(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113550
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 18/08 20060101AFI20240815BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
F04C18/08
F04C25/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018621
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】長山 真己
(72)【発明者】
【氏名】カマタカラ アナガ
(72)【発明者】
【氏名】堀部 悠河
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA06
3H129AB06
3H129AB12
3H129BB47
3H129CC01
3H129CC16
(57)【要約】
【課題】粉体がルーツロータ間に挟まれにくく、ルーツロータのスムーズな回転を維持することができる真空ポンプを提供する。
【解決手段】第1ルーツロータ8Cおよび第2ルーツロータ9Cのそれぞれは、インボリュート曲線からなる形状を有するインボリュート側面31と、インボリュート側面31の外側端部に接続された円弧凸面34と、インボリュート側面31の内側端部に接続された円弧凹面36を有しており、円弧凸面34の曲率半径は、円弧凹面36の曲率半径よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのロータ室を内部に有するポンプケーシングと、
前記ロータ室内に並列に配置された第1ルーツロータおよび第2ルーツロータを備え、
前記第1ルーツロータおよび前記第2ルーツロータのそれぞれは、インボリュート曲線からなる形状を有するインボリュート側面と、前記インボリュート側面の外側端部に接続された円弧凸面と、前記インボリュート側面の内側端部に接続された円弧凹面を有しており、
前記円弧凸面の曲率半径は、前記円弧凹面の曲率半径よりも大きい、真空ポンプ。
【請求項2】
前記第1ルーツロータおよび前記第2ルーツロータが回転しているときの前記第1ルーツロータの前記インボリュート側面と、前記第2ルーツロータの前記インボリュート側面との隙間は、一定である、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記第1ルーツロータの前記円弧凸面と、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面との隙間は、前記第1ルーツロータの前記インボリュート側面と、前記第2ルーツロータの前記インボリュート側面との前記隙間よりも大きい、請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記第1ルーツロータの前記円弧凸面上の最外点と、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面上の最内点が最も近づいたときの前記最外点と前記最内点との隙間は、前記第1ルーツロータの前記インボリュート側面と前記第2ルーツロータの前記インボリュート側面との隙間の1.5~20倍である、請求項3に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記第1ルーツロータの前記円弧凸面と、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面とが対向したときに、前記第1ルーツロータの前記円弧凸面と、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面との間には三日月形状の空間が形成される、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記第1ルーツロータおよび前記第2ルーツロータが回転しているとき、前記第1ルーツロータの前記インボリュート側面は、前記第2ルーツロータの前記インボリュート側面のみに対向し、前記第1ルーツロータの前記円弧凸面は、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面のみに対向し、前記第2ルーツロータの前記円弧凸面は、前記第1ルーツロータの前記円弧凹面のみに対向する、請求項1に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関し、特に半導体デバイス、液晶パネル、LED、太陽電池等の製造に使用されるプロセスガスを排気する用途に好適に使用される真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶パネル、LED、太陽電池等を製造する製造プロセスにおいては、プロセスガスをプロセスチャンバ内に導入してエッチング処理やCVD処理等の各種処理を行っている。プロセスチャンバに導入されたプロセスガスは、真空ポンプによって排気される。一般に、高い清浄度が必要とされるこれらの製造プロセスに使用される真空ポンプは、気体の流路内にオイルを使用しない、いわゆるドライ真空ポンプである。このようなドライ真空ポンプの代表例として、ロータ室内に配置された一対のルーツロータを互いに反対方向に回転させて、気体を移送する容積式真空ポンプがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロセスガスは、副生成物からなる粉体を含むことがある。このような粉体は、プロセスガスとともに真空ポンプ内に流入する。また、真空ポンプ内の状態(例えば、温度、圧力)によっては、プロセスガスが真空ポンプに流入した後に真空ポンプ内で粉体が生成されることもある。粉体の大部分は、プロセスガスとともに真空ポンプから排出されるが、粉体の一部はロータ室内に留まり、ロータ室内に徐々に堆積する。特に、対向する2つのルーツロータの凸面と凹面が面接触(実際には非接触)の状態のときに、粉体の逃げ場がないために、粉体はこれらルーツロータの凸面と凹面との間に強く挟まれて、ルーツロータの回転が阻害されてしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、粉体がルーツロータ間に挟まれにくく、ルーツロータのスムーズな回転を維持することができる真空ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、少なくとも1つのロータ室を内部に有するポンプケーシングと、前記ロータ室内に並列に配置された第1ルーツロータおよび第2ルーツロータを備え、前記第1ルーツロータおよび前記第2ルーツロータのそれぞれは、インボリュート曲線からなる形状を有するインボリュート側面と、前記インボリュート側面の外側端部に接続された円弧凸面と、前記インボリュート側面の内側端部に接続された円弧凹面を有しており、前記円弧凸面の曲率半径は、前記円弧凹面の曲率半径よりも大きい、真空ポンプが提供される。
【0007】
一態様では、前記第1ルーツロータおよび前記第2ルーツロータが回転しているときの前記第1ルーツロータの前記インボリュート側面と、前記第2ルーツロータの前記インボリュート側面との隙間は、一定である。
一態様では、前記第1ルーツロータの前記円弧凸面と、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面との隙間は、前記第1ルーツロータの前記インボリュート側面と、前記第2ルーツロータの前記インボリュート側面との前記隙間よりも大きい。
一態様では、前記第1ルーツロータの前記円弧凸面上の最外点と、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面上の最内点が最も近づいたときの前記最外点と前記最内点との隙間は、前記第1ルーツロータの前記インボリュート側面と前記第2ルーツロータの前記インボリュート側面との隙間の1.5~20倍である。
一態様では、前記第1ルーツロータの前記円弧凸面と、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面とが対向したときに、前記第1ルーツロータの前記円弧凸面と、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面との間には三日月形状の空間が形成される。
一態様では、前記第1ルーツロータおよび前記第2ルーツロータが回転しているとき、前記第1ルーツロータの前記インボリュート側面は、前記第2ルーツロータの前記インボリュート側面のみに対向し、前記第1ルーツロータの前記円弧凸面は、前記第2ルーツロータの前記円弧凹面のみに対向し、前記第2ルーツロータの前記円弧凸面は、前記第1ルーツロータの前記円弧凹面のみに対向する。
【発明の効果】
【0008】
第1ルーツロータと第2ルーツロータのインボリュート側面同士は互いに対向し、円弧凸面および円弧凹面には対向しない。インボリュート側面間の隙間の両側で空間が広がっているので、インボリュート側面は粉体を噛み込まない。同様に、第1ルーツロータと第2ルーツロータの円弧凸面と円弧凹面が対向したとき、円弧凸面とインボリュート側面との接続点、および円弧凹面とインボリュート側面との接続点の両側で空間が広がっているので、第1ルーツロータと第2ルーツロータは粉体を噛み込まない。
【0009】
第1ルーツロータの円弧凸面と第2ルーツロータの円弧凹面との間には三日月状の大きな空間が形成される。したがって、粉体は、第1ルーツロータの円弧凸面と第2ルーツロータの円弧凹面との間に挟まれにくい。三日月状の空間内に閉じ込められた粉体は、これらルーツロータの回転に伴って三日月状の空間から排出される。結果として、ルーツロータは、スムーズな回転を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】真空ポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】ルーツロータ間の隙間を説明する拡大図である。
【
図5】2つのルーツロータが反対方向に回転している様子を示す図である。
【
図6】二葉ルーツロータの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、真空ポンプ装置の一実施形態を示す断面図であり、
図2は
図1のA-A線断面図である。以下に説明する実施形態の真空ポンプ装置は、容積式真空ポンプ装置である。特に、
図1および
図2に示す真空ポンプ装置は、気体の流路内にオイルを使用しない、いわゆるドライ真空ポンプ装置である。ドライ真空ポンプ装置は、気化したオイルが上流側に流れることがないので、高い清浄度が必要とされる半導体デバイスの製造装置に好適に使用することができる。
【0012】
図1に示すように、真空ポンプ装置は、真空ポンプ1と、この真空ポンプ1を駆動する電動機2を備えている。本実施形態の真空ポンプ1は、多段真空ポンプである。すなわち、真空ポンプ1は、複数のロータ室5A~5Eを内部に有するポンプケーシング6と、ロータ室5A~5E内にそれぞれ配置された複数段のルーツロータ8A~8E、9A~9Eと、複数段のルーツロータ8A~8E、9A~9Eを支持する一対の回転軸11,12を備えている。一実施形態では、真空ポンプ1は、1つのロータ室内に配置された単段のルーツロータを有する単段の真空ポンプであってもよい。
【0013】
図1ではルーツロータ8A~8Eおよび回転軸11のみが示されているが、ルーツロータ8A~8Eと、ルーツロータ9A~9Eは、ポンプケーシング6内に並列に配置されており、回転軸11と回転軸12は並列に配置されている。
図2は、互いに並列に配置されているルーツロータ8Cとルーツロータ9Cを示している。図示しないが、ルーツロータ8A,8B,8D,8Eと、ルーツロータ9A,9B,9D,9Eも、ポンプケーシング6内で互いに並列に配置されている。ルーツロータ8A~8Eは回転軸11に支持され、ルーツロータ9A~9Eは回転軸12に支持されている。
【0014】
ルーツロータ8A~8Eとルーツロータ9A~9Eは互いに非接触であり、かつルーツロータ8A~8E,9A~9Eは、ポンプケーシング6の内面と非接触である。したがって、ルーツロータ8A~8E,9A~9Eは、潤滑油の使用なしで、ポンプケーシング6内でスムーズに回転することができる。
【0015】
ルーツロータ8A~8Eと回転軸11は、一体構造物であってもよい。同様に、ルーツロータ9A~9Eと回転軸12は、一体構造物であってもよい。電動機2は回転軸11,12のうちの一方に連結されている。一実施形態では、一対の電動機2が、回転軸11,12にそれぞれ連結されていてもよい。
【0016】
図1に示すように、ルーツロータ8A~8E,9A~9Eおよびロータ室5A~5Eは、気体の移送方向に沿って配列されている。すなわち、ルーツロータ8A,9Aおよびロータ室5Aは、ポンプケーシング6内の気体の移送方向において最も上流側に位置している。ルーツロータ8B,9Bおよびロータ室5Bは、ルーツロータ8A,9Aおよびロータ室5Aの下流側に位置し、ルーツロータ8C,9Cおよびロータ室5Cは、ルーツロータ8B,9Bおよびロータ室5Bの下流側に位置し、ルーツロータ8D,9Dおよびロータ室5Dは、ルーツロータ8C,9Cおよびロータ室5Cの下流側に位置し、ルーツロータ8E,9Eおよびロータ室5Eは、ルーツロータ8D,9Dおよびロータ室5Dの下流側に位置している。ルーツロータ8E,9Eおよびロータ室5Eは、ポンプケーシング6内の気体の移送方向において最も下流側に位置している。
【0017】
ポンプケーシング6は、ロータ室5Aに連通する気体入口14Aおよび気体出口15Aと、ロータ室5Bに連通する気体入口14Bおよび気体出口15Bと、ロータ室5Cに連通する気体入口14Cおよび気体出口15Cと、ロータ室5Dに連通する気体入口14Dおよび気体出口15Dと、ロータ室5Eに連通する気体入口14Eおよび気体出口15Eを有している。
【0018】
気体入口14Aは、移送すべき気体で満たされたチャンバ(図示せず)に連結される。一例では、気体入口14Aは、半導体デバイスの製造装置のプロセスチャンバに連結され、真空ポンプ1は、プロセスチャンバに導入されたプロセスガスを排気する用途に使用される。気体出口15Aは、図示しない流路を介して気体入口14Bに連通し、気体出口15Bは、図示しない流路を介して気体入口14Cに連通し、気体出口15Cは、図示しない流路を介して気体入口14Dに連通し、気体出口15Dは、図示しない流路を介して気体入口14Eに連通している。
【0019】
真空ポンプ1は、ポンプケーシング6の側壁6Aの外側に位置するギヤハウジング16をさらに備えている。ギヤハウジング16の内部には、互いに噛み合う一対のギヤ20が配置されている。なお、
図1では1つのギヤ20のみが描かれている。これらギヤ20は、回転軸11,12にそれぞれ固定されている。電動機2は、図示しないモータドライバによって回転し、電動機2が連結された回転軸11,12のうちの一方は、ギヤ20を介して、電動機2が連結されていない回転軸11,12のうちの他方を反対方向に回転させる。
【0020】
回転軸11,12は、ポンプケーシング6の側壁6Aに保持された軸受17と、ポンプケーシング6の他方の側壁6Bに保持された軸受18により回転可能に支持されている。電動機2は、ポンプケーシング6の側壁6Bの外側に位置するモータハウジング22と、モータハウジング22内に配置されたモータロータ2Aおよびモータステータ2Bを有している。
【0021】
一実施形態では、回転軸11,12にそれぞれ連結された一対の電動機2が設けられてもよい。一対の電動機2は、図示しないモータドライバによって同期して反対方向に回転し、
図2に示すように、回転軸11,12およびルーツロータ8A~8E,9A~9Eを同期して反対方向に回転させる。この場合のギヤ20の役割としては、突発的な外的要因によるルーツロータ8の同期回転の脱調を防ぐことにある。
【0022】
電動機2がルーツロータ8A~8E,9A~9Eを回転させると、気体は、気体入口14Aを通ってロータ室5Aに吸い込まれる。気体は、ロータ室5A~5E内のルーツロータ8A~8E,9A~9Eによって順次圧縮され、気体出口15Eを通ってポンプケーシング6から排出される。
【0023】
本実施形態では、ルーツロータ8A~8E,9A~9Eは、同じ外形を有している。一実施形態では、異なる段のルーツロータの外形は異なることもある。以下、ルーツロータ8Cについて説明する。
図3は、ルーツロータ8Cの拡大図である。
図3に示すように、ルーツロータ8Cは、インボリュート曲線からなる形状を有するインボリュート側面31と、インボリュート側面31の外側端部に接続された円弧凸面34と、インボリュート側面31の内側端部に接続された円弧凹面36を有している。ルーツロータ8Cは、3つの突出部を有する、いわゆる三葉ルーツロータである。したがって、ルーツロータ8Cは、3つの円弧凸面34と、6つのインボリュート側面31と、3つの円弧凹面36を有している。3つの円弧凸面34は、6つのインボリュート側面31の外側端部に接続され、3つの円弧凹面36は、6つのインボリュート側面31の内側端部に接続されている。ルーツロータ8Cに対向するルーツロータ9Cは、ルーツロータ8Cと同じ形状を有している。
【0024】
円弧凸面34の曲率半径R1は、円弧凹面36の曲率半径R2よりも大きい。したがって、
図4に示すように、ルーツロータ8Cの円弧凸面34が、ルーツロータ9Cの円弧凹面36に対向するとき、ルーツロータ8Cの円弧凸面34とルーツロータ9Cの円弧凹面36との間には、三日月状の空間40が形成される。
【0025】
ルーツロータ8C,9Cの円弧凸面34と円弧凹面36が対向したとき、円弧凸面34とインボリュート側面31との接続点、および円弧凹面36とインボリュート側面31との接続点の両側で空間が広がっているので、ルーツロータ8Cおよびルーツロータ9Cは粉体を噛み込まない。インボリュート側面31の隣に形成されている三日月状の空間40は、粉体の一時的な逃げ場として機能する。すなわち、ルーツロータ8C,9Cの回転に伴い、粉体は一時的に三日月状の空間40内に移動し、ルーツロータ8C,9Cがさらに回転するにつれて三日月状の空間40から排出される。
【0026】
インボリュート側面31同士が対向する位相から、円弧凸面34と円弧凹面36とが対向する位相に移行するとき、
図4に示すように、三日月状の空間40の両側に2つの隙間G2が存在する。その後、ルーツロータ8C,9Cが回転するにつれて1つの隙間G2のみが存在する。このようなルーツロータ8C,9Cの動きにより、粉体を容易に排出することができる。
【0027】
図4において、ルーツロータ8Cおよびルーツロータ9Cが回転しているとき、ルーツロータ8Cの円弧凸面34とルーツロータ9Cの円弧凹面36との隙間G1は、ルーツロータ8Cのインボリュート側面31とルーツロータ9Cのインボリュート側面31との隙間G2よりも常に大きい。特に、ルーツロータ8Cの円弧凸面34上の最外点P1と、ルーツロータ9Cの円弧凹面36上の最内点P2が最も近づいたときの最外点P1と最内点P2との隙間(距離)G1minは、ルーツロータ8Cのインボリュート側面31とルーツロータ9Cのインボリュート側面31との隙間G2の1.5~20倍である。隙間G1minが小さすぎると、ルーツロータ8C,9Cの間に粉体が強く挟まれる可能性があり、その一方で隙間G1minが大きすぎると、排気効率が低下する。
【0028】
図5は、2つのルーツロータ8C,9Cが反対方向に回転している様子を示す図である。
図5に示すように、ルーツロータ8Cおよびルーツロータ9Cが回転している間、ルーツロータ8Cのインボリュート側面31とルーツロータ9Cのインボリュート側面31との隙間G2は、常に一定である。言い換えれば、隙間G2は、ルーツロータ8C,9Cの回転角度に拘わらず、一定である。
【0029】
ルーツロータ8Cおよびルーツロータ9Cのインボリュート側面31同士は互いに対向し、円弧凸面34および円弧凹面36には対向しない。一方、ルーツロータ8Cの円弧凸面34は、ルーツロータ9Cの円弧凹面36に対向し、ルーツロータ9Cのインボリュート側面31には対向しない。同様に、ルーツロータ9Cの円弧凸面34は、ルーツロータ8Cの円弧凹面36に対向し、ルーツロータ8Cのインボリュート側面31には対向しない。
【0030】
インボリュート側面31は、外側に湾曲する面である。したがって、インボリュート側面31同士が互いに対向しているとき、
図5に示すように、ルーツロータ8Cのインボリュート側面31上の一点とルーツロータ9Cのインボリュート側面31上の一点の間に隙間G2が形成され、隙間G2の両側では隙間は広がっている。このようなインボリュート側面31の点接触(実際には非接触)により、ルーツロータ8Cのインボリュート側面31とルーツロータ9Cのインボリュート側面31の間には、粉体は挟まりにくい。
【0031】
図4に示すルーツロータ8Cの円弧凸面34とルーツロータ9Cの円弧凹面36との隙間G1は、ルーツロータ8C,9Cの回転角度に依存して変化する。
図4と
図5との対比から分かるように、ルーツロータ8C,9Cの回転角度に拘わらず、隙間G1は隙間G2よりも常に大きい。
【0032】
このような構成により、粉体は、ルーツロータ8Cの円弧凸面34とルーツロータ9Cの円弧凹面36との間に挟まれにくい。ルーツロータ8Cの円弧凸面34とルーツロータ9Cの円弧凹面36との間の三日月状の空間40内に閉じ込められた粉体は、ルーツロータ8C,9Cの回転に伴って三日月状の空間40から排出される。結果として、ルーツロータ8C,9Cは、スムーズな回転を維持することができる。
【0033】
上述した実施形態のルーツロータ8A~8E,9A~9Eは、3つの突出部を有する三葉ルーツロータであるが、本発明は上記実施形態には限定されず、2つの突出部を有する二葉ルーツロータ、または4つ以上の突出部を有する多葉ルーツロータにも適用することができる。
【0034】
例えば、
図6は、二葉ルーツロータの一実施形態を示す図である。この実施形態でも、ルーツロータ51,52のそれぞれは、インボリュート曲線からなる形状を有するインボリュート側面31と、インボリュート側面31の外側端部に接続された円弧凸面34と、インボリュート側面31の内側端部に接続された円弧凹面36を有しており、円弧凸面34の曲率半径R3は、円弧凹面36の曲率半径R4よりも大きい。特に説明しない二葉ルーツロータ51,52の本実施形態の構成は、
図1乃至
図5を参照して説明した上記実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0035】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0036】
1 真空ポンプ
2 電動機
2A モータロータ
2B モータステータ
5A~5E ロータ室
6 ポンプケーシング
8,9 ルーツロータ
11,12 回転軸
14A,14B,14C,14D,14E 気体入口
15A,15B,15C,15D,15E 気体出口
16 ギヤハウジング
17 軸受
18 軸受
20 ギヤ
22 モータハウジング
31 インボリュート側面
34 円弧凸面
36 円弧凹面
40 三日月状の空間
51,52 ルーツロータ