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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113661
(43)【公開日】2024-08-22
(54)【発明の名称】ガラス積層体
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/30 20060101AFI20240815BHJP
   C03C 3/095 20060101ALI20240815BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20240815BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20240815BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20240815BHJP
   C08L 101/10 20060101ALI20240815BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240815BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240815BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240815BHJP
   C09D 5/32 20060101ALI20240815BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20240815BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20240815BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240815BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240815BHJP
【FI】
C03C17/30 A
C03C3/095
C03C3/087
C03C3/085
C03C3/083
C08L101/10
C08L83/04
C09D201/00
C09D7/63
C09D5/32
C09D183/06
B32B17/10
B32B27/18 A
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220196
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023018207
(32)【優先日】2023-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】森田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】柏原 優香
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
4G062
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA17
4F100AA17A
4F100AA18
4F100AA18A
4F100AA19
4F100AA20
4F100AA20A
4F100AA23
4F100AA23A
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AH06
4F100AH06B
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AR00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA07
4F100CA07B
4F100CA18
4F100EH46
4F100EJ42
4F100GB31
4F100JD09
4F100JD09A
4F100JD09B
4F100JL09
4F100YY00A
4F100YY00B
4G059AA01
4G059AC07
4G059AC18
4G059FA22
4G059FA29
4G059FB05
4G062AA01
4G062BB01
4G062DA06
4G062DA07
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4G062DB02
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4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
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4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
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4G062NN13
4G062NN34
4J002CP031
4J002CP051
4J038DL051
4J038EA011
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4J038JA69
4J038JC02
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038NA03
4J038NA10
4J038NA19
4J038PB07
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】有機紫外線遮蔽剤を含む被膜を備え、初期状態で良好な紫外線遮蔽性能を有し、長期間の太陽光照射後も良好な紫外線遮蔽性を維持できる耐候性を有するガラス積層体の提供。
【解決手段】ガラス基材(10)と、ガラス基材(10)の一方の表面(10S)上に形成され、1種以上の有機紫外線遮蔽剤を含む被膜(20)とを有し、ガラス基材は、60~80質量%のSiOと、0.1~1.0質量%のFeと、0.05~1.0質量%のTiOとを含み、被膜の形成領域内の少なくとも一部が、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域であり、特定透過極大波長領域において、ISO9050-2003に準拠して測定される紫外線透過率(Tuv)が0~3.0%である、ガラス積層体(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材と、当該ガラス基材の一方の表面上に形成され、1種以上の有機紫外線遮蔽剤を含む被膜とを有し、
前記ガラス基材は、60~80質量%のSiOと、0.1~1.0質量%のFeと、0.05~1.0質量%のTiOとを含み、
前記被膜の形成領域内の少なくとも一部が、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域であり、
前記特定透過極大波長領域において、ISO9050-2003に準拠して測定される紫外線透過率(Tuv)が0~3.0%である、ガラス積層体。
【請求項2】
前記極大波長が345~370nmである、請求項1に記載のガラス積層体。
【請求項3】
前記極大波長が350~370nmである、請求項2に記載のガラス積層体。
【請求項4】
前記特定透過極大波長領域において、前記極大波長における透過率が375nmにおける透過率より高い、請求項1または2に記載のガラス積層体。
【請求項5】
前記特定透過極大波長領域において、前記極大波長における透過率と375nmにおける透過率との差が0.1%以上である、請求項4に記載のガラス積層体。
【請求項6】
前記特定透過極大波長領域において、前記極大波長における透過率と375nmにおける透過率との差が0.1~5.0%である、請求項5に記載のガラス積層体。
【請求項7】
前記特定透過極大波長領域において、375nmにおける透過率が0~6.0%である、請求項1または2に記載のガラス積層体。
【請求項8】
前記ガラス基材はさらに、0.01~1.0質量%CeOを含む、請求項1に記載のガラス積層体。
【請求項9】
前記ガラス基材はさらに、Al、CaO、MgO、NaO、KO、およびSOからなる群より選ばれる1種以上の金属酸化物を含む、請求項1または8に記載のガラス積層体。
【請求項10】
前記ガラス基材は、0.1~2.0質量%のAl、7.0~9.0質量%のCaO、3.0~5.0質量%のMgO、10.0~15.0質量%のNaO、0.01~1.0質量%のKO、および0.1~1.0質量%のSOを含む、請求項9に記載のガラス積層体。
【請求項11】
1種以上の前記有機紫外線遮蔽剤は、ベンゾジチオール系紫外線吸収剤を含む、請求項1または2に記載のガラス積層体。
【請求項12】
ベンゾジチオール系紫外線吸収剤は、下式(UX)で表される化合物および下式(UY)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む、請求項11に記載のガラス積層体。
【化1】
【化2】
(式(UX)、(UY)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基またはカルバモイル基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、W、X、YおよびZはそれぞれ独立に電子求引性基である。R、R、R、R、W、X、YおよびZは、置換基を有していてもよい。WとXが結合して環を形成していてもよく、YとZが結合して環を形成していてもよい。)
【請求項13】
式(UX)中のRおよびRのうち少なくとも一方が水素原子であり、
式(UY)中のRおよびRのうち少なくとも一方が水素原子である、請求項12に記載のガラス積層体。
【請求項14】
式(UX)中のRおよびRが水素原子であり、
式(UY)中のRおよびRが水素原子である、請求項13に記載のガラス積層体。
【請求項15】
前記ベンゾジチオール系紫外線吸収剤は、(1,2-ジブチル-4-(4,7-ジヒドロキシ-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)ピラゾリジン-3,5-ジオン)、2-(4,7-ジヒドロキシ-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)マロノニトリル、2-(4,7-ジヒドロキシ-5-メチル-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)マロノニトリル、2-[4,7-ジ(2-エチルヘキサノート)-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン]-4,4-ジメチル-3-オキソペンタンニトリル、2-(4,7-ジアセテート-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)-4,4-ジメチル-3-オキソペンタンニトリルから選択される少なくとも1種を含む、請求項12に記載のガラス積層体。
【請求項16】
前記被膜はさらに、シロキサン化合物を含む、請求項1または2に記載のガラス積層体。
【請求項17】
前記シロキサン化合物は、1つ以上の加水分解性基を有し、同種間または異種間で部分的に加水分解縮合していてもよい1種以上の加水分解性シリコン化合物を含む組成物の硬化物である、請求項16に記載のガラス積層体。
【請求項18】
促進耐候性試験機を用い、前記ガラス積層体に対して、放射照度140mW/cmの条件で、295~430nmの波長域の光を490時間照射する促進耐候性試験を行い、試験前と試験後にISO9050-2003に準拠して紫外線透過率(Tuv)を測定したとき、
前記特定透過極大波長領域において、試験前の紫外線透過率(Tuv)に対する、試験後の紫外線透過率(Tuv)の比が3.0以下である、請求項1または2に記載のガラス積層体。
【請求項19】
前記被膜の周縁部を除く主部の最大膜厚が、1~5μmである、請求項1または2に記載のガラス積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両等の用途では、ガラス基材の表面に、紫外線遮蔽機能を有する被膜を形成したガラス積層体が知られている。上記用途では、良好な視界を確保するために、ガラス積層体は高い可視光透過率を有することが好ましい。紫外線遮蔽性と可視光透過性との両立の観点から、有機系の紫外線遮蔽剤が好ましく用いられる。
特許文献1には、長波長紫外線領域遮蔽性を有する紫外線遮蔽剤としてベンゾジチオール系紫外線吸収剤を含む被膜を有するガラス積層体が開示されている(請求項1、10、11等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/122503号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、紫外線遮蔽剤が吸収した紫外線由来のエネルギーは、被膜中の有機成分の分解等の劣化をもたらす傾向がある。そのため、有機系の紫外線遮蔽剤を含む被膜は、耐候性が良くなく、太陽光照射によって経時的に劣化が進み、紫外線遮蔽性能が徐々に低下する傾向がある。
【0005】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、有機紫外線遮蔽剤を含む被膜を備え、初期状態で良好な紫外線遮蔽性能を有し、長期間の太陽光照射後も良好な紫外線遮蔽性を維持できる耐候性を有するガラス積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下のガラス積層体を提供する。
[1] ガラス基材と、当該ガラス基材の一方の表面上に形成され、1種以上の有機紫外線遮蔽剤を含む被膜とを有し、
前記ガラス基材は、60~80質量%のSiOと、0.1~1.0質量%のFeと、0.05~1.0質量%のTiOとを含み、
前記被膜の形成領域内の少なくとも一部が、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域であり、
前記特定透過極大波長領域において、ISO9050-2003に準拠して測定される紫外線透過率(Tuv)が0~3.0%である、ガラス積層体。
【0007】
[2] 前記極大波長が345~370nmである、[1]のガラス積層体。
[3] 前記極大波長が350~370nmである、[2]のガラス積層体。
[4] 前記特定透過極大波長領域において、前記極大波長における透過率が375nmにおける透過率より高い、[1]~[3]のいずれかのガラス積層体。
[5] 前記特定透過極大波長領域において、前記極大波長における透過率と375nmにおける透過率との差が0.1%以上である、[4]のガラス積層体。
[6] 前記特定透過極大波長領域において、前記極大波長における透過率と375nmにおける透過率との差が0.1~5.0%である、[5]のガラス積層体。
[7] 前記特定透過極大波長領域において、375nmにおける透過率が0~6.0%である、[1]~[6]のいずれかのガラス積層体。
【0008】
[8] 前記ガラス基材はさらに、0.01~1.0質量%CeOを含む、[1]~[7]のいずれかのガラス積層体。
[9] 前記ガラス基材はさらに、Al、CaO、MgO、NaO、KO、およびSOからなる群より選ばれる1種以上の金属酸化物を含む、[1]~[8]のいずれかのガラス積層体。
[10] 前記ガラス基材は、0.1~2.0質量%のAl、7.0~9.0質量%のCaO、3.0~5.0質量%のMgO、10.0~15.0質量%のNaO、0.01~1.0質量%のKO、および0.1~1.0質量%のSOを含む、[9]のガラス積層体。
【0009】
[11] 1種以上の前記有機紫外線遮蔽剤は、ベンゾジチオール系紫外線吸収剤を含む、[1]~[10]のいずれかのガラス積層体。
【0010】
[12] ベンゾジチオール系紫外線吸収剤は、下式(UX)で表される化合物および下式(UY)で表される化合物から選択される少なくとも1種を含む、[11]のガラス積層体。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
式(UX)、(UY)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基またはカルバモイル基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基であり、W、X、YおよびZはそれぞれ独立に電子求引性基である。R、R、R、R、W、X、YおよびZは、置換基を有していてもよい。WとXが結合して環を形成していてもよく、YとZが結合して環を形成していてもよい。
【0014】
[13] 式(UX)中のRおよびRのうち少なくとも一方が水素原子であり、
式(UY)中のRおよびRのうち少なくとも一方が水素原子である、[12]のガラス積層体。
[14] 式(UX)中のRおよびRが水素原子であり、
式(UY)中のRおよびRが水素原子である、[13]のガラス積層体。
【0015】
[15] 前記ベンゾジチオール系紫外線吸収剤は、(1,2-ジブチル-4-(4,7-ジヒドロキシ-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)ピラゾリジン-3,5-ジオン)、2-(4,7-ジヒドロキシ-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)マロノニトリル、2-(4,7-ジヒドロキシ-5-メチル-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)マロノニトリル、2-[4,7-ジ(2-エチルヘキサノート)-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン]-4,4-ジメチル-3-オキソペンタンニトリル、2-(4,7-ジアセテート-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)-4,4-ジメチル-3-オキソペンタンニトリルから選択される少なくとも1種を含む、[12]のガラス積層体。
【0016】
[16] 前記被膜はさらに、シロキサン化合物を含む、[1]~[15]のいずれかガラス積層体。
[17] 前記シロキサン化合物は、1つ以上の加水分解性基を有し、同種間または異種間で部分的に加水分解縮合していてもよい1種以上の加水分解性シリコン化合物を含む組成物の硬化物である、[16]のガラス積層体。
【0017】
[18] 促進耐候性試験機を用い、前記ガラス積層体に対して、放射照度140mW/cmの条件で、295~430nmの波長域の光を490時間照射する促進耐候性試験を行い、試験前と試験後にISO9050-2003に準拠して紫外線透過率(Tuv)を測定したとき、
前記特定透過極大波長領域において、試験前の紫外線透過率(Tuv)に対する、試験後の紫外線透過率(Tuv)の比が3.0以下である、[1]~[17]のいずれかのガラス積層体。
[19] 前記被膜の周縁部を除く主部の最大膜厚が、1~5μmである、[1]~[18]のいずれかのガラス積層体。
【発明の効果】
【0018】
本開示のガラス積層体は、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域を有する。本開示によれば、有機紫外線遮蔽剤を含む被膜を備え、初期状態で良好な紫外線遮蔽性能を有し、長期間の太陽光照射後も良好な紫外線遮蔽性を維持できる耐候性を有するガラス積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る一実施形態のガラス積層体の模式断面図である。
図2】例1~4で得られたガラス積層体の透過スペクトルである。
図3】例5~7で得られたガラス積層体の透過スペクトルである。
図4】例8~10で得られたガラス積層体の透過スペクトルである。
図5】例11~14で得られたガラス積層体の透過スペクトルである。
図6】例15~17で得られたガラス積層体の透過スペクトルである。
図7】例18~21で得られたガラス積層体の透過スペクトルである。
図8】例22で得られたガラス積層体の透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、特に明記しない限り、ガラス板等の板状部材の「表面」とは、板状部材の端面(側面とも言う。)を除く、面積の大きい主面を指す。
一般的に、薄膜構造体は、厚さに応じて、「フィルム」および「シート」等と称される。本明細書では、これらを明確には区別しない。したがって、本明細書で言う「フィルム」に「シート」が含まれる場合がある。
【0021】
本明細書において、ある任意の式(x)で表される化合物を、化合物(x)とも言う。
本明細書において、化学式中、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
1種以上の加水分解性シリコン化合物を含む組成物において、1種以上の加水分解性シリコン化合物は、同種間または異種間で部分的に加水分解縮合している場合がある。
本明細書において、1種以上の加水分解性シリコン化合物の加水分解縮合物とは、1種以上の加水分解性シリコン化合物に含まれる加水分解性基の少なくとも一部が加水分解し、次いで、脱水縮合することによって生成するオリゴマー(多量体)である。
【0022】
本明細書において、「官能基」とは、単なる置換基とは区別された、反応性を有する基を包括的に示す用語である。
本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルの総称であり、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリルおよび(メタ)アクリロキシ等についても、同様である。
【0023】
本明細書において、特に明記しない限り、紫外線は300~380nmの波長域の光であり、赤外線は780~2500nmの波長域の光であり、可視光線は380~780nmの波長域の光である。
本明細書において、特に明記しない限り、「紫外線透過率(Tuv)」はISO9050-2003に準拠して測定される紫外線透過率(Tuv)である。
本明細書において、特に明記しない限り、極大波長における透過率(Tmv)、375nmにおける透過率(T375)、およびISO9050-2003に準拠して測定される紫外線透過率(Tuv)等の紫外線遮蔽性能は、初期状態のガラス積層体の紫外線遮蔽性能である。
本明細書において、「初期状態の被膜」とは、ガラス基材上への製膜が完了した時点の被膜、または、製膜完了後に特段の処理または操作を受けずに直射日光が当たらない環境下で、特性が大きく変化することなく保管された被膜である。保管環境温度は例えば-20~50℃であり、保管期間は例えば1年以内である。
被膜が1種以上の加水分解性シリコン化合物を含む組成物の硬化物である場合、「製膜が完了した時点」とは、被膜形成用組成物からなる塗工膜の硬化が完了した時点である。
【0024】
本明細書において、特に明記しない限り、車両窓ガラス用のガラス積層体の「前後」、「上下」、「左右」、「縦横」および「内外」はそれぞれ、ガラス積層体が車両に嵌め込まれた状態(実際の使用状態)での「前後」、「上下」、「左右」、「縦横」および「内外」である。
本明細書において、「地面に対して略水平」とは、地面に対して完全な水平方向±10°の範囲を意味し、「地面に対して略垂直」とは、地面に対して完全な垂直方向±10°の範囲を意味する。
本明細書において、特に明記しない限り、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
[ガラス積層体]
図面を参照して、本発明に係る一実施形態のガラス積層体の構造について、説明する。図1は、本実施形態のガラス積層体の模式断面図である。視認しやすくするため、各図において、各部材の縮尺は適宜異ならせてある。
図1に示すように、本実施形態のガラス積層体1は、ガラス基材10と、ガラス基材10の一方の表面10S上に形成された被膜20とを有する。
【0026】
車両窓ガラス(フロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス等)の用途では、被膜20は、ガラス基材10の表面10S上において、ガラス積層体1が窓開口部を完全に閉じた状態で窓開口部を含む領域に形成できる。被膜20は、ガラス基材10の表面10Sの全面に形成されていてもよいし、ガラス基材10の表面10Sの周縁部(例えば、外周から30mm以内の領域)の少なくとも一部を除く略全面に形成されていてもよい。被膜20が形成されるガラス基材10の表面10Sは特に制限されず、ガラス基材10の車内側の表面(車内面とも言う。)であることができる。ガラス基材10の平面形状および被膜20の形成領域は、取り付けられる車両等の形態に応じて、適宜設計できる。
【0027】
被膜20は、1種以上の有機紫外線遮蔽剤を含む紫外線遮蔽膜である。被膜20はさらに、1種以上のシロキサン化合物を含むことができる。シロキサン化合物は、シロキサン結合(Si-O結合)を有する化合物である。
【0028】
本開示のガラス積層体において、被膜の形成領域内の少なくとも一部が、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域である。
被膜の形成領域の面積に対する特定透過極大波長領域の面積の割合は特に制限されず、好ましくは50%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。
【0029】
[発明が解決しようとする課題]の項で説明したように、一般的に、紫外線遮蔽剤が吸収した紫外線由来のエネルギーは、被膜中の有機成分の分解等の劣化をもたらす傾向がある。そのため、一般的に、有機系の紫外線遮蔽剤を含む被膜は、耐候性が良くなく、太陽光照射によって経時的に劣化が進み、紫外線遮蔽性能が徐々に低下する傾向がある。長期使用後も良好な紫外線遮蔽性能を維持するためには、被膜はなるべく紫外線由来のエネルギーを吸収しないことが望ましいと考えられる。しかしながら、このことは、紫外線遮蔽性能の低下に繋がる。本来、紫外線遮蔽性能と耐候性とは、互いに背反する特性であり、両立は難しい。
【0030】
太陽光は300~380nmの紫外線を含み、380nm付近の紫外線の放射照度が最も高い。そのため、ISO9050-2003で規定される紫外線透過率(Tuv)の計算式では、375nmにおける透過率(T375)の係数が最も大きくなっている。
本開示のガラス積層体では、太陽光の中で放射照度の高い375nmにおける透過率(T375)は低く抑えることで、ISO9050-2003で規定される紫外線透過率(Tuv)は低く抑えることができる。太陽光の中で比較的放射照度の低い335~374nmの吸収を抑えることで、全体的な紫外線エネルギーの吸収量を下げ、長期間の太陽光照射による紫外線遮蔽性能の低下を抑制できる。かかる作用効果によって、本開示によれば、初期状態で良好な紫外線遮蔽性能を有し、長期間の太陽光照射後も良好な紫外線遮蔽性を維持できる耐
【0031】
耐候性向上の観点から、特定透過極大波長領域において、極大波長は、好ましくは340nm以上、より好ましくは345nm以上、さらに好ましくは350nm以上、特に好ましくは350nm超、最も好ましくは355nm以上である。極大波長の上限値は、好ましくは370nm、より好ましくは365nmである。
【0032】
なお、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有さず、335nm未満の波長域に極大波長を有しても、耐候性の向上効果は得られない(後記[実施例]の項の例8~10を参照されたい。)。太陽光のうち335nm未満の波長域の紫外線は、放射照度が低く、ISO9050-2003で規定される紫外線透過率(Tuv)の計算式においても、335nm未満の波長における透過率の係数は小さくなっている。335nm未満の波長域の紫外線の吸収を抑えても、全体的な紫外線エネルギーの吸収量を効果的に下げることは難しいと考えられる。
ただし、本開示のガラス積層体において、特定透過極大波長領域の透過スペクトルは、335~374nmの波長域と、300nm以上335nm未満の波長域の両方に極大波長を有してもよい。本開示のガラス積層体はまた、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域と、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有さず、300nm以上335nm未満の波長域に極大波長を有する領域とを有するものでもよい。
【0033】
本開示のガラス積層体は、初期状態において、以下の紫外線遮蔽性能を有することが好ましい。
特定透過極大波長領域において、極大波長における透過率(Tmv)が375nmにおける透過率(T375)より高いことが好ましい。
特定透過極大波長領域において、極大波長における透過率(Tmv)と375nmにおける透過率(T375)との差(ΔT)は、好ましくは0.1%以上である。下限値は、より好ましくは0.3%、さらに好ましくは0.4%、特に好ましくは0.5%、最も好ましくは0.6%である。上限値は、好ましくは、5.0%、より好ましくは4.5%である。
なお、ΔTは、下式で表される。
ΔT[%]=Tmv-T375
【0034】
特定透過極大波長領域において、375nmにおける透過率(T375)は、好ましくは0~6.0%である。上限値は、より好ましくは5.5%、さらに好ましくは5.0%、さらに好ましくは4.5%、さらに好ましくは4.0%、特に好ましくは3.0%、最も好ましくは2.0%である。
特定透過極大波長領域において、ISO9050-2003に準拠して測定される紫外線透過率(Tuv)は、好ましくは0~3.0%である。上限値は、より好ましくは2.5%、さらに好ましくは2.0%、特に好ましくは1.5%、最も好ましくは1.0%である。下限値は、例えば0.1%である。
【0035】
被膜の形成領域内の少なくとも一部が、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域であるガラス積層体は、例えば、ガラス基材の組成、被膜中の紫外線遮蔽剤の種類、またはこれらの組合せによって、実現できる。
初期状態における、極大波長における透過率(Tmv)、375nmにおける透過率(T375)、およびISO9050-2003に準拠して測定される紫外線透過率(Tuv)等の紫外線遮蔽性能は、ガラス基材の組成、被膜中の紫外線遮蔽剤の種類と濃度、被膜の膜厚、またはこれらの組合せによって、好ましい範囲内に調整できる。
【0036】
本開示のガラス積層体は、促進耐候性試験機を用い、ガラス積層体に対して、放射照度140mW/cmの条件で、295~430nmの波長域の光を490時間照射する促進耐候性試験を行い、試験前と試験後にISO9050-2003に準拠して紫外線透過率(Tuv)を測定したとき、特定透過極大波長領域において、試験前の紫外線透過率(Tuv)に対する、試験後の紫外線透過率(Tuv)の比が3.0以下であることができる。下限値は、例えば1.1である。
具体的な評価方法は、後記[実施例]の項を参照されたい。
【0037】
本開示のガラス積層体の可視光透過率は特に制限されず、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。上限値は、例えば99%である。
【0038】
[背景技術]の項で挙げた特許文献1には、長波長紫外線領域遮蔽性を有する紫外線遮蔽剤としてベンゾジチオール系紫外線吸収剤を含む被膜を有するガラス積層体が開示されている(請求項1、10、11等)。
特許文献1において、被膜は、吸収極大波長が310~450nmであることが好ましく、320~420nmであることがより好ましく、350~400nmであることが特に好ましいことが記載されている(段落0059)。ここで言う「極大波長」は、「吸収極大波長」であり、「透過極大波長」ではない。
特許文献1において、図1および図2には、実施例1~5の被膜の吸収スペクトルが記載されている。これらのスペクトルは、「吸収スペクトル」であり、「透過スペクトル」ではない。これらのスペクトルはまた、ガラス基材を含まない被膜単体の吸収スペクトルである。
本開示のガラス積層体における紫外線遮蔽特性は、ガラス基材と被膜とを含めたガラス積層体全体の紫外線遮蔽特性である。
【0039】
(ガラス基材)
ガラス基材は、強化ガラス、複数のガラス板を中間膜を介して貼り合わせた合わせガラス、または有機ガラスを含むことができる。車両窓ガラス等の用途では、ガラス基材は、強化ガラスまたは合わせガラスを含むことが好ましい。
【0040】
強化ガラスおよび合わせガラスの材料であるガラス板の種類としては特に制限されず、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、リチウムシリケートガラス、石英ガラス、サファイアガラスおよび無アルカリガラス等が挙げられる。
強化ガラスは、上記のようなガラス板に対して、イオン交換法および風冷強化法等の公知方法にて強化加工を施したものである。強化ガラスとしては、風冷強化ガラスが好ましい。
強化ガラスの厚さは特に制限されず、用途に応じて設計される。車両窓ガラス(フロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス等)の用途では、好ましくは2~6mmである。
合わせガラスの厚さは特に制限されず、用途に応じて設計される。車両窓ガラス(フロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス等)の用途では、好ましくは2~6mmである。
【0041】
車両窓ガラス等の用途では、ガラス板は、曲面を有する形状に加工される。
ガラス基材は、車両に取り付けられたときに、車外側が凸となるような湾曲形状であってよい。ガラス基材が合わせガラスである場合、車内側のガラス板および車外側のガラス板は、ともに車外側が凸となるような湾曲形状であってよい。ガラス基材は、左右方向または上下方向のいずれか一方向のみに湾曲した単曲曲げ形状であってもよいし、左右方向と上下方向に湾曲した複曲曲げ形状であってもよい。ガラス基材の曲率半径は2000~11000mmであってよい。ガラス基材は、左右方向と上下方向の曲率半径が同一でも非同一でもよい。ガラス基材の曲げ成形には、重力成形、プレス成形およびローラー成形等が用いられる。
【0042】
合わせガラスの中間膜は、樹脂膜からなる。その構成樹脂としては、複数のガラス板を良好に接着できる樹脂であれば特に制限されない。中間膜は例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリウレタン(PU)およびアイオノマー樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を含むことが好ましい。
中間膜は必要に応じて、樹脂以外の1種以上の添加剤を含んでいてもよい。
中間膜の材料としては、例示の樹脂を含む樹脂フィルムが好ましい。
合わせガラスの中間膜は、単層膜でも積層膜でもよい。
【0043】
有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチック;ポリエチレンテレフタレート(PET):ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン(PS);これらの組合せ等が挙げられ、ポリカーボネート(PC)等のエンジニアリングプラスチックが好ましい。
【0044】
被膜の形成領域内の少なくとも一部が、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域であるガラス積層体を得やすいことから、ガラス基材は、60~80質量%のSiOと、0.1~1.0質量%のFeと、0.05~1.0質量%のTiOとを含むことが好ましい。
Feの含有量の下限値は、より好ましくは0.2質量%、さらに好ましくは0.3質量%、さらに好ましくは0.4質量%、特に好ましくは0.5質量%、最も好ましくは0.7質量%である。上限値は、より好ましくは0.9質量%、特に好ましくは0.8質量%である。
TiOの含有量の下限値は、より好ましくは0.1質量%、さらに好ましくは0.2質量%、さらに好ましくは0.3質量%、特に好ましくは0.4質量%、最も好ましくは0.5質量%である。上限値は、より好ましくは0.9質量%、特に好ましくは0.8質量%である。
【0045】
ガラス基材は、SiO、FeおよびTiOに合わせて、さらに0.01~1.0質量%のCeOを含むことができる。
CeOの含有量の下限値は、より好ましくは0.02質量%、さらに好ましくは0.05質量%、さらに好ましくは0.1質量%、さらに好ましくは0.2質量%、特に好ましくは0.3質量%、最も好ましくは0.4質量%である。上限値は、より好ましくは0.9質量%、さらに好ましくは0.8質量%、さらに好ましくは0.7質量%、特に好ましくは0.6質量%、最も好ましくは0.5質量%である。
【0046】
ガラス基材は、SiO、FeおよびTiO、または、SiO、Fe、TiOおよびCeOに合わせて、Al、CaO、MgO、NaO、KO、およびSOからなる群より選ばれる1種以上の金属酸化物を含むことができる。この場合、ガラス基材は、0.1~2.0質量%のAl、7.0~9.0質量%のCaO、3.0~5.0質量%のMgO、10.0~15.0質量%のNaO、0.01~1.0質量%のKO、および0.1~1.0質量%のSOを含むことが好ましい。
【0047】
(被膜)
被膜は、1種以上の有機紫外線遮蔽剤を含み、さらに1種以上のシロキサン化合物を含むことができる。
被膜の膜厚は、用いる有機紫外線遮蔽剤の種類と濃度に応じて、所望の紫外線遮蔽性能が得られる範囲内で設計できる。好ましくは1~8μmである。上限値は、より好ましくは7μm、さらに好ましくは6μm、特に好ましくは5μm、最も好ましくは4.5μmである。
【0048】
本明細書において、「被膜の主部」は被膜の周縁部を除く領域である。
「被膜の周縁部」は例えば、被膜の外周から30mm以内の領域である。
なお、被膜の外周が明確に特定できない場合がある。例えば、ガラス基材上に被膜形成用組成物を塗工した後、塗工膜の周縁部の少なくとも一部をスキージ等を用いて拭き取る場合がある。このような場合、被膜の外周が明確に特定できない可能性がある。
上記したように、車両窓ガラス(フロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス等)の用途では、被膜は、ガラス基材の表面上において、ガラス積層体が窓開口部を完全に閉じた状態で窓開口部を含む領域に形成できる。この場合、「被膜の周縁部」は窓開口部の外周から30mm以内の領域とすることができる。
【0049】
被膜の主部の最大膜厚は、好ましくは1~5μmである。上限値は、より好ましくは4.5μm、特に好ましくは4.0μm、最も好ましくは3.5μmである。
被膜の主部の最大膜厚が上記下限値以上であれば、所望の紫外線遮蔽性能が安定的に得られる。被膜の主部の最大膜厚が小さい程、ガラス界面にかかる応力が小さくなる傾向がある。被膜の主部の最大膜厚が上記上限値以下であれば、ガラス基材と被膜との界面にかかる応力が充分に小さく、耐候性を向上できる。
特定の組成を有するガラス基材と特定の有機紫外線遮蔽剤とを用いる本開示の技術では、被膜の膜厚と被膜中の有機紫外線遮蔽剤の濃度との設計自由度が高く、被膜の主部の最大膜厚を比較的薄く設計しても、良好な紫外線遮蔽性能を有する被膜を形成できる。
【0050】
被膜は、被膜形成用組成物を用いて形成できる。被膜は、好ましくは、1つ以上の加水分解性基を有し、同種間または異種間で部分的に加水分解縮合していてもよい1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)と、1種以上の有機紫外線遮蔽剤とを含む液状組成物(LC)の硬化物からなる。
【0051】
<加水分解性シリコン化合物(SC)>
1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)は、加水分解縮合反応により硬化して酸化珪素マトリクスを形成できる。本明細書で言う「酸化珪素マトリクス」は、-Si-O-Si-で表されるシロキサン結合により2次元的または3次元的に高分子量化した高分子化合物である。
【0052】
加水分解性シリコン化合物(SC)は、1つ以上の加水分解性基を有するシリコン化合物である。1つのSi原子に結合した加水分解性基の数は1~4であり、好ましくは2~4、より好ましくは3~4である。加水分解性基は、組成物中で、加水分解されて水酸基になっていてもよい。
【0053】
加水分解性基としては、アルコキシ基(アルコキシ置換アルコキシ基等の置換アルコキシ基を含む)、アルケニルオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、オキシム基、アミド基、アミノ基、イミノキシ基、アミノキシ基、アルキル置換アミノ基、イソシアネート基およびハロゲン原子等が挙げられる。中でも、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、イミノキシ基およびアミノキシ基等のオルガノオキシ基が好ましく、特にアルコキシ基等が好ましい。アルコキシ基としては、炭素原子数4以下のアルコキシ基および炭素原子数4以下のアルコキシ置換アルコキシ基(2-メトキシエトキシ基等)が好ましく、特にメトキシ基およびエトキシ基等が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子等が好ましい。
加水分解性シリコン化合物(SC)中に複数の加水分解性基が存在する場合、複数の加水分解性基は同一でも非同一でもよく、同一であることが原料の入手容易性の点で好ましい。
【0054】
1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)は、1種以上の3官能性加水分解性シリコン化合物および/または1種以上の4官能性加水分解性シリコン化合物を含むことが好ましい。1種以上の3官能性加水分解性シリコン化合物と1種以上の4官能性加水分解性シリコン化合物との併用が好ましい。1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)は必要に応じて、1種以上の2官能性加水分解性シリコン化合物を含むことができる。
【0055】
4官能性加水分解性シリコン化合物は、1つのSi原子に4つの加水分解性基が結合した構造を有する化合物である。3官能性加水分解性シリコン化合物は、1つのSi原子に3つの加水分解性基が結合した構造を有する化合物である。2官能性加水分解性シリコン化合物は、1つのSi原子に2つの加水分解性基が結合した構造を有する化合物である。
加水分解性シリコン化合物(SC)は、1分子中に、Si原子に1つ以上の加水分解性基が結合した構造を2つ以上有するものでもよい。
【0056】
加水分解性シリコン化合物(SC)は、加水分解性基以外の官能基を有するものでもよい。加水分解性基以外の官能基としては、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、1級または2級のアミノ基、オキセタニル基、ビニル基、スチリル基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基およびシアノ基等が挙げられる。
【0057】
4官能性加水分解性シリコン化合物としては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn-プロポキシシラン、テトラn-ブトキシシラン、テトラsec-ブトキシシラン、およびテトラtert-ブトキシシラン等が挙げられる。テトラメトキシシラン(TMOS)およびテトラエトキシシラン(TEOS)等が好ましい。
【0058】
加水分解性基以外の官能基を有さない3官能性加水分解性シリコン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、および1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン等が挙げられる。
【0059】
加水分解性基以外の官能基を有する3官能性加水分解性シリコン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、5,6-エポキシへキシルトリメトキシシラン、9,10-エポキシデシルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジ-(3-メタクリロキシ)プロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリプロポキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、および2-シアノエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
2官能性加水分解性シリコン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ(2-メトキシエトキシ)シラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジ(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジイソプロペノキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジアセトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジプロポキシシラン、3,3,3-トリフロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、および2-シアノエチルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
液状組成物(LC)中の、1種以上の4官能性加水分解性シリコン化合物、1種以上の3官能性加水分解性シリコン化合物、および1種以上の2官能性加水分解性シリコン化合物の量は、特に制限されない。
1種以上の4官能性加水分解性シリコン化合物と1種以上の3官能性加水分解性シリコン化合物との合計量は、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)の総量100質量部に対して、好ましくは100~70質量部、より好ましくは100~80質量部、特に好ましくは100~90質量部である。
1種以上の2官能性加水分解性シリコン化合物の量(複数種の場合は、合計量)は、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)の総量100質量部に対して、好ましくは0~30質量部、より好ましくは0~20質量部、特に好ましくは0~10質量部である。
【0062】
4官能性加水分解性シリコン化合物と3官能性加水分解性シリコン化合物との総量100質量部に対して、1種以上の4官能性加水分解性シリコン化合物の量(複数種の場合は、合計量)は、好ましくは30~100質量部、より好ましくは30~95質量部、特に好ましくは40~90質量部、最も好ましくは50~85質量部であり、1種以上の3官能性加水分解性シリコン化合物の量(複数種の場合は、合計量)は、好ましくは70~0質量部、より好ましくは70~5質量部、特に好ましくは60~10質量部、最も好ましくは50~15質量部である。
【0063】
詳細については後記するが、液状組成物(LC)は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物とエポキシ基含有加水分解性シリコン化合物との反応生成物であるシリル化ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含むことができる。このシリル化ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、加水分解性シリコン化合物(SC)に含まれ、上記の2官能性、3官能性または4官能性の加水分解性シリコン化合物と同様、酸化珪素マトリクスを形成できる。
【0064】
加水分解性シリコン化合物(SC)の硬化温度は特に制限されず、通常の貯蔵温度の上限を超える温度、好ましくは80℃以上である。硬化温度の上限は特に制限されず、経済性の観点から、好ましくは230℃である。加水分解性シリコン化合物(SC)の硬化温度は、好ましくは150~230℃、より好ましくは170~230℃である。
【0065】
液状組成物(LC)は、必要に応じて、加水分解性シリコン化合物(SC)以外の1種以上の任意成分を含むことができる。
【0066】
<酸化珪素微粒子(SP)>
液状組成物(LC)は、必要に応じて、被膜中で酸化珪素マトリクスに結合して包含される酸化珪素微粒子(SP)を含むことができる。液状組成物(LC)が酸化珪素微粒子(SP)を含むことで、被膜の耐摩耗性を向上できる場合がある。
酸化珪素微粒子(SP)は、酸化珪素微粒子(SP)が水および/または有機溶剤中に分散されたコロイダルシリカの形態で、液状組成物(LC)に配合できる。
酸化珪素微粒子(SP)のBET法により測定される平均粒径は特に制限されず、被膜の透明性および耐摩耗性の向上の観点から、好ましくは1~100nm、より好ましくは5~40nmである。平均粒径が100nm以下であれば、粒子表面での光の乱反射およびそれによる被膜の透明性の低下を抑制できる。
【0067】
1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)および必要に応じて用いられる酸化珪素微粒子(SP)は、被膜中の酸化珪素マトリクスを形成する成分であり、本明細書では、これらを総称して、マトリクス成分(S)とも言う。
【0068】
ここで、液状組成物(LC)中の加水分解性シリコン化合物(SC)の含有量を、加水分解性シリコン化合物(SC)に含まれるSi原子をSiOに換算したときのSiO含有量で示す。
液状組成物(LC)の全固形分中の1種以上のマトリクス成分(S)の含有量(複数種の場合は、合計量)は、SiO含有量として、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~60質量%である。
液状組成物(LC)の塗工性および被膜の初期クラック抑制等の観点から、液状組成物(LC)の全固形分中の1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)の含有量(複数種の場合は、合計量)は、SiO含有量として、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~60質量%である。
マトリクス成分(S)の総量に対する酸化珪素微粒子(SP)の量は特に制限されず、被膜の初期クラックの生成および酸化珪素微粒子(SP)同士の凝集による被膜の透明性低下の抑制等の観点から、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~30質量%である。
【0069】
<有機紫外線遮蔽剤>
液状組成物(LC)は、1種以上の有機紫外線遮蔽剤を含む。
有機紫外線遮蔽剤としては公知のものを用いることができ、紫外線吸収タイプでも紫外線反射タイプでもよい。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾジチオール系紫外線吸収剤、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤、およびトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0070】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤には、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物とエポキシ基含有加水分解性シリコン化合物との反応生成物であるシリル化ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が含まれる。このシリル化ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、加水分解性シリコン化合物(SC)に含まれ、酸化珪素マトリクスを形成できる。紫外線遮蔽剤としてシリル化ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いることで、酸化珪素マトリクスに紫外線吸収剤を固定でき、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できる。シリル化ベンゾフェノン系紫外線吸収剤については、国際公開第2011/142463号等を参照されたい。
【0071】
被膜の形成領域内の少なくとも一部が、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域であるガラス積層体を得やすいことから、1種以上の有機紫外線遮蔽剤は、1種以上のベンゾジチオール系紫外線吸収剤を含むことが好ましい。1種以上の有機紫外線遮蔽剤として、1種以上のベンゾジチオール系紫外線吸収剤のみを用いることができる。
ベンゾジチオール系紫外線吸収剤は、下式(UX)で表される化合物(化合物(UX)とも言う。)および下式(UY)で表される化合物(化合物(UY)とも言う。)から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0072】
【化3】
【0073】
【化4】
【0074】
式(UX)、(UY)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基またはカルバモイル基である。RおよびRは、置換基を有していてもよい。RおよびRのうち少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、RおよびRが水素原子であることが好ましい。
【0075】
およびRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基である。RおよびRは、置換基を有していてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
アルキル基としては、炭素原子数1~30のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、2-シアノエチル基、ベンジル基、2-エチルヘキシル基、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基、プロパルギル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2-ヒドロキシエチル基、および2-ヒロドキシプロピル基等がより好ましい。
アリール基としては、炭素原子数6~30の置換または無置換のアリール基が好ましく、フェニル基、パラトリル基、およびナフチル基等がより好ましい。
アルコキシ基としては、炭素原子数1~30のアルキル基が好ましく、メトキシ基およびエトキシ基等がより好ましい。
アリールオキシ基としては、炭素原子数6~30の置換または無置換のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-tert-ブチルフェノキシ基、3-ニトロフェノキシ基、および2-テトラデカノイルアミノフェノキシ基等がより好ましい。
およびRとしては、水素原子、フッ素原子、塩素原子、およびメチル基等が特に好ましく、最も好ましくは水素原子である。
上記置換基において、さらなる置換基を有することが可能な置換基は、さらなる置換基としてシランカップリング基を有していてもよい。
【0076】
式(UX)、(UY)中、W、X、YおよびZはそれぞれ独立に電子求引性基である。WとXが結合して環を形成していてもよく、YとZが結合して環を形成していてもよい。W、X、YおよびZは、置換基を有していてもよい。
電子求引性基は、ハメットの置換基定数σp値が正の置換基である。例えば、シアノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、およびスルファモイル基が挙げられる。電子求引性基としては、シアノ基およびカルバモイル基等が好ましく、カルバモイル基等がより好ましい。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、および4-メトキシベンゾイル基等が好ましい。
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2-ヒドロキシエトキシカルボニル基、2-(3-トリメトキシシリルプロピルアミノカルボニルオキシ)エトキシカルボニル基、2-(3-トリエトキシシリルプロピルアミノカルボニルオキシ)エトキシカルボニル基、および2-エチルヘキシルオキシカルボニル基等が好ましい。
アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、および4-メトキシフェノキシカルボニル基等が好ましい。
カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジエチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、N,N-ジ-n-オクチルアミノカルボニル基、N-n-オクチルカルバモイル基が好ましい。
スルホニル基としては、メタスルホニル基、エタンスルホニル基、オクタンスルホニル基、およびベンゼンスルホニル基等が好ましい。
スルファモイル基としては、無置換のスルファモイル基、およびN,N-ジメチルスルファモイル基等が好ましい。
WとXが結合して形成される環、およびYとZが結合して形成される環としては、5員または6員の環が好ましい。具体的には、5-ピラゾロン、イソオキサリンー5-オン、ピラゾリジン-3,5-ジオン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、およびジヒドロピリジン-2,6-ジオン等が挙げられる。これらはさらに置換基を有していてもよい。
【0077】
化合物(UX)、(UY)において、RおよびRのうち少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、RおよびRが水素原子であることが好ましい。RおよびRが水素原子である化合物(UX)は、下式(UX-H)で表される化合物(化合物(UX-H)とも言う。)である。RおよびRが水素原子である化合物(UY)は、下式(UY-H)で表される化合物(化合物(UY-H)とも言う。)である。
【0078】
【化5】
【0079】
【化6】
【0080】
化合物(UX-H)としては、以下の(UX-H1)~(UX-H14)等が挙げられる。
【化7】
【0081】
【化8】
【0082】
【化9】
【0083】
化合物(UY-H)としては、以下の(UY-H1)~(UY-H5)等が挙げられる。
【化10】
【0084】
【化11】
【0085】
ベンゾジチオール系紫外線吸収剤は、(1,2-ジブチル-4-(4,7-ジヒドロキシ-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)ピラゾリジン-3,5-ジオン)(化合物(UX-H5))、[実施例]の項の化合物(U-A))、2-(4,7-ジヒドロキシ-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)マロノニトリル(化合物(UX-H3)、[実施例]の項の化合物(U-D)、2-(4,7-ジヒドロキシ-5-メチル-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)マロノニトリル(化合物(UX-H11)、[実施例]の項の化合物(U-E))、2-[4,7-ジ(2-エチルヘキサノート)-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン]-4,4-ジメチル-3-オキソペンタンニトリル([実施例]の項の化合物(U-F))、2-(4,7-ジアセテート-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)-4,4-ジメチル-3-オキソペンタンニトリル([実施例]の項の化合物(U-G))から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0086】
<他の機能性成分(FU)>
液状組成物(LC)は必要に応じて、紫外線遮蔽剤以外の1種以上の他の機能性成分(FU)を含むことができる。機能性成分(FU)の機能としては、特定の波長域の光または電波の選択的透過、選択的吸収または選択的反射;熱線の反射または吸収;反射防止;低反射;低放射;通電;加熱;撥水または撥油;耐擦傷;防汚;抗菌;着色等の加飾;これらの組合せ等が挙げられる。
【0087】
被膜は例えば、他の機能性成分(FU)として、1種以上の赤外線遮蔽剤を含むことができる。赤外線遮蔽剤としては公知のものを用いることができ、赤外線吸収タイプでも赤外線反射タイプでもよい。赤外線遮蔽剤としては、赤外線遮蔽粒子が好ましい。赤外線遮蔽粒子としては、1種以上の金属化合物を含む金属化合物粒子が好ましい。例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、セシウムドープ酸化タングステン(CWO(登録商標))、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、六ホウ化ランタン(LaB)、および五酸化バナジウム(V)からなる群より選ばれる1種以上の金属化合物を含む金属化合物粒子が好ましい。
【0088】
赤外線遮蔽粒子としては、セシウムドープ酸化タングステン(CWO(登録商標))および/または六ホウ化ランタン(LaB)を含む金属化合物粒子が特に好ましい。この金属化合物粒子を用いる場合、800~1500nmの波長の光に対する被膜の吸光度を、被膜m当たりに含まれる赤外線遮蔽粒子の質量で割った値を比較的大きくでき、例えば1.5以上にできる。この場合、被膜中の赤外線遮蔽粒子の含有量を減らせる。これによって、被膜のガラス基材との界面の近傍部分に存在する粒子の絶対数を減らせるため、ガラス基材と被膜との密着性が向上し、耐摩耗性が向上する。
【0089】
液状組成物(LC)が赤外線遮蔽粒子を含む場合、赤外線遮蔽粒子の原料として、赤外線遮蔽粒子、分散媒としての有機溶剤、および必要に応じて分散剤を含む分散液を用いることが好ましい。
【0090】
<可撓性付与成分(FL)>
液状組成物(LC)は、必要に応じて、被膜の成膜性を向上させ、被膜の初期クラックを抑制する、1種以上の可撓性付与成分(FL)を含むことができる。
1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)の種類に関係なく、可撓性付与成分(FL)は有効である。例えば、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)が4官能性加水分解性シリコン化合物のみからなる場合、得られる酸化珪素マトリクスは可撓性が充分でない場合がある。このような場合、可撓性付与成分(FL)を用いることで、酸化珪素マトリクスに適度な可撓性を付与し、機械的強度と耐初期クラック性の双方に優れた被膜を形成できる。
【0091】
可撓性付与成分(FL)としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびポリオキシアルキレン基を含む親水性有機樹脂等の有機樹脂;加熱または活性エネルギー線照射により有機樹脂となる、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー等の硬化性有機化合物;グリセリン等の樹脂以外の非硬化性有機化合物等が挙げられる。有機樹脂、硬化性有機化合物および非硬化性有機化合物は、公知のものを用いることができる。
【0092】
有機樹脂としては、加熱または活性エネルギー照射により硬化する硬化性樹脂が好ましい。活性エネルギー線としては、紫外線および電子線等が挙げられる。
熱硬化性樹脂、並びに、加熱により有機樹脂となる、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー等の熱硬化性化合物は、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)を加熱により硬化する際に、同時に硬化できる。
活性エネルギー線硬化性樹脂、並びに、活性エネルギー線照射により有機樹脂となる、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー等の活性エネルギー線硬化性化合物は、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)を加熱により硬化した後、活性エネルギー線照射により硬化できる。
硬化性樹脂および硬化性化合物は、硬化時に、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)と架橋反応してもよい。
【0093】
液状組成物(LC)中の可撓性付与成分(FL)の含有量は特に制限されず、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)の総量100質量部に対して、好ましくは0~100質量部、より好ましくは0.1~100質量部、特に好ましくは1.0~50質量部である。
【0094】
<触媒>
液状組成物(LC)は、必要に応じて、1種以上の触媒を含むことができる。
液状組成物(LC)の構成成分の原料に触媒が含まれる場合、1種以上の触媒には、原料中の触媒が含まれる。
触媒としては、酸触媒およびアルカリ触媒等が挙げられる。酸触媒としては、硝酸、塩酸、硫酸および燐酸等の無機酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、クエン酸、リンゴ酸およびグルタル酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸等のスルホン酸等が挙げられる。アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニア等が挙げられる。触媒としては、酸触媒が好ましい。触媒は、水溶液の形態で用いることができる。
液状組成物(LC)中の触媒の含有量は特に制限されない。1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)の総量100質量部に対して、1種以上の触媒の含有量(複数種の場合は、合計量)は、好ましくは0.01~10質量部である。
【0095】
<水>
液状組成物(LC)は、必要に応じて、水を含むことができる。液状組成物(LC)の構成成分の原料に水が含まれる場合、水には、原料中の水が含まれる。
被膜の形成工程では、雰囲気中の水分を利用して1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)の加水分解縮合反応を行えるので、液状組成物(LC)は水を含まなくてもよい。
液状組成物(LC)中の水の量は、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)を加水分解縮合させるために充分な量であれば、特に制限されない。具体的には、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)のSiO換算量に対して、モル比で1~20当量となる量が好ましく、4~18当量となる量がより好ましい
【0096】
<有機溶剤>
液状組成物(LC)は、必要に応じて、溶媒および/または分散媒として、1種以上の有機溶剤を含むことができる。液状組成物(LC)の構成成分の原料に有機溶剤が含まれる場合、1種以上の有機溶剤には、原料中の有機溶剤が含まれる。
【0097】
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、およびアセチルアセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、および酢酸メトキシエチル等のエステル類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メトキシエタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、および2-エトキシエタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソクタン、ベンゼン、トルエン、およびキシレン等の炭化水素類;アセトニトリルおよびニトロメタン等が挙げられる。
【0098】
上記の中でも、液状組成物(LC)中への溶解性および液状組成物(LC)の塗工性等の観点から、沸点が80~160℃のアルコールが好ましく、具体的には、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エトキシエタノール、4-メチル-2-ペンタノール、および2-ブトキシエタノール等が好ましい。
有機溶剤として、1種以上のアルコールと、水およびアルコールと混和可能なアルコール以外の1種以上の他の有機溶剤とを併用してもよい。
【0099】
液状組成物(LC)に含まれる水および有機溶剤等の液体媒体の総量は特に制限されず、液状組成物(LC)が好ましい固形分濃度になるように、調整できる。液状組成物(LC)の固形分濃度は、好ましくは3.5~50質量%、より好ましくは9~30質量%である。「固形分濃度」は、水および有機溶剤等の液体媒体を除いた不揮発成分の合計濃度である。
【0100】
<分散剤>
液状組成物(LC)は、必要に応じて、赤外線遮蔽粒子等の無機微粒子を分散させる1種以上の分散剤を含むことができる。液状組成物(LC)の構成成分の原料に分散剤が含まれる場合、1種以上の分散剤には、原料中の分散剤が含まれる。
分散剤としては、公知のものを用いることができる。
【0101】
<キレート剤>
液状組成物(LC)は、必要に応じて、1種以上のキレート剤を含むことができる。
液状組成物(LC)が赤外線遮蔽粒子と紫外線遮蔽剤とを含む場合、赤外線遮蔽粒子と錯体を形成できる1種以上のキレート剤を用いることができる。キレート剤は、赤外線遮蔽粒子の表面に配位して、赤外線遮蔽粒子に紫外線遮蔽剤がキレート結合するのを抑制できる
液状組成物(LC)の構成成分の原料にキレート剤が含まれる場合、1種以上のキレート剤には、原料中の分散剤が含まれる。
【0102】
キレート剤としては、公知のものを用いることができる。キレート剤は、可視光の吸収率が低いことが好ましい。キレート剤は、水および有機溶剤等の液体媒体の種類により適宜選択される。液体媒体は、水および/またはアルコールを含むことができ、これらの極性溶剤に可溶なキレート剤が好ましい。このようなキレート剤としては、マレイン酸および(メタ)アクリル酸等のカルボン酸;これらの(共)重合体(例えば、ポリマレイン酸およびポリアクリル酸等)が挙げられる。
【0103】
<他の添加剤>
液状組成物(LC)は、必要に応じて、上記以外の1種以上の添加剤を含むことができる。上記以外の添加剤としては、表面調整剤、消泡剤、粘性調整剤、密着性付与剤、光安定化剤、酸化防止剤、染料、顔料およびフィラー等が挙げられる。
【0104】
[ガラス積層体の製造方法]
上記の本開示のガラス積層体の製造方法は、特に制限されない。
一実施形態において、上記の本開示のガラス積層体の製造方法は、
加水分解性基を有する1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)と1種以上の有機紫外線遮蔽剤とを含む液状組成物(LC)を用意する工程(S1)と、
ガラス基材の一方の表面上に、液状組成物(LC)を塗工し塗工膜を形成して、塗工膜付きガラス基材を得る工程(S2)と、
塗工膜付きガラス基材を加熱し、塗工膜を硬化する工程(S3)とを有する。
【0105】
(工程(S1))
工程(S1)では、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)と1種以上の有機紫外線遮蔽剤とを含み、さらに必要に応じて1種以上の任意成分を含む、液状組成物(LC)を用意する。液状組成物(LC)の好ましい配合組成については、上記したので、ここでは省略する。
液状組成物(LC)は、公知方法にて、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)と1種以上の有機紫外線遮蔽剤とを含む複数種以上の材料を均一に混合することで調製できる。複数種の材料は、一括混合しても分割混合してもよく、配合手順も特に制限されない。
工程(S1)の環境温度は特に制限されず、通常の環境温度、例えば10~30℃でよい。
【0106】
(工程(S2))
工程(S2)では、ガラス基材を、略水平に、略垂直に、または略水平と略垂直との間の傾斜角度で配置し、ガラス基材の一方の表面上に、液状組成物(LC)を塗工し塗工膜を形成して、塗工膜付きガラス基材を得る。
車両窓ガラスの用途では、通常、ガラス基材は曲面を有する形状に加工されている。塗工膜は例えば、ガラス基材の車内面(通常凹面)上に、形成できる。
塗工方法としては特に制限されず、フローコート法、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ロールコート法、メニスカスコート法およびダイコート法等が挙げられる。
工程(S2)の環境温度は特に制限されず、通常の環境温度、例えば10~30℃でよい。
【0107】
液状組成物(LC)の組成、固形分濃度および塗工量、並びに、工程(S2)におけるガラス基材の配置角度等の条件を1つ以上調整することで、被膜の膜厚を調整できる。
液状組成物(LC)の固形分濃度は、高い方が、被膜の膜厚を厚くできる傾向がある。
液状組成物(LC)の塗工量は、多い方が、被膜の膜厚を厚くできる傾向がある。
ガラス基材の配置角度を調整することで、被膜の膜厚を調整できる。例えば、ガラス基材を立てて配置して、液状組成物(LC)をガラス基材の上部から流しかけるフローコート法では、ガラス基材の配置が地面に対して略垂直に近い方が、被膜の膜厚を薄くでき、ガラス基材の配置が地面に対して略水平に近い方が、被膜の膜厚を厚くできる傾向がある。
【0108】
(乾燥工程)
工程(S2)と工程(S3)との間に、必要に応じて、硬化反応が進まない条件で、塗工膜を乾燥する乾燥工程を実施してもよい。乾燥方法として特に制限されず、40~60℃程度の加熱乾燥、減圧乾燥、および40~60℃程度の減圧加熱乾燥が挙げられる。
【0109】
(工程(S3))
工程(S3)では、塗工膜付きガラス基材を加熱し、塗工膜を硬化する。加熱は、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)が硬化する温度条件で行う。工程(S3)は、本焼成のみの1段階または仮焼成と本焼成との複数段階で実施できる。
本焼成温度は特に制限されない。ガラス基材が強化ガラスである場合、好ましくは80~230℃、より好ましくは100~230℃、特に好ましくは150~230℃、最も好ましくは180~210℃である。ガラス基材が合わせガラスである場合、好ましくは80~110℃、より好ましくは90~110℃である。加熱時間は、液状組成物(LC)の組成および加熱温度等に応じて適宜設計できる。
【0110】
乾燥工程および工程(S3)における塗工膜付きガラス基材の配置の向きは、特に制限されない。乾燥工程および工程(S3)では、塗工膜側が上側になるように、塗工膜付きガラス基材を略水平に配置してよい。
液状組成物(LC)が、熱硬化性樹脂および/または熱硬化性化合物を含む場合、熱硬化性樹脂および/または熱硬化性化合物は、この工程(S3)で、1種以上の加水分解性シリコン化合物(SC)と共に硬化できる。
この工程(S3)後に被膜が形成される。
【0111】
(工程(S4))
液状組成物(LC)が活性エネルギー線硬化性樹脂および/または活性エネルギー線硬化性化合物を含む場合、工程(S3)の後に、被膜に活性エネルギー線を照射して、活性エネルギー線硬化性樹脂および/または活性エネルギー線硬化性化合物を硬化する工程(S4)を実施できる。活性エネルギー線としては、紫外線および電子線等が挙げられる。
以上のようにして、ガラス積層体が得られる。
【0112】
以上説明したように、本開示によれば、有機紫外線遮蔽剤を含む被膜を備え、初期状態で良好な紫外線遮蔽性能を有し、長期間の太陽光照射後も良好な紫外線遮蔽性を維持できる耐候性を有するガラス積層体を提供できる。
【0113】
[用途]
本開示のガラス積層体は任意の用途に使用でき、自動車、電車、船舶および航空機等の輸送機器用の窓ガラス;建築物の窓ガラス等に好適である。
本開示のガラス積層体は、自動車等の車両用の窓ガラス(フロントガラス、サイドガラス、およびリアガラス等)等に好適である。
【実施例0114】
以下に、実施例に基づいて本発明について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。例1~7、11~17、22~27が実施例、例8~10、18~21、28が比較例である。特に明記しない限り、室温は20~25℃である。
【0115】
[評価項目と評価方法]
評価項目と評価方法は、以下の通りである。
(透過スペクトル)
分光光度計(日立製作所製「U-4100」)を用いて、ガラス積層体の300~2500nmの波長域の透過率を測定し、透過スペクトルを得た。
得られた透過スペクトルから、375nmにおける透過率(T375)とISO9050-2003に規定される紫外線透過率(Tuv)とを求めた。
374nm以下の波長域に極大波長がある場合、極大波長とその極大波長における透過率(Tmv)とを求め、下式で表されるΔT(極大波長における透過率(Tmv)[%]と375nmにおける透過率(T375)[%]との差)を求めた。
ΔT[%]=Tmv-T375
【0116】
(促進耐候性試験後の紫外線遮蔽性能)
促進耐候性試験機(ダイプラウィンテス社「型式DW-R8PL」)およびKF-2フィルターを用い、ガラス積層体に対して、放射照度140mW/cmの条件で、295~430nmの波長域の光を490時間照射する促進耐候性試験を行った。なお、ガラス基材の非被膜形成面側から光を照射した。試験前と試験後に、上記方法にてISO9050-2003に規定される紫外線透過率(Tuv)を測定した。試験前の紫外線透過率(Tuv)に対する試験後の紫外線透過率(Tuv)の比(試験後のTuv/初期のTuv)を求めた。
【0117】
(被膜の膜厚)
触針式表面形状測定器(ULVAC社製「Dektak150」)を用いて、被膜の中心の膜厚[μm]を測定した。
【0118】
[材料]
各例で用いた材料は、以下の通りである。
<4官能性加水分解性シリコン化合物(4官能シラン)>
TEOS:テトラエトキシシラン。
【0119】
<3官能性加水分解性シリコン化合物(3官能シラン)>
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製「KBM-403」、
KBM-3066:1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、信越化学工業社製「KBM-3066」。
【0120】
<可撓性付与成分>
SR-SEP:熱硬化性化合物、多官能エポキシ化合物、ソルビトールポリグリシジルエーテル、阪本薬品工業社製「SR-SEP」、
ソルスパース41000:ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(日本ルーブリゾール社製「ソルスパース41000」)。
【0121】
<紫外外線吸収剤(紫外外線遮蔽剤)>
U-A:後記製造例(PE-11)で製造したベンゾジチオール系の紫外線吸収剤、
U-B:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF社製「Tinuvin(登録商標) 360」、
U-C:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、BASF社製「Uvinul(登録商標) 3050」)、
U-D:後記製造例(PE-12)で製造したベンゾジチオール系の紫外線吸収剤。
U-E:後記製造例(PE-13)で製造したベンゾジチオール系の紫外線吸収剤、
U-F:後記製造例(PE-14)で製造したベンゾジチオール系の紫外線吸収剤、
U-G:後記製造例(PE-15)で製造したベンゾジチオール系の紫外線吸収剤。
【0122】
<可視光吸収剤>
V-A:可視光吸収色素、山田化学工業社製「FDB-003」。
【0123】
<キレート剤>
PMA-50W:ポリマレイン酸水溶液、固形分40~48質量%、日油社製「ノンポール PMA-50W」、
マレイン酸:純度99.0質量%。
【0124】
<表面調整剤>
BYK377:シリコン系表面調整剤、ビッグケミー・ジャパン社製「BYK377」。
【0125】
<赤外線吸収剤(赤外線遮蔽剤)>
ITO分散液:30質量%インジウム錫酸化物(ITO)分散液。三菱マテリアル電子化成社製のITO分散液。
【0126】
[製造例(PE-1)~(PE-5)](ガラス板(G)の製造)
製造例(PE-1)~(PE-5)の各例において、表1に示す組成となるように、白金坩堝に複数種の原料を投入し、1550℃で2時間溶融し、得られた溶融液をカーボン板上に流し出し、徐冷して、ガラス板を得た。ガラス板の両面を研磨し、100mm×100mm、厚さ3.5mmのガラス板(G-A)~(G-E)を得た。
【0127】
【表1】
【0128】
[合成例(PE-11)](ベンゾジチオール系の紫外線吸収剤の合成)
1,2-ジブチルピラゾリジン-3,5-ジオン14.0g(0.066モル)に、1-(4,7-ジヒドロキシベンゾ[1,3]ジチオール-2-イリデン)ピペリジニウムアセテート19.7g(0.06モル)とN-メチルピロリドン60mLとを加え、窒素フロー条件下80℃で1時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却し、冷却後の反応液に希塩酸600mLを加え、析出した固体(粗結晶)をろ取した。得られた粗結晶をアセトニトリル40mLに加え、室温下で攪拌した。撹拌後に得られた固体(結晶)をろ取し、80℃で減圧乾燥して、(1,2-ジブチル-4-(4,7-ジヒドロキシ-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)ピラゾリジン-3,5-ジオン)(化合物(UX-H5))を23.9g得た。[実施例]の項では、この化合物をベンゾジチオール系の紫外線吸収剤(U-A)と言う。
【0129】
[合成例(PE-12)](ベンゾジチオール系の紫外線吸収剤の合成)
マロンニトリル8.6gに、1-(4,7-ジヒドロキシベンゾ[1,3]ジチオール-2-イリデン)ピペリジニウムアセテート45.7gとN-メチルピロリドン60mLとを加え、窒素フロー条件下60℃で1時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した。1.5Lの水に、これを攪拌しながら、冷却後の反応液を添加し、得られた結晶を吸引濾過し乾燥した。得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製して、2-(4,7-ジヒドロキシ-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)マロノニトリル(化合物(UX-H3)21.7gを得た。[実施例]の項では、この化合物をベンゾジチオール系の紫外線吸収剤(U-D)と言う。
【0130】
[合成例(PE-13)](ベンゾジチオール系の紫外線吸収剤の合成)
1-(4,7-ジヒドロキシベンゾ[1,3]ジチオール-2-イリデン)ピペリジニウムアセテート45.7gの代わりに、1-(4,7-ジヒドロキシ-5-メチル-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)ピペリジニウムアセテート47.6gを用いた以外は合成例(PE-12)と同様にして、2-(4,7-ジヒドロキシ-5-メチル-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)マロノニトリル(化合物(UX-H11))22.0gを得た。[実施例]の項では、この化合物をベンゾジチオール系の紫外線吸収剤(U-E)と言う。
【0131】
[合成例(PE-14)](ベンゾジチオール系の紫外線吸収剤の合成)
4,4-ジメチル-3-オキソペンタンニトリル16.3gに、1-[4,7-ジ(2-エチルヘキサノアート)-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン]ピペリジニウムアセテート80.8gとN-メチルピロリドン60mLとを加え、窒素フロー条件下60℃で1時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した。1.5Lの水に、これを攪拌しながら、冷却後の反応液を添加し、得られた結晶を吸引濾過し乾燥した。得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製して、2-[4,7-ジ(2-エチルヘキサノート)-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン]-4,4-ジメチル-3-オキソペンタンニトリル38.0gを得た。[実施例]の項では、この化合物をベンゾジチオール系の紫外線吸収剤(U-F)と言う。
【0132】
[合成例(PE-15)](ベンゾジチオール系の紫外線吸収剤の合成)
1-[4,7-ジ(2-エチルヘキサノアート)-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン]ピペリジニウムアセテート80.8gの代わりに、1-(4,7-ジアセテート-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)ピペリジニウムアセテート59.3gを用いた以外は合成例(PE-14)と同様にして、2-(4,7-ジアセテート-1,3-ベンゾジチオール-2-イリデン)-4,4-ジメチル-3-オキソペンタンニトリル29.7gを得た。[実施例]の項では、この化合物をベンゾジチオール系の紫外線吸収剤(U-G)と言う。
【0133】
[製造例(PE-21)](被膜形成用組成物(FM-A)の製造)
丸底フラスコに、紫外線吸収剤(U-A)を0.99g、エポキシシラン(KBM-403)を4.96g、酢酸ブチルを4.02g、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムを0.03g加え、105℃に加熱して5時間撹拌した。
得られた混合液の1.19gに、メチルエチルケトンを6.611g、メタノールを1.70g、純水を4.84g、テトラエトキシシラン(TEOS)を4.34g、ビスアルコキシシラン(KBM-3066)を0.24g、エポキシシラン(KBM-403)を0.25g、ポリマレイン酸水溶液(PMA-50W)を0.04g、マレイン酸を0.01g、表面調整剤(BYK377)を0.01g加え、50℃で2時間撹拌した。最後に、インジウム錫酸化物(ITO)分散液(30質量%)を0.75g加え、被膜形成用組成物(FM-A)を得た。
【0134】
[製造例(PE-22)](被膜形成用組成物(FM-B)の製造)
丸底フラスコに、紫外線吸収剤(U-A)を0.99g、エポキシシラン(KBM-403)を4.96g、酢酸ブチルを4.02g、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムを0.03g加え、105℃に加熱して5時間撹拌した。
得られた混合液の2.38gに、メチルエチルケトンを9.02g、メタノールを1.70g、純水を3.00g、テトラエトキシシラン(TEOS)を2.10g、ビスアルコキシシラン(KBM-3066)を0.24g、ポリマレイン酸水溶液(PMA-50W)を0.04g、マレイン酸を0.01g、表面調整剤(BYK377)を0.01g加え、50℃で2時間撹拌した。最後に、ITO分散液(30質量%)を1.50g加え、被膜形成用組成物(FM-B)を得た。
【0135】
[製造例(PE-23)](被膜形成用組成物(FM-C)の製造)
丸底フラスコに、紫外線吸収剤(U-A)を2.97g、エポキシシラン(KBM-403)を4.96g、酢酸ブチルを2.04g、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムを0.03g加え、105℃に加熱して5時間撹拌した。
得られた混合液の2.38gに、メチルエチルケトンを11.21g、メタノールを1.77g、純水を2.02g、テトラエトキシシラン(TEOS)を1.08g、ポリマレイン酸水溶液(PMA-50W)を0.04g、マレイン酸を0.01g、表面調整剤(BYK377)を0.01g加え、50℃で2時間撹拌した。最後に、ITO分散液(30質量%)を1.50g加え、被膜形成用組成物(FM-C)を得た。
【0136】
[製造例(PE-24)](被膜形成用組成物(FM-D)の製造)
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(U-B)1.95gと水17.55gとを、適量のジルコニアビーズとともにペイントシェイカーに入れて、混合した。
得られた混合液の19.50gに、エタノールを49.82g、テトラエトキシシラン(TEOS)を23.15g、エポキシシラン(KBM-403)を2.13g、トリエチレングリコールを0.48g、ポリエーテルリン酸エステル系ポリマー(ソルスパース41000)を0.28g、35質量%の塩酸水溶液を0.025g加え、50℃で2時間撹拌した。最後に、ITO分散液(30質量%)を1.50g加え、被膜形成用組成物(FM-D)を得た。
【0137】
[製造例(PE-25)](被膜形成用組成物(FM-E)の製造)
丸底フラスコに、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤(U-C)を2.09g、エポキシシラン(KBM-403)を5.24g、酢酸ブチルを4.25g、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムを0.03g加え、105℃に加熱して4時間撹拌した。
得られた混合液の11.61gに、メチルエチルケトンを39.44g、メタノールを8.87g、純水を13.80g、テトラエトキシシラン(TEOS)を10.80g、ビスアルコキシシラン(KBM-3066)を0.86g、酢酸水溶液(90質量%)を9.52g、多官能エポキシ化合物(SR-SEP)を0.17g、マレイン酸を0.01g、表面調整剤(BYK377)を0.06g加え、50℃で2時間撹拌した。最後に、ITO分散液(30質量%)を3.87g加え、被膜形成用組成物(FM-E)を得た。
【0138】
[製造例(PE-26)](被膜形成用組成物(FM-F)の製造)
丸底フラスコに、ベンゾジチオール系の紫外線吸収剤(U-D)を0.99g、エポキシシラン(KBM-403)を4.96g、酢酸ブチルを4.02g、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムを0.03g加え、105℃に加熱して5時間撹拌した。
得られた混合液の1.19gに、メチルエチルケトンを6.611g、メタノールを1.70g、純水を4.84g、テトラエトキシシラン(TEOS)を4.34g、ビスアルコキシシラン(KBM-3066)を0.24g、エポキシシラン(KBM-403)を0.25g、ポリマレイン酸水溶液(PMA-50W)を0.04g、マレイン酸を0.01g、表面調整剤(BYK377)を0.01g加え、50℃で2時間撹拌した。最後に、ITO分散液(30質量%)を0.75g加え、被膜形成用組成物(FM-F)を得た。
【0139】
[製造例(PE-27)](被膜形成用組成物(FM-G)の製造)
紫外線吸収剤(U-A)の代わりに紫外線吸収剤(U-E)を用いた以外は製造例(PE-21)と同様にして、被膜形成用組成物(FM-G)を得た。
【0140】
[製造例(PE-28)](被膜形成用組成物(FM-H)の製造)
紫外線吸収剤(U-A)の代わりに紫外線吸収剤(U-F)を用いた以外は製造例(PE-21)と同様にして、被膜形成用組成物(FM-H)を得た。
【0141】
[製造例(PE-29)](被膜形成用組成物(FM-I)の製造)
紫外線吸収剤(U-A)の代わりに紫外線吸収剤(U-G)を用いた以外は製造例(PE-21)と同様にして、被膜形成用組成物(FM-I)を得た。
【0142】
[製造例(PE-30)](被膜形成用組成物(FM-J)の製造)
紫外線吸収剤(U-A)0.99gの代わりに、紫外線吸収剤(U-A)0.50gおよび紫外線吸収剤(U-D)0.50gを用いた以外は製造例(PE-21)と同様にして、被膜形成用組成物(FM-J)を得た。
【0143】
[製造例(PE-31)](被膜形成用組成物(FM-K)の製造)
紫外線吸収剤(U-A)0.99gの代わりに、紫外線吸収剤(U-A)0.50gおよび紫外線吸収剤(U-E)0.50gを用いた以外は製造例(PE-21)と同様にして、被膜形成用組成物(FM-K)を得た。
【0144】
[製造例(PE-32)](被膜形成用組成物(FM-L)の製造)
紫外線吸収剤(U-C)2.09gの代わりに、紫外線吸収剤(U-C)1.05gおよび可視光吸収剤(V-A)1.05gを用いた以外は製造例(PE-25)と同様にして、被膜形成用組成物(FM-L)を得た。
【0145】
[例1]
ガラス板(G-A)を酸化セリウムと純水とを用いて洗浄した。このガラス板の一方の表面上に被膜形成用組成物(FM-A)を2g滴下し、スピンコーター(ミカサ社製「MS-200B」)を用いて、回転数300rpmの条件で、30秒間塗工した。その後、大気雰囲気下200℃で20分間、塗工膜を焼成して、紫外線吸収剤(U-A)を含む被膜を形成した。被膜の中心の膜厚は、1.2μmであった。
以上のようにして、ガラス積層体(GL-1)を得た。主な製造条件と評価結果を表2および表3に示す。これらの表において、表に不記載の条件は共通条件とした。
なお、表2中の「被膜の膜厚」は「被膜の中心の膜厚」である。表2に示す例1~28では、スピンコート法によって被膜を形成したので、被膜の膜厚は全体的にほぼ均一であり、被膜の中心の膜厚が被膜の主部の最大膜厚である。
得られたガラス積層体の透過スペクトルを図2に示す。T[%]は、透過率である。
【0146】
[例2~28]
表2に示す条件に変更した以外は例1と同様にして、ガラス積層体(GL-2)~(GL-28)を得た。評価結果を表3に示す。得られたガラス積層体の透過スペクトルの例を図3図8に示す。
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
【0149】
[結果のまとめ]
例1~7、11~17、22~27では、ガラス板(G-A)、(G-B)、(G-D)または(G-E)の一方の表面上に、ベンゾジチオール系の紫外線吸収剤(U-A)、(U-D)~(U-G)、またはこれらの組合せを含む被膜形成用組成物を用いて被膜を形成した。
これらの例で得られたガラス積層体はいずれも、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有し、375nmにおける透過率(T375)が6.0%以下であり、ISO9050-2003に準拠して測定される紫外線透過率(Tuv)が3.0%以下であり、初期状態で良好な紫外線遮蔽性能を有するものであった。
これらの例において、被膜の形成領域の面積に対する、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有する特定透過極大波長領域の面積の割合は、100%であった。
例1~7、11~17、22、24~27で得られたガラス積層体はいずれも、極大波長における透過率(Tmv)が375nmにおける透過率(T375)より高く、極大波長における透過率(Tmv)と375nmにおける透過率(T375)との差(ΔT)が0.1%以上(0.1~5.0%)であった。
例1~7、11~17、22~27で得られたガラス積層体はいずれも、促進耐候性試験前の紫外線透過率(Tuv)に対する、試験後の紫外線透過率(Tuv)の比が3.0以下であり、耐候性が良好であった。これらの例で得られたガラス積層体の可視光透過率は、70%以上であった。
【0150】
例8~10では、ガラス板(G-C)の一方の表面上に、ベンゾジチオール系紫外線吸収剤(U-A)を含む被膜形成用組成物を用いて被膜を形成した。
これらの例で得られたガラス積層体はいずれも、透過スペクトルが335~374nmの波長域に極大波長を有さず、330nm以下の波長域に極大波長を有するものであった。
これらの例で得られたガラス積層体はいずれも、極大波長における透過率(Tmv)が375nmにおける透過率(T375)より高く、極大波長における透過率(Tmv)と375nmにおける透過率(T375)との差(ΔT)が0.1%以上(0.1~5.0%)であった。
これらの例で得られたガラス積層体はいずれも、375nmにおける透過率(T375)が6.0%以下であり、ISO9050-2003に準拠して測定される紫外線透過率(Tuv)が3.0%以下であった。
しかしながら、これらの例で得られたガラス積層体はいずれも、促進耐候性試験前の紫外線透過率(Tuv)に対する、試験後の紫外線透過率(Tuv)の比が3.0超であり、耐候性が不良であった。
【0151】
例18~21、28では、ガラス板(G-A)または(G-D)の一方の表面上に、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤(U-B)またはベンゾフェノン系の紫外線吸収剤(U-C)を含み、ベンゾジチオール系紫外線吸収を含まない被膜形成用組成物を用いて被膜を形成した。
これらの例で得られたガラス積層体はいずれも、透過スペクトルが374nm以下の波長域に極大波長を有さないものであった。
これらの例で得られたガラス積層体はいずれも、促進耐候性試験前の紫外線透過率(Tuv)に対する、試験後の紫外線透過率(Tuv)の比が3.0超であり、耐候性が不良であった。
【0152】
本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更できる。
【符号の説明】
【0153】
1:ガラス積層体、10:ガラス基材、10S:表面、20:被膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8