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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113929
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】凍結保存用ボックス
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20240816BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20240816BHJP
   F25D 3/10 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
B65D81/18 D
B65D81/38 N
F25D3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019212
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591101490
【氏名又は名称】エイブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 滋弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 卓
(72)【発明者】
【氏名】富田 悟志
【テーマコード(参考)】
3E067
3L044
【Fターム(参考)】
3E067AA01
3E067AB89
3E067AC04
3E067AC12
3E067BA03B
3E067BA05C
3E067BB11C
3E067BB14C
3E067BC03B
3E067BC06C
3E067BC07C
3E067CA18
3E067CA19
3E067EA17
3E067EA32
3E067EB27
3E067EC35
3E067FA03
3E067FC01
3E067GA03
3E067GA11
3E067GB02
3L044AA04
3L044BA04
3L044CA11
3L044DB03
3L044KA04
(57)【要約】
【課題】収納される複数の試料を予備凍結させる際に、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることが可能な凍結保存用ボックスを提供する。
【解決手段】上部が開口した有底筒状の箱体からなり、その内側に収納される試料ごとに区画された複数の保存空間kを有するボックス本体2と、保存空間kの周囲全体を覆う防壁部材4と、を備え、ボックス本体2の底板2Aの少なくとも一部が、網目状の底板と、多孔状の底板と、複数の開口部2aが設けられた底板とのいずれかで形成されている、凍結保存用ボックス1を選択する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結保存対象である試料を収納する凍結保存用ボックスであって、
上部が開口した有底筒状の箱体からなり、その内側に収納される試料ごとに区画された複数の保存空間を有するボックス本体と、
前記保存空間の周囲全体を覆う防壁部材と、を備え、
前記ボックス本体の底板の少なくとも一部が、網目状の底板と、多孔状の底板と、複数の開口部が設けられた底板とのいずれかで形成されている、凍結保存用ボックス。
【請求項2】
複数の前記保存空間が前記底板上に配置される、請求項1に記載の凍結保存用ボックス。
【請求項3】
前記ボックス本体の内側の空間を複数の前記保存空間に区画する、複数の仕切り部材をさらに備え、
前記仕切り部材の少なくとも一部が、網目状の板状部材と、多孔状の板状部材と、複数の開口部が設けられた板状部材とのいずれかで形成されている、請求項1に記載の凍結保存用ボックス。
【請求項4】
前記ボックス本体の上部の開口を閉塞する蓋部材をさらに備え、
前記蓋部材の天板の少なくとも一部が、網目状の天板と、多孔状の天板と、複数の開口部が設けられた天板とのいずれかで形成されている、請求項1に記載の凍結保存用ボックス。
【請求項5】
前記防壁部材が、前記ボックス本体の内側に位置し、前記保存空間の周囲全体を覆う筒状である、請求項1記載の凍結保存用ボックス。
【請求項6】
前記防壁部材が前記保存空間への冷熱の流入を防ぐことができる部材で形成されている請求項1記載の凍結保存用ボックス。
【請求項7】
前記保存空間への冷熱の流入を防ぐことができる部材は、前記ボックス本体の側壁よりも熱伝導率が低い材料である請求項6記載の凍結保存用ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結保存用ボックス、及び予備凍結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、新薬の開発や医療の基礎研究では、血液、実験動物の精子、受精卵、細胞などの生物学的試料(以下、単に「試料」という。)が用いられている。試料は、常温では生物学的作用により劣化する。このため、凍結保存装置などにより試料を凍結保存するのが一般的である。凍結保存装置としては、液体窒素を用いた凍結保存装置が、長期間安定して保存できるため、広く用いられている。
【0003】
上述した試料を例えば-150℃以下の低温下で凍結保存する場合、常温の試料を-150℃まで急冷させると、細胞の生存率が低下することが知られている。このため、試料を凍結保存する前に、例えばプログラムフリーザや機械式冷凍機などの予備凍結装置を用いて、常温から所定の温度(例えば-80℃)まで冷却速度を制御しながら、試料を予備凍結させることが行われている。
【0004】
また、試料を予備凍結させる際は、先ず、試料を培地と共にバイアル等の凍結保存用容器に充填した後、その内側が升目状に区画された凍結保存用ボックスの保存空間に凍結保存用容器を収納する。
【0005】
さらに、凍結保存用ボックスは、凍結保存用ラックに収納される(例えば、下記特許文献1を参照。)。凍結保存用ラックは、ラック部が上下方向に複数段に亘って設けられたラック本体を備え、ラック部毎に凍結保存用ボックスを収納する。
【0006】
そして、試料を予備凍結させる際は、複数の凍結保存用ラックが収容可能なプログラムフリーザ等の予備凍結装置を用いて、凍結保存用ラックのラック部毎に収納された凍結保存用ボックスを冷却する。
【0007】
プログラムフリーザは、温度調節計により設定された温度制御プログラムに従い、液体窒素等からなる冷媒の噴出量又は冷凍機の出力等を調節することによって、凍結保存用ラックを収容する収容空間の温度を適切に冷却制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-061460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した予備凍結装置では、試料の冷却速度により細胞内外での氷晶形成状態が変化するため、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることが重要である。
【0010】
特に、近年では細胞製品等の実用化に伴って、一度に処理する試料の数が増大してきている。このため、ロット間やロット内において、凍結保存用ラック毎の冷却温度の均一化だけでなく、凍結保存用ボックス毎の冷却温度の均一化、更には凍結保存用容器毎の冷却温度の均一化が求められている。
【0011】
しかしながら、上述したプログラムフリーザ等による冷却制御において、収容空間における冷気の伝達状況に差が生じるため、この収容空間における凍結保存用ラックの配置の違いや、複数のラック部に対する凍結保存用ボックスの配置の違い、更には凍結保存用ボックス内における凍結保存用容器の配置の違いによって、試料の冷却温度に差が生じることになる。
【0012】
また、一度に処理される凍結保存用ボックスや凍結保存用容器の数が増大することによって、このような試料の冷却温度に差が生じる状況がより顕著になっている。特に、凍結保存用ボックス内における凍結保存用容器の収納密度が増加する場合、ボックス内の中央部への冷気の導入が制限されると共に、隣り合う凍結保存用容器の間で潜熱等により冷気を奪い合う。このため、ボックス内の隅部や端部に配置された凍結保存用容器は相対的に冷え易く、ボックス内の中央部に配置された凍結保存用容器は相対的に冷え難くなっている。
【0013】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、収納される複数の試料を予備凍結させる際に、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることが可能な凍結保存用ボックス、及び予備凍結装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を提供する。
[1] 凍結保存対象である試料を収納する凍結保存用ボックスであって、
上部が開口した有底筒状の箱体からなり、その内側に収納される試料ごとに区画された複数の保存空間を有するボックス本体と、
前記保存空間の周囲全体を覆う防壁部材と、を備え、
前記ボックス本体の底板の少なくとも一部が、網目状の底板と、多孔状の底板と、複数の開口部が設けられた底板とのいずれかで形成されている、凍結保存用ボックス。
[2] 複数の前記保存空間が前記底板上に配置される、[1]に記載の凍結保存用ボックス。
[3] 前記ボックス本体の内側の空間を複数の前記保存空間に区画する、複数の仕切り部材をさらに備え、
前記仕切り部材の少なくとも一部が、網目状の板状部材と、多孔状の板状部材と、複数の開口部が設けられた板状部材とのいずれかで形成されている、[1]又は[2]に記載の凍結保存用ボックス。
[4] 前記ボックス本体の上部の開口を閉塞する蓋部材をさらに備え、
前記蓋部材の天板の少なくとも一部が、網目状の天板と、多孔状の天板と、複数の開口部が設けられた天板とのいずれかで形成されている、[1]乃至[3]のいずれかに記載の凍結保存用ボックス。
[5] 前記防壁部材が、前記ボックス本体の内側に位置し、前記保存空間の周囲全体を覆う筒状である、[1]に記載の凍結保存用ボックス。
[6] 前記防壁部材が前記保存空間への冷熱の流入を防ぐことができる部材で形成されている[1]に記載の凍結保存用ボックス。
[7] 前記保存空間への冷熱の流入を防ぐことができる部材は、前記ボックス本体の側壁よりも熱伝導率が低い材料である[6]に記載の凍結保存用ボックス。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、収納される複数の試料を予備凍結させる際に、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることが可能な凍結保存用ボックス、及び予備凍結装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る凍結保存用ボックスを収容可能な凍結保存用ラックを備えた予備凍結装置の構成を示す正面図である。
図2図1に示す予備凍結装置の構成を示す上面図である。
図3図1に示す凍結保存用ラックの構成を示す正面図である。
図4図1に示す凍結保存用ラックの構成を示す側面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る凍結保存用ボックスの構成を示す側面図である。
図6】実施形態の凍結保存用ボックスの構成を示す上面図である。
図7図5中に示す線分A-Aによる平面図である。
図8図7中に示す線分B-Bによる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
(予備凍結装置)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば図1及び図2に示す凍結保存用ラック201を備えた予備凍結装置100の構成について説明する。
なお、図1は、凍結保存用ラック201を備えた予備凍結装置100の構成を示す正面図である。図2は、凍結保存用ラック201を備えた予備凍結装置100の構成を示す上面図である。
【0019】
本実施形態の予備凍結装置100は、図1及び図2に示すように、複数(本実施形態では3つ)の凍結保存用ラック201を収容する方形状の収容空間Kを有して、温度調節計により設定された温度制御プログラムに従い、液体窒素からなる冷媒の噴出量を調節することによって、凍結保存用ラック201を収容する収容空間Kの温度を適切に冷却制御するプログラムフリーザである。
【0020】
具体的に、この予備凍結装置100は、収容空間Kに冷媒となる液体窒素を供給する供給口101と、供給口101を介して供給された液体窒素を噴出する噴出口102と、噴出口102から噴射された液体窒素を拡散させるファン103と、収容空間Kにおいて気相状態となった液体窒素を排気する排気口104と、収容空間Kに臨む上部開口部を開閉する蓋体105と、各部の制御を行う制御部106とを備えている。
【0021】
本実施形態では、収容空間Kに配置される凍結保存用ラック201の背面側の中央部にファン103が配置されている。噴出口102は、このファン103の近傍に位置して、ファン103に向けて液体窒素を噴出する。排気口104は、収容空間Kの側方に配置されている。
【0022】
(凍結保存用ラック)
次に、上記凍結保存用ラック201の具体的な構成について、図3図4を参照しながら説明する。
【0023】
なお、図3は、凍結保存用ラック201の構成を示す正面図である。図4は、凍結保存用ラック201の構成を示す側面図である。
【0024】
凍結保存用ラック201は、図3及び図4に示すように、ラック部202が上下方向に複数段(本実施形態では7段)に亘って設けられたラック本体203を備えている。
【0025】
ラック本体203は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属や、耐低温性に優れたステンレス鋼などの金属などからなり、ラック部202の各々の底面を構成する複数(本実施形態では7つ)の底板204と、その最上段に位置するラック部の上面を構成する天板205と、その側面を構成する4つの支柱206a,206bとを有している。
【0026】
ラック本体203は、これら複数の底板204、天板205及び4つの支柱206a,206bをネジ止めや溶接等(本実施形態ではネジ止め)により接合することによって、全体として上下方向に延びる略直方体形状を有している。
【0027】
4つの支柱206a,206bは、複数の底板204及び天板205の四隅を支持している。また、4つの支柱206a,206bのうち、ラック本体203の正面側に位置する2つの支柱206aは、断面略I字状を為す長尺の板材により構成され、ラック本体203の側面側に取り付けられている。一方、ラック本体203の背面側に位置する2つの支柱206bは、断面略L字状を為す長尺の板材により構成され、ラック本体203の背面側及び側面側に取り付けられている。
【0028】
これにより、凍結保存用ラック201では、後述するラック部202の各々に対して収納される凍結保存用ボックス1をラック本体203の正面側から前後方向にスライド自在に出入することが可能となっている。
【0029】
さらに、天板205の両側には、一対の取手部207が回動自在に取り付けられている。
【0030】
(凍結保存用ボックス及び凍結保存用容器)
次に、本発明の一実施形態として、例えば図5図8に示す凍結保存用ボックス1及び凍結保存用容器300の構成について説明する。
【0031】
なお、図5は、凍結保存用ボックス1の構成を示す側面図である。図6は、凍結保存用ボックス1の構成を示す上面図である。図7は、図5中に示す線分A-Aによる平面図である。図8は、図7中に示す線分B-Bによる断面図である。
【0032】
本実施形態の凍結保存用ボックス1は、図5図8に示すように、凍結保存の対象である試料を凍結保存する際に用いるものであり、試料が充填された凍結保存用容器300を複数収納する箱体である。凍結保存用ボックス1は、ボックス本体2、蓋部材3、防壁部材4、仕切り部材5,6を備えて、概略構成されている。
【0033】
ボックス本体2は、図5及び図6に示すように、上部が開口した有底筒状(本実施形態では、方形状)の箱体からなり、凍結保存用ボックス1の下側の筐体を構成する。ボックス本体2は、図7及び図8に示すように、その内側に収納される凍結保存用容器300毎に、升目状に区画された複数(本実施形態では5×5の25個)の保存空間kを有する。
【0034】
ボックス本体2の底板2Aには、図7及び図8に示すように、複数の開口部2aが設けられている。このような底板2Aとしては、パンチングプレートを用いることができる。これにより、凍結保存用ボックス1の内側への冷気の導入を促進することができる。
【0035】
また、ボックス本体2の底板2A上には、複数の保存空間kが配置されている。これにより、各保存空間kの下方から、各保存空間kに冷気(冷熱)を均一に導入することができる。
【0036】
なお、ボックス本体2の側壁には、開口部が設けられていない。したがって、本実施形態の凍結保存用ボックス1は、ボックス本体2側面からの冷気の流出入がない構造になっている。これにより、凍結保存用ボックス1内の保存空間kのうち、端部(外周部及び角部)に位置する保存空間kに収納された凍結保存用容器300に、水平方向からの冷気が直接当たらないため、凍結保存用容器300内の試料温度を均一化できる。また、凍結保存用ボックス1は、ボックスの上下方向に冷気を均一に流すことができるため、同様に凍結保存用容器300内の試料温度を均一化できる。
【0037】
ボックス本体2の材質は、特に限定されるものではなく、一般的に使用される樹脂や金属を用いることができる。
ボックス本体2の底板2Aは、凍結保存用ボックス1の下方からの冷熱伝達の促進の観点から、熱伝導性に優れる材料で構成することが好ましい。熱伝導性に優れる材料としてはアルミニウム等の金属材料が挙げられる。
【0038】
防壁部材4は、図7及び図8に示すように、上端(上底)及び下端(下底)が開口した、鉛直方向上下に延在する筒状部を有する部材である。防壁部材4は、筒状部の外周面が、ボックス本体2の側壁の内周面と対向するように、ボックス本体2の内側に配置されている。これにより、防壁部材4は、ボックス本体2の内側に位置し、複数の保存空間kの周囲全体を覆う、壁面を構成する。
【0039】
防壁部材4の筒状部の高さは、図5及び図8に示すように、ボックス本体2内に配置された状態において、ボックス本体2の側壁よりも上方に突出するとともに、凍結保存用容器300の上面よりも高い位置となるように、構成されている。
【0040】
本実施形態の凍結保存用ボックス1は、ボックス本体2の内側に防壁部材4が配置されているため、凍結保存用ボックス1の側面からボックス本体2の内側への冷熱の流入を防ぐことができる。したがって、ボックス本体2内の保存空間kのうち、端部(外周部及び角部)に位置する保存空間kに収納された凍結保存用容器300が、中央部に位置する保存空間kに収納された凍結保存用容器300よりも冷え過ぎることを防ぐことができるため、凍結保存用容器300内の試料温度を均一化できる。
【0041】
防壁部材4の材質は、ボックス本体2の側壁よりも熱伝導性が低い材質であれば、特に限定されない。また、防壁部材4の材質は、凍結保存用ボックス1の側面からボックス本体2の内側への冷熱の流入を防ぐ観点から、断熱効果が高い材料を用いることが好ましい。耐寒性及び断熱効果に優れる材料としては、フッ素樹脂等の樹脂材料が挙げられる。防壁部材4は、凍結保存用容器300と同じ材料としてもよい。
【0042】
蓋部材3は、図5図6及び図8に示すように、下部が開口した有底筒状(本実施形態では、方形状)の箱体からなり、凍結保存用ボックス1の上側の筐体を構成する。蓋部材3は、ボックス本体2から上方に露出する防壁部材4と係合することで、ボックス本体2の上部の開口を閉塞する構成となっている。すなわち、蓋部材3は、防壁部材4によって、水平方向に位置決めされる。
【0043】
蓋部材3の天板3Aには、図6及び図8に示すように、複数の開口部3aが設けられている。このような天板3Aとしては、パンチングプレートを用いることができる。これにより、凍結保存用ボックス1の内側への冷気の導入を促進することができる。すなわち、本実施形態の凍結保存用ボックス1は、ボックス本体2の底板2Aと蓋部材3の天板3Aとにそれぞれ複数の開口部2a、3aが対向するように設けられているため、凍結保存用ボックス1の鉛直方向上下に冷気が流れるようになっている。
【0044】
仕切り部材5,6は、ボックス本体2の内側の空間に位置し、ボックス本体2の内側の空間を複数の保存空間kに区画する板状の部材である。仕切り部材5は、ボックス本体2の底板2Aのなす平面における一の方向に、互いに間隔を空けて延在する。仕切り部材6は、ボックス本体2の底板2Aのなす平面において、上述した一の方向と交差する他の方向に、互いに間隔を空けて延在する。
【0045】
本実施形態では、仕切り部材5,6がそれぞれ4枚ずつ、互いに直交するように、ボックス本体2の内側に配置されている。すわち、本実施形態では、図7に示すように、仕切り部材5,6により、ボックス本体2の内側が5×5の25個の升目状の保存空間kに区画される。
【0046】
仕切り部材5,6は、ボックス本体2内の中央部への冷気導入を促進させるため、穴あけ加工された金属板を用いることが好ましい。仕切り部材5,6としては、例えば、金属製のパンチングボードを用いることが好ましい。
【0047】
なお、仕切り部材5,6としては、全ての仕切り部材を穴あけ加工された金属板としなくてもよく、保存空間kに収納された凍結保存用容器300間の温度差に応じて、穴あけ加工されていない金属板、穴あけ加工された樹脂板、穴あけ加工されていない樹脂板等を適宜組み合わせて使用してもよい。また、仕切り部材5,6は、ボックス本体2(底板2A)と同じ材料としてもよく、防壁部材4と同じ材料としてもよい。
【0048】
凍結保存用容器300は、図8に示すように、バイアルと呼ばれる有底円筒状のキャップ付き容器であり、その内側に試料を培地と共に充填した後、凍結保存用ボックス1の保存空間kに収納される。なお、凍結保存用容器300については、上述したバイアルに限らず、試料を保存可能なものであればよい。
【0049】
(凍結保存用ラックを用いた予備凍結方法)
次に、上記凍結保存用ボックス1を用いた予備凍結方法について説明する。
【0050】
試料を予備凍結させる際は、先ず、試料を培地と共に凍結保存用容器300に充填した後、凍結保存用ボックス1の各保存空間kに凍結保存用容器300を収納する。また、凍結保存用ラック201のラック部202毎に凍結保存用ボックス1を収納する。
【0051】
そして、予備凍結装置100の収容空間Kに凍結保存用ラック201を収容した後、温度調節計により設定された温度制御プログラムに従い、液体窒素の噴出量を調節しながら、凍結保存用ラック201を収容する収容空間Kの冷却温度を制御する。これにより、各凍結保存用容器300に充填された試料を予備凍結させることが可能である。
【0052】
ところで、凍結保存用ボックス1内の保存空間kのうち、端部(外周部及び角部)に位置する保存空間kに収納された凍結保存用容器300は、上述したとおり、凍結保存用ラック201のラック部202に収納された状態において、中央部分の保存空間kに収納された凍結保存用容器300よりも相対的に冷え易くなっている。
【0053】
本実施形態によれば、ボックス本体2の内側に区画された複数の保存空間kの周囲全体を防壁部材4で囲み、天板3A及び底板2Aをそれぞれ開口部3a,2aを有する構成の凍結保存用ボックス1を用いることで、端部(外周部及び角部)に位置する保存空間kに収納された凍結保存用容器300への冷熱の伝達を制限し、中央部に位置する保存空間kに収納された凍結保存用容器300への冷気の導入を促進することができる。したがって、凍結保存用ボックス1に収納された各凍結保存用容器300における冷却温度の均一化を図ることが可能である。
【0054】
以上のようにして、凍結保存用ボックス1を用いた予備凍結方法では、上述した収容空間Kにおける凍結保存用ラック201の配置の違いや、複数のラック部202に対する凍結保存用ボックス1の配置の違い、更には凍結保存用ボックス1内における凍結保存用容器300の配置の違いなどによって、試料の冷却温度に差が生じることを抑制しながら、冷却温度の均一化を図ることが可能である。
【0055】
したがって、凍結保存用ボックス1を用いた予備凍結方法では、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることが可能である。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の凍結保存用ボックス1、及び予備凍結装置100によれば、収納される複数の試料を予備凍結させる際に、冷却中に試料毎に生じる温度差を低減し、試料の品質維持及び品質均一化を図ることができる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明が適用される予備凍結装置については、上述したプログラムフリーザに必ずしも限定されるものではなく、例えば機械式冷凍機などであってもよく、上記凍結保存用ラックを用いた予備凍結方法により、試料を予備凍結させるものであればよい。
【0058】
また、上述した実施形態の凍結保存用ボックス1では蓋部材3を備える構成を一例として説明したが、本発明が適用される凍結保存用ボックスについては、蓋部材3を備えずにボックス本体2のみを有する構成であってもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、ボックス本体2が底板2Aと側壁とが一体の構成を一例として説明したが、これに限定されない。本発明が適用される凍結保存用ボックスについては、底板と側壁とがそれぞれ別の材質で構成されていてもよい。その際、底板の材質は、側壁の材質よりも熱導電性に優れる材質であることが好ましい。
同様に、上述した実施形態では、蓋部材3が天板3Aと側壁とが一体の構成を一例として説明したが、これに限定されない。本発明が適用される凍結保存用ボックスについては、天板と側壁とがそれぞれ別の材質で構成されていてもよい。その際、天板の材質は、側壁の材質よりも熱導電性に優れる材質であることが好ましい。
あるいは、上述した実施形態では、防壁部材4が筒状でボックス本体2の内側に位置する構成を一例として説明したが、これに限定されない。防壁部材4が保存空間の周囲を囲むことができればよい。本発明が適用される凍結保存用ボックスについては、筒状の防壁部材がボックス本体2の外側に位置する構成としてもよく、筒状ではなく板状の防壁部材がボックス本体2の内側または外側に位置する構成としてもよい。
このような構成により、凍結保存用ボックスの側面からの冷熱伝達を抑えつつ、ボックスの上下方向の冷熱伝達を促進させることができるため、凍結保存用容器300内の試料温度を均一化できる。
【0060】
また、上述した実施形態では、ボックス本体2の底板2Aに設けられた開口部2a、及び蓋部材3の天板3Aに設けられた開口部3aが、それぞれ全て等しい大きさ(サイズ)であり、底板2A及び天板3Aの全面に均一な間隔で配置された構成を一例として説明したが、開口部2a及び開口部3aの大きさ、配置、及び数量はこれに限定されない。底板2A及び天板3Aの開口部2a,3aの大きさ、配置、及び数量は、例えば、ボックス本体2の内側に収納された凍結保存用容器300間の温度差に応じて適宜変更してもよい。
具体的には、冷えにくいボックス本体2の中央側に位置する保存空間kに対応する開口部2a及び開口部3aでは、サイズを大きくしたり、密な配置にしたり、数を増やしたりしてもよい。
同様に、冷えやすいボックス本体2の端部(外周部及び角部)に位置する保存空間kに対応する開口部2a及び開口部3aでは、サイズを小さくしたり、疎な配置にしたり、数を減らしたりしてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、ボックス本体2の底板2A、及び蓋部材3の天板3Aが、それぞれ開口部2a,3aを有するパンチングボードである構成を一例として説明したが、これに限定されない。本発明が適用される凍結保存用ボックスについては、ボックス本体及び蓋部材が、底板及び天板として、網目状の底板や、多孔状の底板を含む構成であってもよい。このような構成であっても、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 凍結保存用ボックス
2 ボックス本体
2a 開口部
2A 底板
3 蓋部材
3a 開口部
3A 天板
4 防壁部材
5,6 仕切り部材
100 予備凍結装置
300 凍結保存用容器
k 保存空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8