(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113334
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】アレーアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/06 20060101AFI20240815BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01Q3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018233
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰義
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
(72)【発明者】
【氏名】白戸 裕史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄太
(72)【発明者】
【氏名】俊長 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】加保 貴奈
(72)【発明者】
【氏名】宗 秀哉
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021FA06
5J021GA02
5J021JA07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビームステアリング角度を広げることができるアレーアンテナを提供する。
【解決手段】アレーアンテナと、高周波回路102の動作を制御してアレーアンテナの放射するビームの角度を変化させるアンテナ制御装置と、を備えるアンテナシステムにおいて、アレーアンテナ1は、送信又は受信する周波数である信号周波数の波長の略1/2倍~略1倍のうちの所定の長さDiffだけLy方向にズレた状態で重ねられている複数の平面基板10を備える。各平面基板10のLy方向の端には、複数のアンテナ素子110が位置し、所定の一方向Lyは、平面基板10の重なりの方向に垂直である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信又は受信する周波数である信号周波数の波長の略1/2倍~略1倍のうちの所定の長さ、だけ所定の一方向にズレた状態で重ねられている複数の平面基板、
を備え、
前記各平面基板の前記一方向の端又は端近くには複数のアンテナ素子が位置し、
前記所定の一方向は、前記平面基板の重なりの方向に垂直である、
アレーアンテナ。
【請求項2】
前記アンテナ素子の励振器の金属の前記所定の一方向の長さは、前記波長の0.5倍未満である、
請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項3】
前記アンテナ素子が前記平面基板のグランド層と接続された状態にある、
請求項2に記載のアレーアンテナ。
【請求項4】
前記アンテナ素子は、前記所定の一方向に平行な部位と前記平面基板の重なりの方向に平行な部位とで構成されるように折り曲げられた状態にある金属、であり、
前記所定の一方向に平行な部位の前記所定の一方向の長さは、前記波長の0.5倍未満である、
請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項5】
前記平面基板の重なりの方向に平行な金属板、
をさらに備え、
前記金属板は、前記重なりの方向の隣り合う前記平面基板同士の間に形成される段差に備えられる、
請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項6】
前記アンテナ素子の下の前記平面基板のグランド層の金属が一部取り除かれた状態にある、
請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項7】
前記平面基板は、空隙を挟んで重ねられた状態にある、
請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項8】
アナログ制御又はデジタル制御によって制御される可変移相器、
をさらに備える、
請求項1~7のいずれか一項に記載のアレーアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信システムの普及に伴い、通信の高速化、大容量化のニーズの高まりから、数GHzからミリ波帯域など、より高い周波数帯域の利用が検討されている。このような高い周波数を用いる場合、電波の直進性が強いため、移動端末で快適に使うには、高利得の無線信号ビームを作り、そのビームの方向を制御することが検討されている(特許文献1及び非特許文献1~3)。
【0003】
高利得の無線信号ビームを作り、その方向を電気的に高速で切り換えるにはアレーアンテナが使われている。フェーズドアレーアンテナは各アンテナ素子から入力または出力される信号の位相を制御することでビームの向きを変えることができる。特にプリント基板を使った平面パッチアンテナなどは低コストでアレーアンテナを作ることができる。
フェーズドアレーアンテナを実現するためには、RF(無線周波数)やIF(中間周波数)帯域の様々な回路が必要である。位相を制御するためには可変移相器を使ったビーム形成回路やバトラーマトリクス回路が挙げられる。可変移相器を使ったフェーズドアレーアンテナは一般的にはビーム方向の細かな制御が可能である利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】岸山祥久 他,「ミリ波を用いた超高速・長距離伝送の5G屋外実験」,NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル,Vol.26,No.1,pp.25-32,2018.
【非特許文献2】鈴木邦之 他,「5G無線基地局向け28GHz帯超多素子アンテナシステム」,三菱電機技報,Vol.92,No.6,2018.
【非特許文献3】C. Hsieh et al.,“A Novel Concept for 2D Butler Matrix with Multi-Layers Technology”, Proceedings of 2018 Asia-Pacific Microwave Conference, TH2-C2-1, 2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、MIMOなどで複数のビームを同時に用いる場合は通常はアンテナ素子数×ビーム数の可変移相器が必要となる。その結果、部品点数が増加するとともに、それに伴い可変移相器の制御信号も増加してしまうため、装置が複雑になる課題がある。集積する部品が増えるとマイクロ波からミリ波帯域ではアンテナ基板とRF回路部を別に構成する必要がある(非特許文献2)。
【0007】
バトラーマトリクス回路とアレーアンテナを組合せる方法は、ビームの方向は離散的な制御となるが、信号入力端子または信号出力端子の選択でビームが決まるため制御は単純というメリットがある。しかし、バトラーマトリクスやマトリクス回路は配線を交差させるため入出力端子数を増加させることが難しく、アレーアンテナの多素子化が難しい。また、2次元アレーアンテナとの接続には基板を縦横に立体配置する必要がある。
【0008】
一例として、非特許文献3の
図1には、水平方向と垂直方向のバトラーマトリクス回路基板を合計8枚用意し、コネクタ、ケーブルで2次元アレーアンテナと接続した例が示されている。しかしながら、非特許文献3に記載の技術の場合、数GHz以下の低い周波数帯域では位相誤差が少ないため構成しやすいが、ミリ波帯域ではコネクタの実装やケーブルの曲げによる損失および位相変化が大きくなること、コネクタやケーブルの価格が高いという課題がある。また、8枚の基板を縦横に接続するため、装置の体積が大きくなるといった課題がある。
【0009】
これらの課題を解決する方法として、特許文献1は、階段状アレーアンテナとバトラーマトリクスと移相器を使って、装置の小型化を実現しつつ、2次元アレーアンテナを使ったフェーズドアレーと同様にビームステアリングを行う構成を提案している。同じ基板を複数重ねることや、基板1枚あたりの部品数を減らすことで歩留まりを向上させるなどのメリットがある。
【0010】
しかしながら、階段状構成のためビームステアリングがしにくい方向が生じ、走査できる角度範囲が狭まるという課題があった。
【0011】
上記事情に鑑み、本発明は、ビームステアリング角度を広げる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、送信又は受信する周波数である信号周波数の波長の略1/2倍~略1倍のうちの所定の長さ、だけ所定の一方向にズレた状態で重ねられている複数の平面基板、を備え、前記各平面基板の前記一方向の端又は端近くには複数のアンテナ素子が位置し、前記所定の一方向は、前記平面基板の重なりの方向に垂直である、アレーアンテナである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ビームステアリング角度を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態のアンテナシステムの概要を説明する説明図。
【
図2】実施形態におけるアレーアンテナの第1の構成の一例を示す図。
【
図3】実施形態におけるアレーアンテナの第2の構成の一例を示す図。
【
図4】実施形態におけるアレーアンテナの第3の構成の一例を示す図。
【
図5】実施形態におけるアレーアンテナの第4の構成の一例を示す図。
【
図6】実施形態におけるアンテナ素子の大きさの違いが奏する効果を説明する第1の説明図。
【
図7】実施形態におけるアンテナ素子の大きさの違いが奏する効果を説明する第2の説明図。
【
図8】実施形態におけるアレーアンテナの第5の構成の一例を示す図。
【
図9】実施形態におけるアレーアンテナの第6の構成の一例を示す図。
【
図10】実施形態におけるアレーアンテナの第7の構成の一例を示す図。
【
図11】実施形態におけるアレーアンテナの第8の構成の一例を示す図。
【
図12】実施形態におけるアレーアンテナの第9の構成の一例を示す図。
【
図13】実施形態におけるアンテナ制御装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図14】実施形態のアンテナシステムが実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
図1は、実施形態のアンテナシステム100の概要を説明する説明図である。アンテナシステム100は、アレーアンテナ1と、アンテナ制御装置2とを備える。アレーアンテナ1は、アンテナ制御装置2の制御を受けて、電磁波の送受信を行うアレーアンテナである。アンテナ制御装置2は、アレーアンテナ1の動作を制御する。
【0016】
アンテナ制御装置2は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。プログラムの実行によりアンテナ制御装置2は、アレーアンテナ1の動作を制御する。
【0017】
アレーアンテナ1は、プリント基板や低温焼成セラミック基板(LTCC)等の平面基板10を複数備える。複数の平面基板10は、信号周波数の波長の略1/2倍~略1倍のうちの所定の長さだけ所定の一方向にズレた状態で重ねられている。すなわち、複数の平面基板10は、重なりの方向に隣り合う平面基板10同士が、重なりの方向に垂直な所定の一方向に所定の長さだけズレた状態で、重ねられている。
図1の例において重なりの方向は、Lzの方向であり、重なりの方向に垂直な所定の一方向はLyの方向である。以下、重なりの方向に垂直な所定の一方向をズレ方向という。なお、信号周波数は、各平面基板10が送信又は受信する周波数である。
【0018】
このように、複数の平面基板10は、信号周波数の波長に応じた所定の長さのズレを有した状態で重ねられている。所定の長さは、例えば信号周波数の波長の略1/2倍~略1倍のうちの所定の長さである。したがって、アレーアンテナ1は、階段状のアレーアンテナである。
図1の例では、平面基板10の重なりの方向と上記のズレ方向との両方向に垂直な方向から、アレーアンテナ1を見た場合の図が示されている。
【0019】
図1に記載の、長さDiff、は重ねられた平面基板10間のズレの長さを示す。したがって、長さDiffは、信号周波数の波長の略1/2倍~略1倍のうちの所定の長さである。
【0020】
なお、
図1の例では、平面基板10は、間に空隙を挟むことなく重ねられた状態にある。しかしながら、平面基板10は、間に空隙を挟んで重ねられた状態にあってもよい。したがって、複数の平面基板10は、接着剤、導電性ペースト等で一体化されていても良いし、ネジ等で空隙を有しながら配置されても良い。このように、重なるとは、重なりの方向から見た場合に、奥に位置する平面基板10が、より前面に位置する平面基板10によって一部又は全部が覆われるように、配置されている状態を意味する。
【0021】
より具体的に、アレーアンテナ1の構成の例を説明する。
【0022】
<アレーアンテナ1の第1の構成の一例>
図2は、実施形態におけるアレーアンテナ1の第1の構成の一例を示す図である。
図2に示すアレーアンテナ1において複数の平面基板10は、長さDiff(すなわち、信号周波数の波長の略1/2倍~1倍のうちの所定の長さ)だけズレた状態で重ねられている。
【0023】
図2に示すアレーアンテナ1の各平面基板10は、接着剤、導電性ペースト、ネジ等で固定されている。
図2に示すアレーアンテナ1の各平面基板10は、ズレ方向の端または端の近くにアンテナ素子110を備える。なお、端の近くの位置、とは、その位置に最も近い平面基板10の端(以下「最短端」という。)、からの距離が平面基板10の中央からの距離よりも短い位置、を意味する。したがって、端近くは、例えば最短端から半波長以内、の位置である。アンテナ素子110は、平面基板10ごとにアレーアンテナを形成するように配置されている。なお、アレーアンテナの集合もまたアレーアンテナであることはいうまでもない。アンテナ素子110は、例えばパッチアンテナである。
【0024】
図2に示すアレーアンテナ1の各平面基板10は、基板(平面基板10)上に給電回路101を備える。
図2に示すアレーアンテナ1の各平面基板10は、高周波回路(RF回路)102を備える。高周波回路102は、給電回路101とアンテナ素子110とに接続され、給電回路101からアンテナ素子110に供給される電力の位相制御を行う。位相制御は、例えば移相器によって行われる。このような場合、高周波回路102は、例えば移相器を備える。位相制御は、例えばデジタル信号処理によって行われてもよい。このような場合、高周波回路102は、例えばデジタル信号処理を実行する回路を備える。
【0025】
アンテナ制御装置2は、高周波回路102の動作を制御する。アンテナ制御装置2は、高周波回路102の動作を制御して、アレーアンテナ1の放射するビームの角度を変化させる。より具体的には、アンテナ制御装置2の備える制御部21が、高周波回路102の動作を制御して、アレーアンテナ1の放射するビームの伝播方向を変化させる。こうして、
図2に示すアレーアンテナ1を備えるアンテナシステム100は、可変ビーム機能を有するアレーアンテナを備えるアンテナシステムとして機能する。可変ビーム機能とは、ビームの伝搬方向を変化させる機能であり、いわゆるビームステアリングの機能である。
【0026】
図2に示すアレーアンテナ1を備えるアンテナシステム100は、アンテナ基板の裏側に高周波回路を実装する方法に比べて高周波回路102の実装面積を増やすことができるという効果を奏する。なぜなら、アンテナ基板の裏側では波長に応じて実装面積が決まるが、
図2のLy方向の長さは波長と無関係に設定できるからである。また、
図2に示すアレーアンテナ1を備えるアンテナシステム100は、高周波回路102とアンテナ素子110との間にコネクタやケーブルを備える必要が無い、という効果を奏する。
【0027】
また、
図2に示すアレーアンテナ1は同じ基板(平面基板10)を複数枚使うことで形成可能である。そのため、
図2に示すアレーアンテナ1を備えるアンテナシステム100は、設計コストを下げることができるという効果と、基板や実装部品の量産性及び汎用性を高めることにより部品コストを削減するという効果と、を奏する。
【0028】
ところで、階段状アレーアンテナは平面アレーアンテナに比べて1つの方向のビームの強度が減少する場合がある。しかしながら、
図2に示すアレーアンテナ1の場合には平面基板10の端近くにアンテナ素子110が配置されているため、平面基板10の端部分にあるグラウンド金属やアンテナ素子の金属によりビームが阻害される影響が抑制される。その結果、上り方向のビーム範囲が拡大され、ビームステアリング角度幅の減少を抑制することができる。
【0029】
このように構成された
図2のアレーアンテナ1は、平面基板10の端または端近くにアンテナ素子110が配置されているため、ビームステアリング角度を広げることができる。
【0030】
なお、アンテナ素子110の励振器(excitor)の金属のズレ方向の長さは例えば0.5波長未満であってもよい。このような長さのアンテナ素子110を備えるアレーアンテナ1の例を第2の例として示す。
【0031】
<アレーアンテナ1の第2の構成の一例>
図3は、実施形態におけるアレーアンテナ1の第2の構成の一例を示す図である。
図3に示すアレーアンテナ1において複数の平面基板10は、長さDiff(すなわち、信号周波数の波長の略1/2倍~1倍のうちの所定の長さ)だけズレた状態で重ねられている。
図3に示すアレーアンテナ1は、アンテナ素子110の励振器の金属のズレ方向の長さLaが信号周波数の波長の0.5倍未満という条件(以下「第1条件」という。)を満たす
図2に示すアレーアンテナ1である。このようなアンテナ素子110は、例えばインピーダンス整合回路の工夫により実現可能である。インピーダンス整合回路の工夫は、例えばVIA(ビア)を用いるという工夫である。より具体的な説明を、
図4を用いて行う。
【0032】
<アレーアンテナ1の第3の構成の一例>
図4は、実施形態におけるアレーアンテナ1の第3の構成の一例を示す図である。
図4に示すアレーアンテナ1は、VIA103を用いてグランド層と接続された状態にあることで、第1条件がみたされた
図3のアレーアンテナ1である。なお、グランド層は平面基板10のグランド層である。例えば1/4波長の長さで端を短絡したアンテナは、半波長のパッチアンテナと同様にインピーダンス整合をとることができるため、VIA103を用いることで、励振器の金属のズレ方向の長さLaが信号周波数の波長の0.5倍未満という条件を満たすアンテナ素子110が実現する。VIA103は、VIA(ビア)である。
【0033】
<アレーアンテナ1の第4の構成の一例>
図5は、実施形態におけるアレーアンテナ1の第4の構成の一例を示す図である。
図5に示すアレーアンテナ1は、折り曲げられた金属であって1/4λの長さで端がグランド層に接続された状態にある金属がアンテナ素子110として用いられることで、第1条件がみたされた
図3のアレーアンテナ1である。なお、グランド層は平面基板10のグランド層である。
図5の例において、アンテナ素子110のズレ方向の長さは1/4λ未満である。このようなアンテナ素子110は半波長のパッチアンテナと同様にインピーダンス整合がとられるため、第1条件がみたされた
図3のアレーアンテナ1が実現する。
なお、λは信号周波数の波長を表す。
【0034】
図6は、実施形態におけるアンテナ素子110の大きさの違いが奏する効果を説明する第1の説明図である。
図7は、実施形態におけるアンテナ素子110の大きさの違いが奏する効果を説明する第2の説明図である。
図6及び
図7は、重なりの方向とズレ方向とに垂直な方向からアレーアンテナ1を見た図である。
図6と
図7とは、0.5波長の大きさのアンテナ素子110に比べて、0.25波長の大きさのアンテナ素子110は、階段状に配置した時に階段状で上にあるアンテナ素子110と平面基板10のグランド層との影響を受ける角度θが小さくなることを示す。このように、アンテナ素子110の大きさが小さくなるほど、より広い角度でビームステアリングが可能である。
【0035】
したがって、このように構成された
図3~
図5のアレーアンテナ1は、ビームステアリング角度を広げることができる。
【0036】
<アレーアンテナ1の第5の構成の一例>
図8は、実施形態におけるアレーアンテナ1の第5の構成の一例を示す図である。
図8のアレーアンテナ1は、折り曲げられた金属がアンテナ素子110として用いられている点で、
図1のアレーアンテナ1と異なる。
図8に示すように、折り曲げられた金属は、ズレ方向に平行な部位と重なりの方向に平行な部位とで構成されるように折り曲げられた状態にある。また、折り曲げられた金属のズレ方向に平行な部位のズレ方向の長さは、0.5λ未満である。
【0037】
このような折り曲げられた金属がアンテナ素子110として用いられることで、各平面基板10に同位相で電力が入力した際のビームピークが階段下り方向へ傾く。その結果、ステアリング角度幅が拡大し、アレーアンテナ1のビームステアリング角度幅の減少が抑制される。折り曲げられた部分は、例えば銅箔を用いることや、平面基板10内部のVIAホールを複数使うこと、などで形成されてもよい。
【0038】
このように構成された
図8のアレーアンテナ1は、平面基板10の端にアンテナ素子110が配置されているため、ビームステアリング角度を広げることができる。
【0039】
<アレーアンテナ1の第6の構成の一例>
図9は、実施形態におけるアレーアンテナ1の第6の構成の一例を示す図である。
図9のアレーアンテナ1は、階段状アレーアンテナである
図1のアレーアンテナ1の段差に金属板104が備えられたアレーアンテナ1である。アレーアンテナ1の段差は、
図9に示すように、重なりの方向の隣り合う平面基板10同士の間に形成される段差である。また、
図9に示すように、金属板104は、金属板であり、重なりの方向に平行である。金属板104は、アンテナ素子110から放射される電波を反射する。これによりアンテナ素子110の放射方向が変わり、右斜め上方向のビーム利得や階段の下方向のビーム利得が向上する。
【0040】
したがって、このように構成された
図9のアレーアンテナ1は、下方向へビームを向けることを容易にする。そのため、
図9のアレーアンテナ1は、ステアリング角度幅を広くすることができる。
【0041】
<アレーアンテナ1の第7の構成の一例>
図10は、実施形態におけるアレーアンテナ1の第7の構成の一例を示す図である。
図10のアレーアンテナ1は、アンテナ素子110の下の平面基板10のグランド層の金属が一部取り除かれた状態にある点で
図1のアレーアンテナ1と異なる。これによりアンテナ素子110の放射方向が変わり、ビームの向きが変わり、階段の下方向のビーム利得が向上する。取り除くグラウンド層部分はアンテナ素子110の真下に限定せず、Ly方向に0.1波長程度など、少しずれていても良い。
【0042】
したがって、このように構成された
図10のアレーアンテナ1は、ビームの向きを真上から±10度程度変え、下方向へビームを向けることを容易にする。そのため、
図10のアレーアンテナ1は、ステアリング角度幅を広くすることができる。
【0043】
<アレーアンテナ1の第8の構成の一例>
ところで、上述したように、平面基板10間には空隙が存在してもよい。平面基板10間に空隙が存在する場合、そのようなアンテナシステム100は、各平面基板10の裏面に高周波回路102を備えることが可能であるという効果を奏する。言い換えれば、そのようなアンテナシステム100は、高周波回路102を配置可能な面積を増大させる、という効果を奏する。このような場合、アンテナ素子110として、コの字型に曲げられた外付け部品が用いられてもよい。アンテナ素子110として機能するコの字型に曲げられた外付け部品とは、いわゆる、折り曲げアンテナである。このようなアレーアンテナ1の一例を
図11で説明する。
【0044】
図11は、実施形態におけるアレーアンテナ1の第8の構成の一例を示す図である。
図11のアレーアンテナ1では、平面基板10間に空隙が存在する。アンテナ素子110は、平面基板10の端に位置する。
【0045】
このように構成された
図11のアレーアンテナ1は、平面基板10の端にアンテナ素子110が配置されているため、ビームステアリング角度を広げることができる。
【0046】
<アレーアンテナ1の第9の構成の一例>
図12は、実施形態におけるアレーアンテナ1の第9の構成の一例を示す図である。
図12は、可変移相器105を組合せることで、フェーズドアレーとしてビームステアリングをする構成である。可変移相器105は、アナログ制御又はデジタル制御によって制御される可変移相器である。
【0047】
なお、半導体素子は、アンテナ素子110及び給電回路101と同じ平面基板10に実装されてもよい。半導体素子とは具体的には、可変移相器105である。
図12のアレーアンテナ1は、平面基板10の端にアンテナ素子110を備える。このようにアレーアンテナ1は、可変の移相器(すなわち、可変移相器105)を備えることでビームステアリングをおこなってもよい。
【0048】
このように構成された
図12のアレーアンテナ1は、平面基板10の端にアンテナ素子110が配置されているため、ビームステアリング角度を広げることができる。
【0049】
図13は、実施形態におけるアンテナ制御装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。アンテナ制御装置2は、上述したように、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。アンテナ制御装置2は、プログラムの実行によって制御部21、入力部22、通信部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0050】
より具体的には、プロセッサ91が記憶部24に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、アンテナ制御装置2は、制御部21、入力部22、通信部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0051】
制御部21は、アンテナ制御装置2が備える各種機能部の動作と、アレーアンテナ1の動作とを制御する。したがって、制御部21は、アンテナシステム100の動作を制御する。制御部21は、具体的には、アレーアンテナ1の備える給電回路101及び高周波回路102の動作を制御する。制御部21による給電回路101及び高周波回路102の動作の制御は、例えば通信部23を介して行われる。
【0052】
入力部22は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部22は、これらの入力装置をアンテナ制御装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部22は、アンテナ制御装置2に対する各種情報の入力を受け付ける。
【0053】
通信部23は、アンテナ制御装置2を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部23は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば給電回路101及び高周波回路102である。外部装置が給電回路101及び高周波回路102である場合、通信部23は、制御部21の制御にしたがい、例えば有線によって、制御部21の出力した指示を給電回路101及び高周波回路102に送信する。
【0054】
記憶部24は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置(non-transitory computer-readable recording medium)を用いて構成される。記憶部24はアンテナ制御装置2に関する各種情報を記憶する。
【0055】
出力部25は、各種情報を出力する。出力部25は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部25は、これらの表示装置をアンテナ制御装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部25は、例えば入力部22又は通信部23に入力された情報を出力する。
【0056】
図14は、実施形態のアンテナシステム100が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。入力部22に、アレーアンテナ1による信号の送信を指示する情報が、送信先を示す情報と共に入力される(ステップS101)。次に制御部21が、ステップS101で取得された情報に基づいて、アレーアンテナ1の備える給電回路101及び高周波回路102の動作を制御する(ステップS102)。ここでは、ステップS101で取得された送信先を示す情報にビームが伝搬するように、制御部21は、高周波回路102の動作を制御する。ステップS102の実行により、ビームがアレーアンテナ1から放射される。
【0057】
このように構成されたアレーアンテナ1では、複数の平面基板10が信号周波数の波長の略1/2倍~略1倍のうちの所定の長さだけズレた状態で重ねられており、平面基板10のズレ方向の端に複数のアンテナ素子110が配置されている。そのため、アレーアンテナ1は、ビームステアリング角度を広げることができる。
【0058】
(変形例)
アンテナ制御装置2は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いて実装されてもよい。この場合、アンテナ制御装置2が備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
【0059】
アンテナ制御装置2の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
100…アンテナシステム、 1…アレーアンテナ、 2…アンテナ制御装置、 21…制御部、 22…入力部、 23…通信部、 24…記憶部、 25…出力部、 91…プロセッサ、 92…メモリ、 10…平面基板、 110…アンテナ素子、 101…給電回路、 102…高周波回路、 103…VIA、 104…金属板、 105…可変移相器