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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113023
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】洗浄方法、塗布装置及び洗浄用治具
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240814BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
B05C11/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024089902
(22)【出願日】2024-06-03
(62)【分割の表示】P 2022509953の分割
【原出願日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2020057079
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】新村 聡
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲柳▼ 康治
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 健太
(72)【発明者】
【氏名】稲田 博一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回転塗布装置の容器内を高さ方向により広い範囲を洗浄する洗浄用治具を用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】回転保持装置に洗浄用治具50を保持させて回転塗布装置を洗浄する洗浄方法であって、洗浄用治具の周縁部に周縁天井部54と周縁底部55とが周方向に形成され、周縁天井部と周縁底部との間に吐出口56が全周に亘って連続して周方向に形成され、周縁底部に孔61が周方向に間隔をもって複数形成され、周縁天井部の下面は、外周上方に向けて斜めに傾斜し、回転保持装置に洗浄用治具を保持した状態で第一の回転数で洗浄用治具を回転させ、洗浄用治具の底部に洗浄液を供給して、底部から誘導路を通して吐出口に洗浄液を溜めること、内カップに洗浄液を到達させること、第一の回転数より高回転の第二の回転数で洗浄用治具を回転させながら、吐出口に溜まっている洗浄液を吐出口より上方に位置する外カップの部位に到達させることを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に配置された回転保持装置に保持された基板の上に処理液を供給し、前記基板の回転によって前記基板上に前記処理液の膜を形成する回転塗布装置において、前記回転保持装置に基板と同様の円盤状の洗浄用治具を保持させて前記回転塗布装置を洗浄する洗浄方法であって、
前記容器は、上面が開口し、前記回転保持装置に保持された基板を囲うように設けられる外カップと、前記回転保持装置に保持された基板の下方に位置し、液を排液口に向け排出するための内カップとを有し、
前記洗浄用治具の周縁部には、周縁天井部と周縁底部とが周方向に形成され、
前記周縁天井部と周縁底部との間には吐出口が全周に亘って連続して周方向に形成され、
前記周縁底部には、前記吐出口に通ずる誘導路の入口である孔が周方向に間隔をもって複数形成され、
前記周縁天井部の下面は、外周上方に向けて斜めに傾斜し、
前記回転保持装置に前記洗浄用治具を保持した状態で第一の回転数で前記洗浄用治具を回転させながら、前記洗浄用治具の底部に洗浄液を供給して、底部から前記誘導路を通して前記吐出口に前記洗浄液を溜めること及び、前記内カップに前記洗浄液を到達させることと、
次いで、前記第一の回転数より高回転の第二の回転数で前記洗浄用治具を回転させながら、前記吐出口に溜まっている前記洗浄液を、前記吐出口より上方に位置する前記外カップの部位に到達させることと、
を含む、洗浄方法。
【請求項2】
前記誘導路は、前記吐出口に向かうにつれ流路断面積が大きくなる形状を有する、請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記孔は、それぞれが周方向に対し円弧状であり、等間隔で設けられている、請求項1又は2のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項4】
容器内の基板の上に塗布液を供給し、前記基板の回転によって前記基板上に前記塗布液の膜を形成する塗布装置であって、
前記基板を保持し回転可能な回転保持装置と、
上面が開口し、前記回転保持装置に保持された基板を囲うように設けられる外カップと、前記回転保持装置に保持された基板の下方に位置し、液を排液口に向け排出するための内カップとを有する容器と、
制御部と、を備え、
前記回転保持装置は、前記基板と同様の円盤状の洗浄用治具を保持可能であり、
前記洗浄用治具の周縁部には、周縁天井部と周縁底部とが周方向に形成され、前記周縁天井部と周縁底部との間には吐出口が全周に亘って連続して周方向に形成され、前記周縁底部には、前記吐出口に通ずる誘導路の入口である孔が周方向に間隔をもって複数形成され、前記周縁天井部の下面は、外周上方に向けて斜めに傾斜し、
前記制御部は、
前記洗浄用治具を前記回転保持装置に保持した状態で、第一の回転数で前記洗浄用治具を回転させながら、前記洗浄用治具の底部に洗浄液を供給して、底部から前記誘導路を通して前記吐出口に前記洗浄液を溜めること及び、前記内カップに前記洗浄液を到達させることと、
次いで、前記第一の回転数より高回転の第二の回転数で前記洗浄用治具を回転させながら、前記吐出口に溜まっている前記洗浄液を、前記吐出口より上方に位置する前記外カップの部位に到達させることと、
を行うように、前記洗浄用治具による洗浄処理を制御する、塗布装置。
【請求項5】
容器内に配置された回転保持装置に保持された基板の上に処理液を供給し、前記基板の回転によって前記基板上に前記処理液の膜を形成する回転塗布装置における、前記回転保持装置に基板と同様に保持された状態で前記容器内の洗浄に用いる円盤状の洗浄用治具であって、
前記容器は上面が開口し、前記回転保持装置に保持された基板を囲うように設けられる外カップと、前記回転保持装置に保持された基板の下方に位置し、液を排液口に向け排出するための内カップとを有し、
前記洗浄用治具の周縁部には周縁天井部と周縁底部とが全周に亘って形成され、
前記周縁天井部と周縁底部との間には吐出口が全周に亘って連続して周方向に形成され、
前記周縁底部には、前記吐出口に通ずる誘導路の入口である孔が、周方向に間隔をおいて複数形成され、
前記周縁天井部の下面は、外周上方に向けて斜めに傾斜し、
前記回転保持装置に保持された状態で第一の回転数で回転することで、前記洗浄用治具の底部に供給された洗浄液を、前記誘導路を通して前記吐出口に前記洗浄液を溜めること及び、前記内カップに前記洗浄液を到達させることと、
次いで、前記回転保持装置に保持された状態で前記第一の回転数より高回転の第二の回転数で回転することで、前記吐出口に溜まっている前記洗浄液を、前記吐出口より上方に位置する前記外カップの部位に到達させることと、
を可能とした、洗浄用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗浄方法、塗布装置及び洗浄用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、容器内に回転可能に保持された基板の上に処理液を滴下し、該基板の回転により該基板上に前記処理液の膜を塗布する回転塗布装置において前記容器の洗浄に使用することができる洗浄用治具であって、前記回転塗布装置において回転された際に、裏面に供給されて回転により案内される溶剤を保持し前記容器内へ飛散させ得るように形成された外周面を備える洗浄用治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-16315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、回転塗布装置の容器内を洗浄するにあたり、従来よりも高さ方向により広い範囲を洗浄する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、容器内に配置された回転保持装置に保持された基板の上に処理液を供給し、前記基板の回転によって前記基板上に前記処理液の膜を形成する回転塗布装置において、前記回転保持装置に基板と同様の円盤状の洗浄用治具を保持させて前記回転塗布装置を洗浄する洗浄方法であって、前記容器は、上面が開口し、前記回転保持装置に保持された基板を囲うように設けられる外カップと、前記回転保持装置に保持された基板の下方に位置し、液を排液口に向け排出するための内カップとを有し、前記洗浄用治具の周縁部には、周縁天井部と周縁底部とが周方向に形成され、前記周縁天井部と周縁底部との間には吐出口が全周に亘って連続して周方向に形成され、前記周縁底部には、前記吐出口に通ずる誘導路の入口である孔が周方向に間隔をもって複数形成され、前記周縁天井部の下面は、外周上方に向けて斜めに傾斜し、前記回転保持装置に前記洗浄用治具を保持した状態で第一の回転数で前記洗浄用治具を回転させながら、前記洗浄用治具の底部に洗浄液を供給して、底部から前記誘導路を通して前記吐出口に前記洗浄液を溜めること及び、前記内カップに前記洗浄液を到達させることと、次いで、前記第一の回転数より高回転の第二の回転数で前記洗浄用治具を回転させながら、前記吐出口に溜まっている前記洗浄液を、前記吐出口より上方に位置する前記外カップの部位に到達させることと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、回転塗布装置の容器内を洗浄するにあたり、従来よりも高さ方向により広い範囲を洗浄することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかる洗浄用治具が適用される回転塗布装置の側面断面を模式的に示した説明図である。
図2】実施の形態にかかる洗浄用治具の平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図2のB-B線断面図である。
図5図2のC-C線断面図である。
図6図1の回転塗布装置のスピンチャックに実施の形態にかかる洗浄用治具をセットした際の、洗浄用治具の周縁部と、外カップとの位置関係を示す説明図である。
図7図6における相対的低速回転時の様子を示す説明図である。
図8図7の状態から相対的高速回転した際の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、基板、たとえば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という場合がある。)に対して、レジスト液などの塗布液を回転塗布によって塗布することが行われている。このような回転塗布は、スピンチャックで保持したウェハの上方から塗布液を供給し、当該ウェハを回転させることで行われている。かかる場合、ウェハの上面から塗布液が周囲に飛散するので、飛散した塗布液を受け留めるための容器が、ウェハを囲むように配置されている。
【0009】
そして容器内に飛散して容器内壁に付着した塗布液は、定期的に洗浄される。この点に関し、特許文献1に記載した技術によれば、裏面に供給されて回転により案内される溶剤を保持し前記容器内へ飛散させるようにしており、裏面洗浄用のノズルからの洗浄液をそのまま利用して、通常のウェハに対する回転塗布の要領で、容器内壁を洗浄することが可能であった。
【0010】
ところで、例えばレジスト液についていえば、近年エッチング耐性の観点から膜厚が10μm前後の厚いプロセスが採用されることがある。かかる場合、使用するレジスト液は、例えば50~600cPの高粘度のものが使用される。このような高粘度のレジスト液は、従来の低粘度のレジストに比べてレジスト液中の固形分含有量が多いことから、回転塗布の際に従来よりも容器の上方に飛散して付着することがある。
【0011】
この点、従来の技術では、洗浄できる高さ方向の範囲はほぼ水平方向であり、より高さ方向で広範囲な洗浄を可能とする技術が待たれていた。そこで本開示は、従来よりも容器内の高さ方向でより広い範囲を洗浄することを可能とする。
【0012】
以下、本実施形態にかかる洗浄用治具について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<回転塗布装置>
まず、実施形態にかかる洗浄用治具を用いて容器が洗浄される回転塗布装置の構成について説明する。図1に示したように、塗布装置としての回転塗布装置1は、例えば直方体の筐体2を有しており、この筐体2内に、容器3が収容されている。容器3は、外カップ10と内カップ20とを有している。
【0014】
外カップ10内には、塗布処理時に基板であるウェハや後述の洗浄用治具50を水平に保持するスピンチャック4が設けられている。スピンチャック4は、シャフト部5を介して、モーターなどを有する駆動装置6によって回転可能であり、また上下動可能(Z方向)である。スピンチャック4は回転保持装置を構成する。筐体2内には、スピンチャック4上に保持されたウェハに対して、塗布液を供給する塗布ノズル7が設けられている。塗布ノズル7は、図1に示したように、待機位置(実線で表示)と供給位置(破線で表示)との間を図中のY方向に移動可能である。また筐体1の天板部分には、清浄空気を容器3に供給するためのフィルタ装置などの清浄空気供給部8が設けられている。清浄空気供給部8により清浄空気のダウンフローが形成される。
【0015】
一方、スピンチャック4の下面側には、スピンチャック4に保持される基板や、洗浄用治具50の裏面に向けて、中心から外側方向斜め上方に洗浄液を供給する洗浄ノズル31が1以上設けられている。図示の例では2つの洗浄ノズル31が設けられている。これら洗浄ノズル31は、基台部32に支持されている。洗浄ノズル31には、洗浄液、例えば塗布ノズル7によって供給される塗布液、例えばレジスト液の溶剤が、溶剤供給部33から供給される。
【0016】
外カップ10は上面が円形に開口しており、スピンチャック4に保持される基板や洗浄用治具50を囲む形態を有している。外カップ10の頂上部には円筒状のブロック体11が設けられており、このブロック体11から下方に斜面部12、外周円筒部13が連続して設けられている。ブロック体11は、外カップ10内のミストが外側へと放出されることを防止し、かつダウンフローを適切に外カップ10内に案内する機能を有している。
【0017】
一方内カップ20は、図1に示したように、内側斜面部21と外側斜面部22とを有している。内側斜面部21は、スピンチャック4に保持される洗浄用治具50や基板の下面側に飛散する塗布液、溶剤等を基台部32に設けられた排液口34に向けて排出する。外側斜面部22は、それに続く垂下壁23と外周円筒部13との間の空間を介して、これら塗布液、溶剤等を外カップ10で受け留めた塗布液、溶剤等と共に、外周円筒部13の底部に設けられた排液口14から排出する。また蒸気やミスト等は、図1中の矢印に示したように、垂下壁23と外周円筒部13との間の空間を経て、排気部24から排気される。
【0018】
回転塗布装置1は以上のように構成されており、図1に示した制御部100によって各種動作が制御される。制御部100は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、回転塗布装置1における基板に対する塗布処理や洗浄用治具50による洗浄処理、並びにそれに伴う例えばスピンチャック4などの各種駆動系の制御、各種ノズルからの処理液の吐出、停止等の制御を行うプログラムが格納されている。なお当該プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。前記記憶媒体には一時的、非一時的なものが含まれる。
【0019】
<洗浄用治具>
次に実施の形態にかかる洗浄用治具50について詳述する。図2は洗浄用治具50の平面図、図3図2のA-A線断面図、図4は同B-B線断面図、図5は同C-C線断面図であり、洗浄用治具50は全体として円盤状の形状を有し、厚み以外の外寸はウェハと同形同大である。
【0020】
洗浄用治具50の上面側周辺部には環状の凹部52が形成されている。凹部52の下面側には、凹部52と対向する環状の平坦な底部53が形成されている。そして洗浄用治具50の環状の凹部52の外側には全周に亘って外方に突出する環状の周縁天井部54が設けられている。一方、周縁天井部54と対向する部分には、底部53から続き、かつ全周に亘って外方に突出する環状の周縁底部55が形成されている。そして周縁天井部54と周縁底部55との間には、環状の吐出口56が洗浄用治具50の全周に亘って形成されている。本実施の形態では、周縁天井部54と周縁底部55とによって吐出口56が形成されている。もちろんこれに限らず、周縁天井部54と周縁底部55との間に、別途吐出口56が形成されていてもよい。
【0021】
また周縁底部55には、図2図5に示したような平面視で円弧状の孔61が等間隔で形成されている。本実施の形態にかかる洗浄用治具50では、図2に示したように、12か所に形成されている。この孔61は、図5に示したように、高さ方向では吐出口56の奥部に達する長さで周縁底部55に形成されている。これによって孔61の入り口部から吐出口56に通ずる誘導路62が形成されている。吐出口56内は、上面56aと下面56bを有している。本実施の形態では、誘導路62は、吐出口56に向かうにつれて流路断面積が大きくなる形状を有している。また各孔61は、互いに独立して各吐出口56内の少なくとも下面56bまで形成されている。さらに各孔61は、吐出口56内の下面56bに対して、平面視で洗浄用治具50の中央寄りの位置で連通している。
【0022】
図6は、かかる構造を有する洗浄用治具50をスピンチャック4で保持した際の洗浄用治具50の周縁部と、外カップ10のブロック体11及び内カップ20との位置関係を示している。この図で示すように、周縁天井部54の下面側、すなわち吐出口56内の上面56aは、傾斜しており、水平面から仰角θで斜め上方に向けられている。この仰角θは、例えば5度~20度の範囲で任意に設定できる。本実施の形態では、この仰角θの範囲に、ブロック体11の下端部11aが位置するように設定されている。発明者らの知見によれば、基板の回転塗布時には、飛散した塗布液はブロック体11の下端部11a及びその周辺に多く付着する。またさらに図6に示したように、ブロック体11の上端11bの位置は、スピンチャック4に保持された洗浄用治具50の周縁天井部の仰角、より具体的には吐出口56内の上面56aの延長線上よりも上側に位置している。この例では、仰角θの範囲よりも上側にブロック体11の上端11bが位置している。
【0023】
<洗浄方法>
実施の形態にかかる洗浄用治具50は以上の構成を有しており。次にこの洗浄用治具50を用いた洗浄方法について説明する。
【0024】
まずウェハに対する所定の塗布処理を行った後に、当該ウェハを回転塗布装置1の筐体2から搬出する。その後洗浄用治具50を筐体2内に搬入し、スピンチャック4で保持する。既述したように洗浄用治具50はウェハと厚み以外は同形同大であるので、ウェハを搬送する搬送アームをそのまま利用することができる。また洗浄用治具50を使用しない間は、この種の回転塗布装置1が搭載される塗布現像処理装置内の、例えばバッファ部、保管庫などウェハの保管場所に待機させておくことができる。
【0025】
次いで、洗浄用治具50を相対的低回転で回転させながら、洗浄ノズル31から洗浄用治具50の下面の底部53に向けて洗浄液を供給する。そうすると、図7に示したように、洗浄液は底部53の表面を伝って外周側へと流れていき、一部は内カップ20の内側斜面部21や外側斜面部22へと落下していき、これらの表面が洗浄液によって洗浄される。内側斜面部21、外側斜面部22への供給は例えば洗浄液の吐出流量、洗浄用治具50の回転速度によって制御される。
【0026】
この場合、底部53の表面を伝って外周側へと流れていく洗浄液の他の一部は、周縁底部55の孔61内に入り込み、周縁底部55の上方の全周に渡って流れこみ、表面張力によって孔61の入り口部から周縁底部55の上方の全周領域にかけて留まり、洗浄液の液だまりTが形成される。この場合、各孔61は、吐出口56内の下面56bに対して、平面視で洗浄用治具50の中央寄りの位置で連通させることで、より多くの洗浄液を孔61の奥部から貯留させることができ、その結果貯留させる液だまりTの量を多くすることができる。
【0027】
そして内カップ20の内側斜面部21や外側斜面部22の洗浄が終われば、次いで洗浄用治具50を相対的高回転で回転させる。そうすると、図8に示したように、洗浄用治具50の孔61の入り口部から誘導路62にかけて形成されていた洗浄液の液だまりTが、遠心力によって外方に押し出され、吐出口56から外カップ10のブロック体11の下端部11aに向けて飛散する。これによってブロック体11の下端部11a及びその周辺領域が洗浄される。
【0028】
したがってこれまで水平方向に洗浄液を飛散させていた手法と比較すれば、高さ方向により広範囲の領域を洗浄することが可能である。また前記したように、洗浄液は底部53の表面を伝って外周側へと流れてその一部が内カップ20の内側斜面部21や外側斜面部22へと落下してこれらの表面を洗浄させている。したがって本実施の形態によれば、ブロック体11と内カップ20のそれぞれに向けた飛散方向で洗浄液を供給することができ、互いの汚れ状態に影響を受けずに効率的に洗浄することが可能である。
また前記実施の形態では、複数の孔61は互いに独立して吐出口56内の下面56bまで形成されているので、洗浄用治具50の底部53から吐出口56内の下面56bまで洗浄液が上がってくる際に、互いに干渉することなく短い流路を流れるため、吐出口56内空間まで洗浄液を誘導しやすくなっている。
さらに図6に示した仰角θを調整することで、そのような洗浄液の高さ方向の飛散領域を調整することが可能である。かかる場合、仰角θの最大角度は、周縁天井部54の下面側の延長線上よりも高い位置に、外カップ10の上端部(本実施の形態ではブロック体11の上端11b)が位置していることがよい。これによって吐出口56から飛散した洗浄液のミストが外カップ10の外側に飛散することをより確実に防止できる。
【0029】
また本実施の形態において、誘導路62は、吐出口56に向かうにつれて流路断面積が大きくなる形状を有しているので、液だまりTの洗浄液が遠心力によって外方に飛散することを妨げないので、液だまりTの洗浄液を好適に飛散させることが可能である。
【0030】
なお本実施の形態では、孔61は、平面視で円弧形状であったが、もちろんこれに限らず、他の形状の孔を採用することができ、また孔61の設置数も本実施の形態に限られない。また孔の大きさもすべて同じにする必要はなく、大小の孔を組み合わせて配置するようにしてもよい。これによって洗浄処理中、外カップ10に向けて飛散させる洗浄液の量を変化させることができ、外カップ10に付着した塗布液の状況に応じて適切な洗浄効果を実現することができる。またかかる観点から、孔61の設置間隔は必ずしも等間隔である必要はない。
【0031】
さらにまた前記した実施の形態では、周縁天井部54と周縁底部55とは、外側への突出長さを同一にしていたが、これに限らず、周縁底部55の方の突出長さを、周縁天井部54の突出長さよりも長くしてもよい。これによって液だまりTの飛散方向をより上方へと整序させて飛散させることができる。
【0032】
またこのような外カップ10に対する洗浄方法において、液だまりTの洗浄液の量が不足している場合には、洗浄用治具50を再び相対的低回転で回転させるとともに、洗浄ノズル31からの洗浄液の供給を再開し、再度液だまりTを形成し、その後洗浄ノズル31からの洗浄液の供給を停止して洗浄用治具50を相対的高回転で再度回転させる。すなわち、相対的低回転+洗浄ノズル31からの洗浄液の供給と、相対的高回転+洗浄ノズル31からの洗浄液の供給停止を繰り返すようにしてもよい。これによって、外カップ10に対する洗浄液の不足を解消することが可能である。
【0033】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 回転塗布装置
3 容器
10 外カップ
20 内カップ
50 洗浄用治具
54 周縁天井部
55 周縁底部
56 吐出口
61 孔
62 誘導路
100 制御部
T 液だまり
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8