(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114033
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】光ファイバ保持構造及び光ファイバホルダ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/255 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G02B6/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019393
(22)【出願日】2023-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】田邉 明夫
【テーマコード(参考)】
2H036
【Fターム(参考)】
2H036JA02
2H036LA02
2H036LA03
2H036LA08
2H036MA11
2H036MA12
(57)【要約】
【課題】 製造精度を考慮して、より伝送ロスの小さな光ファイバの保持構造等を提供する。
【解決手段】 光ファイバホルダ5の先端側からは、光ファイバテープ心線を構成する複数の光ファイバが突出し、光ファイバホルダ5から突出する光ファイバが、ベース部材の複数のV溝25に配置される。光ファイバホルダ5では、被覆部29bが保持され、V溝25ではガラスファイバ29aが保持される。V溝25のピッチが、被覆部29bの外径(被覆部29bのピッチ)よりも大きい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの保持構造であって、
複数の光ファイバを保持する光ファイバホルダと、
前記光ファイバホルダが配置される融着機と、
前記融着機に設けられ、前記光ファイバホルダの先端側から突出するそれぞれの前記光ファイバが配置される複数のV溝と、
を具備し、
前記光ファイバは、ガラスファイバと、前記ガラスファイバの外周を被覆する被覆部とを有し、
前記光ファイバホルダは前記被覆部を保持し、前記V溝は前記ガラスファイバを保持し、
前記V溝のピッチが、前記被覆部の外径よりも大きいことを特徴とする光ファイバ保持構造。
【請求項2】
前記光ファイバホルダは、
前記光ファイバが配置される本体部と、
前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、
を具備し、
前記蓋部の下面の一部には、前記光ファイバの押さえ部が設けられ、前記蓋部を閉じることで、前記光ファイバを前記押さえ部で押さえることが可能であり、
前記押さえ部で押さえられる部位には、前記本体部に前記光ファイバが配置される凹部が設けられ、
前記凹部は、所定の範囲において長手方向に略同一の幅で形成され、前記本体部の前記押さえ部よりも先端側における前記凹部の先端に、前記凹部よりも幅が広い凹形状の光ファイバ変形許容部が設けられることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ保持構造。
【請求項3】
前記光ファイバ変形許容部の幅は、前記凹部の端部から徐々に広くなるように形成されることを特徴とする請求項2記載の光ファイバ保持構造。
【請求項4】
前記被覆部の端部から前記V溝までの距離をAとし、前記光ファイバホルダの先端側から前記V溝までの距離をBとすると、B-A>Aであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ保持構造。
【請求項5】
前記被覆部の端部から前記V溝までの距離をAとし、前記光ファイバホルダの先端側から前記V溝までの距離をBとし、前記凹部の先端から前記V溝までの距離をCとすると、C-B>B-Aであることを特徴とする請求項2記載の光ファイバ保持構造。
【請求項6】
複数の光ファイバを保持することが可能な光ファイバホルダであって、
前記光ファイバが配置される本体部と、
前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、
を具備し、
前記蓋部の下面の一部には、前記光ファイバの押さえ部が設けられ、前記蓋部を閉じることで、前記光ファイバを前記押さえ部で押さえることが可能であり、
前記押さえ部で押さえられる部位には、前記本体部に前記光ファイバが配置される凹部が設けられ、
前記凹部は、所定の範囲において長手方向に略同一の幅で形成され、前記本体部の前記押さえ部よりも先端側における前記凹部の先端に、前記凹部よりも幅が広い凹形状の光ファイバ変形許容部が設けられることを特徴とする光ファイバホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバを一括して保持することが可能な光ファイバホルダ及び光ファイバの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
多量のデータを高速で伝送するための光ファイバケーブルには、ケーブルへの収納や作業の簡易化のため、多心の光ファイバテープ心線が用いられている。光ファイバテープ心線の接続等を行う際には、光ファイバを保持するための光ファイバホルダが使用されるが、光ファイバテープ心線の各光ファイバを一括して接続等を行うためには、複数本の光ファイバを一括して保持する必要がある。
【0003】
このような光ファイバホルダとしては、本体の長手方向に光ファイバテープ心線の全幅に対応する溝を形成し、溝に光ファイバテープ心線を配置した状態で蓋を閉じることで、蓋の内面に配置された凸部によって光ファイバテープ心線が押圧され、保持される光ファイバホルダがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、光ファイバテープ心線は、各光ファイバ同士が互いに接触した状態で一体化される。すなわち、光ファイバテープ心線における光ファイバのピッチ(隣接する光ファイバの中心軸同士の間隔)は、おおむね、光ファイバテープ心線を構成する光ファイバの外径と一致する。このため、光ファイバテープ心線の幅は、それぞれの光ファイバの外径と本数とで決定される。
【0006】
このような光ファイバテープ心線を保持する従来の光ファイバホルダは、光ファイバテープ心線全体の幅方向の位置を規制すれば、各光ファイバの位置を規制することができる。このため、従来の光ファイバホルダでは、光ファイバテープ
心線の全幅に応じた溝を形成し、上方から押圧部材で押圧することで、各光ファイバの位置を規制することができた。
【0007】
一方、これらの光ファイバ同士を融着接続する際には、光ファイバは光ファイバホルダによって融着機にセットされる。
図9(a)は、融着機において、一対の光ファイバホルダ105が設置された状態を示す概念図である。それぞれの光ファイバホルダ105には、複数の光ファイバからなる光ファイバテープ心線129が保持される。
【0008】
融着機には、一対の電極棒107が配置されるベース部材103が配置される。
図9(b)は、ベース部材103近傍の拡大概念図である。それぞれの光ファイバは、ガラスファイバ129aと、ガラスファイバ129aを被覆する被覆部129bからなる。光ファイバホルダ105には、被覆部129bが配置されて、凹部111に整列される。すなわち、凹部111は、概ね被覆部129bの外径の総和に対応する。なお、凹部111における被覆部129bは、上方から押圧部材で押圧されて位置が保持される。
【0009】
ベース部材103には、それぞれの光ファイバホルダ105の先端側から突出するそれぞれのガラスファイバ129aが配置されるV溝125が配置される。それぞれのガラスファイバ129aは、V溝125に配置されて位置が規制され、互いに対向するガラスファイバ129a同士の先端が突き合せられる。ガラスファイバ129aの先端を突き合せた状態で電極棒107の間にアークを発生させることで、ガラスファイバ129a同士が融着される。
【0010】
この際、通常は、V溝125のピッチは、併設される光ファイバ(被覆部129b)のピッチと同一に設定される。すなわち、それぞれの光ファイバは、光ファイバホルダ105からガラスファイバ129aの先端まで、まっすぐに配置されることが望ましい。
【0011】
しかし、被覆部129bの製造時の寸法精度や、V溝125の加工精度などによって、実際の被覆部129bのピッチ(被覆部129bの外径)が、V溝125のピッチよりも大きくなってしまう場合がある。この場合、被覆部129b同士の接触部では、光ファイバ同士がそれ以上近づくことができないため、このピッチずれは、被覆部129bの端部からV溝125までの間(図中A)で吸収されることになる。
【0012】
しかし、被覆部129bからV溝125までの距離は短いため、この部位のガラスファイバ129aは大きく変形する。このように、吸収すべき変形量が大きくなると、V溝125に配置されていた光ファイバの、V溝125からの浮きあがりやズレが生じる恐れがある。この結果、光ファイバの軸合わせすることができず、軸がずれた状態で光ファイバが融着され、伝送ロスの増大の要因となっていた。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、製造精度を考慮して、より伝送ロスの小さな光ファイバの保持構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、光ファイバの保持構造であって、複数の光ファイバを保持する光ファイバホルダと、前記光ファイバホルダが配置される融着機と、前記融着機に設けられ、前記光ファイバホルダの先端側から突出するそれぞれの前記光ファイバが配置される複数のV溝と、を具備し、前記光ファイバは、ガラスファイバと、前記ガラスファイバの外周を被覆する被覆部とを有し、前記光ファイバホルダは前記被覆部を保持し、前記V溝は前記ガラスファイバを保持し、前記V溝のピッチが、前記被覆部の外径よりも大きいことを特徴とする光ファイバ保持構造である。
【0015】
前記光ファイバホルダは、前記光ファイバが配置される本体部と、前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、を具備し、前記蓋部の下面の一部には、前記光ファイバの押さえ部が設けられ、前記蓋部を閉じることで、前記光ファイバを前記押さえ部で押さえることが可能であり、前記押さえ部で押さえられる部位には、前記本体部に前記光ファイバが配置される凹部が設けられ、前記凹部は、所定の範囲において長手方向に略同一の幅で形成され、前記本体部の前記押さえ部よりも先端側における前記凹部の先端に、前記凹部よりも幅が広い凹形状の光ファイバ変形許容部が設けられることが望ましい。
【0016】
前記光ファイバ変形許容部の幅は、前記凹部の端部から徐々に広くなるように形成されることが望ましい。
【0017】
前記被覆部の端部から前記V溝までの距離をAとし、前記光ファイバホルダの先端側から前記V溝までの距離をBとすると、B-A>Aであることが望ましい。
【0018】
前記被覆部の端部から前記V溝までの距離をAとし、前記光ファイバホルダの先端側から前記V溝までの距離をBとし、前記凹部の先端から前記V溝までの距離をCとすると、C-B>B-Aであることが望ましい。
【0019】
第1の発明によれば、V溝のピッチを、光ファイバの被覆部の外径よりも大きくすることで、光ファイバホルダから突出する光ファイバ同士は、V溝までに間隔が広がる方向に位置ずれを吸収することとなる。このため、被覆部同士が離れる方向であるため、被覆部同士の接触で位置が拘束されないため、位置ずれを吸収可能な長さを長くすることができる。また、ピッチずれをガラスファイバのみではなく被覆部で被覆された部位でも吸収することができるため、V溝からの光ファイバの浮き上がり等を抑制し正確に軸を合わせて融着することができる。このため、伝送ロスを低減することができる。
【0020】
また、光ファイバホルダの凹部を、長手方向に略同一の幅で形成し、凹部の先端に凹部よりも幅が広い光ファイバ変形許容部を設けることで、光ファイバ同士が離れる方向に変形可能な領域をさらに長くすることができる。このため、V溝からの光ファイバの浮き上がり等を抑制し正確に軸を合わせて融着することができ、伝送ロスを低減することができる。
【0021】
この際、光ファイバ変形許容部の幅を、凹部の端部から徐々に広くなるようにすることで、凹部と光ファイバ変形許容部との境界部において、光ファイバの急激な曲げによって大きな応力が付与されることを抑制することができる。
【0022】
このような効果は、被覆部の端部からV溝までの距離をAとし、光ファイバホルダの先端側からV溝までの距離をBとした際に、B-A>Aとなるときに特に有効である。
【0023】
さらに、被覆部の端部からV溝までの距離をAとし、光ファイバホルダの先端側からV溝までの距離をBとし、凹部の先端からV溝までの距離をCとしたときに、C-B>B-Aとなるときに特に有効である。
【0024】
第2の発明は、複数の光ファイバを保持することが可能な光ファイバホルダであって、前記光ファイバが配置される本体部と、前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、を具備し、前記蓋部の下面の一部には、前記光ファイバの押さえ部が設けられ、前記蓋部を閉じることで、前記光ファイバを前記押さえ部で押さえることが可能であり、前記押さえ部で押さえられる部位には、前記本体部に前記光ファイバが配置される凹部が設けられ、前記凹部は、所定の範囲において長手方向に略同一の幅で形成され、前記本体部の前記押さえ部よりも先端側における前記凹部の先端に、前記凹部よりも幅が広い凹形状の光ファイバ変形許容部が設けられることを特徴とする光ファイバホルダである。
【0025】
第2の発明によれば、光ファイバホルダの先端側において、光ファイバ同士が離れる方向に変形することが可能な光ファイバ変形許容部が設けられるため、光ファイバ同士の変形可能範囲を長くすることができる。このため、前述した光ファイバ保持構造において効果的である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、製造精度を考慮して、より伝送ロスの小さな光ファイバの保持構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図3】(a)は、ベース部材3を示す平面図、(b)はV溝25の断面図。
【
図4】(a)は、光ファイバホルダ5を対向して配置した状態を示す概念図、(b)はベース部材3近傍の拡大図。
【
図5】(a)は、光ファイバホルダ5での凹部21における断面図、(b)はV溝25における断面図。
【
図7】光ファイバホルダ5aを対向して配置した状態におけるベース部材3近傍の拡大図。
【
図9】(a)は、従来の光ファイバホルダ105を対向して配置した状態を示す概念図、(b)はベース部材103近傍の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、融着機1を示す斜視図である。融着機1は、一対の光ファイバを融着によって接続するものである。なお、以下の図においては、説明に不要な構成については、図示を省略する。
【0029】
図1に示すように、融着機1は、本体に対して開閉可能な風防を有する。また、融着機1の本体には、光ファイバを保持するための光ファイバホルダが配置されるホルダ載置部11と、光ファイバ及び電極棒7の位置決めがなされるベース部材3等が配置される。光ファイバが保持された光ファイバホルダをホルダ載置部11に載置し、光ファイバホルダの先端から突出する光ファイバの先端をベース部材3のV溝に配置して風防を閉じることで、V溝上方からクランプ9によって光ファイバが保持される。この状態で電極棒7同士の間で放電させることで、光ファイバの先端を融着して接続することができる。
【0030】
図2は、光ファイバホルダ5を示す平面図である。光ファイバホルダ5は、主に本体部13、蓋部15、押さえ部17等から構成される。本体部13は、光ファイバが配置される部位であり、略直方体の部材である。光ファイバホルダ5は、複数の光ファイバ(光ファイバテープ心線)を保持することが可能である。
【0031】
なお、本体部13の長手方向(保持対象の光ファイバ心線の軸方向)であって、光ファイバ心線の接続等が行われる側(図中左側)を光ファイバホルダ5(本体部13)の先端側とし、その逆側を光ファイバホルダ5(本体部13)の後端部側とする。また、本体部13の光ファイバが配置される面内で、長手方向に垂直な方向を本体部13の幅方向とする。
【0032】
本体部13の幅方向の一方の側方には、本体部13に対してヒンジにより開閉可能な蓋部15が設けられる。本体部13及び蓋部15は例えば金属製である。本体部13の蓋部15との対向面には磁石19が配置される。蓋部15を本体部13に対して閉じると、蓋部15は、磁石19によって、閉じた状態が維持される。なお、蓋部15は、閉じた状態で蓋部15の下面と本体部13の上面とが略平行となるように調整される。
【0033】
蓋部15の下面(本体部13との対向面)の少なくとも一部には、光ファイバを押さえる押さえ部17が長手方向の所定の範囲にわたって形成される。押さえ部17は、蓋部15の内面から所定の量だけ突出する。押さえ部17は、本体部13上に配置される光ファイバを押圧して保持する部材である。なお、押さえ部17は、例えば樹脂製等であり、光ファイバを傷つけない部材で構成される。
【0034】
本体部13の上面(蓋部15との対向面)には、光ファイバテープ心線(多心光ファイバ心線)を構成する各光ファイバが配置される凹部21が形成される。凹部21は、本体部13の上面に長手方向に沿って形成される。なお、凹部21は、長手方向の所定の範囲(図では全長)において略同一の幅で形成される。
【0035】
凹部21の幅Wは、光ファイバテープ心線の幅に対応したものであり、凹部21に接続対象の複数の光ファイバを並列させて配置することができる。すなわち、凹部21の幅Wは、各光ファイバの外径の総和とほぼ同一またはわずかに大きく設定される。また、前述した押さえ部17は、凹部21の上方に配置される。すなわち、少なくとも、押さえ部17で押さえられる部位には、本体部13に光ファイバが配置される凹部21が設けられ、蓋部15を閉じることで、凹部21に配置された光ファイバを押さえ部17で押さえることが可能である。このため、凹部21は、少なくとも押さえ部17で押さえられる部位において略一定の幅Wで形成されればよい。
【0036】
次に、ベース部材3について説明する。
図3(a)はベース部材3の平面図である。ベース部材3は、例えばセラミックス製であり、互いに直交する方向に、V溝23とV溝25が形成される。V溝23には、互いに対向する電極棒7が配置される。また、V溝25には、複数の光ファイバが対向するように配置される。
【0037】
図3(b)は、V溝25の断面図である。図示したように、複数のV溝25が併設されて、複数の光ファイバがそれぞれのV溝25に配置される。なお、本発明においてV溝とは、溝の長手方向に直交する方向の断面において、対向する内側面が、深くなるにつれて互いに近づく方向のテーパ形状を有する溝形状であり、最深部が必ずしも所定の角度で交わったV字状であるものには限られない。例えば、V溝25の最深部が曲線で形成されてもよく、平坦部が形成されてもよい。
【0038】
次に、融着機1における光ファイバの保持構造について説明する。
図4(a)は、光ファイバの保持構造を示す図である。なお、光ファイバホルダ5とベース部材3等についてのみ図示し、融着機1における他の構造等は図示を省略する。
【0039】
前述したように、融着機1のホルダ載置部11(
図1参照)に、それぞれ光ファイバホルダ5が配置される。光ファイバホルダ5には、それぞれ光ファイバテープ心線29が保持される。より詳細には、光ファイバテープ心線29が、光ファイバホルダ5の本体部13の凹部21に配置され、上方から押さえ部17で押さえられることで保持される(
図2参照)。
【0040】
図4(b)は、ベース部材3近傍の拡大図である。光ファイバホルダ5の先端側からは、光ファイバテープ心線を構成する複数の光ファイバが突出し、光ファイバホルダ5から突出する光ファイバが、前述した融着機1に設けられたベース部材3の複数のV溝25に配置される。
【0041】
ここで、それぞれの光ファイバは、ガラスファイバ29aと、ガラスファイバ29aの外周を被覆する被覆部29bとを有し、光ファイバの先端部分の所定の長さだけ被覆部29bが剥離されてガラスファイバ29aが露出する。
【0042】
図5(a)は、
図4(b)のX部の断面図であり、
図5(b)は、
図4(b)のY部の断面図である。光ファイバホルダ5では、被覆部29bが保持され、V溝25ではガラスファイバ29aが保持される。すなわち、被覆部29bの端部(被覆部29bとガラスファイバ29aの露出部との境界部)は、光ファイバホルダ5の先端とV溝25(ベース部材3)との間に位置する。
【0043】
また、
図5(a)に示すように、光ファイバホルダ5の凹部21の幅Wは、光ファイバテープ心線の幅(すなわち、各光ファイバの被覆部29bの外径の総和)とほぼ一致する。すなわち、光ファイバホルダ5においては、各光ファイバ同士のピッチDは、光ファイバの外径とほぼ一致する。
【0044】
また、
図5(b)に示すように、ベース部材3のV溝25には、それぞれガラスファイバ29aが配置される。なお、V溝25に配置されたそれぞれのガラスファイバ29aは、図示を省略したクランプ9(
図1参照)によって上方から押さえられて保持される。ここで、V溝25(V溝25に配置されたガラスファイバ29a)のピッチをPとする。本実施形態では、V溝25のピッチPが、被覆部29bの外径(被覆部29bのピッチ)Dよりも大きい。
【0045】
このように、V溝25のピッチをわずかに被覆部29bの外径よりも大きくすることで、
図4(b)に示すように、光ファイバホルダ5の先端から突出する光ファイバ同士のピッチが、V溝25までの間(図中Bの範囲)でわずかに広げられる。
【0046】
前述したように、理想はV溝25のピッチPと、被覆部29bの外径(被覆部29bのピッチ)Dが完全に一致することであるが、被覆部29bの外径の公差や、V溝25の加工精度によって、V溝25のピッチPが、被覆部29bの外径(被覆部29bのピッチ)Dよりも小さくなる恐れがある。この場合には、被覆部29bの先端からV溝25までの距離(
図9(b)の距離A)の範囲でガラスファイバ29aが内側に寄せられるため、極めて短い距離でピッチずれを吸収する必要がある。
【0047】
これに対し、本実施形態では、ピッチずれを吸収可能な距離が光ファイバホルダ5の先端からV溝25までの距離とすることができるため、V溝からの光ファイバの浮き上がり等を抑制し正確に軸を合わせて融着することができる。なお、このような効果を確実に得るためには、被覆部29bの端部からV溝25までの距離をAとし、光ファイバホルダ5の先端側からV溝25までの距離をBとすると、B-A>Aであることが望ましい。
【0048】
なお、V溝25のピッチPとしては、被覆部29bの外径(被覆部29bのピッチ)Dの公差の最大値に対して、V溝25の設定加工ピッチに対するマイナス公差分を足し合わせたピッチで設定すればよい。例えば、被覆部29bの外径が、250μm±1μmであり、V溝25の加工精度が、250μm±1μmである場合には、V溝25のピッチPを252μm(光ファイバの公称径(250μm)に対して+0.8%以上)に設定すればよい。なお、V溝25のピッチを大きくしすぎるとピッチずれ量が大きくなりすぎるため、例えば、光ファイバの公称径の+2%以下とすることが望ましい。
【0049】
以上、本実施の形態によれば、V溝25のピッチPが、被覆部29bの外径(被覆部29bのピッチ)Dよりも大きいため、加工精度を考慮しても、ガラスファイバ29aが近づく方向にピッチずれが生じることを抑制することができる。このため、ピッチずれを吸収可能な範囲を広げることができ、V溝からの光ファイバの浮き上がり等を抑制し正確に軸を合わせて融着することができる。この結果、伝送ロスの増大を抑制することができる。
【0050】
例えば、光ファイバテープ心線29の接続には、複数の光ファイバ同士を接続する必要があるが、そのうちの1本でも伝送ロスが規定以上となると(例えば0.2dBを超えると)、接続部の全体が不合格となる。このため、心数が増えるとすべての接続部が合格する必要があるため、より厳しい条件となる。これに対し、本実施形態では、軸ずれを抑制して融着することができるため、伝送ロスを低減することができるため、多心の光ファイバテープ心線29の接続部に対しても合格率を向上させることができる。
【0051】
なお、上述したように、本実施形態においては、心数が増えるほどその効果が大きい。このため、本実施形態は、例えば、12心以上の光ファイバテープ心線29に対して特に有効であり、24心以上の光ファイバテープ心線29に対してはさらに有効である。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態にかかる光ファイバホルダ5aを示す平面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の構成については
図1~
図5と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0053】
光ファイバホルダ5aは、光ファイバホルダ5と略同様であるが、光ファイバ変形許容部31が形成される点で異なる。光ファイバホルダ5aの本体部13には、押さえ部17で押さえられる部位よりも先端側において、光ファイバ変形許容部31が設けられる。光ファイバ変形許容部31は、凹部21の先端に配置され、凹部21よりも幅が広い凹形状である。すなわち、凹部21と光ファイバ変形許容部31は、本体部13の上面に対して同じ深さで形成され、光ファイバ変形許容部31の幅W1は、凹部21の幅Wよりも広く形成される。
【0054】
図7は、光ファイバホルダ5aを用いた光ファイバの保持構造を示す図である。前述したように、光ファイバホルダ5aには、それぞれ光ファイバテープ心線29が保持される。より詳細には、光ファイバテープ心線29が、光ファイバホルダ5aの本体部13の凹部21に配置され、上方から押さえ部17で押さえられることで保持される(
図2参照)。
【0055】
凹部21の先端側においては、凹部21よりも幅が広い光ファイバ変形許容部31が設けられる。前述したように、光ファイバ変形許容部31は、押さえ部17(図示省略)よりも先端側に配置されるため、光ファイバ変形許容部31においては、光ファイバ(被覆部29b)は上方から押さえられておらず拘束されていない。このため、光ファイバは、光ファイバ変形許容部31において、幅方向に移動することが可能である。
【0056】
この場合、凹部21の先端(光ファイバ変形許容部31の後端)からV溝25までの距離Cの範囲で光ファイバは幅方向に変形することができる。この際、凹部21の先端からV溝25までの距離Cは、前述した、光ファイバホルダ5の先端側からV溝25までの距離B(
図4(b)参照)よりも長いため、光ファイバの変形可能領域を広げることができる。このため、V溝からの光ファイバの浮き上がり等をさらに抑制することができる。
【0057】
なお、このような効果を確実に得るためには、被覆部29bの端部からV溝25までの距離をA(
図9(b)参照)とし、光ファイバホルダ5aの先端側からV溝25までの距離をB(
図4(b)参照)とし、凹部21の先端からV溝25までの距離をCとすると、C-B>B-Aであることが望ましい。
【0058】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、光ファイバ変形許容部31を設けることで、さらに光ファイバのピッチずれを吸収可能な長さを長くすることができるため、より確実にV溝からの光ファイバの浮き上がり等を抑制することができる。
【0059】
なお、光ファイバ変形許容部31の幅W1と凹部21の幅Wとの差は、前述したV溝25の製造加工精度を考慮して、V溝25の公差ピッチの最大値と光ファイバテープ心線の心数に応じて設定すればよい。すなわち、光ファイバ変形許容部31の幅W1は、V溝25の最大総幅と同一又はわずかに大きくしておけばよい。
【0060】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図8は、第3の実施形態にかかる光ファイバホルダ5bを示す平面図である。光ファイバホルダ5bは、光ファイバホルダ5aと略同様であるが、光ファイバ変形許容部31の形態が異なる。
【0061】
光ファイバホルダ5bは、光ファイバ変形許容部31の幅が、凹部21の端部から徐々に広くなるように形成される。図示した例では、凹部21の幅から曲線状(ラッパ状)に徐々に幅が広くなるように形成される。すなわち、凹部21から光ファイバ変形許容部31の先端側に向けて、凹形状の幅の急激な変形部が存在しない。
【0062】
第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、光ファイバ変形許容部31の幅が徐々に広くなるため、凹部21と光ファイバ変形許容部31との境界部において、光ファイバに局所的な応力が付与されることを抑制することができる。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………融着機
3………ベース部材
5、5a、5b………光ファイバホルダ
7………電極棒
9………クランプ
11………ホルダ載置部
13………本体部
15………蓋部
17………押さえ部
19………磁石
21………凹部
23………V溝
25………V溝
29………光ファイバテープ心線
29a………ガラスファイバ
29b………被覆部
31………光ファイバ変形許容部
103………ベース部材
105………光ファイバホルダ
107………電極棒
125………V溝
129………光ファイバテープ心線
129a………ガラスファイバ
129b………被覆部