(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113859
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/22 20060101AFI20240816BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240816BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240816BHJP
B25B 23/14 20060101ALI20240816BHJP
B25B 23/144 20060101ALI20240816BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B23Q17/22 Z
B24B41/06 L
B24B49/12
B25B23/14 620J
B25B23/144
B23Q17/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019102
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大波 豪
(72)【発明者】
【氏名】荒蒔 創介
(72)【発明者】
【氏名】中塚 敦
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C038
【Fターム(参考)】
3C029AA40
3C029EE20
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA22
3C034CA30
3C034CB13
3C034CB20
3C034DD20
3C038AA01
3C038BC01
3C038CA06
3C038CC08
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】複数のネジを所定の締め付け順で締め付ける。
【解決手段】第1締め付け順指示部80が、所定の締め付け順に応じた締め付けられるべきネジ300に光を照射することによって、作業者に対して、どのネジ300を締め付けるべきかを指示している。したがって、作業者は、所定の締め付け順で、複数のネジ300を締め付けることが容易となる。また、所定の締め付け順で、かつ、所定のトルクでネジ300を締め付けたこと、すなわち、チャックテーブル20の取り付けに問題がなかったことが記録される。したがって、加工不良が発生した時に、その原因から、チャックテーブル20の取り付け不良を除外することができる。したがって、加工不良の原因を追及するための時間を短くすることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のネジによって取り付けられる部品の取り付けを管理する機能を備えた加工装置であって、
所定の締め付け順に、該ネジを光で指示する締め付け順指示部と、
該締め付け順指示部によって光が当てられ指示された該ネジを、所定のトルクでの締め付けが完了した際に完了信号を出力する出力部を備えたトルクレンチで締め付けた際に、該トルクレンチの該出力部から出力された該完了信号を受信する受信部と、
該複数のネジに関する該所定の締め付け順と、該受信部の受信内容とを対応させて記録する記録部と、
を備える加工装置。
【請求項2】
該トルクレンチの該出力部は、無線通信によって、該受信部に該完了信号を出力する、
請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該部品を撮像する撮像部と、
該締め付け順指示部に指示された該ネジを該撮像部で撮像することによって、該ネジが該トルクレンチによって締められたか否かを判断する判断部と、をさらに備える、
請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チャックテーブルに保持されたウェーハを研削ホイールの研削砥石で研削する研削装置では、定期的にチャックテーブルを交換している。そして、チャックテーブルの上面を保持面形成用砥石で研削することによって、ウェーハを保持する保持面を形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このチャックテーブルでは、チャックテーブルの外周部分を、複数のネジでチャックテーブルベースにネジ固定している。そのため、ネジの締め付け順が決められた順とは異なると、チャックテーブルベースの上面とチャックテーブルの下面との間に隙間ができる。この場合、研削の際、この隙間が研削荷重によって変動するため、研削されたウェーハの面内厚みが所定の厚みにならなくなることがある。
【0004】
また、作業者は、すべてのネジを締め付けたか否か、また、決められた締め付け順で締め付けを行ったか否かについて、作業中に不安になることがある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、チャックテーブルのように複数のネジで取り付けられる部品について、複数のネジを所定の締め付け順で締め付けることを容易にするとともに、所定の締め付け順で、かつ、所定のトルクでネジを締め付けたことを管理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の加工装置(本加工装置)は、複数のネジによって取り付けられる部品の取り付けを管理する機能を備えた加工装置であって、所定の締め付け順に、該ネジを光で指示する締め付け順指示部と、該締め付け順指示部によって光が当てられ指示された該ネジを、所定のトルクでの締め付けが完了した際に完了信号を出力する出力部を備えたトルクレンチで締め付けた際に、該トルクレンチの該出力部から出力された該完了信号を受信する受信部と、該複数のネジに関する該所定の締め付け順と、該受信部の受信内容とを対応させて記録する記録部と、を備える。
【0007】
本加工装置では、該トルクレンチの該出力部は、無線通信によって、該受信部に該完了信号を出力してもよい。
【0008】
本加工装置は、該部品を撮像する撮像部と、該締め付け順指示部に指示された該ネジを該撮像部で撮像することによって、該ネジが該トルクレンチによって締められたか否かを判断する判断部と、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本加工装置では、締め付け順指示部が、所定の締め付け順に応じた締め付けられるべきネジに光を照射することによって、作業者に対して、どのネジを締め付けるべきかを指示することができる。したがって、作業者は、所定の締め付け順で、複数のネジを締め付けることが容易となる。
【0010】
また、本加工装置では、所定の締め付け順で、かつ、所定のトルクでネジを締め付けたこと、すなわち、部品の取り付けに問題がなかったことが記録される。したがって、加工不良が発生した時に、その原因から、部品の取り付け不良を除外することができる。したがって、加工不良の原因を追及するための時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】チャックテーブルおよびチャックテーブルベースの構成を示す斜視図である。
【
図3】第1締め付け順指示部の構成を示す説明図である。
【
図5】撮像部および第2締め付け順指示部を示す説明図である。
【
図6】トルクレンチの他の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、研削装置1は、加工装置の一例であり、チャックテーブル20の保持面22に保持されたウェーハ100を、研削砥石77によって研削加工する装置である。
【0013】
ウェーハ100は、たとえば、円形の半導体ウェーハであり、表面101および裏面102を含んでいる。
図1においては下方を向いているウェーハ100の表面101は、たとえば、複数のデバイスを保持しており、保護テープ105が貼着されることによって保護されている。ウェーハ100の裏面102は、研削加工が施される被加工面となる。
【0014】
研削装置1は、直方体状の基台10、上方に延びるコラム11、および、研削装置1の各部材を制御する制御部7を備えている。
【0015】
基台10の上面側には、開口部13が設けられている。そして、開口部13内には、ウェーハ保持機構30が配置されている。
【0016】
ウェーハ保持機構30は、ウェーハ100を保持する保持面22を備えたチャックテーブル20、チャックテーブル20を支持するチャックテーブルベース29、チャックテーブルベース29に連結されてチャックテーブル20を回転させる回転機構26、チャックテーブルベース29を支持する支持部材28、および、支持部材28を支える複数の支持柱27を含んでいる。
【0017】
図2に示すように、チャックテーブル20は、略円板状の枠体23を有しており、枠体23の上面に設けられた凹部内に、ポーラスセラミックス等の多孔質部材からなる保持部材21を有している。保持部材21の上面が、ウェーハ100を吸引保持する保持面22となっている。チャックテーブル20では、保持部材21が吸引源(図示せず)に連通されることにより、保持面22によってウェーハ100を吸引保持することができる。枠体23の上面である枠体面24は、保持面22を囲繞しており、保持面22と同一面(面一)となるように形成されている。
【0018】
枠体23における側面の下部には、枠体23よりも大きい外径を有する環状フランジ32が形成されている。環状フランジ32には、雄ネジであるネジ300を挿通させるための複数(本実施形態では8つ)の貫通穴321が、周方向に所定の間隔で形成されている。
【0019】
チャックテーブルベース29は、上面である支持面290によってチャックテーブル20を支持するように構成されている円板状体である。チャックテーブルベース29の支持面290には、吸引溝291、および、チャックテーブルベース29を貫通する吸引口292が形成されている。吸引溝291および吸引口292は、支持面290に支持されているチャックテーブル20の底面201に対向するように構成されており、吸引源からの吸引力をチャックテーブル20の保持面22に伝達するために用いられる。本実施形態では、吸引口292は、吸引溝291内および支持面290の中央に設けられている。
【0020】
さらに、チャックテーブルベース29の支持面290には、チャックテーブル20の貫通穴321に対応する位置に、複数(本実施形態では8つ)のネジ孔(雌ネジ)293が形成されている。
【0021】
チャックテーブルベース29に対してチャックテーブル20を取り付ける際には、チャックテーブルベース29の支持面290にチャックテーブル20の底面201を当接させた状態で、ネジ300を、上方から貫通穴321に挿入して、チャックテーブルベース29のネジ孔293に螺合させる。そして、各ネジ300を、所定の締め付け順序で、かつ、所定のトルクで締め付けることにより、チャックテーブル20の底面201がチャックテーブルベース29の支持面290に密着して、チャックテーブルベース29に対してチャックテーブル20が適切に取り付けられる。
【0022】
図1に示すように、ウェーハ保持機構30の回転機構26は、モータ261、エンコーダ265、モータ261に取り付けられている駆動プーリ262、チャックテーブルベース29に固定された回転軸263、および、駆動プーリ262と回転軸263とを連結している無端ベルト264を備え、モータ261の駆動力によってチャックテーブルベース29を回転させる。これにより、チャックテーブルベース29に支持されているチャックテーブル20が、保持面22の中心を通るテーブル回転軸を中心に回転する。なお、エンコーダ265は、モータ261によって回転されるチャックテーブル20の回転角度を読み取って認識する。
【0023】
チャックテーブル20の周囲には、チャックテーブル20とともにY軸方向に沿って移動されるカバー板39が設けられている。また、カバー板39には、Y軸方向に伸縮する蛇腹カバー12が連結されている。そして、ウェーハ保持機構30の下方には、Y軸方向移動機構40が配設されている。
【0024】
Y軸方向移動機構40は、チャックテーブル20と研削機構70の研削砥石77とを、相対的に、保持面22に平行な方向であるY軸方向に移動させる。本実施形態では、Y軸方向移動機構40は、研削機構70に対して、チャックテーブル20を含むウェーハ保持機構30を、Y軸方向に移動させるように構成されている。
【0025】
Y軸方向移動機構40は、Y軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール42、このY軸ガイドレール42上をスライドするY軸移動テーブル45、Y軸ガイドレール42と平行なY軸ボールネジ43、Y軸ボールネジ43に接続されているY軸モータ44、Y軸ボールネジ43の回転量を検知するためのY軸エンコーダ46、および、これらを保持する保持台41を備えている。
【0026】
Y軸移動テーブル45は、Y軸ガイドレール42にスライド可能に設置されている。Y軸移動テーブル45の下面には、ナット部(図示せず)が固定されている。このナット部には、Y軸ボールネジ43が螺合されている。Y軸モータ44は、Y軸ボールネジ43の一端部に連結されている。
【0027】
Y軸方向移動機構40では、Y軸モータ44がY軸ボールネジ43を回転させることにより、Y軸移動テーブル45が、Y軸ガイドレール42に沿って、Y軸方向に移動する。Y軸移動テーブル45には、ウェーハ保持機構30が載置されている。したがって、Y軸移動テーブル45のY軸方向への移動に伴って、チャックテーブル20を含むウェーハ保持機構30が、Y軸方向に移動する。
【0028】
Y軸エンコーダ46は、Y軸モータ44がY軸ボールネジ43を回転させることで回転され、Y軸ボールネジ43の回転量(回転回数および回転角度)を認識することができる。そして、本実施形態では、制御部7が、Y軸エンコーダ46によって認識されたY軸ボールネジ43の回転量を認識し、その認識結果に基づいて、Y軸方向に移動されるチャックテーブル20のY軸方向における位置を検知することができる。
【0029】
本実施形態では、ウェーハ保持機構30のチャックテーブル20は、保持面22によってウェーハ100を保持するための-Y方向側の保持位置401と、ウェーハ100が研削加工される+Y方向側の加工位置402との間を、Y軸方向移動機構40によって、Y軸方向に沿って移動される。
【0030】
基台10上の後方(+Y方向側)には、コラム11が立設されている。コラム11の前面には、ウェーハ100を研削する研削機構70、および、垂直移動機構50が設けられている。
【0031】
垂直移動機構50は、チャックテーブル20と研削機構70の研削砥石77とを、保持面22に垂直なZ軸方向(研削送り方向)に相対的に移動させる。本実施形態では、垂直移動機構50は、チャックテーブル20に対して、研削砥石77を含む研削機構70をZ軸方向に移動させるように構成されている。
【0032】
垂直移動機構50は、Z軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール51、このZ軸ガイドレール51上をスライドするZ軸移動テーブル53、Z軸ガイドレール51と平行なZ軸ボールネジ52、Z軸ボールネジ52に接続されているZ軸モータ54、Z軸ボールネジ52の回転量を検知するためのZ軸エンコーダ55、および、Z軸移動テーブル53に取り付けられたホルダ56を備えている。ホルダ56は、研削機構70を支持している。
【0033】
Z軸移動テーブル53は、Z軸ガイドレール51にスライド可能に設置されている。Z軸移動テーブル53には、ナット部(図示せず)が固定されている。このナット部には、Z軸ボールネジ52が螺合されている。Z軸モータ54は、Z軸ボールネジ52の一端部に連結されている。
【0034】
垂直移動機構50では、Z軸モータ54がZ軸ボールネジ52を回転させることにより、Z軸移動テーブル53が、Z軸ガイドレール51に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、Z軸移動テーブル53に取り付けられたホルダ56、および、ホルダ56に支持された研削機構70も、Z軸移動テーブル53とともにZ軸方向に移動する。
【0035】
Z軸エンコーダ55は、Z軸モータ54がZ軸ボールネジ52を回転させることで回転され、Z軸ボールネジ52の回転量(回転回数および回転角度)を認識することができる。そして、本実施形態では、制御部7が、Z軸エンコーダ55が認識したZ軸ボールネジ52の回転量を認識して、その認識結果に基づいて、Z軸方向に移動される研削機構70の研削砥石77の高さ位置を検知することができる。
【0036】
研削機構70は、保持面22に吸引保持されたウェーハ100を加工する加工機構の一例であり、ウェーハ100を研削加工する。研削機構70は、ホルダ56に固定されたスピンドルハウジング71、スピンドルハウジング71に回転可能に保持されたスピンドル72、スピンドル72を回転駆動するスピンドルモータ73、スピンドル72の下端に取り付けられたホイールマウント74、および、ホイールマウント74に支持された研削ホイール75を備えている。
【0037】
スピンドルハウジング71は、Z軸方向に延びるようにホルダ56に保持されている。スピンドル72は、チャックテーブル20の保持面22と直交するようにZ軸方向に延び、スピンドルハウジング71に回転可能に支持されている。
【0038】
スピンドルモータ73は、スピンドル72の上端側に連結されている。このスピンドルモータ73により、スピンドル72は、Z軸方向に延びる軸を中心として回転する。
【0039】
ホイールマウント74は、円板状に形成されており、スピンドル72の下端(先端)に固定されている。ホイールマウント74は、研削ホイール75を支持している。
【0040】
研削ホイール75は、ホイールマウント74の外径と略同径の外径を有するように形成されている。研削ホイール75は、金属材料から形成された円環状のホイール基台76を含む。ホイール基台76の下面には、全周にわたって、環状に配列された複数の研削砥石77が固定されている。研削砥石77は、スピンドル72とともにスピンドルモータ73によって回転され、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100の裏面102を研削する。
【0041】
また、本実施形態では、研削機構70は、研削ホイール75に代えて、保持面研削用砥石を含む保持面研削用ホイールを、ホイールマウント74に備えることもできる。
【0042】
また、開口部13の側部には、厚み測定器67が配設されている。厚み測定器67は、保持面ハイトゲージ68および上面ハイトゲージ69を有している。保持面ハイトゲージ68は、チャックテーブル20の保持面22と面一である枠体23の枠体面24に接触することによって、保持面22の高さを測定する。上面ハイトゲージ69は、保持面22に保持されたウェーハ100の上面に接触することによって、ウェーハ100の上面高さを測定する。厚み測定器67では、保持面ハイトゲージ68の測定値と上面ハイトゲージ69の測定値との差を算出することにより、ウェーハ100の厚さを測定する。
なお、保持面ハイトゲージ68および上面ハイトゲージ69は、非接触型のハイトゲージであってもよい。
【0043】
また、研削装置1は、タッチパネル8を備えている。タッチパネル8には、研削装置1に関する各種情報が表示される。また、タッチパネル8は、各種情報を設定するためにも用いられる。このように、タッチパネル8は、情報を入力するための入力部材として機能するとともに、情報を表示するための表示部材としても機能する。
【0044】
また、研削装置1は、その内部に、研削装置1の制御のための制御部7を有している。制御部7は、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、および、メモリ等の記憶媒体等を備えている。制御部7は、各種の処理を実行し、研削装置1の各構成要素を統括制御する。
【0045】
たとえば、制御部7は、研削装置1の上述した各部材を制御して、ウェーハ100に対する研削加工を実行する。
【0046】
また、制御部7は、ウェーハ保持機構30におけるチャックテーブルベース29に対して、作業者が、複数(本実施形態では8本)のネジ300によってチャックテーブル20を取り付ける際に、チャックテーブルベース29に対するチャックテーブル20の取り付けを管理する機能も有する。
すなわち、本実施形態にかかる研削装置1は、複数のネジによって取り付けられる部品(たとえばチャックテーブル20)の取り付けを管理する機能を備えている。
【0047】
この取り付け管理では、
図1に示した第1締め付け順指示部80、ならびに、制御部7の有する受信部15、記録部16および判断部17が用いられる。
【0048】
第1締め付け順指示部80は、所定の締め付け順に、ネジを光で指示するものである。すなわち、
図2に示したように、チャックテーブル20は、複数のネジ300によって、チャックテーブルベース29に対して取り付けられる。この取り付けの際、ネジ300は、チャックテーブル20の貫通穴321を介してチャックテーブルベース29のネジ孔293に螺合され、所定の締め付け順序で、かつ、所定のトルクで締め付けられる。
【0049】
そして、
図1に示した第1締め付け順指示部80は、このネジ300の締め付け順序を、光によって作業者に指示するように構成されている。
図1に示すように、第1締め付け順指示部80は、光を照射する投光部81、および、投光部81によって照射される光の位置(向き)を切り換える切換部82を有している。
【0050】
以下に、制御部7によって制御される、チャックテーブルベース29に対するチャックテーブル20の取り付けを管理する取り付け管理方法について説明する。以下に示す方法では、チャックテーブルベース29から既存のチャックテーブル20を取り外して、新たなチャックテーブル20を取り付ける例(チャックテーブル20を交換する例)について説明する。
【0051】
チャックテーブル20の交換では、制御部7は、まず、
図1に示すように、Y軸方向移動機構40を制御して、チャックテーブル20およびチャックテーブルベース29を含むウェーハ保持機構30を、-Y方向側の保持位置401に配置する。
【0052】
作業者は、この保持位置401にあるウェーハ保持機構30における既存のチャックテーブル20を、チャックテーブルベース29から取り外す。そして、作業者は、新たなチャックテーブル20を、チャックテーブルベース29の上に載置し、
図3に示すように、複数のネジ300を、チャックテーブル20の貫通穴321を介してチャックテーブルベース29のネジ孔293(
図2参照)に挿入して、弱いトルクでネジ孔293に仮締めする。これにより、チャックテーブル20がチャックテーブルベース29に仮止めされる。
【0053】
なお、
図1に示すように、保持位置401にあるウェーハ保持機構30の直上には、第1締め付け順指示部80が配置されている。そして、制御部7は、チャックテーブル20がチャックテーブルベース29に仮止めされた後、たとえばタッチパネル8を介して入力される作業者の指示に応じて、第1締め付け順指示部80を制御して、
図3に示すように、所定の締め付け順に、複数のネジ300を照らす。
【0054】
すなわち、まず、制御部7は、第1締め付け順指示部80の切換部82を制御して、投光部81からの光を、最初に締め付けられるべきネジ300に照射する(光照射工程)。そして、作業者は、投光されているネジ300の締め付けを実施する。
【0055】
この締め付けの際、作業者は、
図4に示すようなトルクレンチ500を用いる。トルクレンチ500は、細板形状の本体部501、本体部501の基端側に備えられたグリップ502、本体部501の先端側に備えられたヘッド部503を有しており、ヘッド部503には、ソケット510の頭部穴511に挿入可能な角ドライブ504が備えられている。このソケット510は、ネジ300を締め付けるために適したサイズを有している。トルクレンチ500によってネジ300を締め付ける場合、ネジ300の頭部穴301(
図2参照)にソケット510を差し込み、さらに、ソケット510の頭部穴511にトルクレンチ500のヘッド部503における角ドライブ504を差し込んで、トルクレンチ500を回動させる。
【0056】
また、グリップ502の端部には、締付けトルクを設定するための設定ノブ505が設けられている。トルクレンチ500は、設定ノブ505によって設定された所定のトルクがヘッド部503にかかってネジ300の締付けが完了したときに、そのことを作業者に通知するように構成されている。具体的には、たとえば、トルクレンチ500は、所定のトルクでの締付けが完了したときに、「カチッ」と音がなって、ヘッド部503が少し折れ曲がるように構成されている。
【0057】
また、トルクレンチ500は、出力部506を備えている。この出力部506は、所定のトルクでの締め付けが完了した際に、完了信号を外部に出力するものである。本実施形態では、トルクレンチ500の出力部506は、完了信号を、無線通信によって、研削装置1における制御部7の受信部15(
図1参照)に出力するように構成されている。
【0058】
作業者が、このようなトルクレンチ500を用いて、最初に締め付けられるべきネジ300を締め付けて、その締め付けが完了すると、トルクレンチ500の出力部506から完了信号が発信されて、研削装置1の受信部15が、この完了信号を受信する(完了信号受信工程)。すなわち、受信部15は、第1締め付け順指示部80によって光が当てられ指示されたネジ300をトルクレンチ500によって締め付けた際に、トルクレンチ500の出力部506から出力された完了信号を受信するように構成されている。
【0059】
制御部7は、最初に締め付けられるべきネジ300に関する完了信号が受信部15によって受信されたときに、
図3に示した第1締め付け順指示部80の切換部82を制御して、投光部81からの光を、次に締め付けられるべきネジ300に照射する(光照射工程)。そして、作業者が、トルクレンチ500を用いてこのネジ300を所定のトルクで締め付けると、トルクレンチ500の出力部506から、このネジ300に関する完了信号が出力されて、制御部7の受信部15によって受信される(完了信号受信工程)。
【0060】
このようにして、制御部7は、所定の締め付け順に、全てのネジ300に関して、光照射工程および完了信号受信工程を実施する。
【0061】
また、この際、制御部7の記録部16(
図1参照)は、複数のネジ300に関する所定の締め付け順と、受信部15が受信した内容とを対応させて記録する。すなわち、記録部16は、第1締め付け順指示部80によって所定の締め付け順で締め付けを指示された各ネジ300と、各ネジ300に関する受信部15の受信内容とを対応させて記録する。
【0062】
ここで、受信部15の受信内容は、ネジ300が所定のトルクで締め付けられたことを示す完了信号である。受信部15が全てのネジ300に関する完了信号を受信した場合、記録部16は、全てのネジ300が、所定の締め付け順で、所定のトルクで締め付けられたことを記録する。
【0063】
そして、全てのネジ300に関する記録部16による記録が完了した後、制御部7は、たとえば、タッチパネル8に、ネジの締め付けが完了した旨と記録部16の記録内容とを表示する。
【0064】
以上のように、本実施形態では、第1締め付け順指示部80が、所定の締め付け順に応じた締め付けられるべきネジ300に光を照射することによって、作業者に対して、どのネジ300を締め付けるべきかを指示している。したがって、作業者は、所定の締め付け順で、複数のネジ300を締め付けることが容易となる。
【0065】
また、本実施形態では、所定の締め付け順で、かつ、所定のトルクでネジ300を締め付けたこと、すなわち、チャックテーブル20の取り付けに問題がなかったことが、研削装置1に記録される。したがって、加工不良が発生した時に、その原因から、チャックテーブル20の取り付け不良を除外することができる。したがって、加工不良の原因を追及するための時間を短くすることができる。
【0066】
また、本実施形態では、ネジ300が締め付けられて、このネジ300に関する完了信号が受信部15によって受信されたときに、第1締め付け順指示部80の投光部81からの光が、次に締め付けられるべきネジ300に照射される。したがって、受信部15によって完了信号が受信されるまで、次に締め付けられるべきネジ300が指示されないため、作業者による締め付け不良を良好に抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、投光部81からの光が照射されるネジ300を、切換部82によって切り換えている。これに関し、制御部7は、投光部81の光が照射される位置(ネジ締め位置)を固定した状態で、ウェーハ保持機構30における回転機構26のモータ261によってチャックテーブルベース29およびチャックテーブル20を回転させることにより、光が照射されるネジ300(締め付けられるべきネジ300)を切り換えてもよい。
【0068】
この場合、
図1に示した受信部15によって完了信号が受信されたら、制御部7は、エンコーダ265によって読み取られたチャックテーブル20の回転角度(エンコーダ265の読み取り値)が、次に締め付けられるべきネジ300がネジ締め位置に配置される回転角度になるように、チャックテーブル20を回転させる。これにより、ネジ締め位置に配置されて光が照射されるネジ300が、次に締め付けられるべきネジ300に切り換えられる。この場合、ネジ締め位置を、作業者によってネジ300を締め付けやすい位置に設定することにより、作業者の作業効率を高めることができる。
【0069】
なお、上記の実施形態では、ネジ締め位置に配置されたネジ300に光が照射される。これに関し、次に締め付けられるべきネジ300がネジ締め位置に配置されたときに、トルクレンチ500を振動させるようにしてもよい。
【0070】
詳しくは、研削装置1の制御部7は、
図1に示すように、発信部18を備えている。この発信部18は、次に締め付けられるべきネジ300がネジ締め位置に位置付けられたら、トルクレンチ500に対して、次に締め付けられるべきネジ300がネジ締め位置に位置付けられたことを示す配置完了信号を発信する。
【0071】
また、この場合、トルクレンチ500は、
図6に示すように、配置完了信号を受信する受信部507と、トルクレンチ500を振動させる振動部508と、受信部507が配置完了信号を受信したら振動部508を振動させる振動制御部509と、をさらに備えている。
【0072】
この場合、研削装置1では、チャックテーブル20を回転させることにより、ネジ締め位置にネジ300が位置付けられたら、発信部18がトルクレンチ500に配置完了信号を発信し、トルクレンチ500の振動部508がトルクレンチ500を振動させる。この振動により、作業者に対して、次に締め付けられるべきネジ300がネジ締め位置に位置付けられたことを通知することができる。
【0073】
また、上記の実施形態では、
図1に示した回転機構26のモータ261によって、チャックテーブルベース29およびチャックテーブルを回転させているが、作業者によってこれらを回転させてもよい。つまり、作業者がチャックテーブルベース29およびチャックテーブル20を回転させ、エンコーダ265によって読み取られたチャックテーブル20の回転角度(エンコーダ265の読み取り値)が、次に締め付けられるべきネジ300がネジ締め位置に配置される回転角度になったら、上記の実施形態のように、光および/または振動を用いて、作業者に通知するようにしてもよい。
【0074】
なお、エンコーダ265は、チャックテーブル20の回転方向を認識するように構成されていてもよい。また、締め付けられるべきネジ300がネジ締め位置に配置されるようなチャックテーブル20の回転角度は、厳密な回転角度で無くてもよく、所定範囲内の角度であってもよい。つまり、ネジ締め位置に配置されているネジ300が、いま締め付けられているネジ300から次に締め付けられるべきネジ300に切り替わるようなチャックテーブル20の回転角度は、175度から185度までの範囲というように、ある範囲内の値として設定されていてもよい。これにより、作業者が、チャックテーブルベース29およびチャックテーブル20を回転させ、ネジ300の締め付け作業を実施することが容易となる。
【0075】
また、エンコーダ265は、接触式であってもよい。詳しくは、チャックテーブル20の回転軸の側面に等間隔に、ネジ300に対応するように突起を形成する。そして、エンコーダ265が、これらの突起に接触するタッチセンサを備える。この場合、エンコーダ265は、タッチセンサが反応した回数に基づいて、次に締め付けられるべきネジ300がネジ締め位置に位置付けられたことを検知し、上記したように光および/または振動を用いて、作業者に通知してもよい。
また、突起を金属で形成してもよい。この場合、エンコーダ265は、突起を非接触の近接センサによって検知するように構成されていてもよい。
【0076】
また、制御部7は、-Y方向側の端部の保持位置401(
図1参照)にあるウェーハ保持機構30の直上に、
図5に示すように、複数のネジ300によって取り付けられる部品であるチャックテーブル20を撮像する撮像部90を備えていてもよい。この撮像部90は、チャックテーブル20における全ての貫通穴321を撮像することが可能なように構成されている。
【0077】
この場合、制御部7の判断部17(
図1参照)は、第1締め付け順指示部80に指示されたネジ300(光を照射されたネジ300)を撮像部90で撮像することによって、その撮像画像に基づいて、このネジ300がトルクレンチ500のようなトルクレンチによって締められたか否かを判断する。すなわち、判断部17が、第1締め付け順指示部80によって指示されたネジ300が締め付けられたか否か、および、この締め付けがトルクレンチによって実施されたか否か、を判断することができる。そして、判断部17は、たとえば、判断結果を記録するとともに、タッチパネル8に表示する。
【0078】
この構成では、作業者は、ネジ300を、所定の順序でトルクレンチ500によって締め付けたか否かを、容易に確認することができる。
【0079】
また、この構成では、記録部16が、判断部17による判断結果をも記録するように構成されていてもよい。この場合、記録部16は、第1締め付け順指示部80によって所定の締め付け順で締め付けを指示された各ネジ300と、各ネジ300の締め付けがトルクレンチによって実施されたことと、各ネジ300に関する受信部15の受信内容(完了信号)とを、対応させて記録する。
【0080】
また、研削装置1は、第1締め付け順指示部80に代えて、
図5に示すように、リング状の構成を有する第2締め付け順指示部85を有していてもよい。この第2締め付け順指示部85は、チャックテーブル20の貫通穴321が設けられている環状フランジ32とほぼ同じ外径および内径を有するリング状部材86を備えている。また、リング状部材86には、チャックテーブル20の各貫通穴321に対応するように、複数(8つ)の発光部としての第1発光部871、第2発光部872、第3発光部873、第4発光部874、第5発光部875、第6発光部876、第7発光部877および第8発光部878が設けられている。
【0081】
このような第2締め付け順指示部85を用いる場合、制御部7は、ウェーハ保持機構30における回転機構26によってチャックテーブルベース29およびチャックテーブル20を回転させることにより、チャックテーブル20の貫通穴321の位置と、第2締め付け順指示部85の第1~第8発光部871~878の位置とを合わせる。
そして、制御部7は、光照射工程において、締め付けられるべきネジ300を、その上方に位置している発光部によって照らすことにより、作業者に指示する。すなわち、制御部7は、光を照射する第1~第8発光部871~878を所定の締め付け順に切り換えることにより、光が照射されるネジ300を切り換えて、締め付けられるべきネジを作業者に指示する。
この構成では、第1締め付け順指示部80を用いる場合に比して、チャックテーブル20の直上に撮像部90を配置しやすくなる。
【0082】
また、このような第2締め付け順指示部85は、
図1に示した研削機構70のホイールマウント74に、研削ホイール75に代えて取り付けられてもよい。この場合、スピンドルモータ73によってスピンドル72を回転させることにより、第2締め付け順指示部85における第1~第8発光部871~878の位置を容易に変更することができる。なお、この場合、チャックテーブル20をチャックテーブルベース29に取り付ける際には、ウェーハ保持機構30は、Y軸方向移動機構40により、+Y方向側の加工位置402に配置される。
【0083】
また、本実施形態では、複数のネジによって取り付けられる部品の一例としてチャックテーブル20が示されているとともに、制御部7が、チャックテーブルベース29に対するチャックテーブル20の取り付けを管理する例が示されている。これに関し、複数のネジによって取り付けられる部品は、たとえば、研削ホイール75であってもよい。研削ホイール75は、ホイールマウント74の上側から挿入される複数のネジ310(
図1参照)によって、ホイールマウント74に取り付けられる。
【0084】
この場合、制御部7は、ホイールマウント74に対する研削ホイール75の取り付けを管理する。なお、この場合には、たとえば、
図5に示したリング状の第2締め付け順指示部85が、ホイールマウント74の上方(たとえば、垂直移動機構50におけるホルダ56の下面)に配置され、ホイールマウント74の上面に露出しているネジ310の頭部に、所定の締め付け順にしたがって光を照射してもよい。
また、ホルダ56の下面に、
図1に示した投光部81を有する第1締め付け順指示部80が配置されてもよい。この場合、制御部7は、投光部81の光が照射される位置を固定した状態で、スピンドルモータ73によってスピンドル72を回転させることにより、光が照射されるネジ310を切り換えてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、加工装置の一例として研削装置が示されている。これに関し、本実施形態にかかる加工装置は、複数のネジによって取り付けられる部品を有するものであれば、ウェーハを切削する切削装置やウェーハに保護部材を形成する保護部材形成装置など、どのような装置であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
1:研削装置、7:制御部、8:タッチパネル、10:基台、11:コラム、
12:蛇腹カバー、13:開口部、15:受信部、16:記録部、17:判断部、
18:発信部、20:チャックテーブル、21:保持部材、22:保持面、23:枠体、
24:枠体面、26:回転機構、27:支持柱、28:支持部材、
29:チャックテーブルベース、30:ウェーハ保持機構、32:環状フランジ、
39:カバー板、40:Y軸方向移動機構、41:保持台、42:Y軸ガイドレール、
43:Y軸ボールネジ、44:Y軸モータ、45:Y軸移動テーブル、
46:Y軸エンコーダ、50:垂直移動機構、51:Z軸ガイドレール、
52:Z軸ボールネジ、53:Z軸移動テーブル、54:Z軸モータ、
55:Z軸エンコーダ、56:ホルダ、67:厚み測定器、68:保持面ハイトゲージ、
69:上面ハイトゲージ、70:研削機構、71:スピンドルハウジング、
72:スピンドル、73:スピンドルモータ、74:ホイールマウント、
75:研削ホイール、76:ホイール基台、77:研削砥石、
80:第1締め付け順指示部、81:投光部、82:切換部、
85:第2締め付け順指示部、86:リング状部材、871~878:発光部、
90:撮像部、
100:ウェーハ、101:表面、102:裏面、105:保護テープ、201:底面、
261:モータ、262:駆動プーリ、263:回転軸、264:無端ベルト、
265:エンコーダ、290:支持面、291:吸引溝、292:吸引口、
293:ネジ孔、300:ネジ、301:頭部穴、321:貫通穴、
401:保持位置、402:加工位置、
500:トルクレンチ、501:本体部、502:グリップ、503:ヘッド部、
504:角ドライブ、505:設定ノブ、506:出力部、507:受信部、
508:振動部、509:振動制御部
510:ソケット、511:頭部穴