(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114030
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】補強スリーブ及び光ファイバ接続部の補強構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G02B6/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019390
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】田邉 明夫
【テーマコード(参考)】
2H036
【Fターム(参考)】
2H036JA01
2H036JA02
2H036KA02
2H036MA11
2H036PA07
2H036PA10
2H036PA13
(57)【要約】
【課題】 光ファイバテープ心線等の接続部を効率良く補強することが可能な補強スリーブ等を提供する。
【解決手段】 補強スリーブ1は、熱収縮チューブ5、熱溶融部材7、抗張力体9等からなる。抗張力体9及び熱溶融部材7は、熱収縮チューブ5に挿入され、抗張力体9の上方に熱溶融部材7が配置される。抗張力体9の長手方向の一部において、抗張力体9の幅方向の両端部近傍に凹形状の熱溶融部材流入部13が設けられる。抗張力体9の長手方向に垂直な断面において、熱溶融部材流入部13における断面積は、熱溶融部材流入部13以外の部位の断面積よりも小さい。このため、抗張力体9の上方に配置した熱溶融部材7が溶融した際に、熱溶融部材7の一部は熱溶融部材流入部13に流入可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する補強スリーブであって、
熱収縮チューブと、
前記熱収縮チューブに挿入される熱溶融部材及び抗張力体と、
を具備し、
前記抗張力体の長手方向の一部において、前記抗張力体の幅方向の両端部近傍に孔又は凹形状の熱溶融部材流入部が設けられ、
前記抗張力体の長手方向に垂直な断面において、前記熱溶融部材流入部における断面積が、前記熱溶融部材流入部以外の部位の断面積よりも小さく、前記熱溶融部材が溶融した際に、前記熱溶融部材が前記熱溶融部材流入部に流入可能であることを特徴とする補強スリーブ。
【請求項2】
前記抗張力体の光ファイバ心線が配置される上面側が平坦面であることを特徴とする請求項1記載の補強スリーブ。
【請求項3】
前記熱溶融部材流入部は、前記抗張力体の上下面に貫通する孔であることを特徴とする請求項1記載の補強スリーブ。
【請求項4】
前記熱溶融部材流入部は、前記抗張力体の上面側に設けられた凹部であることを特徴とする請求項1記載の補強スリーブ。
【請求項5】
前記熱溶融部材流入部は、前記抗張力体の幅方向の両側部に設けられた凹部であることを特徴とする請求項1記載の補強スリーブ。
【請求項6】
前記凹部が、前記抗張力体の下面側にも連続して形成されることを特徴とする請求項5記載の補強スリーブ。
【請求項7】
前記凹部は、長手方向の中央に行くにつれて徐々に深くなるように形成されることを特徴とする請求項5記載の補強スリーブ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の補強スリーブを用いた、光ファイバ接続部の補強構造であって、
並列された複数の光ファイバが長手方向に間欠的に接着された光ファイバテープ心線同士の接続部が、前記熱溶融部材によって覆われることを特徴とする光ファイバ接続部の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強スリーブ、及びこれを用いた光ファイバ接続部の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば光ファイバ心線同士を融着接続する際には、融着接続部に補強スリーブが設けられて補強される。
【0003】
このような、補強スリーブは各種考案されており、例えば、ホットメルト接着剤チューブと抗張力体とが熱収縮チューブに挿入された補強スリーブがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、多量のデータを高速で伝送するための光ファイバとして、ケーブルへの収納や作業の簡易化のため、複数本の光ファイバ心線が並列に配置されて接着された光ファイバテープ心線が用いられている。また、並列した光ファイバが全長にわたって樹脂で固着された光ファイバテープ心線の他、並列した複数の光ファイバ心線同士が長手方向に間欠的に接着された間欠接着型光ファイバテープ心線がある。光ファイバ心線同士の間欠的な接着は、集線密度の向上や曲げによる伝送ロスの低減、単心化をしやすくするなどの特徴を持つ。以下、間欠接着型光ファイバテープ心線も合わせて、単に光ファイバテープ心線とする。
【0006】
図8(a)~
図8(c)は、補強スリーブを用いて、光ファイバテープ心線の接続部を補強する工程について示す図である。まず、
図8(a)に示すように、互いに対向して配置されるそれぞれの光ファイバ心線101同士を突き合せて、電極103からの放電によって各光ファイバ心線101同士を融着する。この際、補強スリーブ100は、一方の光ファイバ心線101側に退避させておく。
【0007】
次に、
図8(b)に示すように、補強スリーブ100を光ファイバ心線101同士の接続部に移動させる(図中矢印C)。その後、
図8(c)に示すように、補強スリーブ100を加熱して収縮させて、補強スリーブ100と複数の光ファイバ心線101とを一体化する。以上により、複数の光ファイバ心線101同士の接続部が補強される。
【0008】
図9(a)は、
図8(b)の状態の断面図である。前述したように、補強スリーブ100は、熱溶融部材107と抗張力体109とが熱収縮チューブ105に挿入されて構成される。熱溶融部材107は筒状であり、並列された光ファイバ心線101の接続部は、熱溶融部材107を貫通するように設けられる。なお、熱溶融部材107を貫通する光ファイバ心線101の外被は、接続前に除去されている。
【0009】
図8(b)は、補強スリーブ100を加熱した際の構造を示す理想上の概念図である。熱収縮チューブ105は、加熱によって収縮する。また、熱溶融部材107は熱によって軟化し、収縮後の熱収縮チューブ105の内部の隙間を埋め、複数の光ファイバ心線101及び抗張力体109と一体化する。
【0010】
ここで、抗張力体109の上面(光ファイバ心線101側)には、通常、平坦面が形成される。複数の光ファイバ心線101は、抗張力体109の上面の平坦面に沿って整列し、抗張力体109及び熱溶融部材107と一体化することが望まれる。
【0011】
しかし、実際には、
図9(c)に示すように、熱収縮チューブ105の収縮の際に、熱溶融部材107が周囲から力を受け(図中矢印D)、複数の光ファイバ心線101が側圧を受ける。前述したように、光ファイバ心線101は、抗張力体109の上面の平坦部に沿って、まっすぐに配列することが望まれるが、特に幅方向からの側圧によって、光ファイバ心線101の配列が乱れる。例えば、一部の光ファイバ心線101は、抗張力体109から離れる方向に移動し、中央付近に集まろうとする。
【0012】
このような傾向は、特に、光ファイバ心線101間の距離(ピッチ)が狭くなるほど、また、光ファイバ心線数が増えるほど強くなる。また、光ファイバ素線の径が細くなると剛性が小さくなるため、この傾向が強くなる。また、複数の光ファイバ心線同士が長手方向に間欠的に接着された間欠接着型の光ファイバテープ心線の場合には、さらにこの傾向が強くなる。
【0013】
このように、光ファイバ心線101の配列が乱れると、一部の光ファイバ心線101の伝送損失が増加する恐れがある。このため、熱収縮チューブ105の収縮時に、各光ファイバ心線101の配列が乱れずに、常に一定の形態で一体化されることが望まれる。
【0014】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、光ファイバテープ心線等の接続部を効率良く補強することが可能な補強スリーブ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する補強スリーブであって、熱収縮チューブと、前記熱収縮チューブに挿入される熱溶融部材及び抗張力体と、を具備し、前記抗張力体の長手方向の一部において、前記抗張力体の幅方向の両端部近傍に孔又は凹形状の熱溶融部材流入部が設けられ、前記抗張力体の長手方向に垂直な断面において、前記熱溶融部材流入部における断面積が、前記熱溶融部材流入部以外の部位の断面積よりも小さく、前記熱溶融部材が溶融した際に、前記熱溶融部材が前記熱溶融部材流入部に流入可能であることを特徴とする補強スリーブである。
【0016】
前記抗張力体の光ファイバ心線が配置される上面側が平坦面であることが望ましい。
【0017】
前記熱溶融部材流入部は、前記抗張力体の上下面に貫通する孔であってもよい。
【0018】
前記熱溶融部材流入部は、前記抗張力体の上面側に設けられた凹部であってもよい。
【0019】
前記熱溶融部材流入部は、前記抗張力体の幅方向の両側部に設けられた凹部であってもよい。
【0020】
前記凹部が、前記抗張力体の下面側にも連続して形成されてもよい。
【0021】
前記凹部は、中央に行くにつれて徐々に深くなるように形成されてもよい。
【0022】
第1の発明によれば、抗張力体の長手方向に垂直な断面において、抗張力体の幅方向の両端部近傍に熱溶融部材流入部が形成されるため、熱溶融部材が溶融する際に、熱溶融部材を幅方向の端部方向の流れが生じ、光ファイバを幅方向に分散させることができる。このため、光ファイバ心線の配列乱れを抑制することができる。
【0023】
この際、抗張力体の光ファイバ心線が配置される上面側を平坦面とすることで、光ファイバを幅方向に一直線上に配置することができる。
【0024】
このような熱溶融部材流入部としては、上下面に貫通する孔とすることで、補強構造の外面形状に凹凸が小さく、形状変化を小さくすることができる。
【0025】
また、熱溶融部材流入部として、抗張力体の上面側に設けられた凹部としても、同様の効果を得ることができる。また、凹部であれば、製造が容易である。
【0026】
また、熱溶融部材流入部として、抗張力体の両側部に設けられた凹部とすれば、例えば、円筒状の部材から、外周面の一部を切削し、半割りとすることで製造することができる。
【0027】
この際、抗張力体の下面側にも連続して凹部を形成することで、より効率よく熱溶融部材を凹部へ流入させることができる。
【0028】
また、凹部が長手方向の中央に行くにつれて徐々に深くなるように形成することで、急激な形状変化部をなくすことができる。このため、抗張力体の強度を向上させることができる。
【0029】
第2の発明は、第1の発明にかかる光ファイバ接続部の補強構造であって、並列された複数の光ファイバが長手方向に間欠的に接着された光ファイバテープ心線同士の接続部が、前記熱溶融部材によって覆われることを特徴とする光ファイバ接続部の補強構造である。
【0030】
第2の発明によれば、間欠接着型の光ファイバテープ心線を構成する複数の光ファイバが、抗張力体の幅方向に分散して配置されるため、光ファイバ心線毎の伝送損失ばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、光ファイバテープ心線等の接続部を効率良く補強することが可能な補強スリーブ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】(a)は、補強スリーブ1を示す側面図、(b)は、(a)のA-A線断面図。
【
図2】(a)、(b)は、抗張力体9を示す斜視図。
【
図3】補強スリーブ1を用いた光ファイバ心線11同士の接続部の補強工程を示す図で、(a)は、収縮前の断面図、(b)は、収縮後の断面図。
【
図4】(a)、(b)は、抗張力体9aを示す斜視図。
【
図5】(a)、(b)は、抗張力体9bを示す斜視図。
【
図6】(a)、(b)は、抗張力体9cを示す斜視図。
【
図7】(a)、(b)は、抗張力体9dを示す斜視図。
【
図8】補強スリーブ100を用いた光ファイバ心線101の接続工程を示す図。
【
図9】補強スリーブ100を用いた光ファイバ心線101同士の接続部の補強工程を示す図で、(a)は収縮前の断面図、(b)は収縮後の理想の断面概念図、(c)は、収縮後の実際の断面概念図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)は、補強スリーブ1の側面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。補強スリーブ1は、並列された複数の光ファイバ心線の接続部を一括して補強する部材であり、熱収縮チューブ5、熱溶融部材7、抗張力体9等からなる。
【0034】
熱収縮チューブ5は、断面が略円形の筒状の部材である。熱収縮チューブ5は、例えばポリエチレン系の樹脂製である。
【0035】
熱溶融部材7は、断面が略円形又は楕円形の筒状である。熱溶融部材7は、例えばエチレン酢酸ビニル系の樹脂製である。熱溶融部材7は、熱収縮チューブ5の熱収縮温度よりも低温で溶融することが望ましい。
【0036】
抗張力体9は、棒状の部材である。抗張力体9は、例えば、鋼製、カーボン製、ガラス製、セラミック製等である。抗張力体9の詳細は後述する。抗張力体9及び熱溶融部材7は、熱収縮チューブ5に挿入され、抗張力体9の上方に熱溶融部材7が配置される。なお、抗張力体9及び熱溶融部材7の脱落防止のため、熱収縮チューブ5の一部にかしめ部3が形成される。
【0037】
次に、抗張力体9について詳細に説明する。
図2(a)は、抗張力体9の上方斜視図であり、
図2(b)は下方斜視図である。なお、抗張力体9に対して光ファイバ心線が配置される側を上面とする。抗張力体9の上面側は平坦面10であり、下面側は曲面となる。すなわち、抗張力体9は、長手方向の中央部近傍を除き、全体として略半円柱形である。
【0038】
抗張力体9の長手方向の中央部近傍において、抗張力体9の幅方向の両端部近傍には、凹部13aが設けられる。凹部13aは、抗張力体9の両側部から下面側に連続して形成される。凹部13aは、熱溶融部材流入部13となる。すなわち、本実施形態では、抗張力体9の長手方向の一部において、抗張力体9の幅方向の両端部近傍に凹形状の熱溶融部材流入部13が設けられる。
【0039】
なお、凹部13aは、従来の抗張力体に対して切削加工で形成してもよく、又は、金型に素材粉末を充填して凹部13aを有する抗張力体を一体で形成してもよい。
【0040】
次に、熱溶融部材流入部13が形成された抗張力体9を有する補強スリーブ1を用いた、光ファイバ接続部の補強構造について説明する。
図3(a)~
図3(b)は、光ファイバ心線11同士の接続部の補強工程を説明する図である。
【0041】
まず、前述した
図8(a)~
図8(c)で示したのと同様に、光ファイバ心線11の先端部の所定長さの外被を除去し、先端同士を突き合わせて、各光ファイバ心線同士を融着させる。この際、一方の側の複数の光ファイバ心線11を、補強スリーブ1の熱溶融部材7に挿通し、補強スリーブ1は、一方の光ファイバ心線11側に退避させておく。
【0042】
次に、
図3(a)に示すように、補強スリーブ1を複数の光ファイバ心線11同士の接続部を覆うように移動させる。この際、複数の光ファイバ心線11は、平坦面10の幅方向の両側に形成される熱溶融部材流入部13の間に配置される。次に、熱収縮チューブ5と熱溶融部材7とを加熱することで、熱収縮チューブ5を収縮させるとともに熱溶融部材7を溶融させる。
【0043】
図3(b)は、熱収縮チューブ5が収縮し、熱溶融部材7が溶融した状態を示す断面図である。熱溶融部材7は、溶融すると抗張力体9に沿って流れる。この際、抗張力体9の長手方向の一部には熱溶融部材流入部13が設けられる。抗張力体9の長手方向に垂直な断面において、熱溶融部材流入部13における断面積は、熱溶融部材流入部13以外の部位の断面積よりも小さい。このため、抗張力体9の上方に配置した熱溶融部材7が溶融した際に、熱溶融部材7の一部は熱溶融部材流入部13に流入可能である。
【0044】
この際、熱溶融部材流入部13は、抗張力体9の幅方向の端部側(図中左右方向)に形成されているため、熱溶融部材7は、幅方向中央から外側に向かって流れる(図中矢印B方向)。このため、熱溶融部材7の流動とともに、光ファイバ心線11が幅方向の端部側に分散していく。
【0045】
前述したように、熱収縮チューブ5の収縮により、熱溶融部材7及び並列された光ファイバ心線11は側圧を受けるが、熱溶融部材7が抗張力体9の幅方向の端部側に流動するため、光ファイバ心線11が側圧によって中央に向かう力が相殺され、光ファイバ心線11が抗張力体9から浮き上がるようにして、配列が乱れることを抑制することができる。
【0046】
熱溶融部材7が完全に溶融し、熱収縮チューブ5が完全に収縮したら、加熱を止めて冷却し、抗張力体9と光ファイバ心線11の接続部とを熱溶融部材7によって一体化する。以上により、補強スリーブ1を用いた光ファイバ接続部の補強構造を得ることができる。この際、例えば隣り合う光ファイバ心線同士を接触させずにわずかに離して配置することもできる。
【0047】
なお、熱溶融部材流入部13の形成部では、抗張力体9の断面積が小さいため、光ファイバ接続部の補強構造において、当該部位だけ径が小さくなる可能性がある。このため、熱溶融部材流入部13に対応する位置に配置される熱溶融部材7を内面側又は外面側に厚みを部分的に厚くして、他の部位と比較して当該部位の熱溶融部材7の量を増やしてもよく、又は、他の熱溶融部材を追加で配置することで、局所的に熱溶融部材の量を増やしてもよい。
【0048】
なお、光ファイバ心線11が、複数の光ファイバ心線が長手方向に間欠的に接着され、隣り合う接着部同士が長手方向に例えば千鳥配置や階段状に配置された間欠接着型の光ファイバテープ心線の場合には、特に側圧からの影響で光ファイバ心線11の配列が乱れやすい。これに対し、本実施形態では、光ファイバ心線11が、間欠接着型の光ファイバテープ心線である場合でも、光ファイバ心線同士の配列乱れ等を抑制し、光ファイバテープ心線同士の接続部が、抗張力体9の平坦面10に配置され、熱溶融部材7によって覆われた、光ファイバ接続部の補強構造を得ることができる。
【0049】
また、通常、光ファイバ心線の外径(樹脂被覆の外径)が細い場合には、側圧からの影響で配列が乱れやすい。このため、本実施形態は、光ファイバテープ心線等を構成するそれぞれの光ファイバ心線の外径が225μm以下の場合に、特に効果的である。さらに光ファイバ心線の外径が200μm以下、170μm以下と細くなるとより効果的である。
【0050】
さらに樹脂被覆を除去したガラスファイバは、従来125μmであるが、このガラスファイバを細くすると、光ファイバ心線の剛性が小さくなるため、側圧の影響でガラスファイバの配列が乱れやすくなる。このため、本実施形態は、光ファイバテープ心線等を構成するそれぞれのガラスファイバの外径が110μm以下の場合に、特に効果的である。
【0051】
また、光ファイバテープ心線等を構成する光ファイバ心線の本数が多くなるほど、側圧からの影響で光ファイバ心線の配列が乱れやすい。このため、本実施形態は、光ファイバテープ心線等を構成する複数の光ファイバ心線の心数が8本以上の場合に、特に効果的である。さらに光ファイバ心線が12本以上、16本以上、24本以上と増えるほど、より効果的である。
【0052】
すなわち、本実施形態は、光ファイバ心線の心数が多く、光ファイバ心線間のピッチが狭く、かつ、光ファイバ心線の外径が小さい間欠接着型の光ファイバテープ心線の場合に非常に効果が大きい。
【0053】
以上、第1の実施形態によれば、抗張力体9の一部に、他の部位に対して断面積が小さく、熱溶融部材7が流入可能な熱溶融部材流入部13を設けることで、熱溶融部材7を幅方向中央から外側に向けた方向の流れを形成することができる。このため、外周側からの側圧を相殺し、光ファイバ心線の浮き上がりや光ファイバ心線同士の重なりを抑制することができる。このため、それぞれの光ファイバ心線11ごとの伝送損失のばらつきなどを抑制することができる。
【0054】
また、抗張力体9の上面は平坦面10であるため、光ファイバ心線11の配列を安定させることができる。また、従来の抗張力体の外面に凹部13aを形成するのみであるため、製造も容易である。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図4(a)は、抗張力体9aの上方斜視図、
図4(b)は、抗張力体9aの下方斜視図である。なお、以下の説明において、抗張力体9と同様の構成については、
図1~
図3と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0056】
抗張力体9aは、抗張力体9と略同様の構成であるが、抗張力体9aは、抗張力体9に対して熱溶融部材流入部13の形態が異なる。なお、熱溶融部材流入部13以外の構成は抗張力体9aと抗張力体9はすべて同一である。
【0057】
抗張力体9aは、抗張力体9と略同様に、長手方向の略中央において、幅方向の両端部に凹部13aが設けられるが、凹部13aが上方からまっすぐに切り欠かれた形態であって、抗張力体9aの下面側には連続していない。しかし、上方から見た際に、凹部13aは、熱溶融部材7が流入可能な開口を形成するため、
図3(b)と同様に、熱溶融部材7が上方から流れてきた際に、凹部13aへの流動が生じ、外周側からの側圧を相殺することができる。
【0058】
第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、熱溶融部材流入部13は、抗張力体9aの下面側まで連続して形成しなくともよい。また、凹部13aを全周に設ける必要が無いため製造が容易である。
【0059】
(第3実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図5(a)は、抗張力体9bの上方斜視図、
図5(b)は、抗張力体9bの下方斜視図である。抗張力体9bは、抗張力体9等と略同様の構成であるが熱溶融部材流入部13の形態が異なる。
【0060】
抗張力体9bは、抗張力体9等と略同様に、長手方向の略中央において、幅方向の両端部に凹部13aが設けられるが、凹部13aが上面から所定の深さのみに形成され、抗張力体9bの下方側には連続していない。しかし、抗張力体9bも、上方から見た際に、凹部13aは、熱溶融部材7が流入可能な開口を形成するため、
図3(b)と同様に、熱溶融部材7が上方から流れてきた際に、凹部13aへの流動が生じ、外周側からの側圧を相殺することができる。
【0061】
第3の実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、熱溶融部材流入部13は、抗張力体9aの上面側に所定の深さ形成されれば、下方まで形成しなくともよい。なお、抗張力体9bにおいては、上面に所定深さの凹部13aが形成されれば、抗張力体9bの外側面に凹部13aが開口しなくてもよい。すなわち、抗張力体9aの幅方向の端部近傍であって、外側面からわずかに内側に離れた位置に凹部13aが形成されてもよい。
【0062】
(第4実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図6(a)は、抗張力体9cの上方斜視図、
図6(b)は、抗張力体9cの下方斜視図である。抗張力体9cは、抗張力体9等と略同様の構成であるが熱溶融部材流入部13の形態が異なる。
【0063】
抗張力体9cは、抗張力体9等と略同様に、長手方向の略中央において、幅方向の両端部に凹部13aが設けられるが、凹部13aが長手方向の中央に行くにつれて徐々に深くなるように形成される。すなわち、抗張力体9cの長手方向に垂直な断面の断面積が、熱溶融部材流入部13において一定ではなく、長手方向の端部側から中央側に向かって、断面積が徐々に小さくなるように形成される。
【0064】
抗張力体9cも、上方から見た際に、凹部13aは、熱溶融部材7が流入可能な開口を形成するため、
図3(b)と同様に、熱溶融部材7が上方から流れてきた際に、凹部13aへの流動が生じ、外周側からの側圧を相殺することができる。
【0065】
第4の実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、長手方向に対して急激な断面積変化部が無いため、折損等を抑制することができる。このように、熱溶融部材流入部13は、平面視において矩形でなくてもよい。なお、図示した例では、凹部13aの外形が曲線で構成されるが、少なくとも一部が直線であってもよく、直線のみで構成されてもよい。また、凹部13aを下面側にも連続して形成してもよい。
【0066】
(第5実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
図7(a)は、抗張力体9dの上方斜視図、
図7(b)は、抗張力体9dの下方斜視図である。抗張力体9dは、抗張力体9等と略同様の構成であるが熱溶融部材流入部13の形態が異なる。
【0067】
抗張力体9dは、長手方向の略中央において、幅方向の両端部近傍に、凹部13aに代えて孔13bが形成される。孔13bは、抗張力体9dの上面から下面側に貫通する。すなわち、抗張力体9dの熱溶融部材流入部13は、抗張力体9dの上下面に貫通する孔13bで構成される。
【0068】
抗張力体9dも、上方から見た際に、孔13bは、熱溶融部材7が流入可能な開口を形成するため、
図3(b)と同様に、熱溶融部材7が上方から流れてきた際に、孔13bの内部への流動が生じ、外周側からの側圧を相殺することができる。
【0069】
第5の実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、抗張力体の外面に大きな凹凸が形成されないため、補強構造においても外形の形状変化が少ない。このように、熱溶融部材流入部13は、抗張力体を貫通する孔13bで形成されてもよい。なお、図示した例では、孔13bは、それぞれの幅方向端部側に4つずつ形成されるが、孔13bの個数は特に限定されない。また、孔の形状や大きさは特に限定されない。
【0070】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
例えば、各実施形態は互いに組み合わせてもよい。また、熱溶融部材流入部13の形成される範囲は、図示した例には限られず、抗張力体の長手方向の一部において、所定の範囲に形成されればよい。
【符号の説明】
【0072】
1………補強スリーブ
3………かしめ部
5………熱収縮チューブ
7………熱溶融部材
9、9a、9b、9c、9d………抗張力体
10………平坦面
11………光ファイバ心線
13………熱溶融部材流入部
13a………凹部
13b………孔
100………補強スリーブ
101………光ファイバ心線
103………電極
105………熱収縮チューブ
107………熱溶融部材
109………抗張力体