磁性粒子含有膜を形成でき、かつ、沈降安定性に優れた磁性粒子含有組成物、磁性粒子含有組成物を用いて形成された磁性粒子含有膜及び磁性粒子含有膜を含む電子部品を提供する。
【解決手段】磁性粒子含有組成物は、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップPmax、Pminを有する磁性粒子と、樹脂と、溶媒と、を含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する磁性粒子と、樹脂と、溶媒と、を含有する、磁性粒子含有組成物。
【請求項2】
前記体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線における前記複数のピークトップのうち、粒子径の最も小さいピークトップPminにおける粒子径をDminとし、粒子径の最も大きいピークトップPmaxにおける粒子径をDmaxとした場合、
前記Dminに対する前記Dmaxの割合が2超である、請求項1に記載の磁性粒子含有組成物。
【請求項3】
前記体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線における前記複数のピークトップのうち、粒子径の最も小さいピークトップPminにおける粒子径をDminとした場合、
前記Dminが、体積基準の累積分布を表す粒度分布曲線における頻度が20%である場合の粒子径D20以上である、請求項1又は2に記載の磁性粒子含有組成物。
【請求項4】
前記Dminが、1~10μmである、請求項2又は3に記載の磁性粒子含有組成物。
【請求項5】
前記磁性粒子が、2つのピークトップを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁性粒子含有組成物。
【請求項6】
前記磁性粒子の含有量が、前記磁性粒子含有組成物の全質量に対して、60質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁性粒子含有組成物。
【請求項7】
前記樹脂が酸基、塩基性基又はアミド基を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の磁性粒子含有組成物。
【請求項8】
前記溶媒に対する前記樹脂の溶解度が、10g/L以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁性粒子含有組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の磁性粒子含有組成物を用いて形成される、磁性粒子含有膜。
【請求項10】
請求項9に記載の磁性粒子含有膜を含む、電子部品。
【請求項11】
インダクタとして用いられる、請求項10に記載の電子部品。
【請求項12】
アンテナとして用いられる、請求項10に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子含有組成物、磁性粒子含有膜及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子通信機器等においてはノイズ低減やエネルギー効率改良などの観点で、磁性体材料を用いた電子部品が使用されている。従来は、軟磁性金属粉末と樹脂とを有する組成物を型内に充填し、硬化させて得られる磁性体複合材料にコイルを巻き付けて得られたインダクタをプリント配線板上に実装していた。
しかしながら、近年の電子部品の小型化の要求から、プリント配線板の導体パターンによってコイルを形成し、インダクタをプリント配線板の内部に設ける方法が採用される場合がある。このようなインダクタ等の電子部品の製造において、例えば、特許文献1では、磁性体無機粒子(磁性粒子)と、磁性体無機粒子を分散させる働きを有する化合物と、樹脂と、有機溶媒と、を含むペースト組成物(磁性粒子含有組成物)を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-263645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1を参照にして、磁性粒子と、樹脂と、溶媒と、を含有する磁性粒子含有組成物を調製したところ、磁性粒子含有組成物中の磁性粒子の優れた沈降安定性(すなわち、磁性粒子が沈降しにくいこと)と、磁性粒子含有組成物を用いて得られる磁性粒子含有膜の優れた透磁率と、の両立が困難になる場合があり、改善の余地があることを明らかとした。
【0005】
そこで、本発明は、透磁率に優れた磁性粒子含有膜を形成でき、かつ、沈降安定性に優れた磁性粒子含有組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、磁性粒子含有組成物を用いて形成された磁性粒子含有膜、及び、磁性粒子含有膜を含む電子部品を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する磁性粒子と、樹脂と、溶媒と、を含有する、磁性粒子含有組成物は、沈降安定性に優れ、かつ、これを用いて形成された磁性粒子含有膜の透磁率が優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
[1]
体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する磁性粒子と、樹脂と、溶媒と、を含有する、磁性粒子含有組成物。
[2]
上記体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線における上記複数のピークトップのうち、粒子径の最も小さいピークトップPminにおける粒子径をDminとし、粒子径の最も大きいピークトップPmaxにおける粒子径をDmaxとした場合、
上記Dminに対する上記Dmaxの割合が2超である、[1]に記載の磁性粒子含有組成物。
[3]
上記体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線における上記複数のピークトップのうち、粒子径の最も小さいピークトップPminにおける粒子径をDminとした場合、
上記Dminが、体積基準の累積分布を表す粒度分布曲線における頻度が20%である場合の粒子径D20以上である、[1]又は[2]に記載の磁性粒子含有組成物。
[4]
上記Dminが、1~10μmである、[2]又は[3]に記載の磁性粒子含有組成物。
[5]
上記磁性粒子が、2つのピークトップを有する、[1]~[4]のいずれかに記載の磁性粒子含有組成物。
[6]
上記磁性粒子の含有量が、上記磁性粒子含有組成物の全質量に対して、60質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の磁性粒子含有組成物。
[7]
上記樹脂が酸基、塩基性基又はアミド基を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の磁性粒子含有組成物。
[8]
上記溶媒に対する上記樹脂の溶解度が、10g/L以上である、[1]~[7]のいずれかに記載の磁性粒子含有組成物。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の磁性粒子含有組成物を用いて形成される、磁性粒子含有膜。
[10]
[9]に記載の磁性粒子含有膜を含む、電子部品。
[11]
インダクタとして用いられる、[10]に記載の電子部品。
[12]
アンテナとして用いられる、[10]に記載の電子部品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透磁率に優れた磁性粒子含有膜を形成でき、かつ、沈降安定性に優れた磁性粒子含有組成物を提供できる。また、本発明は、磁性粒子含有組成物を用いて形成された磁性粒子含有膜、及び、磁性粒子含有膜を含む電子部品も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の組成物に含まれる磁性粒子の体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線の一例を示す粒度分布図である。
図2】本発明の組成物に含まれる磁性粒子の体積基準の累積分布を表す粒度分布曲線の一例を示す粒度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における基(原子団)の表記について、本発明の趣旨に反しない限り、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0011】
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光: Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
【0012】
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0013】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを表す。
【0014】
本明細書において、磁性粒子含有組成物の「全固形分」とは、磁性粒子含有膜を形成する成分を意味し、磁性粒子含有組成物が溶媒(有機溶媒、水等)を含有する場合、溶媒を除いたすべての成分を意味する。また、磁性粒子含有膜を形成する成分であれば、液体状の成分も固形分とみなす。
【0015】
また、本明細書において重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算値である。
本明細書においてGPC法は、HLC-8020GPC(東ソー社製)を用い、カラムとしてTSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000(東ソー社製、4.6mmID×15cm)を、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる方法に基づく。
【0016】
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
【0017】
[磁性粒子含有組成物]
本発明の磁性粒子含有組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する磁性粒子と、樹脂と、溶媒と、を含有する。
本発明の磁性粒子含有組成物は、沈降安定性に優れ、かつ、透磁率に優れた磁性粒子含有膜を形成できる。この理由の詳細は明らかではないが、概ね以下のように推定している。
【0018】
磁性粒子の平均粒子径が十分に大きくなければ、これを用いて得られる磁性粒子含有膜の透磁率が不十分となることが知られている。しかしながら、本発明者らは、平均粒子径の大きい磁性粒子を用いただけでは、磁性粒子間の空隙が大きくなるため、透磁率を十分に高くすることができないことを知見した。
本発明者らは、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する磁性粒子を用いることで、透磁率を向上できることを見出した。この理由としては、平均粒子径の大きな磁性粒子の間に平均粒子径の小さな磁性粒子が配置されることで、磁性粒子含有膜中の磁性粒子間の空隙が小さくなったためと推測される。
一方で、平均粒子径の大きな磁性粒子が磁性粒子含有組成物中において経時的に沈降するという問題がある。
この問題に対して、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する磁性粒子と、樹脂と、を含む磁性粒子含有組成物を用いれば、磁性粒子の沈降を抑制できることを見出した。この理由としては、平均粒子径の大きな磁性粒子の間に存在する磁界の作用によって、平均粒子径の小さな磁性粒子が配列し、その上で、樹脂の作用によって、磁性粒子同士が緩やかに結びつくことで、磁性粒子含有組成物の静止粘度が向上し、磁性粒子の沈降が抑制されたためと推測される。
【0019】
〔磁性粒子〕
組成物は、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する磁性粒子を含有する。
磁性粒子を構成する材料は、金属元素を含有することが好ましく、中でも、Fe、Ni及びCoからなる群から選択される少なくとも1種の金属元素を含有することが好ましい。
上記金属元素は、金属元素を含む合金(好ましくは、磁性合金)、金属酸化物(好ましくは、磁性酸化物)、金属窒化物(好ましくは、磁性酸化物)、又は、金属炭化物(好ましくは、磁性炭化物)として、磁性粒子に含まれていてもよい。
磁性粒子を構成する材料は、Fe、Ni及びCo以外の元素を含んでいてもよく、その具体例としては、Al、Si、S、Sc、Ti、V、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Zn、Sr、Zr、Mn、Cr、Nb、Pb、Ca、B、C、Nが挙げられる。
【0020】
磁性粒子を構成する材料の具体例としては、Fe-Co系合金(好ましくは、パーメンジュール)、Fe-Ni系合金(例えば、パーマロイ)、Fe-Zr系合金、Fe-Mn系合金、Fe-Si系合金、Fe-Al系合金、Ni-Mo系合金(好ましくは、スーパーマロイ)、Fe-Ni-Co系合金、Fe-Si-Cr系合金、Fe-Si-B系合金、Fe-Si-Al系合金(好ましくは、センダスト)、Fe-Si-B-C系合金、Fe-Si-B-Cr系合金、Fe-Si-B-Cr-C系合金、Fe-Co-Si-B系合金、Fe-Si-B-Nb系合金、Feナノ結晶合金、Fe基アモルファス合金及びCo基アモルファス合金等の合金、並びに、スピネルフェライト(好ましくは、Ni-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライト)及び六方晶フェライト(好ましくは、バリウムフェライト、後述の式(F1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライト)等のフェライトが挙げられる。なお、上記合金は、アモルファスであってもよい。
中でも、磁性粒子含有膜の透磁率がより優れる点では、合金が好ましく、Fe基アモルファス合金、Fe-Si-Cr系合金、Feナノ結晶合金、Fe-Ni-Co系合金、Co基アモルファス合金、Ni-Mo系合金がより好ましい。
また、磁性粒子含有膜の化学安定性がより優れる点では、フェライトが好ましく、スピネルフェライトがより好ましい。
磁性粒子を構成する材料は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
式(F1)は、次の通りである。
AFe(12-X)Al19 式(F1)
式(F1)中、Aは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を表し、xは、1.5≦x≦8.0を満たす。
【0022】
式(F1)におけるAは、Sr、Ba、Ca、及びPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素であれば、金属元素の種類及び数は、特に制限されない。
例えば、操作性及び取り扱い性の観点からは、式(F1)におけるAは、Sr、Ba、及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素が好ましい。
式(F1)におけるxは、1.5≦x≦8.0を満たし、1.5≦x≦6.0を満たすことが好ましく、2.0≦x≦6.0を満たすことがより好ましい。
式(F1)におけるxが1.5以上であると、60GHzよりも高い周波数帯域の電波を吸収し得る。
式(F1)におけるxが8.0以下であると、マグネトプランバイト型六方晶フェライト粒子が磁性を有する。
【0023】
式(F1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトの具体例としては、SrFe(9.58)Al(2.42)19、SrFe(9.37)Al(2.63)19、SrFe(9.27)Al(2.73)19、SrFe(9.85)Al(2.15)19、SrFe(10.00)Al(2.00)19、SrFe(9.74)Al(2.26)19、SrFe(10.44)Al(1.56)19、SrFe(9.79)Al(2.21)19、SrFe(9.33)Al(2.67)19、SrFe(7.88)Al(4.12)19、SrFe(7.04)Al(4.96)19、SrFe(7.37)Al(4.63)19、SrFe(6.25)Al(5.75)19、SrFe(7.71)Al(4.29)19、Sr(0.80)Ba(0.10)Ca(0.10)Fe(9.83)Al(2.17)19、BaFe(9.50)Al(2.50)19、CaFe(10.00)Al(2.00)19、PbFe(9.00)Al(3.00)19が挙げられる。
【0024】
マグネトプランバイト型六方晶フェライト粒子の組成は、高周波誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により確認する。
具体的には、試料粒子12mg及び4mol/L(リットル;以下、同じ。)の塩酸水溶液10mLを入れた耐圧容器を、設定温度120℃のオーブンで12時間保持し、溶解液を得る。次いで、得られた溶解液に純水30mLを加えた後、0.1μmのメンブレンフィルタを用いてろ過する。このようにして得られたろ液の元素分析を、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置を用いて行う。得られた元素分析の結果に基づき、鉄原子100原子%に対する各金属原子の含有率を求める。得られた含有率に基づき、組成を確認する。
測定装置としては、例えば、(株)島津製作所の高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(型番:ICPS-8100)を好適に用いることができる。ただし、測定装置は、これに限定されない。
【0025】
式(F1)で表されるマグネトプランバイト型六方晶フェライトは、結晶相が単相であるマグネトプランバイト型六方晶フェライトであるのが好ましい。
本明細書において、「結晶相が単相である」場合とは、粉末X線回折(XRD:X-Ray-Diffraction)測定において、任意の組成のマグネトプランバイト型六方晶フェライトの結晶構造を示す回折パターンが1種類のみ観察される場合をいう。換言すると、任意の組成のマグネトプランバイト型六方晶フェライトが複数混在し、回折パターンが2種類以上観察されたり、マグネトプランバイト型六方晶フェライト以外の結晶の回折パターンが観察されたりすることがない場合をいう。回折パターンの帰属には、例えば、国際回折データセンター(ICDD:International Centre for Diffraction Data、登録商標)のデータベースを参照できる。例えば、Srを含むマグネトプランバイト型六方晶フェライトの回折パターンは、国際回折データセンター(ICDD)の「00-033-1340」を参照できる。但し、鉄の一部がアルミニウムに置換されることで、ピーク位置については、シフトする。
【0026】
マグネトプランバイト型六方晶フェライトの結晶相が単相であることの確認は、例えば、X線回折(XRD)法により行うことができる。
具体的には、粉末X線回折装置を用い、以下の条件にて測定する方法が挙げられる。
測定装置としては、例えば、PANalytical社のX’Pert Pro回折計を好適に用いることができる。但し、測定装置は、これに限定されない。
【0027】
-条件-
X線源:CuKα線
〔波長:1.54Å(0.154nm)、出力:40mA,45kV〕
スキャン範囲:20°<2θ<70°
スキャン間隔:0.05°
スキャンスピード:0.75°/min
【0028】
磁性粒子の表面には、表面層が設けられていてもよい。このように、磁性粒子が表面層を有していることで、磁性粒子に表面層の材質に応じた機能を付与できる。
表面層としては、無機層又は有機層が挙げられる。
【0029】
無機層形成用化合物としては、絶縁性、ガスバリヤ性及び化学安定性の少なくとも1つに優れる表面層を形成できる点から、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、リン酸金属塩化合物、ホウ酸金属塩化合物、又は、ケイ酸化合物(例えば、オルトケイ酸テトラエチル等のケイ酸エステル、ケイ酸ソーダ等のケイ酸塩)が好ましい。これらの化合物に含まれる元素の具体例としては、Fe、Al、Ca、Mn、Zn、Mg、V、Cr、Y、Ba、Sr、Ge、Zr、Ti、Si及び、希土類元素が挙げられる。
無機層形成用化合物を用いて得られる無機層を構成する材料としては、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び酸化マグネシウム等が挙げられ、無機層はこれらを2種以上含む層であってもよい。
【0030】
有機層形成用化合物としては、アクリルモノマーが挙げられる。アクリルモノマーの具体例としては、特開2019-67960号公報の段落0022~0023に記載の化合物が挙げられる。
有機層形成用化合物を用いて得られる有機層を構成する材料としては、アクリル樹脂が挙げられる。
【0031】
表面層の厚みは特に限定されないが、表面層の機能がより発揮される点から、3~1000nmが好ましい。
【0032】
磁性粒子は、標準酸化還元電位が-0.3V以上である金属元素を含むことが好ましい。これにより、磁性粒子の酸による溶解を抑制できるので、磁性粒子含有膜の透磁率の化学安定性がより優れる。
標準酸化還元電位が-0.3V以上である金属元素の具体例としては、Ni、Coが挙げられる。
金属元素の標準酸化還元電位の下限値は、-0.3V以上が好ましく、-0.27V以上が特に好ましい。金属元素の標準酸化還元電位の上限値は、1.5V以下が好ましい。
標準酸化還元電位が-0.3V以上である金属元素の含有量は、磁性粒子含有膜の透磁率がより優れる点から、磁性粒子の全質量に対して、30質量%以上が好ましく、40質量%以上が特に好ましい。標準酸化還元電位が-0.3V以上である金属元素の含有量の上限値は、100質量%以下が好ましく、95質量%以下が特に好ましい。
本明細書における標準酸化還元電位の値は、化学便覧(第五版)に記載の標準酸化還元電位の値を採用する。
【0033】
磁性粒子の含有量は、磁性粒子含有膜の透磁率がより優れる点から、組成物の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、50質量%以上が特に好ましく、60質量%以上が最も好ましい。
磁性粒子の含有量は、磁性粒子の沈降安定性がより優れる点から、組成物の全質量に対して、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
磁性粒子の含有量は、磁性粒子含有膜の透磁率がより優れる点から、組成物の全固形分に対して、10~99質量%が好ましく、40~97質量%が特に好ましい。
【0034】
<平均一次粒子径>
磁性粒子の平均一次粒子径は、0.001~100μmが好ましく、0.01~50μmがより好ましく、0.1~30μmがさらに好ましく、0.5~25μmが特に好ましい。
体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する磁性粒子が容易に得られる点から、磁性粒子は、平均一次粒子径の異なる粒子を複数組み合わせて用いることが好ましい。
【0035】
磁性粒子の一次粒子の粒子径は、磁性粒子を透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100,000倍で撮影し、総倍率500,000倍になるように印画紙にプリントして得た粒子写真において、デジタイザーで粒子(一次粒子)の輪郭をトレースし、トレースした領域と同じ面積の円の直径(円面積相径)を算出することで測定する。ここで、一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。透過型電子顕微鏡を用いる撮影は、加速電圧300kVで透過型電子顕微鏡を用いて直接法により行うものとする。透過型電子顕微鏡観察及び測定は、例えば日立製透過型電子顕微鏡H-9000型及びカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて行うことができる。
【0036】
磁性粒子の形状に関して、「板状」とは、対向する2つの板面を有する形状をいう。一方、そのような板面を持たない粒子形状の中で、長軸と短軸の区別のある形状が「楕円状」である。長軸とは、粒子の長さを最も長く取ることができる軸(直線)として決定する。一方、短軸とは、長軸と直交する直線で粒子長さを取ったときに長さが最も長くなる軸として決定する。長軸と短軸の区別がない形状、即ち長軸長=短軸長となる形状が「球状」である。形状から長軸及び短軸が特定できない形状を不定形と呼ぶ。上記の粒子形状特定のための透過型電子顕微鏡を用いる撮影は、撮影対象粒子に配向処理を施さずに行う。磁性粒子の形状は、板状、楕円状、球状、及び不定形のいずれでもよい。
【0037】
ここで、本明細書に記載の各種粒子に関する平均一次粒子径は、市販品を用いる場合、カタログ値を採用する。
カタログ値が無い場合、上記のように撮影された粒子写真を用いて、無作為に抽出した500個の粒子について求められた値の算術平均とする。
【0038】
<粒度分布>
組成物に含まれる磁性粒子は、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する。本明細書において、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線を「頻度分布曲線」ともいう。
図1は、本発明の組成物に含まれる磁性粒子の頻度分布曲線の一例を示す粒度分布図である。図1に示すように、頻度分布曲線は、横軸を粒子径、縦軸を頻度(%)とする粒度分布図に表される。
【0039】
本発明における頻度分布曲線は、次のようにして得られる。
まず、組成物を必要に応じて主溶媒で希釈し、60分間の超音波分散を行って、分散液を調製する。なお、組成物の希釈は、組成物中の磁性粒子の含有量が5質量%以下である場合には行わず、組成物中の磁性粒子の含有量が5質量%超の場合に希釈分散液中の磁性粒子の含有量が5質量%となるように行う。また、主溶媒とは、組成物中に含まれる溶媒のうち、最も含有量の多い溶媒を意味する。
次に、分散液をレーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(製品名「LA960N」、株式会社堀場製作所製)により、0.01μmから5000μm域の測定レンジモードで測定し、組成物中に含まれる磁性粒子の体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線を得る。
【0040】
頻度分布曲線におけるピークトップは、頻度分布曲線における極大点を意味する。
図1の例では、頻度分布曲線におけるピークトップの数が、粒子径の最も小さいピークトップPminと、粒子径の最も大きいピークトップPmaxと、の2つであるが、ピークトップの数はこれに限定されない。
頻度分布曲線におけるピークトップの数は、複数(すなわち、2つ以上)であり、2~5が好ましく、2~4つがより好ましく、2~3がさらに好ましく、透磁率と成膜性という点で、2つが特に好ましい。
【0041】
頻度分布曲線における複数のピークトップのうち、粒子径の最も小さいピークトップPminにおける粒子径をDminとし、粒子径の最も大きいピークトップPmaxにおける粒子径をDmaxとした場合、本発明の効果がより優れる点から、Dminに対するDmaxの割合(Dmax/Dmin)が2超であるのが好ましく、3以上であるのがより好ましく、4以上であるのが特に好ましい。
上記割合(Dmax/Dmin)の上限は、本発明の効果がより優れる点から、150以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。
上記割合(Dmax/Dmin)は、例えば、一次粒子径の異なる複数の磁性粒子を用いて、これらの配合割合を適宜調節することで、上記値の範囲内にすることができる。
【0042】
図2は、本発明の組成物に含まれる磁性粒子の体積基準の累積分布を表す粒度分布曲線の一例を示す粒度分布図である。図2に示すように、体積基準の累積分布を表す粒度分布曲線は、横軸を粒子径、縦軸を累積(%)とする粒度分布図に表される。本明細書において、体積基準の累積分布を表す粒度分布曲線を「累積分布曲線」ともいう。
累積分布曲線は、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線と同様の方法によって測定される。
Dminは、本発明の効果がより優れる点から、累積分布曲線における累積が80%である場合の粒子径D80以下であることが好ましく、累積分布曲線における累積が60%である場合の粒子径D60以下であることが特に好ましい。
Dminは、本発明の効果がより優れる点から、累積分布曲線における累積が10%である場合の粒子径D10以上であることが好ましく、累積分布曲線における累積が20%である場合の粒子径D20以上であることが特に好ましい。
Dminは、本発明の効果がより優れる点から、0.1~50μmが好ましく、0.5~25μmがより好ましく、1~10μmが特に好ましい。
【0043】
Dmaxは、本発明の効果がより優れる点から、累積分布曲線における累積が90%である場合の粒子径D90以下であることが好ましく、累積分布曲線における累積が80%である場合の粒子径D80以下であることが特に好ましい。
Dmaxは、本発明の効果がより優れる点から、累積分布曲線における累積20%である場合の粒子径D20以上であることが好ましく、累積分布曲線における累積が40%である場合の粒子径D40以上であることが特に好ましい。
Dmaxは、本発明の効果がより優れる点から、1~150μmが好ましく、1~100μmがより好ましく、5~75μmがさらに好ましく、7.5~50μmが特に好ましい。
【0044】
〔樹脂〕
組成物は、樹脂を含有する。
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂、などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点からノルボルネン樹脂が好ましい。ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。また、エポキシ樹脂は、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などを用いることもできる。また、樹脂は、国際公開第2016/088645号の実施例に記載の樹脂を用いることもできる。また、樹脂が側鎖にエチレン性不飽和基、特に(メタ)アクリロイル基を有する場合、主鎖とエチレン性不飽和基とが脂環構造を有する2価の連結基を介して結合していることも好ましい。
【0045】
樹脂の好適態様の一つとしては、不飽和二重結合(例えば、エチレン性不飽和二重結合)、エポキシ基又はオキセタニル基等の重合性基を有する樹脂が挙げられる。重合性基が磁性粒子含有膜を形成する際に反応した場合、機械的強度に優れた磁性粒子含有膜が得られる。
このような樹脂としては、例えば、側鎖にエポキシ基を有するポリマー、及び、分子内に2個以上のエポキシ基を有する重合性モノマー又はオリゴマーが挙げられ、その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂は、市販品を用いてもよいし、ポリマーの側鎖へエポキシ基を導入することによっても得られる。
市販品としては、例えば、特開2012-155288号公報段落0191等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
その他にも、ADEKA RESIN EP-4000S、同EP-4003S、同EP-4010S、同EP-4011S(以上、ADEKA社製)、NC-2000、NC-3000、NC-7300、XD-1000、EPPN-501、EPPN-502(以上、ADEKA社製)、JER1031S等も挙げられる。
さらに、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品として、JER-157S65、JER-152、JER-154、JER-157S70(以上、三菱化学社製)等が挙げられる。
側鎖にオキセタニル基を有するポリマー、及び上述の分子内に2個以上のオキセタニル基を有する重合性モノマー又はオリゴマーの具体例としては、アロンオキセタンOXT-121、OXT-221、OX-SQ、PNOX(以上、東亞合成社製)を用いることができる。
ポリマー側鎖にエポキシ基を導入してエポキシ基を有する樹脂を合成する場合、導入反応は、例えばトリエチルアミン、ベンジルメチルアミン等の3級アミン、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ピリジン、トリフェニルホスフィン等を触媒として有機溶媒中、反応温度50~150℃で所定時間反応させることにより行える。脂環式エポキシ不飽和化合物の導入量は得られるポリマーの酸価が5~200KOH・mg/gを満たす範囲になるように制御することができる。また、重量平均分子量は、500~5000000、好ましくは1000~500000の範囲とすることができる。
脂環式エポキシ不飽和化合物の代わりに、グリシジル(メタ)アクリレートやアリルグリシジルエーテル等のエポキシ基としてグリシジル基を有するものも使用可能である。このようなものとしては、例えば特開2009-265518号公報の段落0045等の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0046】
樹脂の好適態様の一つとしては、酸基、塩基性基又はアミド基を有する樹脂が挙げられる。酸基、塩基性基又はアミド基を有する樹脂は、磁性体粒子を分散させる分散剤としての機能を発揮しやすく、本発明の効果がより優れる点から好適である。
酸基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、フェノール性水酸基等が挙げられ、本発明の効果がより優れる点から、カルボキシ基が好ましい。
塩基性基としては、アミノ基(アンモニア、1級アミン又は2級アミンから水素原子を1つ除いた基)、イミノ基が挙げられる。
中でも、本発明の効果がより優れる点から、樹脂は、カルボキシ基又はアミド基を有することが好ましい。
【0047】
樹脂が酸基を有する場合、樹脂の酸価は、本発明の効果がより優れる点から、10~500mgKOH/gが好ましく、30~400mgKOH/g以上が特に好ましい。
【0048】
樹脂としては、組成物中における樹脂の分散性が向上して、本発明の効果がより優れる点から、溶媒に対する溶解度が10g/L以上である樹脂を用いることが好ましく、溶媒に対する溶解度が20g/L以上である樹脂を用いることがより好ましい。
溶媒に対する樹脂の溶解度の上限値は、2000g/L以下が好ましく、1000g/L以下が特に好ましい。
溶媒に対する樹脂の溶解度は、25℃における溶媒1Lに対する樹脂の溶解量(g)を意味する。
【0049】
樹脂の含有量は、本発明の効果がより優れる点から、組成物の全質量に対して、0.1~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、2~15質量%がさらに好ましく、2.5~10質量%が特に好ましい。
【0050】
<分散剤として機能する樹脂>
樹脂の好適態様の一つとしては、組成物中において、磁性粒子を分散させる分散剤として機能する樹脂(以下、「分散樹脂」ともいう。)が挙げられる。分散樹脂を用いることで、本発明の効果がより優れる。
分散樹脂の好適態様としては、後述するグラフト鎖を含む繰り返し単位を有する樹脂、凝集コントロール剤及び凝集分散剤が挙げられる。
【0051】
(グラフト鎖を含む繰り返し単位を有する樹脂)
分散樹脂としては、グラフト鎖を含む繰り返し単位を有する樹脂(以下、「樹脂A」ともいう。)が挙げられる。ただし、樹脂Aは、分散剤としての機能を発揮させる以外の目的で使用することもできる。
【0052】
組成物が樹脂Aを含有する場合、樹脂Aの含有量は、本発明の効果がより優れる点から、組成物の全質量に対して、0.1~30質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、1~10質量%が特に好ましい。
【0053】
・グラフト鎖を含む繰り返し単位
グラフト鎖を含む繰り返し単位において、グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり磁性粒子の分散性は向上する。一方、グラフト鎖が長すぎると磁性粒子への吸着力が低下して、磁性粒子の分散性は低下する傾向となる。このため、グラフト鎖は、水素原子を除いた原子数が40~10000であることが好ましく、水素原子を除いた原子数が50~2000であることがより好ましく、水素原子を除いた原子数が60~500であることがさらに好ましい。
ここで、グラフト鎖とは、主鎖の根元(主鎖から枝分かれしている基において主鎖に結合する原子)から、主鎖から枝分かれしている基の末端までを示す。
【0054】
また、グラフト鎖は、ポリマー構造を含んでいることが好ましく、このようなポリマー構造としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート構造(例えば、ポリ(メタ)アクリル構造)、ポリエステル構造、ポリウレタン構造、ポリウレア構造、ポリアミド構造、及びポリエーテル構造等が挙げられる。
グラフト鎖と溶媒との相互作用性を向上させ、それにより磁性粒子の分散性を高めるために、グラフト鎖は、ポリエステル構造、ポリエーテル構造、及びポリ(メタ)アクリレート構造からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むグラフト鎖であることが好ましく、ポリエステル構造及びポリエーテル構造の少なくともいずれかを含むグラフト鎖であることがより好ましい。
【0055】
樹脂Aは、グラフト鎖を含むマクロモノマー(ポリマー構造を有し、主鎖に結合してグラフト鎖を構成するモノマー)を用いて得られる樹脂であってもよい。
グラフト鎖を含むマクロモノマー(ポリマー構造を有し、主鎖に結合してグラフト鎖を構成するモノマー)としては、特に制限されないが、反応性二重結合性基を含むマクロモノマーを好適に使用できる。
【0056】
上記グラフト鎖を含む繰り返し単位に対応し、樹脂Aの合成に好適に用いられる市販のマクロモノマーとしては、AA-6、AA-10、AB-6、AS-6、AN-6、AW-6、AA-714、AY-707、AY-714、AK-5、AK-30、及びAK-32(いずれも商品名、東亞合成社製)、並びにブレンマーPP-100、ブレンマーPP-500、ブレンマーPP-800、ブレンマーPP-1000、ブレンマー55-PET-800、ブレンマーPME-4000、ブレンマーPSE-400、ブレンマーPSE-1300、及びブレンマー43PAPE-600B(いずれも商品名、日油社製)が用いられる。この中でも、AA-6、AA-10、AB-6、AS-6、AN-6、又はブレンマーPME-4000が好ましい。
【0057】
樹脂Aは、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、及び、環状又は鎖状のポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましく、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、及び鎖状のポリエステルからなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことがより好ましく、ポリアクリル酸メチル構造、ポリメタクリル酸メチル構造、ポリカプロラクトン構造、及びポリバレロラクトン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが特に好ましい。樹脂Aは、上記構造を1種単独で含んでいてもよいし、これらの構造を複数含んでいてもよい。
ここで、ポリカプロラクトン構造とは、ε-カプロラクトンを開環した構造を繰り返し単位として含む構造をいう。ポリバレロラクトン構造とは、δ-バレロラクトンを開環した構造を繰り返し単位として含む構造をいう。
【0058】
なお、樹脂Aが後述する式(1)及び後述する式(2)におけるj及びkが5である繰り返し単位を含む場合、樹脂A中に、上述したポリカプロラクトン構造を導入できる。
また、樹脂Aが後述する式(1)及び後述する式(2)におけるj及びkが4である繰り返し単位を含む場合、樹脂中に、上述したポリバレロラクトン構造を導入できる。
また、樹脂Aが後述する式(4)におけるXが水素原子であり、Rがメチル基である繰り返し単位を含む場合、樹脂A中に、上述したポリアクリル酸メチル構造を導入できる。
また、樹脂Aが後述する式(4)におけるXがメチル基であり、Rがメチル基である繰り返し単位を含む場合、樹脂A中に、上述したポリメタクリル酸メチル構造を導入できる。
【0059】
樹脂Aは、グラフト鎖を含む繰り返し単位として、下記式(1)~式(4)のいずれかで表される繰り返し単位を含むことが好ましく、下記式(1A)、下記式(2A)、下記式(3A)、下記式(3B)、及び下記(4)のいずれかで表される繰り返し単位を含むことがより好ましい。
【0060】
【化1】
【0061】
式(1)~(4)において、W、W、W、及びWは、それぞれ独立に、酸素原子又はNHを表す。W、W、W、及びWは、酸素原子であることが好ましい。
式(1)~(4)において、X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X、X、X、X、及びXは、合成上の制約の点からは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数(炭素原子数)1~12のアルキル基が好ましく、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
【0062】
式(1)~(4)において、Y、Y、Y、及びYは、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、連結基は特に構造上制約されない。Y、Y、Y、及びYで表される2価の連結基として、具体的には、下記の(Y-1)~(Y-21)の連結基等が挙げられる。下記に示した構造において、A及びBはそれぞれ、式(1)~(4)における左末端基、右末端基との結合部位を意味する。下記に示した構造のうち、合成の簡便性から、(Y-2)又は(Y-13)がより好ましい。
【0063】
【化2】
【0064】
式(1)~(4)において、Z、Z、Z、及びZは、それぞれ独立に1価の有機基を表す。有機基の構造は、特に制限されないが、具体的には、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、及びアミノ基等が挙げられる。これらの中でも、Z、Z、Z、及びZで表される有機基としては、特に分散性向上の点から、立体反発効果を含む基が好ましく、それぞれ独立に炭素数5~24のアルキル基又はアルコキシ基がより好ましく、その中でも、特にそれぞれ独立に炭素数5~24の分岐鎖状アルキル基、炭素数5~24の環状アルキル基、又は炭素数5~24のアルコキシ基がさらに好ましい。なお、アルコキシ基中に含まれるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0065】
式(1)~(4)において、n、m、p、及びqは、それぞれ独立に、1~500の整数である。
また、式(1)及び(2)において、j及びkは、それぞれ独立に、2~8の整数を表す。式(1)及び(2)におけるj及びkは、4~6の整数が好ましく、5がより好ましい。
また、式(1)及び(2)において、n及びmは、10以上の整数が好ましく、20以上の整数がより好ましい。また、樹脂Aが、ポリカプロラクトン構造、及びポリバレロラクトン構造を含む場合、ポリカプロラクトン構造の繰り返し数と、ポリバレロラクトンの繰返し数の和としては、10以上の整数が好ましく、20以上の整数がより好ましい。
【0066】
式(3)中、Rは分岐鎖状又は直鎖状のアルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましい。pが2~500のとき、複数存在するRは互いに同じであっても異なっていてもよい。
式(4)中、Rは水素原子又は1価の有機基を表し、この1価の有機基の構造は特に制限されない。Rとしては、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基が好ましく、水素原子又はアルキル基がより好ましい。Rがアルキル基である場合、アルキル基としては、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐鎖状アルキル基、又は炭素数5~20の環状アルキル基が好ましく、炭素数1~20の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状アルキル基がさらに好ましい。式(4)において、qが2~500のとき、グラフト鎖中に複数存在するX及びRは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0067】
また、樹脂Aは、2種以上の構造が異なる、グラフト鎖を含む繰り返し単位を含んでいてもよい。すなわち、樹脂Aの分子中に、互いに構造の異なる式(1)~(4)で示される繰り返し単位を含んでいてもよく、また、式(1)~(4)においてn、m、p、及びqがそれぞれ2以上の整数を表す場合、式(1)及び(2)においては、側鎖中にj及びkが互いに異なる構造を含んでいてもよく、式(3)及び(4)においては、分子内に複数存在するR、R、及びXは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0068】
式(1)で表される繰り返し単位としては、下記式(1A)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
また、式(2)で表される繰り返し単位としては、下記式(2A)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0069】
【化3】
【0070】
式(1A)中、X、Y、Z、及びnは、式(1)におけるX、Y、Z、及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。式(2A)中、X、Y、Z、及びmは、式(2)におけるX、Y、Z、及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0071】
また、式(3)で表される繰り返し単位としては、下記式(3A)又は式(3B)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0072】
【化4】
【0073】
式(3A)又は(3B)中、X、Y、Z、及びpは、式(3)におけるX、Y、Z、及びpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0074】
樹脂Aは、グラフト鎖を含む繰り返し単位として、式(1A)で表される繰り返し単位を含むことがより好ましい。
【0075】
また、樹脂Aとしては、ポリアルキレンイミン構造とポリエステル構造を含む繰り返し単位を含むことも好ましい。ポリアルキレンイミン構造とポリエステル構造を含む繰り返し単位は、主鎖にポリアルキレンイミン構造を含み、グラフト鎖としてポリエステル構造を含むことが好ましい。
【0076】
上記ポリアルキレンイミン構造とは、同一又は異なるアルキレンイミン鎖を2つ以上含む重合構造である。アルキレンイミン鎖としては、具体的には下記式(4A)及び下記式(4B)で表されるアルキレンイミン鎖が挙げられる。
【0077】
【化5】
【0078】
式(4A)中、RX1及びRX2は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。aは、2以上の整数を表す。*はポリエステル鎖、隣接するアルキレンイミン鎖、又は、水素原子若しくは置換基との結合位置を表す。
【0079】
【化6】
【0080】
式(4B)中、RX3及びRX4は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。aは、2以上の整数を表す。式(4B)で表されるアルキレンイミン鎖は、アニオン性基を有するポリエステル鎖と、式(4B)中に明示されるNとポリエステル鎖に含まれるアニオン性基が塩架橋基を形成することにより、結合する。
【0081】
式(4A)及び式(4B)中の*、及び、式(4B)中の*は、それぞれ独立に、隣接するアルキレンイミン鎖、又は、水素原子若しくは置換基と結合する位置を表す。
式(4A)及び式(4B)中の*としては、なかでも、隣接するアルキレンイミン鎖と結合する位置を表すことが好ましい。
【0082】
式(4A)中のRX1及びRX2、並びに式(4B)中のRX3及びRX4は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
アルキル基の炭素数としては、炭素数1~6が好ましく、炭素数1~3が好ましい。
式(4A)中、RX1及びRX2としては、いずれも水素原子であることが好ましい。
式(4B)中、RX3及びRX4としては、いずれも水素原子であることが好ましい。
【0083】
式(4A)中のa及び式(4B)中のaとしては、2以上の整数であれば特に制限されない。その上限値としては10以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、2又は3がさらに好ましく、2が特に好ましい。
【0084】
式(4A)及び式(4B)中、*は、隣接するアルキレンイミン鎖、又は、水素原子若しくは置換基との結合位置を表す。
上記置換基としては、例えばアルキル基(例えば炭素数1~6のアルキル基)等の置換基が挙げられる。また、置換基として、ポリエステル鎖が結合してもよい。
【0085】
式(4A)で表されるアルキレンイミン鎖は、上述した*1の位置で、ポリエステル鎖と連結していることが好ましい。具体的には、ポリエステル鎖中のカルボニル炭素が、上述した*1の位置で結合することが好ましい。
上記ポリエステル鎖としては、下記式(5A)で表されるポリエステル鎖が挙げられる。
【0086】
【化7】
【0087】
アルキレンイミン鎖が式(4B)で表されるアルキレンイミン鎖である場合、ポリエステル鎖はアニオン性(好ましくは酸素アニオンO)を含み、このアニオン性と式(4B)中のNとが塩架橋基を形成することが好ましい。
このようなポリエステル鎖としては、下記式(5B)で表されるポリエステル鎖が挙げられる。
【0088】
【化8】
【0089】
式(5A)中のLX1、及び式(5B)中のLX2は、それぞれ独立に、2価の連結基を表す。2価の連結基としては、好ましくは炭素数3~30のアルキレン基が挙げられる。
【0090】
式(5A)中のb11、及び式(5B)中のb21は、それぞれ独立に2以上の整数を表し、その上限は、例えば、200以下である。
【0091】
式(5A)中のb12、及び式(5B)中のb22は、それぞれ独立に0又は1を表す。
【0092】
式(5A)中のX、及び式(5B)中のXは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ポリアルキレンオキシアルキル基、及びアリール基等が挙げられる。
【0093】
上記アルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。)、及び、上記アルコキシ基中に含まれるアルキル基(直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。)の炭素数としては、1~30が挙げられ、1~10が好ましい。また、上記アルキル基はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては、水酸基及びハロゲン原子(ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等)が挙げられる。
【0094】
ポリアルキレンオキシアルキル基とは、RX6(ORX7(O)-で表される置換基である。RX6はアルキル基を表し、RX7はアルキレン基を表し、pは2以上の整数を表し、qは、0又は1を表す。
X6で表されるアルキル基は、Xで表されるアルキル基と同義である。また、RX7で表されるアルキレン基としては、Xで表されるアルキル基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
pは、2以上の整数であり、その上限値としては、例えば10以下であり、5以下が好ましい。
【0095】
アリール基としては、例えば、炭素数6~24のアリール基(単環及び多環のいずれであってもよい。)が挙げられる。
上記アリール基はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、及びシアノ基等が挙げられる。
【0096】
上記ポリエステル鎖としては、ε-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、エナントラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-オクタノラクトン、δ-ヘキサラノラクトン、δ-オクタノラクトン、δ-ドデカノラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、及びラクチド(L体であってもD体であってもよい。)等のラクトンを開環した構造が好ましく、ε-カプロラクトン又はδ-バレロラクトンを開環した構造がより好ましい。
【0097】
上記ポリアルキレンイミン構造とポリエステル構造を含む繰り返し単位としては、特許第5923557号に記載の合成方法に準じて合成できる。
【0098】
樹脂Aにおいて、グラフト鎖を含む繰り返し単位の含有量は、質量換算で、樹脂Aの全質量に対して、2~95質量%が好ましく、2~90質量%がより好ましく、5~30質量%が特に好ましい。グラフト鎖を含む繰り返し単位がこの範囲内で含まれると、本発明の効果がより優れる。
【0099】
・疎水性繰り返し単位
また、樹脂Aは、グラフト鎖を含む繰り返し単位とは異なる(すなわち、グラフト鎖を含む繰り返し単位には相当しない)疎水性繰り返し単位を含んでいてもよい。ただし、本明細書において、疎水性繰り返し単位は、酸基(例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等)を有さない繰り返し単位である。
【0100】
疎水性繰り返し単位は、ClogP値が1.2以上の化合物(モノマー)に由来する(対応する)繰り返し単位であることが好ましく、ClogP値が1.2~8の化合物に由来する繰り返し単位であることがより好ましい。これにより、本発明の効果をより確実に発現できる。
【0101】
ClogP値は、Daylight Chemical Information System, Inc.から入手できるプログラム「CLOGP」で計算された値である。このプログラムは、Hansch, Leoのフラグメントアプローチ(下記文献参照)により算出される「計算logP」の値を提供する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、化学構造を部分構造(フラグメント)に分割し、そのフラグメントに対して割り当てられたlogP寄与分を合計して化合物のlogP値を推算している。その詳細は以下の文献に記載されている。本明細書では、プログラムCLOGP v4.82により計算したClogP値を用いる。
A. J. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P. G. Sammnens,
J. B. Taylor and C. A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990 C. Hansch & A. J. Leo. SUbstituent Constants For Correlation Analysis in Chemistry and Biology. John Wiley & Sons. A.J. Leo. Calculating logPoct from structure. Chem. Rev., 93, 1281-1306, 1993.
【0102】
logPは、分配係数P(Partition Coefficient)の常用対数を意味し、ある有機化合物が油(一般的には1-オクタノール)と水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値として表す物性値であり、以下の式で示される。
logP=log(Coil/Cwater)
式中、Coilは油相中の化合物のモル濃度を、Cwaterは水相中の化合物のモル濃度を表す。
logPの値が0をはさんでプラスに大きくなると油溶性が増し、マイナスで絶対値が大きくなると水溶性が増し、有機化合物の水溶性と負の相関があり、有機化合物の親疎水性を見積るパラメータとして広く利用されている。
【0103】
樹脂Aは、疎水性繰り返し単位として、下記式(i)~(iii)で表される単量体に由来の繰り返し単位から選択された1種以上の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0104】
【化9】
【0105】
上記式(i)~(iii)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等)、又は炭素数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、及びプロピル基等)を表す。
、R、及びRは、水素原子又は炭素数が1~3のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。R及びRは、水素原子であることがさらに好ましい。
Xは、酸素原子(-O-)又はイミノ基(-NH-)を表し、酸素原子が好ましい。
【0106】
Lは、単結合又は2価の連結基である。2価の連結基としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、置換アリーレン基)、2価の複素環基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ基(-NR31-、ここでR31は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、カルボニル基(-CO-)、及びこれらの組合せ等が挙げられる。
【0107】
2価の脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。脂肪族基は不飽和脂肪族基であっても飽和脂肪族基であってもよいが、飽和脂肪族基が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、芳香族基、及び複素環基等が挙げられる。
【0108】
2価の芳香族基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10がさらに好ましい。また、芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、及び複素環基等が挙げられる。
【0109】
2価の複素環基は、複素環として5員環又は6員環を含むことが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環、又は芳香族環が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N-R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基、又は複素環基)、脂肪族基、芳香族基、及び複素環基が挙げられる。
【0110】
Lは、単結合、アルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基が好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造がより好ましい。また、Lは、オキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、-(OCHCH)n-で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2~10の整数がより好ましい。
【0111】
Zとしては、脂肪族基(例えば、アルキル基、置換アルキル基、不飽和アルキル基、置換不飽和アルキル基、)、芳香族基(例えば、アリール基、置換アリール基、アリーレン基、置換アリーレン基)、複素環基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの基には、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ基(-NR31-、ここでR31は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、又はカルボニル基(-CO-)が含まれていてもよい。
【0112】
脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。脂肪族基には、さらに環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基、ビフェニル基、及び4-シクロヘキシルフェニル基等が含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、及びビシクロ[3.2.1]オクタン環等)等の2環式炭化水素環、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、及びトリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環等の3環式炭化水素環、並びに、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、及びパーヒドロ-1,4-メタノ-5,8-メタノナフタレン環等の4環式炭化水素環等が挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、及びパーヒドロフェナレン環等の5~8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
脂肪族基は不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、芳香族基及び複素環基が挙げられる。ただし、脂肪族基は、置換基として酸基を有さない。
【0113】
芳香族基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10がさらに好ましい。また、芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基及び複素環基が挙げられる。ただし、芳香族基は、置換基として酸基を有さない。
【0114】
複素環基は、複素環として5員環又は6員環を含むことが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環又は芳香族環が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N-R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、脂肪族基、芳香族基、及び複素環基が挙げられる。ただし、複素環基は、置換基として酸基を有さない。
【0115】
上記式(iii)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等)、炭素数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、及びプロピル基等)、Z、又はL-Zを表す。ここでL及びZは、上記における基と同義である。R、R、及びRとしては、水素原子、又は炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0116】
上記式(i)で表される単量体として、R、R、及びRが水素原子、又はメチル基であって、Lが単結合又はアルキレン基若しくはオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、Xが酸素原子又はイミノ基であって、Zが脂肪族基、複素環基、又は芳香族基である化合物が好ましい。
また、上記式(ii)で表される単量体として、Rが水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基であって、Zが脂肪族基、複素環基、又は芳香族基である化合物が好ましい。また、上記式(iii)で表される単量体として、R、R、及びRが水素原子又はメチル基であって、Zが脂肪族基、複素環基、又は芳香族基である化合物が好ましい。
【0117】
式(i)~(iii)で表される代表的な化合物の例としては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、及びスチレン類等から選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。
なお、式(i)~(iii)で表される代表的な化合物の例としては、特開2013-249417号公報の段落0089~0093に記載の化合物を参照でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0118】
樹脂Aにおいて、疎水性繰り返し単位の含有量は、質量換算で、樹脂Aの全質量に対して、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。
【0119】
・磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基
樹脂Aは、磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基を有していてもよい。
樹脂Aは、磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基を含む繰り返し単位をさらに含むことが好ましい。
磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基としては、例えば、酸基、塩基性基、配位性基、及び反応性を有する官能基等が挙げられる。
樹脂Aが、酸基、塩基性基、配位性基、又は反応性を有する官能基を含む場合、それぞれ、酸基を含む繰り返し単位、塩基性基を含む繰り返し単位、配位性基を含む繰り返し単位、又は反応性を有する官能基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0120】
酸基としてのアルカリ可溶性基を含む繰り返し単位は、上記のグラフト鎖を含む繰り返し単位と同一の繰り返し単位であっても、異なる繰り返し単位であってもよいが、酸基としてのアルカリ可溶性基を含む繰り返し単位は、上記の疎水性繰り返し単位とは異なる繰り返し単位である(すなわち、上記の疎水性繰り返し単位には相当しない)。
【0121】
磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基である酸基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びフェノール性水酸基等があり、カルボン酸基、スルホン酸基、及びリン酸基のうち少なくとも1種が好ましく、カルボン酸基がより好ましい。カルボン酸基は、磁性粒子への吸着力が良好で、かつ、分散性が高い。
すなわち、樹脂Aは、カルボン酸基、スルホン酸基、及びリン酸基のうち少なくとも1種を含む繰り返し単位をさらに含むことが好ましい。
【0122】
樹脂Aは、酸基を含む繰り返し単位を1種又は2種以上有してもよい。
樹脂Aが酸基を含む繰り返し単位を含む場合、その含有量は、質量換算で、樹脂Aの全質量に対して、5~80質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましい。
【0123】
磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基である塩基性基としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、N原子を含むヘテロ環、及びアミド基等があり、好ましい塩基性基は、磁性粒子への吸着力が良好で、かつ、分散性が高い点で、第3級アミノ基である。樹脂Aは、これらの塩基性基を1種又は2種以上含んでいてもよい。
樹脂Aが塩基性基を含む繰り返し単位を含む場合、その含有量は、質量換算で、樹脂Aの全質量に対して、0.01~50質量%が好ましく、0.01~30質量%がより好ましい。
【0124】
磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基である配位性基、及び反応性を有する官能基としては、例えば、アセチルアセトキシ基、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、酸無水物、及び酸塩化物等が挙げられる。好ましい官能基は、磁性粒子への吸着力が良好で、磁性粒子の分散性が高い点で、アセチルアセトキシ基である。樹脂Aは、これらの基を1種又は2種以上有してもよい。
樹脂Aが、配位性基を含む繰り返し単位、又は反応性を有する官能基を含む繰り返し単位を含む場合、これらの含有量は、質量換算で、樹脂Aの全質量に対して、10~80質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましい。
【0125】
上記樹脂Aが、グラフト鎖以外に、磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基を含む場合、上記の各種の磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基を含んでいればよく、これらの官能基がどのように導入されているかは特に制限されない。例えば、組成物に含まれる樹脂は、下記式(iv)~(vi)で表される単量体に由来の繰り返し単位から選択された1種以上の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0126】
【化10】
【0127】
式(iv)~(vi)中、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等)、又は炭素数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
式(iv)~(vi)中、R11、R12、及びR13としては、水素原子、又は炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。一般式(iv)中、R12及びR13としては、水素原子がさらに好ましい。
【0128】
式(iv)中のXは、酸素原子(-O-)又はイミノ基(-NH-)を表し、酸素原子が好ましい。
また、式(v)中のYは、メチン基又は窒素原子を表す。
【0129】
また、式(iv)~(v)中のLは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基の定義は、上述した式(i)中のLで表される2価の連結基の定義と同じである。
【0130】
は、単結合、アルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基が好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造がより好ましい。また、Lは、オキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、-(OCHCH)n-で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2~10の整数がより好ましい。
【0131】
式(iv)~(vi)中、Zは、グラフト鎖以外に磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基を表し、カルボン酸基、又は第3級アミノ基が好ましく、カルボン酸基がより好ましい。
【0132】
式(vi)中、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子等)、炭素数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、及びプロピル基等)、-Z、又はL-Zを表す。ここでL及びZは、上記におけるL及びZと同義であり、好ましい例も同様である。R14、R15、及びR16としては、水素原子、又は炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0133】
式(iv)で表される単量体として、R11、R12、及びR13がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、Xが酸素原子又はイミノ基であって、Zがカルボン酸基である化合物が好ましい。
また、式(v)で表される単量体として、R11が水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基であって、Zがカルボン酸基であって、Yがメチン基である化合物が好ましい。
さらに、式(vi)で表される単量体として、R14、R15、及びR16がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、Zがカルボン酸基である化合物が好ましい。
【0134】
以下に、式(iv)~(vi)で表される単量体(化合物)の代表的な例を示す。
単量体の例としては、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含む化合物(例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)とコハク酸無水物との反応物、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含む化合物とフタル酸無水物との反応物、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含む化合物とテトラヒドロキシフタル酸無水物との反応物、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含む化合物と無水トリメリット酸との反応物、分子内に付加重合性二重結合及び水酸基を含む化合物とピロメリット酸無水物との反応物、アクリル酸、アクリル酸ダイマー、アクリル酸オリゴマー、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、4-ビニル安息香酸、ビニルフェノール、及び4-ヒドロキシフェニルメタクリルアミド等が挙げられる。
【0135】
磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基を含む繰り返し単位の含有量は、磁性粒子との相互作用、経時安定性、及び現像液への浸透性の点から、質量換算で、樹脂Aの全質量に対して、0.05~90質量%が好ましく、1.0~80質量%がより好ましく、10~70質量%がさらに好ましい。
【0136】
・エチレン性不飽和基
樹脂Aは、エチレン性不飽和基を含んでいてもよい。
エチレン性不飽和基としては特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びスチリル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
樹脂Aとしては、なかでも、側鎖にエチレン性不飽和基を含む繰り返し単位を含むことが好ましく、側鎖にエチレン性不飽和基を含み、且つ(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位(以下、「側鎖にエチレン性不飽和基を含む(メタ)アクリル系繰り返し単位」ともいう。)を含むことがより好ましい。
側鎖にエチレン性不飽和基を含む(メタ)アクリル系繰り返し単位は、例えば、カルボン酸基を含む(メタ)アクリル系繰り返し単位を含む樹脂A中の上記カルボン酸基に、グリシジル基又は脂環式エポキシ基を含むエチレン性不飽和化合物を付加反応させて得られる。このようにして導入されたエチレン性不飽和基(グリシジル基又は脂環式エポキシ基)を反応させれば、側鎖にエチレン性不飽和基を含む(メタ)アクリル系繰り返し単位を得ることができる。
【0137】
樹脂Aがエチレン性不飽和基を含む繰り返し単位を含む場合、その含有量は、質量換算で、樹脂Aの全質量に対して、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。
【0138】
・その他の繰り返し単位
さらに、樹脂Aは、膜形成能等の諸性能を向上する目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、グラフト鎖を含む繰り返し単位、疎水性繰り返し単位、及び磁性粒子と相互作用を形成し得る官能基を含む繰り返し単位とは異なる、種々の機能を有する他の繰り返し単位をさらに有していてもよい。
このような、他の繰り返し単位としては、例えば、アクリロニトリル類、及びメタクリロニトリル類等から選ばれるラジカル重合性化合物に由来の繰り返し単位が挙げられる。
樹脂Aは、これらの他の繰り返し単位を1種又は2種以上使用でき、その含有量は、質量換算で、樹脂Aの全質量に対して、0~80質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましい。
【0139】
・樹脂Aの物性
樹脂Aの酸価としては特に制限されないが、例えば、0~400mgKOH/gが好ましく、10~350mgKOH/gがより好ましく、30~300mgKOH/gがさらに好ましく、50~200mgKOH/gの範囲が特に好ましい。
樹脂Aの酸価が50mgKOH/g以上であれば、磁性粒子の沈降安定性をより向上できる。
【0140】
本明細書において酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。また、樹脂中における酸基を含む繰り返し単位の含有量を変えることで、所望の酸価を有する樹脂を得られる。
【0141】
樹脂Aの重量平均分子量は特に制限されないが、例えば、3,000以上が好ましく、4,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましく、6,000以上が特に好ましい。また、上限値としては、例えば、300,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましく、50,000以下が特に好ましい。
樹脂Aは、公知の方法に基づいて合成できる。
【0142】
なお、樹脂Aの具体例の例としては、特開2013-249417号公報の段落0127~0129に記載の高分子化合物を参照でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0143】
また、樹脂Aとしては、特開2010-106268号公報の段落0037~0115(対応するUS2011/0124824の段落0075~0133欄)のグラフト共重合体も使用でき、これらの内容は援用でき、本明細書に組み込まれる。
【0144】
(凝集コントロール剤)
分散樹脂としては、凝集コントロール剤が挙げられる。
凝集コントロール剤は、磁性粒子のような相対的に密度の高い凝集体に対して結合し、さらに、任意で含まれるその他の成分(例えば、アルカリ可溶性樹脂等)を組成物中に分散し、嵩高い凝集体を作ることができるという機能を備える。
分散樹脂が凝集コントロール剤を含む場合、組成物中の磁性粒子のハードケーキ化が抑制され、さらに嵩高い凝集体が形成されるため、再分散性が向上し得る。
【0145】
凝集コントロール剤としては、例えば、セルロース誘導体が挙げられる。
セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、及びそれらの塩等が挙げられる。
【0146】
組成物が凝集コントロール剤を含む場合、凝集コントロール剤の含有量は、組成物の全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%が特に好ましい。
【0147】
(凝集分散剤)
分散樹脂としては、凝集分散剤が挙げられる。
凝集分散剤は、磁性粒子の表面に吸着し、磁性粒子を相互に離間させながら、分散剤間の相互作用により磁性粒子同士の距離を一定以上に保ち、磁性粒子同士が直接凝集することを防ぐことができるという機能を備える。この結果として、磁性粒子の凝集が抑制され、凝集体が形成される場合であっても、相対的に密度の低い凝集体が形成される。さらに、組成物中に任意で含まれるその他の成分(例えば、アルカリ可溶性樹脂等)を組成物中に分散し、嵩高い凝集体を作ることができため、再分散性が向上し得る。
【0148】
凝集分散剤としては、多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩が好ましい。
多塩基酸は、酸基を2個以上有していればよく、例えば、酸基を有する繰り返し単位を含む酸性ポリマー(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、及びポリリン酸等)が挙げられる。また、上記以外の多塩基酸としては、クロトン酸等の不飽和脂肪酸を重合させたポリマーが挙げられる。多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩は、これらの多塩基酸にアルキロールアンモニウムを反応させることにより得られる。このような反応によって得られた塩は、通常、以下の部分構造を含む。
-C(=O)-N(-R)(-R-OH)
ここで、Rはアルキル基、Rはアルキレン基である。
多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩としては、上記部分構造を複数含むポリマーであるのが好ましい。多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩がポリマーである場合、重量平均分子量としては、1,000~100,000が好ましく、5,000~20,000がより好ましい。多塩基酸のアルキロールアンモニウム塩のポリマーは、磁性粒子の表面に結合し、また他の凝集分散剤分子と水素結合することにより、ポリマーの主鎖構造が磁性粒子間に入り込み、磁性粒子同士を離間させ得る。
【0149】
凝集分散剤の好適態様の一つとしては、(a)飽和脂肪族モノカルボン酸類及びヒドロキシ基含有脂肪族モノカルボン酸類、並びに、(b)多塩基酸類の少なくとも何れかの酸類と、(c)ジアミン類及びテトラアミン類の少なくとも何れかのアミン類と、が脱水縮合した縮合物であるアマイドワックスが挙げられる。
上記(a)~(c)は、モル比で(a):(b):(c)=1~3:0~5:1~6となるように用いることが好ましい。
【0150】
飽和脂肪族モノカルボン酸類は、炭素数12~22であるのが好ましい。具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
ヒドロキシ基含有脂肪族モノカルボン酸類は、炭素数12~22であるのが好ましい。具体的には、12-ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
これらの飽和脂肪族モノカルボン酸類及びヒドロキシ基含有脂肪族モノカルボン酸類は、単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0151】
多塩基酸類は、炭素数2~12の二塩基酸以上のカルボン酸が好ましく、ジカルボン酸がより好ましい。
このようなジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、及び1,12-ドデカンジカルボン酸のような脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びシクロヘキシルコハク酸のような脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの多塩基酸類は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0152】
ジアミン類は、炭素数2~14であるのが好ましい。具体的には、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4-ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。
テトラアミン類は、炭素数2~14であるのが好ましい。具体的には、ブタン-1,1,4,4-テトラアミン、ピリミジン-2,4,5,6-テトラアミンが挙げられる。これらのジアミン類及びテトラアミン類は単独で使用してもよく、複数を併用してもよい。
【0153】
ジアミン類及びテトラアミン類の量は、飽和脂肪族モノカルボン酸又はヒドロキシ基含有脂肪族モノカルボン酸のモル数と、多塩基酸類のモル数とに従って、カルボキシ基の総数とアミノ基の総数とが当量となるように、調整される。例えば、脂肪族モノカルボン酸2モルに対して、多塩基酸類である脂肪族ジカルボン酸nモル(n=0~5)である場合、ジアミン類を(n+1)モルとすると、酸とアミンとが当量となる。
【0154】
このアマイドワックスは、異なる分子量を有する複数の化合物の混合物として得られる。アマイドワックスは、下記化学式(I)で表されるものが好ましい。なお、アマイドワックスは、単一の化合物であってもよく、混合物であってもよい。
A-C-(B-C)-A・・・(I)
式(I)中、Aは飽和脂肪族モノカルボン酸及び/又はヒドロキシ基含有飽和脂肪族モノカルボン酸の脱水酸基残基、Bは多塩基酸の脱水酸基残基、Cはジアミン及び/又はテトラアミンの脱水素残基、mは0≦m≦5である。
【0155】
凝集分散剤の好適態様の一つとしては、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0156】
【化11】
【0157】
式(II)中、Rは、炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数2、4、6若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6の2価の脂環式炭化水素基、又は、2価の芳香族炭化水素基を表し、Rは、炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基、又は、ヒドロキシアルキルエーテル基を表す。
式(II)中、L~Lはそれぞれ独立にアミド結合を表し、LとLが-CONH-である場合、Lは-NHCO-であり、LとLが-NHCO-である場合、Lは-CONH-である。
【0158】
は炭素数10~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基であり、例えば、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、ステアリル基、パルミチル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基等の直鎖状アルキル基;デセニル基、ペンタデセニル基、オレイル基、エイコセニル基等の直鎖状アルケニル基;ペンタデシニル基、オクタデシニル基、ノナデシニル基等の直鎖状アルキニル基が挙げられる。
なかでも、Rは、増粘効果に優れ、かつ、低い温度で焼成しても灰分の残存を極めて低く抑制することができる点で、炭素数14~25の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数18~21の1価の直鎖状脂肪族炭化水素基が特に好ましい。直鎖状脂肪族炭化水素基は、アルキル基が好ましい。
【0159】
およびRにおける炭素数2、4、6若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチレン基、n-ブチレン基、n-ヘキシレン基、n-オクチレン基が挙げられる。
およびRにおける炭素数6の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,4-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,2-シクロヘキシレン基が挙げられる。
およびRにおける2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,2-フェニレン基等の炭素数6~10のアリーレン基が挙げられる。
【0160】
なかでも、RおよびRは、増粘効果に優れる点で、炭素数2、4、6若しくは8の2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2、4若しくは6の2価の脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数2若しくは4の2価の脂肪族炭化水素基がさらに好ましく、炭素数2の2価の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0161】
は、炭素数1~8の2価の脂肪族炭化水素基を表し、なかでも、増粘効果に優れる点で、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましく、直鎖状アルキレン基が特に好ましい。
また、Rにおける2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~8であり、増粘効果に優れる点で、1~7が好ましく、3~7がより好ましく、3~6が更に好ましく、3~5が特に好ましい。
したがって、Rは、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数1~7の直鎖状アルキレン基がより好ましく、炭素数3~7の直鎖状アルキレン基がさらに好ましく、炭素数3~6の直鎖状アルキレン基が特に好ましく、炭素数3~5の直鎖状アルキレン基が最も好ましい。
【0162】
およびRにおける炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル基、1-メチルビニル基、2-プロペニル基等の炭素数2~3の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2~3の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基等が挙げられる。
【0163】
およびRにおけるヒドロキシアルキルエーテル基としては、例えば、2-ヒドロキシエトキシ基、2-ヒドロキシプロポキシ基、2,3-ジヒドロキシプロポキシ基等の、モノ又はジ(ヒドロキシ)C1-3アルキルエーテル基が挙げられる。
【0164】
なかでも、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1~3の1価の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1~3の直鎖状アルキル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0165】
式(II)で表される化合物としては、下記式(II-1)~(II-9)で表される化合物が好ましい。
【0166】
【化12】
【0167】
凝集分散剤としては、例えばANTI-TERRA-203、同204、同206、同250(いずれも商品名、BYK社製):ANTI-TERRA-U(商品名、BYK社製):DISPER BYK-102、同180、同191(いずれも商品名、BYK社製):BYK-P105(商品名、BYK社製):TEGO Disper630、同700(いずれも商品名、エボニックデグサジャパン社製):ターレン VA-705B(商品名、共栄社化学社製):FLOWNON RCM-300TL(商品名、共栄社化学社製、アマイドワックス)等が挙げられる。
【0168】
組成物が凝集分散剤を含む場合、凝集分散剤の含有量は、組成物の全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%が特に好ましい。
【0169】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明における樹脂は、アルカリ可溶性樹脂を含んでいてもよい。本明細書において、アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリ可溶性を促進する基(アルカリ可溶性基、例えばカルボン酸基等の酸基)を含む樹脂を意味し、既に説明した樹脂Aとは異なる樹脂を意味する。
【0170】
アルカリ可溶性樹脂としては、分子中に少なくとも1個のアルカリ可溶性基を含む樹脂が挙げられ、例えば、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリシロキサン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、(メタ)アクリル/(メタ)アクリルアミド共重合体、エポキシ樹脂、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0171】
アルカリ可溶性樹脂の具体例としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては特に制限されないが、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、及びビニル酢酸等のモノカルボン酸類;イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸等のジカルボン酸、又はその酸無水物;並びに、フタル酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)等の多価カルボン酸モノエステル類;等が挙げられる。
【0172】
共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル等が挙げられる。また、特開2010-97210号公報の段落0027、及び特開2015-68893号公報の段落0036~0037に記載の化合物も使用でき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0173】
また、共重合可能なエチレン性不飽和化合物であって、側鎖にエチレン性不飽和基を含む化合物を組み合わせて用いてもよい。つまり、アルカリ可溶性樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を含む繰り返し単位を含んでいてもよい。
側鎖に含まれるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリル酸基が好ましい。
側鎖にエチレン性不飽和基を含む繰り返し単位は、例えば、カルボン酸基を含む(メタ)アクリル系繰り返し単位のカルボン酸基に、グリシジル基又は脂環式エポキシ基を含むエチレン性不飽和化合物を付加反応させて得られる。
【0174】
アルカリ可溶性樹脂としては、硬化性基を含むアルカリ可溶性樹脂も好ましい。
上記硬化性基としては、例えば、エチレン性不飽和基(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及び、スチリル基等)、及び、環状エーテル基(例えば、エポキシ基、オキセタニル基等)等が挙げられるが、これらに制限されない。
中でも、ラジカル反応で重合制御が可能な点で、硬化性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
硬化性基を含むアルカリ可溶性樹脂としては、硬化性基を側鎖に有するアルカリ可溶性樹脂等が好ましい。硬化性基を含むアルカリ可溶性樹脂としては、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン社製)、Photomer6173(COOH含有 polyurethane acrylic oligomer.Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR-264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業社製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル社製)、Ebecryl3800(ダイセル・オルネクス社製)、及びアクリキュアRD-F8(日本触媒社製)等が挙げられる。
【0175】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、特開昭59-44615号公報、特公昭54-34327号公報、特公昭58-12577号公報、特公昭54-25957号公報、特開昭54-92723号公報、特開昭59-53836号公報、及び特開昭59-71048号公報に記載されている側鎖にカルボン酸基を含むラジカル重合体;欧州特許第993966号公報、欧州特許第1204000号明細書、及び特開2001-318463号公報に記載されているアルカリ可溶性基を含むアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダー樹脂;ポリビニルピロリドン;ポリエチレンオキサイド;アルコール可溶性ナイロン、及び2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパンとエピクロロヒドリンとの反応物であるポリエーテル等;並びに、国際公開第2008/123097号パンフレットに記載のポリイミド樹脂;等を使用できる。
【0176】
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、特開2016-75845号公報の段落0225~0245に記載の化合物も使用でき、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0177】
アルカリ可溶性樹脂としては、ポリイミド前駆体も使用できる。ポリイミド前駆体は、酸無水物基を含む化合物とジアミン化合物とを40~100℃下において付加重合反応して得られる樹脂を意味する。
上記ポリイミド前駆体の具体例としては、例えば、特開2008-106250号公報の段落0011~0031に記載の化合物、特開2016-122101号公報の段落0022~0039に記載の化合物、特開2016-68401号公報の段落0061~0092に記載の化合物、特開2014-137523号公報の段落0050に記載された樹脂、特開2015-187676号公報の段落0058に記載された樹脂、及び特開2014-106326号公報の段落0012~0013に記載された樹脂等が挙げられ、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0178】
アルカリ可溶性樹脂としては、〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体、及び〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が、膜強度、感度、及び現像性のバランスに優れており、好適である。
上記その他の付加重合性ビニルモノマーには、1種単独でも2種以上でもよい。
上記共重合体は、硬化膜の耐湿性がより優れる点から、硬化性基を有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基を含むことがより好ましい。
例えば、上記その他の付加重合性ビニルモノマーとして硬化性基を有するモノマーを使用して共重合体に硬化性基が導入されていてもよい。また、共重合体中の(メタ)アクリル酸に由来する単位及び/又は上記その他の付加重合性ビニルモノマーに由来する単位の1種以上の、一部又は全部に、硬化性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和基)が導入されていてもよい。
上記その他の付加重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン系単量体(ヒドロキシスチレン等)、及びエーテルダイマーが挙げられる。
上記エーテルダイマーは、例えば、下記一般式(ED1)で表される化合物、及び下記一般式(ED2)で表される化合物が挙げられる。
【0179】
【化13】
【0180】
一般式(ED1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【0181】
【化14】
【0182】
一般式(ED2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の有機基を表す。一般式(ED2)の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0183】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0184】
アルカリ可溶性樹脂の酸価としては、特に制限されないが、一般に、30~500mgKOH/gが好ましく、50~200mgKOH/g以上がより好ましい。
【0185】
組成物がアルカリ可溶性樹脂を含有する場合、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、組成物の全質量に対して、0.1~40質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が特に好ましい。
【0186】
〔溶媒〕
組成物は、溶媒を含有する。溶媒としては、水及び有機溶媒が挙げられ、有機溶媒が好ましい。
溶媒の沸点は、塗布性という点から、100~400℃が好ましく、150~300℃が好ましく、170~250℃が特に好ましい。本明細書において、沸点とは、特に断りのない限り、標準沸点を意味する。
【0187】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、3-メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、酢酸ブチル、乳酸メチル、N-メチル-2-ピロリドン、及び乳酸エチル等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0188】
溶媒の含有量は、本発明の効果がより優れる点から、組成物の全質量に対して、1~60質量%が好ましく、2~50質量%がより好ましく、3~40質量%が特に好ましい。
【0189】
〔重合開始剤〕
組成物は、重合開始剤を含有してもよい。
重合開始剤としては特に制限されず、公知の重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、及び熱重合開始剤等が挙げられ、光重合開始剤が好ましい。なお、重合開始剤としては、いわゆるラジカル重合開始剤が好ましい。
組成物中における重合開始剤の含有量としては特に制限されないが、組成物の全固形分に対して、0.5~15質量%が好ましく、1.0~10質量%がより好ましく、1.5~8.0質量%がさらに好ましい。
【0190】
<熱重合開始剤>
熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、3-カルボキシプロピオニトリル、アゾビスマロノニトリル、及びジメチル-(2,2’)-アゾビス(2-メチルプロピオネート)[V-601]等のアゾ化合物、並びに、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、及び過硫酸カリウム等の有機過酸化物が挙げられる。
重合開始剤の具体例としては、例えば、加藤清視著「紫外線硬化システム」(株式会社総合技術センター発行:平成元年)の第65~148頁に記載されている重合開始剤等が挙げられる。
【0191】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始できれば特に制限されず、公知の光重合開始剤を使用できる。光重合開始剤としては、例えば、紫外線領域から可視光領域に対して感光性を有する光重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、重合性化合物の種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、光重合開始剤は、300~800nm(330~500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも50のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含んでいることが好ましい。
【0192】
光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を含む化合物、オキサジアゾール骨格を含む化合物、等)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、アミノアセトフェノン化合物、及びヒドロキシアセトフェノン等が挙げられる。
光重合開始剤の具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落0265~0268を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0193】
光重合開始剤としては、より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、及び特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィン系開始剤も使用できる。
ヒドロキシアセトフェノン化合物としては、例えば、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、及びIRGACURE-127(商品名、いずれもBASF社製)を使用できる。
アミノアセトフェノン化合物としては、例えば、市販品であるIRGACURE-907、IRGACURE-369、及びIRGACURE-379EG(商品名、いずれもBASF社製)を使用できる。アミノアセトフェノン化合物としては、波長365nm又は波長405nm等の長波光源に吸収波長がマッチングされた特開2009-191179公報に記載の化合物も使用できる。
アシルホスフィン化合物としては、市販品であるIRGACURE-819、及びIRGACURE-TPO(商品名、いずれもBASF社製)を使用できる。
【0194】
光重合開始剤として、オキシムエステル系重合開始剤(オキシム化合物)がより好ましい。特にオキシム化合物は高感度で重合効率が高く、組成物中における色材の含有量を高く設計しやすいため好ましい。
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、又は特開2006-342166号公報に記載の化合物を使用できる。
オキシム化合物としては、例えば、3-ベンゾイロキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイロキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられる。
また、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653-1660、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202-232、特開2000-66385号公報に記載の化合物、及び、特表2004-534797号公報に記載の化合物等も挙げられる。
市販品ではIRGACURE-OXE01(BASF社製)、IRGACURE-OXE02(BASF社製)、IRGACURE-OXE03(BASF社製)、又はIRGACURE-OXE04(BASF社製)も好ましい。また、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(ADEKA社製)、又はN-1919(カルバゾール・オキシムエステル骨格含有光開始剤(ADEKA社製))も使用できる。
【0195】
また上記記載以外のオキシム化合物として、カルバゾールN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物;ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物;色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報及び米国特許公開2009-292039号明細書に記載の化合物;国際公開第2009-131189号パンフレットに記載のケトオキシム化合物;及びトリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含む米国特許第7556910号明細書に記載の化合物;405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報に記載の化合物;等を用いてもよい。
例えば、特開2013-29760号公報の段落0274~0275を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
具体的には、オキシム化合物としては、下記式(OX-1)で表される化合物が好ましい。なお、オキシム化合物のN-O結合が(E)体のオキシム化合物であっても、(Z)体のオキシム化合物であっても、(E)体と(Z)体との混合物であってもよい。
【0196】
【化15】
【0197】
式(OX-1)中、R及びBはそれぞれ独立に1価の置換基を表し、Aは2価の有機基を表し、Arはアリール基を表す。
式(OX-1)中、Rで表される1価の置換基としては、1価の非金属原子団が好ましい。
1価の非金属原子団としては、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環基、アルキルチオカルボニル基、及びアリールチオカルボニル基等が挙げられる。また、これらの基は、1以上の置換基を有していてもよい。また、前述した置換基は、さらに他の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、アルキル基、及びアリール基等が挙げられる。
式(OX-1)中、Bで表される1価の置換基としては、アリール基、複素環基、アリールカルボニル基、又は複素環カルボニル基が好ましく、アリール基、又は複素環基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
式(OX-1)中、Aで表される2価の有機基としては、炭素数1~12のアルキレン基、シクロアルキレン基、又はアルキニレン基が好ましい。これらの基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、前述した置換基が例示できる。
【0198】
光重合開始剤として、フッ素原子を含むオキシム化合物も使用できる。フッ素原子を含むオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物;特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40;及び特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3);等が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0199】
光重合開始剤として、下記一般式(1)~(4)で表される化合物も使用できる。
【0200】
【化16】
【0201】
【化17】
【0202】
式(1)において、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20の脂環式炭化水素基、炭素数6~30のアリール基、又は炭素数7~30のアリールアルキル基を表し、R及びRがフェニル基の場合、フェニル基同士が結合してフルオレン基を形成してもよく、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基又は炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合又はカルボニル基を示す。
【0203】
式(2)において、R、R、R、及びRは、式(1)におけるR、R、R、及びRと同義であり、Rは、-R、-OR、-SR、-COR、-CONR、-NRCOR、-OCOR、-COOR、-SCOR、-OCSR、-COSR、-CSOR、-CN、ハロゲン原子、又は水酸基を表し、Rは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、又は炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合又はカルボニル基を表し、aは0~4の整数を表す。
【0204】
式(3)において、Rは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20の脂環式炭化水素基、炭素数6~30のアリール基、又は炭素数7~30のアリールアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、又は炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合又はカルボニル基を示す。
【0205】
式(4)において、R、R、及びRは、式(3)におけるR、R、及びRと同義であり、Rは、-R、-OR、-SR、-COR、-CONR、-NRCOR、-OCOR、-COOR、-SCOR、-OCSR、-COSR、-CSOR、-CN、ハロゲン原子、又は水酸基を表し、Rは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基、又は炭素数4~20の複素環基を表し、Xは、直接結合又はカルボニル基を表し、aは0~4の整数を表す。
【0206】
上記式(1)及び(2)において、R及びRは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基が好ましい。Rはメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、又はキシリル基が好ましい。Rは炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基が好ましい。Rはメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、又はナフチル基が好ましい。Xは直接結合が好ましい。
また、上記式(3)及び(4)において、Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロヘキシル基、又はフェニル基が好ましい。Rはメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、又はキシリル基が好ましい。Rは炭素数1~6のアルキル基、又はフェニル基が好ましい。Rはメチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、又はナフチル基が好ましい。Xは直接結合が好ましい。
式(1)及び式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、特開2014-137466号公報の段落0076~0079に記載された化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0207】
上記組成物に好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示す。以下に示すオキシム化合物の中でも、一般式(C-13)で表されるオキシム化合物がより好ましい。
また、オキシム化合物としては、国際公開第2015-036910号パンフレットのTable1に記載の化合物も使用でき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0208】
【化18】
【0209】
【化19】
【0210】
オキシム化合物は、350~500nmの波長領域に極大吸収波長を有することが好ましく、360~480nmの波長領域に極大吸収波長を有することがより好ましく、365nm及び405nmの波長の吸光度が高いことがさらに好ましい。
オキシム化合物の365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の点から、1,000~300,000が好ましく、2,000~300,000がより好ましく、5,000~200,000がさらに好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法で測定できるが、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチルを用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
光重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0211】
また、光重合開始剤としては、特開第2008-260927号公報の段落0052、特開第2010-97210号公報の段落0033~0037、及び特開第2015-68893号公報の段落0044に記載の化合物も使用でき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0212】
〔重合性化合物〕
本発明の組成物は、重合性化合物を含んでいてもよい。
本明細書において重合性化合物とは、上述した重合開始剤の作用を受けて重合する化合物を意味し、上述した本発明の組成物中の樹脂とは異なる成分を意味する。
【0213】
組成物中における重合性化合物の含有量としては特に制限されないが、組成物の全固形分に対して、1~25質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましい。
重合性化合物の分子量(又は重量平均分子量)は、特に制限されないが、2000以下が好ましい。
【0214】
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を含む基(以下、単に「エチレン性不飽和基」ともいう)を含む化合物が好ましい。
つまり本発明の組成物は、エチレン性不飽和基を含む低分子化合物を、重合性化合物として含むことが好ましい。
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を1個以上含む化合物が好ましく、2個以上含む化合物がより好ましく、3個以上含む化合物がさらに好ましく、5個以上含む化合物が特に好ましい。上限は、例えば、15個以下である。エチレン性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0215】
重合性化合物としては、例えば、特開2008-260927号公報の段落0050、及び特開2015-68893号公報の段落0040に記載されている化合物を使用でき、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0216】
重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、オリゴマー、及びこれらの混合物、並びに、これらの多量体等の化学的形態のいずれであってもよい。
重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物が好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。
【0217】
重合性化合物は、エチレン性不飽和基を1個以上含む、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。例えば、特開2013-29760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落0254~0257に記載の化合物を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0218】
重合性化合物は、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬社製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬社製、A-DPH-12E;新中村化学社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を介している構造(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。また、NKエステルA-TMMT(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学社製)、KAYARAD RP-1040、KAYARAD DPEA-12LT、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD RP-3060、及びKAYARAD DPEA-12(いずれも商品名、日本化薬社製)等を使用してもよい。
以下に好ましい重合性化合物の態様を示す。
【0219】
重合性化合物は、カルボン酸基、スルホン酸基、及びリン酸基等の酸基を有していてもよい。酸基を含む重合性化合物としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応の水酸基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた重合性化合物がより好ましく、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールである化合物がさらに好ましい。市販品としては、例えば、東亞合成社製の、アロニックスTO-2349、M-305、M-510、及びM-520等が挙げられる。
【0220】
酸基を含む重合性化合物の酸価としては、0.1~40mgKOH/gが好ましく、5~30mgKOH/gがより好ましい。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像溶解特性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造及び/又は取扱い上、有利である。さらには、光重合性能が良好で、硬化性に優れる。
【0221】
重合性化合物は、カプロラクトン構造を含む化合物も好ましい態様である。
カプロラクトン構造を含む化合物としては、分子内にカプロラクトン構造を含む限り特に制限されないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、又はトリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸及びε-カプロラクトンとをエステル化して得られる、ε-カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも下記式(Z-1)で表されるカプロラクトン構造を含む化合物が好ましい。
【0222】
【化20】
【0223】
式(Z-1)中、6個のRは全てが下記式(Z-2)で表される基であるか、又は6個のRのうち1~5個が下記式(Z-2)で表される基であり、残余が下記式(Z-3)で表される基である。
【0224】
【化21】
【0225】
式(Z-2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2の数を示し、「*」は結合手を示す。
【0226】
【化22】
【0227】
式(Z-3)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、「*」は結合手を示す。
【0228】
カプロラクトン構造を含む重合性化合物は、例えば、日本化薬からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20(上記式(Z-1)~(Z-3)においてm=1、式(Z-2)で表される基の数=2、Rが全て水素原子である化合物)、DPCA-30(同式、m=1、式(Z-2)で表される基の数=3、Rが全て水素原子である化合物)、DPCA-60(同式、m=1、式(Z-2)で表される基の数=6、Rが全て水素原子である化合物)、及びDPCA-120(同式においてm=2、式(Z-2)で表される基の数=6、Rが全て水素原子である化合物)等が挙げられる。また、カプロラクトン構造を含む重合性化合物の市販品としては、東亞合成社製M-350(商品名)(トリメチロールプロパントリアクリレート)も挙げられる。
【0229】
重合性化合物は、下記式(Z-4)又は(Z-5)で表される化合物も使用できる。
【0230】
【化23】
【0231】
式(Z-4)及び(Z-5)中、Eは、-((CHCHO)-、又は((CHCH(CH)O)-を表し、yは、0~10の整数を表し、Xは、(メタ)アクリロイル基、水素原子、又はカルボン酸基を表す。
式(Z-4)中、(メタ)アクリロイル基の合計は3個又は4個であり、mは0~10の整数を表し、各mの合計は0~40の整数である。
式(Z-5)中、(メタ)アクリロイル基の合計は5個又は6個であり、nは0~10の整数を表し、各nの合計は0~60の整数である。
【0232】
式(Z-4)中、mは、0~6の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましい。
また、各mの合計は、2~40の整数が好ましく、2~16の整数がより好ましく、4~8の整数がさらに好ましい。
式(Z-5)中、nは、0~6の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましい。
また、各nの合計は、3~60の整数が好ましく、3~24の整数がより好ましく、6~12の整数がさらに好ましい。
また、式(Z-4)又は式(Z-5)中の-((CHCHO)-又は((CHCH(CH)O)-は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
【0233】
式(Z-4)又は式(Z-5)で表される化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。特に、式(Z-5)において、6個のX全てがアクリロイル基である形態、式(Z-5)において、6個のX全てがアクリロイル基である化合物と、6個のXのうち、少なくとも1個が水素原子である化合物との混合物である態様が好ましい。このような構成として、現像性をより向上できる。
【0234】
また、式(Z-4)又は式(Z-5)で表される化合物の重合性化合物中における全含有量としては、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
式(Z-4)又は式(Z-5)で表される化合物の中でも、ペンタエリスリトール誘導体及び/又はジペンタエリスリトール誘導体がより好ましい。
【0235】
また、重合性化合物は、カルド骨格を含んでいてもよい。
カルド骨格を含む重合性化合物としては、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を含む重合性化合物が好ましい。
カルド骨格を含む重合性化合物としては、制限されないが、例えば、オンコートEXシリーズ(長瀬産業社製)及びオグソール(大阪ガスケミカル社製)等が挙げられる。
重合性化合物は、イソシアヌル酸骨格を中心核として含む化合物も好ましい。このような重合性化合物の例としては、例えば、NKエステルA-9300(新中村化学社製)が挙げられる。
重合性化合物のエチレン性不飽和基の含有量(重合性化合物中のエチレン性不飽和基の数を、重合性化合物の分子量(g/mol)で除した値を意味する)は5.0mmol/g以上が好ましい。上限は特に制限されないが、一般に、20.0mmol/g以下である。
【0236】
重合性化合物としては、オキサシクロ化合物を用いることも好ましい。オキサシクロ化合物としては、エポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物が好ましく、エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)が特に好ましい。
このような、重合性化合物の具体例としては、単官能又は多官能グリシジルエーテル化合物が挙げられる。
また、市販品としては、デナコール EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L、(以上、ナガセケムテックス(株)製)等の多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物が挙げられる。これらは、低塩素品であるが、低塩素品ではない、EX-212、EX-214、EX-216、EX-321、EX-614、EX-850なども同様に使用できる。
また、市販品としては、セロキサイド 2021P(ダイセル社製、多官能エポキシモノマー)も使用できる。
【0237】
〔重合禁止剤〕
組成物は、重合禁止剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤としては特に制限されず、公知の重合禁止剤を使用できる。重合禁止剤としては、例えば、フェノール系重合禁止剤(例えば、p-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジtert-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4-メトキシナフトール等);ハイドロキノン系重合禁止剤(例えば、ハイドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルハイドロキノン等);キノン系重合禁止剤(例えば、ベンゾキノン等);フリーラジカル系重合禁止剤(例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル等);ニトロベンゼン系重合禁止剤(例えば、ニトロベンゼン、4-ニトロトルエン等);及びフェノチアジン系重合禁止剤(例えば、フェノチアジン、2-メトキシフェノチアジン等);等が挙げられる。
中でも、フェノール系重合禁止剤、又はフリーラジカル系重合禁止剤が好ましい。
【0238】
重合禁止剤は、硬化性基を含む樹脂と共に用いる場合にその効果が顕著である。
組成物中における重合禁止剤の含有量としては特に制限されないが、組成物の全固形分に対して、0.0001~0.5質量%が好ましく、0.0001~0.2質量%がより好ましく、0.0001~0.05質量%がさらに好ましい。
また、組成物中の重合性化合物の含有量に対する、重合禁止剤の含有量の比(重合禁止剤の含有量/重合性化合物の含有量(質量比))は、0.0005超が好ましく、0.0006~0.02がより好ましく、0.0006~0.005がさらに好ましい。
【0239】
〔界面活性剤〕
組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、組成物の塗布性向上に寄与する。
組成物が、界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量としては、組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、0.005~0.5質量%がより好ましく、0.01~0.1質量%がさらに好ましい。
【0240】
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0241】
例えば、組成物がフッ素系界面活性剤を含めば、組成物の液特性(特に、流動性)がより向上する。即ち、フッ素系界面活性剤を含む組成物を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させて、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚さムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0242】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましく、7~25質量%がさらに好ましい。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性及び/又は省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0243】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、及び同F780(以上、DIC社製);フロラードFC430、同FC431、及び同FC171(以上、住友スリーエム社製);サーフロンS-382、同SC-101、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-1068、同SC-381、同SC-383、同S-393、及び同KH-40(以上、AGC社製);並びに、PF636、PF656、PF6320、PF6520、及びPF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としてブロックポリマーも使用でき、具体例としては、例えば特開第2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。
【0244】
〔その他の任意成分〕
組成物は、上述した成分以外のその他の任意成分をさらに含んでいてもよい。例えば、増感剤、共増感剤、架橋剤(硬化剤)、硬化促進剤、熱硬化促進剤、可塑剤、希釈剤、感脂化剤、ゴム成分等が挙げられ、さらに、基板表面への密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、及び連鎖移動剤等)等の公知の添加剤を必要に応じて加えてもよい。
【0245】
〔組成物の物性〕
組成物の23℃における粘度は、せん断速度が0.1(1/s)である場合、磁性粒子の沈降安定性がより優れる点から、1~10000Pa・sが好ましく、10~5000Pa・sがより好ましく、50~1000Pa・sが特に好ましい。
組成物の23℃における粘度は、せん断速度が1000(1/s)である場合、磁性粒子の沈降安定性がより優れる点から、100Pa・s以下が好ましく、50Pa・s以下がより好ましく、10Pa・s以下が特に好ましい。せん断速度が1000(1/s)である場合の下限値は、0.001Pa・s以上が好ましい。
ここで、組成物の23℃における粘度は、MCR-102(アントンパール社製)を用いて、0.1/sから1000/sに昇速させながら23℃で測定することで得られる。
【0246】
〔組成物の製造方法〕
組成物は、上記の各成分を公知の混合方法(例えば、撹拌機、ホモジナイザー、高圧乳化装置、湿式粉砕機、又は湿式分散機等を用いた混合方法)により混合して調製できる。
本発明の組成物の調製に際しては、各成分を一括配合してもよいし、各成分をそれぞれ、溶媒に溶解又は分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序及び作業条件は特に制限されない。
【0247】
[磁性粒子含有膜]
本発明の磁性粒子含有膜は、上述の本発明の磁性粒子含有組成物を用いて形成される。
磁性粒子含有膜の膜厚は、透磁率により優れる点から、1~10000μmが好ましく、10~1000μmがより好ましく、15~800μmが特に好ましい。
磁性粒子含有膜は、電子通信機器等に装備されるアンテナ及びインダクタ等の電子部品として好適に用いられる。
【0248】
〔磁性粒子含有膜の製造方法〕
本発明の磁性粒子含有膜は、例えば、上記組成物を硬化して得られる。
磁性粒子含有膜の製造方法としては特に制限されないが、以下の工程を含むことが好ましい。
・組成物層形成工程
・硬化工程
【0249】
<組成物層形成工程>
組成物層形成工程においては、基板(支持体)等の上に磁性粒子含有組成物を付与して、磁性粒子含有組成物の層(組成物層)を形成する。基板としては、例えば、アンテナ部又はインダクタ部を有する配線基板等を使用できる。
【0250】
基板上への磁性粒子含有組成物の適用方法としては、スリット塗布法、インクジェット法、回転塗布法、流延塗布法、ロール塗布法、及び、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用できる。組成物層の膜厚としては、1~10000μmが好ましく、10~1000μmがより好ましく、15~800μmが特に好ましい。基板上に塗布された組成物層の乾燥(プリベーク)は、例えば、ホットプレート、オーブン等で50~140℃の温度で10~1800秒間で行える。
【0251】
<硬化工程>
硬化工程としては、組成物層を硬化できるのであれば特に制限されないが、組成物層を加熱する加熱処理、及び、組成物層を活性光線又は放射線を照射する露光処理等が挙げられる。
【0252】
加熱処理を行う場合、加熱処理は、例えば、ホットプレート、コンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、又は、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式又はバッチ式で行える。
加熱処理における加熱温度は、120~260℃が好ましく、150~240℃が特に好ましい。
なお、組成物層形成工程におけるプリベークが、硬化工程における加熱処理を兼ねていてもよい。
【0253】
露光処理を行う場合、活性光線又は放射線の照射方法としては特に制限されないが、パターン状の開口部を有するフォトマスクを介して照射することが好ましい。
露光は、放射線の照射により行うことが好ましい。露光に際して使用できる放射線としては、g線、h線、及び、i線等の紫外線が好ましく、光源としては高圧水銀灯が好まれる。照射強度は5~1500mJ/cmが好ましく、10~1000mJ/cmがより好ましい。
なお、磁性粒子含有組成物が熱重合開始剤を含む場合、上記露光処理において、組成物層を加熱してもよい。加熱温度として特に制限されないが、80~250℃が好ましい。
また、加熱時間としては特に制限されないが、30~300秒間が好ましい。
なお、露光処理において、組成物層を加熱する場合、後述する後加熱工程を兼ねてもよい。言い換えれば、露光処理において、組成物層を加熱する場合、磁性粒子含有膜の製造方法は後加熱工程を含有しなくてもよい。
【0254】
<現像工程>
硬化工程において露光処理を行う場合、現像工程をさらに含んでいてもよい。
現像工程は、露光後の上記組成物層を現像して磁性粒子含有膜を形成する工程である。本工程により、露光処理における光未照射部分の組成物層が溶出し、光硬化した部分だけが残り、パターン状の磁性粒子含有膜が得られる。
現像工程で使用される現像液の種類は特に制限されないが、回路等にダメージを起こさないアルカリ現像液が望ましい。
現像温度としては、例えば、20~30℃である。
現像時間は、例えば、20~90秒間である。残渣をよりよく除去するため、近年では120~180秒間実施する場合もある。さらには、残渣除去性をより向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返す場合もある。
【0255】
アルカリ現像液としては、アルカリ性化合物を濃度が0.001~10質量%(好ましくは0.01~5質量%)となるように水に溶解して調製されたアルカリ性水溶液が好ましい。
アルカリ性化合物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム,ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、及び、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる(このうち、有機アルカリが好ましい。)。
なお、アルカリ現像液として用いた場合は、一般に現像後に水で洗浄処理が施される。
【0256】
<ポストベーク>
硬化工程において露光処理を行う場合、硬化工程の後に、加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。ポストベークは、硬化を完全にするための現像後の加熱処理である。その加熱温度は、240℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましい。下限は特にないが、効率的かつ効果的な処理を考慮すると、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
ポストベークは、ホットプレート、コンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、又は、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式又はバッチ式で行える。
【0257】
上記のポストベークは、低酸素濃度の雰囲気下で行うことが好ましい。その酸素濃度は、19体積%以下が好ましく、15体積%以下がより好ましく、10体積%以下がさらに好ましく、7体積%以下が特に好ましく、3体積%以下が最も好ましい。下限は特にないが、10体積ppm以上が実際的である。
【0258】
また、上記の加熱によるポストベークに変え、UV(紫外線)照射によって硬化を完遂させてもよい。
この場合、磁性粒子含有組成物は、さらにUV硬化剤を含むことが好ましい。UV硬化剤は、通常のi線露光によるリソグラフィー工程のために添加する重合開始剤の露光波長である365nmより短波の波長で硬化できるUV硬化剤が好ましい。UV硬化剤としては、例えば、Omnirad 2959(商品名)(IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。UV照射を行う場合においては、組成物層が波長340nm以下で硬化する材料であることが好ましい。波長の下限値は特にないが、220nm以上が一般的である。またUV照射の露光量は100~5000mJが好ましく、300~4000mJがより好ましく、800~3500mJがさらに好ましい。このUV硬化工程は、露光処理の後に行うことが、低温硬化をより効果的に行うために、好ましい。露光光源はオゾンレス水銀ランプを使用することが好ましい。
【0259】
[電子部品]
本発明の電子部品は、上述の本発明の磁性粒子含有膜を含む。すなわち、本発明の電子部品は、上記磁性粒子含有膜を部品の一部として含んでいてもよい。電子部品としては、インダクタ及びアンテナが挙げられる。電子部品としては、公知の構造を有するものを用いることができる。
【実施例0260】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容及び処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0261】
[磁性粒子含有組成物の調製に使用した各種成分]
磁性粒子含有組成物の調製にあたって、表1に記載の各成分を準備した。表1に記載の各成分の概要を以下に示す。
【0262】
〔磁性粒子〕
M-1:Fe基アモルファス粒子(製品名「AW2-08 PF-5F」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径3μm)
M-2:Fe基アモルファス粒子(製品名「AW2-08 PF-8F」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径5μm)
M-3:Fe-Si-Cr系合金粒子(製品名「MA-XCQ-4」、DOWAエレクトロニクス社製、平均一次粒子径3μm)
M-4:Fe-Si-Cr系合金粒子(製品名「MA-XCQ-5」、DOWAエレクトロニクス社製、平均一次粒子径5μm)
M-5:Fe基アモルファス粒子(製品名「KUAMET6B2-V1-38μm」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径15μm)
M-6:Fe基アモルファス粒子(製品名「KUAMET6B2-53μm」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径24μm)
M-7:Fe基アモルファス粒子(製品名「KUAMET6B2-150μm」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径50μm)
M-8:Co基アモルファス粒子(製品名「KUAMET-CT5-25μm」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径25μm)
M-9:Co基アモルファス粒子(製品名「KUAMET-CT5-5μm」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径5μm)
M-10:スーパーマロイ粒子(製品名「80%NI-4MO WA13」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径15μm)
M-11:スーパーマロイ粒子(製品名「80%NI-4MO PF-15F」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径8μm)
M-12:スーパーマロイ粒子(製品名「80%NI-4MO PF-5F」、エプソンアトミックス社製、平均一次粒子径4μm)
M-13:Ni-Zn系フェライト粒子(製品名「BSN-125」、戸田工業社製、平均一次粒子径5μm)
M-14:Mn-Zn系フェライト粒子(製品名「BSF-547」、戸田工業社製、平均一次粒子径11μm)
M-15:Ni-Zn系フェライト粒子(製品名「NB4」、日本重化学工業社製、平均一次粒子径3μm)
M-16:マグネトプランバイト型六方晶フェライト粒子(SrFe(9.58)Al(2.42)19、国際公開第2019/131675号の実施例1に記載の方法と同様にして製造、結晶相が単層、平均一次粒子径0.1μm)
M-17:マグネトプランバイト型六方晶フェライト粒子(SrFe(9.58)Al(2.42)19、国際公開第2019/131675号の実施例1に記載の方法と同様にして製造、結晶相が単層、平均一次粒子径5μm)
M-18:マグネトプランバイト型六方晶フェライト粒子(SrFe(9.58)Al(2.42)19、国際公開第2019/131675号の実施例1に記載の方法と同様にして製造、結晶相が単層、平均一次粒子径15μm)
【0263】
なお、磁性粒子の平均一次粒子径はいずれも、上述の方法によって測定した測定値である。
【0264】
〔樹脂(分散剤)〕
D-1:下記化合物(重量平均分子量10000、アミン価50mgKOH/g、酸価50mgKOH/g、溶媒S-1に対する溶解度300g/L、溶媒S-2に対する溶解度300g/L)
D-2:下記化合物(重量平均分子量10000、溶媒S-1に対する溶解度300g/L、溶媒S-2に対する溶解度300g/L、酸価70mgKOH/g)
D-3:下記化合物(重量平均分子量10000、酸価40mgKOH/g、溶媒S-1に対する溶解度400g/L、溶媒S-2に対する溶解度400g/L)
D-4:製品名「BYK-P105」(BYK社製)、低分子量不飽和カルボン酸のポリマー、酸価365mgKOH/g、溶媒S-1に対する溶解度500g/L、溶媒S-2に対する溶解度500g/L
D-5:製品名「ANTI-TERRA-204」(BYK社製)、ポリアミノアマイドのポリカルボン酸塩の溶液、アミン価37mgKOH/g、酸価41mgKOH/g、溶媒S-1に対する溶解度300g/L、溶媒S-2に対する溶解度300g/L
D-6:製品名「ターレン VA-705B」(共栄社化学社製)、高級脂肪酸アマイド、溶媒S-1に対する溶解度100g/L、溶媒S-2に対する溶解度100g/L
D-7:製品名「FLOWNON RCM-300TL」(共栄社化学社製)、高級脂肪酸アマイド、溶媒S-1に対する溶解度100g/L、溶媒S-2に対する溶解度100g/L
D-8:下記化合物
【0265】
【化24】
【0266】
【化25】
【0267】
【化26】
【0268】
【化27】
【0269】
〔溶媒〕
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、沸点146℃
S-2:1,4-ブタンジオールジアセテート(1,4-BDDA)、沸点232℃
【0270】
〔その他の成分〕
A-1:硬化促進剤(トリフェニルホスフィン、東京化成工業社製)
A-2:光重合開始剤(製品名「IRGACURE-OXE03」、BASF社製)
A-3:重合性化合物(製品名「KAYARAD RP-1040」、日本化薬社製、多官能アクリルモノマー)
A-4:重合性化合物(製品名「セロキサイド 2021P」、ダイセル社製、多官能エポキシモノマー)
A-5:重合性化合物(製品名「デナコール EX-614」、ナガセケムテックス社製、多官能エポキシモノマー)
A-6:光重合開始剤(製品名「アデカアークルズ NCI-831」、ADEKA社製)
A-7:重合性化合物(製品名「A-TMMT」、東亞合成社製、多官能アクリルモノマー)
【0271】
〔実施例及び比較例の磁性粒子含有組成物の調製〕
表1に示す溶媒以外の成分について、表1に示す組成比(質量基準)になるように表1に記載の成分を混合して、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製の密閉容器に投入した。続いて、表1に示す組成比(質量基準)になるように溶媒を添加した後、容器を密閉して、Resodyn社製のRAM(低周波共振音響ミキサー)を用いて、50G、2時間で分散することで、各実施例及び比較例の磁性粒子含有組成物を調製した。
【0272】
<磁性粒子含有組成物の物性>
磁性粒子含有組成物について、上述の方法にしたがって、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線を測定し、磁性粒子含有組成物に含まれる磁性粒子のDmax(μm)、Dmin(μm)、Dmax/Dminをそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0273】
磁性粒子含有組成物の23℃における粘度を上述した方法にしたがって測定した。なお、粘度は、測定値に基づいて以下の基準により分類した。結果を表1に示す。
(昇速条件:0.1(1/s))
A:50Pa・s以上
B:1Pa・s以上、50Pa・s未満
C:1Pa・s未満
(昇速条件:1000(1/s))
A:10Pa・s未満
B:10Pa・s以上、50Pa・s未満
C:50Pa・s以上
【0274】
[透磁率評価用の磁性粒子含有膜の製造]
上記のようにして得られた磁性粒子含有組成物を用いて、後述する透磁率評価用の磁性粒子含有膜を製造した。
具体的には、シリコンウエハ(膜厚100μm)(以下、「基板A」ともいう。)上に各磁性粒子含有組成物をドロップした後、ベーカーアプリケーターを用いて、後述のベーク後に100μmの膜厚になるように塗布を行った。その後、100℃のホットプレートを用いて10分間乾燥ベークを実施した上で、230℃のホットプレートを用いて15分間硬化ベークを実施し、透磁率評価用の磁性粒子含有膜を得た。
ただし、磁性粒子含有組成物が光重合開始剤を含有する場合には、硬化ベークの代わりに、UV(ultraviolet) Cure装置(ウシオ電機製)を用いて20J/cmの露光量で塗膜を全面露光し、透磁率評価用の磁性粒子含有膜を得た。
【0275】
[パターン形状評価用の磁性粒子含有膜の製造]
上記のようにして得られた磁性粒子含有組成物のうち、光重合開始剤を含有する磁性粒子含有組成物について、後述するパターン形状評価用の磁性粒子含有膜を製造した。
具体的には、下塗り層(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製、CT-4000L、厚さ0.1μm)付きシリコンウエハ(膜厚700μm)(以下、「基板B」ともいう。)上に各磁性粒子含有組成物をドロップした後、ベーカーアプリケーターを用いて、後述のベーク後に30μmの膜厚になるように塗布を行った。その後、100℃のホットプレートを用いて10分間乾燥ベークを実施して、乾燥膜を得た。
続いて、ラインアンドスペースパターン(ライン幅300μm、スペース幅300μm)のマスクを介して、プロキシミリティ露光機にて、100mJ/cmの条件で乾燥膜の露光処理を行った。
露光後、簡易現像装置(ミカサ社製)を用いて、23℃で60秒間のシャワー現像処理を行った。なお、現像液には、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の含有量が0.3質量%である水溶液を用いた。
現像後、純水を用いたスピンシャワーによるリンス処理を行い、次いで、スピン乾燥した後、200℃のホットプレートを用いて5分間の加熱処理(ポストベーク)を行った。
このようにして、パターン形状評価用の磁性粒子含有膜を得た。
【0276】
[評価試験]
〔沈降安定性(経時安定性)〕
上記のようにして得られた磁性粒子含有組成物の3mLをガラス製のサンプル瓶(直径23mm×高さ35mmの円柱形)に投入し、密閉した後、25℃で30日間静置した。
その後、サンプル瓶中の磁性粒子含有組成物を目視にて観察して、気液界面から、透明な領域と不透明な領域との界面までの距離d1、及び、気液界面からサンプル瓶の底面までの距離d2を測定した。距離d1及び距離d2を用いて以下の基準によって、沈降安定性を評価した。以下の基準が「2」以上であれば、沈降安定性に優れると判断した。結果を表1に示す。
3: d1/d2=0
2: 0.4≧d1/d2>0
1: d1/d2>0.4
【0277】
〔透磁率〕
上記のようにして得られた透磁率評価用の磁性粒子含有膜を10mm×28mmのサイズに切断した。切断したサンプルについて、高周波透磁率測定装置(キーコム(株)製、Model No.PER01)を用いて、100MHzにおける比透磁率μ’を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。以下の評価基準が「3」以上であれば、透磁率に優れると判断した。結果を表1に示す。
5: 比透磁率μ’が20以上
4: 比透磁率μ’が15以上20未満
3: 比透磁率μ’が10以上15未満
2: 比透磁率μ’が5以上10未満
1: 比透磁率μ’が1以上5未満
【0278】
〔パターン形状〕
上記のようにして得られたパターン形状評価用の磁性粒子含有膜を光学顕微鏡(製品名「BX53M」、オリンパス社製)を用いて観察し、以下の評価基準に基づいてパターン形状を評価した。結果を表1に示す。
3:ラインパターンが基板に密着しており、スペースも形成されており、50μm以上のサイズの残渣が存在しない。
2:ラインパターンが基板に密着しており、スペースも形成されているが、スペース部分に50μm以上のサイズの残渣が存在する。
1:ラインパターンが基板に密着していない、又は、スペースが埋まっている(スペースが存在しない)。
【0279】
【表1】
【0280】
【表2】
【0281】
【表3】
【0282】
【表4】
【0283】
【表5】
【0284】
【表6】
【0285】
【表7】
【0286】
表1に示すように、体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線において複数のピークトップを有する磁性粒子と、樹脂と、溶媒と、を含有する、磁性粒子含有組成物は、沈降安定性に優れ、かつ、これを用いて形成された磁性粒子含有膜は透磁率が優れていた(実施例)。
【0287】
実施例1~12の対比から、Dmax/Dminが2超であれば(実施例1~9、11、12)、これを用いて形成された磁性粒子含有膜は透磁率がより優れていることが示された。
実施例3及び実施例21~24との対比から、酸基、塩基性基またはアミド基を有する樹脂を用いれば(実施例21~24)、磁性粒子含有組成物の沈降安定性により優れることが示された。
実施例50~55の対比から、磁性粒子の含有量が磁性粒子含有組成物の全質量に対して60質量%以上であれば(実施例50、51及び53)、磁性粒子含有組成物の沈降安定性と、磁性粒子含有膜の透磁率と、をより高いレベルで両立できることが示された。
【0288】
一方、磁性粒子含有組成物に含まれる磁性粒子の体積基準の頻度分布を表す粒度分布曲線におけるピークトップが1つである場合、磁性粒子含有組成物の沈降安定性、及び、これを用いて形成された磁性粒子含有膜の透磁率、の少なくとも一方が劣ることが示された(比較例)。
図1
図2