IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113395
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】再生樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20240815BHJP
【FI】
C08L23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018341
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】片山 新悟
(72)【発明者】
【氏名】眞見 俊彦
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB02W
4J002BB03X
4J002BB05X
4J002BB06X
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックの再利用性を向上させることが可能な再生樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係る再生樹脂組成物は、下記成分(A)および成分(B)を含有し、成分(A)と成分(B)との総量を100質量%として、成分(A)の含有量が10~90質量%であり、成分(B)の含有量が90~10質量%である。

成分(A):市場から回収された材料に由来するとともに、エチレン系重合体を含む樹脂から構成される再生樹脂
成分(B):下記(i)または(ii)の共重合体を含む樹脂から構成され、下記(b1)の要件を満たす未使用樹脂

(i):MFRが1.0g/10分以上であるエチレン-α-オレフィン共重合体
(ii):極性基を有するモノマーに由来する単量体単位が5~25質量%であるエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体

(b1):GPCによって求められるMwとMnとの比である分子量分布が2.0~18であること
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)および成分(B)を含有し、
成分(A)と成分(B)との総量を100質量%として、成分(A)の含有量が10~90質量%であり、成分(B)の含有量が90~10質量%である、再生樹脂組成物。

成分(A):市場から回収された材料に由来するとともに、エチレン系重合体を含む樹脂から構成される再生樹脂
成分(B):下記(i)または(ii)の共重合体を含む樹脂から構成され、下記(b1)の要件を満たす未使用樹脂

(i):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0g/10分以上であるエチレン-α-オレフィン共重合体
(ii):極性基を有するモノマーに由来する単量体単位が5~25質量%であるエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体

(b1):ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布が2.0~18であること
【請求項2】
前記成分(B)が、下記要件(b2)、(b3)および(b4)の全てを満たす前記(i)のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である、請求項1に記載の再生樹脂組成物。

(b2):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~20g/10分であること
(b3):密度が900~935kg/mであること
(b4):組成分布変動係数(Cx)が0.55以下であること
【請求項3】
前記成分(B)が、下記要件(b2)、(b3)、(b4’)および(b5)の全てを満たす前記(i)のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である、請求項1に記載の再生樹脂組成物。

(b2):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~20g/10分であること
(b3):密度が900~935kg/mであること
(b4’):組成分布変動係数(Cx)が0.55超であること
(b5):α-オレフィンの炭素原子数が5以上であること
【請求項4】
前記成分(B)が、下記要件(b2)、(b3)、(b4’’)および(b1’)の全てを満たす前記(i)のエチレン-1-ブテン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である、請求項1に記載の再生樹脂組成物。

(b2):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~20g/10分であること
(b3):密度が900~935kg/mであること
(b4’’):組成分布変動係数(Cx)が0.60超であること
(b1’):ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布が3.0~6.0であること
【請求項5】
前記成分(B)が、下記要件(b2’)を満たす前記(ii)のエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である、請求項1に記載の再生樹脂組成物。

(b2’):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~50g/10分であること
【請求項6】
前記成分(B)が、前記(i)のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂であり、
前記エチレン-α-オレフィン共重合体の0℃溶出量が、0.5~2.5質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の再生樹脂組成物。
【請求項7】
成分(A)に含まれるエチレン系重合体の含有量が、成分(A)に対して65質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の再生樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックのリサイクル手法としては、主に、廃プラスチックを燃焼する際の熱を回収して再利用するサーマルリサイクルが用いられている。ところが、2019年5月に環境省にて「プラスチック資源循環戦略」が策定され、2035年までに使用済みプラスチックを100%リデュース・リサイクル等により有効活用することが明文化された。そういった社会情勢の中、廃プラスチックをプラスチック製品の原料として再利用するマテリアルリサイクルへの要望は高まっている。
【0003】
マテリアルリサイクルに関する技術として、例えば、特許文献1には、リサイクルポリオレフィンと、バージンポリオレフィンと、酸化防止剤と、を含むポリオレフィン樹脂組成物が開示されている。該ポリオレフィン樹脂組成物は、特定の割合でリサイクルポリオレフィンとバージンポリオレフィンを混合し、さらに酸化防止剤を特定量混合することにより、リサイクルポリオレフィンの含有量を高めるとともに、リサイクルポリオレフィンを容器や包装等の用途に再利用する際の課題となっている靭性、環境応力亀裂耐性(ESCR)および成形加工時の熱安定性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-103152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、ポリオレフィン樹脂組成物を用いてフィルムを形成した際の黄変度、明度、引張破断伸び、および、引張破断強度については着目しておらず、少なくとも、黄変度、明度、引張破断伸び、および、引張破断強度のいずれかにおいて改善を図り、廃プラスチックの再利用性を向上させることが求められている。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、廃プラスチックの再利用性を向上させることが可能な再生樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る再生樹脂組成物は、下記成分(A)および成分(B)を含有し、成分(A)と成分(B)との総量を100質量%として、成分(A)の含有量が10~90質量%であり、成分(B)の含有量が90~10質量%である。

成分(A):市場から回収された材料に由来するとともに、エチレン系重合体を含む樹脂から構成される再生樹脂
成分(B):下記(i)または(ii)の共重合体を含む樹脂から構成され、下記(b1)の要件を満たす未使用樹脂

(i):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0g/10分以上であるエチレン-α-オレフィン共重合体
(ii):極性基を有するモノマーに由来する単量体単位が5~25質量%であるエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体

(b1):ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布が2.0~18であること
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、廃プラスチックの再利用性を向上させることが可能な再生樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態、実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態、実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0010】
本実施形態に係る再生樹脂組成物は、成分(A)として再生樹脂、および、成分(B)として未使用樹脂を含有する。
【0011】
<成分(A)>
成分(A)である再生樹脂は、市場から回収された材料に由来するとともに、エチレン系重合体を含む樹脂から構成される。ここで、市場から回収された材料とは、家庭等から排出される容器、包装等のプラスチック廃棄物等から選別し取り出されたものを意味する。再生樹脂に含まれるエチレン系重合体は、エチレンに由来する単量体単位を50質量%以上含む重合体であり、エチレン単独重合体であってもよいし、エチレン系共重合体であってもよい。
【0012】
エチレン単独重合体としては、例えば、ラジカル開始剤を用いて高圧ラジカル重合により繰り返し単位のエチレンがランダムに分岐構造をもって結合した、密度が910~935kg/mの高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)が挙げられる。なお、前記密度は、JIS K 6760-1995に記載のアニーリングを行った試料を用いて、JIS K7112-1999に規定されたA法(水中置換法)に従って測定される。
【0013】
エチレン系共重合体としては、例えば、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、脂環式化合物で置換されたα-オレフィンとエチレンとの共重合体が挙げられる。
【0014】
エチレンとα-オレフィンとの共重合体としては、例えば、結晶性を有する直鎖状低密度ポリエチレン、結晶性が低くゴム状の弾性特性を有するエチレンとα-オレフィンとの共重合体のエラストマー等が挙げられる。
【0015】
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは900~940kg/mである。また、エチレンとα-オレフィンとの共重合体のエラストマーの密度は、好ましくは860~900kg/mである。
【0016】
α-オレフィンは、好ましくは、炭素数3~10のα-オレフィンである。炭素数3~10のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン等が挙げられる。炭素数3~10のα-オレフィンは、好ましくは、炭素数4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンである。
【0017】
脂環式化合物で置換されたα-オレフィンとしては、例えば、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0018】
エチレン系共重合体におけるα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは4~20質量%である。
【0019】
エチレンとα-オレフィンとの共重合体として、具体的には、例えば、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-デセン共重合体、エチレン-(3-メチル-1-ブテン)共重合体等が挙げられる。なお、エチレンとα-オレフィンとの共重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、エチレン系重合体は、エチレン単独重合体と、エチレンとα-オレフィンとの共重合体との混合物であってもよい。
【0020】
成分(A)に含まれるエチレン系重合体の含有量は、フィルムの引張破断伸びを高める観点から、好ましくは成分(A)に対して65質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上である。
【0021】
成分(A)である再生樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、フィルムの成形性および引張破断伸びを高める観点から、好ましくは0.1~20g/10分であり、より好ましくは0.5~10g/10分である。なお、前記MFRは、JIS K 7210-1-2014に規定された温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0022】
成分(A)である再生樹脂は、フィルムの黄変度(YI)を低くする観点から、1秒毎に測定されるケミルミネッセンス発光強度の測定開始から300秒までの積算値を、再生樹脂ペレットの量で除した値であるケミルミネッセンス積算発光強度が、好ましくは1×10count/g以下であり、より好ましくは5×10count/g以下である。
【0023】
前記ケミルミネッセンス発光強度は、再生樹脂ペレット約1gを秤量し、150℃に予め昇温しておいた光電子増倍管を検出素子に持つ化学発光測定装置(東北電子産業株式会社 CLA-FS4)の試料室へセットし、窒素ガスを50ml/分で試料室へ送りながら、窒素ガス雰囲気下で、300~850nmのケミルミネッセンス発光強度を測定する。
【0024】
成分(A)である再生樹脂は、樹脂製品を、押出機に投入して溶融し、押し出し、ペレタイズすることにより得ることができる。押し出し温度は、通常、150~250℃であり、好ましくは150~200℃である。また、得られたペレットを再度押出機に投入し溶融、押し出し、ペレタイズすることもできる。樹脂製品としては、例えば、フィルム、射出成型体等が挙げられる。
【0025】
<成分(B)>
成分(B)である未使用樹脂は、(i)メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0g/10分以上であるエチレン-α-オレフィン共重合体、または、(ii)極性基を有するモノマーに由来する単量体単位が5~25質量%であるエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体を含む樹脂から構成される。
【0026】
(i)であるエチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3~20のα-オレフィンとを共重合して得られるエチレン-α-オレフィン共重合体である。炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。また、上記の炭素原子数3~20のα-オレフィンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(i)であるエチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体である。
【0028】
(i)であるエチレン-α-オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン-α-オレフィン共重合体の全質量(100質量%)に対して、通常50~99質量%である。α-オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン-α-オレフィン共重合体の全質量(100質量%)に対して、通常1~50質量%である。
【0029】
(i)であるエチレン-α-オレフィン共重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、1.0g/10分以上である。前記MFRは、好ましくは1.0~20g/10分であり、より好ましくは1.5~10g/10分である。
【0030】
(i)であるエチレン-α-オレフィン共重合体の0℃溶出量は、好ましくは0.5~2.5質量%である。なお、0℃溶出量の調整方法として、組成分布を広くすることにより、0℃溶出量を高くすることができ、組成分布を狭くすることにより、0℃溶出量を低くすることができる。
【0031】
(i)であるエチレン-α-オレフィン共重合体の0℃溶出量は、温度昇温溶離分別法により0℃にて溶出する測定試料の相対濃度であり、以下の方法によって求められる。
【0032】
試料にオルトジクロロベンゼン(ODBC)(酸化防止材としてジブチルヒドロキシトルエンを0.05w/V添加)を加え、145℃で60分間加熱撹拌し、2300メッシュの金網でろ過し、試料溶液を調製する。この試料溶液を、クロス分別クロマトグラフ(Polymer Char社製CFC)の中で145℃に保持された昇温溶出分別(TREF)カラム(Polymer Char社製 ステンレススチールマイクロボール充填カラム(3/8”o.dx150mm))に0.5ml注入して、20分間保持させる。次いで、TREFカラムの温度を40℃/分の速度で100℃まで降温させ、100℃で20分間保持させる。次いで、TREFカラムの温度を0.5℃/分の速度で0℃まで降温させ、0℃で30分間保持させる。次いで、TREFカラムにODBCを1ml/分の流速で流しながら、40℃/分の速度で、140℃まで昇温させて、その間にTREFカラムから溶出した測定試料の相対濃度を、赤外分光光度計(Polymer Char社製IR5)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC;CFCに内蔵)で測定する。GPCカラムには、東ソー株式会社製 TSKgel GMHHR-H(S)HT 7.8mm I.D.×300mmを3本用いる。相対濃度の測定は、0℃から50℃まで5℃刻み、50℃から70℃まで4℃刻み、70℃から76℃まで3℃刻み、76℃から100℃まで2℃刻み、さらに110℃および140℃において行い、CFCに付属するソフトウェアを用いて平滑化し、0.5℃刻みの値に換算する。測定には2985~2780cm-1の吸収ピークの面積を用いる。換算後の相対濃度を用いて、0℃にて溶出した測定試料の相対濃度を、0℃溶出量(単位 質量%)とする。
【0033】
(i)であるエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、重合触媒の存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合する方法が挙げられる。重合触媒としては、チーグラー・ナッタ系重合触媒、メタロセン系重合触媒等、公知のものを挙げることができる。
【0034】
チーグラー・ナッタ触媒としては、例えばトリエチルアルミニウム-四塩化チタン固体複合物を使用する。チーグラー・ナッタ触媒は、例えば、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、さらに各種の電子供与体および電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物と、芳香族カルボン酸エステルとを組み合わせてもよいし、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させ担持型触媒としてもよい。チーグラー・ナッタ触媒は、それぞれ特定の共触媒(助触媒)と組み合わせて使用してもよい。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。
【0035】
メタロセン系重合触媒としては、例えば、次の(C1)~(C4)の触媒等が挙げられる。
【0036】
(C1)シクロペンタジエン形骨格を有する基を有する遷移金属化合物を含む成分と、アルモキサン化合物とを含む成分からなる触媒
(C2)前記遷移金属化合物を含む成分と、トリチルボレート、アニリニウムボレート等のイオン性化合物とを含む成分からなる触媒
(C3)前記遷移金属化合物を含む成分と、前記イオン性化合物を含む成分と、有機アルミニウム化合物とを含む成分からなる触媒
(C4)(C1)~(C3)のいずれか一つに記載の各成分をSiO、Al等の無機粒子状担体、エチレン、スチレン等のオレフィン重合体等の粒子状ポリマー担体に担持または含浸させて得られる触媒
【0037】
(i)であるエチレン-α-オレフィン共重合体の重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合、気相重合、高圧イオン重合法等が挙げられる。ここでバルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合およびスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また、気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。これらの重合方法は、バッチ式および連続式のいずれでもよく、また、単一の重合槽で行われる単段式および複数の重合反応槽を直列に連結させた重合装置で行われる多段式のいずれでもよい。なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒添加量、重合時間等)は、適宜決定すればよい。
【0038】
(ii)であるエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン-不飽和エステル共重合体等が挙げられる。エチレン-不飽和エステル共重合体とは、エチレンに由来する単量体単位と不飽和エステルに由来する単量体単位とを含む共重合体である。
【0039】
前記不飽和エステルとは、炭素-炭素二重結合とエステル結合とを分子内に有する化合物であり、例えば、カルボン酸ビニルエステル、不飽和カルボン酸アルキルエステル、不飽和カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられる。カルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。エチレン-不飽和エステル共重合体は、これらの不飽和エステルに由来する単量体単位を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0040】
前記エチレン-不飽和エステル共重合体は、エチレンと不飽和エステルとの共重合により得られる重合体であり、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
【0041】
前記エチレン-不飽和エステル共重合体の製造方法としては、公知のラジカル発生剤の存在下で、高圧法により、エチレンと不飽和エステルとを共重合する方法が挙げられる。
【0042】
高圧法では、エチレンを1000~4000気圧、100~350℃の環境下で、例えば多段ガス圧縮機を用いて重合するとよい。その後、残留モノマーを分離し、冷却してエチレン-不飽和エステル共重合体を得る。
【0043】
ラジカル開始剤としては、有機過酸化物、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、またはそれらの組み合わせ等の酸素ベースの開始剤を含む。ラジカル開始剤の具体例としては、特に限定されないが、t-ブチルペルオキシピバレート、di-t-ブチルペルオキシド(DTBP)、t-ブチルペルオキシアセテート(TBPO)、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート(PND)、t-ブチルペルオキシオクトエート、およびこれらの任意の2以上の組み合わせが挙げられる。
【0044】
(ii)であるエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体は、エチレンに由来する単量体単位と極性基を有するモノマーに由来する単量体単位との合計量100質量%に対して、極性基を有するモノマーに由来する単量体単位を5~25質量%含む。また、エチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体は、エチレンに由来する単量体単位と極性基を有するモノマーに由来する単量体単位との合計量100質量%に対して、極性基を有するモノマーに由来する単量体単位を5~25質量%含み、エチレンに由来する単量体単位を75~95質量%含むことが好ましい。エチレンに由来する単量体単位と極性基を有するモノマーに由来する単量体単位との合計量100質量%に対して、エチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体に含まれる極性基を有するモノマーに由来する単量体単位の含有量は、より好ましくは7~22質量%であり、さらに好ましくは10~20質量%である。エチレンに由来する単量体単位と極性基を有するモノマーに由来する単量体単位との合計量100質量%に対して、エチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体に含まれるエチレンに由来する単量体単位の含有量は、より好ましくは78~93質量%であり、さらに好ましくは80~90質量%である。なお、エチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体が、2種以上の極性基を有するモノマーに由来する単量体単位を有する場合、極性基を有するモノマーに由来する単量体単位の含有量は、エチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体中の各極性基を有するモノマーに由来する単量体単位の合計量である。エチレンと極性基を有するモノマーの全質量を100質量%として、エチレンに由来する単量体単位と極性基を有するモノマーに由来する単量体単位との合計量は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。前記エチレンに由来する単量体単位の含有量と、極性基を有するモノマーに由来する単量体単位の含有量は、赤外分光法により測定される。
【0045】
(ii)であるエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、好ましくは0.1~20g/10分であり、より好ましくは0.5~10g/10分である。なお、前記MFRは、JIS K 7210-1-2014に規定された温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0046】
成分(B)である未使用樹脂は、(b1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布が2.0~18である。前記分子量分布は、フィルムの明度を高める観点から、好ましくは2.5~10であり、より好ましくは3.0~6.0である。GPC測定は下記の条件で行う。ISO16014-1の記載に基づき、クロマトグラム上のベースラインを規定する。なお、前記分子量分布の調整方法として、成分(B)が(i)であるエチレン-α-オレフィン共重合体の場合は、固体触媒を用いることにより、分子量分布を高くすることができ、メタロセン触媒を用いることにより、分子量分布を低くすることができる。また、成分(B)が(ii)であるエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体の場合は、重合温度を上げるまたは重合圧力を下げることにより、分子量分布を高くすることができ、重合温度を下げるまたは重合圧力を上げることにより、分子量分布を低くすることができる。
【0047】
(測定条件)
装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー株式会社製)
GPCカラム:TOSOH TSKgelGMH6-HT 7.5mm I.D.×300mm(東ソー株式会社製) 3本
移動相:オルトジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社、特級)にBHTを0.1w/V添加して使用
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:140℃
検出:示差屈折率検出器(RID)
RIDセル温度:140℃
試料溶液注入量:300μL
試料溶液濃度:5mg/mL
GPCカラム較正用標準物質:東ソー製標準ポリスチレンをそれぞれ表1に示す重量で5mLのオルトジクロロベンゼン(移動相と同じ組成)に室温で溶解させて調製
【0048】
【表1】
【0049】
本実施形態に係る再生樹脂組成物中の成分(A)および成分(B)の含有量としては、成分(A)と成分(B)との総量を100質量%として、成分(A)の含有量が10~90質量%であり、成分(B)の含有量が90~10質量%である。好ましくは、成分(A)の含有量が10~70質量%であり、成分(B)の含有量が90~30質量%である。さらに好ましくは、成分(A)の含有量が10質量%以上55質量%未満であり、成分(B)の含有量が90質量%以下であり45質量%超である。
【0050】
本実施形態に係る再生樹脂組成物は、成分(A)および成分(B)以外に、他の重合体、添加剤等を含有していてもよい。他の重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン、化石燃料由来の高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂、エラストマー等を挙げることができる。また、添加剤としては、例えば、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、分散剤、加工性改良剤等を挙げることができる。
【0051】
本実施形態に係る再生樹脂組成物中の成分(A)および成分(B)の総含有量は、再生樹脂組成物を100質量%として、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%超であり、さらに好ましくは85質量%超である。
【0052】
本実施形態に係る再生樹脂組成物は、成分(A)と、成分(B)と、必要に応じて配合される他の成分とを、公知の方法で溶融混練することにより得られる。公知の溶融混練方法としては、例えば、タンブルミキサー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、さらに単軸押出機、多軸押出機等で溶融混練する、またはニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練する方法が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る再生樹脂組成物は、例えば、食品、繊維、雑貨等を収納する包装袋、包装用容器、農業用マルチフィルム、重袋フィルム、ストレッチフィルム、シュリンクフィルム等に用いられる。
【0054】
以下、本実施形態に係る発明における一の態様について説明する。一の態様は、上述の構成に加えて、さらに、前記成分(B)が、下記要件(b2)、(b3)および(b4)の全てを満たす前記(i)のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である。
(b2):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~20g/10分であること
(b3):密度が900~935kg/mであること
(b4):組成分布変動係数(Cx)が0.55以下であること
【0055】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、1.0~20g/10分である。前記MFRは、好ましくは1.5~10g/10分であり、より好ましくは2.0~5.0g/10分である。
【0056】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体の密度は、900~935kg/mである。前記密度は、引張破断伸びを高める観点から、好ましくは905~930kg/mであり、より好ましくは910~925kg/mである。
【0057】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体の組成分布変動係数(Cx)は、フィルムの黄変度(YI)を低くする観点から、0.55以下であり、好ましくは0.54以下である。また、前記Cxは、成形性を高める観点から、好ましくは、0.20以上であり、より好ましくは0.30以上である。ここで組成分布変動係数(Cx)とは、組成分布の尺度を示すものであり、この値が大きいほど組成分布が広いことを示す。この組成分布変動係数(Cx)は、下記式にて規定される値であり、昇温溶出分別法により求められる組成分布曲線から算出される。なお、組成分布変動係数の調整方法として、組成分布を広くすることにより、組成分布変動係数を高くすることができ、組成分布を狭くすることにより、組成分布変動係数を低くすることができる。
【0058】
Cx=σ/SCBave
【0059】
Cx:組成分変動係数
σ :組成分布の標準偏差
SCBave:炭素1000個あたりの短鎖分岐度の平均値 (単位:1/1000C)
【0060】
一の態様において、再生樹脂組成物は、特に、黄変度(YI)を小さくすることができる。
【0061】
以下、本実施形態に係る発明における二の態様について説明する。二の態様は、上述の構成に加えて、さらに、前記成分(B)が、下記要件(b2)、(b3)、(b4’)および(b5)の全てを満たす前記(i)のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である。
(b2):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~20g/10分であること
(b3):密度が900~935kg/mであること
(b4’):組成分布変動係数(Cx)が0.55超であること
(b5):α-オレフィンの炭素原子数が5以上であること
【0062】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、1.0~20g/10分である。前記MFRは、好ましくは1.5~10g/10分であり、より好ましくは2.0~5.0g/10分である。
【0063】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体の密度は、900~935kg/mである。前記密度は、引張破断伸びを高めるから、好ましくは905~930kg/mであり、より好ましくは910~925kg/mである。
【0064】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体の組成分布変動係数(Cx)は、フィルムの明度(L*)を高める観点から、0.55超であり、好ましくは0.56以上であり、より好ましくは0.57以上である。また、前記Cxは、引張破断伸びを高める観点から、好ましくは1.0以下であり、より好ましくは0.80以下である。
【0065】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体は、フィルムの明度(L*)を高める観点から、α-オレフィンの炭素原子数が5以上である。炭素原子数5以上であるα-オレフィンとしては、例えば、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられ、好ましくは1-ヘキセン、1-オクテンである。また、上記の炭素原子数3~20のα-オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体である。
【0067】
二の態様において、再生樹脂組成物は、特に、明度(L*)を大きくすることができる。
【0068】
以下、本実施形態に係る発明における三の態様について説明する。三の態様は、上述の構成に加えて、さらに、前記成分(B)が、下記要件(b2)、(b3)、(b4’’)および(b1’)の全てを満たす前記(i)のエチレン-1-ブテン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である。
(b2):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~20g/10分であること
(b3):密度が900~935kg/mであること
(b4’’):組成分布変動係数(Cx)が0.60超であること
(b1’):ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布が3.0~6.0であること
【0069】
前記エチレン-1-ブテン共重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、1.0~20g/10分である。前記MFRは、好ましくは1.5~10g/10分であり、より好ましくは2.0~5.0g/10分である。
【0070】
前記エチレン-1-ブテン共重合体の密度は、900~935kg/mである。前記密度は、引張破断伸びを高める観点から、好ましくは905~930kg/mであり、より好ましくは910~925kg/mである。
【0071】
前記エチレン-1-ブテン共重合体の組成分布変動係数(Cx)は、引張破断伸びを高める観点から、0.60超であり、好ましくは0.62以上であり、より好ましくは0.65以上である。また、前記Cxは、引張破断伸びを高める観点から、好ましくは、1.0以下であり、より好ましくは0.80以下である。
【0072】
成分(B)である未使用樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布が3.0~6.0である。前記分子量分布は、引張破断伸びを高める観点から、好ましくは3.1~3.8であり、より好ましくは3.2~3.7である。
【0073】
三の態様において、再生樹脂組成物は、特に、引張破断伸びを大きくすることができる。
【0074】
以下、本実施形態に係る発明における四の態様について説明する。四の態様は、上述の構成に加えて、さらに、前記成分(B)が、下記要件(b2’)を満たす前記(ii)のエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である。
(b2’):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~50g/10分であること
【0075】
前記エチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体のメルトマスフローレート(MFR)は、1.0~50g/10分である。前記MFRは、好ましくは1.5~10g/10分であり、より好ましくは2.0~5.0g/10分である。
【0076】
四の態様において、再生樹脂組成物は、特に、引張破断強度を大きくすることができる。
【0077】
四の態様において、再生樹脂組成物は、農業用ハウス外張りフィルム、マルチフィルムなどの農業用フィルムに好適に用いられる。
【0078】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]下記成分(A)および成分(B)を含有し、成分(A)と成分(B)との総量を100質量%として、成分(A)の含有量が10~90質量%であり、成分(B)の含有量が90~10質量%である、再生樹脂組成物。

成分(A):市場から回収された材料に由来するとともに、エチレン系重合体を含む樹脂から構成される再生樹脂
成分(B):下記(i)または(ii)の共重合体を含む樹脂から構成され、下記(b1)の要件を満たす未使用樹脂

(i):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0g/10分以上であるエチレン-α-オレフィン共重合体
(ii):極性基を有するモノマーに由来する単量体単位が5~25質量%であるエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体

(b1):ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布が2.0~18であること
[2]前記成分(B)が、下記要件(b2)、(b3)および(b4)の全てを満たす前記(i)のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である、上記[1]に記載の再生樹脂組成物。

(b2):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~20g/10分であること
(b3):密度が900~935kg/mであること
(b4):組成分布変動係数(Cx)が0.55以下であること
[3]前記成分(B)が、下記要件(b2)、(b3)、(b4’)および(b5)の全てを満たす前記(i)のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である、上記[1]に記載の再生樹脂組成物。

(b2):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~20g/10分であること
(b3):密度が900~935kg/mであること
(b4’):組成分布変動係数(Cx)が0.55超であること
(b5):α-オレフィンの炭素原子数が5以上であること
[4]前記成分(B)が、下記要件(b2)、(b3)、(b4’’)および(b1’)の全てを満たす前記(i)のエチレン-1-ブテン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である、上記[1]に記載の再生樹脂組成物。

(b2):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~20g/10分であること
(b3):密度が900~935kg/mであること
(b4’’):組成分布変動係数(Cx)が0.60超であること
(b1’):ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である分子量分布が3.0~6.0であること
[5]前記成分(B)が、下記要件(b2’)を満たす前記(ii)のエチレンと極性基を有するモノマーとの共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂である、上記[1]に記載の再生樹脂組成物。

(b2’):メルトマスフローレート(190℃、2.16kg)が1.0~50g/10分であること
[6]前記成分(B)が、前記(i)のエチレン-α-オレフィン共重合体を含む樹脂から構成される未使用樹脂であり、前記エチレン-α-オレフィン共重合体の0℃溶出量が、0.5~2.5質量%である、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の再生樹脂組成物。
[7]成分(A)に含まれるエチレン系重合体の含有量が、成分(A)に対して65質量%以上である、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の再生樹脂組成物。
【実施例0079】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0080】
(物性測定方法)
[メルトマスフローレート(MFR、単位:g/10分)]
JIS K7210-1-2014に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件でA法によって測定した。
【0081】
[密度(d、単位:kg/m)]
JIS K6760-1995に記載のアニーリング処理を行った後、JIS K7112-1999に記載のA法(水中置換法)に従って測定した。
【0082】
[0℃溶出量]
試料にオルトジクロロベンゼン(ODBC)(酸化防止材としてジブチルヒドロキシトルエンを0.05w/V添加)を加え、145℃で60分間加熱撹拌し、2300メッシュの金網でろ過し、試料溶液を調製した。この試料溶液を、クロス分別クロマトグラフ(Polymer Char社製CFC)の中で145℃に保持された昇温溶出分別(TREF)カラム(Polymer Char社製 ステンレススチールマイクロボール充填カラム(3/8”o.dx150mm))に0.5ml注入して、20分間保持させた。次いで、TREFカラムの温度を40℃/分の速度で100℃まで降温させ、100℃で20分間保持させた。次いで、TREFカラムの温度を0.5℃/分の速度で0℃まで降温させ、0℃で30分間保持させた。次いで、TREFカラムにODBCを1ml/分の流速で流しながら、40℃/分の速度で、140℃まで昇温させて、その間にTREFカラムから溶出した測定試料の相対濃度を、赤外分光光度計(Polymer Char社製IR5)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC;CFCに内蔵)で測定した。GPCカラムには、東ソー株式会社製 TSKgel GMHHR-H(S)HT 7.8mm I.D.×300mmを3本用いた。相対濃度の測定は、0℃から50℃まで5℃刻み、50℃から70℃まで4℃刻み、70℃から76℃まで3℃刻み、76℃から100℃まで2℃刻み、さらに110℃および140℃において行い、CFCに付属するソフトウェアを用いて平滑化し、0.5℃刻みの値に換算した。測定には2985~2780cm-1の吸収ピークの面積を用いた。換算後の相対濃度を用いて、0℃にて溶出した測定試料の相対濃度を、0℃溶出量(単位 質量%)とした。
【0083】
[組成分布変動係数(Cx、単位:-)]
0℃溶出量の項目で述べた方法により算出した換算後の相対濃度を用いて、各温度に溶出したエチレン-α-オレフィン共重合体の炭素原子1000個あたりの短鎖分岐度(SCB)を、下記式(5-1)により求めた。ただし、計算上SCBがマイナスになる温度では、溶出無しとした。
【0084】
SCB=-0.7322×溶出温度(℃)+70.68 式(5-1)
【0085】
得られた短鎖分岐度とその相対濃度とより組成分布曲線(x軸:短鎖分岐、y軸:相対濃度)を求め、この曲線より炭素原子1000個あたりの平均短鎖分岐度(SCBave)と組成分布の標準偏差(σ)を得て分布の広さを表す組成分布変動係数Cxを下記式(5-2)から算出した。
【0086】
Cx=σ/SCBave 式(5-2)
【0087】
平均短鎖分岐度(SCBave)=ΣN(i)・W(i)
N(i):i番目のデータサンプリング点の短鎖分岐度
W(i):i番目のデータサンプリング点の相対濃度
即ち、ΣW(i)=1
組成分布の標準偏差(σ)={Σ(N(i)-SCBave)・W(i)}0.5
【0088】
[分子量分布(Mw/Mn)]
GPC法を用いて、下記の条件により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、Mw/Mnを求めた。ISO16014-1の記載に基づき、クロマトグラム上のベースラインを規定した。
~測定条件~
装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー株式会社製)
GPCカラム:TOSOH TSKgelGMH6-HT 7.5mm I.D.×300mm(東ソー株式会社製) 3本
移動相:オルトジクロロベンゼン(和光純薬工業株式会社、特級)にBHTを0.1w/V添加して使用
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:140℃
検出:示差屈折率検出器(RID)
RIDセル温度:140℃
試料溶液注入量:300μL
試料溶液濃度:5mg/mL
GPCカラム較正用標準物質:東ソー製標準ポリスチレンをそれぞれ表2に示す重量で5mLのオルトジクロロベンゼン(移動相と同じ組成)に室温で溶解させて調製
【0089】
【表2】
【0090】
[ケミルミネッセンス積算発光強度(単位:count/g)]
再生樹脂ペレット約1gを秤量し、150℃に予め昇温しておいた光電子増倍管を検出素子に持つ化学発光測定装置(東北電子産業株式会社 CLA-FS4)の試料室へセットし、窒素ガスを50ml/分で試料室へ送りながら、窒素ガス雰囲気下で、300nm~850nmのケミルミネッセンス発光強度の測定を開始した。1秒毎に測定されるケミルミネッセンス発光強度の測定開始から300秒までのケミルミネッセンス発光強度の積算値を、再生樹脂ペレットの量で除した値を、ケミルミネッセンス積算発光強度とした。また、ケミルミネッセンス発光強度の測定開始から300秒までのケミルミネッセンス発光強度の最大値を、再生樹脂ペレットの量で除した値を、ケミルミネッセンス最大発光強度とした。
【0091】
[引張破断伸び]
JIS K6781 6.4記載の引張切断荷重測定用サンプル採取法に従って、厚み30μmのフィルムから試験片を打ち抜くことにより、長手方向が、それぞれ、引取り方向(MD:Machine Direction)およびMD方向に対して直交する方向(TD:Transverse Direction)となる試験片を作成した。作製した試験片の平行部に、間隔が40mmになるように2本の標線を引いた。次に、作製した試験片を、つかみ具間距離を80mmとして引張試験機(株式会社東洋精機製作所製ストログラフE)に取り付け、引張速度500mm/minの条件で試験片を破断するまで引っ張り、破断時の試験片の標線間距離から初期の試験片の標線間距離(40mm)を引いた値の、初期の試験片の標線間距離に対する割合、すなわち下記式(5-3)(単位:%)で表される値を引張破断伸びとした。

引張破断伸び=
((破断時の標線間距離/mm)-40)/40×100(%) 式(5-3)

1種類のフィルムにつき、MD、TDいずれも、それぞれ5回ずつ試験を実施し、その平均値を求めた。
【0092】
[引張破断強度]
引張破断伸びの項で述べた方法により、引張速度500mm/minの条件で試験片を破断するまで引っ張り、破断時の荷重を初期の試験片の断面積(つまり、ダンベル中央平行部の幅×厚み)で除した値(単位:MPa)を引張破断強度とした。TD方向について5回試験を実施し、その最小値を引張破断強度とした。
【0093】
[YIおよびL*値]
フィルムを30枚重ねた状態で、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製、UV-3150)を使用して、波長200~800nmにおける透過スペクトルを計測した。得られた透過スペクトルデータから、分光光度計に付属するカラー測定ソフトウェアを用いて、YIおよびL*の値を算出した。
【0094】
(材料)
[成分(A)エチレン系重合体を含む樹脂から構成される再生樹脂]
A-1:エチレン系重合体を含む市販のストレッチフィルム FB(富士工業社製)をカットし、単軸押出機(スクリュー径65mm、日本製鋼所社製)に供給し、180~200℃にて溶融混練することにより得られた再生樹脂(MFR=1.9g/10分、ケミルミネッセンス積算発光強度=4.8×10count/g)
A-2:エチレン系重合体を含む市販のストレッチフィルム OR―17(オルディ社製)をカットし、単軸押出機(スクリュー径65mm、日本製鋼所社製)に供給し、180~200℃にて溶融混練することにより得られた再生樹脂(MFR=2.4g/10分、ケミルミネッセンス積算発光強度=7.1×10count/g)
[成分(B)未使用樹脂]
B-1:エチレン-1-ヘキセン共重合体、住友化学社製 スミカセン(登録商標)E FV205(MFR=2.0g/10分、密度=922kg/m、組成分布変動係数Cx=0.54、0℃溶出量=0.6質量%、分子量分布Mw/Mn=2.2)
【0095】
B-2:エチレン-1-ヘキセン共重合体、住友化学社製 スミカセン(登録商標)Hi-α CW2008(MFR=2.6g/10分、密度=922kg/m、組成分布変動係数Cx=0.57、0℃溶出量=1.4質量%、分子量分布Mw/Mn=3.2)
【0096】
B-3:エチレン-1-ブテン共重合体、住友化学社製 スミカセン(登録商標)L FS240(MFR=2.2g/10分、密度=919kg/m、組成分布変動係数Cx=0.72、0℃溶出量=2.3質量%、分子量分布Mw/Mn=3.3)
【0097】
B-4:エチレン-酢酸ビニル共重合体、住友化学社製 エバテート(登録商標)H2020(MFR=1.5g/10分、酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有量=15質量%、分子量分布Mw/Mn=4.3)
【0098】
B-5:高圧法低密度ポリエチレン、住友化学社製 スミカセン(登録商標)F200-0(MFR=2.0g/10分、密度=924kg/m
【0099】
B-6:エチレン-1-ブテン共重合体、住友化学社製 スミカセン(登録商標)α CL1079(MFR=0.8g/10分、密度=915kg/m、0℃溶出量=1.4質量%、分子量分布Mw/Mn=8.6)
【0100】
B-7:エチレン-酢酸ビニル共重合体、住友化学社製 スミテート(登録商標)KA-30(MFR=7.0g/10分、酢酸ビニルに由来する単量体単位の含有量=28質量%)
【0101】
(実施例1)
押出機(スクリュー径φ30mm)と径φ50mm、リップ0.8mmtのダイとを備えたインフレーションフィルム成形機(プラコー社製)を用いて、単層のフィルムを成形した。具体的には、押出機に、材料A-1 40質量%と材料B-1 60質量%とを混合した組成物を供給して押し出し、厚みが30μmであるフィルムを成形した。成形条件は以下のとおりであった。
【0102】
<成形条件>
ダイ・シリンダーの設定温度:200℃
押出条件:5~6kg/時
ブローアップ比(BUR):1.8
フロストラインディスタンス(FLD):160~170mm
【0103】
得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0104】
(実施例2)
押出機に、材料A-1 55質量%と材料B-1 45質量%とを混合した組成物を供給したほかは、実施例1と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0105】
(実施例3)
材料B-1に替えて材料B-2を用いたほかは、実施例1と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0106】
(実施例4)
材料B-1に替えて材料B-2を用いたほかは、実施例2と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0107】
(実施例5)
材料B-1に替えて材料B-3を用いたほかは、実施例1と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0108】
(実施例6)
材料B-1に替えて材料B-3を用いたほかは、実施例2と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0109】
(実施例7)
押出機に、材料A-2 40質量%と材料B-4 60質量%とを混合した組成物を供給し、また、ダイ・シリンダーの設定温度を150℃としたほかは、実施例1と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0110】
(実施例8)
押出機に、材料A-2 55質量%と材料B-4 45質量%とを混合した組成物を供給したほかは、実施例7と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0111】
(比較例1)
材料B-1に替えて材料B-5を用いたほかは、実施例1と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0112】
(比較例2)
材料B-1に替えて材料B-5を用いたほかは、実施例2と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0113】
(比較例3)
材料B-1に替えて材料B-6を用いたほかは、実施例1と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0114】
(比較例4)
材料B-1に替えて材料B-6を用いたほかは、実施例2と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0115】
(比較例5)
材料B-4に替えて材料B-7を用い、ダイ・シリンダーの設定温度を140℃、押出条件を4.7kg/時、フロストラインディスタンス(FLD)を140mmにしたほかは、実施例8と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0116】
(比較例6)
材料B-4に替えて材料B-5を用いたほかは、実施例7と同様にして、フィルムを成形した。得られたフィルムの物性測定結果を表3に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
以上の結果から、本発明の再生樹脂組成物を用いたフィルムでは、少なくとも、黄変度、明度、引張破断伸び、および、引張破断強度のいずれかにおいて改善が見られ、廃プラスチックの再利用性を向上させることが示された。