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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113563
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】制御装置及び測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20240815BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
G01B21/00 G
G01B21/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018641
(22)【出願日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】村田 龍一
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA04
2F069AA56
2F069AA57
2F069AA61
2F069GG01
2F069QQ01
(57)【要約】
【課題】異なるワークを測定する場合の事前準備の手間を軽減できる制御装置及び測定システムを提供する。
【解決手段】制御装置は、測定の動作手順が記述されたプログラムに従って形状測定機を制御する制御部を有する。制御部は、プログラムに従って形状測定機に行わせる一連の動作のうちの特定の動作についての設定情報を外部から取得し、取得した設定情報に従って形状測定機に特定の動作を行わせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状測定機の制御装置であって、
測定の動作手順が記述されたプログラムに従って前記形状測定機を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記プログラムに従って前記形状測定機に行わせる一連の動作のうちの特定の動作についての設定情報を外部から取得し、
取得した前記設定情報に従って前記形状測定機に前記特定の動作を行わせる、
制御装置。
【請求項2】
前記プログラムは、前記特定の動作についての設定が変数で記述され、
前記制御部は、前記形状測定機に前記特定の動作を行わせる際に、外部から取得した前記設定情報を参照して、前記形状測定機に前記特定の動作を行わせる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記特定の動作についての設定情報が記録されたデータファイルを外部から取得して、前記特定の動作についての設定情報を取得する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
外部から取得した前記設定情報に基づいて、前記特定の動作についての前記プログラムの記述を書き換え、
書き換えた前記プログラムに従って前記形状測定機を制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記プログラムに従って前記形状測定機に行わせる一連の動作の情報、及び、各動作についての設定情報を第1表示部に表示し、かつ、前記特定の動作に関する情報を強調して表示する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記特定の動作についての設定情報に関連付けられた認証情報を外部から取得し、
取得した前記認証情報の真正性を判定し、
取得した前記認証情報の真正性が確認された場合に、前記プログラムに従って前記形状測定機を制御する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記プログラムに関連付けられた認証情報と、取得した前記認証情報とを照合して、取得した前記認証情報の真正性を判定する、
請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記特定の動作が、測定位置の位置決めの動作であり、
前記制御部は、前記測定位置についての設定情報を外部から取得する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記形状測定機は、触針を用いて真円度を測定する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記設定情報が記録されたメディアから前記設定情報を読み取る読み取り部を更に有し、
前記制御部は、前記メディアから前記設定情報を読み取った前記読み取り部から前記設定情報を取得する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記特定の動作についての設定情報をコード化したコード情報が前記メディアにプリントされ、
前記読み取り部は、前記メディアから前記コード情報を読み取って、前記設定情報を取得する、
請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記特定の動作が、測定位置の位置決めの動作であり、
前記制御部は、
前記測定位置についての設定情報を外部から取得し、
取得した前記測定位置についての設定情報を第1表示部に表示する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、ワークの図形を前記第1表示部に表示し、前記図形に関連づけて、前記測定位置についての設定情報を表示する、
請求項12に記載の制御装置。
【請求項14】
前記図形は、ワークの断面の図形である、
請求項13に記載の制御装置。
【請求項15】
形状測定機と、
前記形状測定機を制御する請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置と、
前記制御装置に対し、前記特定の動作についての設定情報を出力し、かつ、測定の実行を指示する外部装置と、
を備えた測定システム。
【請求項16】
形状測定機と、
前記形状測定機を制御する請求項3に記載の制御装置と、
前記制御装置に対し、前記特定の動作についての設定情報を出力し、かつ、測定の実行を指示する外部装置と、
を備え、
前記外部装置は、
前記特定の動作についての設定の入力を受け付ける入力部と、
入力された情報に基づいて前記データファイルを生成するデータファイル生成部と、
を備える、
測定システム。
【請求項17】
形状測定機と、
前記形状測定機を制御する請求項12に記載の制御装置と、
前記制御装置に対し、前記測定位置についての設定情報を出力し、かつ、測定の実行を指示する外部装置と、
を備え、
前記外部装置は、
第2表示部と、
前記測定位置についての設定の入力を受け付ける入力部と、
入力された前記測定位置の設定情報を前記第2表示部に表示する表示制御部と、
を備える、
測定システム。
【請求項18】
前記表示制御部は、ワークの図形を前記第2表示部に表示し、前記図形に関連づけて、前記測定位置の設定情報を表示する、
請求項17に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定機の制御装置、並びに、形状測定機及びその制御装置を備えた測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ数値制御(Computerized Numerically Controlled:CNC)式の測定機では、事前に作成した自動プログラム(パートプログラムともいう)に従って測定機が動作し、ワーク(測定対象物)を自動で測定する(たとえば、特許文献1-3参照)。
【0003】
触針を介してワークの形状(表面粗さ、輪郭形状、真円度、三次元座標等)を測定する形状測定機(たとえば、三次元座標測定機、表面粗さ測定機、輪郭形状測定機、真円度測定機、円筒形状測定機等)では、触針の移動経路、測定結果の解析条件などが自動プログラムに記述される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-017198号公報
【特許文献2】特開2017-166955号公報
【特許文献3】特開2020-071029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動プログラムは、ワークごとに作成する必要がある。このため、ワークが増えると、事前準備に手間がかかるという問題がある。
【0006】
また、一部だけ条件を変更して測定する場合であっても、別の自動プログラムとして作成する必要があり、メンテナンス性が悪いという問題もある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、異なるワークを測定する場合の事前準備の手間を軽減できる制御装置及び測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の態様の制御装置は、形状測定機の制御装置であって、測定の動作手順が記述されたプログラムに従って形状測定機を制御する制御部を有し、制御部は、プログラムに従って形状測定機に行わせる一連の動作のうちの特定の動作についての設定情報を外部から取得し、取得した設定情報に従って形状測定機に特定の動作を行わせる、ことを特徴とする。
【0009】
第2の態様の制御装置は、第1の態様の制御装置において、プログラムは、特定の動作についての設定が変数で記述され、制御部は、形状測定機に特定の動作を行わせる際に、外部から取得した設定情報を参照して、形状測定機に特定の動作を行わせる、ことを特徴とする。
【0010】
第3の態様の制御装置は、第2の態様の制御装置において、制御部は、特定の動作についての設定情報が記録されたデータファイルを外部から取得して、特定の動作についての設定情報を取得する、ことを特徴とする。
【0011】
第4の態様の制御装置は、第1の態様の制御装置において、制御部は、外部から取得した設定情報に基づいて、特定の動作についてのプログラムの記述を書き換え、書き換えたプログラムに従って形状測定機を制御する、ことを特徴とする。
【0012】
第5の態様の制御装置は、第1から4のいずれか一の態様の制御装置において、制御部は、プログラムに従って形状測定機に行わせる一連の動作の情報、及び、各動作についての設定情報を第1表示部に表示し、かつ、特定の動作に関する情報を強調して表示する、ことを特徴とする。
【0013】
第6の態様の制御装置は、第1から4のいずれか一の態様の制御装置において、制御部は、特定の動作についての設定情報に関連付けられた認証情報を外部から取得し、取得した認証情報の真正性を判定し、取得した認証情報の真正性が確認された場合に、プログラムに従って形状測定機を制御する、ことを特徴する。
【0014】
第7の態様の制御装置は、第6の態様の制御装置において、制御部は、プログラムに関連付けられた認証情報と、取得した認証情報とを照合して、取得した認証情報の真正性を判定する、ことを特徴とする。
【0015】
第8の態様の制御装置は、第1から4のいずれか一の態様の制御装置において、特定の動作が、測定位置の位置決めの動作であり、制御部は、測定位置についての設定情報を外部から取得する、ことを特徴とする。
【0016】
第9の態様の制御装置は、第1から4のいずれか一の態様の制御装置において、形状測定機は、触針を用いて真円度を測定する、ことを特徴とする。
【0017】
第10の態様の制御装置は、第1から4のいずれか一の態様の制御装置において、設定情報が記録されたメディアから設定情報を読み取る読み取り部を更に有し、制御部は、メディアから設定情報を読み取った読み取り部から設定情報を取得する、ことを特徴とする。
【0018】
第11の態様の制御装置は、第10の態様の制御装置において、特定の動作についての設定情報をコード化したコード情報がメディアにプリントされ、読み取り部は、メディアからコード情報を読み取って、設定情報を取得する、ことを特徴とする。
【0019】
第12の態様の制御装置は、第1から4のいずれか一の態様の制御装置において、特定の動作が、測定位置の位置決めの動作であり、制御部は、測定位置についての設定情報を外部から取得し、取得した測定位置についての設定情報を第1表示部に表示する、ことを特徴とする。
【0020】
第13の態様の制御装置は、第12の態様の制御装置において、制御部は、ワークの図形を第1表示部に表示し、図形に関連づけて、測定位置についての設定情報を表示する、ことを特徴とする。
【0021】
第14の態様の制御装置は、第13の態様の制御装置において、図形は、ワークの断面の図形である、ことを特徴とする。
【0022】
第1の態様の測定システムは、形状測定機と、形状測定機を制御する第11から4のいずれか一の制御装置と、制御装置に対し、特定の動作についての設定情報を出力し、かつ、測定の実行を指示する外部装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0023】
第2の態様の測定システムは、形状測定機と、形状測定機を制御する第3の態様の制御装置と、制御装置に対し、特定の動作についての設定情報を出力し、かつ、測定の実行を指示する外部装置と、を備え、外部装置は、特定の動作についての設定の入力を受け付ける入力部と、入力された情報に基づいてデータファイルを生成するデータファイル生成部と、を備える、ことを特徴とする。
【0024】
第3の態様の測定システムは、形状測定機と、形状測定機を制御する第12の態様の制御装置と、制御装置に対し、測定位置についての設定情報を出力し、かつ、測定の実行を指示する外部装置と、を備え、外部装置は、第2表示部と、測定位置についての設定の入力を受け付ける入力部と、入力された測定位置の設定情報を第2表示部に表示する表示制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【0025】
第4の態様の測定システムは、第3の態様の測定システムにおいて、表示制御部は、ワークの図形を第2表示部に表示し、図形に関連づけて、測定位置の設定情報を表示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、異なるワークを測定する場合の事前準備の手間を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明が適用された測定システムの一例を示すシステム構成図である。
図2図2は、真円度測定機の一例を示す図である。
図3図3は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、制御装置が有する主な機能のブロック図である。
図5図5は、自動プログラムの概要を示す図である。
図6図6は、測定結果の表示の一例を示す図である。
図7図7は、管理データベースの一例を示す図である。
図8図8は、測定システムによる処理の流れを示す図である。
図9図9は、制御装置が行う測定制御の手順を示すフローチャートである。
図10図10は、強調表示の一例を示す図である。
図11図11は、外部ファイルに対して認証処理を行う場合の処理の流れの一例を示す図である。
図12図12は、設定情報の設定画面の一例を示す図である。
図13図13は、設定内容を確認する方法の一例を示す概念図である。
図14図14は、設定情報をコード化して読み取る場合に制御装置が有する主な機能のブロック図である。
図15図15は、本実施の形態の測定システムの制御装置が有する主な機能のブロック図である。
図16図16は、自動プログラムを書き換えて測定制御を実行する場合の処理の流れの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0029】
[第1の実施の形態]
[測定システム]
図1は、本発明が適用された測定システムの一例を示すシステム構成図である。
【0030】
図1に示す測定システム1は、ワークWの真円度を自動で測定するシステムであり、真円度測定機100、真円度測定機100を制御する制御装置200、真円度測定機100に対しワークWを搬出入する搬出入装置300、及び、システム全体を統括制御する統括制御装置400を備える。真円度測定機100は、形状測定機の一例である。
【0031】
[真円度測定機]
図2は、真円度測定機の一例を示す図である。なお、図2において、X、Y、Zは、互いに直交する3つの方向を示している。一例として、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(高さ方向)である。X方向と平行な軸をX軸、Y方向と平行な軸をY軸、Z方向と平行な軸をZ軸とする。
【0032】
図2に示す真円度測定機100は、テーブル回転式の真円度測定機である。テーブル回転式の真円度測定機100は、検出器側を固定とし、テーブル側を回転させて測定する。テーブル回転式の真円度測定機100では、テーブル112上にワークWを保持し、テーブル112の回転角と同期して、ワークWの表面の変位を検出器116で検出することにより、真円度の算出に必要なデータ(極座標のデータ)を取得する。
【0033】
また、図2に示す真円度測定機100は、いわゆる接触式の真円度測定機である。接触式の真円度測定機では、触針(測定子又はスタイラスともいう)116AをワークWの表面に当接させて、ワークWの表面の変位を検出する。
【0034】
図2に示すように、真円度測定機100は、ベース110、テーブル112、回転位置検出部(図示せず)、テーブル駆動部114、検出器116、及び、検出器駆動部118等を備える。
【0035】
ベース110は、真円度測定機100の各部を支持する支持台(基台)である。
【0036】
テーブル112は、円盤状の形状を有し、Z軸と平行な回転軸θを中心に回転する。なお、便宜上省略しているが、テーブル112には、センタリング機構及びチルチング機構等を備えることが好ましい。センタリング機構は、テーブル112の中心位置を調節する機構である。チルチング機構は、テーブル112の傾きを調節する機構である。
【0037】
テーブル112には、ワークWの保持手段として、エアチャック120が備えられる。ワークWは、エアチャック120に保持されて、テーブル112上に固定される。
【0038】
回転位置検出部(図示せず)は、テーブル112の回転位置を検出する。回転位置検出部は、たとえば、ロータリーエンコーダ等で構成される。
【0039】
テーブル駆動部114は、テーブル112を回転自在に支持する支持部(図示せず)、回転駆動源としてのモータ(図示せず)、モータの回転をテーブルに伝達する回転伝達機構(図示せず)等で構成される。
【0040】
検出器116は、接触式の検出器である。接触式の検出器116は、触針116Aを有し、その触針116Aの先端をワークWの表面に当接させて、ワークWの表面の変位を検出する。より詳しくは、触針116Aの先端の変位量を検出して、ワークWの表面の変位を検出する。触針116Aの変位量は、たとえば、差動トランス等で検出する。
【0041】
検出器駆動部118は、ベース110上で検出器116をZ方向及びX方向に移動させる。図2に示すように、検出器駆動部118は、ベース110に備えられたコラム118A、コラム118Aに備えられたキャリッジ118B、キャリッジ118Bに備えられたアーム118C、及び、アーム118Cに備えられた検出器ホルダ118D等で構成される。コラム118Aは、Z方向に沿って配設される。キャリッジ118Bは、Z方向に沿って移動自在に支持される。キャリッジ118Bは、コラム118Aに備えられた図示しない駆動機構に駆動されて、Z方向に移動する。アーム118Cは、X方向に沿って移動自在に支持される。アーム118Cは、キャリッジ118Bに備えられた図示しない駆動機構に駆動されて、X方向に移動する。検出器ホルダ118Dは、アーム118Cの先端に備えられる。検出器116は、検出器ホルダ118Dに保持される。
【0042】
検出器116は、キャリッジ118Bを駆動することにより、Z方向に移動し、アーム118Cを駆動することにより、X方向に移動する。
【0043】
真円度の測定は、次の手順で行われる。まず、テーブル112上にワークWをセットする。ワークWは、エアチャック120に保持させて、テーブル112上にセットする。次いで、ワークWの表面に検出器116の触針116Aを当接させる。次いで、テーブル112を回転させる。テーブル112の回転中、ワークWの表面の変位を検出器116で検出し、極座標のデータを取得する。取得したデータを処理して、真円度を算出する。複数個所を測定する場合は、触針116Aを当接させる位置を変えて測定する。この測定する際の一連の動作が、自動プログラムとして記述される。
【0044】
[制御装置]
制御装置200は、統括制御装置400による制御の下で真円度測定機100を制御し、真円度測定機100に所定の測定を行わせる。
【0045】
[制御装置のハードウェア構成]
図3は、制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0046】
図3に示すように、制御装置200は、コンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)211、ROM(Read Only Memory)212、RAM(Random Access Memory)213、補助記憶装置214、入力装置215、表示装置216及び入出力インターフェース(Interface:I/F)217等を備える。
【0047】
プロセッサであるCPU211は、制御装置200の制御部を構成する。CPU211は、所定のプログラム(制御プログラム)を実行することにより、コンピュータを制御装置として機能させる。制御プログラムは、ROM212又は補助記憶装置214に記憶される。
【0048】
ROM212、RAM213、補助記憶装置214は、制御装置200の記憶部を構成する。補助記憶装置214は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。
【0049】
入力装置215は、制御装置200の操作部を構成する。入力装置215は、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成される。
【0050】
表示装置216は、制御装置200の表示部を構成する。表示装置216は、たとえば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、有機EL(Organic Light Emitting Diode:OLED)ディスプレイ等で構成される。制御装置200に備えられる表示装置216は、第1表示部の一例である。
【0051】
入出力インターフェース217は、制御装置200の接続部を構成する。制御装置200は、入出力インターフェース217を介して、真円度測定機100及び統括制御装置400等と通信可能に接続される。
【0052】
[制御装置の主な機能]
図4は、制御装置が有する主な機能のブロック図である。
【0053】
同図に示すように、制御装置200は、外部ファイル取得部221、測定制御部222、演算処理部223、表示制御部224及び記録制御部225等の機能を有する。これらの機能は、CPU211が、所定のプログラムを実行することで実現される。
【0054】
[外部ファイル取得部]
外部ファイル取得部221は、測定に必要な情報が記録された外部ファイルFを取得する。外部ファイルFは、入出力インターフェース217を介して、統括制御装置400から取得する。外部ファイルFに記録される情報については、後述する。
【0055】
[測定制御部]
測定制御部222は、真円度測定機100によるワークWの測定を制御する。測定制御部222は、あらかじめ定められた手順で測定が行われるように、真円度測定機100を制御する。測定制御部222は、自動プログラムに従って真円度測定機100の動作を制御することで、ワークWの測定を制御する。
【0056】
図5は、自動プログラムの概要を示す図である。図5は、ベアリングの内輪を測定対象(ワークW)とし、その外周の真円度を測定する場合の例を示している。特に、2つの鍔部分(軌道溝WRGの両側の部分)WF1、WF2の真円度を測定する場合の例を示している。よって、測定個所は2個所である。図5において、符号MPで示すドットと矢印の組み合わせは、ワークWに対する触針116Aの移動経路の一例を示している。また、位置Z1、Z2は、Z方向における測定位置を示している。位置Z1は、一方の鍔部分(第1の鍔部分)WF1の測定位置(第1の測定位置)である。位置Z2は、他方の鍔部分(第2の鍔部分)WF2の測定位置(第2の測定位置)である。
【0057】
図5に示すように、第1の鍔部分WF1、第2の鍔部分WF2の順で真円度が測定される。すなわち、ワークWの下から上に向かって触針116Aが移動して、各測定対象部位が測定される。この場合、次の手順で各処理(コマンド)が実行される。まず、触針116Aを第1の測定位置Z1に位置決めする。位置決め後、第1の鍔部分WF1の外周に触針116Aを当接させて、真円度の測定を実行する。測定の完了後、触針116Aを第2の測定位置Z2に位置決めする。位置決め後、第2の鍔部分WF2の外周に触針116Aを当接させて、真円度の測定を実行する。
【0058】
図5に示すように、自動プログラムには、真円度測定機100に行わせる一連の動作(コマンド)が時系列順に記述される。図5に示す例では、(1)軸クランプ[Z軸クランプ解除]、(2)位置決め[Z1]、(3)軸クランプ[Z軸クランプ]、(4)真円度測定[ガウシアン,Low,50]、(5)軸クランプ[Z軸クランプ解除]、(6)位置決め[Z2]、(7)軸クランプ[Z軸クランプ]、(8)真円度測定[ガウシアン,Low,50]、(9)軸クランプ[Z軸クランプ解除]の順で各動作が行われる。[]内は、各動作ないし処理における設定である。
【0059】
「軸クランプ」における[Z軸クランプ]は、Z軸のクランプ(固定)を意味する。また、「軸クランプ」における[Z軸クランプ解除]は、Z軸のクランプの解除を意味する。
【0060】
「位置決め」における「Z1」は、Z方向において触針116Aを位置Z1に位置決めすることを意味する。また、「位置決め」における「Z2」は、Z方向において触針116Aを位置Z2に位置決めすることを意味する。
【0061】
「真円度測定」における、[]内は測定の設定(解析条件の設定を含む)である。[ガウシアン,Low,50]は、解析条件の設定の一例であり、それぞれ「フィルタ」、「カットオフ」、「山数」の設定を示している。「フィルタ」は、測定データから不要な形状成分を削除するものである。一例として、フィルタなし、2RC、ガウシアン、スプライン、ロバストスプラインの中から選択されて設定される。「カットオフ」は、測定データの中から必要な凹凸の山だけを計算するためのものである。一例として、低域フィルタ(Low)又は帯域フィルタ(Band)が設定される。「山数」は、測定データ1周当たりで計算する山の数である。[ガウシアン,Low,50]は、「フィルタ」としてガウシアン、「カットオフ」として低域フィルタ(Low)、「山数」として50が選択された場合の例である。
【0062】
図5に示す例によれば、(1)Z軸のクランプを解除する、(2)触針116Aを位置Z1に位置決めする、(3)Z軸をクランプする、(4)設定された条件で真円度測定を実行する、(5)Z軸のクランプを解除する、(6)触針116Aを位置Z2に位置決めする、(7)Z軸をクランプする、(8)設定された条件で真円度測定を実行する、(9)Z軸のクランプを解除する、の順で各動作ないし処理が行われる。なお、測定開始の際、触針116Aは、原点位置に位置し、かつ、Z軸がクランプされているものとする。また、測定完了後、触針116Aは、原点位置に復帰し、Z軸がクランプされるものとする。
【0063】
このように、自動プログラムには、真円度測定機100に行わせる一連の動作(コマンド)が時系列順に記述される。
【0064】
本実施の形態では、自動プログラムに記述される一連の動作のうち一部の動作について、設定が変数で記述される。具体的には、「位置決め」についての設定が変数で記述される。「位置決め」の動作は、特定の動作の一例である。
【0065】
制御装置200は、外部から「位置決め」についての設定情報を取得する。「外部から」とは、装置外からを取得すること意味する。すなわち、制御装置200とは異なる装置等から取得すること(いわゆる外部入力として取得すること)を意味する。測定制御部222は、外部から取得した位置決めについての設定情報を参照し、位置決めの制御を行う。
【0066】
「位置決め」についての設定情報は、外部ファイルFに記録される。上記のように、外部ファイルFは、外部ファイル取得部221で取得される。したがって、測定制御部222は、外部ファイル取得部221で取得した外部ファイルFを参照し、位置決めの制御を行う。
【0067】
外部ファイルFは、たとえば、構造化データで構成され、規定のフォーマットで位置決めに関する設定情報が記述される。一例として、外部ファイルFは、CSV(Comma Separated Value)ファイルで構成される。たとえば、第1の測定位置Z1がZ=20mm、第2の測定位置Z2がZ=40mmに設定されている場合、図5に示すように、1行目に[Z1,Z2]と記述され、2行目に[20,40]と記述されて、外部ファイルFが作成される。この場合、1行目のカンマ(,)の前側の要素「Z1」は、第1の測定位置Z1における位置決めの設定が設定対象であることを表し、カンマの後側の要素「Z2」は、第2の測定位置Z2における位置決めの設定が設定対象であることを表す。また、2行目のカンマの前側の要素「20」は、第1の測定位置Z1における位置決めについての設定が20mmであることを表し、カンマの後側の要素「40」は、第2の測定位置Z2における位置決めについての設定が40mmであることを表す。外部ファイルFは、特定の動作についての設定情報が記録されたデータファイルの一例である。
【0068】
自動プログラムは、所定の言語を用いて、所定の形式で作成される。たとえば、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語を用いて作成される。作成された自動プログラムは、補助記憶装置214に記録される。測定制御部222は、統括制御装置400から与えられる測定の実行指示に応じて、補助記憶装置214から自動プログラムを読み出し、各処理を実行する。設定が変数で記述された処理を行う際、外部ファイルFを参照して、設定情報を取得し、取得した情報に従った処理を行う。
【0069】
[演算処理部]
演算処理部223は、測定処理を実行することで得られる極座標のデータを真円度測定機100から取得し、取得した極座標のデータを処理して、真円度を算出する。演算処理部223は、設定された条件(フィルタ、オフセット、山数等)に従って極座標のデータを処理する。
【0070】
[表示制御部]
表示制御部224は、表示装置216への出力を制御する。表示装置216には、各種情報が表示される。
【0071】
図6は、測定結果の表示の一例を示す図である。
【0072】
図6に示すように、真円度の測定結果が、画面216A内に設定された結果表示領域A1に表示される。また、自動プログラムに従って実行される一連の動作(コマンド)が、画面216A内に設定されたコマンド表示領域A2に表示される。更に、コマンド表示領域A2で選択された動作(コマンド)についての詳細な設定内容が、画面216A内に設定されたコマンド内容表示領域A3に表示される。図6は、「(8)の真円度測定」についての設定内容をコマンド内容表示領域A3に表示した場合の例を示している。
【0073】
測定結果は、演算処理部223による処理後に表示される。その他の表示は、事前に表示される。たとえば、統括制御装置400からの測定の実行指示に応じて表示される。
【0074】
このように測定結果と共に、自動プログラムに従って実行される動作、及び、その設定内容が、表示装置216に表示される。これにより、ユーザは、自動で行われる測定の内容(動作手順、及び、各動作の設定内容)を容易に確認できる。
【0075】
このような測定結果の表示の他、表示制御部224は、状況に応じて、或いは、ユーザからの指示に応じて、各種情報を表示装置216に表示させる。たとえば、エラーが生じた場合に、所定のエラーメッセージを画面に表示させる。
【0076】
[記録制御部]
記録制御部225は、補助記憶装置214に対するデータの記録を制御する。一例として、記録制御部225は、測定結果のデータを所定のフォーマットで補助記憶装置214に記録する処理を行う。
【0077】
[搬出入装置]
搬出入装置300は、真円度測定機100に対しワークWを搬出入する。搬出入装置300は、たとえば、ロボットアームで構成される。搬出入装置300は、たとえば、所定位置にセットされたパレット(図示せず)からワークWを取り出し、真円度測定機100に供給する。より具体的には、取り出したワークWをテーブル112上のエアチャック120にセットする。また、搬出入装置300は、測定が終了したワークWをテーブル112から回収し、元の位置に戻す。すなわち、取り出したときと同じ場所にワークWを戻す。パレットには、複数のワークWが規則的に収容される。
【0078】
なお、本例では、パレットからワークWを供給、回収する構成としているが、この他、たとえば、コンベアからワークWを搬出入装置300でピックアップし、供給、回収する構成とすることもできる(いわゆるインラインでの測定)。
【0079】
[統括制御装置]
統括制御装置400は、真円度測定機100、エアチャック120、及び、搬出入装置300が協働して、測定が自動で行われるように測定システム全体を統括制御する。統括制御装置400は、たとえば、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)で構成される。プログラマブルロジックコントローラは、コンピュータの一種であり、プロセッサ(たとえば、CPU)411、メモリ(たとえば、RAM)412、及び、補助記憶装置(たとえば、フラッシュメモリ)413を有し、ソフトウェアで動作する。本実施の形態の統括制御装置400には、更に、入力装置414、及び、表示装置415が備えられる。入力装置414は、たとえば、キーボード又はタッチパネルで構成される。表示装置415は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等で構成される。
【0080】
統括制御装置400は、制御装置200に対し、実行する自動プログラムを指定して、測定の実行を指示する。上記のように、本実施の形態の制御装置200が実行する自動プログラムは、一部の動作の設定が変数で記述される。このため、統括制御装置400は、測定実行の指示とともに、その動作についての設定情報を記録した外部ファイルFを制御装置200に出力する。
【0081】
外部ファイルFは、ワークWごとに用意される。各ワークの外部ファイルFは、補助記憶装置413に記憶される。補助記憶装置413には、たとえば、管理データベースDBが記憶され、その管理データベースDBにおいて、各ワークWの外部ファイルFが管理される。
【0082】
図7は、管理データベースの一例を示す図である。
【0083】
管理データベースDBには、測定対象とするワークWについての情報が記録され、その情報に関連付けられて、各ワークWについて使用する自動プログラムの情報、及び、外部ファイルFの情報が記録される。ワークWについての情報は、たとえば、ID(Identification)等、ワークWごとに付与される固有の識別情報である。ワークWについての情報は、たとえば、測定順にナンバリングされて、記録される。使用する自動プログラムの情報は、たとえば、使用する自動プログラムのファイル名の情報である。また、使用する外部ファイルFの情報は、たとえば、使用する外部ファイルFのファイル名の情報である。
【0084】
図7に示す例では、No.1のワーク(ID:WA001)からNo.100のワーク(ID:WA100)までが、同じ自動プログラム(PA001)を用いて、測定制御が行われる。また、No.101のワーク(ID:WB001)からNo.200のワーク(ID:WB100)までが、同じ自動プログラム(PB001)を用いて、測定制御が行われる。一例として、No.1からNo.100までのワークは、おおよその形状は同じであるが、測定位置が異なるワークである。同様に、No.101からNo.200までのワークは、おおよその形状は同じであるが、測定位置が異なるワークである。No.101からNo.200までのワークは、No.1からNo.100までのワークと形状が異なるため、異なる自動プログラムを使用する構成とされている。
【0085】
統括制御装置400は、管理データベースDBに記録された情報に基づいて、制御装置200に測定の実行を指示する。すなわち、測定対象とするワークWに対し、管理データベースDBに記録された自動プログラムを指定して、制御装置200に測定の実行を指示する。また、管理データベースDBに記録された外部ファイルFを読み出して、制御装置200に出力する。統括制御装置400は、外部装置の一例である。
【0086】
[測定システムの動作]
図8は、測定システムによる処理の流れを示す図である。
【0087】
まず、統括制御装置400から搬出入装置300に対し、ワークWの搬入指示が出力される。搬出入装置300は、この搬入指示に応じて、パレット(不図示)からワークWを取り出し、真円度測定機100のテーブル112にセットする。より具体的には、テーブル112上のエアチャック120にワークWをセットする。
【0088】
次に、統括制御装置400からエアチャック120に対し、ワークWのクランプ指示が出力される。エアチャック120は、このクランプ指示に応じて、ワークWをクランプする。これにより、テーブル112上にワークWが固定される。
【0089】
次に、統括制御装置400から制御装置200に対し、測定の実行指示が出力される。実行指示は、使用する自動プログラムを指定して行われる。統括制御装置400は、管理データベースDBに記録された情報に基づいて、使用する自動プログラムを指定し、測定の実行を指示する。
【0090】
実行指示とともに統括制御装置400から制御装置200に対し、所定の設定情報が記録された外部ファイルFが送信される。統括制御装置400は、管理データベースDBに記録された情報に基づいて、使用する外部ファイルFを読み出し、制御装置200に送信する。
【0091】
制御装置200は、測定の実行指示に応じて、測定制御を実行する。測定制御は、指定された自動プログラムに従って行われる。測定制御の詳細については、後述する。
【0092】
測定が完了すると、制御装置200から統括制御装置400に対し、測定制御の結果が出力される。すなわち、正常に測定が行われたか否かが通知される。たとえば、正常に測定が行われた場合は、「RESULT_OK」が通知される。正常に測定が行われなかった場合は、「RESULT_NG」が通知される。
【0093】
測定制御の結果が、統括制御装置400で受信されると、統括制御装置400からエアチャック120に対し、クランプの解除指示が出力される。エアチャック120は、このクランプの解除指示に応じて、ワークWのクランプを解除する。これにより、テーブル112からワークWの回収が可能になる。
【0094】
クランプが解除されると、統括制御装置400から搬出入装置300に対し、ワークWの搬出指示が出力される。搬出入装置300は、この搬出指示に応じて、テーブル112からワークWを回収し、元の位置に戻す。すなわち、パレット(図示せず)に戻す。
【0095】
1つのワークWの測定が完了すると、統括制御装置400は、測定対象とする全ワークWの測定が完了したか否かを判定する。全ワークWの測定が完了すると、処理が終了される。一方、全ワークWの測定が完了していない場合は、上記手順で次のワークWの処理が行われる。
【0096】
[測定制御]
図9は、制御装置が行う測定制御の手順を示すフローチャートである。
【0097】
制御装置200は、自動プログラムに従って真円度測定機100を制御する。測定制御部222は、統括制御装置400から指定された自動プログラムを補助記憶装置214から読み出して、実行する。測定制御部222は、自動プログラムに記述された動作(コマンド)を順次実行する。
【0098】
まず、実行する動作(コマンド)を読み込む(ステップS11)。次に、読み込んだ動作の設定が変数で記述されているか否かを判定する(ステップS12)。
【0099】
動作の設定が変数で記述されていない場合、測定制御部222は、自動プログラムに記述された設定条件で真円度測定機100を動作させる(ステップS13)。動作完了後、測定制御部222は、次に実行する動作の有無を判定する(ステップS14)。次に実行する動作がある場合、測定制御部222は、ステップS11に戻り、次に実行する動作の内容を読み込む。次に実行する動作がない場合は、処理を終了する。
【0100】
一方、動作の設定が変数で記述されている場合、測定制御部222は、外部ファイルFの有無を判定する(ステップS15)。外部ファイルFが存在する場合、測定制御部222は、外部ファイルFの記載内容をチェックする(ステップS16)。すなわち、設定情報が、所定のフォーマットで記載されているか否かをチェックする。測定制御部222は、チェック結果に基づいて、外部ファイルFが正常か否かを判定する(ステップS17)。外部ファイルFが正常な場合、外部ファイルFに記述された設定条件で真円度測定機100を動作させる(ステップS18)。動作完了後、測定制御部222は、次に実行する動作の有無を判定する(ステップS14)。次に実行する動作がある場合、測定制御部222は、ステップS11に戻り、次に実行する動作の内容を読み込む。次に実行する動作がない場合は、処理を終了する。
【0101】
ステップS15において、外部ファイルFが存在しないと判定した場合、及び、ステップS17において、外部ファイルFが異常と判定した場合、測定制御部222は、所定の警告処理を行う(ステップS19)。一例として、測定制御部222は、表示制御部224を介して、表示装置216に所定のエラーメッセージを表示させる。この他、真円度測定機100に警告灯が備えられている場合は、警告灯を発光させたり、ブザーが備えられている場合は、ブザーを鳴らしたりしてもよい。警告処理後、測定制御部222は、測定の動作を停止する(ステップS20)。
【0102】
このように、測定制御部222は、自動プログラムに記述された動作(コマンド)を順次実行し、真円度測定機100を制御する。そして、設定が変数で記述された動作(コマンド)については、外部ファイルFを参照し、外部ファイルFに記述された設定条件で真円度測定機100を動作させる。
【0103】
たとえば、図5に示す自動プログラムの例において、(2)の位置決めの動作の設定、及び(6)の位置決めの動作の設定が、変数で記述されている場合、(2)の位置決めの動作を実行する際、及び、(6)の位置決めの動作を実行する際に、外部ファイルFが参照されて、各処理が実行される。
【0104】
このように自動プログラムに従って対象を制御する場合において、一部の動作の設定を変数で記述し、その設定情報を外部から取得する構成とすることにより、次の効果が得られる。たとえば、一部の測定条件のみが異なる複数のワークを測定する場合(たとえば、おおよその形状は同じであるが、測定位置のみが異なる場合など)、従来は、ワークの数だけ自動プログラムを作成していた。本実施の形態の測定システム1によれば、外部ファイルFのみを用意すればよい。これにより、事前準備の手間を大幅に軽減できる。また、複数のワーク間で自動プログラムを共用できるので、メンテナンス性も向上できる。更に、自動プログラムの総数を削減できるので、保管に必要なデータ容量も大幅に削減できる。たとえば、標準的な自動プログラムのサイズが300KBであるのに対し、外部ファイルのサイズは1KB程度である。したがって、たとえば、100個のワークを測定する場合、従来は300KB×100=30MB要するのに対して、本実施の形態の測定システム1であれば、300KB+(1KB×100)=400KBで済む。また、これにより、自動プログラムを移動させる際の通信負荷も大幅に低減できる。
【0105】
[変形例]
[測定対象及び設定対象]
上記実施の形態では、ベアリングの内輪の外周2個所を測定する場合を例に説明したが、測定対象物(ワーク)は、これに限定されるものではない。
【0106】
また、上記実施の形態では、触針116Aの位置決め動作についての設定を外部から行う場合を例に説明したが、外部から設定可能とする動作(コマンド)は、これに限定されるものではない。演算処理部223が行う処理動作についての設定(解析条件等)を外部から設定できるようにしてもよい。
【0107】
[設定した情報の表示]
外部ファイルに基づいて設定される情報について、制御装置200上で確認できるようにすることが好ましい。たとえば、自動プログラムに従って実行される一連の動作(コマンド)を表示装置216に表示し、かつ、設定が変数で記述された動作については、外部ファイルから取得した設定情報を表示する構成とする(図6参照)。この際、設定が変数で記述された動作については、画面上で強調表示することが好ましい。図10は、強調表示の一例を示す図である。図10は、自動プログラムにおいて、2つある位置決めについての動作の設定が変数で記述されている場合の例である。図10に示すように、コマンド表示領域A2に表示される一連の動作のうち位置決めについての表示が強調表示されている。具体的には、他の動作の表示に比して大きなサイズ(フォント)で表示され、かつ、他の動作の表示と異なる文字色及び背景色で表示されている。更に、先頭に星印が付されて表示されている。このように、強調表示することにより、設定が変数で記述された動作(条件を任意に設定可能な動作)であることが明確になる。また、併せて設定された情報を表示することにより、設定された内容を制御装置200上で確認できる。これにより、動作条件が正しく設定されているか否かを容易に確認できる。
【0108】
強調表示の手法は、図10に示した例に限定されない。この他、たとえば、該当する動作の表示を点滅させたり、該当する動作に下線を付したり、該当する動作の文字を斜体にしたり、太字にしたりして、強調することができる。また、これらを適宜組み合わせて表示して、強調することができる。また、設定された情報だけを強調して表示してもよい。
【0109】
[外部ファイルの認証処理]
上記のように、本実施の形態の測定システム1によれば、一部の測定条件のみが異なる複数のワークを測定する場合、複数のワーク間で自動プログラムを共用できる。一方、測定条件が大幅に異なるような場合(たとえば、ワークの形状が異なる場合など)は、別の自動プログラムが必要になる。この場合、適宜、制御装置200が、複数の自動プログラムを保持し、適宜、使用する自動プログラムを切り替えて測定の制御が行われる。
【0110】
制御装置200が複数の自動プログラムを保持している場合、誤って別の自動プログラムを実行してしまうおそれがある。また、誤って別の自動プログラムで使用する外部ファイルを参照してしまうおそれもある。
【0111】
これを防止するため、測定制御の実行前に、外部ファイルと自動プログラムの対応関係を確認することが好ましい。たとえば、受信した外部ファイルFに対し、所定の認証処理を行い、真正性が確認されてから、測定制御を実行する構成とすることができる。
【0112】
図11は、外部ファイルに対して認証処理を行う場合の処理の流れの一例を示す図である。
【0113】
まず、統括制御装置400から制御装置200に対し、測定の実行指示が出力される。上記のように、実行指示は、実行する自動プログラムを指定して行われる。この実行指示とともに統括制御装置400から制御装置200に対し、所定の設定情報及びパスワードが記録された外部ファイルFが送信される。
【0114】
パスワードは、自動プログラムに固有のものであり、自動プログラムごとに事前に定められる。パスワードは、認証情報の一例である。外部ファイルFには、所定の設定情報、及び、使用する自動プログラムについてのパスワードの情報が、所定のフォーマットで記録される。
【0115】
制御装置200は、自動プログラムごとに定められたパスワードの情報を保持している。パスワードの情報は、たとえば、補助記憶装置214に記憶される。
【0116】
制御装置200の測定制御部222は、測定の実行指示、及び、外部ファイルFを受信すると、認証処理を実行する。まず、指定された自動プログラムのパスワードを読み出す。次に、受信した外部ファイルFからパスワードを読み出す。次に、読み出した2つのパスワードを照合する。すなわち、2つのパスワードが一致するか否かを判定する。照合結果から、外部ファイルFの真正性を判定する。すなわち、受信した外部ファイルが、実行を指示された自動プログラムに対応したものか否かを判定する。パスワードが一致した場合、実行を指示された自動プログラムに対応した外部ファイルであると判定する。すなわち、真正と判定する。一方、パスワードが一致しない場合、実行を指示された自動プログラムに対応した外部ファイルでないと判定する。すなわち、不正と判定する。
【0117】
真正と判定した場合、測定制御部222は、自動プログラムに従って測定の制御の処理を実行する。そして、測定完了後、測定制御部222は、統括制御装置400に対し、制御結果を出力する。
【0118】
一方、不正と判定した場合、警告処理を実行する。たとえば、表示装置216に所定のエラーメッセージを表示させる。そして、警告処理後、統括制御装置400に対し、結果を出力する。すなわち、不正な外部ファイルが送信されたことにより、エラーが生じたことを出力する。
【0119】
このように、外部ファイルと、実行する自動プログラムとの対応関係を確認した上で測定制御を実行することにより、誤った自動プログラムを実行してしまったり、誤った外部ファイルを参照してしまったりするのを抑制できる。
【0120】
なお、上記の例では、自動プログラムを実行する前に照合処理を行う構成としているが、照合処理を行うタイミングは、これに限定されるものではない。たとえば、外部ファイルを参照するタイミングで照合処理を実行する構成としてもよい。この場合、外部ファイルの不正が判明した段階(パスワードの不一致が判明した段階)で測定の処理が停止される。
【0121】
また、上記構成では、設定情報を記録したファイル(外部ファイルF)にパスワードも記録する構成としているが、設定情報を記録したファイル(第1の外部ファイル)と、パスワードを記録したファイル(第2の外部ファイル)を別ファイルで構成してもよい。この場合、両者を関連付けて、制御装置200に送信する。
【0122】
また、パスワードに代えてタグを付して、統括制御装置400から制御装置200に外部ファイルを送信してもよい。
【0123】
また、パスワード等については、ハッシュ化して統括制御装置400から制御装置200に外部ファイルを送信してもよい。この場合、ハッシュ化したパスワードが照合される。
【0124】
さらに、外部ファイルの送信の際、チェックサムを付して送信してもよい。これにより、送信するデータの誤りの検出も可能になる。
【0125】
[設定情報の取得方法]
上記実施の形態では、設定情報を記録した外部ファイルFを作成し、その外部ファイルFを統括制御装置400から制御装置200に送信する構成としている。制御装置200が設定情報を取得する方法は、これに限定されるものではない。以下、設定情報の取得方法の変形例について説明する。
【0126】
(1)他の装置から取得する方法
統括制御装置400とは別の装置から設定情報を取得する構成としてもよい。この場合、上記実施の形態と同様に、外部ファイルFの形式で取得する構成としてもよいし、設定情報のみを取得する構成としてもよい。また、通信形態は、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0127】
(2)記憶メディアを介して取得する方法
たとえば、設定情報を記録した外部ファイルFをメモリカード、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記憶媒体に格納し、読み取り装置(メモリカードリーダ、CD-ROMドライブ等)を介して外部ファイルFを読み取る構成としてもよい。
【0128】
(3)入力装置を介して取得する方法
制御装置200の入力装置215又は統括制御装置400の入力装置414を利用し、ユーザが手動で設定情報を入力する構成としてもよい。この場合、所定の設定画面を制御装置200の表示装置216又は統括制御装置400の表示装置415に表示し、設定情報の入力を受け付ける。
【0129】
図12は、設定情報の設定画面の一例を示す図である。図12は、ベアリングの内輪の外周2個所(2つの鍔部分)の真円度を測定する場合の例であり、Z方向の測定位置が自動プログラム上で変数として記述されている場合の例である。また、図12は、統括制御装置400の入力装置414を利用して、設定情報を入力する場合の例を示している。すなわち、図12は、統括制御装置400の表示装置415に表示される画面415Aの一例を示している。
【0130】
図12に示すように、表示装置415の画面415Aには、2個所の測定位置の設定情報を入力するための2つの入力ボックスB1、B2が表示される。第1の入力ボックスB1は、一方の測定位置(本例ではベアリングの内輪の第1の鍔部分WF1の測定位置)の設定情報を入力するボックスである。第2の入力ボックスB2は、他方の測定位置(本例ではベアリングの内輪の第2の鍔部分WF2の測定位置)の設定情報を入力するボックスである。画面415Aには、この2つの入力ボックスB1、B2とともに、測定対象であるワークWの図形(本例ではベアリングの内輪の図形)CSが表示される。本例では、ワークWの断面の図形(いわゆる断面図)が表示される。2つの入力ボックスB1、B2は、この図形CSに関連付けて表示される。具体的には、図形CS上で測定位置に対応する位置から引き出し線LL1、LL2が引き出され、対応する入力ボックスB1、B2に結び付けられて表示される。これにより、誤入力を抑制できる。
【0131】
なお、図12に示す例において、第1の入力ボックスB1は、第1の鍔部分WF1の測定位置を入力するボックスであり、第2の入力ボックスB2は、第2の鍔部分WF2の測定位置を入力するボックスである。このためる。第1の入力ボックスB1は、図形CS上で第1の鍔部分WF1に対応する箇所から引き出し線LL1が引き出されて表示される。また、第2の入力ボックスB2は、図形CS上で第2の鍔部分WF2に対応する箇所から引き出し線LL2が引き出されて表示される。
【0132】
このようにワークWの断面の図形CSを用いて、設定情報の入力位置(図12の例では測定位置)を表示する手法は、形状測定機に特有の表示手法である。特に、真円度を測定する測定機では、テーブル112を回転させても、ワークWの断面の形状、測定値は変わらないため、有効な表示手法である。
【0133】
また、このような表示は、特に高度な処理能力を必要としない。すなわち、ユーザによって入力される数値以外の表示は固定とすることができるため、高度な表示処理能力を必要としない。したがって、処理能力の低いコンピュータでも実現可能である。これにより、ハードウェア構成の低コスト化が可能である。
【0134】
統括制御装置400において、表示装置415への表示制御はプロセッサ411が行う。プロセッサ411は、所定のプログラムを実行することにより、表示制御部として機能する。
【0135】
各入力ボックスB1、B2に対する設定情報の入力は、入力装置414を介して行われる。統括制御装置400は、入力された情報に基づいて、外部ファイルFを生成し、制御装置200に送信する。外部ファイルFを生成する機能は、たとえば、統括制御装置400のプロセッサ411が、所定のプログラムを実行することで実現される。すなわち、プロセッサ411が、外部ファイル生成部として機能する。外部ファイル生成部は、データファイル生成部の一例である。
【0136】
なお、外部ファイルFを生成して、設定情報を制御装置200に送信する構成に代えて、入力された設定情報を制御装置200に直接送信する構成としてもよい。
【0137】
このように、設定情報は、統括制御装置400の入力装置414(又は、制御装置200の入力装置215)を利用し、ユーザが手動で入力する構成とすることもできる。
【0138】
本例において、統括制御装置400の表示装置415は、第2表示部の一例である。また、統括制御装置400の入力装置414は、入力部の一例である。
【0139】
なお、上記のように外部から手動で設定情報を入力する構成の場合、設定した情報が正しく反映されているか否かを確認できる構成とすることが好ましい。
【0140】
図13は、設定内容を確認する方法の一例を示す概念図である。
【0141】
図13は、統括制御装置400の入力装置414を利用して、ユーザが手動で設定情報を入力する場合の例を示している。上記のように、統括制御装置400の表示装置415には、設定情報を入力するための入力ボックスB1、B2、及び、ワークWの図形CSが表示される。この統括制御装置400の表示装置415に表示される情報と同じ情報が、制御装置200の表示装置216に表示される。
【0142】
制御装置200は、統括制御装置400から送信される設定情報に基づいて、入力ボックスB1、B2内の表示を制御する。すなわち、設定情報が外部ファイルFの形式で送信される場合は、外部ファイルFに記録された情報に基づいて、入力ボックスB1、B2内の表示を制御する。また、入力された設定情報が直接送信される場合は、受信される情報に基づいて、入力ボックスB1、B2内の表示を制御する。したがって、統括制御装置400と表示装置216との間で表示の同期は行われない。統括制御装置400は、ユーザからの入力に基づいて、独自に入力ボックスB1、B2内の表示を制御し、制御装置200は、統括制御装置400から受信する情報に基づいて、独自に入力ボックスB1、B2内の表示を制御する。これにより、設定した情報が正しく反映されているか否かを制御装置200側で確認できる。
【0143】
制御装置200は、ワークWの測定中、常にこの表示を行う。測定終了後は、測定結果の表示に切り替えられる(図6参照)。なお、測定結果の表示中も表示位置を変えて、この表示を行う構成としてもよい。あるいは、ユーザからの指示に応じて、この表示に切り替えられるようにしてもよい。
【0144】
このように、制御装置200側においても、設定内容を表示装置216に表示することにより、設定内容が正しく反映されているか否かを確認できる。また、この際、ワークWの図形CSを用いて、設定された情報を表示することにより、設定内容を容易に確認できる。
【0145】
なお、このように設定される情報を制御装置200の表示装置216に表示させる場合、ユーザからの実行指示を待って、測定制御を実行する構成とすることが好ましい。この場合、ユーザは、表示装置216に表示される内容を確認して、制御装置200に測定の実行を指示する。すなわち、入力した情報に誤りがないことを確認して、測定の実行を指示する。これにより、誤った設定に基づいて、測定が行われるのを抑止できる。
【0146】
なお、本例では、制御装置200の表示装置216に設定された情報を表示させる例で説明したが、制御装置200の表示装置216とは、別の表示装置に設定された情報を表示させる構成としてもよい。たとえば、制御装置200の表示装置216とは別の表示装置を用意し、その表示装置に設定された情報を表示する構成としてもよい。
【0147】
また、確認後の測定実行の指示は、統括制御装置400から行う構成としてもよい。あるいは、制御装置200の入力装置215とは別に設けた入力装置から行う構成としてもよい。
【0148】
安全対策のために、制御装置200を含む測定機の周囲を柵で囲う場合がある。この場合、制御装置200の表示装置216とは別の表示装置に設定情報を表示し、かつ、制御装置200の入力装置215とは別の入力装置(統括制御装置400の入力装置414を含む)から測定実行を指示する構成とすることが有効である(表示装置216及び入力装置215を柵外に設置できる場合を除く)。これらの表示装置及び/又は入力装置は、統括制御装置400の近傍に設置することが好ましい、これにより、設定の確認、及び、測定実行の指示を容易に行うことができる。また、これらの表示装置及び/又は入力装置には、スマートフォン、タブレット等の携帯端末を利用することもできる。
【0149】
(4)設定情報をコード化して読み取る方法
たとえば、設定情報をバーコード等の一次元コードやQRコード(登録商標)等の二次元コードでコード化し、そのコード化された情報(コード情報)をリーダで読み取って、設定情報を取得する構成としてもよい。
【0150】
図14は、設定情報をコード化して読み取る場合に制御装置が有する主な機能のブロック図である。特に、図14は、設定情報を二次元コード2DCでコード化した場合の例である。
【0151】
ワークWについての設定情報を二次元コード2DCでコード化し、作成した二次元コード2DCをラベルLBにプリントする。二次元コード2DCがプリントされたラベルLBをワークWに貼付する。ラベルLBを貼付する位置は、測定対象とする面(触針が当接される面)以外の面である。たとえば、図14に示すように、ワークWがベアリングの内輪であって、その外周の真円度を測定する場合、ワークWの端面にラベルLBを貼付する。二次元コード2DCがプリントされたラベルLBは、設定情報が記録されたメディアの一例である。
【0152】
本例の制御装置200には、図14に示すように、二次元コードリーダ231及び設定情報取得部232が備えられる。
【0153】
二次元コードリーダ231は、二次元コード2DCを読み取る。具体的には、二次元コード2DCが付された面を撮像し、得られた画像から二次元コード2DCを抽出する。そして、抽出した二次元コード2DCに対しデコード処理を行い、記録されている情報(設定情報)を出力する。二次元コードリーダ231は、たとえば、搬出入装置300(図1参照)によるワークWの搬入経路上に設置される。これにより、ワークWを真円度測定機100に搬入する過程でワークWに付された二次元コード2DCを読み取ることが可能になる。
【0154】
設定情報取得部232は、二次元コードリーダ231から出力される情報(設定情報)を取得する。
【0155】
測定制御部222は、設定情報取得部232から出力される情報(設定情報)に基づいて、測定制御を実行する。すなわち、設定が変数で記述されている動作(コマンド)を実行する際、取得した設定情報を参照して、動作を実行する。
【0156】
このように、設定情報を二次元コード2DCから読み取って取得する構成とすることもできる。本構成によれば、統括制御装置400において、外部ファイルFの管理(ワークWとの紐づけ等)が不要になり、運用及び管理を簡素化できる。また、同じワークWを別の測定機で測定する場合、同様の手法で設定情報を取得できる。すなわち、情報の流用が可能になる。
【0157】
なお、本例では、設定情報を二次元コード2DCでコード化する場合を例に説明したが、コード化する手段は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、バーコード等の一次元コードでコード化してもよい。また、QRコード以外の二次元コードを用いて、コード化してもよい。
【0158】
また、設定情報をコード化する際、他の情報も含めてコード化してもよい。たとえば、ワークの識別情報、実行する自動プログラムの情報等を含めてコード化してもよい。実行する自動プログラムの情報を含めてコード化した場合、統括制御装置400は、制御装置200に対し測定の実行指示のみを行えばよい。
【0159】
また、本例では、二次元コード2DCをプリントしたラベルLBをワークWに貼付し、ワークWから二次元コード2DCを読み取る構成としているが、ラベルLBを貼付する対象は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、ワークWを収容するパレットにラベルLBを貼付し、パレットから二次元コード2DCを読み取る構成とすることもできる。また、二次元コード2DCをプリントする対象はラベルLBに限定されず、他のメディアにプリントする構成とすることもできる。たとえば、測定対象とするワークWの二次元コード2DCを用紙に一括してプリントし、その用紙から測定順に二次元コード2DCを読み取る構成としてもよい。また、ワークWに直接二次元コード2DCをプリントしてもよい。
【0160】
コード化以外の手法として、いわゆる光学的文字読み取り装置( Optical Character Reader:OCR)を使用して、設定情報を取得することもできる。この場合、たとえば、設定情報を文字情報としてラベルにプリントし、ワークWに貼付する。設定情報を読み取る際は、たとえば、ラベルが貼付された面を撮像し、得られた画像に対して文字認識処理を行って、設定情報を取得する。
【0161】
また、ICタグに設定情報を記録し、ICタグから設定情報を読み取る構成とすることもできる。この場合、設定情報を記録したICタグをワークWに貼付する。また、制御装置200にICタグリーダを備える。
【0162】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態では、自動プログラムの一部の動作(コマンド)の設定が変数で記述され、制御装置200が、その設定情報を外部から取得することで、所定の測定制御が行われる。実行する際の変数の情報を外部から取得するだけであるので、プログラム自体の変更はない。
【0163】
本実施の形態では、自動プログラム自体を書き換えて、制御装置200に所定の測定制御を行わせる。具体的には、自動プログラムにおける特定の動作(コマンド)についての設定を書き換え、書き換え後の自動プログラムに従って、制御装置200に測定制御を行われる。設定を書き換える構成であるため、動作の実行手順自体は変更されない。
【0164】
本実施の形態において、自動プログラムを書き換える処理は、制御装置200で行われる。制御装置200は、設定情報を含んだ外部からの書き換えの指示に従って、対象の自動プログラムを書き換える。
【0165】
なお、測定システム1の基本構成は、上記第1の実施の形態と同じである。よって、ここでは、第1の実施の形態との相違点についてのみ説明する。すなわち、自動プログラムの書き換えについてのみ説明する。
【0166】
図15は、本実施の形態の測定システムの制御装置が有する主な機能のブロック図である。
【0167】
図15に示すように、本実施の形態の制御装置200には、自動プログラムの書き換え処理を行う書き換え処理部241が備えられる。書き換え処理部241は、書き換えプログラムに従って、自動プログラムに記述された特定の動作についての設定を書き換える処理を行う。したがって、書き換えプログラムには、書き換えの対象とする動作(コマンド)についての情報、及び、書き換える内容についての情報(設定情報)が含まれる。たとえば、図5に示す例において、(2)の位置決めの動作、及び、(6)の位置決めの動作について、その設定を書き換える場合、書き換えプログラムには、書き換えの対象が、(2)の位置決めの動作、及び、(6)の位置決めの動作であることの情報と、各動作の設定について、書き換える内容(設定情報)の情報が含まれる。
【0168】
本実施の形態において、書き換えプログラムは、測定の実行指示とともに、統括制御装置400から制御装置200に送信される。制御装置200のCPU211は、受信した書き換えプログラムを実行することで、書き換え処理部241として機能し、書き換えプログラムに従って自動プログラムを書き換える処理を行う。たとえば、自動プログラムがXML等のマークアップ言語を用いて作成されている場合、該当する動作についての記述箇所を書き換える処理を行う(テキストを書き換える処理を行う。)。
【0169】
書き換えプログラムは、事前に作成されて、統括制御装置400に保持される。書き換えプログラムの作成は、統括制御装置400が行う構成としてもよいし、他の装置が行う構成としてもよい。統括制御装置400が書き換えプログラムを作成する場合、統括制御装置400には、書き換えプログラムの作成機能が備えられる。この場合、統括制御装置400は、書き換えに必要な情報(書き換え対象とする動作、及び、その設定情報)の入力をユーザから受け付け、受け付けた情報に基づいて、書き換えプログラムを生成する。他の装置で書き換えプログラムを作成する場合も同様の機能が当該装置に備えられる。
【0170】
図16は、自動プログラムを書き換えて測定制御を実行する場合の処理の流れの一例を示す図である。
【0171】
まず、統括制御装置400から制御装置200に対し、測定の実行指示が出力される。なお、制御装置200側で実行可能な自動プログラムが複数存在する場合は、実行する自動プログラムを指定して、実行指示が出力される。
【0172】
この実行指示とともに統括制御装置400から制御装置200に対し、書き換えプログラムが送信される。制御装置200は、書き換えプログラムを受信すると、受信した書き換えプログラムに従って、対象とする自動プログラムを書き換える処理を行う。この書き換えの処理に対し、処理の成否が判定される。
【0173】
書き換えが成功すると、書き換えられた自動プログラムに従って測定制御が行われる。一方、書き換えに失敗すると、所定の警告処理が行われる。たとえば、表示装置216に所定のエラーメッセージが表示される。
【0174】
このように、本実施の形態の測定システムによれば、外部から自動プログラムを書き換えることができ、書き換え後の自動プログラムに従って真円度測定機100を動作させることができる。したがって、本実施の形態の測定システムにおいても、一部の測定条件のみが異なる複数のワークを測定する場合等において、事前準備の手間を大幅に軽減できる。また、複数のワーク間で自動プログラムを共用できるので、メンテナンス性も向上できる。また、第1の実施の形態の測定システム1に対し、外部ファイルFの管理も不要となる。
【0175】
[変形例]
上記実施の形態では、統括制御装置400から書き換えプログラムを制御装置200に送信し、制御装置200が、その書き換えプログラムを実行することにより、自動プログラムを書き換える構成としているが、自動プログラムを書き換える方法は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、制御装置200側が、書き換えプログラムを有し、書き換えに必要な情報(書き換え対象とする動作、書き換える内容等)を外部から取得し、書き換えの処理を実行する構成としてもよい。
【0176】
また、上記実施の形態では、任意の動作について、その設定を書き換えられる構成としているが、設定を書き換えられる動作を限定してもよい。この場合、書き換えプログラムは、特定の動作についての設定のみを書き換える構成とされる。
【0177】
上記第1の実施の形態の測定システムの変形例は、本実施の形態の測定システムにも適宜適用可能である。
【0178】
[その他の実施の形態]
[形状測定機]
上記実施の形態では、真円度測定機を制御する制御装置、並びに、真円度測定機でワークを測定する測定システムに本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、三次元座標測定機、表面粗さ測定機、輪郭形状測定機、円筒形状測定機等を制御する制御装置にも同様に適用できる。また、これらの形状測定機でワークの形状を測定する測定システムにも本発明を適用できる。
【0179】
なお、触針を介してワークを測定する形状測定機の場合、動作(コマンド)の手順は変えずに、一部の動作の設定のみを変える構成とすることにより、次の効果が得られる。すなわち、動作手順は変えずに、一部の動作の設定のみを変えて複数のワークWを測定する場合、測定時の触針の移動経路は各ワークWにおいて同じになる。この結果、各ワークWにおいて、同じ履歴誤差を含んだ測定が可能になる。履歴誤差とは、キャリッジの駆動方向(上方向と下方向)によって生じる誤差である。コラムに沿って上下動するキャリッジは、駆動方向によって、重心の位置がずれる。この結果、駆動方向によって、キャリッジの傾きが変化する。このキャリッジの傾きが測定の誤差要因となる。各ワークWを同じ経路で測定することにより、同じ履歴誤差を含んだ測定となり、精度のばらつきを抑えた高精度な測定が可能になる。
【0180】
触針を介してワークを測定する形状測定機の場合、たとえば、位置決めの動作の設定についてのみ外部から変更できるように構成する。これにより、複数のワークWを測定する場合に、触針の移動経路を同じにして測定できる。また、これにより、各ワークWを同じ履歴誤差で測定できる。
【0181】
履歴誤差は、テーブルを回転させて測定する場合にも生じ得る。すなわち、テーブルを回転させる方向(時計回りの方向と反時計回りの方向)によって、測定に誤差が生じ得る。したがって、テーブルを回転させてワークを測定する形状測定機(たとえば、真円度測定機等)では、各ワークを同じ回転方向で回転させてワークを測定することが好ましい。この場合、たとえば、自動プログラムにおいて、テーブルの回転方向を規定し、外部からは回転角度のみを変更できるように構成する。これにより、各ワークを同じ回転方向で回転させて測定できる。
【符号の説明】
【0182】
1…測定システム、100…真円度測定機、110…ベース、112…テーブル、114…テーブル駆動部、116…検出器、116A…触針、118…検出器駆動部、118A…コラム、118、B…キャリッジ、118C…アーム、118D…検出器ホルダ、120…エアチャック、200…制御装置、211…CPU、212…ROM、213…RAM、214…補助記憶装置、215…入力装置、216…表示装置、216A…制御装置に備えられた表示装置の画面、217…入出力インターフェース、221…外部ファイル取得部、222…測定制御部、223…演算処理部、224…表示制御部、225…記録制御部、231…二次元コードリーダ、2DC…二次元コード、232…設定情報取得部、241…書き換え処理部、300…搬出入装置、400…統括制御装置、411…プロセッサ、412…メモリ、413…補助記憶装置、414…入力装置、415…表示装置、415A…統括制御装置に備えられた表示装置の画面、A1…画面内の結果表示領域、A2…画面内のコマンド表示領域、A3…画面内のコマンド内容表示領域、B1…入力ボックス(第1の入力ボックス)、B2…入力ボックス(第2の入力ボックス)、CS…ワークの図形、F…外部ファイル、LB…ラベル、LL1…引き出し線、LL2…引き出し線、W…ワーク(ベアリングの内輪)、WF1…ワークの第1の鍔部分、WF2…ワークの第2の鍔部分、WRG…ワークの軌道溝、Z1…第1の測定位置、Z2…第2の測定位置、θ…回転軸
図1
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