(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024113994
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】支持治具
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
F16F15/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019326
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三上 公大
(72)【発明者】
【氏名】花島 聡
(72)【発明者】
【氏名】安田 信哉
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA09
3J048BA11
3J048DA01
3J048EA13
(57)【要約】
【課題】防振性と耐震性との双方を図ることができる支持治具を提供すること。
【解決手段】支持治具1は、固定対象物100を床200上に支持し、固定対象物100を床200上に固定する治具であって、土台部21と、土台部21と固定対象物100とを連結するボルト部22と、を含むアジャスタ2と、土台部21を覆うケース部3と、ケース部3と、土台部21との間に配設された弾性部材4と、ケース部3を床200に固定する固定部であるボルト5と、を備える。ケース部3は、土台部21を覆うカバー部31と、カバー部31から床200と平行な方向に延在し、ボルト5が挿入される穴321を有する板32と、を有し、ボルト5によって板32が床200に締め付けられ、固定対象物100が床200に固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定対象物を支持する支持治具であって、
該支持治具は、
土台部と、該土台部と該固定対象物とを連結するボルト部と、を含むアジャスタと、
該土台部を覆うケース部と、
該ケース部と、該土台部との間に配設された弾性部材と、
該ケース部を床に固定する固定部と、
を備える事を特徴とする支持治具。
【請求項2】
該ケース部は、
該土台部を覆うカバー部と、
該カバー部から該床と平行な方向に延在し、ボルトが挿入される穴を有する板と、を有し、
該固定部は、該穴に挿入されるボルトであり、
該ボルトによって該板が該床に締め付けられ、該固定対象物が該床に固定されることを特徴とする請求項1に記載の支持治具。
【請求項3】
該ケース部は、該土台部の底面に配置される支持板をさらに有し、
該弾性部材は、該支持板と該土台部との間にも配置されることを特徴とする請求項1に記載の支持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定対象物を支持する支持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械、装置は、振動や衝撃や騒音を防止する防振ゴムが底面についたアジャスタ等の支持治具(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)で支持された状態で床に設置されている。アジャスタによって装置の水平出しが行え、かつ防振ゴムによって床・装置間の振動伝達を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5171240号公報
【特許文献2】特開2006-038011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対震性を確保するために、装置や機械等が倒れないように固定する場合には、アジャスタに加え、アンカ金具によって装置フレーム部と床とをボルト締結する。
【0005】
装置や機械等を固定した際には、床と装置等との間で振動がアンカ金具を介して伝達してしまうため、従来のアジャスタが有していた防振性能が損なわれてしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、防振性と耐震性との双方を図ることができる支持治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の支持治具は、固定対象物を支持する支持治具であって、該支持治具は、土台部と、該土台部と該固定対象物とを連結するボルト部と、を含むアジャスタと、該土台部を覆うケース部と、該ケース部と、該土台部との間に配設された弾性部材と、該ケース部を床に固定する固定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記支持治具において、該ケース部は、該土台部を覆うカバー部と、該カバー部から該床と平行な方向に延在し、ボルトが挿入される穴を有する板と、を有し、該固定部は、該穴に挿入されるボルトであり、該ボルトによって該板が該床に締め付けられ、該固定対象物が該床に固定されても良い。
【0009】
前記支持治具において、該ケース部は、該土台部の底面に配置される支持板をさらに有し、該弾性部材は、該支持板と該土台部との間にも配置されても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、防振性と耐震性との双方を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る支持治具を一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に係る支持治具を一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、従来の支持治具を一部断面で模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る支持治具を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る支持治具を一部断面で模式的に示す側面図である。
【0014】
(支持治具)
実施形態1にかかる
図1に示された支持治具1は、固定対象物100を工場等の建造物の床200上に支持するものである。また、実施形態1に係る支持治具1は、固定対象物100を床200上に固定するものでもある。
【0015】
実施形態1において、固定対象物100は、床200上に設置される装置であって、例えば、ウェーハ等の被加工物を切削加工する切削装置、被加工物をレーザ加工するレーザ加工装置、被加工物を研削加工する研削装置、又は被加工物を研磨加工する研磨装置などの各種の加工装置である。固定対象物100は、下面に床200上に固定される固定ブロック101が設けられている。実施形態1では、固定ブロック101は、下面に開口し、鉛直方向に沿って伸びたねじ穴102が設けられている。
【0016】
支持治具1は、
図1に示すように、アジャスタ2と、ケース部3と、弾性部材4と、固定部であるボルト5とを備える。
【0017】
アジャスタ2は、土台部21と、ボルト部22とを備える。土台部21は、リング状に形成され、床200上に設置される。土台部21は、内周面に雌ねじ211が形成されている。また、実施形態1では、土台部21は、上面から凸の円環状の円環凸部212を一体に備えている。
【0018】
ボルト部22は、土台部21と固定対象物100とを連結するものである。ボルト部22は、円柱状に形成されかつ上端部にねじ穴102に螺合するねじ溝221が形成された円柱状の第2ボルト222と、第2ボルト222に固定されたハンドル223と、固定用ナット224とを備える。
【0019】
ハンドル223は、内側に第2ボルト222の下端部を収容して、第2ボルト222の下端部に固定される円筒部225と、円筒部225の上端部から円筒部225の外周方向に延在した延在部226とを一体に備えている。円筒部225は、外周面に土台部21の雌ねじ211に螺合する雄ねじ227が形成されている。
【0020】
固定用ナット224は、固定ブロック101のねじ穴102に螺合した第2ボルト222の外周に螺合し、かつ固定ブロック101に押し付けられて、ボルト部22の第2ボルト222を固定対象物100の固定ブロック101に固定する。
【0021】
アジャスタ2は、ボルト部22の第2ボルト222が固定ブロック101のねじ穴102に螺合して、固定用ナット224により第2ボルト222が固定ブロック101に固定される。アジャスタ2は、ボルト部22のハンドル223の雄ねじ227が土台部21の雌ねじ211に螺合して、ボルト部22が土台部21と固定対象物100とを連結する。
【0022】
ケース部3は、土台部21を覆うものである。ケース部3は、土台部21を覆うカバー部31と、カバー部31から床200と平行な方向に延在し、ボルト5が挿入される穴321を有する板32とを一体に備えている。
【0023】
カバー部31は、内径が土台部21の外径よりも大きな円筒状の円筒部311と、円筒部311の上端の内縁に外縁が連なりかつ内径が土台部21の円環凸部212の外径よりも大きな円環部312とを一体に備えている。
【0024】
板32は、カバー部31の円筒部225の下端から円筒部225の外周方向に延在している。穴321は、板32を厚み方向に沿って貫通している。板32の穴321は、床200に設けられた固定用のねじ穴201に重なる位置に配置されている。
【0025】
弾性部材4は、ケース部3と土台部21との間に配設されている。弾性部材4は、ゴム等の弾性を有する樹脂により構成されている。実施形態1では、弾性部材4は、外径がケース部3のカバー部31の円筒部225の内径と等しくかつ内径が土台部21の外径と等しい円筒状の円筒部41と、円筒部41の上端の内縁に外縁が連なりかつ内径が土台部21の円環凸部212の外径よりも大きな円環部42とを一体に備えている。実施形態1では、弾性部材4は、円筒部41が土台部21の外周とケース部3のカバー部31の円筒部311の内周に嵌合し、円環部42が土台部21の上面とケース部3のカバー部31の円環部312との間に配置されて、ケース部3と土台部21との間に配設される。
【0026】
ボルト5は、ケース部3を床200に固定するものである。ボルト5は、板32に設けられた穴321を通って床200に設けられたねじ穴201に螺合して、ケース部3を床200に固定する。
【0027】
また、実施形態1では、第2弾性部材6(弾性部材に相当)を備える。第2弾性部材6は、土台部21の下面213(底面に相当)に取り付けられている。第2弾性部材6は、ゴム等の弾性を有する樹脂により構成されている。実施形態1では、第2弾性部材6は、厚みが一定でかつ外径が土台部21の外径よりも小さい円板状に形成されて、土台部21の下面213の土台部21と同軸となる位置に取り付けられている。第2弾性部材6の下面は、カバー部31の板32の下面よりも若干下方に位置している。
【0028】
次に、前述した構成の支持治具1を用いた固定対象物100を床200上に支持し、床200上に固定する方法を説明する。固定対象物100を床200上に支持し固定する前に、固定ブロック101の固定ブロック101のねじ穴102に第2ボルト222のねじ溝221を螺合し、固定用ナット224により第2ボルト222を固定ブロック101に固定する。その後、固定ブロック101に第2ボルト222が固定されたボルト部22のハンドル223の円筒部225の雌ねじ211に外周面に弾性部材4及びケース部3のカバー部31が嵌合した土台部21の雄ねじ227に螺合させて、支持治具1を固定対象物100の固定ブロック101に取り付ける。
【0029】
固定対象物100の下面に図示しないキャスタを取り付けて、固定対象物100を床200上におく。この時、キャスタの床200を転動する車輪の下端よりも第2弾性部材6の下面が上方に位置するように、ハンドル223と土台部21とを相対的に軸心回りに回転して、これらの螺合量を調整しておく。その後、第2弾性部材6の下面が床200に接触するまで、ハンドル223と土台部21とを相対的に軸心回りに回転して、これらの螺合量を調整する。
【0030】
第2弾性部材6の下面が床200に接触すると、板32の穴321にボルト5を通して、ボルト5を床200に設けられたねじ穴201に螺合させる。板32の下面が床200に接触するまで、ボルト5を床200に設けられたねじ穴201に螺合させて、ケース部3を床200に固定して、支持治具1で固定対象物100を床200上に支持するとともに、床200上に固定する。すると、弾性部材4,6が厚みが薄くなる方向に弾性変形して、第2弾性部材6が床200と土台部21とに密着し、弾性部材4が土台部21とケース部3のカバー部31に密着する。こうして、支持治具1のボルト5によって板32が床200に締め付けられて、固定対象物100が床200に固定される。
【0031】
なお、従来から用いられていた支持治具300は、
図3に示すように、床200との間に弾性部材4を設けることで防振性を向上させているが、支持治具300だけでは転倒防止の効果は薄いため、耐震対策が必要とされる場合は固定対象物100を床200に固定されるアンカ金具301により固定し、固定対象物100の転倒や移動を防止している。このために、従来から用いられてきた支持治具300は、耐震対策を追加で実施すると床200と固定対象物100との間で振動がアンカ金具301を介して伝わってしまい、防振性が損なわれてしまう。
【0032】
しかしながら、以上説明したように、実施形態1に係る支持治具1は、ケース部3の板32がボルト5により床200に固定されて、固定対象物100を床200に固定して、耐震性を確保しているとともに、床200に固定されるケース部3が固定対象物100に固定されるアジャスタ2との間に弾性部材4を設けている。
【0033】
このために、実施形態1に係る支持治具1は、ケース部3を床200に固定することで耐震性を向上させ、さらにケース部3を床200に固定しても、固定対象物100の振動が弾性部材4が変形することでケース部3即ち床200に伝わることを抑制され、床200の振動は、弾性部材4及び第2弾性部材6が変形することでアジャスタ2即ち固定対象物100に伝わることを抑制して、防振性を確保することができる。また、床200と、ケース部3の板32との間に弾性部材4を配置して防振性を確保すると、耐震性を向上させるために板32を床200に対してボルト5で締め込むほど弾性部材4が潰れて防振性が低下してしまい、防振性と耐震性との両立が困難であった。本発明は、土台部21とケース部3との間に弾性部材4を配置し、弾性部材4とボルト5による締め込み位置との距離が離れているので、耐震性を確保するために板32をボルト5によってきつく床200に締め込んでも、床200と板32との間に弾性部材を配置する実施例と比較すると弾性部材4がつぶれにくく、防振性の低下を軽減することができる。
【0034】
その結果、実施形態1に係る支持治具1は、防振性と耐震性との双方を図ることができるという効果を奏する。
【0035】
また、実施形態1に係る支持治具1は、アジャスタ2の土台部21の床200との間に第2弾性部材6を設けているので、床200の振動がアジャスタ2に直接伝わることを抑制できる。
【0036】
なお、
図3は、従来の支持治具を一部断面で模式的に示す側面図である。なお、
図3は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0037】
〔実施形態2〕
実施形態2に係る支持治具を図面に基づいて説明する。
図2は、実施形態2に係る支持治具を一部断面で模式的に示す側面図である。なお、
図2は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
実施形態2にかかる
図2に示された支持治具1は、
図2に示すように、支持板7を有し、第2弾性部材6が支持板7と土台部21の下面213との間に配置されている事以外、実施形態1と同じである。なお、支持板7が、厚みが一定の板状に形成され、ケース部3の板32の下面及び第2弾性部材6の下面と、床200との間に配置され、ボルト5を通す穴71が設けられている。
【0039】
実施形態2に係る支持治具1は、ケース部3の板32がボルト5により床200に固定して、支持治具1を介して固定対象物100を床200に固定して、耐震性を確保しているとともに、床200に固定されるケース部3が固定対象物100に固定されるアジャスタ2との間に弾性部材4を設けているので、固定対象物100と床200との間で振動が伝わることを抑制して、実施形態1と同様に、防振性と耐震性との双方を図ることができるという効果を奏する。また、弾性部材4は、例えば地震が少ない地域など、耐震対策が必要とされない場合は、ケース部3を取り外して、従来と同様のアジャスタ2として使用することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態等に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 支持治具
2 アジャスタ
3 ケース部
4 弾性部材
5 ボルト(固定部)
6 第2弾性部材(弾性部材)
7 支持板
21 土台部
22 ボルト部
31 カバー部
32 板
100 固定対象物
200 床
213 下面(底面)
321 穴