(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113651
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】液晶組成物および素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/12 20060101AFI20240815BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20240815BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20240815BHJP
C09K 19/32 20060101ALI20240815BHJP
C09K 19/18 20060101ALI20240815BHJP
C09K 19/16 20060101ALI20240815BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240815BHJP
【FI】
C09K19/12
C09K19/34
C09K19/30
C09K19/32
C09K19/18
C09K19/16
G02F1/13 505
G02F1/13 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189272
(22)【出願日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2023018624
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡部 英二
(72)【発明者】
【氏名】森 崇徳
(72)【発明者】
【氏名】枝連 一志
(72)【発明者】
【氏名】片野 裕子
【テーマコード(参考)】
2H088
4H027
【Fターム(参考)】
2H088EA05
2H088EA42
2H088GA02
2H088KA06
2H088KA20
2H088KA21
2H088KA26
4H027BA01
4H027BD02
4H027BD07
4H027BD10
4H027BD24
4H027BE04
4H027BE05
4H027BE06
4H027CB03
4H027CB05
4H027CE05
4H027CG05
4H027DL05
(57)【要約】
【課題】 周波数1GHzから10THzの範囲の電磁波信号制御用の素子に使用される材料として、ネマチック相の広い温度範囲、制御に使用される周波数領域での大きな屈折率異方性および小さな誘電正接(tanδ)の少なくとも1つの特性を充足する、特性バランスに優れた液晶組成物、およびこの組成物を含む素子を提供する。
【解決手段】 式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
例えば、R
1は、炭素数1から12のアルキルであり、環A
1は、1,4-フェニレンであり、L
11、L
13、L
14,L
16、Y
11およびY
12は、水素であり、L
12、はフッ素であり、L
15は、メチルである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
式(1)において、
R
1は、水素、ハロゲンまたは炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
1は、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよく;
L
11、L
12、L
13、L
14、L
15およびL
16は、水素、ハロゲン、炭素数1から3のアルキルまたは炭素数3から5のシクロアルキルであり;
Y
11またはY
12は、水素、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルであり;
L
11、L
12、L
13、L
14、L
15、L
16、Y
11およびY
12のうち少なくとも1つは炭素数1から3のアルキルである。
【請求項2】
式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物において、L11、L12、L13、L14、L15、Y11およびY12のうち少なくとも2つは水素ではなく、少なくとも1つは炭素数1から3のアルキルである化合物を含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
式(1)で表される化合物として、式(1-1)から式(1-8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
式(1-1)から式(1-8)において、
R
1’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L
15’およびL
16’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
Y
11’またはY
12’は、水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり;
L
15’、L
16’、Y
11’およびY
12’のうち少なくとも1つはメチルまたはエチルであり;
式(1-2)および式(1-6)において、
L
11’およびL
13’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(1-3)および式(1-7)において、
L
12’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(1-4)および式(1-8)において、
L
12’およびL
14’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
ここで式(1-1)および式(1-5)において、L
15’、L
16’、Y
11’およびY
12’のうち少なくとも2つは水素ではない。
【請求項4】
液晶組成物の重量に基づいて、式(1)で表される化合物の割合が5重量%から40重量%の範囲である、請求項1から3のいずれか1に記載の液晶組成物。
【請求項5】
式(2)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1に記載の液晶組成物。
式(2)において、
R
2は、水素、ハロゲンまたは炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
2は1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよく;
Z
21およびZ
22は、単結合、-C≡C-または-C≡C-C≡C-であり;
L
21、L
22、L
23およびL
24は、水素、ハロゲン、炭素数1から3のアルキルまたは炭素数3から5のシクロアルキルであり;
X
2は、-C≡C-CF
3または-C≡C-C≡Nであり;
Y
21およびY
22は、水素、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルであり;
aは、0または1であり、bは1、2または3であり、aおよびbの和は1以上3以下である。
【請求項6】
式(2)で表される化合物として、式(2-1)から式(2-8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項5に記載の液晶組成物。
式(2-1)から式(2-8)において、
R
2’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L
22’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
Y
21’およびY
22’は、水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり;
式(2-1)および式(2-2)において、
L
24’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(2-3)から式(2-6)および式(2-8)において、
L
21’、L
23’およびL
24’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(2-7)において、
L
21’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルである。
【請求項7】
液晶組成物の重量に基づいて、式(2)で表される化合物の割合が5重量%から50重量%の範囲である、請求項5または6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
式(3)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1または5に記載の液晶組成物。
式(3)において、
R
31は、水素、ハロゲン、または炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
3は、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよく;
Z
31およびZ
32は、単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、または-C≡C-C≡C-であり;
L
31、L
32、L
33、L
34、L
35、L
36およびL
37は、水素、ハロゲン、炭素数1から3のアルキル、または炭素数3から5のシクロアルキルであり;
Y
31およびY
32は、水素、ハロゲン、または炭素数1から3のアルキルであり;
cは、0または1であり、dは、0、1または2であり、cおよびdの和は0以上2以下であり;ここで、cおよびdの和が1であり、Z
31およびZ
32が単結合であるとき、L
31、L
32、L
33、L
34、L
35、L
36、L
37、Y
31およびY
32は、炭素数1から3のアルキルではない。
【請求項9】
式(3)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物において、Y31およびY32がともにフッ素である化合物を含有する、請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項10】
式(3)で表される化合物として、式(3-1)から式(3-8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項8に記載の液晶組成物。
式(3-1)、および式(3-4)から式(3-8)において、
R
31’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L
31’、L
32’、L
33’、およびL
37’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、またはシクロプロピルであり;
Y
31’およびY
32’は、水素、フッ素、塩素、メチル、またはエチルであり;
式(3-5)、式(3-7)、および式(3-8)において、
L
34’、L
35’、およびL
36’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、またはシクロプロピルであり;
式(3-2)および式(3-3)において、
R
31’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく; L
31’’、L
32’’、L
33’’、L
37’’は、水素、フッ素、塩素、またはシクロプロピルであり;
Y
31’’およびY
32’’は、水素、フッ素、または塩素であり;
式(3-3)において、
L
34’’、L
35’’、およびL
36’’は、水素、フッ素、塩素、またはシクロプロピルである。
【請求項11】
液晶組成物の重量に基づいて、式(3)で表される化合物の割合が30重量%から90重量%の範囲である、請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項12】
波長589nmにおける25℃の屈折率異方性が0.35以上である、請求項1または5に記載の液晶組成物。
【請求項13】
1MHz未満の周波数の範囲における25℃の誘電率異方性が5以上である、請求項1または5に記載の液晶組成物。
【請求項14】
1GHzから10THzの少なくとも1つの周波数の範囲における25℃の誘電率異方性が0.50から3.0の範囲である、請求項1または5に記載の液晶組成物。
【請求項15】
光学活性化合物を含む、請求項1または5に記載の液晶組成物。
【請求項16】
重合性化合物を含む、請求項1または5に記載の液晶組成物。
【請求項17】
酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び二色性色素の少なくとも1つを含有する、請求項1または5に記載の液晶組成物。
【請求項18】
請求項1または5に記載の液晶組成物を含有する素子であって、液晶分子の配向方向を可逆的に変えることにより誘電率を可逆的に制御可能な、スイッチングに使用される素子。
【請求項19】
請求項1または5に記載の液晶組成物を含有する、1GHzから10THzの周波数の範囲の電磁波制御に使用される素子。
【請求項20】
請求項1または5に記載の液晶組成物を含有する、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネマチック相および正の誘電率異方性を有する液晶組成物およびそれを含む素子に関する。特に周波数1GHzから10THzの範囲の電磁波制御に使用される液晶組成物およびそれを含む素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用途に多く用いられている液晶組成物の新規用途として、液晶組成物を用いた電磁波の送受信を行うアンテナなど高周波技術への応用が注目されている。
【0003】
具体的に周波数1GHzから10THzの範囲の電磁波制御に使用される素子として、ミリ波帯またはマイクロ波帯アンテナ、および赤外線レーザー素子等が挙げられる。これらの素子は種々の方式が検討されているが、機械的な可動部が無いため故障が少ないと考えられる液晶組成物を用いた方式が注目されている。
【0004】
誘電率異方性を有する液晶組成物は、配向分極の緩和が行われる周波数(緩和周波数)より低い周波数(数10kHzから数100MHz程度以下)では、液晶組成物の配向方向に対し垂直方向および水平方向の誘電率が異なる。
緩和周波数より高い周波数、すなわちマイクロ波からテラヘルツ波(凡そ10THz程度)の範囲においても、値は小さくなるが、液晶組成物の配向方向に対し垂直方向および水平方向の誘電率の差が見られ、誘電率異方性がある(非特許文献1)。そのため液晶組成物は、外場(電界)に応じて分子の配向方向を変化させることにより、一方向における誘電率を変化させることができる。
【0005】
この性質を利用すれば、液晶組成物は、外部からの電界に応じて分子の配向が変化し、誘電率を変化させることができる。例えば、高周波伝送線路の伝送特性を外部から電気的に制御できるマイクロ波デバイスの実現が可能になる。このようなデバイスは、導波管にネマチック液晶組成物を充填した電圧制御ミリ波帯可変移相器や、マイクロストリップ線路の誘電体基板としてネマチック液晶組成物を用いたマイクロ波・ミリ波帯の広帯域可変移相器などが報告されている(特許文献1および2)。
【0006】
また近年、光を含む電磁波に対して自然界の物質には無い振る舞いを示すメタマテリアル技術の研究が進んでいる。その特性から高周波デバイス、マイクロ波デバイス又はアンテナなどの技術分野へ応用され、様々な電磁波制御素子が考案されている。メタマテリアルを用いた伝送線路のキャパシタンス制御材料として、外部からの電界に応じて分子の配向が変化し、誘電率を変化させることができる液晶組成物の利用も考えられている。
【0007】
このような電磁波制御に使用される素子は、高利得かつ低損失であるなどの特性を有する事が望ましい。高周波信号の位相制御を考えると、液晶組成物に求められる特性は、位相制御に使用される周波数領域において、大きな位相制御を可能とする誘電率異方性が大きなこと、および液晶組成物の電磁波信号の吸収エネルギーに比例する誘電正接(tanδ)が小さなことが求められる(非特許文献1)。
【0008】
液晶組成物は誘電体であるため外場(電界)に対し分極(誘電分極)を生じる。誘電率は電界に対する誘電体の応答を示す物性量であり、誘電率の大きさは誘電分極に関係する。誘電分極が生じるメカニズムは大きく3つに分けられる。電子分極、イオン分極、および配向分極である。配向分極は双極子モーメントの配向に伴う分極であり、上記に示すように数100kHzから数100MHz程度の周波数において緩和し、配向分極は小さくなる。その結果、高周波(マイクロ波からテラヘルツ波(凡そ10THz程度)の範囲)における、誘電分極は電子分極及びイオン分極のみが関与することになる。なお損失のない誘電体においては誘電率と屈折率にはε=n2の関係があり、液晶組成物のイオン分極を小さいと考えるならば、電子分極に起因する可視光における屈折率異方性(Δn)が大きいほど高周波領域における誘電率異方性(Δε)もより大きくなると考えられる(非特許文献2)。そのため液晶組成物としては大きな屈折率異方性を持つことが好ましい。
【0009】
また、当該素子のスイッチング特性および高エネルギー効率を実現するために、低い駆動電圧であることが望ましい。そのため液晶組成物としては低周波数(緩和周波数より低い周波数)においても大きな誘電率異方性を持つことが好ましい。
【0010】
そのほかに、電磁波制御に使用される素子は、使用できる温度範囲が広いこと、素子の応答時間が短いことなどが求められ、液晶組成物の特性としては、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、熱に対する安定性、および小さな粘度なども求められる。
【0011】
従来の当該素子に使用される液晶組成物は、下記の特許文献3および4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開2017/201515号
【特許文献2】国際公開2017/208996号
【特許文献3】特開2004-285085号公報
【特許文献4】特開2011-74074号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】EKISHO、23巻(1号)、(2019年)、51-55頁
【非特許文献2】誘電体現象論 社団法人 電気学会 株式会社オーム社 1973年7月25日 92-95頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
電磁波制御に使用される素子用の材料として、液晶組成物はネマチック相の高い上限温度およびネマチック相の低い下限温度を有しながら、電磁波制御を行う周波数領域での大きな誘電率異方性(大きな屈折率異方性)、小さな誘電正接(tanδ)、および駆動電圧の低減のための低周波数における大きな誘電率異方性を有し、さらに好ましくは、小さな粘度、駆動周波数領域での大きな比抵抗および熱に対する安定性を有することが要求されている。
【0015】
しかし、このような電磁波制御に使用される素子へ使用するための液晶組成物として、従来のディスプレイ用途等で使用される液晶組成物は特性面で不十分である。それらは高い挿入損失(insertion loss)および/または不十分な位相シフト等、高周波制御用に使用するには不十分な特性だからである。
【0016】
電磁波制御に使用させる素子用の液晶材料の開発はまだ発展途上であり、高周波制御の特性を改善するために、そのような素子の最適化を可能にする新規の化合物を開発するための試みが常になされている。そして電磁波制御に使用される素子用の材料として使用するために、特異な液晶媒体が必要とされる。
【0017】
本発明の目的は、周波数1GHzから10THzの範囲の電磁波制御用の素子に使用される材料として、上記に示した要求特性が良好で、かつ特性バランスに優れた液晶組成物、この組成物を含む素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明者らは鋭意検討した結果、第一成分として、特定の構造を有する液晶性化合物である式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
本発明は、下記の項などである。
【0020】
項1.式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する液晶組成物。
式(1)において、
R
1は、水素、ハロゲンまたは炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
1は、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよく;
L
11、L
12、L
13、L
14、L
15およびL
16は、水素、ハロゲン、炭素数1から3のアルキルまたは炭素数3から5のシクロアルキルであり;
Y
11またはY
12は、水素、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルであり;
L
11、L
12、L
13、L
14、L
15、L
16、Y
11およびY
12のうち少なくとも1つは炭素数1から3のアルキルである。
【0021】
項2.式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物において、L11、L12、L13、L14、L15、Y11およびY12のうち少なくとも2つは水素ではなく、少なくとも1つは炭素数1から3のアルキルである化合物を含有する、項1に記載の液晶組成物。
【0022】
項3.式(1)で表される化合物として、式(1-1)から式(1-8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1または2に記載の液晶組成物。
式(1-1)から式(1-8)において、
R
1’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L
15’およびL
16’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
Y
11’またはY
12’は、水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり;
L
15’、L
16’、Y
11’およびY
12’のうち少なくとも1つはメチルまたはエチルであり;
式(1-2)および式(1-6)において、
L
11’およびL
13’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(1-3)および式(1-7)において、
L
12’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(1-4)および式(1-8)において、
L
12’およびL
14’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
ここで式(1-1)および式(1-5)において、L
15’、L
16’、Y
11’およびY
12’のうち少なくとも2つは水素ではない。
【0023】
項4.液晶組成物の重量に基づいて、式(1)で表される化合物の割合が5重量%から40重量%の範囲である、項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0024】
項5.式(2)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(2)において、
R
2は、水素、ハロゲンまたは炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
2は1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよく;
Z
21およびZ
22は、単結合、-C≡C-または-C≡C-C≡C-であり;
L
21、L
22、L
23およびL
24は、水素、ハロゲン、炭素数1から3のアルキルまたは炭素数3から5のシクロアルキルであり;
X
2は、-C≡C-CF
3または-C≡C-C≡Nであり;
Y
21およびY
22は、水素、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルであり;
aは、0または1であり、bは1、2または3であり、aおよびbの和は1以上3以下である。
【0025】
項6.式(2)で表される化合物として、式(2-1)から式(2-8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項5に記載の液晶組成物。
式(2-1)から式(2-8)において、
R
2’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L
22’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
Y
21’およびY
22’は、水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり;
式(2-1)および式(2-2)において、
L
24’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(2-3)から式(2-6)および式(2-8)において、
L
21’、L
23’およびL
24’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(2-7)において、
L
21’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルである。
【0026】
項7.液晶組成物の重量に基づいて、式(2)で表される化合物の割合が5重量%から50重量%の範囲である、項5または6に記載の液晶組成物。
【0027】
項8.式(3)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(3)において、
R
31は、水素、ハロゲン、または炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
3は、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよく;
Z
31およびZ
32は、単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、または-C≡C-C≡C-であり;
L
31、L
32、L
33、L
34、L
35、L
36およびL
37は、水素、ハロゲン、炭素数1から3のアルキル、または炭素数3から5のシクロアルキルであり;
Y
31およびY
32は、水素、ハロゲン、または炭素数1から3のアルキルであり;
cは、0または1であり、dは、0、1または2であり、cおよびdの和は0以上2以下であり;ここで、cおよびdの和が1であり、Z
31およびZ
32が単結合であるとき、L
31、L
32、L
33、L
34、L
35、L
36、L
37、Y
31およびY
32は、炭素数1から3のアルキルではない。
【0028】
項9.式(3)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物において、Y31およびY32がともにフッ素である化合物を含有する、項8に記載の液晶組成物。
【0029】
項10.式(3)で表される化合物として、式(3-1)から式(3-8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項8に記載の液晶組成物。
式(3-1)、および式(3-4)から式(3-8)において、
R
31’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L
31’、L
32’、L
33’、およびL
37’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、またはシクロプロピルであり;
Y
31’およびY
32’は、水素、フッ素、塩素、メチル、またはエチルであり;
式(3-5)、式(3-7)、および式(3-8)において、
L
34’、L
35’、およびL
36’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、またはシクロプロピルであり;
式(3-2)および式(3-3)において、
R
31’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;L
31’’、L
32’’、L
33’’、L
37’’は、水素、フッ素、塩素、またはシクロプロピルであり;
Y
31’’およびY
32’’は、水素、フッ素、または塩素であり;
式(3-3)において、
L
34’’、L
35’’、およびL
36’’は、水素、フッ素、塩素、またはシクロプロピルである。
【0030】
項11.液晶組成物の重量に基づいて、式(3)で表される化合物の割合が30重量%から80重量%の範囲である、項8から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0031】
項12.式(4)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する項1から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(4)において、
R
41およびR
42、水素、ハロゲン、または炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
4は、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよく;
Z
41およびZ
42は、単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、または-C≡C-C≡C-であり;
L
41、L
42、L
43、L
44、L
45、L
46、L
47、L
48およびL
49は、水素、ハロゲン、炭素数1から3のアルキルまたは炭素数3から5のシクロアルキルであり;
eは、0または1であり、fは、0、1または2であり、eおよびfの和は0以上2以下である。
【0032】
項13.式(4)で表される化合物として、式(4-1)から式(4-6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項12に記載の液晶組成物。
式(4-1)から式(4-6)において、
R
41’およびR
42’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH
2)
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L
47’、L
48’およびL
49’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(4-1)において、
L
44’およびL
46’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(4-2)において、
L
42’およびL
45’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(4-3)および式(4-6)において、
L
42’、L
44’、L
45’およびL
46’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルである。
【0033】
項14.液晶組成物の重量に基づいて、式(4)で表される化合物の割合が10重量%から40重量%の範囲である、項12または13に記載の液晶組成物。
【0034】
項15.波長589nmにおける25℃の屈折率異方性が0.35以上である、項1から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
項16.1MHz未満の周波数の範囲における25℃の誘電率異方性が5以上である、項1から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0036】
項17.1GHzから10THzの少なくとも1つの周波数の範囲における25℃の誘電率異方性が0.50から3.0の範囲である、項1から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0037】
項18.光学活性化合物を含む、項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0038】
項19.重合性化合物を含む、項1から18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0039】
項20.酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び二色性色素の少なくとも1つを含有する、項1から19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0040】
項21.項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する素子であって、液晶分子の配向方向を可逆的に変えることにより誘電率を可逆的に制御可能な、スイッチングに使用される素子。
【0041】
項22.項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する、1GHzから10THzの周波数の範囲の電磁波制御に使用される素子。
【0042】
項23.項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズ。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、ネマチック相の高い上限温度およびネマチック相の低い下限温度を有しながら、電磁波制御を行う周波数領域での大きな誘電率異方性、および小さな誘電正接(tanδ)のような、組成物の高周波特性を充足させることができる。さらに、駆動電圧の低減のための低周波数における大きな誘電率異方性、小さな粘度、駆動周波数領域での大きな比抵抗、および熱に対する安定性のような、組成物の特性の少なくとも一つをさらに充足させ、より好ましい液晶組成物を提供することが可能となる。本発明の液晶組成物を使用した素子は、広い温度範囲で電磁波制御することができる優れた特性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶組成物」および「電磁波制御素子」の用語をそれぞれ「組成物」および「素子」と略すことがある。「電磁波制御素子」は電磁波制御パネルおよび電磁波制御モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相のような液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが、液晶相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に混合される化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4-シクロヘキシレンや1,4-フェニレンのような六員環を有し、その分子(液晶分子)は棒状(rod like)である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。アルケニルを有する液晶性化合物は、その意味では重合性化合物に分類されない。
【0045】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。液晶性化合物の割合(含有量)は、この液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。この液晶組成物に、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線および熱に対する安定剤、消光剤、色素(二色性色素)、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、磁性化合物のような添加物が必要に応じて添加される。添加物の割合(添加量)は、液晶性化合物の割合と同様に、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0046】
「ネマチック相の上限温度」を「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
【0047】
式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「置き換えられてもよい」に関する「少なくとも1つの」は、位置だけでなく、その個数についても制限なく選択してよいことを意味する。
【0048】
上記の化合物(1z)を例にして説明する。式(1z)において、六角形で囲んだαおよびβの記号はそれぞれ環αおよび環βに対応し、六員環、縮合環のような環を表す。添え字‘x’が2のとき、2つの環αが存在する。2つの環αが表す2つの基は、同一であってもよく、または異なってもよい。このルールは、添え字‘x’が2より大きいとき、複数の環αに適用される。このルールは、結合基Zのような、他の記号にも適用される。環βの一辺を横切る斜線は、環β上の任意の水素が置換基(-Sp-P)で置き換えられてもよいことを表す。添え字‘y’は置き換えられた置換基の数を示す。添え字‘y’が0のとき、そのような置き換えはない。添え字‘y’が2以上のとき、環β上には複数の置換基(-Sp-P)が存在する。この場合にも、「同一であってもよく、または異なってもよい」のルールが適用される。なお、このルールは、Raの記号を複数の化合物に用いた場合にも適用される。
【0049】
式(1z)において、例えば、「RaおよびRbは、アルキル、アルコキシ、またはアルケニルである」のような表現は、RaおよびRbが独立して、アルキル、アルコキシ、およびアルケニルの群から選択されることを意味する。ここで、Raによって表される基とRbによって表される基が同一であってもよく、または異なってもよい。このルールは、Raの記号を複数の化合物に用いた場合にも適用される。このルールは、複数のRaを1つの化合物に用いた場合にも適用される。
【0050】
式(1z)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1z)」と略すことがある。「化合物(1z)」は、式(1z)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「式(1z)および式(2z)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物」の表現は、化合物(1z)および化合物(2z)の群から選択された少なくとも1つの化合物を意味する。
【0051】
「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数は任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できる。「少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよい」の表現が使われることがある。この場合、-CH2-CH2-CH2-は、隣接しない-CH2-が-O-で置き換えられることによって-O-CH2-O-に変換されてもよい。しかしながら、隣接した-CH2-が-O-で置き換えられることはない。この置き換えでは-O-O-CH2-(ペルオキシド)が生成するからである。
【0052】
液晶性化合物のアルキルは、直鎖アルキルまたは分岐鎖アルキルであり、特にことわりがない限りシクロアルキルを含まない。直鎖アルキルは、分岐鎖アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルのような末端基についても同様である。1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。2-フルオロ-1,4-フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、ピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイルのような、非対称な環の二価基にも適用される。なお、好ましいテトラヒドロピラン-2,5-ジイルは、上限温度を上げるために右向き(R)である。
【0053】
ベンゾ[b]チオフェン-2,5-ジイル、およびベンゾ[b]チオフェン-2,6-ジイルはそれぞれ以下の構造式で表される。
【0054】
これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられる場合は、合成し易さから、以下の構造であることが好ましい。
Rは、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルである。
【0055】
カルボニルオキシのような結合基も同様に、-COO-であってもよいし、-OCO-であってもよい。
【0056】
成分化合物の化学式において、末端基R1の記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのR1が表わす基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(1-1)のR1’がメチルであり、化合物(1-2)のR1’がエチルであるケースがある。化合物(1-1)のR1’がエチルであり、化合物(1-2)のR1’がプロピルであるケースもある。このルールは、R2、R31、R32などの記号にも適用される。
【0057】
本発明は、次の項も含む。(a)光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線および熱に対する安定剤、消光剤、色素(二色性色素)、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、磁性化合物のような添加物から選択された少なくとも1つをさらに含有する上記の組成物。(b)上記の組成物を含有する素子。(c)上記の組成物を含有し、1GHzから10THzのいずれかの周波数の電磁波信号の制御に使用される素子。(d)重合性化合物をさらに含有する上記の組成物、およびこの組成物を含有する素子。(e)ネマチック相を有する組成物として、上記の組成物の使用。(f)上記の組成物に光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0058】
本発明の液晶組成物は、1GHzから10THzの範囲の電磁波信号の周波数領域で大きな誘電率異方性および小さな誘電正接(tanδ)を有する。その為、1GHzから10THzの範囲のだけでなく、1GHzから50GHzの範囲の電磁波(マイクロ波)に関わる素子としても好適に使用する事ができる。
【0059】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、好ましい成分化合物を示す。第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0060】
第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は、組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)から選択された液晶性化合物の他に、その他の液晶性化合物、添加物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線および熱に対する安定剤、消光剤、色素(二色性色素)、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、極性化合物などである。
【0061】
組成物Bは、実質的に、化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)から選択された液晶性化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物が添加物を含有してもよいが、その他の液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって特性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0062】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表1にまとめる。表1の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がほぼゼロであるか、またはゼロに近いことを意味する。
【0063】
【0064】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。
化合物(1)は、主に液晶組成物の屈折率異方性を上げ、誘電率異方性を上げ、高周波でのtanδを下げる効果がある。化合物(1)のベンゼン環の置換基の数を制御することにより、上限温度および下限温度はある程度制御可能である。すなわち、置換基の数を少なくすると、上限温度および下限温度は高くなる傾向にある。置換基の数を多くすると、上限温度および下限温度は低くなる傾向にある。液晶組成物の下限温度を下げる観点で、置換基の数は多い方が好ましい。化合物(1)の比抵抗は、総じて低い傾向にある。
化合物(2)は、主に液晶組成物の屈折率異方性を上げ、誘電率異方性を化合物(1)よりも上げる効果がある。高スイッチング特性および高エネルギー効率を実現するために、誘電率異方性は大きい方が好ましい。化合物(2)のaおよびbの和の選択により、上限温度、粘度はある程度制御可能である。すなわち、aおよびbの和を小さくすると、上限温度は低くなり、粘度は小さくなる傾向にある。aおよびbの和を大きくすると、上限温度は高くなり、粘度は大きくなる傾向にある。
化合物(3)は、主に液晶組成物の屈折率異方性を上げ、誘電率異方性を上げる効果がある。化合物に含まれる環数(式(3)におけるcおよびdの和)と上限温度および粘度の関係は、化合物(2)と同様の傾向である。化合物(3)の比抵抗は、総じて低い傾向にある。
化合物(4)は、主に屈折率異方性を上げながら、ネマチック相の温度範囲を拡げる効果がある。化合物に含まれる環数(式(4)におけるeおよびfの和)と上限温度および粘度の関係は、化合物(2)および化合物(3)と同様の傾向であるが、化合物(4)の方が化合物(2)および化合物(3)よりも上限温度を上げる、下限温度を下げる、および粘度を下げる効果はより大きい傾向にある。
【0065】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の好ましい組合せは、化合物(1)+化合物(2)、化合物(1)+化合物(3)または化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)である。このほか、化合物(1)のみからなる組成物も調製できる。特に好ましい組合せは、より屈折率異方性および誘電率異方性を上げ、粘度を下げる観点から、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)である。
【0066】
液晶組成物の重量に基づいて、化合物(1)の好ましい割合は、屈折率異方性を上げ、Δε@28GHzを大きく維持し、tanδ@28GHzを小さくしながら、ネマチック相の温度範囲を拡げるために、約5重量%から約40重量%の範囲である。さらに好ましい割合は約10重量%から約30重量%の範囲である。特に好ましい割合は約10重量%から約25重量%の範囲である。
【0067】
液晶組成物の重量に基づいて、化合物(2)の好ましい割合は、下限温度の上昇を抑えながら、誘電率異方性を上げ、屈折率異方性を上げるために、約5重量%から約50重量%の範囲である。さらに好ましい割合は約5重量%から約40重量%の範囲である。特に好ましい割合は約10重量%から約40重量%の範囲である。
【0068】
液晶組成物の重量に基づいて、化合物(3)の好ましい割合は、屈折率異方性を上げ、Δε@28GHzを大きくしながら、ネマチック相の温度範囲を拡げるために、約30重量%から約90重量%の範囲である。さらに好ましい割合は約30重量%から約85重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約80重量%の範囲である。
【0069】
液晶組成物の重量に基づいて、化合物(4)の好ましい割合は、屈折率異方性を上げながら、ネマチック相の温度範囲を拡げるために約5重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約30重量%以下である。さらに好ましい割合は約5重量%から約20重量%の範囲である。特に好ましい割合は約5重量%から約10重量%の範囲である。
【0070】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。
R1、R2、R31およびR41は、水素、ハロゲン、または炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH2)2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよい。
【0071】
好ましいR1、R2、R31またはR41は、紫外線または熱に対する安定性を上げるためには、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、またはエトキシが好ましい。粘度を下げるためには、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、メトキシ、またはエトキシが好ましい。
【0072】
R1‘、R2’、R31’およびR41’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH2)2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよい。
【0073】
aは0または1であり、bは1、2または3であり、aおよびbの和は、1以上3以下である。好ましいaは、屈折率異方性を上げるため、および粘度を下げるために0であり、下限温度を下げるために1である。好ましいbは、下限温度を下げるため、および粘度を下げるために1であり、屈折率異方性を上げるため、および上限温度を上げるために2または3である。aおよびbの好ましい和は、屈折率異方性を上げるため、および上限温度を上げるために2または3である。
【0074】
cは、0または1であり、dは0、1または2であり、cよびd和は、0以上2以下である。好ましいcは、屈折率異方性を上げるため、および粘度を下げるために0であり、下限温度を下げるために1である。好ましいdは、下限温度を下げるため、および粘度を下げるために0であり、屈折率異方性を上げるため、および上限温度を上げるために1または2である。cおよびdの好ましい和は、屈折率異方性を上げるため、および下限温度を下げるために0または1である。
【0075】
eは、0または1であり、fは0、1または2であり、eおよびfの和は、0以上2以下である。好ましいeは、屈折率異方性を上げるため、および粘度を下げるために0である。好ましいfは、下限温度を下げるため、および粘度を下げるために0であり、屈折率異方性を上げるため、および上限温度を上げるために1または2である。eおよびfの好ましい和は、下限温度を下げるため、および粘度を下げるため0であり、屈折率異方性を上げるため、および上限温度を上げるために1または2である。
【0076】
Z21およびZ22は、単結合、-C≡C-または-C≡C-C≡C-である。好ましいZ21およびZ22は、粘度を下げるために単結合であり、屈折率異方性を上げるために-C≡C-または-C≡C-C≡C-である。
【0077】
Z31およびZ32は、単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-または-C≡C-C≡C-であるが、そのうち少なくとも1つは単結合ではない。好ましいZ31またはZ32は、粘度を下げるために単結合であり、屈折率異方性を上げるために-CH=CH-または-C≡C-である。
【0078】
Z41およびZ42は、単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-または-C≡C-C≡C-である。好ましいZ41またはZ42は、粘度を下げるために単結合であり、屈折率異方性を上げるために-C≡C-または-C≡C-C≡C-である。
【0079】
環A1は、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよい。
好ましい環A1は、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルである。さらに好ましくは、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンである。
【0080】
環A2、環A3および環A4は、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環上の少なくとも1つの水素は、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルで置き換えられてもよい。
好ましい環A2、環A3または環A4は、1,4-シクロヘキシレン、ピリミジン-2,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイルまたはピリジン-2,5-ジイルである。さらに好ましくは、1,4-シクロヘキシレンである。
【0081】
L11、L12、L13、L14、L15、L16、L21、L22、L23、L24、L31、L32、L33、L34、L35、L36、L37、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L47、L48およびL49は、水素、ハロゲン、炭素数1から3のアルキルまたは炭素数3から5のシクロアルキルである。好ましいL11、L12、L13、L14、L15、L16、L21、L22、L23、L24、L31、L32、L33、L34、L35、L36、L37、L41、L42、L43、L44、L45、L46、L47、L48またはL49は、上限温度を上げるために水素であり、誘電率異方性を上げるためにフッ素または塩素であり、下限温度を下げるためにフッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルである。
【0082】
L11’、L12’、L13’およびL14’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルである。
【0083】
L15’、L16’、L21’、L22’、L23’、L24’、L31’、L32’、L33’、L34’、L35’、L36’、L37’、L42’、L44’、L45’、L46’、L47’、L48’およびL49’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルである。
【0084】
Y11、Y12、Y21、Y22、Y31およびY32は、水素、ハロゲンまたは炭素数1から3のアルキルである。好ましいY11、Y12、Y21またはY22は、屈折率異方性を上げるために水素であり、誘電率異方性を上げるためにフッ素または塩素であり、下限温度を下げるためにメチルまたはエチルである。
【0085】
Y11’、Y12’、Y21’、Y22’、Y31’およびY32’は、水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルである。
【0086】
式(1)において、L11、L12、L13、L14、L15、Y11およびY12のうち、少なくとも1つは炭素数1から3のアルキルである。L11、L12、L13、L14、L15、Y11およびY12のうち、少なくとも2つは水素ではないことが好ましい。好ましくは、下限温度を下げるために、L11、L12、L13およびL14のうち、1つまたは2つがフッ素またはメチルであり、L15、L16、Y11およびY12のうち1または2つがメチルである。
【0087】
式(3)において、cおよびdの和が1であり、Z31およびZ32が単結合であるとき、L31、L32、L33、L34、L35、L36、L37、Y31およびY32は、炭素数1から3のアルキルではない。
【0088】
液晶組成物全体の誘電率異方性を大きくするためには、L11およびL12、L14およびY11、L15およびY12、L21およびL22、L24およびY21、L31およびL32。L34およびL35、L37およびL38,L41およびL42、L44およびL45またはL47およびL48が同時にハロゲンでないことが好ましい。
【0089】
X2は、-C≡C-CF3または-C≡C-C≡Nである。好ましいX2は、屈折率異方性を上げるために、-C≡C-C≡Nである。
【0090】
第五に、好ましい成分化合物を示す。
好ましい化合物(1)は、化合物(1-1)から化合物(1-8)である。
【0091】
【0092】
式(1-1)から式(1-8)において、
R1’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH2)2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L15’およびL16’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
Y11’またはY12’は、水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり;
L15’、L16’、Y11’およびY12’のうち少なくとも1つはメチルまたはエチルであり;
式(1-2)および式(1-6)において、
L11’およびL13’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(1-3)および式(1-7)において、
L12’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(1-4)および式(1-8)において、
L12’およびL14’は、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
ここで式(1-1)および式(1-5)において、L15’、L16’、Y11’およびY12’のうち少なくとも2つは水素ではない。
【0093】
化合物(1)の少なくとも1つが、化合物(1-1)、化合物(1-3)、化合物(1-5)または化合物(1-7)であることが好ましい。
【0094】
好ましい化合物(2)は、化合物(2-1)から化合物(2-8)である。
【0095】
【0096】
式(2-1)から式(2-8)において、
R2’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH2)2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L22’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
Y21’およびY22’は、水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり;
式(2-1)および式(2-2)において、
L24’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(2-3)から式(2-6)および式(2-8)において、
L21’、L23’およびL24’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(2-7)において、
L21’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルである。
【0097】
化合物(2)の少なくとも1つが、化合物(2-1)、化合物(2-3)または化合物(2-4)であることが好ましい。
【0098】
好ましい化合物(3)は、化合物(3-1)から化合物(3-8)である。
【0099】
【0100】
式(3-1)、および式(3-4)から式(3-8)において、
R31’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH2)2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L31’、L32’、L33’、およびL37’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、またはシクロプロピルであり;
Y31’はおよびY32’は、水素、フッ素、塩素、メチル、またはエチルであり;
式(3-5)、式(3-7)、および式(3-8)において、
L34’、L35’、およびL36’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、またはシクロプロピルであり;
式(3-2)および式(3-3)において、
R31’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH2)2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;L31’’、L32’’、L33’’、L37’’は、水素、フッ素、塩素、またはシクロプロピルであり;
Y31’’およびY32’’は、水素、フッ素、または塩素であり;
式(3-3)において、
L34’’、L35’’、およびL36’’は、水素、フッ素、塩素、またはシクロプロピルである。
【0101】
化合物(3)の少なくとも1つが、化合物(3-1)、化合物(3-2)、化合物(3-3)、化合物(3-4)、化合物(3-5)または化合物(3-6)であることが好ましい。化合物(3)の少なくとも2つが、化合物(3-1)および化合物(3-2)、化合物(3-1)および化合物(3-3)、化合物(3-1)および化合物(3-4)、化合物(3-1)および化合物(3-5)または化合物(3-1)および化合物(3-6)の組み合わせであることがより好ましい。
【0102】
好ましい化合物(4)は、化合物(4-1)から化合物(4-6)である。
【0103】
【0104】
式(4-1)から式(4-6)において、
R41’およびR42’は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-(CH2)2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく;
L47’、L48’およびL49’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(4-1)において、
L44’およびL46’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(4-2)において、
L42’およびL45’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルであり;
式(4-3)および式(4-6)において、
L42’、L44’、L45’およびL46’は、水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはシクロプロピルである。
【0105】
化合物(4)の少なくとも1つが、化合物(4-2)、化合物(4-3)、化合物(4-4)または化合物(4-5)であることが好ましい。
【0106】
第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線および熱に対する安定剤、消光剤、色素(二色性色素)、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、帯電防止剤、極性化合物などである。以下において、これらの添加物の混合割合は、特に断らない場合は、液晶組成物の重量に基づく割合(重量)である。
【0107】
使用する添加物の組み合わせは任意であり、例えば異なる種類の酸化防止剤を組み合わせて用いる事も可能である。例えば酸化防止剤と紫外線吸収剤、さらに安定化剤を組み合わせて使用するように、異なる種類の添加剤を組み合わせて使用することも可能である。
【0108】
液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性化合物が組成物に添加される。このような化合物の例は、化合物(5-1)から化合物(5-5)である。光学活性化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。
【0109】
【0110】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に添加される。酸化防止剤の好ましい例は、tが1から9の整数である化合物(6)などである。
【0111】
化合物(6)において、好ましいtは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいtは7である。tが7である化合物(6)は、揮発性が低いので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0112】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。光安定剤の好ましい例は、化合物(7-1)から化合物(7-16)などである。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0113】
【0114】
紫外線および熱に対する安定剤として好ましい添加物は、化合物(8)で示すアミノ-トラン化合物などである(米国登録特許第6495066号)。
【0115】
式(8)において、RmおよびRnは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニルまたは炭素数2から12のアルケニルオキシであり;Xaは、-NO2、-C≡N、-N=C=S、フッ素、または-OCF3であり;YaおよびYbは、水素またはフッ素である。これらの安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために1から20重量%の範囲であり、さらに好ましくは5から10重量%の範囲である。
【0116】
消光剤は、液晶性化合物が吸収した光エネルギーを受容し、熱エネルギーに変換することにより、液晶性化合物の分解を防止する化合物である。これらの消光剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、下限温度を下げるために約20000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0117】
GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。色素の好ましい割合は、約0.01重量%から約10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に添加される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、表示不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0118】
高分子安定化された素子に適合させるために重合性化合物が組成物に添加される。重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。さらに好ましい例は、アクリレートまたはメタクリレートの誘導体である。重合性化合物の好ましい割合は、その効果を得るために、約0.05重量%以上であり、駆動温度の上昇を防ぐために約20重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から約10重量%の範囲である。重合性化合物は紫外線照射により重合する。光重合開始剤などの重合開始剤の存在下で重合させてもよい。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocur1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。光重合開始剤の好ましい割合は、重合性化合物の重量100重量部に基づいて約0.1重量部から約5重量部の範囲である。さらに好ましい割合は、約1重量部から約3重量部の範囲である。
【0119】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-tert-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、フェノチアジンなどである。
【0120】
この明細書において極性化合物は、極性をもつ有機化合物であり、イオン結合を有する化合物は含まれない。酸素、硫黄、および窒素のような原子は、より電気的に陰性であり、部分的な負電荷をもつ傾向にある。炭素および水素は中性であるか、または部分的な正電荷をもつ傾向がある。極性は、化合物中の別種の原子間で部分電荷が均等に分布しないことから生じる。例えば、極性化合物は、-OH、-COOH、-SH、-NH2、>NH、>N-のような部分構造の少なくとも1つを有する。
【0121】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。化合物(1)の合成法は、実施例の項に記載する。その他の化合物はオーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0122】
最後に、組成物の用途を説明する。本発明の組成物は、約-10℃以下の下限温度、および約70℃以上の上限温度を有するため、ネマチック相を有する組成物としての使用だけでなく、光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0123】
配向している液晶組成物は、その垂直方向および水平方向の誘電率が異なる。そのため誘電率異方性を特性として有する。
【0124】
アンテナ素子に限らず、液晶組成物を使用する素子は、一般的に2枚の基板が液晶組成物を層として挟んでできた素子で構成されており、その界面にある配向膜により、一方向に液晶分子が並んでいる(配向している)。外場が無い場合、素子内の液晶分子は配向膜の配向規制力により一方向に分子が並んでいるが、外場が加わると、素子内の液晶分子は配向膜の並びから外れて外場の方向に向くようになる。また再び外場を無くすと、配向膜の配向規制力により、液晶分子は元の一方向に並んだ状態に戻る。このようにして素子内の液晶分子の向きを外場の向きや大きさで制御することができ、それにより一方向に対する素子内の液晶分子の傾き(角度)を制御することができる。液晶組成物は、誘電率異方性を有するため、一方向に対する素子内の液晶分子の角度を制御することにより、一方向に対する素子内の液晶組成物の層が有する誘電率を制御することができる。例えば外場がない場合の一方向の素子内の液晶組成物の層の誘電率が液晶組成物の垂直方向の誘電率であり、それに外場を一方向に対し垂直に加えることにより、それを液晶組成物の水平方向の誘電率まで変化させることができる。
【0125】
このように、本発明の液晶組成物は、液晶分子の配向方向を可逆的に変えることにより誘電率を可逆的に制御可能なスイッチング素子としての使用が可能である。
【0126】
素子内の液晶分子の角度を制御は、外場として電場を使用して行うことができる。液晶分子を駆動するために必要な電圧が駆動電圧である。液晶分子の角度を制御するには、液晶組成物の1MHz未満の周波数の範囲における25℃の誘電率異方性が、少なくとも2より大きいことが求められる。駆動電圧をより低減するためには、1MHz未満の周波数の範囲における25℃の誘電率異方性をより大きくする必要があり、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上である。
【0127】
既述の通り、可視光(例えば、波長589nm)における屈折率異方性(Δn)が大きいほど高周波領域(マイクロ波からテラヘルツ波(凡そ10THz程度)の範囲)における誘電率異方性(Δε)もより大きくなる。本願発明の一般式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物は、25℃における屈折率異方性(Δn)が0.25以上であることが好ましい。特に、高周波に対する用途に用いる場合、Δnが0.35以上であることが好ましく、0.45以上であることがより好ましい。
【0128】
高周波領域において位相差制御を行うには、高周波領域における誘電率異方性が0.5以上であることが好ましい。より好適に位相制御を行うには、その高周波領域における誘電率異方性を大きくする必要がある。十分な位相制御を行うには、誘電率異方性は1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。
【0129】
さらに本発明の組成物は、周波数1GHzから10THzの範囲の電磁波制御に使用される素子への使用が可能である。応用例として、ミリ波帯可変移相器、ライダー(LiDAR;Light Detection and Ranging)素子、メタマテリアル技術を応用したアンテナ等が挙げられる。
【0130】
この組成物を含有する物品は、電磁波制御以外の用途でも用いることが可能である。液晶分子の配向方向を可逆的に変えることにより、誘電率異方性のほか、屈折率異方性も制御することができる。これら特性制御の応用用途として液晶レンズ、立体画像表示用複屈折レンズなどが挙げられる。
【実施例0131】
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、実施例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した化合物は、NMR分析により同定した。組成物の特性は、下記に記載した方法により測定した。
【0132】
NMR分析:測定装置は、DRX-500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。1H-NMRの測定では、試料をCDCl3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F-NMRの測定では、CFCl3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0133】
測定試料:相構造および転移温度を測定するときには、液晶性化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学的異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物を母液晶に混合して調製した組成物を試料として用いた。
【0134】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる場合には、次の方法で測定を行った。化合物20重量%と母液晶80重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の式で表わされる外挿法にしたがって、外挿値を計算し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉-〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉
【0135】
化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶との割合は、20重量%:80重量%である。
【0136】
母液晶としては、下記の母液晶(i)を用いた。母液晶(i)の成分の割合を重量%で
示す。
【0137】
【0138】
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;以下JEITAという)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED-2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0139】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。
【0140】
ネマチック相の下限温度(TC;℃):
ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを<-20℃と記載した。
【0141】
粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):
測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0142】
屈折率異方性(Δn<0.30の場合;25℃で測定):
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。屈折率異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。
【0143】
屈折率異方性(Δn≧0.30の場合;25℃で測定):
2枚のガラス基板にて構成される素子に試料を入れアンチパラレル配向をさせた。この素子の厚み方向リタデ一ション(Rth)を位相差フイルム・光学材料検査装置(大塚電子株式会社製、商品名:RETS-100)を用いて測定し、リタデーション値(Rth)とガラス基板の間隔(d:セルギャップ)より屈折率異方性(Δn)を以下の式により算出した。使用した光の波長は589nmである。
Rth =Δn・d
【0144】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):
2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。
【0145】
28GHzでの誘電率異方性(室温で測定):
28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)は、Applied Optics,Vol.44,No.7,p1150(2005)に開示された方法により、窓材を取り付けた可変短絡導波管に液晶を充填し、0.3Tの静磁場内に3分保持した。導波管に28GHzのマイクロ波を入力し、入射波に対する反射波の振幅比を測定した。静磁場の向きと短絡器の管長を変えて測定し、屈折率(n:ne,no)および損失パラメーター(α:αe,αo)を決定した。
複素誘電率(ε’,ε”)の算出には、算出した屈折率、損失パラメータと以下の関係式を用いた。
ε’=n2-κ2
ε”=2nκ
α=2ωκ/c
ここでcは真空の光速度、ωは角速度、κは消衰係数である。neからε’∥を、noからε’⊥を算出し、誘電率異方性(Δε@28GHz)は、ε’∥-ε’⊥から計算した。
【0146】
28GHzでの誘電正接(tanδ;室温で測定):
28GHzでの誘電正接(tanδ@28GHz)は、複素誘電率(ε’,ε”)を用い、ε”/ε’から計算した。tanδにも異方性が発現するため、値の大きい方を記載した。
【0147】
化合物(1-3-a):2’-フルオロ-4-イソチオシアナト-3-メチル-4'' -プロピル-1,1' :4' ,1'' -ターフェニルの合成
【0148】
窒素雰囲気下、3-フルオロ-4'-プロピル-4-ビフェニルボロン酸(4.5g)、4-ヨード-2-メチルアニリン(4.0g)、炭酸カリウム(4.8g)、トルエン(30mL)、エタノール(10mL)、水(10mL)にPd-132(ジョンソン・マッセイ)(0.12g)を加え70℃で1時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、水、酢酸エチルを加えしばらく撹拌した後、有機層を濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)で精製し、熱ヘプタンから再結晶することで中間体1-3-a(4.9g)を得た。
【0149】
1H-NMR(δppm:CDCl3):7.53(d、2H)、7.45(t、1H)、7.40(dd、1H)、7.35(dd、1H)、7.32~7.29(m、2H)、7.26(d、2H)、6.76(d、1H)、3.71(br、2H)、2.63(t、2H)、2.24(s、3H)、1.69(sext、2H)、0.98(t、3H).
【0150】
窒素雰囲気下、中間体1-3-a(4.9g)、1,1'-チオカルボニルジイミダゾール(3.3g)にTHF(30mL)を加え室温で1時間撹拌した。反応溶液を濃縮しトルエン:ヘプタン=2:8(容積比)を加え加熱し、上澄み液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン:ヘプタン=2:8(容積比))で精製し、熱ヘプタンから再結晶することで化合物(1-3-a)(5.1g)を得た。
【0151】
1H-NMR(δppm:CDCl3):7.53(d、2H)、7.46~7.36(m、5H)、7.28~7.25(m、3H)、2.64(t、2H)、2.44(s、3H)、1.69(sext、2H)、0.98(t、3H).
【0152】
化合物(1-3-a)の物性は次のとおりであった。TNI=142.1℃;Δn=0.363;Δε=18.1;η=68.8mPa・s.
【0153】
実施例における化合物は、表2の定義に基づいて記号により表した。記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0154】
【0155】
[比較例1] 液晶組成物C1
5-B(F)TB(F)-TC (2-1) 10%
5-BTB(F)-TC (2-1) 10%
3-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 20%
5-BTB(2Me)-NCS (3-1) 10%
5-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(2Me,5Me)-NCS (3-4) 10%
1O-bt(Me)TB(2F)B-5 (-) 10%
NI=146.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.50;Δε=18.9
液晶組成物C1の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.22
tanδ@28GHz=0.010
【0156】
[実施例1] 液晶組成物M1
3-BB(F)B(2Me,5Me)-NCS (1-3) 10%
3-BB(F)B(Me,Me)-NCS (1-3) 10%
5-B(F)TB(F)-TC (2-1) 5%
5-BTB(F)-TC (2-1) 15%
3-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 10%
3-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 5%
5-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(2Me,5Me)-NCS (3-4) 10%
1O-bt(Me)TB(2F)B-5 (-) 5%
NI=146.5℃;Tc<-20℃;Δn=0.49;Δε=19.3
液晶組成物M1の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.18
tanδ@28GHz=0.007
【0157】
[比較例2] 液晶組成物C2
5-B(F)TB(F)-TC (2-1) 10%
5-BTB(F)-TC (2-1) 15%
3-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 5%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 20%
5-BTB(2Me)-NCS (3-1) 10%
3-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(2Me,5Me)-NCS (3-4) 10%
NI=131.5℃;Tc<-30℃;Δn=0.50;Δε=21.0
液晶組成物C2の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.25
tanδ@28GHz=0.009
【0158】
[実施例2] 液晶組成物M2
3-BB(F)B(2Me,5Me)-NCS (1-3) 10%
3-BB(F)B(Me,Me)-NCS (1-3) 10%
5-B(F)TB(F)-TC (2-1) 5%
5-BTB(F)-TC (2-1) 15%
3-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 20%
5-BTB(2Me)-NCS (3-1) 10%
3-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(2Me,5Me)-NCS (3-4) 10%
NI=122.7℃;Tc<-30℃;Δn=0.47;Δε=16.3
液晶組成物M2の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.20
tanδ@28GHz=0.006
【0159】
[実施例3] 液晶組成物M3
3-BB(F)B(2Me,5Me)-NCS (1-3) 10%
3-BB(F)B(Me,Me)-NCS (1-3) 10%
5-BTB(F)-TC (2-1) 5%
3-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 20%
5-BTB(2Me)-NCS (3-1) 5%
3-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(2Me,5Me)-NCS (3-4) 10%
NI=130.2℃;Tc<-30℃;Δn=0.48;Δε=17.6
液晶組成物M3の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.19
tanδ@28GHz=0.007
【0160】
[比較例3] 液晶組成物C3
3-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 5%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 15%
4-BTB(2Me)-NCS (3-1) 15%
5-BTB(2Me)-NCS (3-1) 15%
3-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 5%
5-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(2Me,5Me)-NCS (3-4) 5%
3-BTB(2Me,5F)B(F)-NCS (3-5) 10%
3-BTB(2Me,5F)TB-NCS (3-6) 10%
NI=118.4℃;Tc<-30℃;Δn=0.48;Δε=15.3
液晶組成物C3の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.28
tanδ@28GHz=0.009
【0161】
[実施例4] 液晶組成物M4
3-BB(F)B(Me)-NCS (1-3) 10%
3-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 5%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 15%
4-BTB(2Me)-NCS (3-1) 10%
5-BTB(2Me)-NCS (3-1) 10%
3-BB(F)B(F,F)-NCS (3-3) 5%
5-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
3-BTB(2Me,5F)B(F)-NCS (3-5) 15%
3-BTB(2Me,5F)TB-NCS (3-6) 10%
NI=134.5℃;Tc<-30℃;Δn=0.49;Δε=17.0
液晶組成物M4の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.29
tanδ@28GHz=0.007
【0162】
[実施例5] 液晶組成物M5
3-BB(F)B(Me)-NCS (1-3) 10%
3-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 5%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 15%
3-BB(F)B(F,F)-NCS (3-3) 5%
5-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 15%
5-BB(F)TB(2Me,5F)-NCS (3-4) 10%
3-BTB(2Me,5F)B(F)-NCS (3-5) 15%
3-BTB(2Me,5F)TB-NCS (3-6) 15%
NI=178.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.53;Δε=15.8
液晶組成物M5の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.33
tanδ@28GHz=0.007
【0163】
[実施例6] 液晶組成物M6
3-BB(F)B(Me)-NCS (1-3) 10%
3-BB(F)TB-TC (2-3) 3%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 15%
4-BTB(2Me)-NCS (3-1) 7%
5-BTB(2Me)-NCS (3-1) 10%
2-HBB(F,F)-NCS (3-2) 2%
3-HBB(F,F)-NCS (3-2) 5%
4-HBB(F,F)-NCS (3-2) 3%
3-BB(F)B(F,F)-NCS (3-3) 5%
5-BB(F)TB(2Me,5F)-NCS (3-4) 5%
3-BTB(2Me,5F)B(F)-NCS (3-5) 15%
3-BTB(2Me,5F)TB-NCS (3-6) 10%
NI=138.3℃;Tc<-30℃;Δn=0.48;Δε=17.0
液晶組成物M6の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.23
tanδ@28GHz=0.006
【0164】
[実施例7] 液晶組成物M7
3-BB(F)B(Me)-NCS (1-3) 10%
3-BB(F)TB-TC (2-3) 5%
5-BB(F)TB-TC (2-3) 10%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 15%
4-BTB(2Me)-NCS (3-1) 5%
5-BTB(2Me)-NCS (3-1) 5%
2-HBB(F,F)-NCS (3-2) 5%
3-BB(F)B(F,F)-NCS (3-3) 5%
5-BB(F)TB(2Me,5F)-NCS (3-4) 10%
3-BTB(2Me,5F)B(F)-NCS (3-5) 15%
3-BTB(2Me,5F)TB-NCS (3-6) 15%
NI=157.4℃;Tc<-20℃;Δn=0.51;Δε=17.0
液晶組成物M7の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.30
tanδ@28GHz=0.007
【0165】
[実施例8] 液晶組成物M8
3-BB(F)B(Me)-NCS (1-3) 10%
3-BTB(2Me)-NCS (3-1) 15%
4-BTB(2Me)-NCS (3-1) 10%
5-BTB(2Me)-NCS (3-1) 10%
3-BB(F)B(F,F)-NCS (3-3) 5%
3-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 5%
5-BB(F)TB(Me)-NCS (3-4) 10%
5-BB(F)TB(2Me,5Me)-NCS (3-4) 5%
3-BB(F)TB(2Me,5F)-NCS (3-4) 10%
3-BTB(2Me,5F)B(F)-NCS (3-5) 10%
3-BTB(2Me,5F)TB-NCS (3-6) 10%
NI=110.4℃;Tc<-30℃;Δn=0.47;Δε=15.1
液晶組成物M8の28GHzでの誘電率異方性(Δε@28GHz)および誘電正接(tanδ@28GHz)は以下の通りであった。
Δε@28GHz=1.26
tanδ@28GHz=0.007
【0166】
比較例1中の式(3-1)で表される化合物を、式(1-3)で表される化合物に変更した組成物が実施例1に相当する。ここで、比較例1の組成物のΔε@28GHzは1.22であり、実施例1の組成物のΔε@28GHzは1.18であり、いずれも大きいといえる。一方、tanδ@28GHzはそれぞれ0.010と0.007であり、実施例1の組成物は優位に小さい。このことから、化合物(1)がtanδ@28GHzを小さくする効果があることが確認できた。
【0167】
比較例1および比較例2の組成物のΔε@28GHzは、1.22および1.25であり、tanδ@28GHzは、0.010および0.009であった。一方、実施例1から実施例3の組成物のΔε@28GHzは、1.18から1.20であり、またtanδ@28GHzは、0.006から0.007であった。実施例1から実施例3のtanδ@28GHzの値は、比較例1および比較例2よりもそれぞれ小さな値であった。
【0168】
比較例3中の式(3)で表される化合物を、式(1-3)で表される化合物に変更した組成物が実施例4に相当する。ここで、比較例3の組成物のΔε@28GHzは1.28であり、実施例4の組成物のΔε@28GHzは1.29であり、いずれも大きいといえる。一方、tanδ@28GHzはそれぞれ0.009と0.007であり、実施例4の組成物は優位に小さい。このことから、化合物(1)がtanδ@28GHzを小さくする効果があることが確認できた。
【0169】
実施例1から実施例8の組成物にはそれぞれ、化合物(1)が含まれる。組成物の構成成分として、このような化合物を多く含むものほど、高周波での誘電率異方性は大きくなる。そして特に、tanδ@28GHzの値はより小さくなる。
化合物(1)を使用した液晶組成物は、液晶組成物としての基本的な性能は保持した上で、Δε@28GHzを大きく維持したまま、tanδ@28GHzの値を小さくすることができた。
【0170】
液晶組成物に求められる特性は、位相制御に使用される周波数領域において、大きな位相制御を可能とする誘電率異方性(Δε)が大きなこと、および液晶組成物の電磁波信号の吸収エネルギーに比例する誘電正接(tanδ)が小さなことが求められる。実施例と比較例の結果から、本発明の組成物が大きな誘電率異方性(Δε@28GHz)、および小さな誘電正接(tanδ@28GHz)を有することが証明された。一般に、tanδが小さいと、電磁波の吸収エネルギーは低くなる。よって、式(1)で表される化合物を使用した液晶組成物は、電磁波信号の吸収エネルギーを低くすることが可能であり、そして電磁波信号の損失をより小さく設定することができる。以上のことから、本発明の液晶組成物は、より効率的に電磁波信号の伝達を行うことが出来ると結論できる。
本発明の液晶組成物は、ネマチック相の高い上限温度、およびネマチック相の低い下限温度を有しながら、電磁波信号の制御を行う周波数領域での大きな屈折率異方性、および小さな誘電正接(tanδ)のような、組成物の高周波特性を充足させることができる。さらに、駆動電圧低減のため低周波数における大きな誘電率異方性、小さな粘度、駆動周波数領域での大きな比抵抗、および熱に対する安定性のような、組成物の特性の少なくとも1つの特性をさらに充足させ、より好ましい液晶組成物を提供することが可能となる。この組成物を含有する素子は、周波数1GHzから10THzの範囲の電磁波信号の制御に使用することができる。