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特開2024-113183血漿カリクレイン阻害剤及び遺伝性血管浮腫発作を処置するためのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113183
(43)【公開日】2024-08-21
(54)【発明の名称】血漿カリクレイン阻害剤及び遺伝性血管浮腫発作を処置するためのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240814BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240814BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240814BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P9/00
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
C07K16/40
A61K39/395 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094996
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2021510984の分割
【原出願日】2019-08-30
(31)【優先権主張番号】62/808,612
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/725,216
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ナース,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,シンミン
(57)【要約】
【課題】遺伝性血管浮腫(HAE)発作を処置するかHAE発作率を低下させる方法の提供。
【解決手段】活性型のヒト血漿カリクレイン(pKal)に結合して阻害することが可能である抗体を含む、組成物であって、第1の処置期間において、前記抗体が2週間ごとに約300mgでヒト対象に複数回投与されるように前記組成物が投与され、前記ヒト対象は、HAEに罹患しているか、罹患している疑いがあるか又はHAEのリスクがあり、前記ヒト対象は、(i)女性である;(ii)18歳未満又は40~65歳である;(iii)少なくとも1回、以前に喉頭HAE発作を経験したことがある;(iv)前記第1の処置期間の最初の投与の前の4週間で、1~2回、2~3回、又は4回以上、HAE発作を起こしたことがある;及び/又は(v)前記第1の処置期間の前にC1-インヒビターによる処置を受けたことがある、組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝性血管浮腫(HAE)発作を処置するか、又は発作率を減少させるための方法であって、
それを必要とするヒト対象に、第1の処置期間においてDX-2930と同じ相補性決定領域(CDR)を含む抗体を投与することを含み;
前記第1の処置期間において、前記抗体が前記ヒト対象に複数用量で2週間ごとに約300mgで投与され;
前記ヒト対象が、HAEに罹患しているか、罹患している疑いがあるか又はそのリスクがあり、
(i)女性であり;
(ii)18歳未満又は40~65歳であり;
(iii)少なくとも1回、以前に喉頭HAE発作を経験したことがあり;
(iv)前記第1の処置期間の初回用量の前の4週間で、1~2、2~3回又は3回を超えてHAE発作を起こしたことがあり;及び/又は
(v)前記第1の処置期間の前にC1-インヒビターによる処置を受けたことがある、
方法。
【請求項2】
遺伝性血管浮腫(HAE)発作を処置するか又はHAE発作の比率を減少させるための方法であって、それを必要とするヒト対象にDX-2930と同じ相補性決定領域(CDRs)を含む抗体を投与することを含み、前記ヒト対象が、
(i)12~18歳の青年期であり;及び/又は
(ii)前記抗体の初回用量の前の4週間で2~3回又は3回を超えてHAE発作を起こしたことがあり、
前記抗体が、前記ヒト対象に、4週間ごとに約150mg、4週間ごとに約300mg又は2週間ごとに約300mgで投与される、方法。
【請求項3】
前記抗体が、全長抗体又はその抗原結合断片である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、配列番号3により示される重鎖可変領域及び/又は配列番号4により示される軽鎖可変領域を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、配列番号1により示される重鎖及び配列番号2により示される軽鎖を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物中で製剤化される、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記医薬組成物が、リン酸ナトリウム、クエン酸、ヒスチジン、塩化ナトリウム及びポリソルベート80を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リン酸ナトリウムが約30mMの濃度であり、前記クエン酸が約19mMの濃度であり、前記ヒスチジンが約50mMの濃度であり、前記塩化ナトリウムが約90mMの濃度であり、前記ポリソルベート80が約0.01%である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が皮下に投与される、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒト対象がI型又はII型HAEを有する、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト対象が、前記第1の処置期間の前に1年あたり少なくとも2回HAE発作を経験したことがある、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒト対象が、前記第1の処置期間の前に1回以上の事前HAE処置を受けたことがある、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記事前HAE処置が、C1-インヒビター、血漿カリクレイン阻害剤、ブラジキニン受容体アンタゴニスト、アンドロゲン、抗線維素溶解薬又はそれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記事前HAE処置が、C1-INH、エカランチド、イカチバント、ダナゾール、トラネキサム酸又はそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1回以上の事前HAE処置の漸減期間を含む、請求項12~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記漸減期間が約2~4週間である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1回以上の事前HAE処置が、前記抗体の初回用量前又は前記抗体の初回用量後3週間以内の何れかに終了する、請求項12~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒト対象が事前HAE処置を受けていない、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト対象が、前記抗体の初回用量前少なくとも2週間に事前HAE処置を受けていない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒト対象が、前記第1の処置期間の初回用量前の4週間で少なくとも1回のHAE発作又は前記第1の処置期間の初回用量前の8週間で少なくとも2回のHAE発作を起こしたことがある、請求項1~19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の処置期間後の第2の処置期間のために、前記抗体を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の処置期間の初回用量が、前記第1の処置期間の最後の投与後約2週間である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の処置期間が、約300mgでの前記抗体の1回以上の投与を含む、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の処置期間が、2週間ごとに約300mgでの前記抗体の複数用量を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒト対象が、前記第1の処置期間の前に、前記第1の処置期間中に、及び/又は前記第2の処置期間中に、HAEに対する長期予防、又はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、エストロゲン含有薬物療法若しくはアンドロゲンを含むHAE処置を受けていない、請求項1~24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
(a)前記第1の処置期間後に、前記抗体を約300mgの単回用量でそれを必要とするヒト対象に投与し;
(b)前記対象が(a)の後にHAE発作を経験する場合、前記抗体を約300mgの1回以上の用量で前記対象にさらに投与すること
をさらに含む、請求項1~25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
段階(b)において、前記対象が、前記抗体を2週間ごとに約300mgの複数用量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
段階(b)の初回用量が前記HAE発作後1週間以内である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(a)の単回投与及び(b)の初回用量が少なくとも10日間離される、請求項26~28の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、それぞれがその全体において本明細書中に参照により組み込まれる、2018年8月30日出願の米国特許仮出願第62/725,216号明細書及び2019年2月21日出願の米国特許仮出願第62/808,612号明細書の35 U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
血漿カリクレインは、接触系のセリンプロテアーゼ構成成分であり、異なる炎症、心血管系、感染(敗血症)及び腫瘍疾患に対する潜在的な薬物標的である(Sainz I.M.et al.,Thromb Haemost 98,77-83,2007)。接触系は、異物又は負荷電表面に対する曝露時に第XIIa因子により、又は内皮細胞表面上でプロリルカルボキシペプチダーゼの何れかにより活性化される(Sainz I.M.et al.,Thromb Haemost 98,77-83,2007)。血漿カリクレインの活性化は、第XII因子のそのフィードバック活性化を介して内因性の凝固を増幅し、炎症促進性ノナペプチドであるブラジキニンの産生を介して炎症を増強する。循環中の主要なキニノゲナーゼとして、血漿カリクレインは血管中のブラジキニン産生に大きく寄与する。血漿カリクレインの主要な天然阻害剤であるC1-インヒビタータンパク質(C1-INH)の遺伝的欠損は、遺伝性血管浮腫(HAE)につながる。HAE患者は、未知の誘因により誘発されることが多い有痛性の浮腫の急性発作に苦しんでいる(Zuraw B.L.et al.,N Engl J Med 359,1027-1036,2008)。
【発明の概要】
【0003】
活性型のヒト血漿カリクレイン(pKal)に結合し、阻害することが可能である抗体、例えばDX-2930と同じ相補性決定領域(CDR)を有する抗体(別名SHP643、ラナデルマブ)を用いた、遺伝性血管浮腫(HAE)発作を処置するか、HAE発作率を低下させるか、又はHAE発作を阻止するための治療計画が、本明細書中で提供される。
【0004】
一部の態様では、本開示は、それを必要とするヒト対象に本明細書中に記載の抗体の何れか(例えばDX-2930)を(例えば皮下に)投与することを含む、遺伝性血管浮腫(HAE)発作を処置するか又はHAE発作率を低下させるための方法を提供する。一部の実施形態では、本抗体は、第1の処置期間において2週間ごとに約300mgの複数用量で対象に投与される。一部の実施形態では、対象は、HAEに罹患しているか、罹患している疑いがあるか又はそのリスクがある女性であり;18歳未満又は40~65歳であり;及び/又は以前に喉頭HAE発作を少なくとも1回、経験している。
【0005】
一部の態様では、本開示は、それを必要とするヒト対象に本明細書中に記載の抗体の何れか(例えばDX-2930)を(例えば皮下に)投与することを含む、遺伝性血管浮腫(HAE)発作を処置するか又はHAE発作率を低下させるための方法を提供する。一部の実施形態では、本抗体は、4週間ごとに約150mgで、4週間ごとに約300mgで、又は2週間ごとに約300mgで対象に投与される。一部の実施形態では、対象は12~18歳の青年期である。
【0006】
本明細書中に記載の方法の何れも、第1の処置期間後、第2の処置期間に対象に本抗体を投与することをさらに含み得る。一部の実施形態では、第2の処置期間の初回用量は、第1の処置期間の最後の用量の約2週間後である。一部の実施形態では、第2の処置期間は、約300mgでの本抗体の1つ以上の用量を含む。一部の実施形態では、第2の処置期間は、2週間ごとに約300mgでの本抗体の複数用量を含む。
【0007】
本明細書中に記載の方法の何れも、(a)第1の処置期間後、約300mgの単回用量で本抗体をヒト対象に投与すること;及び(b)(a)の後に対象がHAE発作を経験する場合、約300mgの1つ以上の用量で本抗体を対象にさらに投与することをさらに含み得る。一部の実施形態では、段階(b)において、対象は、2週間ごとに約300mgの複数用量で本抗体を投与される。一部の実施形態では、段階(b)の初回用量は、HAE発作後1週間以内である。一部の実施形態では、(a)の単回用量及び(b)の初回用量は少なくとも10日離れている。
【0008】
本明細書中に記載の方法の何れかにおいて、ヒト対象はI型又はII型HAEを有し得る。例えば、対象は、第1の処置期間の前に年間少なくとも2回のHAE発作を経験している者であり得る。一部の実施形態では、対象は、第1の処置期間の初回用量前の4週間で少なくとも1回のHAE発作、又は第1の処置期間の初回用量前の8週間で少なくとも2回のHAE発作を有した。
【0009】
一部の実施形態では、本明細書中に記載の抗pKal抗体の何れか(例えばDX-2930)の使用を含む本明細書中に記載の方法の何れかにより処置される対象は、抗pKal抗体の初回用量の前に1回以上のHAE処置を受けたことがある。このような事前HAE処置は、C1-インヒビター(例えばC1-INH)、血漿カリクレイン阻害剤(例えばエカランチド)、ブラジキニン受容体アンタゴニスト(例えばイカチバント)、アンドロゲン(例えばダナゾール)、抗線維素溶解薬(例えばトラネキサム酸)又はそれらの組み合わせを含み得る。このような対象では、漸減期間を設けて、事前HAE処置から本明細書中に記載の抗pKal抗体処置へと次第に移行してもよい。一部の例では、漸減期間は約2~4週間である。事前HAE処置は、対象への本抗体の初回用量の前又は本抗体の初回用量後3週間以内の何れかで終了し得る。或いは、対象を、事前HAE処置の何れかから本明細書中に記載される抗pKal抗体処置へと直接移行させてもよい。
【0010】
一部の実施形態では、対象は、抗pKal抗体の初回用量前にHAE治療を受けたことがない。一部の実施形態では、対象は、本抗体の初回用量前少なくとも2週間、事前HAE処置を受けていない。
【0011】
一部の実施形態では、対象は、第1の処置期間の前に、第1の処置期間中に、及び/又は第2の処置期間中に、HAEに対する長期予防、又はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、エストロゲン含有薬物療法若しくはアンドロゲンを含むHAE処置を受けていない。
【0012】
一部の実施形態では、本抗体は、全長抗体又はそれらの抗原結合断片である。一部の例では、本抗体は、配列番号3により示される重鎖可変領域及び/又は配列番号4により示される軽鎖可変領域を含む。一部の例では、本抗体は、配列番号1により示される重鎖及び配列番号2により示される軽鎖を含む。
【0013】
本明細書中に記載の方法の何れかでは、本抗体は、薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に製剤化することができる。一部の実施形態では、医薬的組成物は、リン酸ナトリウム、クエン酸、ヒスチジン、塩化ナトリウム及びポリソルベート80を含む。一例では、リン酸ナトリウムは約30mMの濃度であり、クエン酸は約19mMの濃度であり、ヒスチジンは約50mMの濃度であり、塩化ナトリウムは約90mMの濃度であり、ポリソルベート80は約0.01%である。
【0014】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の記述で示される。本発明の他の特性又は長所は、以下の図面及び一部の実施形態の詳細な記載から、及びまた添付の特許請求の範囲からも明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1A~1Cは、慣らし期間中のHAE発作の回数に基づいて患者に対して処置期間(第0~182日)中に研究者が確認したHAE発作のポアソン回帰プロットを含む。図1A:慣らし期間中、1カ月あたり1~<2回HAE発作。図1B:慣らし期間中、1カ月あたり2~<3回のHAE発作。図1C:慣らし期間中、1カ月あたり≧3回HAE発作。
図2A図2A~2Bは、C1-インヒビター(C1-INH)での長期予防を以前に受けた患者における、HAE発作率を示すダイアグラムを含む。図2A:過去の(3カ月)平均(標準偏差)、ベースライン及びラナデルマブ処置(0~182日目)中の1カ月あたりのHAE発作率。図2B:表記のラナデルマブ処置群のそれぞれのHAE患者におけるHAE発作率の低下。
図2B】同上。
図3-1】図3A~3Cは、青年期対象における月ごとのHAE発作率のプロットを含む。図3Aは、95%信頼区間での、青年期患者に関する月ごとの発作頻度の推定最小二乗平均(LS)対プラセボのプロットを示す。図3B:ラナデルマブでの処置期間中の月ごとのHAE発作頻度対ロールオーバー及び非ロールオーバー青年期対象に関するベースラインのプロット。図3Cは、表記のラナデルマブ処置群のそれぞれにおける、95%信頼区間での、青年期患者に関する月ごとの発作率の推定最小二乗平均のプロット(対プラセボ)を示す。
図3-2】同上。
図4-1】図4A~4Eは、表記の人口統計学のそれぞれに関する、プラセボからの、95%信頼区間でのHAE発作率のパーセンテージ低下のプロットを示す。図4A:年齢;図4B:性別;図4C:体重;図4D:HAE型;図4E:喉頭発作の既往歴。表記の群のそれぞれに対して、棒グラフは、左から右に、4週間ごとに150mg、4週間ごとに300mg及び2週間ごとに300mgに対応する。プロットの下の「n」は、各群における対象数を指す。
図4-2】同上。
図4-3】同上。
図5図5は、表記の人口統計学に基づいて、研究者により確認されたHAE発作数の発生率比のフォレストプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
便宜上、本発明の説明の前に、明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲で使用されるある特定の用語を本明細書中で定義する。他の用語は、それらが本明細書中で出現するときに定義する。
【0017】
「a」、「an」及び「the」という単数形は、文脈により別段明らかに示されない限り、複数への言及を含む。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「約」という用語は、特定の値+/-5%を指す。例えば、約300mgの抗体は、285mg~315mgの抗体の何れかの量を含む。
【0019】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通じて、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合可能な免疫グロブリン分子を指す。抗体は、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(V)を含む少なくとも1本の重(H)鎖、軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(V)を含む少なくとも1本の軽鎖又は両方を含み得る。例えば、抗体は、重(H)鎖可変領域(本明細書中でV又はHVと略す)及び軽(L)鎖可変領域(本明細書中でV又はLVと略す)を含み得る。別の例では、抗体は、2つの重(H)鎖可変領域及び2つの軽(L)鎖可変領域を含む。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクトな(即ち全長)ポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、単鎖(scFv)、ドメイン抗体(dAb)断片(de Wildt et.al.,Euro.J.Immunol.(1996)26(3):629-639)、それらの何れかの突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディー、直鎖状抗体、単鎖抗体、多特異性抗体(例えば二特異性抗体)及び、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体及び共有結合修飾抗体を含む、必要とされる特異性を有する抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の何らかの他の修飾された立体配置も包含する。抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA又はIgM(又はそのサブクラス)などの何れかのクラスの抗体を含むが、抗体は何れかの特定のクラスの抗体である必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを様々なクラスに割付することができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分けられ得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知である。抗体は、あらゆる起源由来であり得るが、霊長類(ヒト及び非ヒト霊長類)の抗体及び霊長類化された抗体が好ましい。
【0021】
及び/又はV領域は、天然の可変ドメインのアミノ酸配列の全て又は一部を含み得る。例えば、配列は、1つ、2つ、又はそれを超えるN又はC末端アミノ酸、内部アミノ酸を欠失してもよく、1つ以上の挿入若しくはさらなる末端アミノ酸を含んでもよく、又は他の変更を含んでもよい。一実施形態では、免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むポリペプチドは、別の免疫グロブリン可変ドメイン配列と会合して、抗原結合部位、例えば血漿カリクレインと優先的に相互作用する構造を形成することができる。
【0022】
及びV領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれる、より保存性が高い領域が介在する、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。フレームワーク領域及びCDRの及ぶ範囲は定義されている(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242及びChothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917を参照)。本明細書中ではKabat定義を使用する。各VH及びVLは典型的には、3個のCDR及び4個のFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。
【0023】
又はV領域に加えて、本抗体の重鎖又は軽鎖は、重鎖又は軽鎖定常領域の全て又は一部をさらに含み得る。一実施形態では、本抗体は、2本の重免疫グロブリン鎖及び2本の軽免疫グロブリン鎖の四量体であり、この重鎖及び軽免疫グロブリン鎖は例えばジスルフィド結合によって相互接続される。IgGにおいて、重鎖定常領域は、3個の免疫グロブリンドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。軽鎖定常領域はCLドメインを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。本抗体の定常領域は一般的に、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子への本抗体の結合を媒介する。免疫グロブリンの軽鎖はカッパ又はラムダ型であり得る。一実施形態では、本抗体はグリコシル化される。抗体は、抗体依存性細胞傷害及び/又は補体媒介性細胞傷害に対して機能的であり得る。
【0024】
抗体の1つ以上の領域は、ヒト又は有効にヒトであり得る。例えば、可変領域の1つ以上がヒト又は有効にヒトであり得る。例えば、CDRの1つ以上、例えばHC CDR1、HC CDR2、HC CDR3、LC CDR1、LC CDR2及び/又はLC CDR3は、ヒトであり得る。軽鎖(LC)及び/又は重鎖(HC)CDRのそれぞれがヒトであり得る。HC CDR3はヒトであり得る。フレームワーク領域の1つ以上、例えばHC及び/又はLCのFR1、FR2、FR3及び/又はFR4がヒトであり得る。例えば、Fc領域はヒトであり得る。一実施形態では、フレームワーク領域が全てヒトであり、例えばヒト体細胞、例えば免疫グロブリンを産生する造血細胞又は非造血細胞由来である。一実施形態では、ヒト配列は、生殖系列配列であり、例えば生殖系列核酸によりコードされる。一実施形態では、選択されるFabのフレームワーク(FR)残基を、最も類似する霊長類生殖系列遺伝子、特にヒト生殖系列遺伝子における対応する残基のアミノ酸タイプに変換することができる。定常領域の1つ以上がヒト又は有効にヒトであり得る。例えば、免疫グロブリン可変ドメイン、定常領域、定常ドメイン(CH1、CH2、CH3及び/又はCL1)又は全抗体の少なくとも70、75、80、85、90、92、95、98又は100%がヒト又は有効にヒトであり得る。
【0025】
抗体は、免疫グロブリン遺伝子又はそのセグメントによりコードされ得る。例示的なヒト免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA1及びIgA2)、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子、並びに多くの免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。全長免疫グロブリン「軽鎖」(約25KDa又は約214アミノ酸)は、NH2-末端(約110アミノ酸)で可変領域遺伝子及びCOOH-末端でカッパ又はラムダ定常領域遺伝子によりコードされる。全長免疫グロブリン「重鎖」(約50KDa又は約446アミノ酸)は、同様に可変領域遺伝子(約116アミノ酸)及び他の上述の定常領域遺伝子の1つ、例えばガンマ(約330アミノ酸をコードする)によりコードされる。HC CDR3が約3アミノ酸残基~35アミノ酸残基超まで変動するので、ヒトHCの長さはかなり変動する。
【0026】
全長抗体の「抗原結合断片」という用語は、目的の標的に特異的に結合する能力を保持する全長抗体の1つ以上の断片を指す。全長抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含され、機能性を保持する結合断片の例としては、(i)Fab断片、即ちV、V、C及びCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)2断片、即ちヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結される2個のFab断片を含む二価断片;(iii)V及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体のシングルアームのV及びVドメインからなるFv断片、(v)VドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2個のドメイン、V及びVは個別の遺伝子によりコードされるが、これらを、V及びV領域が対形成して単鎖Fv(scFv)として知られる一価分子を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらが作製されることを可能にする合成リンカーにより、組み換え法を使用して連結することができる。例えば、米国特許第5,260,203号明細書、同第4,946,778号明細書及び同第4,881,175号明細書;Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照。抗体断片は、当業者にとって公知の従来技術を含む何らかの適切な技術を使用して得ることができる。
【0027】
「一特異性抗体」という用語は、特定の標的、例えばエピトープに対する単一結合特異性及び親和性を示す抗体を指す。この用語は、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」を含み、これは、本明細書中で使用される場合、その抗体がどのように作製されたかにかかわらず、単一分子組成物の抗体又はその断片の調製物を指す。抗体は、結合特性が実質的に保持される限り、フレームワーク領域における1つ以上の非生殖系列アミノ酸を抗体の対応する生殖系列アミノ酸に復帰させることにより「生殖系列化」される。
【0028】
阻害定数(K)は阻害能の測定を提供し;これは、酵素活性を半減させるのに必要とされる阻害剤の濃度であり、酵素又は基質濃度に依存しない。見かけのK(Ki,app)は、反応の度合い(例えば酵素活性)に及ぼす阻害剤(例えば阻害性結合タンパク質)の異なる濃度の阻害効果を測定することによって異なる基質濃度で得られ;阻害剤濃度の関数として偽一次速度定数の変化をモリソン式(式1)にフィットさせることにより、見かけのK値の推定値が得られる。Kは、Ki,app対基質濃度のプロットのy切片を線形回帰分析から導くことにより得られる。
【数1】
式1
(式中、v=測定した速度;v0=阻害剤の非存在下での速度;Ki,app=見かけの阻害定数;I=総阻害剤濃度;及びE=総酵素濃度)。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「結合親和性」は、見かけの会合定数又はKを指す。Kは解離定数(K)の逆数である。結合抗体は、特定の標的分子、例えば血漿カリクレインに対して、例えば少なくとも105、106、107、108、109、1010及び1011M-1の結合親和性を有し得る。第2の標的と比較して第1の標的への結合抗体の親和性結合がより高いことは、第1の標的の結合に関するKが第2の標的の結合に関するK(又は数値K)よりも高い(又は数値Kが小さい)ことにより示され得る。このような場合、結合抗体は、第2の標的(例えば第2の立体構造の同じタンパク質又はその模倣体;又は第2のタンパク質)と比較して、第1の標的(例えば第1の立体構造のタンパク質又はその模倣体)に対して特異性を有する。結合親和性の差(例えば特異性又は他の比較について)は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、70、80、90、100、500、1000、10,000又は10倍であり得る。
【0030】
結合親和性は、平衡透析、平衡結合、ゲルろ過、ELISA、表面プラズモン共鳴又は分光法(例えば蛍光アッセイを使用)を含む様々な方法により決定され得る。結合親和性を評価するための例示的な条件は、HBS-P緩衝液(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、0.005%(v/v)界面活性剤P20)中である。これらの技術を使用して、結合タンパク質(又は標的)濃度の関数として、結合した及び遊離の結合タンパク質の濃度を測定することができる。結合した結合タンパク質の濃度([Bound])は、遊離の結合タンパク質の濃度([Free])、及び標的での結合タンパク質に対する結合部位の濃度に関連し、(N)は次の式による標的分子あたりの結合部位数である:
[Bound]=N・[Free]/((1/KA)+[Free])。
【0031】
の正確な決定を行うことは必ずしも必要ではないが、時に例えばELISA又はFACS分析などの方法を使用して決定され、Kに比例する親和性の定量的測定を得ることで十分であることから、従って、例えば機能アッセイ、例えばインビトロ又はインビボアッセイでの活性により、親和性の定量測定を得るために又は親和性の推測を得るために、親和性がより高い、例えば2倍高い、か否かを決定することなど、比較のために使用することができる。
【0032】
「結合抗体」という用語(又は本明細書中で「結合タンパク質」と交換可能に使用される)は、標的分子と相互作用し得る抗体を指す。「標的分子」という用語は、「リガンド」と交換可能に使用される。「血漿カリクレイン結合抗体」は、血漿カリクレインと相互作用(例えば結合)し得る抗体を指し、特に優先的又は特異的に血漿カリクレインと相互作用する、及び/又はそれを阻害する抗体を含む。抗体の非存在下及び同じ条件での血漿カリクレインの活性と比較した場合、それが血漿カリクレインの活性低下を引き起こす場合、抗体は血漿カリクレインを阻害する。
【0033】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。
【0034】
結合タンパク質の1つ以上のフレームワーク及び/又はCDRアミノ酸残基は、本明細書中に記載の結合タンパク質と比較して、1つ以上の突然変異(例えば置換(例えば保存的置換又は非必須アミノ酸の置換)、挿入又は欠失)を含むことが可能である。血漿カリクレイン結合タンパク質は、本明細書中に記載の結合タンパク質と比較して、例えばタンパク質機能に実質的な影響を与えない突然変異など、突然変異(例えば置換(例えば保存的置換又は非必須アミノ酸の置換)、挿入又は欠失)(例えば少なくとも1、2、3又は4個、及び/又は15、12、10、9、8、7、6、5、4、3又は2個未満の突然変異)を有し得る。突然変異は、フレームワーク領域、CDR及び/又は定常領域に存在し得る。一部の実施形態では、突然変異は、フレームワーク領域に存在する。一部の実施形態では、突然変異はCDRに存在する。一部の実施形態では、突然変異は定常領域に存在する。特定の置換が許容されるか否か、即ち結合活性などの生物学的特性に有害な影響を及ぼさないか否かは、例えば突然変異が保存的であるか否かを評価することによって、又はBowie,et al.(1990)Science 247:1306-1310の方法によって、予測され得る。
【0035】
「有効にヒト」の免疫グロブリン可変領域は、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおいて免疫原性応答を惹起しないように十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含む免疫グロブリン可変領域である。「実質的にヒト」抗体は、抗体が正常なヒトにおいて免疫原性応答を惹起しないように十分な数のヒトアミノ酸位置を含む抗体である。
【0036】
「エピトープ」は、結合タンパク質(例えばFab又は全長抗体などの抗体)により結合される標的化合物上の部位を指す。標的化合物がタンパク質である場合、この部位は、完全にアミノ酸構成成分で構成され得るか、完全にタンパク質のアミノ酸の化学的修飾(例えばグリコシル部分)で構成され得るか、又はその組み合わせで構成され得る。重複するエピトープは、少なくとも1個の共通アミノ酸残基、グリコシル基、リン酸基、硫酸基又は他の分子特性を含む。
【0037】
「ヒト化」免疫グロブリン可変領域は、免疫グロブリン可変領域が正常なヒトにおいて免疫原性応答を惹起しないように十分な数のヒトフレームワークアミノ酸位置を含むように改変された免疫グロブリン可変領域である。「ヒト化」免疫グロブリンの説明には、例えば米国特許出願第6,407,213号明細書及び同第5,693,762号明細書が含まれる。
【0038】
「単離された」抗体は、単離された抗体が得られ得る天然試料の少なくとも1つ構成成分の少なくとも90%から除去された抗体を指す。抗体は、目的の種又は種の集団が、重量-重量ベースで少なくとも5、10、25、50、75、80、90、92、95、98又は99%純粋である場合、「少なくとも」ある一定の純度であり得る。
【0039】
本明細書中に記載の方法は、それを必要とするヒト対象に抗体の複数用量を投与することを含む。「患者」、「対象」又は「宿主」という用語は交換可能に使用され得る。対象は、本明細書中に記載の抗体を含む処置など、HAEに対する事前処置を受けた対象であり得る。一部の実施形態では、対象は、小児対象(例えば、乳幼児、児童又は青年期対象)である。一部の実施形態では、ヒト対象は18歳未満の青年期である。一部の実施形態では、ヒト対象は12~18歳の青年期である。一部の実施形態では、対象は40~65歳未満である。
【0040】
一部の実施形態では、ヒト対象は性別により定義される。例えば一部の実施形態では、対象は女性である。
【0041】
一部の実施形態では、ヒト対象は体重により定義される。一部の実施形態では,ヒト対象の体重は50kg未満である。一部の実施形態では、ヒト対象の体重は50kg~75kgである。一部の実施形態では、ヒト対象の体重は75kg~100kgである。一部の実施形態では、ヒト対象の体重は100kg以上である。
【0042】
一部の実施形態では、ヒト対象は、喉頭発作の既往歴又はそれがないことにより定義される。一部の実施形態では、対象は、本明細書中に記載の抗体の投与前に少なくとも1回(例えば1、2、3、4、5回又はそれを超える)喉頭発作(即ち喉頭HAE発作)を経験している。一部の実施形態では、対象は、本明細書中に記載の抗体の投与前に喉頭発作を経験していない。
【0043】
「プレカリクレイン」及び「プレ血漿カリクレイン」という用語は、本明細書中で交換可能に使用され、プレカリクレインとしても知られる活性な血漿カリクレインの酵素前駆体型を指す。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「実質的に同一である」(又は「実質的に相同」)という用語は、本明細書中で、第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列が同様の活性、例えば結合活性、結合優先性又は生物学的活性を有する(又はそれを有するタンパク質をコードする)ように、十分な数の、第2のアミノ酸又は核酸配列に対して同一又は同等の(例えば同様の側鎖を有する、例えば保存的アミノ酸置換)アミノ酸残基又はヌクレオチドを含有する第1のアミノ酸又は核酸配列を指すために使用される。抗体の場合、第2の抗体は同じ特異性を有し、同じ抗原と比較して親和性の少なくとも50%、少なくとも25%又は少なくとも10%を有する。
【0045】
統計学的有意性は、何らかの当技術分野で公知の方法により決定され得る。代表的な統計学的検定としては、スチューデントT検定、Mann Whitney Uノンパラメトリック検定及びWilcoxonノンパラメトリック統計検定が挙げられる。一部の統計学的に有意な関係は、0.05又は0.02未満のP値を有する。特定の結合タンパク質は、例えば特異性又は結合に統計学的に有意である差を示し得る(例えばP値<0.05又は0.02)。例えば2つの状況間の識別可能な定性的又は定量的な差異を示す、「誘導する」、「阻害する」、「増強する」、「上昇する」、「増加する」、「減少する」などという用語は、差異、例えば2つの状況間の統計学的に有意な差異、を指し得る。
【0046】
「治療的有効投与量」は、好ましくは、無処置対象と比較して、測定可能なパラメーター、例えば血漿カリクレイン活性を統計学的に有意な程度、又は少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%及びまたより好ましくは少なくとも約80%調整する。化合物が測定可能なパラメーター、例えば疾患関連パラメーターを調整する能力は、ヒト障害及び状態における有効性を予測する動物モデル系で評価され得る。或いは、組成物のこの特性は、インビトロで化合物がパラメーターを調整する能力を調べることにより評価され得る。
【0047】
「処置する」という用語は、本明細書中で使用される場合、疾患、疾患の症状又は疾患に対する素因を、治癒する、治す、軽減する、緩和する、変更する、治療する、寛解させる、改善する、又はそれに影響を及ぼすことを目的とした、HAEを有するか、HAE症状を有するか、HAEを有することが疑われるか、又はHAEに対する素因若しくはHAEのリスクを有する対象への、1つ以上の活性物質を含む組成物の適用又は投与を指す。「予防的処置」は、「防止的処置」としても知られ、ある人が曝露されたか又は曝露され得る疾患からその人を守るか又はそのリスクを軽減することを目的とする処置を指す。一部の実施形態では、本明細書中に記載の処置方法は、HAEの発症及び/又は再発を予防することを目的とする。
【0048】
対象において疾患を「防止する」という用語は、疾患の少なくとも1つの症状が防止されるように、対象に対して薬学的処置、例えば薬物の投与を行うことを指し、即ち、望ましくない状態の発症から宿主を守るように、望ましくない状態(例えば疾患又は宿主動物の他の望ましくない状態)の臨床症状発症前に投与される。疾患を「防止すること」は、「予防」又は「予防的処置」とも呼ばれ得る。
【0049】
「予防的有効量」は、所望の予防的結果を達成するための投与量及び必要な時間にわたって有効な量を指す。典型的には、予防的用量は、疾患の前に又は疾患のより初期に対象において使用されるので、予防的有効量は治療的有効量未満である。
【0050】
血漿カリクレイン(pKal)に対する抗体結合
本明細書中に記載の方法における使用のための血漿カリクレイン結合抗体(抗pKal抗体)は、全長(例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4を含む)、IgM、IgA(IgA1、IgA2を含む)、IgD及びIgE)であり得るか、又は抗原結合断片(例えばFab、F(ab’)又はscFv断片のみを含み得る。結合抗体は、2本の重鎖免疫グロブリン及び2本の軽鎖免疫グロブリンを含み得るか、又は単鎖抗体であり得る。血漿カリクレイン結合抗体は、ヒト化、CDR移植、キメラ、脱免疫又はインビトロ作製抗体などの組み換えタンパク質であり得、任意選択によりヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の定常領域を含み得る。一実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体はモノクローナル抗体である。
【0051】
一態様では、本開示は、血漿カリクレイン(例えばヒト血漿カリクレイン及び/又はマウスカリクレイン)に結合し、少なくとも1個の免疫グロブリン可変領域を含む抗体(例えば単離抗体)を特徴とする。例えば、本抗体は、重鎖(HC)免疫グロブリン可変ドメイン配列及び/又は軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む。一実施形態では、本抗体は、血漿カリクレイン、例えばヒト血漿カリクレイン及び/又はマウスカリクレインに結合し、これらを阻害する。
【0052】
一部の実施形態では、本明細書中に記載の抗体は、DX-2930と同じCDR配列、例えば配列番号5~7として示される重鎖CDR配列及び配列番号8~10として示される軽鎖CDR配列を有する。一部の実施形態では、本抗体は、DX-2930と同じCDR配列及び本明細書中に記載のLC可変ドメインと(例えば全体又はフレームワーク領域で)少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%同一であるLC免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む。一部の実施形態では、本抗体は、DX-2930と同じCDR配列及び本明細書中に記載のHC可変ドメインと(例えば全体又はフレームワーク領域で)少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%同一であるHC免疫グロブリン可変ドメイン配列を含む。一部の実施形態では、本抗体は、DX-2930と同じCDR配列及び本明細書中に記載のLC配列と(例えば全体又はフレームワーク領域で)少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%同一であるLC配列を含む。一部の実施形態では、本抗体は、DX-2930と同じCDR配列及び本明細書中に記載のHC配列と(例えば全体又はフレームワーク領域で)少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100%同一であるHC配列を含む。
【0053】
血漿カリクレイン結合タンパク質は単離抗体であり得る(例えば他のタンパク質を少なくとも70、80、90、95又は99%含まない)。一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体又はその組成物は、血漿カリクレイン結合抗体と比較して、不活性であるか又は部分的に活性がある(例えば5000nM以上のKi,appで血漿カリクレインに結合する)抗体切断断片(例えばDX-2930)から単離される。例えば、血漿カリクレイン結合抗体は、このような抗体切断断片を少なくとも70%含まない;他の実施形態では、結合抗体は、不活性又は部分的である抗体切断断片を少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又はさらに100%含まない。
【0054】
血漿カリクレイン結合抗体はさらに、血漿カリクレイン、例えばヒト血漿カリクレインを阻害し得る。
【0055】
一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体は、プレカリクレイン(例えばヒトプレカリクレイン及び/又はマウスプレカリクレイン)に結合しないが、血漿カリクレイン(例えばヒト血漿カリクレイン及び/又はマウスカリクレイン)の活性型に結合する。
【0056】
ある一定の実施形態では、本抗体は、血漿カリクレイン又はそれらの断片の触媒ドメインの活性部位若しくはその付近に結合するか、又は血漿カリクレインの活性部位と重複するエピトープに結合する。
【0057】
本抗体は、少なくとも10、10、10、10、10、1010及び1011-1の結合親和性で血漿カリクレイン、例えばヒト血漿カリクレインに結合し得る。一実施形態では、本抗体は、1×10-3、5×10-4-1又は1×10-4-1よりも遅いKoffでヒト血漿カリクレインに結合する。一実施形態では、本抗体は、1×10、1×10又は5×10-1-1より速いKonでヒト血漿カリクレインに結合する。一実施形態では、本抗体は、血漿カリクレインに結合するが、組織カリクレイン及び/又は血漿プレカリクレインに結合しない(例えば本抗体は、組織カリクレイン及び/又は血漿プレカリクレインに、それが血漿カリクレインに結合する場合よりも低い有効性で結合する(例えば陰性対照と比較した場合、例えば5、10、50、100又は1000分の1であるか又は全くない)。
【0058】
一実施形態では、本抗体は、例えば10-5、10-6、10-7、10-8、10-9及び10-10M未満のKiでヒト血漿カリクレイン活性を阻害する。本抗体は、例えば100nM、10nM、1、0.5又は0.2nM未満のIC50を有し得る。例えば、本抗体は、血漿カリクレイン活性、並びに第XIIa因子(例えば第XII因子から)及び/又はブラジキニン(例えば高分子量キニノーゲン(HMWK)から)の産生を調整し得る。本抗体は、血漿カリクレイン活性及び/又は第XIIa因子(例えば第XII因子から)及び/又はブラジキニン(例えば高分子量キニノーゲン(HMWK)から)の産生を阻害し得る。ヒト血漿カリクレインに対する本抗体の親和性は、100nm未満、10nM未満、5nM未満、1nM未満、0.5nM未満のKを特徴とし得る。一実施形態では、本抗体は、血漿カリクレインを阻害するが、組織カリクレインを阻害しない(例えば本抗体は、組織カリクレインを、それが血漿カリクレインを阻害する場合よりも低い有効性で阻害する(例えば陰性対照と比較した場合、例えば5-、10-、50-、100-又は1000分の一であるか又は全くない)。
【0059】
一部の実施形態では、本抗体は、見かけの阻害定数(Ki,app)が1000、500、100、5、1、0.5又は0.2nM未満である。
【0060】
血漿カリクレイン結合抗体は、単一ポリペプチド(例えばscFv)中に含まれ得るか、又は異なるポリペプチド(例えばIgG又はFab)上にあり得るそれらのHC及びLC可変ドメイン配列を有し得る。
【0061】
一実施形態では、HC及びLC可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成成分である。別の実施形態では、HC及びLC可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成成分である。例えば、本抗体は、IgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である。本抗体は可溶性Fabであり得る。他の実施では、本抗体は、Fab2’、scFv、ミニボディー、scFv::Fc融合、Fab::HSA融合、HSA::Fab融合、Fab::HSA::Fab融合又は本明細書中の結合タンパク質のうち1つの抗原組み合わせ部位を含む他の分子を含む。これらのFabのVH及びVL領域は、IgG、Fab、Fab2、Fab2’、scFv、PEG化Fab、PEG化scFv、PEG化Fab2、VH::CH1::HSA+LC、HSA::VH::CH1+LC、LC::HSA+VH::CH1、HSA::LC+VH::CH1又は他の適切な構成体として提供され得る。
【0062】
一実施形態では、本抗体は、ヒト若しくはヒト化抗体であるか、又はヒトにおいて非免疫原性である。例えば本抗体は、1つ以上のヒト抗体フレームワーク領域、例えば全てのヒトフレームワーク領域又はヒトフレームワーク領域と少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%同一であるフレームワーク領域を含む。一実施形態では、本抗体は、ヒトFcドメイン又はヒトFcドメインと少なくとも95、96、97、98又は99%同一であるFcドメインを含む。
【0063】
一実施形態では、本抗体は、霊長類若しくは霊長類化抗体であるか、又はヒトにおいて非免疫原性である。例えば本抗体は、1つ以上の霊長類抗体フレームワーク領域、例えば全ての霊長類フレームワーク領域又は霊長類フレームワーク領域と少なくとも85、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%同一であるフレームワーク領域を含む。一実施形態では、本抗体は、霊長類Fcドメイン又は霊長類Fcドメインと少なくとも95、96、97、98若しくは99%同一であるFcドメインを含む。「霊長類」は、ヒト(ホモ・サピエンス(Homo sapiens))、チンパンジー(パン・トログロディテス(Pan troglodytes)及びパン・パニスクス(Pan paniscus)(ボノボ))、ゴリラ(ゴリラ・ゴリラ(Gorilla gorilla))、テナガザル、サル、キツネザル、アイアイ(ダウベントニア・マダガスカリエンシス(Daubentonia madagascariensis))及びメガネザルを含む。
【0064】
一部の実施形態では、ヒト血漿カリクレインに対する霊長類抗体の親和性は、1000、500、100、10、5、1、0.5nM未満、例えば10nM未満、1nM未満及び0.5nM未満のKを特徴とする。
【0065】
ある一定の実施形態では、本抗体は、マウス又はウサギ由来の配列を含まない(例えばマウス又はウサギ抗体ではない)。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書中に記載の方法で使用される抗体は、本明細書中に記載されるDX-2930又はそれらの機能的変異体であり得る。
【0067】
一例では、DX-2930の機能的変異体は、DX-2930と同じ相補性決定領域(CDR)を含む。別の例では、DX-2930の機能的変異体は、DX-2930のV及びVの場合と比較して、V又はVの何れかのFRにおいて1つ以上の突然変異(例えば保存的置換)を含有し得る。好ましくは、このような突然変異は、通常の技術により決定され得るCDRの1つ以上と相互作用すると予想される残基では起こらない。他の実施形態では、本明細書中に記載の機能的変異体は、DX-2930の1つ以上のCDR領域内に1個以上の突然変異(例えば1、2又は3個)を含有する。好ましくは、このような機能的変異体は、親と同じ、抗原結合に寄与する領域/残基を保持する。なお他の実施形態では、DX-2930の機能的変異体は、DX-2930のVのアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)同一であるアミノ酸配列を含むV鎖、及び/又はDX-2930のVのアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)同一であるアミノ酸配列を有するV鎖を含み得る。これらの変異体は、血漿カリクレインの活性型と結合可能であり、好ましくはプレカリクレインに結合しない。
【0068】
2つのアミノ酸配列の「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77、1993におけるように改変されたKarlin and Altschul Proc.Natl. Acad.Sci.USA 87:2264-68、1990のアルゴリズムを使用して決定される。このようなアルゴリズムは、Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-10、1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。BLASTタンパク質検索は、目的のタンパク質分子に対するアミノ酸配列相同を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長さ=3を用いて行われ得る。2つの配列間にギャップが存在する場合、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載のように、Gapped BLASTを利用し得る。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、個々のプログラム(例えばXBLAST及びNBLAST)の初期設定パラメーターを使用し得る。
【0069】
一部の実施形態では、本明細書中に記載の方法及び組成物で使用される抗体はDX-2930抗体であり得る。DX-2930に対する重及び軽鎖全長及び可変配列を以下で提供し、シグナル配列は斜字とする。CDRを太字とし、下線を付す。
【0070】
【化1】
【0071】
【表1】
【0072】
抗体調製
本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は、当技術分野で公知の何れかの方法により作製され得る。例えばHarlow and Lane,(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York and Greenfield,(2013)Antibodies:A Laboratory Manual,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。
【0073】
目的の抗体、例えばDX-2930をコードする配列は、宿主細胞中のベクター中で維持され得、次に宿主細胞を増殖させて、後の使用のために凍結し得る。代替法において、本ポリヌクレオチド配列は、抗体を「ヒト化」するための、又は抗体の親和性(親和性成熟)若しくは他の特徴を改善するための遺伝子操作のために使用され得る。例えば、抗体がヒトでの臨床試験及び処置で使用される場合に免疫反応を回避するために、定常領域を操作して、ヒト定常領域により類似するようにし得る。標的抗原に対するより高い親和性及びPKalの活性の阻害におけるより大きな有効性を得るために、抗体配列を遺伝子操作することが所望され得る。抗体に対して1つ以上のポリヌクレオチド変化を行うことができ、それでもなお標的抗原に対するその結合特異性を維持し得ることは、当業者にとって明らかであろう。
【0074】
他の実施形態では、完全なヒト抗体は、特異的なヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように改変されている市販のマウスを使用することにより得ることができる。ヒト化又はヒト抗体の作製のために、より望ましい(例えば完全にヒト抗体)又はよりロバストな免疫応答を生じるように設計したトランスジェニック動物も使用され得る。このような技術の例は、Amgen,Inc.(Fremont,Calif.)からのXenomouse(登録商標)及びMedarex,Inc.(Princeton,N.J.)からのHuMAb-Mouse(登録商標)及びTC Mouse(商標)である。別の代替法では、ファージディスプレイ又は酵母の技術によって抗体を組み換えにより作製し得る。例えば、米国特許第5,565,332号明細書;同第5,580,717号明細書;同第5,733,743号明細書;及び同第6,265,150号明細書;及びWinter et al.,(1994)Annu.Rev.Immunol.12:433-455を参照。或いは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-553)を使用して、非免疫ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロでヒト抗体及び抗体断片を作製することができる。
【0075】
インタクト抗体(全長抗体)の抗原結合断片は、通常の方法を介して調製することができる。例えば、F(ab’)断片は、抗体分子のペプシン消化により産生することができ、Fab断片は、F(ab’)断片のジスルフィド架橋を還元することにより生成することができる。
【0076】
遺伝子改変抗体、例えばヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体及び二特異性抗体は、例えば従来の組み換え技術を介して作製され得る。一例では、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離されるか又は合成され得る。DNAを、1つ以上の発現ベクターに配置してもよく、これを次に、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を発現しない、大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞などの宿主細胞に移入して、組み換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。例えば国際公開第87/04462号パンフレットを参照。次に、例えば相同なマウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによってMorrison et al.,(1984)Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851、又は免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て又は一部を共有結合により連結することによって、DNAを修飾することができる。そのようにして、標的抗原の結合特異性を有する遺伝子改変抗体、例えば「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体を調製することができる。
【0077】
「キメラ抗体」の作製のために開発された技術は当技術分野で周知である。例えば、Morrison et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6851;Neuberger et al.(1984)Nature 312,604;及びTakeda et al.(1984)Nature 314:452を参照。
【0078】
ヒト化抗体を構築するための方法も当技術分野で周知である。例えばQueen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029-10033(1989)を参照。一例では、親の非ヒト抗体のV及びVの可変領域を、当技術分野で公知の方法に従い、三次元分子モデリング分析に供する。次に、同じ分子モデリング分析を使用して、正確なCDR構造の形成のために重要であると予想されるフレームワークアミノ酸残基を同定する。並行して、検索クエリーとして親V及びV配列を使用して、何らかの抗体遺伝子データベースから、親の非ヒト抗体のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を有するヒトV及びV鎖を同定する。次にヒトV及びVアクセプター遺伝子を選択する。
【0079】
選択されるヒトアクセプター遺伝子内のCDR領域を、親の非ヒト抗体又はそれらの機能的変異体からのCDR領域で置換することができる。必要である場合、CDR領域との相互作用において重要であることが予想される親鎖のフレームワーク領域内の残基(上記参照)を使用して、ヒトアクセプター遺伝子における対応する残基の代わりに置換することができる。
【0080】
単鎖抗体は、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列及び軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を連結することによって、組み換え技術を介して調製され得る。好ましくは、フレキシブルなリンカーがこの2つの可変領域間に組み込まれる。或いは、単鎖抗体の産生について記載される技術(米国特許第4,946,778号明細書及び同第4,704,692号明細書)を、ファージ又は酵母scFvライブラリを作製するために適合させることができ、通常の手順に従い、PKalに特異的なscFvクローンをライブラリから同定することができる。陽性クローンをさらなるスクリーニングに供して、PKal活性を阻害するクローンを同定することができる。
【0081】
一部の抗体、例えばFabは、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)細胞(例えばNadkarni,A.et al.,2007 Protein Expr Purif 52(1):219-29を参照)中で作製され得る。例えば、Fabが、ディスプレイ部分とバクテリオファージタンパク質(又はそれらの断片)との間に抑制性の停止コドンを含むファージディスプレイベクター中の配列によりコードされる場合、ベクター核酸は、停止コドンを抑制することができない細菌細胞に移入され得る。この場合、Fabは遺伝子IIIタンパク質に融合されず、ペリプラズム及び/又は培地中に分泌される。
【0082】
抗体は真核細胞でも産生され得る。一実施形態では、本抗体(例えばscFv’s)は、ピキア(Pichia)(例えばPowers et al.,2001,J.Immunol.Methods.251:123-35;Schoonooghe S.et al.,2009 BMC Biotechnol.9:70;Abdel-Salam,HA.et al.,2001 Appl Microbiol Biotechnol 56(1-2):157-64;Takahashi K.et al.,2000 Biosci Biotechnol Biochem 64(10):2138-44;Edqvist,J.et al.,1991 J Biotechnol 20(3):291-300を参照)、ハンセウラ(Hanseula)又はサッカロミセス(Saccharomyces)などの酵母細胞で発現される。当業者は、例えば酸素条件(例えばBaumann K.,et al.2010 BMC Syst.Biol.4:141を参照)、モル浸透圧濃度(例えばDragosits,M.et al.,2010 BMC Genomics 11:207参照)、温度(例えばDragosits,M.et al.,2009 J Proteome Res.8(3):1380~92を参照)、発酵条件(例えばNing,D.et al.2005 J.Biochem.and Mol.Biol.38(3):294-299を参照)、酵母の株(例えばKozyr,AV et al.2004 Mol Biol(Mosk)38(6):1067-75;Horwitz,AH.et al.,1988 Proc Natl Acad Sci USA 85(22):8678-82;Bowdish,K.et al.1991 J Biol Chem 266(18):11901-8を参照)、抗体産生を増強するためのタンパク質の過剰発現(例えばGasser,B.et al.,2006 Biotechol. Bioeng.94(2):353-61を参照)、培養の酸性レベル(例えばKobayashi H.,et al.,1997 FEMS Microbiol Lett 152(2):235~42を参照)、基質及び/又はイオンの濃度(例えばKo JH.et al.,2996 Appl Biochem Biotechnol 60(1):41-8を参照)を最適化することによって、酵母における抗体産生を最適化することができる。さらに、酵母系を使用して、より長い半減期を有する抗体を産生させることができる(例えばSmith,BJ.et al.2001 Bioconjug Chem 12(5):750~756を参照)。
【0083】
好ましい一実施形態では、抗体は哺乳動物細胞中で産生される。クローン抗体又はその抗原結合断片を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばKaufman and Sharp,1982,Mol.Biol.159:601 621に記載されるDHFR選択可能マーカーとともに使用される、Urlaub and Chasin,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載のdhfr-CHO細胞を含む)、リンパ球細胞株、例えばNS0骨髄腫細胞及びSP2細胞、COS細胞、HEK293T細胞(J.Immunol.Methods(2004)289(1-2):65~80)及びトランスジェニック動物、例えばトランスジェニック哺乳動物由来の細胞が挙げられる。例えば、細胞は哺乳動物上皮細胞である。
【0084】
一部の実施形態では、血漿カリクレイン結合抗体は、植物又は無細胞系で産生される(例えばGaleffi,P.,et al.,2006 J Transl Med 4:39を参照)。
【0085】
多様化した免疫グロブリンドメインをコードする核酸配列に加えて、組み換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば宿主細胞中でベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子を保有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を促進する(例えば米国特許第4,399,216号明細書、同第4,634,665号明細書及び同第5,179,017号明細書を参照)。例えば、典型的には、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞において、薬物、例えばG418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートに対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカー遺伝子としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅によるdhfr宿主細胞での使用のため)及びneo遺伝子(G418選択のため)が挙げられる。
【0086】
抗体又はその抗原結合部分の組み換え発現のための例示的な系において、リン酸カルシウム媒介遺伝子移入によるdhfrCHO細胞に抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターを導入する。組み換え発現ベクター内で、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を、エンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えばSV40、CMV、アデノウイルスなどに由来する、例えばCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント又はSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント)にそれぞれ操作可能に連結し、遺伝子の高転写レベルを駆動する。組み換え発現ベクターはまたDHFR遺伝子も保有し、これにより、メトトレキサート選択/増幅を使用して、ベクターがトランスフェクトされているCHO細胞の選択が可能になる。選択された形質転換体宿主細胞を培養し、インタクト抗体を培地から回収し、抗体重鎖及び軽鎖の発現を可能にする。標準的な分子生物学的技術を使用して、組み換え発現ベクターを調製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体について選択し、宿主細胞を培養し、培養培地から抗体を回収する。例えば、一部の抗体は、プロテインA又はプロテインGカップリングマトリクスを用いてアフィニティークロマトグラフィーにより単離され得る。
【0087】
Fcドメインを含む抗体に対して、抗体産生系は、Fc領域がグリコシル化されている抗体を産生し得る。例えば、IgG分子のFcドメインはCH2ドメインにおいてアスパラギン297でグリコシル化されている。このアスパラギンは、二分岐型オリゴ糖による修飾のための部位である。Fcγ受容体及び補体C1qが媒介するエフェクター機能のためにこのグリコシル化が必要とされることが明らかになっている(Burton and Woof,1992,Adv.Immunol.51:1-84;Jefferis et al.,1998,Immunol.Rev.163:59-76)。一実施形態では、アスパラギン297に対応する残基を適正にグリコシル化する哺乳動物発現系においてFcドメインを産生する。Fcドメインは、他の真核翻訳後修飾も含み得る。
【0088】
抗体はトランスジェニック動物によっても産生され得る。例えば米国特許第5,849,992号明細書は、トランスジェニック哺乳動物の乳腺において抗体を発現させる方法を記載する。乳特異的なプロモーター及び関心のある抗体をコードする核酸及び分泌のためのシグナル配列を含むトランスジーンを構築する。このようなトランスジェニック哺乳動物の雌により産生される乳は、そこに分泌される目的の抗体を含む。この抗体は、乳から精製され得るか、又は一部の適用に対しては、直接使用され得る。
【0089】
医薬組成物
本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は、組成物、例えば薬学的に許容可能な組成物又は医薬組成物に存在し得る。本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は薬学的に許容可能な担体と共に製剤化され得る。一部の実施形態では、任意選択により薬学的に許容可能な担体を伴う組成物中、例えば薬学的に許容可能な組成物又は医薬組成物中に、DX-2930抗体150mg又は300mgが存在する。
【0090】
薬学的に許容可能な担体は、生理学的に適合性である、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は、皮下、静脈内、筋肉内、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば注射又は点滴による)に適切であるが、吸入及び鼻腔内投与に適切な担体も企図される。
【0091】
本明細書中に記載の医薬組成物中の薬学的に許容可能な担体は、緩衝剤、アミノ酸及び浸透圧調整剤のうち1つ以上を含み得る。本明細書中に記載の医薬組成物中であらゆる適切な緩衝剤又は緩衝剤の組み合わせを使用して、組成物の適切なpHを維持し得るか又は維持する助けとなり得る。緩衝剤の非限定例としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸、コハク酸ナトリウム、ヒスチジン、Tris及び酢酸ナトリウムが挙げられる。一部の実施形態では、緩衝剤は、約5~100mM、5~50mM、10~50mM、15~50mM又は約15~40mMの濃度であり得る。例えば、1つ以上の緩衝剤は、約15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、30mM、31mM、32mM、33mM、35mM、36mM、37mM、38mM、39mM又は約40mMの濃度であり得る。一部の例では、薬学的に許容可能な担体は、リン酸ナトリウム及びクエン酸を含み、これらは、それぞれ約30mM及び約19mMの濃度であり得る。
【0092】
一部の実施形態では、薬学的に許容可能な担体としては、投与前の保管中に抗体の凝集を減少させ得、及び/又は抗体の安定性を向上させ得る1つ以上のアミノ酸が挙げられる。本明細書中に記載の医薬組成物の作製における使用のための代表的なアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、プロリン又はセリンが挙げられるが限定されない。一部の例では、医薬組成物中のアミノ酸の濃度は、約5~100mM、10~90mM、20~80mM、30~70mM、40~60mM又は約45~55mMであり得る。一部の例では、アミノ酸(例えばヒスチジン)の濃度は、約40mM、41mM、42mM、43mM、44mM、45mM、46mM、47mM、48mM、49mM、50mM、51mM、52mM、53mM、54mM、55mM、56mM、57mM、58mM、59mM又は約60mMであり得る。一例では、医薬組成物は約50mMの濃度でヒスチジンを含有する。
【0093】
何らかの適切な浸透圧修飾剤は、本明細書中に記載の医薬組成物を調製するために使用され得る。一部の実施形態では、浸透圧修飾剤は塩又はアミノ酸である。適切な塩の例としては、塩化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩化カルシウムが挙げられるが限定されない。一部の実施形態では、医薬組成物中の浸透圧修飾剤は、約10~150mM、50~150mM、50~100mM、75~100mM又は約85~95mMの濃度であり得る。一部の実施形態では、浸透圧修飾剤は、約80mM、81mM、82mM、83mM、84mM、85mM、86mM、87mM、88mM、89mM、90mM、91mM、92mM、93mM、94mM、95mM、96mM、97mM、98mM、99mM又は約100mMの濃度であり得る。一例では、浸透圧修飾剤は塩化ナトリウムであり得、これは約90mMの濃度であり得る。
【0094】
本明細書中に記載の医薬組成物中の薬学的に許容可能な担体は、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含み得る。一般に、薬学的に許容可能な賦形剤は、薬理学的に不活性の物質である。賦形剤の非限定例としては、ラクトース、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルトース、イノシトール、トレハロース、グルコース、ウシ血清アルブミン(BSA)、デキストラン、ポリ酢酸ビニル(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレンイミン(PEI)、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール、グリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween-20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween-80)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリソルベート、ポリオキシエチレンコポリマー、リン酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、トリメチルアミンN-オキシド、ベタイン、亜鉛イオン、銅イオン、カルシウムイオン、マンガンイオン、マグネシウムイオン、CHAPS、スクロースモノラウレート及び2-O-ベータ-マンノグリセレートが挙げられる。一部の実施形態では、薬学的に許容可能な担体は、賦形剤を約0.001%~0.1%、0.001%~0.05%、0.005~0.1%、0.005%~0.05%、0.008%~0.05%、0.008%~0.03%又は約0.009%~0.02%含む。一部の実施形態では、賦形剤は、約0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%又は約0.1%である。一部の実施形態では、賦形剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween-80)である。一例では、薬学的に許容可能な担体は0.01%Tween-80を含有する。
【0095】
一部の例では、本明細書中に記載の医薬組成物は、本明細書中にも記載される抗pKal抗体(例えばDX-2930)及びリン酸ナトリウム(例えば二塩基性リン酸ナトリウム二水和物)、クエン酸(例えばクエン酸一水和物)、ヒスチジン(例えばL-ヒスチジン)、塩化ナトリウム及びポリソルベート80のうち1つ以上を含む。例えば、医薬組成物は、抗体、リン酸ナトリウム、クエン酸、ヒスチジン、塩化ナトリウム及びポリソルベート80を含み得る。一部の例では、本抗体は、約30mMリン酸ナトリウム、約19mMクエン酸、約50mMヒスチジン、約90mM塩化ナトリウム及び約0.01%ポリソルベート80中で製剤化される。組成物中の本抗体(例えばDX-2930)の濃度は、約150mg/mL又は300mg/mLであり得る。一例では、組成物は、約150mg DX-2930/1mL溶液、約30mM二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、約19mM(例えば19.6mM)クエン酸一水和物、約50mM L-ヒスチジン、約90mM塩化ナトリウム及び約0.01%ポリソルベート80を含むか又はそれらからなる。別の例では、組成物は、約300mg DX-2930/1mL溶液、約30mM二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、約19mM(例えば19.6mM)クエン酸一水和物、約50mM L-ヒスチジン、約90mM塩化ナトリウム及び約0.01%ポリソルベート80を含むか又はそれらからなる。
【0096】
薬学的に許容可能な塩は、本化合物の所望の生物学的活性を保持する塩であり、望ましくない毒性効果を何ら付与しない(例えばBerge,S.M.,et al.,1977,J.Pharm.Sci.66:1-19参照)。このような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、無毒性の無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来する塩並びに脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などの無毒性有機酸由来の塩が挙げられる。塩基付加塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属由来の塩並びにN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの無毒性有機アミン由来の塩が挙げられる。
【0097】
本組成物は様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固形及び固体剤形、例えば液体溶液(例えば注射可能及び点滴可能な溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム及び坐薬が含まれる。形態は、意図される投与方式及び治療適用に依存し得る。多くの組成物は、抗体のヒトへの投与に使用される組成物と同様な組成物などの注射可能又は点滴可能な溶液の形態である。例示的な投与方式は、非経口(例えば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。一実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は静脈内点滴又は注射により投与される。別の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は筋肉内注射により投与される。別の実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は、皮下注射により投与される。別の好ましい実施形態では、血漿カリクレイン結合タンパク質は腹腔内注射により投与される。
【0098】
「非経口投与」及び「非経口投与される」という句は、本明細書中で使用される場合、通常は注射による、腸内及び局所投与以外の投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び点滴が挙げられるが限定されない。一部の実施形態では、抗体は皮下投与される。
【0099】
組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム又は高薬物濃度に適切な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌注射溶液は、上記で列挙した成分の1つ又は組み合わせとともに適切な溶媒中で必要とされる量の結合タンパク質を組み込み、必要に応じて、続いてろ過滅菌することにより調製され得る。一般に、塩基性分散媒及び上記で列挙した成分からの必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことにより、分散液が調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め濾過滅菌したその溶液から、活性成分+何らかのさらなる所望の成分の粉末を生じる真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合は必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。注射可能な組成物の持続的な吸収は、組成物中に吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを含めることにより、もたらされ得る。
【0100】
本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は、静脈内注射、皮下注射又は点滴を含む様々な方法により投与され得る。例えば、一部の治療適用の場合、約1~100mg/m又は7~25mg/mの用量に到達するように、本抗体を30、20、10、5又は1mg/分未満の速度で静脈内点滴により投与することができる。投与経路及び/又は方式は、所望の結果に応じて変動する。ある一定の実施形態では、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル封入送達系を含む制御放出処方物などの、急速な放出に対して化合物を保護する担体とともに調製され得る。生体分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸を使用することができる。このような処方物の調製のための多くの方法が利用可能である。例えばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,1978,Marcel Dekker,Inc.,New Yorkを参照。
【0101】
医薬組成物は、医療機器を用いて投与され得る。例えば一実施形態では、本明細書中で開示される医薬組成物は、装置、例えば針なし皮下注射装置、ポンプ又は留置物で投与され得る。
【0102】
ある一定の実施形態では、本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は、インビボでの適正な分布を確実にするために製剤化され得る。例えば、脳血管関門(BBB)は、多くの高親水性化合物を排除する。(必要に応じて)本明細書中で開示される治療用化合物がBBBを通過することを確実にするために、これらを例えばリポソーム中で製剤化することができる。リポソームを製造する方法については、例えば米国特許第4,522,811号明細書;同第5,374,548号明細書;及び同第5,399,331号明細書を参照。リポソームは、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送され、従って標的化薬物送達を増強する1つ以上の部分を含み得る(例えばV.V.Ranade,1989,J.Clin.Pharmacol.29:685を参照)。
【0103】
投与レジメンを調整して、最適な所望の応答(例えば治療応答)を提供する。例えば単回ボーラスを投与してもよく、数回の分割用量を経時的に投与してもよく、又は治療状況の緊急事態により示されるように用量を漸減若しくは漸増してもよい。投与を容易にし、投与量を均一にするために単位投与形態で非経口組成物を製剤化することは特に有利である。単位投与形態は、本明細書中で使用される場合、処置される対象に対する単位投与量として適した物理的に個別の単位を指し;各単位は、必要とされる医薬担体との会合において所望の治療効果を生じるように計算した活性化合物の既定量を含有する。単位投与形態のための仕様は、(a)活性化合物の特有の特徴及び達成される特定の治療効果及び(b)個体での感受性の処置のためのそのような活性化合物の調合技術分野での固有の制限により左右され、直接依存し得る。
【0104】
本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量に対する例示的な非限定範囲は約150mg又は300mgである。当業者により理解されるであろうように、抗体の治療的又は予防的有効量は、小児対象に対しては、成人対象の場合よりも低くなり得る。一部の実施形態では、小児対象へ投与される有効量は、固定用量又は体重に基づく用量である。一部の実施形態では、約150mg又は300mg未満の有効量が小児対象に投与される。一部の実施形態では、抗体の治療的又は予防的有効量は、第1の処置期間において2週間ごと又は4週間ごとに投与される。一部の実施形態では、本抗体は、第2の処置期間において対象に投与され得る。一部の実施形態では、第1の処置期間における抗体の治療的又は予防的有効量は、第2の処置期間における抗体の治療的又は予防的有効量とは異なる。一部の実施形態では、第1の処置期間における抗体の治療的又は予防的有効量は150mgであり、第2の処置期間における抗体の治療的又は予防的有効量は300mgである。一部の実施形態では、第1の処置期間における抗体の治療的又は予防的有効量は第2の処置期間における抗体の治療的又は予防的有効量と同じである。一例では、第1の処置期間及び第2の処置期間における抗体の治療的又は予防的有効量は300mgである。
【0105】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量の例示的な非限定範囲は約300mgである。一部の実施形態では、抗体の治療的又は予防的有効量は単回投与で投与される。対象がHAE発作を経験する場合、抗体を、2週間ごとに約300mg用量を投与することのような複数用量で対象にさらに投与してもよい。
【0106】
キット
本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は、キット中に、例えばキットの構成成分として提供され得る。例えば、本キットは、(a)DX-2930抗体、例えば本抗体を含む組成物(例えば医薬組成物)及び任意選択により(b)情報資料を含む。情報資料は、例えば本明細書中に記載の方法のために、本明細書中に記載の方法及び/又は本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)の使用に関する、説明、指示、マーケティング又は他の資料であり得る。一部の実施形態では、本キットはDX-2930の1つ以上の用量を含む。一部の実施形態では、1つ以上の用量は150mg又は300mgである。
【0107】
本キットの情報資料はその形態に限定されない。一実施形態では、情報資料は、化合物の作製、化合物の分子量、濃度、使用期限、バッチ又は製造地情報などに関する情報を含み得る。一実施形態では、情報資料は、障害及び状態、例えば血漿カリクレイン関連疾患又は状態を処置、予防又は診断するために抗体を使用することに関する。
【0108】
一実施形態では、情報資料は、例えば適切な用量、剤形、投与方式又は投与スケジュールで(例えば本明細書中に記載の用量、剤形、投与スケジュール又は投与方式)本明細書中に記載の方法を実施するために適切な方式で本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)を投与するための説明書を含み得る。別の実施形態では,情報資料は、適切な対象、例えばヒト、例えば血漿カリクレイン関連疾患又は状態を有するか又はそのリスクがあるヒトに、本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)を投与するための説明書を含み得る。例えば、この資料は、例えば本明細書中に記載の投与スケジュールに従い、本明細書中に記載の障害又は状態、例えば血漿カリクレイン関連疾患を有する患者に本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)を投与するための説明書を含み得る。本キットの情報資料はその形態に限定されない。多くの場合、情報資料、例えば説明書は、印刷物で提供されるが、コンピュータ可読資料などの他の方式でもあり得る。
【0109】
本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は、何らかの形態、例えば液体、乾燥又は凍結乾燥形態で提供され得る。抗体は実質的に純粋であり、及び/又は無菌であることが好ましい。抗体が液体溶液で提供される場合、液体溶液は好ましくは水性溶液であり、滅菌水性溶液が好ましい。抗体が乾燥形態で提供される場合、再構成は一般に、適切な溶媒の添加による。溶媒、例えば滅菌水又は緩衝液は、任意選択によりキット中で提供され得る。
【0110】
本キットは、本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)を含有する組成物に対する1つ以上の容器を含み得る。一部の実施形態では、本キットは、組成物及び情報資料のための、個別の容器、仕切り又は区画を含有する。例えば、本組成物は、ボトル、バイアル又はシリンジ中に含有され得、情報資料は容器に関連して含有され得る。他の実施形態では、キットの個別の要素は1つの分割されていない容器内に含有される。例えば、本組成物は、ラベルの形態で情報資料がそれに添付されている、ボトル、バイアル又はシリンジ中に含有される。一部の実施形態では、本キットは、本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)の1つ以上の単位投与剤形(例えば本明細書中に記載の剤形)をそれぞれが含有する、複数(例えばパック)の個々の容器を含む。例えば、本キットは、本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)の単一の単位用量をそれぞれが含有する、複数のシリンジ、アンプル、フォイルパケット又はブリスターパックを含む。本キットの容器は、気密性、耐水性(例えば水分又は蒸発の変化に対して不浸透性)及び/又は遮光性であり得る。
【0111】
本キットは、任意選択により組成物の投与に適切な装置、例えばシリンジ又は何らかのこのような送達装置を含む。一実施形態では、本装置は、本抗体の定用量を分配する埋め込み型装置である。本開示は、例えば本明細書中に記載の構成成分を組み合わせることによる、キットを提供する方法も特徴とする。
【0112】
処置
一部の態様では、本開示は、HAEの処置における本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)の使用を提供する。
【0113】
(i)遺伝性血管浮腫
遺伝性血管浮腫(HAE)は「クインケ浮腫」、C1エステラーゼ阻害物質欠乏、C1インヒビター欠乏及び遺伝性血管神経性浮腫(HANE)としても知られる。HAEは、重度の皮下又は粘膜下腫脹(血管浮腫)の予測不可能な、再発性の発作を特徴とし、これは例えば四肢、顔面、生殖器、消化管及び気道に罹患し得る(Zuraw,2008)。HAEの症状としては、例えば、腕、下肢、唇、眼、舌及び/又は喉における腫脹;喉(喉頭)の腫脹、急激な嗄声を含み得、及び/又は窒息による死亡を引き起こし得る気道閉塞(Bork et al.,2012;Bork et al.,2000)が挙げられる。全HAE患者のおよそ50%は、その生涯の間に喉頭発作を経験し、患者が喉頭発作のリスクを有することを予測する方法はない(Bork et al.,2003;Bork et al.,2006)。HAE症状は、明らかな原因のない腹部疝痛;及び/又は重度であり得、腹部疝痛、嘔吐、脱水、下痢、疼痛、ショック及び/又は不要な外科手術につながり得る腹部緊急症状に類似した腸症状に至り得る腸の腫脹の繰り返しエピソードも含む(Zuraw,2008)。腫脹は、最長で5日以上続き得る。このHAEを有する固体の約3分の1が、発作中に有縁性紅斑と呼ばれるかゆみのない発疹を発症する。殆どの患者が1年に複数回の発作を起こす。
【0114】
HAEは、希少障害であり、その正確な有病率は不明であるが、現在の推定では10,000人あたり1人~150,000人あたり1人の範囲であり、50,000人人あたり1人がおそらく最も近い推定値であることに多くの著者が同意している(Bygum,2009;Goring et al.,1998;Lei et al.,2011;Nordenfelt et al.,2014;Roche et al.,2005)。
【0115】
血漿カリクレインは、HAE発作の病態において重要な役割を果たす(Davis,2006;Kaplan and Joseph,2010)。正常な生理学において、C1-INHは、血漿カリクレイン並びに様々な他のプロテアーゼ、例えばClr、Cls、第XIa因子及び第XIIa因子の活性を調節する。血漿カリクレインは、高分子量キニノーゲン(HMWK)からのブラジキニンの放出を調節する。HAEにおけるC1-INHの欠乏により、血漿カリクレイン活性が制御されなくなり、これがブラジキニンの過剰産生につながる。ブラジキニンは、局所的な腫脹、炎症及び疼痛という特徴的なHAE症状の原因であると考えられる血管拡張物質である(Craig et al.,2012;Zuraw et al.,2013)。
【0116】
気道の腫脹は、生命に関わり得、一部の患者は死亡を引き起こす。死亡率は15~33%と推定される。HAEは、年間約15,000~30,000件の救急搬送につながる。
【0117】
外傷又はストレス、例えば、歯科手順、疾病(例えば風邪及びインフルエンザなどのウイルス疾患)、月経及び外科手術などが、血管浮腫の発作を誘発し得る。HAEの急性発作を予防するために、患者は、以前に発作を引き起こしたことがある特定の刺激を回避することを試み得る。しかし、多くの場合、発作は既知のトリガーなく起こる。典型的には、HAE症状は最初に小児期に出現し、青年期の間に悪化する。平均して、無処置個体は、1~2週間ごとに発作を起こし、殆どのエピソードは約3~4日間続く(ghr.nlm.nih.gov/condition/hereditary-angioedema)。発作の頻度及び持続時間は、遺伝性血管浮腫がある者の中で、また同じ家族の者の間でも大きく変動する。
【0118】
HAEには3つのタイプがあり、I型、II型及びIII型として知られており、これらは全て本明細書中に記載の方法により処置され得る。HAEは50,000人に1人で発症すると推定され、I型が症例の約85パーセントを占め、II型が症例の約15パーセントを占め、III型は非常に稀である。III型は、最も新しく記載された形態であり、最初は女性でのみ起こると考えられていたが、罹患した男性がいる家族が特定されている。
【0119】
HAEは常染色体優性パターンで遺伝され、罹患者は、一人の罹患親から突然変異を遺伝し得る。その遺伝子中で新しい突然変異も起こり得、従ってHAEは、その家族にこの障害の既往歴がない者でも起こり得る。症例の20~25%は、新規の自然発生突然変異に起因すると推定される。
【0120】
SERPING1遺伝子における突然変異はI型及びII型遺伝性血管浮腫を引き起こす。SERPING1遺伝子は、炎症を制御するのに重要であるC1インヒビタータンパク質を産生するための指示を提供する。C1インヒビターは、炎症を促進するある特定のタンパク質の活性を遮断する。I型遺伝性血管浮腫を引き起こす突然変異は、血液中のC1インヒビターのレベル低下につながる。対照的に、II型を引き起こす突然変異の結果、異常に機能するC1インヒビターが産生される。患者のうちおよそ85%は、機能的に正常なC1-INHタンパク質の非常に低い産生を特徴とするI型HAEを有し、一方で患者の残りのおよそ15%はII型HAEを有し、機能的に欠陥のあるC1-INHの正常なレベル又は高いレベルを生じる(Zuraw,2008)。機能的C1インヒビターのレベルが適正でなければ、高分子量キニノーゲン(HMWK)からブラジキニンの過剰量が生成され、内皮細胞の表面上のB2受容体(B2-R)に対するブラジキニン結合によって媒介される血管漏出の増加が起こる(Zuraw,2008)。ブラジキニンは、血管壁を通じて身体組織に体液漏出を増加させることにより炎症を促進する。身体組織における体液の過剰蓄積は、I型及びII型遺伝性血管浮腫がある個体で見られる腫脹のエピソードを引き起こす。
【0121】
F12遺伝子における突然変異は、III型遺伝性血管浮腫のいくつかの原因と関連がある。F12遺伝子は、凝固第XII因子を産生するための指示を提供する。血液凝固(凝固)において非常に重要な役割を果たすことに加えて、第XII因子は、炎症の重大な刺激因子でもあり、ブラジキニン産生に関与する。F12遺伝子におけるある特定の突然変異の結果、活性が上昇した第XII因子が産生される。結果として、より多くのブラジキニンが産生され、血管壁がより漏出し易くなり、これが腫脹のエピソードにつながる。III型遺伝性血管浮腫の他の症例の原因は不明のままである。1つ以上の未だ特定されていない遺伝子における突然変異が、これらの症例での障害の原因であり得る。
【0122】
HAEは、アレルギー又は他の医学的状態に起因する血管浮腫の他の形態と類似の症状を呈し得るが、これは原因及び処置が顕著に異なる。遺伝性血管浮腫がアレルギーとして誤診断される場合、抗ヒスタミン、ステロイド及び/又はエピネフリンによって処置されることが最も多く、エピネフリンは命に係わる反応に対して使用され得るものの、この処置は一般的にはHAEでは無効である。誤診断によって、腹部腫脹がある患者に対する不必要な探索的な手術も行われ、一部のHAE患者では、腹痛が心身症として誤って診断されてきた。
【0123】
成人と同様に、HAEの小児は再発性及び衰弱性発作を起こし得る。症状は小児期という非常に早期に出現し得、3歳という幼いHAE患者において上気道血管浮腫が報告されている(Bork et al.,2003)。49人の小児HAE患者に関する1つの症例研究において、23人が18歳までに気道血管浮腫の少なくとも1回のエピソードを有した(Farkas,2010)。HAEの小児、特に青年期の小児の間で、重要なアンメットメディカルニーズが存在するが、それはこの疾患が一般的に青年期後に悪化するからである(Bennett and Craig,2015;Zuraw,2008)。
【0124】
HAEに対するC1インヒビター治療並びに他の治療は、Kaplan,A.P.,J Allergy Clin Immunol,2010,126(5):918-925に記載されている。
【0125】
できる限り素早く浮腫の進行を停止させるためにHAE発作の急性治療が提供される。静脈内に投与されるドナー血液からのC1インヒビター濃縮製剤は、1つの緊急治療であるが;この処置は多くの国で利用可能ではない。C1インヒビター濃縮製剤が利用可能でない緊急状況において、新鮮凍結血漿(FFP)は、これもC1インヒビターを含有するので、代替物として使用され得る。
【0126】
ヒト血液由来の精製C1インヒビターは1979年からヨーロッパで使用されている。いくつかのC1インヒビター処置は現在、米国で利用可能であり、2種類のインヒビター製品が現在カナダで利用可能である。低温殺菌されたベリナートP(CSL Behring)は、2009年にF.D.A.により急性発作に関して承認された。ナノろ過したシンライズ(ViroPharma)は、2008年にF.D.A.により予防として承認された。リューシン(Rhucin)(Pharming)は、ヒト血液由来病原体による感染性疾患伝染のリスクを保有しない開発中の組み換えC1インヒビターである。
【0127】
急性HAE発作の処置は、鎮痛のための投薬及び/又はIV輸液も含み得る。
【0128】
他の治療モダリティは、C1インヒビターの合成を刺激し得るか、又はC1インヒビター消費を減少させ得る。ダナゾールなどのアンドロゲン投薬は、C1インヒビター産生を刺激することによって、発作の頻度及び重症度を低下させ得る。
【0129】
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は腹部発作を誘発し得る。H.ピロリ(H.pylori)を処置するための抗生物質は腹部発作を減少させる。
【0130】
より新しい処置は接触カスケードを攻撃する。エカランチド(KALBITOR(登録商標)、DX-88、Dyax)は、血漿カリクレインを阻害し、米国で承認されている。イカチバント(フィラジル(登録商標)、Shire)は、ブラジキニンB2受容体を阻害し、ヨーロッパ及び米国で承認されている。
【0131】
HAEの診断は例えば家族歴及び/又は血液検査に依存し得る。I、II及びIII型HAEに関連する研究知見は、例えばKaplan,A.P.,J Allergy Clin Immunol,2010,126(5):918-925に記載されている。I型HAEでは、C4レベルと同様に、C1インヒビターのレベルが低下し、一方でC1qレベルは正常である。II型HAEでは、C1インヒビターのレベルは正常であるか又は上昇しているが;C1インヒビター機能は異常である。C4レベルは低下し、C1qレベルは正常である。III型では、C1インヒビター、C4及びC1qレベルは全て正常であり得る。
【0132】
HAEの症状は、例えば質問票、例えば患者、医師又は家族が記入する質問票を使用して評価され得る。このような質問票は当技術分野で公知であり、例えば視覚的アナログスケールを含む。例えばMcMillan,C.V.et al.Patient.2012;5(2):113-26を参照。一部の実施形態では、対象はI型HAE又はII型HAEを有する。I型HAE又はII型HAEは、HAEに一致する臨床歴(例えば皮下又は粘膜、非そうよう腫脹エピソード)又は診断検査(例えばC1-INH機能検査及びC4レベル評価)によるなど、当技術分野で公知の何れかの方法を使用して診断され得る。
【0133】
(ii)抗PKal抗体によるHAEの処置
本開示は、例えば本明細書中に記載の投与スケジュールに従い、HAEを有するか又は有することが疑われる対象に、本明細書中に記載の抗体(例えば本明細書中に記載の抗体の治療的有効量)を投与することによって、遺伝性血管浮腫(HAE)を処置する(例えば1つ以上の症状を寛解させる、安定化させる、又は除去する)方法を提供する。さらに、例えば本明細書中に記載の投与スケジュールに従い、又は第2の治療、例えば本明細書中に記載の1つの他の薬剤と組み合わせて、本明細書中に記載の抗体(例えば本明細書中に記載の抗体の治療的有効量)を投与することによって、HAEを処置する方法が提供される。本開示は、例えば本明細書中に記載の投与スケジュールに従い、HAEを発症するリスクがある対象(例えばHAEの家族歴があるか又はそれに対する遺伝的素因がある対象)に、本明細書中に記載の抗体(例えば本明細書中に記載の抗体の予防的有効量)を投与することによって、HAE又はその症状を防止する方法も提供する。一部の例では、対象は、処置時にHAE症状がないヒト患者であり得る。一部の実施形態では、対象は、HAE I型又はHAE II型を有するヒト患者である。一部の実施形態では、対象は、処置前に年に少なくとも2回(例えば2、3、4、5回以上)のHAE発作を経験したことがあるヒト患者である。
【0134】
一部の実施形態では、対象は女性である。一部の実施形態では、対象は小児対象である。一部の実施形態では、対象は18歳未満の青年期である。一部の実施形態では、対象は12~18歳の青年期である。一部の実施形態では、対象は40~65歳である。
【0135】
一部の実施形態では、対象は性別により定義され得る。例えば、一部の実施形態では,対象は女性である。
【0136】
一部の実施形態では、ヒト対象は体重により定義される。一部の実施形態では、ヒト対象の体重は50kg未満である。一部の実施形態では、ヒト対象の体重は50kg~75kgである。一部の実施形態では、ヒト対象の体重は75kg~100kgである。一部の実施形態では、ヒト対象の体重は100kg以上である。
【0137】
一部の実施形態では、ヒト患者サブグループの何れかに抗pKal抗体(例えばDX-2930)を2週間ごとに約300mgを投与してもよい。他の例では、このようなヒト患者に本抗体約150mgを2又は4週間ごとに投与してもよい。また他の例では、このようなヒト患者に抗体約300mgを4週間ごとに投与してもよい。
【0138】
一部の実施形態では、ヒト対象は、喉頭発作の既往歴又はそれがないことにより定義される。一部の実施形態では、対象は、本明細書中に記載の抗体の投与前に少なくとも1回(例えば1、2、3、4、5回以上)の喉頭発作(即ち喉頭HAE発作)を経験したことがある。一部の実施形態では、対象は、本明細書中に記載の抗体の投与前に喉頭発作を経験したことがない。
【0139】
処置は、障害、障害の症状、又は障害に対する素因を、軽減する、緩和する、変更する、治療する、寛解する、改善する、又はそれに影響を与えるために有効な量を投与することを含む。この処置はまた、疾患又は状態の開始を遅延させる、例えば発症を防止するか又は悪化を防止し得る。
【0140】
DX-2930抗体を投与する方法は、「Pharmaceutical Compositions」にも記載されている。使用される抗体の適切な投与量は、対象の年齢及び体重及び使用される特定の薬物に依存し得る。本抗体は、例えば血漿カリクレインとその基質(例えば第XII因子又はHMWK)との間の望ましくない相互作用を阻害、低減するために競合物質として使用され得る。抗体の用量は、患者において、特に疾患部位で、血漿カリクレインの活性を90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%99%又は99.9%遮断するのに十分な量であり得る。一部の実施形態では、本抗体150mg又は300mgは、2週間ごとに又は4週間ごと投与される。一部の実施形態では、本抗体は、2週間ごと又は4週間ごとの本抗体150mg又は300mgの投与を含む第1の処置期間に対象に投与される。一部の実施形態では、本抗体は、第1の処置期間に続いて第2の処置期間に対象に投与される。一部の実施形態では、本抗体300mgを単回用量で投与する。単回投与後に対象がHAE発作を経験する場合、本抗体を2週間ごとに300mgで投与してもよい。
【0141】
一実施形態では、例えばインビボで血漿カリクレインの活性を阻害する(例えば、血漿カリクレインの少なくとも1つの活性を阻害、例えば第XIIa因子及び/又はブラジキニン産生を低減する)ために、本抗体が使用される。結合タンパク質は、単独で、又は例えば細胞傷害薬、細胞傷害性酵素若しくは放射性同位体などの物質にコンジュゲートして使用することができる。
【0142】
本抗体は、天然の補体依存性細胞傷害性(CDC)又は抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を介して抗原発現細胞を除去するために、インビボで直接使用することができる。本明細書中に記載の抗体は、補体結合エフェクタードメイン、例えばIgG1、-2又は-3からのFc部分又は補体に結合するIgMの対応部分を含み得る。一実施形態では、標的細胞の集団は、本明細書中に記載の抗体及び適切なエフェクター細胞によってエクスビボで処置される。この処置を、補体又は補体含有血清の添加により補充することができる。さらに、本明細書中に記載の抗体でコーティングした標的細胞の食作用を、補体タンパク質の結合により改善することができる。別の実施形態では標的、補体結合エフェクタードメインを含む本抗体をコーティングした細胞は、補体により溶解される。
【0143】
DX-2930抗体を投与する方法は、「Pharmaceutical Compositions」に記載されている。使用される分子の適切な投与量は、対象の年齢及び体重及び使用される特定の薬物に依存する。本抗体は、例えば天然又は病理学的物質と血漿カリクレインとの間の望ましくない相互作用を阻害又は低減するために、競合物質として使用され得る。
【0144】
本明細書中に記載される抗体の治療的有効量を、HAEを有するか、有する疑いがあるか、又はそのリスクがある対象に投与し、それにより障害を処置する(例えば、障害の症状又は特性を寛解させるか又は改善させるか、疾患進行を遅らせる、安定化する、及び/又は停止させる)ことができる。
【0145】
本明細書中に記載の抗体は治療的有効量で投与され得る。抗体の治療的有効量は、対象への単回用量又は複数用量の投与時に、対象を処置する、例えば、このような処置を行わない場合に予想されるものを超える程度まで、対象における障害の少なくとも1つの症状を治癒するか、軽減するか、緩和するか、又は改善するために有効な量である。
【0146】
投薬レジメンを調節して、最適な所望の応答(例えば治療応答)を提供することができる。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、複数の分割用量を経時的に投与してもよく、、又は治療状況の緊急事態により示されるように用量を漸減又は漸増させてもよい。他の例では、ボーラスを投与後に複数用量を経時的に投与してもよく、又は治療状況の緊急事態により示されるように用量を漸減若しくは漸増してもよい。他の例では、用量を複数の用量に分割し、経時的に投与してもよい。投与を容易にするため及び投与量の均一性のために、単位投与形態で非経口組成物を製剤化することは特に有利である。単位投与形態は、本明細書中で使用される場合、処置される対象のる単位投与量として適切な物理的に個別の単位を指し;各単位は、必要とされる医薬担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性化合物の既定量を含有する。
【0147】
一部の実施形態では、第1の処置期間中の投薬レジメンにおいて本明細書中に記載される抗体が投与される。一部の実施形態では、本抗体は、第1の処置期間に複数用量を投与される。この期間において、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は約150mg又は300mgであり得、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに投与される。一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は、は約300mgであり得、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに女性対象に投与される。一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は約300mgであり得、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに、18歳未満である対象に投与される。一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は約300mgであり得、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに、40~65歳の対象に投与される。
【0148】
一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は約300mgであり得、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに65歳以上の対象に投与される。特定の例では、本抗体は、2週間ごとに約300mgで対象に投与される。他の具体的な例では、本抗体は4週間ごとに約300mgで対象に投与される。
【0149】
一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は約300mgであり得、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに、少なくとも1回の喉頭HAE発作を経験したことがある対象に投与される。具体的な例では、本抗体は、2週間ごとに約300mgで対象に与えられる。他の具体的な例では、本抗体は、4週間ごとに約300mgで対象に与えられる。
【0150】
一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は、約150mg又は300mgであり得、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに18歳未満である対象に投与される。具体的な例では、本抗体は、2週間ごとに約300mgで対象に投与される。他の具体的な例では、本抗体は、4週間ごとに約300mgで対象に投与される。
【0151】
一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は約150mg又は300mgであり得、2週間ごと又は4週間ごとに投与される。一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は300mgであり得、2週間ごとに対象に投与される。一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は300mgであり得、4週間ごとに対象に投与される。一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は150mgであり得、4週間ごとに対象に投与される。一部の実施形態では、治療的又は予防的有効量は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回以上、投与される。一部の実施形態では、第1の処置期間は26週間である。一部の実施形態では、治療的又は予防的有効量は150mgであり、4週間ごとに(例えば26週間にわたり4週間ごと、その結果、全体で7用量が送達される)対象に投与される。一部の実施形態では、治療的又は予防的有効量は300mgであり、2週間ごとに(例えば26週にわたり2週間ごと、その結果、全体で13用量が送達される)対象に投与される。一部の実施形態では、治療的又は予防的有効量は300mgであり、4週間ごとに(例えば26週間にわたり4週間ごと、その結果、全体で7用量が送達される)対象に投与される。
【0152】
一例では、第1の処置期間は26週間であり、本抗体は、0日目、28日目、56日目、84日目、112日目、140日目及び168日目に投与される。別の例では、1の処置期間は26週間であり、本抗体は、0日目、14日目、28日目、42日目、56日目、70日目、84日目、98日目、112日目、126日目、140日目、154日目及び168日目に投与される。記載の処置スケジュールが、±4日間(例えば±3日間、±2日間又は±1日間)の枠を許容することは、当業者により理解される。例えば10~18日目に投与される用量は、上記の14日目の用量に包含される。
【0153】
一部の実施形態では、治療的又は予防的有効量は、第1の処置期間後に第2の処置期間中に投薬レジメンで投与される。一部の実施形態では、治療的又は予防的有効量は、第1の処置期間及び第2の処置期間において異なる。一部の実施形態では、第2の処置期間の治療的又は予防的有効量は約300mgである。この期間中、本抗体は、2週間ごとに300mgを投与するなど、約300mgの複数用量を投与され得る。一部の実施形態では、第2の処置期間において、本抗体の複数用量は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回投与される。一部の実施形態では、第2の処置期間は26週間である。一部の実施形態では、本抗体は、26週間にわたり2週間ごとに約300mgの用量で投与される(例えば13用量が送達される)。一部の実施形態では、第2の処置期間の単回の初回用量は、第1の処置期間の最後の投与から約2週間後に行われる。
【0154】
本明細書中に記載の実施形態の何れかでは、本抗体の投与のタイミングは、およそであり、指定日の前の3日間及び後の3日間を含み得る(例えば2週間ごとの投与は、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目又は17日目での投与を包含する)。
【0155】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される抗体は、本明細書中に記載される同じ抗pKal抗体(例えばDX-2930)による複数用量処置などの事前HAE処置(第1の処置)を受けたことがある対象に約300mgの単回用量を投与される。対象が単回用量後にHAE発作を経験する場合、対象を、適切な期間、例えば26週間にわたり、本抗体の複数用量によって2週間ごとに約300mgで処置することができる。一部の実施形態では、複数用量の初回は、HAE発作の1週間以内(例えばHAE発作の1日、2日、3日、4日、5日、6日又は7日以内)に投与される。一部の実施形態では、本抗体は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回以上投与される。
【0156】
事前HAE処置は、本明細書中に記載される同じ抗体(例えばDX-2930)を含み得る。一部の実施形態では、事前HAE処置は、2週間ごと又は4週間ごとのDX-2930の複数用量を含み得る。一部の実施形態では、DX-2930は、4週間ごとに150mg、2週間ごとに300mg又は4週間ごと300mg、対象に(例えば皮下に)投与される。一例では、対象は、本抗体の単回用量の投与前に26週間にわたり2週間ごと又は4週間ごとに本抗体を事前に投与された。一部の実施形態では、事前処置の本抗体の複数用量は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回投与される。一部の実施形態では、本抗体は、0日目、28日目、56日目、84日目、112日目、140日目及び168日目に事前に投与された。一部の実施形態では、本抗体の約300mgの単回投与は、事前処置の最後の投与から約2週間後に投与される。一例では、第2の処置期間の単回用量は、第1の処置期間の182日目に投与される。
【0157】
本明細書中に記載の実施形態の何れかにおいて、本抗体の投与のタイミングはおよそであり、指定日の前の3日間および後の3日間を含む(例えば投与2週間ごとは、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目又は17日目での投与を包含する)。
【0158】
一部の実施形態では、本明細書中に記載の方法の何れかによる抗体を投与する前に、ベースラインHAE発作率を確立するために対象を評価し得る。このような評価期間は「慣らし期間」と呼ばれ得る。一部の実施形態では、ベースラインHAE発作は、所定の期間におけるHAE発作の最小数に合致するか又はそれを超えなければならない。一例では、対象は、本抗体の初回投与の前に、4週間の慣らし期間において少なくとも1回のHAE発作を経験する。別の例では、対象は、本抗体の初回投与の前の4週間の慣らし期間において1カ月あたり1~2回未満の発作を経験する。別の例では、対象は、本抗体の初回投与の前の4週間の慣らし期間において1カ月あたり2~3回未満の発作を経験する。別の例では、対象は、本抗体の初回投与の前の4週間の慣らし期間において1カ月あたり3回以上の発作を経験する。別の例では、対象は、本抗体の初回投与の前の8週間の慣らし期間において少なくとも2回のHAE発作を経験する。また別の例において、対象は1カ月あたり平均で少なくとも1回のHAE発作を経験する。
【0159】
一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は、約150mg又は300mgであり得、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに、本抗体の初回投与前の慣らし期間中に1カ月あたり1~2回未満のHAE発作を経験したことがある対象に投与される。一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は約150mg又は300mgであり得、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに、本抗体の初回投与前の慣らし期間中に1カ月あたり2~3回未満のHAE発作を経験したことがある対象に投与される。一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は約150mg又は300mgであり得、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに、本抗体の初回投与前の慣らし期間中に1カ月あたり3回を超えるHAE発作を経験したことがある対象に投与される。
【0160】
一部の実施形態では、本明細書中に記載の方法の何れかに従い抗体を投与した結果、対象における平均HAE発作率が低下する。一部の実施形態では、本明細書中に記載の方法の何れかによる抗体を投与した後の平均HAE発作率のパーセント低下は、本抗体を投与されなかった対象(例えばプラセボを投与された対象)におけるHAE発作率と比較して決定され得る(例えばプラセボを投与された対象)。一部の実施形態では、平均HAE発作率のパーセント低下は、本抗体を受けなかった対象におけるHAE発作率と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%又は少なくとも95%であり得る。
【0161】
本明細書中に記載の対象の何れも、HAEの予防的又は治療的処置など、HAEの事前処置を受けたことがあり得る。本開示の態様は、HAEの1回以上の事前処置を受けたことがある対象に本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)を投与する方法も提供する。一部の実施形態では、HAEの事前処置は、本明細書中に記載の抗体(例えばDX-2930)を含む処置である。一部の実施形態では、対象は、2週間ごと又は4週間ごとのDX-2930の複数用量を事前に投与された。一部の実施形態では、対象は、DX-2930の150mgを2週間ごとに事前に投与された。一部の実施形態では、対象は、DX-2930の300mgを2週間ごとに事前に投与された。一部の実施形態では、対象は、DX-2930の300mgを4週間ごとに事前に投与された。一部の実施形態では、事前処置の抗体の複数用量は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回投与される。
【0162】
一部の実施形態では、対象は、長期予防的処置などのHAEに対する1回以上の事前処置を受けており、これは、当技術分野で公知のHAEに対する治療剤の何れかを含み得る。代表的な抗HAE剤としては、C1-インヒビター(例えばシンライズ(登録商標)、ベリナート(登録商標)又はルコネスト(Ruconest)(登録商標))、血漿カリクレイン阻害剤(例えばKalbitor(登録商標))、ブラジキニン受容体阻害剤(例えばフィラジル(登録商標))、減弱化したアンドロゲン(例えばダナゾール)及び抗線維素溶解剤(例えばトラエキサム酸(traexamic acid))が挙げられるが限定されない。一部の実施形態では、対象は、第1の処置期間の前にC1-インヒビターによる処置を受けていた。一部の例では、対象は、本明細書中に記載される抗pKal抗体処置を受ける前に用量漸減期間を受け得る。用量漸減期間は、抗pKal抗体処置前の期間を指し、その間に、事前HAE処置(例えばC1-INH、経口アンドロゲン及び/又は経口抗線維素溶解剤)を受けている対象が、事前HAE処置から本明細書中に記載される抗pKal抗体処置へと徐々に移行し得るように、抗HAE剤の投与量、頻度又はその両方を徐々に低下させる。一部の実施形態では、用量漸減は、事前処置の投与量及び/又は事前処置が施される頻度を減少させる漸進的又は段階的方法を含む。漸減期間は、2~4週間続き得、個々の特許の要因に基づき変動し得る。一部の例では、事前処置は抗pKal抗体処置開始前に終了する。他の例では、事前処置は、対象が抗pKal抗体の初回用量を施された後に適切な時間枠(例えば2週間、3週間又は4週間)以内に終了し得る。
【0163】
或いは、事前HAE処置を受けている対象を、用量漸減期間なく直接、本明細書中に記載される抗pKal抗体処置に移行してもよい。
【0164】
一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の治療的又は予防的有効量は、約150mg又は300mgであり得、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間以上ごとに、HAEの1回以上の事前処置を受けたことがある対象に投与される。
【0165】
他の実施形態では、対象は、初回処置前のHAEの事前処置、初回処置期間及び/又は本明細書中に記載される追加の単一用量及び複数用量処置(第2の処置期間)を何ら受けない。一部の実施形態では、対象は、第1の処置期間中に及び/又は第2の処置期間中に本明細書中に記載の抗体以外の何れの処置も受けない。一部の実施形態では、対象は、初回処置又は第1の処置期間前、初回処置又は第1の処置期間中、及び/又は第2の処置期間中に、少なくとも2週間(例えば少なくとも2、3、4、5週間以上)にわたりHAEの事前処置を何ら受けない。一部の実施形態では、対象は、初回処置又は第1の処置期間前、第1の処置期間中及び/又は第2の処置期間中に、少なくとも2週間、HAEの長期予防(例えばC1インヒビター、減弱化アンドロゲン、抗線維素溶解剤)を受けない。一部の実施形態では、対象は、初回処置又は第1の処置期間前、第1の処置期間中及び/又は第2の処置期間中に、少なくとも4週間、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤を含むHAE処置を受けない。一部の実施形態では、対象は、初回処置又は第1の処置期間の前、第1の処置期間中及び/又は第2の処置期間中に、少なくとも4週間、エストロゲン含有薬物療法を受けない。一部の実施形態では、対象は、初回処置又は第1の処置期間の前、第1の処置期間中及び/又は第2の処置期間中に、少なくとも2週間、アンドロゲン(例えばスタノゾロール、ダナゾール、オキサンドロロン、メチルテストステロン、テストステロン)を受けない。
【0166】
本明細書中に記載の方法の何れかは、処置前後又は一連の処置中に、副作用(例えばクレアチンホスファターゼレベル上昇)及び/又は抗体によるpKalの阻害レベル(例えば抗体の血清若しくは血漿中濃度又はpKal活性レベル)について患者をモニターすることをさらに含み得る。1つ以上の有害作用が観察される場合、抗体の用量を減少させてもよく、又は処置を終了させてもよい。阻害レベルが最小治療レベルを下回る場合、抗体のさらなる用量を患者に投与してもよい。患者はまた、投与される抗体に対する抗体の産生;C1-インヒビター、C4及び/又はC1qの活性;クオリティーオブライフ;何らかのHAE発作の発生率、健康関連のクオリティーオブライフ、不安症及び/又はうつ(例えばHospital Anxiety and Depression Scale(HADS))、作業生産性(例えばWork Productivity and Activity Impairment Questionnaire(WPAI))、他の注射剤と比較した抗体(例えばD-2930)の皮下投与の優先度、クオリティーオブライフ(例えば血管浮腫-クオリティーオブライフ(AE-QOL)、EuroQoL Group 5-dimension report)についても評価され得る。
【0167】
一部の実施形態では、処置の有効性を評価するために、一連の処置中(例えば初回投与後)に抗体(例えばDX-2930)の血漿又は血清中濃度が測定され得る。抗体の血漿又は血清中濃度が約80nMより低い場合、初回投与量と同じ又はそれより高い投与量であり得る追加投与量が必要であり得る。抗体の血漿又は血清中濃度は、例えば免疫アッセイ又はMSアッセイにより、対象から得た血漿又は血清試料中の抗体のタンパク質レベルを決定することにより測定され得る。抗体の血漿又は血清中濃度は、抗体によって処置した対象から得た血漿又は血清試料中のpKalの阻害レベルを決定することによっても測定され得る。このようなアッセイは、本明細書中に記載される切断キニノーゲンを測定するための合成基質アッセイ又はウエスタンブロットアッセイを含み得る。
【0168】
或いは又はさらに、クレアチンキナーゼの血漿又は血清中レベル及び/又は1つ以上の凝固パラメーター(例えば活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、プロトロンビン時間(PT)、出血性事象)を一連の処置中にモニターすることができる。クレアチンキナーゼの血漿又は血清中レベルが処置中に上昇することが見られる場合、抗体の投与量を減少させてもよく又は処置を終了させてもよい。同様に、1つ以上の凝固パラメーターが処置中に顕著に影響を受けることが見出される場合、抗体の投与量を変化させてもよく又は処置を終了させてもよい。
【0169】
一部の実施形態では、本抗体(例えばDX-2930)の最適投与量(例えば最適予防投与量又は最適治療投与量)は次のように決定され得る。本抗体を、初回用量で処置を必要とする対象に投与する。対象における抗体の血漿中濃度を測定する。血漿中濃度が80nMよりも低い場合、その後の投与で抗体の用量を増加させる。約80nMを上回る抗体血漿中濃度を維持する抗体の投与量は、対象に関する最適投与量として選択することができる。一連の処置中に対象のクレアチンホスホキナーゼレベルをモニターすることができ、クレアチンホスホキナーゼレベルに基づき、その対象の最適投与量をさらに調整することができ、例えば、クレアチンホスホキナーゼの上昇が処置中に観察される場合、抗体の投与量は減量され得る。
【0170】
(iii)併用療法
本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は、血漿カリクレイン活性に関連する疾患又は状態、例えば本明細書中に記載の疾患又は状態を処置するために他の治療剤の1つ以上と組み合わせて投与され得る。例えば、本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は、別の抗血漿カリクレインFab又はIgG(例えば本明細書中に記載の別のFab又はIgG)、別の血漿カリクレイン阻害剤、ペプチド阻害剤、低分子阻害剤又は外科手術とともに治療的又は予防的に(例えば一連の処置前、処置中又は処置後)使用され得る。本明細書中に記載の抗体に結合する血漿カリクレインの併用療法で使用され得る血漿カリクレイン阻害剤の例としては、例えば国際公開第95/21601号パンフレット又は国際公開第2003/103475号パンフレットに記載の血漿カリクレイン阻害剤が挙げられる。
【0171】
1つ以上の血漿カリクレイン阻害剤を、本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)と組み合わせて使用することができる。例えば組み合わせによって、必要な阻害剤の用量は低下し、その結果副作用が軽減され得る。
【0172】
本明細書中に記載される抗体(例えばDX-2930)は、HAEを処置するための1つ以上の現在の治療剤と組み合わせて投与され得る。例えばDX-2930抗体は、エカランチド、C1エステラーゼ阻害剤(例えばシンライズ(商標))、アプロチニン(TRASYLOL(登録商標))及び/又はブラジキニンB2受容体阻害剤(例えばイカチバント(フィラジル(登録商標)))などの第2の抗HAE治療剤と同時使用することができる。
【0173】
「併用」という用語は、同じ患者に処置するために2つ以上の薬剤又は治療剤の使用を指し、薬剤又は治療剤の使用又は作用は時間が重複する。薬剤又は治療剤は、同時に(例えば、患者に投与される単一製剤として、又は同時に投与される2つの個別の製剤として)又は任意の順序で連続的に投与され得る。連続投与は、異なる時間に行われる投与である。ある薬剤と別の薬剤の投与間の時間は、分、時間、日又は週単位であり得る。本明細書中に記載の血漿カリクレイン結合抗体の使用は、別の治療剤の投与量を低下させるために、例えば投与される別の薬剤に関連する副作用を軽減するためにも使用され得る。従って、組み合わせは、血漿カリクレイン結合抗体の非存在下で使用される場合よりも少なくとも10、20、30又は50%低い投与量で第2の薬剤を投与することを含み得る。一部の実施形態では、対象は、本明細書中に記載される抗pKal抗体(例えばDX-2930)の初回投与と同時に負荷IV用量又はSC用量としてC1-インヒビターを投与することができる。次に、対象は抗pKal抗体処置(C1-インヒビターのさらなる投与なし)を継続することができる。
【0174】
併用療法は、他の治療剤の副作用を軽減する薬剤を投与することを含み得る。薬剤は、血漿カリクレイン関連疾患の処置の副作用を軽減する薬剤であり得る。
【0175】
(iv)処置レジメンを評価するためのアッセイ
本明細書中に記載の処置方法の何れかの有効性を評価するためのアッセイ方法も本開示の範囲内である。一部の実施形態では、HAEに関連する1つ以上のバイオマーカー(例えば2-鎖HMWK)の血漿又は血清中濃度を、処置の有効性を評価するために、一連の処置の前及び/又は処置中(例えば初回投与の後)に測定することができる(may be may be measured)。一部の実施形態では、投与量の投与後の時点で得られるHAEに関連する1つ以上のバイオマーカーの血漿又は血清中濃度(レベル)を、投与量の投与後又は初回投与量の投与前のより早い時点で得られる試料中のバイオマーカーの濃度と比較する。一部の実施形態では、バイオマーカーは2-HMWKである。
【0176】
バイオマーカーのレベルは、バイオマーカーを特異的に検出する抗体を使用して、例えばウエスタンブロットアッセイ又はELISAなどの免疫アッセイによって、対象から得られる血漿又は血清試料中のバイオマーカーを検出することによって測定され得る。一部の実施形態では、対象から得られる血漿又は血清試料中の2-HWMKのレベルは、イムノアッセイにより評価される。2-HWMKの検出のためのイムノアッセイにおいて使用するための抗体は当技術分野で公知であり、本明細書中に記載の方法での使用のためのこのような抗体の選択は、当業者にとって明らかである。
【0177】
さらなる労力なく、当業者は、上記に基づき、その最大の程度まで本発明を利用し得ると考えられる。従って、次の具体的な実施形態は、単なる例示と解釈されるべきであり、本開示の残りの部分を何ら限定するものではない。本明細書中で引用される刊行物は全て、本明細書中で言及される目的又は主題について参照により組み込まれる。
【実施例0178】
実施例1:ヒト患者亜集団におけるDX-2930処置の有効性及び安全性
ラナデルマブは、pH6.0の注射用の滅菌保存剤フリーの溶液である。活性成分である抗体DX-2930は、以下の公定の構成成分:30mM二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、19.6mMクエン酸一水和物、50mM L-ヒスチジン、90mM塩化ナトリウム、0.01%ポリソルベート80を使用して製剤化される。各バイアルは、1mL溶液中の150mg DX-2930活性成分の名目濃度を含有する。試験製品は、盲検方式で上腕に皮下(SC)注射により投与される。
【0179】
プラセボは、試験製品の不活性製剤からなる:0.01%ポリソルベート80とともに、30mM二塩基性リン酸ナトリウム二水和物、19.6mMクエン酸一水和物、50mM L-ヒスチジン、90mM塩化ナトリウム、pH6.0。プラセボ処置アームに対して無作為化された対象に、プラセボ用量を投与し、4週間ごとに300mg又は150mg DX-2930の治療アームに無作為化された対象では、DX-2930の投与の合間に、プラセボ用量を投与した。
【0180】
ベースラインでHAE I/II型であり、≧1回発作/月である≧12歳の患者を、ラナデルマブ150mgを4週間ごと(q4wks)、300mgを4週間ごと、300mgを2週間ごと又はプラセボに対して2:2:2:3で無作為化した。予備分析を、ポアソン回帰に関して適正数の患者を有する亜集団に関して計画した。
【0181】
14日目~182日目に以下の主要及び副次的有効性評価項目を評価した。本試験の主要評価項目は、HAE発作数及び平均HAE発作率であった。副次的評価項目は、以下を順位序列でむ:
1.緊急処置を必要とするHAE発作数
2.中度から重度のHAE発作数。
【0182】
探索的有効性評価項目
1.14日目の後に初めて発作が起こるまでの時間、即ち、14日目の後、最初の発作が起こるまでの、対象が発作を起こさなかった持続時間。
2.高い病的状態のHAE発作の週あたりの数;高い病的状態のHAE発作は、以下の特徴のうち少なくとも1つを有する何らかの発作として定義される:入院(<24時間の観察のための入院を除く)を必要とする重度の発作、血行動態学的に重要な発作(収縮期血圧<90、IV水分補給を必要とする、又は失神若しくは失神に近い状態を伴う)又は喉頭発作。
【0183】
臨床検査
臨床試験に含まれる患者に対して、一般的な安全性パラメーター(血液学、凝固、検尿及び血清化学)、血清学、妊娠検査、C1-INH機能アッセイ、C4アッセイ、C1qアッセイ、PK試料、血漿抗薬物抗体検査及びPD試料を含む臨床検査を行った。全ての臨床検査は、確立され、検証された方法を使用して実施される。
【0184】
結果
全体として、125人の患者をラナデルマブ(n=84)又はプラセボ(n=41)によって処置した。全患者、従って全ての患者サブグループの平均HAE発作率を決定した。平均HAE発作数を使用して、プラセボを投与した患者と比較して、DX-2930を投与した患者の平均HAE発作率のパーセント低下を決定した。HAE発作率は、全ての患者及び患者サブグループにおいて、プラセボと比較して、DX-2930によって一貫して低下した。しかし、表2で示されるように、2週間ごとに300mgのDX-2930を投与した場合、4週間ごとに300mgのDX-2930(又は4週間ごとに150mgのDX-2930)と比較して、いくつかの患者サブグループについて、プラセボ処置と比較してより大幅のパーセント低下、即ちより治療的に有効な低下が観察された。具体的には、4週間ごとに300mgのDX-2930を投与された<18歳の患者では、プラセボと比較してHAE発作率が20.5%低下し;2週間ごとに300mgのDX-2930を投与された<18歳の患者では、約42パーセンテージポイントのさらなる発作率の低下を認めた(62.3%)(図3A)。4週間ごとに300mgのDX-2930を投与した40~<65歳の患者では、プラセボと比較してHAE発作率が71.5%低下し;2週間ごとに300mgのDX-2930を投与された40~<65歳の患者では、発生率が約18パーセンテージポイントより低く、さらに低下した(89.8%)。4週間ごとに300mgのDX-2930を投与された女性患者では、プラセボと比較してHAE発作率が69.6%低下し;2週間ごとに300mgのDX-2930を投与された女性患者では、約16パーセンテージポイントのさらなる低下を認めた(85.8%)。4週間ごとに300mgのDX-2930を投与された喉頭発作の既往歴がある患者では、プラセボと比較してHAE発作率が64.2%低下し;2週間ごとに300mgのDX-2930を投与された喉頭発作の既往歴がある患者では、約21パーセンテージポイントより低い、さらなる低下があった(85.7%)。
【0185】
【表2】
【0186】
ラナデルマブ300mg q2wks又はq4wksで処置された全てのHAE I型/II患者は、プラセボと比較して、HAE発作率の臨床的に意味のある持続的な低下を経験したが、ある一定の亜集団の患者、例えば女性、<18歳又は40~65歳の患者及び少なくとも1回の喉頭発作の既往歴があった患者は2週間ごとの300mgによってより良好な治療有効性を示した。
【0187】
患者をまた、慣らし期間中にHAE発作に基づいて階層化し、これらの患者サブグループにおけるラナデルマブ処置レジメンのそれぞれの有効性を評価した。表3~5及び図1A~1Cに示されるように、ラナデルマブ処置レジメンのそれぞれの結果、全てのサブグループにおいてプラセボと比較した場合、HAE発作率が有意に低下した。
【0188】
【表3】
【0189】
【表4】
【0190】
【表5】
【0191】
長期予防としてC1-インヒビター(C1-INH)のみを使用した患者では、ベースラインでの発作率は、プロトコールによるC1-INH中断中に過去の発生率(最近3カ月中)と比較して上昇した(図2A)。ラナデルマブ処置中の発作率は過去の発作率よりも低かった。発作率は、長期予防時の過去の発作率と比較して、それぞれ、ラナデルマブ150mg q4wks、300mg q4wks及び300mg q2wksでの処置中、平均で68.8%、59.3%及び82.1%低下した。
【0192】
ポアソン回帰モデルを用いてプラセボと比較した場合に、予防のためにC1-INHのみを使用した患者において、及び長期予防を使用しなかった患者において、ラナデルマブの一貫した処置効果を認めた(図2B)。ラナデルマブ投与前に長期予防のためにC1-INHのみを使用した患者では、平均発作率が、プラセボと比較して、ラナデルマブ150mg q4wks、300mg q4wks及び300mg q2wksのレジメン(regiment)においてそれぞれ、73.6%、71.6%及び82.5%有意に低下した(全ての比較に対してP<0.001)。
【0193】
年齢、性別、体重、HAEのタイプ(例えばI型又はII型)及び喉頭発作の既往歴などに基づいて、対象のサブグループに関して、プラセボと比較して各投薬レジメンでラナデルマブを投与された対象におけるHAE発作率のパーセンテージ低下を評価した。図4A~4E及び5。
【0194】
ラナデルマブは、cHMWKレベルに及ぼすその効果により示されるように、pKal活性化を顕著に抑制した。2週間ごとに300mgの固定用量レジメンでは、幅広い体重範囲にわたり、青年期及び成人において最適な臨床応答が観察された。
【0195】
実施例2:ヒト青年期患者におけるDX-2930(ラナデルマブ)処置の有効性及び安全性
この第3相試験及び非盲検長期(OLE)試験で、C1インヒビター欠損があるHAEの青年期の患者において、血漿カリクレインを標的とするモノクローナル抗体であるラナデルマブの有効性及び安全性を調べた。
【0196】
第3相試験に対して、≧1回/4週間の発作を医師が確認した、≧12歳の患者を、プラセボ又は4週間ごとに150mg(150mg q4w)、300mg q4w又は300mg q2wのラナデルマブに無作為化した。第3相試験において、125人の患者のうち10人(8%)が青年期(≧12~<18歳)であった。第3相試験の開始前に、患者の60.0%に単に長期予防のためにC1-INHを投与した。
【0197】
一般的に、第3相試験(即ち4週間ごとに150mg、4週間ごとに300mg、2週間ごとに300mg)の処置レジメンに従って非盲検長期試験でのロールオーバー対象をラナデルマブで処置した。非盲検長期試験において、0日目に対象に300mgラナデルマブの単回非盲検用量を皮下に投与する。対象は、その最初に報告され、医師により確認されるHAE発作まで、追加のラナデルマブ用量を投与しなかった。ロールオーバー対象がその最初のHAE発作を報告すると、最初の非盲検用量と2回目の非盲検用量との間に少なくとも10日あけて、できる限り直ちにラナデルマブの2回目の非盲検用量を対象に投与する。第2回目の用量後、ロールオーバー対象は、計画された投薬に従って、処置期間の残りの期間にわたり2週間ごとに非盲検300mgラナデルマブの反復皮下投与を受け続ける。処置期間は、最初の非盲検投与日から350日間続く。
【0198】
非盲検長期試験の非ロールオーバー対象は、0日目に300mgラナデルマブの非盲検用量を皮下投与で受け、計画された投薬に従って処置期間にわたり2週間ごとに非盲検300mgラナデルマブの皮下投与を受け続ける。全体で26用量が投与され、350日目の来院時に最後の用量が投与される。
【0199】
ロールオーバー患者について、非盲検長期試験開始前に62.5%にC1-INHのみを投与した。非ロールオーバー青年期患者では、試験開始前に61.6%に長期予防治療(C1-INHのみ又はC1-INH及び経口治療)を投与した(主にC1-INHのみ;46.2%)。月ごとの発作率(MAR)及び他の治療下発現有害事象(TEAE)を記録した。
【0200】
3人の青年期対象が、13例の治療中に発生した重篤ではない有害事象(TEAE)を示した。非盲検長期試験で、21人/212人の患者(9.9%)が青年期であった。ロールオーバー患者(n=8)及び非ロールオーバー患者(n=13)はそれぞれ、ベースラインで平均(SD)月ごとの発作率が1.65(1.158)及び1.54(0.971)であり、処置期間中は0.35(0.635)及び0.07(0.166)であり、即ち-84.371(18.9415)及び-94.893(10.5230)の平均(SD)パーセント変化を認めた。9人の患者が、65例の重篤ではないラナデルマブ関連TEAEを示した。
【0201】
この試験からの結果を下の表6で提供する。ラナデルマブは、HAEを有する青年期の患者においてMARの軽減において有効であり、安全であることが見出された。
【0202】
【表6】
【0203】
第3相試験において、プラセボを与えた患者(n=4;0.548[0.224])と比較して、ラナデルマブ300mg q4wks(n=3;0.436[0.253])又はラナデルマブ300mg q2wks(n=2;0.207[0.148])によって処置した患者では0日目~182日目に、より低い最小二乗平均(SE)HAE発作率が観察された。これは、1人しか青年期患者を含まなかったので150mg q4wks治療アームでは推定されなかった。月ごとの発作率比(対プラセボ)の推定最小二乗平均は、95%CIで、ラナデルマブによる処置、特に300mg q2wksの用量レジメンにとって有利であった(図3C)。非盲検長期試験において、月ごとの平均発作率のベースラインからの平均(SD)パーセント変化は、ロールオーバー患者では84.37(18.94)(n=8;通常の投与段階)及び非ロールオーバー患者では-94.89(10.52)(n=13;図3B)であった。
【0204】
第3相試験において、3人の青年期患者で、重篤ではないラナデルマブ関連TEAEが13例あった(表7)。ラナデルマブでの処置中の>1人の患者で起こった最も一般的なTEAEは、注射部位の疼痛(3人の患者)及び発赤(2人の患者)であった。非盲検長期試験において、9人の患者で、0.63年の平均対象時間にわたり、65例の重篤ではないラナデルマブ関連TEAEがあった。>1人の患者で起こった最も一般的なTEAEは、注射部位の疼痛(9人の患者)、ウイルス上気道感染(3人の患者)、インフルエンザ(2人の患者)、連鎖球菌性の咽頭炎(2人の患者)、上気道感染(2人の患者)、腹部痛(2人の患者)及び頭痛(2人の患者)であった。全体的に、>1人の患者で記録されたラナデルマブ投与に関連する最も一般的なTEAEは注射部位の疼痛であった(第3相試験で3人の患者及びOLE試験で8人の患者;表7)。これらは、第3相試験の全体集団で同定されたものと同様であった。
【0205】
第3相試験及びそのOLEの両方において、TEAEによる死亡又は試験中止はなかった。
【0206】
【表7】
HAE:遺伝性血管浮腫;m=事象数;TEAE=治療下発現有害事象;q2wks=2週間ごと;q4wks=4週間ごと。TEAEは第3相試験に対して処置期間(0日目~182日目)中に示される。*第3相試験において、ラナデルマブに関連する重篤又は重度のTEAEはなかった。重篤なTEAEは、結果的に死亡、生命を脅かす経験、予め予定されていなかった入院、持続的/顕著な能力障害/無能性、重要な医学的事象又は先天性異常/先天性欠損であった経験が起こる何らかのTEAEとして定めた。重度のTEAEは、治験責任医師により、重度(グレード3、活動の顕著な制限に至り、ある程度の支援が通常必要であり、医学的介入/治療を必要とし、及び/又は入院の可能性がある)又は生命を脅かす(グレード4、顕著な支援を必要とする活動の極度の制限、顕著な医学的介入/治療を必要とすること及び/又はほぼ確実な入院/ホスピスケア)として分類されるTEAEであった。
【0207】
結論として、ラナデルマブ投与は良好な耐容性を示し、第3相試験及び非盲検長期試験において、青年期対象で月あたりの発作率を減少させた。
【0208】
他の実施形態
本明細書で開示される特性は全てあらゆる組み合わせで組み合わせられ得る。本明細書で開示される各特性は、同じ、同等又は同様の目的に役立つ代替的な特性により置き換えられ得る。従って、明らかな別段の記述がない限り、開示される各特性は、包括的な一連の同等物又は類似の特性の単なる例である。
【0209】
上の記述から、当業者は、本発明の基本的な特徴を容易に確認することができ、その精神及び範囲から逸脱することなく、それを様々な使用及び条件に適合させるために本発明の様々な変更及び改変を行うことができる。従って、他の実施形態も特許請求の範囲内である。
【0210】
同等物
いくつかの本発明の実施形態を本明細書中で記載し、例示してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実行するための、及び/又は結果及び/若しくは1つ以上の利点を得るための様々な他の手段及び/又は構造を容易に想起し、このような変形形態及び/又は改変のそれぞれが、本明細書中に記載の本発明の実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般には、当業者は、本明細書中に記載の全てのパラメーター、寸法、材料及び/又は立体配置が、例示的であることを意図しており、実際のパラメーター、寸法、材料及び/又は立体配置が、本発明の教示が使用される特定の適用(1つ又は複数)に依存することを容易に認識するであろう。当業者は、本明細書中に記載の特定の本発明の実施形態に対する多くの同等物を認識するか又は単なる通常の実験を使用してそれを確認することが可能であろう。従って、前述の実施形態は単なる例として提示されること、並びに添付の特許請求の範囲及びそれに対する同等物の範囲内で、本発明の実施形態が、具体的に記載され、主張されるようなもの以外に実施され得ることが理解される。本開示の実施形態は、本明細書中に記載の、各個々の特性、系、物品、材料、キット及び/又は方法を対象とする。さらに、2つ以上のこのような特性、系、物品、材料、キット及び/又は方法の何れかの組み合わせは、このような特性、系、物品、材料、キット及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本開示の発明範囲内に含まれる。
【0211】
本明細書中で定義され、使用されるような全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書中の定義及び/又は定義される用語の普通の意味をより優先するものと理解されるべきである。
【0212】
不定冠詞「a」及び「an」は、本明細書において及び特許請求の範囲において本明細書中で使用される場合、それと反対であることが明らかに示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解すべきである。
【0213】
「及び/又は」という句は、本明細書において及び特許請求の範囲において本明細書中で使用される場合、このように連結される要素、即ちある場合には結合して存在し、他の場合には離れて存在する要素、の「何れか又は両方」を意味するものと理解すべきである。「及び/又は」とともに挙げられる複数の要素は、同じ形式で、即ちこのように連結される要素の「1つ以上」と解釈すべきである。他の要素は、具体的に特定された要素との関連の有無によらず、任意選択により、「及び/又は」節により具体的に特定される要素以外に存在し得る。従って、非限定例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などのオープンエンドの語と連結して使用される場合、一実施形態では、Aのみを指し得(任意選択によりB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみ(任意選択によりA以外の要素を含む)を指し得;またの別の実施形態では、A及びBの両方(任意選択により他の要素を含む)を指し得る。
【0214】
本明細書において及び特許請求の範囲において本明細書中で使用される場合、「又は」は、上記で定められるような「及び/又は」と同じ意味を有するものと理解すべきである。例えばリスト中で項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的である、即ち、要素の数若しくはリストの少なくとも1つだけでなく、複数、及び任意選択によりさらなる列挙されない項目も含むものと解釈すべきである。反対であることが明らかに示される用語、例えば「そのうち1つだけ」又は「正確に1つ」、又は特許請求の範囲において使用する場合、「からなる(consisting of)」のみが、要素の数又は一覧のうち正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、「又は」という用語は単に、本明細書中で使用される場合、「何れか」、「そのうち1つ」、「そのうち1つのみ」又は「そのうち正確に1つ」などの排他的用語が前にある場合に限って、排他的な代替物(即ち「両方ではなく一方又は他方)を指すと解釈されよう。「基本的に~からなる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される場合のその通常の意味を有する。
【0215】
本明細書において及び特許請求の範囲において本明細書中で使用される場合、1つ以上の要素のリストを参照して「少なくとも1つ」という句は、要素リスト中の要素の何れか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解すべきであるが、要素リスト内に具体的に列挙されるありとあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素リスト中の要素の何れの組み合わせも排除しない。この定義は、具体的に特定される要素との関連の有無によらず、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が任意選択により存在し得ることも許容する。従って、非限定例として、「A及びBのうち少なくとも1つ(又は同等に「A又はBの少なくとも1つ」又は同等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、任意選択により複数を含む少なくとも1つ、A、Bが存在しないこと(及び任意選択によりB以外の要素を含むこと)を指し得;別の実施形態では、任意選択により複数を含む少なくとも1つ、B、Aが存在しないこと(及び任意選択によりA以外の要素を含む)を指し;また別の実施形態では、任意選択により複数を含む少なくとも1つ、A、及び、任意選択により複数を含む少なくとも1つ、B(及び任意選択により他の要素を含む)などを指す。
【0216】
反対であることが明らかに示されない限り、複数の段階又は行為を含む本明細書中で主張される何れかの方法において、本方法の段階又は行為の順序は、本方法の段階又は行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解すべきである。
【0217】
特許請求の範囲において、並びに上記の明細書において、「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「保有すること(carrying)」、「有すること(having)」、「含有すること(containing)」、「含むこと(involving)、「保持すること(holding)」、「から構成される(composed of)」などの移行句は全て、オープンエンドであること、即ち含むが限定されないことを意味すると理解されるべきである。米国特許局のManual of Patent Examining Procedures、Section 2111.03で示されるように、移行句「からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」のみが、それぞれクローズド又はセミクローズドの移行句である。
図1
図2A
図2B
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
【配列表】
2024113183000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024113183000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝性血管浮腫(HAE)発作を処置するか、又は発作率を減少させるための方法であって、
それを必要とするヒト対象に、第1の処置期間においてDX-2930と同じ相補性決定領域(CDR)を含む抗体を投与することを含み;
前記第1の処置期間において、前記抗体が前記ヒト対象に複数用量で2週間ごとに約300mgで投与され;
前記ヒト対象が、HAEに罹患しているか、罹患している疑いがあるか又はそのリスクがあり、
(i)女性であり;
(ii)18歳未満又は40~65歳であり;
(iii)少なくとも1回、以前に喉頭HAE発作を経験したことがあり;
(iv)前記第1の処置期間の初回用量の前の4週間で、1~2、2~3回又は3回を超えてHAE発作を起こしたことがあり;及び/又は
(v)前記第1の処置期間の前にC1-インヒビターによる処置を受けたことがある、
方法。