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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113985
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】薬液揮散器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20240816BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20240816BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B65D83/00 F
B65D85/00 A
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019314
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】中村 啓悟
(72)【発明者】
【氏名】西川 博崇
(72)【発明者】
【氏名】在國寺 良厳
【テーマコード(参考)】
3E068
4C180
【Fターム(参考)】
3E068CC05
3E068CC15
3E068CC22
3E068CE03
3E068CE08
3E068DD08
3E068DD31
3E068DE02
3E068EE15
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA18
4C180CA07
(57)【要約】
【課題】押圧ボタンが斜めに傾いた袋体を押圧する構造を取ることなく、袋体に力を及ぼすことができる、薬液供給器を提供する。
【解決手段】本発明の薬剤揮散器は、揮発性薬剤が封入され、外圧により破断するように構成された、ガス非透過性を有する内袋と、前記内袋を収容し、ガス透過性フィルムを有する外袋と、前記外袋を収容するケースと、を備え、前記ケースは、内部に連通する開口を有するケース本体と、前記開口と対応する位置に配置される押圧ボタンと、前記押圧部の複数箇所において略等間隔で、前記押圧ボタンと前記ケース本体とを連結する、弾性変形可能な複数の連結部と、を備え、前記押圧ボタンは、前記ケース本体の内部に収容された外袋を押圧可能に構成されている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性薬剤が封入され、外圧により破断するように構成された、ガス非透過性を有する内袋と、
前記内袋を収容し、ガス透過性フィルムを有する外袋と、
前記外袋を収容するケースと、
を備え、
前記ケースは、
内部に連通する開口を有するケース本体と、
前記開口と対応する位置に配置される押圧ボタンと、
前記押圧部の複数箇所において略等間隔で、前記押圧ボタンと前記ケース本体とを連結する、弾性変形可能な複数の連結部と、
を備え、
前記押圧ボタンは、前記ケース本体の内部に収容された外袋を押圧可能に構成されている、薬剤揮散器。
【請求項2】
複数の前記連結部は、前記開口の内縁と前記押圧ボタンの外縁との間の隙間に沿って延びるように配置されている、請求項1に記載の薬剤揮散器。
【請求項3】
前記ケース本体は、
前記押圧部、前記開口、及び前記連結部を有する第1ケース部材と、
前記第1ケース部材と対向するように、当該第1ケース部材に固定される第2ケース部材と、
を備え、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との間に前記外袋が配置されており、
前記第2ケース部材において、前記押圧ボタンと対向する位置に、前記押圧ボタンとの間で前記外側袋体を押圧する押圧部が配置されている、請求項1または2に記載の薬剤揮散器。
【請求項4】
前記押圧部は、前記押圧ボタン側に開口する空洞を有し、前記押圧部の外縁により前記外袋が支持される、請求項3に記載の薬剤揮散器。
【請求項5】
前記第2ケース部材は、前記押圧部の外周から放射状に延びる複数の支持部を有している、請求項4に記載の薬剤揮散器。
【請求項6】
前記ケース本体に取り付けられ、前記薬剤揮散器を被接着体に固定するための両面テープをさらに備え、
前記両面テープは、前記被接着体に接着される再剥離糊層を有している、請求項1または2に記載の薬剤揮散器。
【請求項7】
前記両面テープは、前記発泡材層をさらに備え、
前記再剥離糊層は、前記発泡材層と前記被接着体との間に配置され、
前記薬剤揮散器を、前記被接着体から取り外す際に、前記発泡剤層が層内破壊するように構成されている、請求項6に記載の薬剤揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芳香成分等を含有する液状の薬剤が収容された袋体と、この袋体を収容するケースとを備えた薬剤揮散器が開示されている。袋体は、薬剤が収容された内袋と、この内袋を収容する外袋とを備えており、内袋は外力が作用すると破断するように構成されている。外袋はガス透過性の材料で形成されており、通常の外力が加わっても破断しないように構成されている。
【0003】
また、ケースには、収容された袋体に対して外力を付与するための押圧ボタンが設けられており、この押圧ボタンを押し込むことで、袋体に外力を付与できる。押圧ボタンによって袋体に外力が付与されると、内袋が破断して薬剤が流れ出し、外袋に溜まる。外袋に溜まった薬剤の芳香成分は、外袋から揮散し、さらに、容器の外部へと揮散する。これにより、揮散した芳香成分による芳香効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-123992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の薬液供給装置では、押圧ボタンの外縁の一部がケースに連結されており、押圧ボタンを押し込むと、押圧ボタンは連結部分を支点として傾き、袋体を押圧する。そのため、押圧ボタンは、袋体に対して斜めに押し込まれ、押圧力に偏りが生じるおそれがある。これを防止するため、上記の薬剤揮散器には、袋体を挟んで押圧ボタンとは反対側に側面視で上面が斜めに傾いた押圧部を有している。そして、傾いた押圧ボタンと押圧部の上面とで袋体を挟み、袋体の全体に均等な力が作用するようにしている。
【0006】
しかしながら、この薬剤揮散器では、押圧ボタンが傾いて袋体を押圧することに起因して、例えば、押圧部の上面を斜めに傾けるという特殊な構造にする必要があること、及び傾いた押圧ボタンと押圧部の上面との傾斜方向を同じにするため、製造時に押圧ボタンと押圧部の回転方向の位置合わせが必要であること、といった問題を有している。本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、押圧ボタンが斜めに傾いて袋体を押圧する構造を取ることなく、袋体に力を及ぼすことができる、薬液供給器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態には以下の付記が開示されている。
(第1付記)
揮発性薬剤が封入されたガス非透過性フィルムで形成され、外圧により破断するように構成された内側袋体と、
前記内側袋体を収容し、前記内側袋体の破袋時に前記揮発性薬剤が湿潤可能な微細孔を有する外側袋体と、
前記外側袋体を収容するケースと、
を備え、
前記ケースは、
内部に連通する開口を有するケース本体と、
前記開口と対応する位置に配置される押圧ボタンと、
前記押圧部の外縁の複数箇所において略等間隔で、前記押圧ボタンと前記ケース本体とを連結する、弾性変形可能な複数の連結部と、
を備え、
前記押圧ボタンは、前記ケース本体の内部に収容された外側袋体を押圧可能に構成されている、薬剤揮散器。
【0008】
(第2付記)
前記各連結部は、前記開口の内縁と前記押圧ボタンの外縁との間の隙間に沿って延びるように配置されている、第1付記に記載の薬剤揮散器。
【0009】
(第3付記)
前記ケース本体は、
前記押圧部、前記開口、及び前記連結部を有する第1ケース部材と、
前記第1ケース部材と対向するように、当該第1ケース部材に固定される第2ケース部材と、
を備え、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との間に前記外側袋体が配置されており、
前記第2ケース部材において、前記押圧ボタンと対向する位置に、前記押圧ボタンとの間で前記外側袋体を押圧する押圧部が配置されている、第1付記または第2付記に記載の薬剤揮散器。
【0010】
(第4付記)
前記押圧部は、前記押圧ボタン側に開口する空洞を有し、前記支持部の外縁により前記外側袋体が支持される、第3付記に記載の薬剤揮散器。
【0011】
(第5付記)
前記第2ケース部材は、前記押圧部の外周から放射状に延びる複数の支持部を有している、第3付記または第4付記に記載の薬剤揮散器。
【0012】
(第6付記)
前記ケース本体取り付けられ、前記薬剤揮散器を被接着体に固定するための両面テープをさらに備え、
前記両面テープは、前記被接着体に接着される再剥離糊層を有している、第1付記から第5付記のいずれかに記載の薬剤揮散器。
【0013】
(第7付記)
前記両面テープは、前記発泡材層をさらに備え、
前記再剥離糊層は、前記発泡材層と前記被接着体との間に配置され、
前記薬剤揮散器を、前記被接着体から取り外す際に、前記発泡剤層が層内破壊するように構成されている、第6付記に記載の薬剤揮散器。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る薬剤揮散器によれば、押圧ボタンが斜めに傾いて袋体を押圧する構造を取ることなく、袋体に力を及ぼすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る薬剤揮散器の実施形態を上から見た斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3図1の底面図である。
図4図1の薬剤揮散器の断面図である。
図5図1の薬剤揮散器の分解斜視図である。
図6】袋体の斜視図である。
図7図6のA-A線断面図である。
図8】第1ケース部材の上面の一部拡大図である。
図9】押圧ボタンの動作を示す第1ケース部材の断面図である。
図10】薬剤揮散器の使用方法を示す断面図である。
図11】薬剤揮散器の使用方法を示す側面図である。
図12】薬剤揮散器の使用方法を示す側面図である。
図13】取付対象から両面テープの残留物を取り外した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る薬剤揮散器の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は薬剤揮散器を上から見た斜視図、図2の側面図、図3図1の底面図、図4は薬剤揮散器の断面図、図5は薬剤揮散器の分解斜視図である。図1図5に示すように、この薬剤揮散器は、液状の薬剤が収容された袋体1と、この袋体1を収容するケース2と、ケース2に取り付けられた両面テープ3と、を備えている。この薬剤揮散器は、例えば、ゴミ箱、下駄箱、衣類収納箱、倉庫、トイレ、ベランダ等に取り付けられ、消臭、芳香等の各種の機能成分を揮散させる。以下では、まず、袋体1について説明した後、ケース2及び両面テープ3について説明する。以下では、説明の便宜上、各図の図面内での方向を基準に説明することがあるが、本発明はこの方向の規定により限定されるものではない。
【0017】
<1.袋体>
袋体について、図6及び図7を参照しつつ説明する。図6は袋体の斜視図、図7は袋体のA-A線断面図である。
【0018】
図6及び図7に示すように、袋体1は、内袋11と外袋12とを備えている。内袋11は液状の薬剤が収容されている。外袋12は内袋11を収容している。内袋11は平面視矩形状の1枚のシート材によって形成され、シートの対向する端辺同士を重ね合わせるように二つ折りし、周縁をヒートシールなどで溶着することで扁平状に形成されている。すなわち、折り目以外の3辺をヒートシールなどで溶着することで内袋11を形成している。ヒートシールは、内袋11の内圧が高まると剥離する程度の強さで形成されている。したがって、後述するように、内袋11が押圧されると、内袋11の内圧が高まり、周縁のヒートシールが剥離し、薬剤が流れ出るようになっている。
【0019】
第1シート材は、ガス不透過性の材料で形成されているため、外力が作用しない限りは、薬剤を漏らさずに保持できる。第1シート材は、ガス不透過性の材料であれば、特には限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、変性ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等の熱可塑性合成樹脂又はアルミニウム等の金属箔の1つ以上を含む多層積層材料を用いることができる。
【0020】
外袋12は、平面視矩形状に形成された2枚の第2シート材で形成されており、これら第2シート材の周縁をヒートシールなどで溶着することで、扁平状に形成されている。ヒートシールは、外袋12の内圧が高まっても剥離しない強さで形成されている。したがって、後述するように、袋体1が押圧されても、通常は外袋12のヒートシールは剥離しないようになっている。第2シート材の色は特には限定されないが、例えば、少なくとも一方を透明にすることで、内袋11を視認できる。
【0021】
第2シート材は、ガス透過性の材料で形成されている。したがって、薬剤の成分が外袋12を介して外部に揮散するようになっている。第2シート材は、ガス透過性であれば、特には限定されないが、ガスを透過する領域を少なくとも一部有するシート材で外袋12を構成することもできる。あるいは、例えば、特開2015-123992号公報に開示されているような薬剤がやや染み出る程度の多数の微孔が形成された微多孔質シートを少なくとも一部に用いることで、外袋12を構成することもできる。本発明では、このような微多孔質シートもガス透過性を有する材料に含めることとする。
【0022】
薬剤は、揮発性の薬剤であり、芳香成分、消臭成分、防虫成分、抗菌成分など種々の機能性成分を含有できる。また、このような機能性成分は、油性及び水溶性のいずれであってもよい。
【0023】
<2.ケース>
次に、ケース2について説明する。図4及び図5に示すように、ケース2は、第1ケース部材4と、第2ケース部材5とを備えている。図5に示すように、第1ケース部材4の外縁の内周面には、環状の第1突部401が形成されている。第2ケース部材5の外縁の外周面には、環状の第2突部501が形成されている。両ケース部材4,5の外縁同士を対向させた上で、第2ケース部材5を第1ケース部材4側に押し込むことで、第2ケース部材5の第2突部501が、第1ケース部材4の第1突部401を乗り越えて引っ掛かる。これにより、両ケース部材4,5が固定され、両者4,5の間に袋体1を収容する空間が形成される。また、これらケース部材4,5は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等の弾性変形可能な樹脂材料で形成されている。以下、各ケース部材4,5について、詳細に説明する。
【0024】
<2-1.第1ケース部材>
第1ケース部材4について、図8及び図9も参照しつつ説明する。図8は第1ケース部材の上面の一部拡大図、図9は押圧ボタンの動作を示す第1ケース部材の断面図である。まず、図4及び図5に示すように、第1ケース部材4は、第1ケース本体41と、押圧ボタン42と、2つの連結部43,44とを有している。第1ケース本体41は、平面視円形のカップ状に形成されている。第1ケース本体41の中央には円形の第1開口411が形成されている。第1ケース本体41には、第1開口411を囲むように、複数の三角形状の第2開口412が等間隔に形成されている。また、第1ケース本体41の外縁の内周面には、上述した環状の第1突部401が形成されている。
【0025】
図8に示すように、第1開口411には、円板状の押圧ボタン42が配置されている。押圧ボタン42は、第1開口411の内径よりもやや小さい外径を有している。押圧ボタン42の外周と第1開口411との環状の隙間には、2つの連結部43,44が配置されている。ここでは、説明の便宜のため、これら2つの連結部を、それぞれ第1連結部43及び第2連結部44と称することとする。上述した環状の隙間は、約180度の2つの領域に2分され、各領域に第1連結部43及び第2連結部44がそれぞれ配置されている。
【0026】
より詳細に説明すると、第1連結部43は、第1接続部431、第2接続部432、及び連結部本体433を有している。第1接続部431は押圧ボタン42の外周から径方向外方に突出している。第2接続部432は、第1接続部431から約180度離れた位置において第1開口411の内縁から径方向内方に突出している。連結部本体433は、中心角が約180度の円弧状に形成され、その両端に第1接続部431及び第2接続部432がそれぞれ一体的に連結されている。
【0027】
第2連結部44も、第1連結部43と同様に、第1接続部441、第2接続部442,及び443を有している。但し、図8に示すように、第1連結部43と第2連結部44とは、押圧ボタン42の中心に対し、点対称となるように配置されている。
【0028】
第1連結部43及び第2連結部44は細い樹脂材料で形成されているため、弾性変形可能である。また、押圧ボタン42は、点対称に配置された2つの第1連結部43及び第2連結部44に連結されているため、第1ケース部材4に対して偏りなく支持されている。そのため、例えば、図9に示すように、押圧ボタン42を押し込むと、押圧ボタン42は傾くことなく、押圧ボタン42の軸線に沿って(押圧ボタン42の上面と垂直な線に沿うように)下方に移動する。
【0029】
押圧ボタン42の下面には、周縁に沿って突部421が円形状に形成されており、図10に示すように、押圧ボタン42を押し込んだ際に突部421の内縁が後述する第2ケース5の押圧部52の外縁を径方向外方より覆うように構成されている。
【0030】
<2-2.第2ケース部材>
図5に示すように、第2ケース部材5は、第2ケース本体51と、押圧部52と、複数の支持部53とを有している。第2ケース本体51は、平面視円形のカップ状に形成されている。第2ケース本体51の内面の中央、つまり第1ケース部材4と対向する面の中央には、円筒状の押圧部52が形成されている。図4に示すように、ケース2においては、押圧ボタン42と押圧部52の軸線が概ね一致するように配置されている。そして、押圧ボタン42が押し込まれたときには、押圧部52に近接する。押圧部52の外径は、押圧ボタン42の外形より一回り小さく、押圧ボタン42を押し込んだ際に押圧部52の外縁が押圧ボタン42下部の突部内縁に収まる程度の大きさである。
【0031】
第2ケース本体51の内面には、押圧部52の径方向外方に複数の支持部53が配置されている(本実施形態では6個)。これら支持部53は、押圧部52の外周面から放射状に延びている。また支持部53の鉛直方向の高さは、押圧部52よりも低く設定されている。
【0032】
<3.両面テープ>
図2及び図3に示すように、両面テープ3は、矩形状に形成され、第2ケース本体51の底面に取り付けられている。図2の拡大図に示すように、両面テープ3は、第2ケース部材5側から、粘着糊層31、発泡材層32、第1再剥離糊層33、基材34、第2再剥離糊層35、及び剥離シート36が積層された6層で構成されている。薬剤揮散器を使用する際には、剥離シート36を剥がした後、取付対象(被接着体)に第2再剥離糊層35を接着する。
【0033】
各再剥離糊層33、35は、剥離可能な粘着剤により形成されており、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤で形成できる。粘着糊層31は再剥離糊層33,35よりも強い粘着力を有する公知の粘着剤により形成することができる。基材34は不織布などで形成されている。発泡材層32は、公知の発泡材で形成され、例えば、ケース2が押し込まれたときの力を吸収できるようになっている。発泡材層32の厚みは、特には限定されないが、例えば、0.1 mm以上5 mm以下にできる。本実施形態では、薬剤揮散器を取付対象に接着した後、薬剤揮散器を取り外したときに、発泡材層32が層内破壊するように、再剥離糊層33,35の強度が設定されている。この両面テープ3は、例えば、発泡材層32の一方の面に粘着糊層31が塗布された第1積層体、基材34の両面に再剥離糊層33,35がそれぞれ塗布された第2積層体を準備し、これらを積層することで形成することができる。第1及び第2再剥離糊層33,35は異なる材料であってもよい。
【0034】
<4.薬剤揮散器の組立>
薬剤揮散器の組立は次のように行われる。すなわち、袋体1を第2ケース部材5の押圧部52上に配置した後、袋体1を覆うように、第1ケース部材4を第2ケース部材5上に配置し、第1ケース部材4の第1突部401に第2ケース部材5の第2突部501とを引っかける。こうして、第1ケース部材4と第2ケース部材5との間に袋体1が配置されるとともに、両ケース部材4,5が固定される。なお、袋体1を第1ケース部材4の押圧ボタン42上に配置した後、袋体1を覆うように、第2ケース部材5を第1ケース部材4上に配置し、両者を固定することもできる。
【0035】
<5.薬剤揮散器の使用>
次に、薬剤揮散器の使用方法について、図10及び図11を参照しつつ説明する。まず、図10に示すように、押圧ボタン42を第2ケース部材5側に押し込む。これにより、押圧ボタン42が袋体1に近接し、袋体1が押圧ボタン42と押圧部52との間で挟まれ、袋体1が押圧される。その結果、内袋11の内圧が上昇し、縁部のヒートシールが剥離する。こうして内袋11から薬剤が流れ出し、外袋12に溜まっていく。これに続いて、図11に示すように、両面テープ3の剥離シート36を剥がし、第2再剥離糊層35を取付対象8に取り付ける。
【0036】
外袋12に流れ出した薬剤の機能成分は、第2シート材から外部に揮散する。この機能成分は、第1ケース部材4の第2開口412から外部に揮散していく。こうして、芳香成分等の機能成分の効果を得ることができる。
【0037】
<6.特徴>
本実施形態に係る薬剤揮散器によれば、次の効果を得ることができる。
(1) 押圧ボタン42が点対称に配置された2つの連結部43,44によって均等に支持されているため、押圧ボタン42を押し込んだときに、押圧ボタン42が傾くことなく、押圧部52に向かって変位させることができる。そのため、袋体1に作用する力の偏りを抑制し、袋体1の表面に対して概ね均等に力を作用させることができる。
【0038】
そのため、従来例のように押し込まれた押圧ボタンの傾きに対応するように押圧部を傾ける必要がない。したがって、第1及び第2ケース部材4,5の周方向の位置合わせが不要になり、生産を簡素化できる。
【0039】
(2) 押圧ボタン42を支持する連結部が2個設けられ、約180度に亘って延びているため、押圧ボタン42の変位距離を長くできる。したがって、袋体1への押し込み量を大きくできる。
【0040】
(3) 押圧部52が円筒状に形成されているため、袋体1に対して押圧部52を面で押圧するのではなく、円形状の縁部によって袋体1を押圧できる。その結果、袋体1に作用する圧力を大きくできる。
【0041】
(4) 押圧ボタン42の下部周縁には突部421が設けられ、押圧部52の外縁を覆うよう構成されるため、押圧ボタン42を押し込んだ際に突部と押圧部外縁で袋体1を挟み込むよう押圧されることで、少ない力で袋体1に圧力を作用させることができる。
【0042】
(5) 複数の支持部53が第2ケース部材5において放射状に配置されているため、第2ケース部材5の剛性を高めることができる。そのため、ケース2に外力が作用したときに、変形するのを防止できる。また、支持部53の鉛直方向の高さが押圧部52よりも低く設定されていることで、押圧ボタン42の突部421と押圧部52の外縁による袋体1を挟み込むよう押圧することを阻害しない。
【0043】
(6) 両面テープ3の再剥離糊層33を取付対象に取り付けているため、取付対象から剥がしやすくなっている。また、上記のように、取付対象に接着された薬剤揮散器を取り外したときに、発泡材層32が層内破壊するように、再剥離糊層33の強度が設定されている。そのため、例えば、図11の状態から薬剤揮散器を取り外すと、図12に示すように、発泡材層32が層内破壊により分離する。これにより、取付対象8には、再剥離糊層33と発泡材層32が残留する。その後、取付対象8から再剥離糊層33と発泡材層32を剥がす際には、再剥離糊層33に厚みが大きい発泡材層32が付着しているため、掴みやすくなっている。そのため、図13に示すように、取付対象8から再剥離糊層33を容易に剥がすことができる。
【0044】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更ができる。以下の各変形例は、適宜組み合わせることができる。また、以下の各変形例は、上述した実施形態にも適宜組み合わせることができる。
【0045】
<7-1>
上記実施形態では、2つの連結部43,44によって押圧ボタン42を支持しているが、連結部の数は3以上に増やすことができる。但し、隙間に配置される連結部の数を増やすと、各連結部の長さが短くなるため、押圧ボタン42の変位量が小さくなる。また、各連結部は、必ずしも等間隔に配置されていなくてもよく、押圧ボタン42が大きく傾くことなく、概ねその軸線に沿って変位できればよい。したがって、略等間隔とは、等間隔の位置から多少ずれた位置(例えば、20度程度)も含み得る。
【0046】
また、上記実施形態では、第1開口411と押圧ボタン42との隙間に連結部43,44を配置しているが、連結部は、この隙間に配置されていなくてもよく、隙間から一部がはみ出したり、あるいは隙間を覆うような位置に配置することもできる。
【0047】
<7-2>
第1及び第2ケース部材4,5の構造は適宜変更できる。例えば、薬剤の成分を揮散させるための第2開口の数、位置、大きさ、形状は特には限定されない。したがって、第1ケース部材4及び第2ケース部材5の少なくとも一方に形成されていればよい。また、両ケース部材4,5の固定方法も特には限定されない。
【0048】
第1ケース部材4については、第1ケース本体41、第1開口411、押圧ボタン42、及び複数の連結部43,44が設けられていればよく、形状は特には限定されない。例えば、押圧ボタン42が円形でなくてもよし、第1ケース本体も平面視が円形以外の構造でもよい。
【0049】
突部421は必ずしも押圧ボタン42の外径に対応する形状である必要はなく、押圧ボタン42を押し込んだ際に押圧部52の外縁とで袋体1を挟み込むよう押圧することができるよう構成されていれば、一部分欠けた形状であってもよい。また、突部421以外の凹凸形状でもよく、あるいは押圧ボタン42の下面を平坦にすることもできる。
【0050】
上記実施形態では、第2ケース部材5に押圧部52と支持部53とが設けられているが、これらが設けられなくてもよく、押圧ボタン42によって袋体1が押圧され、内袋11が破断すればよい。また、押圧部52及び支持部53のいずれか一方のみ設けてもよい。
【0051】
押圧部52は円筒状以外の形状でもよく、角筒状でもよい。また、面によって袋体1を押圧するような構造でもよい。支持部53の位置、形状、及び数は特には限定されず、例えば、複数のリブを第2ケース本体51の内面に設けることで、第2ケース部材5の剛性を高めてもよい。
【0052】
また、ケース2の構造は上述したものに限定されず、少なくとも袋体1を収容できる空間が形成されれば、上記実施形態のような2つのケース部材で構成されていなくてもよい。したがって、本発明のケース本体は、一体成形、あるいは3以上のパーツで形成され袋体を収容できる構造物であり、これに第1開口、押圧ボタン、及び連結部が設けられることでケースが構成される。例えば、一体的に形成されたケース本体に袋体を挿入できる開口が形成されたものであってもよい。
【0053】
<7-3>
両面テープ3の構造は特には限定されず、上記実施形態で示した以外の構造でもよい。例えば、上記実施形態では、両面テープ3を、剥離シート36を含めて6層で形成しているが、発泡材層32の層内破壊を生じさせるには、少なくとも粘着糊層31、発泡材層32、及び第2再剥離糊層35を有していればよい。また、これ以外の構成でもよく、薬剤揮散器と取付対象8とを接着できればよい。例えば、発泡材層32を設けず、第2再剥離糊層35のみで両面テープを構成できる。また、両面テープ3をケース2に予め取り付けておかず、事後的に(例えば、使用直前に)ケース2に取り付けてもよい。
【0054】
<7-4>
袋体1の構造も特には限定されず、内袋11と外袋12とを備え、外圧によって内袋が開封し、外袋内に流れ出した薬液が外部に流れることなく、揮散するように外袋が構成されていればよい。例えば、上記実施形態では、内袋11には3辺にヒートシールを施しているが、例えば、2枚のシート材を重ね、4辺にヒートシールを施して内袋11を形成してもよい。したがって、袋体1を構成する内袋11、外袋12の形状、製造方法、材料、色などは特には限定されない。
【符号の説明】
【0055】
1 袋体
11 外袋
12 内袋
2 ケース
3 両面テープ
4 第1ケース部材
41 第1ケース本体
411 第1開口
42 押圧ボタン
43 第1連結部
44 第2連結部
5 第2ケース部材
図1
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