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  • 特開-ボイラシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113775
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/00 20060101AFI20240816BHJP
   F23K 1/00 20060101ALI20240816BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F23C1/00 301
F23K1/00 Z
F23N1/00 113Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018954
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 渉
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏明
(72)【発明者】
【氏名】山田 記央
(72)【発明者】
【氏名】結城 健太
【テーマコード(参考)】
3K068
3K091
【Fターム(参考)】
3K068FA02
3K068FB13
3K068FC03
3K068FC06
3K068FD01
3K068FD10
3K068GA03
3K068HA02
3K091AA20
3K091BB02
3K091BB25
3K091CC12
3K091CC17
3K091CC23
3K091DD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示に係るボイラシステムによれば、異なる種類の燃料が混合された混合燃料がボイラに投入され、その混合比が変動しても、ボイラを安定して運転することが可能とする。
【解決手段】ボイラシステムは、貯留槽と、搬送装置と、測定部と、破砕機と、ボイラと、制御部とを備える。制御部は、測定部によって測定される密度に基づいて、搬送装置において搬送されている固体燃料のうち第1の固体燃料と第2の固体燃料との混合比を算出する第1の処理と、第1の固体燃料の発熱量と、第2の固体燃料の発熱量と、第1の処理において算出された混合比とに基づいて、搬送装置において搬送されている固体燃料の発熱量を算出する第2の処理と、第2の処理において算出された発熱量を備える固体燃料によるボイラへの供給熱量が所定の供給熱量に近づくように、搬送装置による固体燃料の搬送量を制御する第3の処理とを実行するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料を貯留するように構成された貯留槽と、
前記貯留槽から供給される前記固体燃料を搬送するように構成された搬送装置と、
前記搬送装置において搬送されている前記固体燃料の密度を測定するように構成された測定部と、
前記搬送装置によって搬送された前記固体燃料を破砕するように構成された破砕機と、
前記破砕機によって破砕された前記固体燃料を燃焼して蒸気を生成するように構成されたボイラと、
制御部とを備え、
前記固体燃料は、第1の固体燃料と、前記第1の固体燃料とは密度及び発熱量が異なる第2の固体燃料とを含み、
前記制御部は、
前記測定部によって測定される密度に基づいて、前記搬送装置において搬送されている前記固体燃料のうち前記第1の固体燃料と前記第2の固体燃料との混合比を算出する第1の処理と、
前記第1の固体燃料の発熱量と、前記第2の固体燃料の発熱量と、前記第1の処理において算出された前記混合比とに基づいて、前記搬送装置において搬送されている前記固体燃料の発熱量を算出する第2の処理と、
前記第2の処理において算出された前記発熱量を備える前記固体燃料による前記ボイラへの供給熱量が所定の供給熱量に近づくように、前記搬送装置による前記固体燃料の搬送量を制御する第3の処理とを実行するように構成されている、ボイラシステム。
【請求項2】
固体燃料を貯留するように構成された貯留槽と、
前記貯留槽から供給される前記固体燃料を搬送するように構成された搬送装置と、
前記搬送装置において搬送されている前記固体燃料の密度を測定するように構成された測定部と、
前記搬送装置によって搬送された前記固体燃料を破砕するように構成された破砕機と、
別の固体燃料を供給するように構成された少なくとも一つの供給部と、
前記破砕機によって破砕された前記固体燃料と、前記少なくとも一つの供給部から供給される前記別の固体燃料とを燃焼して蒸気を生成するように構成されたボイラと、
制御部とを備え、
前記固体燃料は、第1の固体燃料と、前記第1の固体燃料とは密度及び発熱量が異なる第2の固体燃料とを含み、
前記制御部は、
前記測定部によって測定される密度に基づいて、前記搬送装置において搬送されている前記固体燃料のうち前記第1の固体燃料と前記第2の固体燃料との混合比を算出する第1の処理と、
前記第1の固体燃料の発熱量と、前記第2の固体燃料の発熱量と、前記第1の処理において算出された前記混合比とに基づいて、前記搬送装置において搬送されている前記固体燃料の発熱量を算出する第2の処理と、
前記第2の処理において算出された前記発熱量を備える前記固体燃料による前記ボイラへの供給熱量と、前記少なくとも一つの供給部から供給される前記別の固体燃料による供給熱量との合計値が所定の供給熱量に近づくように、前記少なくとも一つの供給部からの前記別の固体燃料の供給量を制御する第3の処理とを実行するように構成されている、ボイラシステム。
【請求項3】
前記測定部は、前記搬送装置の幅方向において並ぶように配置された複数の高さ測定器を含み、
前記複数の高さ測定器はそれぞれ、各配置位置において、前記搬送装置によって搬送されている前記固体燃料の高さを測定するように構成されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の高さ測定器はそれぞれ、各配置位置において、前記搬送装置によって搬送されている前記固体燃料の高さに応じて高さ方向に変位するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2の処理において算出された前記発熱量に基づいて、前記破砕機内の圧力損失と、前記ボイラに供給される空気量との少なくとも一方を制御する第4の処理をさらに実行するように構成されている、請求項1又は2に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、バイオマス燃料(木質バイオマス)及び石炭を、同じ一つのボイラにおいて燃料として用いるシステムを開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】竹内謙太、近藤雅之、「バイオマス発電」、火力原子力発電、一般社団法人火力原子力発電技術協会、2021年10月20日発行、vol.72、No 10、p.29-41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料の貯留槽(バンカ)内の燃料を石炭からバイオマス燃料に切り替える際に、石炭が残存している当該貯留槽にバイオマス燃料を追加で投入することがある。これとは逆に、バイオマス燃料から石炭に切り替える際に、バイオマス燃料が残存している当該貯留槽に石炭を追加で投入することがある。また、石炭とバイオマス燃料を予め混合して貯留槽に供給する場合、均質に混合されないことがある。このように、異なる種類の燃料が同じ貯留槽に投入される場合、これらが混合された状態の燃料(混合燃料)がボイラに投入されることとなる。そして、その混合比は、一定ではなく常に変動する。
【0005】
しかしながら、バイオマス燃料と石炭とは、性状、密度、発熱量などが異なる。そのため、混合燃料がボイラに投入されると、当該混合燃料がボイラで燃焼したときの発熱量が大きく変動する。この場合、燃料の発熱量の目標値が固定値とされていた方式にてボイラを制御する際に、発熱量の変動が外乱となり、ボイラの運転に影響を与えうる。
【0006】
そこで、本開示は、異なる種類の燃料が混合された混合燃料がボイラに投入され、その混合比が変動しても、ボイラを安定して運転することが可能なボイラシステムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ボイラシステムの一例は、固体燃料を貯留するように構成された貯留槽と、貯留槽から供給される固体燃料を搬送するように構成された搬送装置と、搬送装置において搬送されている固体燃料の密度を測定するように構成された測定部と、搬送装置によって搬送された固体燃料を破砕するように構成された破砕機と、破砕機によって破砕された固体燃料を燃焼して蒸気を生成するように構成されたボイラと、制御部とを備える。固体燃料は、第1の固体燃料と、第1の固体燃料とは密度及び発熱量が異なる第2の固体燃料とを含む。制御部は、測定部によって測定される密度に基づいて、搬送装置において搬送されている固体燃料のうち第1の固体燃料と第2の固体燃料との混合比を算出する第1の処理と、第1の固体燃料の発熱量と、第2の固体燃料の発熱量と、第1の処理において算出された混合比とに基づいて、搬送装置において搬送されている固体燃料の発熱量を算出する第2の処理と、第2の処理において算出された発熱量を備える固体燃料によるボイラへの供給熱量が所定の供給熱量に近づくように、搬送装置による固体燃料の搬送量を制御する第3の処理とを実行するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るボイラシステムによれば、異なる種類の燃料が混合された混合燃料がボイラに投入され、その混合比が変動しても、ボイラを安定して運転することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、ボイラシステムの一例を示す概略図であり、図1(b)は、貯留槽内における固体燃料の種類の切り替わりの一例を示す概略図である。
図2図2(a)は、高さ測定器の近傍を示す側面図であり、図2(b)は、高さ測定器の近傍を示す斜視図である。
図3図3は、ボイラシステムの他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本明細書において、図の上、下、右、左というときは、図中の符号の向きを基準とすることとする。
【0011】
ボイラシステム1は、図1(a)に例示されるように、固体燃料Fをボイラ70(後述する)において燃焼して、例えば発電用の蒸気を生成するものである。そのために、ボイラシステム1は、ボイラ設備Bと、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0012】
ここで、本願のボイラシステム1において用いられる固体燃料Fは、種類(例えば、密度、発熱量などの性状)の異なる複数の固体燃料を含んでいてもよい。固体燃料Fは、例えば、石炭F1(第1の固体燃料)と、バイオマス燃料F2(第2の固体燃料)とを含んでいてもよい。石炭F1及びバイオマス燃料F2は、例えば、それぞれ数mm~数cm程度の粒状を呈していてもよい。石炭F1は、通常、黒色を呈している。バイオマス燃料F2は、例えば、木質バイオマス(ペレット、木屑、廃木材など)であってもよいし、バイオマス半炭化物であってもよい。バイオマス半炭化物は、例えば、木質バイオマスを150℃~400℃程度の温度(半炭化温度)で加熱すること(半炭化すること)によって得られるものであってもよく、いわゆるブラックペレット、又は、トレファイドペレットであってもよい。バイオマス半炭化物は、石炭F1と同様に、黒色を呈していてもよい。すなわち、固体燃料Fに含まれる種類の異なる複数の固体燃料は、同じ色であってもよいし、ほぼ同じ色(例えば、同系色、類似色など)であってもよい。
【0013】
バイオマス燃料F2は、通常、密度及び発熱量が石炭F1よりも低い。なお、本願において「密度」というときは、「かさ密度」(物質の内部に存在する空隙及び物質の表面に開口している細孔も体積に含めた場合の密度)をいうものとする。
【0014】
ボイラ設備Bは、貯留槽10と、搬送装置20と、重量測定器30(測定部)と、高さ測定器40(測定部)と、破砕機50と、空気供給部60と、ボイラ70とを含む。ボイラ設備Bにおいて、貯留槽10、搬送装置20、重量測定器30、高さ測定器40及び破砕機50は、固体燃料Fをボイラ70に供給する供給部2を構成している。
【0015】
貯留槽10は、固体燃料Fを貯留するように構成されている。すなわち、貯留槽10は、石炭F1及びバイオマス燃料F2の少なくとも一方を貯留するように構成されている。貯留槽10に貯留されている固体燃料Fは、搬送装置20上に排出される。
【0016】
ここで、図1(b)を参照して、貯留槽10内における石炭F1とバイオマス燃料F2との切り替わりの様子の一例を説明する。当初、貯留槽10内に石炭F1が貯留されている場合(図1(b)の(i)部分を参照)、貯留槽10から石炭F1が排出されていくと、貯留槽10内の石炭F1の量が減少していく(図1(b)の(ii)部分を参照)。このとき、追加の燃料としてバイオマス燃料F2が貯留槽10内に投入されると(図1(b)の(iii)部分を参照)、貯留槽10内の石炭F1が尽きるタイミングで、石炭F1とバイオマス燃料F2との混合物が貯留槽10から排出される(図1(b)の(iv)部分を参照)。
【0017】
その後、貯留槽10からバイオマス燃料F2が排出されていくと、貯留槽10内のバイオマス燃料F2の量が減少していく(図1(b)の(v)部分を参照)。このとき、追加の燃料として石炭F1が貯留槽10内に投入されると(図1(b)の(vi)部分を参照)、貯留槽10内のバイオマス燃料F2が尽きるタイミングで、石炭F1とバイオマス燃料F2との混合物が貯留槽10から排出される。貯留槽10内からバイオマス燃料F2が尽きると、再び、貯留槽10から石炭F1が排出されていく(図1(b)の(i)を参照)。
【0018】
搬送装置20は、図1(a)及び図2に例示されるように、コントローラCtrからの制御信号に応じて動作し、貯留槽10から排出された固体燃料Fを、破砕機50に搬送するように構成されている。搬送装置20は、固体燃料Fを水平方向に沿って搬送するように構成されていてもよい。搬送装置20は、例えば、ベルトコンベアであってもよい。
【0019】
重量測定器30は、図1(a)及び図2(a)に例示されるように、搬送装置20の所定区間を搬送されている固体燃料Fの重量を測定するように構成されている。重量測定器30において測定された重量のデータは、コントローラCtrに送信される。重量測定器30は、例えば、ロードセルであってもよい。
【0020】
高さ測定器40は、図1(a)及び図2(a)に例示されるように、搬送装置20において搬送されている固体燃料Fの高さを測定するように構成されている。高さ測定器40において測定された高さのデータは、コントローラCtrに送信される。
【0021】
高さ測定器40は、搬送装置20において搬送されている固体燃料Fの高さの変動に伴い、高さ方向に変位するように構成されていてもよい。高さ測定器40は、図2(a)に例示されるように、回転軸41と、板状部材42とを含んでいてもよい。回転軸41は、搬送装置20の幅方向に沿って延びている。板状部材42は、例えば、矩形状を呈する平板である。板状部材42の上端部は、回転軸41に接続されている。そのため、板状部材42の下端部は、搬送装置20において搬送されている固体燃料Fの高さの変動に伴い回転軸41周りに回動することにより、高さ方向に変位する(上下動する)。図2(a)に例示される高さ測定器40では、板状部材42の長さ及び角度に基づいて、固体燃料Fの高さを算出する。
【0022】
高さ測定器40は、図2(b)に例示されるように、搬送装置20の幅方向において並ぶように配置された複数の板状部材42を含んでいてもよい。複数の板状部材42はそれぞれ、上述のとおり、搬送装置20において搬送されている固体燃料Fの高さの変動に伴い回転軸41周りに回動することにより、高さ方向に変位する(上下動する)ように構成されている。
【0023】
図示していないが、高さ測定器40は、例えばマイクロ波等の電磁波を用いた非接触式の高さ測定センサであってもよい。この場合も、複数の高さ測定センサが、搬送装置20の幅方向において並ぶように配置されていてもよい。
【0024】
破砕機50は、図1(a)に例示されるように、コントローラCtrからの制御信号に応じて動作し、搬送装置20によって搬送された固体燃料Fを例えば微粉状に破砕するように構成されている。破砕機50は、いわゆるミルであり、所定範囲の粒径の微粉状となるように固体燃料Fを破砕するように構成されていてもよい。破砕機50によって生成された微粉状の固体燃料Fは、ボイラ70に供給される。
【0025】
空気供給部60は、コントローラCtrからの制御信号に応じて動作し、ボイラ70に燃焼用の空気を供給するように構成されている。
【0026】
ボイラ70は、破砕機50において生成された微粉状の固体燃料Fと、空気供給部60から供給される空気とを混合して燃焼し、水を加熱することにより、蒸気を生成するように構成されている。破砕機50において生成された微粉状の固体燃料Fと、空気供給部60から供給される空気とは、ボイラ70に接続されているノズル(図示せず)の先端部分で混合されてもよい。ボイラ70において生成された蒸気は、例えば、蒸気発電タービンに供給され、発電に用いられてもよい。
【0027】
コントローラCtrは、ボイラ設備Bを全体的に制御するように構成されている。コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、ボイラ設備Bの各部を動作させるための指示信号を生成し、それらに当該指示信号をそれぞれ送信する。
【0028】
コントローラCtrは、重量測定器30で測定された搬送装置20の所定区間における固体燃料Fの重量と、高さ測定器40で測定された固体燃料Fの高さとに基づいて、当該所定区間における固体燃料Fの密度を算出するように構成されている。すなわち、コントローラCtr(測定部)は、重量測定器30及び高さ測定器40と協働して、搬送装置20において搬送されている固体燃料Fの密度を測定するように構成されている。
【0029】
搬送装置20の所定区間の長さ、及び、搬送装置20の所定区間を搬送されている固体燃料Fの幅が既知の値であるので、当該密度は、所定区間の長さと、幅と、高さ測定器40で測定された固体燃料Fの高さ、重量測定器30で測定された固体燃料Fの重量とに基づいて算出されてもよい。具体的には、パラメータρ,L,W,H,wtをそれぞれ、
ρ:搬送装置20において搬送されている固体燃料Fの密度
L:搬送装置20の所定区間の長さ
W:搬送装置20の所定区間を搬送されている固体燃料Fの幅
H:高さ測定器40で測定された固体燃料Fの高さ
wt:重量測定器30で測定された搬送装置20の所定区間における固体燃料Fの重量
と定義したときに、密度ρは、式1で算出される。
ρ=wt/(L×W×H) ・・・(1)
なお、長さLは、搬送装置20の搬送速度、すなわち、単位時間あたりの搬送長さであってもよい。
【0030】
コントローラCtrは、算出された密度に基づいて、搬送装置20において搬送されている固体燃料Fのうち石炭F1とバイオマス燃料F2との混合比を算出するように構成されている。石炭F1の密度と、バイオマス燃料F2の密度とは、既知の値であるので、当該混合比は、石炭F1の密度と、バイオマス燃料F2の密度と、算出した固体燃料Fの密度とに基づいて算出されてもよい。具体的には、パラメータm,ρ1,ρ2をそれぞれ、
m:固体燃料Fに対する石炭F1の混合比(ただし、mは0以上で且つ1以下の値)
ρ1:石炭F1の密度
ρ2:バイオマス燃料F2の密度
と定義したときに、混合比mは、式2で算出される。
m=(ρ-ρ2)/(ρ1-ρ2) ・・・(2)
【0031】
コントローラCtrは、石炭F1の発熱量と、バイオマス燃料F2の発熱量と、算出された混合比とに基づいて、搬送装置20において搬送されている固体燃料Fの発熱量を算出するように構成されている。ここで、石炭F1の発熱量と、バイオマス燃料F2の発熱量とは、既知の値であるので、パラメータQ,q1,q2をそれぞれ、
Q:搬送装置20において搬送されている固体燃料Fの発熱量
q1:石炭F1の発熱量
q2:バイオマス燃料F2の発熱量
と定義したときに、発熱量Qは、式3で算出される。
Q=m・q1+(1-m)・q2 ・・・(3)
【0032】
コントローラCtrは、算出された発熱量Qを備える固体燃料Fによるボイラ70への供給熱量が所定の発熱量に近づくように、搬送装置20による固体燃料Fの搬送量を制御するように構成されている。ここで、パラメータX,Qrをそれぞれ
X:固体燃料Fの搬送量
Qr:発熱量Qを備える固体燃料Fによるボイラ70への供給熱量
と定義したときに、供給熱量Qrは、式4で算出される。
Qr=Q・X ・・・(4)
【0033】
ここで、所定の供給熱量とは、要求負荷量(例えば、要求される発電量)に応じた蒸気量(目標蒸気量)をボイラ70において生成するために要する供給熱量である。すなわち、パラメータQtを
Qt:所定の供給熱量
と定義したときに、コントローラCtrは、供給熱量Qrが供給熱量Qtに近づくように、供給熱量Qtと供給熱量Qrとの偏差に基づいて、搬送装置20による固体燃料Fの搬送量XをPID制御するように構成されていてもよい。
【0034】
コントローラCtrは、算出された発熱量Qに基づいて、破砕機50内の圧力損失を制御するように構成されていてもよい。ここで、バイオマス燃料F2は、石炭F1と比較して繊維質を多く含むため、破砕機50による破砕性が劣る。そこで、発熱量Qが比較的低下した場合には、固体燃料Fにおけるバイオマス燃料F2の含有量が多い(混合比mが小さい)ことから、コントローラCtrは、破砕機50内の圧力損失を相対的に低くするように破砕機50を制御してもよい。一方、発熱量Qが比較的増加した場合には、固体燃料Fにおける石炭F1の含有量が多い(混合比mが大きい)ことから、コントローラCtrは、破砕機50内の圧力損失を相対的に高くするように破砕機50を制御してもよい。
【0035】
コントローラCtrは、算出された発熱量Qに基づいて、ボイラ70に供給される空気量を制御するように構成されていてもよい。ところで、微粉状の石炭F1と、微粉状のバイオマス燃料F2とでは、燃焼に必要な空気量が異なる。そこで、発熱量Qが比較的低下した場合には、固体燃料Fにおけるバイオマス燃料F2の含有量が多い(混合比mが小さい)ことから、コントローラCtrは、ボイラ70に供給される空気量を相対的に少なくするように空気供給部60を制御してもよい。一方、発熱量Qが比較的増加した場合には、固体燃料Fにおける石炭F1の含有量が多い(混合比mが大きい)ことから、コントローラCtrは、ボイラ70に供給される空気量を相対的に多くするように空気供給部60を制御してもよい。
【0036】
[作用]
以上の例によれば、密度及び発熱量が異なる石炭F1及びバイオマス燃料F2が混合した混合物の状態で貯留槽10から供給されても、搬送装置20による搬送時に当該混合物の密度ρが測定されることで、密度ρに基づいて、当該混合物の発熱量Qが算出される。そして、当該発熱量Qを備える固体燃料Fによるボイラ70への供給熱量Qrが所定の供給熱量Qtに近づくように、搬送装置20による固体燃料Fの搬送量Xが制御される。そのため、供給熱量Qrが所定の供給熱量Qtよりも少ない場合には、搬送装置20による固体燃料Fの搬送量Xが多くなるように、搬送装置20が制御される。一方、供給熱量Qrが所定の供給熱量Qtよりも多い場合には、搬送装置20による固体燃料Fの搬送量Xが少なくなるように、搬送装置20が制御される。このように、ボイラシステム1によれば、混合物の発熱量Qの変動に応じて、ボイラ70に供給される固体燃料Fの量が適宜変動する。したがって、異なる種類の燃料が混合された混合燃料がボイラ70に投入されても、ボイラ70を安定して運転することが可能となる。
【0037】
以上の例によれば、搬送装置20の幅方向において並ぶように配置された複数の板状部材42が、各配置位置において、搬送装置20によって搬送されている固体燃料Fの高さを測定するように構成されている。そのため、搬送装置20によって搬送されている固体燃料Fの高さが搬送装置20の幅方向において異なっていても(搬送装置20上において均一化されていなくても)、複数の板状部材42によって、当該幅方向における固体燃料Fの高さがそれぞれ測定される。したがって、搬送装置20によって搬送されている固体燃料Fの密度を、より精度よく測定することが可能となる。
【0038】
以上の例によれば、複数の板状部材42はそれぞれ、各配置位置において、搬送装置20によって搬送されている固体燃料Fの高さに応じて高さ方向に変位するように構成されている。そのため、複数の板状部材42を、極めて簡易な構成で実現することが可能となる。
【0039】
以上の例によれば、コントローラCtrは、算出された発熱量Qに基づいて、破砕機50内の圧力損失と、ボイラ70に供給される空気量との少なくとも一方を制御しうる。この場合、破砕機50内の圧力損失と、ボイラ70に供給される空気量とがさらに制御されるので、ボイラ70による蒸気の生成をより精度よく制御することが可能となる。
【0040】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0041】
(1)図3に例示されるように、ボイラシステム1は、固体燃料Fをボイラ70に供給する供給部2に加えて、少なくとも一つの供給部(図3の例では供給部2A~2C)をさらに備えていてもよい。供給部2A~2Cは、固体燃料F(別の固体燃料)をボイラ70に供給するように構成されていてもよい。供給部2A~2Cは、供給部2と同様に、貯留槽10、搬送装置20、重量測定器30、高さ測定器40及び破砕機50を含んでいてもよい。供給部2A~2Cの貯留槽10は、単一の種類の固体燃料F(例えば、石炭F1)を貯留するように構成されていてもよい。
【0042】
ボイラシステム1は、供給部2,2A~2Cから供給される固体燃料F及び石炭F1が混合される混合部80をさらに備えていてもよい。混合部80は、固体燃料F及び石炭F1が混合された混合燃料を、ボイラ70に供給するように構成されていてもよい。
【0043】
図3に例示されるボイラシステム1においても、図1(a)に例示されるボイラシステム1と同様に、コントローラCtrは、供給部2の搬送装置20によって搬送される固体燃料Fの発熱量Qを密度ρに基づいて算出してもよい。コントローラCtrは、算出された当該発熱量Qを備える固体燃料Fによるボイラ70への供給熱量Qrと、他の供給部(供給部2A~2C)から供給される固体燃料Fによる供給熱量との合計値が、所定の供給熱量Qtに近づくように、供給部2の搬送装置20による固体燃料Fの搬送量Xを制御してもよい。
【0044】
(2)あるいは、図3に例示されるボイラシステム1において、コントローラCtrは、算出された当該発熱量Qを備える固体燃料Fによるボイラ70への供給熱量Qrと、他の供給部(供給部2A~2C)から供給される固体燃料Fによる供給熱量との合計値が、所定の供給熱量Qtに近づくように、他の供給部(供給部2A~2C)から供給される固体燃料Fを制御してもよい。コントローラCtrは、例えば、算出された当該発熱量Qを備える固体燃料Fによるボイラ70への供給熱量Qrと、他の供給部(供給部2A~2C)から供給される固体燃料Fによる供給熱量との合計値が、所定の供給熱量Qtに近づくように、他の供給部の少なくとも一つの搬送装置20による固体燃料Fの搬送量を制御してもよい。コントローラCtrは、例えば、算出された当該発熱量Qを備える固体燃料Fによるボイラ70への供給熱量Qrと、他の供給部(供給部2A~2C)から供給される固体燃料Fによる供給熱量との合計値が、所定の供給熱量Qtに近づき、且つ、他の供給部の各搬送装置20による固体燃料Fの搬送量が略均等となるように、制御してもよい。すなわち、算出された当該発熱量Qを備える固体燃料Fによるボイラ70への供給熱量Qrが所定の供給熱量Qtに対して不足する場合には、各供給部2A~2Cから略等しい量の固体燃料Fをボイラ70に供給することで、当該不足分を補ってもよい。
【0045】
この場合も、図1(a)に例示されるボイラシステム1と同様に、異なる種類の燃料が混合された混合燃料がボイラ70に投入されても、ボイラ70を安定して運転することが可能となる。加えて、図3に例示されるボイラシステム1では、混合物の発熱量Qの変動が、少なくとも一つの供給部(供給部2A~2C)からの固体燃料Fの供給量によって吸収される。そのため、混合物の発熱量Qの変動幅が大きい場合であっても、供給部2の搬送装置20に負荷を与えることなく、少なくとも一つの供給部(供給部2A~2C)の制御によって当該変動幅に対応することが可能となる。さらに、供給部2において発熱量Qを算出したのと同様の計算を少なくとも一つの供給部(供給部2A~2C)においても実行することで、当該変動幅に対してより正確に対応することが可能となる。
【0046】
[他の例]
例1.ボイラシステムの一例は、固体燃料を貯留するように構成された貯留槽と、貯留槽から供給される固体燃料を搬送するように構成された搬送装置と、搬送装置において搬送されている固体燃料の密度を測定するように構成された測定部と、搬送装置によって搬送された固体燃料を破砕するように構成された破砕機と、破砕機によって破砕された固体燃料を燃焼して蒸気を生成するように構成されたボイラと、制御部とを備える。固体燃料は、第1の固体燃料と、第1の固体燃料とは密度及び発熱量が異なる第2の固体燃料とを含む。制御部は、測定部によって測定される密度に基づいて、搬送装置において搬送されている固体燃料のうち第1の固体燃料と第2の固体燃料との混合比を算出する第1の処理と、第1の固体燃料の発熱量と、第2の固体燃料の発熱量と、第1の処理において算出された混合比とに基づいて、搬送装置において搬送されている固体燃料の発熱量を算出する第2の処理と、第2の処理において算出された発熱量を備える固体燃料によるボイラへの供給熱量が所定の供給熱量に近づくように、搬送装置による固体燃料の搬送量を制御する第3の処理とを実行するように構成されている。この場合、密度及び発熱量が異なる第1及び第2の固体燃料が混合した混合物の状態で貯留槽から供給されても、搬送装置による搬送時に当該混合物の密度が測定されることで、当該密度に基づいて、当該混合物の発熱量が算出される。そして、当該発熱量を備える固体燃料によるボイラへの供給熱量が所定の供給熱量に近づくように、搬送装置による固体燃料の搬送量が制御される。ここで、ボイラでは、蒸気の生成量に応じて、必要とされる燃料による供給熱量が設定される。そのため、ボイラへの供給熱量が所定の供給熱量よりも少ない場合には、搬送装置による固体燃料の搬送量が多くなるように、搬送装置が制御される。一方、ボイラへの供給熱量が所定の供給熱量よりも多い場合には、搬送装置による固体燃料の搬送量が少なくなるように、搬送装置が制御される。このように、例1のシステムによれば、混合物の発熱量の変動に応じて、ボイラに供給される固体燃料の量が適宜変動する。したがって、異なる種類の燃料が混合された混合燃料がボイラに投入され、その混合比が変動しても、ボイラを安定して運転することが可能となる。
【0047】
例2.ボイラシステムの他の例は、固体燃料を貯留するように構成された貯留槽と、貯留槽から供給される固体燃料を搬送するように構成された搬送装置と、搬送装置において搬送されている固体燃料の密度を測定するように構成された測定部と、搬送装置によって搬送された固体燃料を破砕するように構成された破砕機と、別の固体燃料を供給するように構成された少なくとも一つの供給部と、破砕機によって破砕された固体燃料と、少なくとも一つの供給部から供給される別の固体燃料とを燃焼して蒸気を生成するように構成されたボイラと、制御部とを備える。固体燃料は、第1の固体燃料と、第1の固体燃料とは密度及び発熱量が異なる第2の固体燃料とを含む。制御部は、測定部によって測定される密度に基づいて、搬送装置において搬送されている固体燃料のうち第1の固体燃料と第2の固体燃料との混合比を算出する第1の処理と、第1の固体燃料の発熱量と、第2の固体燃料の発熱量と、第1の処理において算出された混合比とに基づいて、搬送装置において搬送されている固体燃料の発熱量を算出する第2の処理と、第2の処理において算出された発熱量を備える固体燃料によるボイラへの供給熱量と、少なくとも一つの供給部から供給される別の固体燃料による供給熱量との合計値が所定の供給熱量に近づくように、少なくとも一つの供給部からの別の固体燃料の供給量を制御する第3の処理とを実行するように構成されている。この場合、密度及び発熱量が異なる第1及び第2の固体燃料が混合した混合物の状態で貯留槽から供給されても、搬送装置による搬送時に当該混合物の密度が測定されることで、当該密度に基づいて、当該混合物の発熱量が算出される。そして、当該発熱量を備える固体燃料によるボイラへの供給熱量と、少なくとも一つの供給部から供給される別の固体燃料による供給熱量との合計値が、所定の供給熱量に近づくように、少なくとも一つの供給部からの別の固体燃料の供給量が制御される。ここで、ボイラでは、蒸気の生成量に応じて、必要とされる燃料による供給熱量が設定される。そのため、固体燃料によるボイラへの供給熱量と、少なくとも一つの供給部から供給される別の固体燃料による供給熱量との合計値が所定の供給熱量よりも少ない場合には、少なくとも一つの供給部からの別の固体燃料の供給量が多くなるように、搬送装置が制御される。一方、固体燃料によるボイラへの供給熱量と、少なくとも一つの供給部から供給される別の固体燃料による供給熱量との合計値が所定の供給熱量よりも多い場合には、少なくとも一つの供給部からの別の固体燃料の供給量が少なくなるように、搬送装置が制御される。このように、例2のシステムによれば、混合物の発熱量の変動に応じて、少なくとも一つの供給部からボイラに供給される別の固体燃料の量が適宜変動する。したがって、異なる種類の燃料が混合された混合燃料がボイラに投入され、その混合比が変動しても、ボイラを安定して運転することが可能となる。加えて、例2のシステムでは、上記のとおり、混合物の発熱量の変動が、少なくとも一つの供給部からの別の固体燃料の供給量によって吸収される。そのため、混合物の発熱量の変動幅が大きい場合であっても、搬送装置に負荷を与えることなく、少なくとも一つの供給部の制御によって当該変動幅に対応することが可能となる。さらに、供給部において発熱量を算出したのと同様の計算を少なくとも一つの供給部においても実行することで、当該変動幅に対してより正確に対応することが可能となる。
【0048】
例3.例1又は例2のシステムにおいて、測定部は、搬送装置の幅方向において並ぶように配置された複数の高さ測定器を含み、複数の高さ測定器はそれぞれ、各配置位置において、搬送装置によって搬送されている固体燃料の高さを測定するように構成されていてもよい。この場合、搬送装置によって搬送されている固体燃料の高さが搬送装置の幅方向において異なっていても、複数の高さ測定器によって、当該幅方向における固体燃料の高さがそれぞれ測定される。そのため、搬送装置によって搬送されている固体燃料の密度を、より精度よく測定することが可能となる。
【0049】
例4.例3のシステムにおいて、複数の高さ測定器はそれぞれ、各配置位置において、搬送装置によって搬送されている固体燃料の高さに応じて高さ方向に変位するように構成されていてもよい。この場合、複数の高さ測定器を、極めて簡易な構成で実現することが可能となる。
【0050】
例5.例1~例4のいずれかのシステムにおいて、制御部は、第2の処理において算出された発熱量に基づいて、破砕機内の圧力損失と、ボイラに供給される空気量との少なくとも一方を制御する第4の処理をさらに実行するように構成されていてもよい。この場合、破砕機内の圧力損失と、ボイラに供給される空気量とがさらに制御されるので、ボイラによる蒸気の生成をより精度よく制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…ボイラシステム、2,2A~2C…供給部、10…貯留槽、20…搬送装置、30…重量測定器(測定部)、40…高さ測定器(測定部)、50…破砕機、60…空気供給部、70…ボイラ、B…ボイラ設備、Ctr…コントローラ(制御部、測定部)、F…固体燃料(別の固体燃料)、F1…石炭(第1の固体燃料、別の固体燃料)、F2…バイオマス燃料(第2の固体燃料)。
図1
図2
図3