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特開2024-114173視点追従用画像生成装置、プログラムおよび表示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114173
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】視点追従用画像生成装置、プログラムおよび表示システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/32 20180101AFI20240816BHJP
   H04N 13/378 20180101ALI20240816BHJP
【FI】
H04N13/32
H04N13/378
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019749
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 正規
(72)【発明者】
【氏名】岡市 直人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久幸
(72)【発明者】
【氏名】半田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】洗井 淳
【テーマコード(参考)】
5C061
【Fターム(参考)】
5C061AA06
5C061AB12
5C061AB14
5C061AB16
(57)【要約】
【課題】品質が高く全方向の視差のある三次元映像を提示する。
【解決手段】視点追従用画像生成装置20は、三次元映像を観察する観察者の顔を撮影するカメラ30の撮影画像を処理して、観察者の視点位置情報と、観察者の両眼を通る直線と三次元ディスプレイ10の水平方向とのなす角で示される視点回転情報と、を含む視点情報を計算する視点情報計算手段23と、視点回転情報が0である条件のときに要素画像の垂直方向を基準方向に一致させて、視点位置情報および視点回転情報に応じて多視点画像を並べ替え且つ回転させることで要素画像を生成する要素画像生成手段21と、視点回転情報が0である条件のときに線光源の長手方向を基準方向に一致させて、視点回転情報に応じて複数の線光源を間隔を維持しながら回転させて線光源アレイ画像を生成する線光源アレイ画像生成手段22と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
要素画像を表示する要素画像表示パネルと、前記要素画像表示パネルの背後に設置されて複数の線光源を所定間隔で平行に並べてなる線光源アレイ画像を表示する光源表示用ディスプレイとを有する三次元ディスプレイに用いる前記要素画像および前記線光源アレイ画像を、前記三次元ディスプレイで提示される三次元映像を観察する観察者の視点に応じて生成する視点追従用画像生成装置であって、
前記観察者の顔を撮影するカメラの撮影画像を処理して、観察者の視点位置情報と、観察者の両眼を通る直線と前記三次元ディスプレイの水平方向とのなす角で示される視点回転情報と、を含む視点情報を計算する視点情報計算手段と、
前記視点回転情報が0である条件のときに前記要素画像の垂直方向を所定の基準方向に一致させて、前記視点位置情報および前記視点回転情報に応じて多視点画像を並べ替え且つ回転させることで前記要素画像を生成する要素画像生成手段と、
前記視点回転情報が0である条件のときに前記線光源の長手方向を前記基準方向に一致させて、前記視点回転情報に応じて前記複数の線光源を前記所定間隔を維持しながら回転させて前記線光源アレイ画像を生成する線光源アレイ画像生成手段と、を備えることを特徴とする視点追従用画像生成装置。
【請求項2】
前記要素画像生成手段は、前記三次元ディスプレイにおける前記要素画像表示パネルのすべての表示範囲を撮影できるようにカメラ位置に応じた内部パラメータがそれぞれ設定された複数の仮想カメラからなるカメラアレイで撮影された被写体の多視点画像から前記要素画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の視点追従用画像生成装置。
【請求項3】
前記要素画像生成手段は、前記視点回転情報が0である条件のときに前記要素画像の垂直方向を前記三次元ディスプレイの垂直方向に一致させて、前記視点位置情報および前記視点回転情報に応じて前記多視点画像を並べ替え且つ回転させることで前記要素画像を生成し、
前記線光源アレイ画像生成手段は、前記視点回転情報が0である条件のときに前記線光源の長手方向を前記三次元ディスプレイの垂直方向に一致させて、前記視点回転情報に応じて前記複数の線光源を前記所定間隔を維持しながら回転させて前記線光源アレイ画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の視点追従用画像生成装置。
【請求項4】
前記要素画像生成手段は、前記視点回転情報が0である条件のときに前記要素画像の垂直方向を前記三次元ディスプレイの垂直方向から所定角度傾けた方向に一致させて、前記視点位置情報および前記視点回転情報に応じて前記多視点画像を並べ替え且つ回転させることで前記要素画像を生成し、
前記線光源アレイ画像生成手段は、前記視点回転情報が0である条件のときに前記線光源の長手方向を前記三次元ディスプレイの垂直方向から前記所定角度傾けた方向に一致させて、前記視点回転情報に応じて前記複数の線光源を前記所定間隔を維持しながら回転させて前記線光源アレイ画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の視点追従用画像生成装置。
【請求項5】
前記視点情報計算手段は、観察者の両眼を通る直線と前記三次元ディスプレイの水平方向とのなす角で示される視点回転情報を計算し、この視点回転情報を時間方向に平滑化して、平滑化された視点回転情報を前記要素画像生成手段および前記線光源アレイ画像生成手段に出力することを特徴とする請求項1に記載の視点追従用画像生成装置。
【請求項6】
前記視点情報計算手段は、観察者の両眼を通る直線と前記三次元ディスプレイの水平方向とのなす角で示される視点回転情報を計算し、この視点回転情報を丸め処理して、丸め処理された視点回転情報を前記要素画像生成手段および前記線光源アレイ画像生成手段に出力することを特徴とする請求項1に記載の視点追従用画像生成装置。
【請求項7】
前記三次元ディスプレイにおける前記要素画像表示パネルと、前記光源表示用ディスプレイとには、表示タイミングを同期させる同期信号が入力されることを特徴とする請求項1に記載の視点追従用画像生成装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の視点追従用画像生成装置として機能させるための視点追従用画像生成プログラム。
【請求項9】
要素画像を表示する要素画像表示パネルと、前記要素画像表示パネルの背後に設置されて線光源アレイ画像を表示する光源表示用ディスプレイとを有する三次元ディスプレイと、
観察者の顔を撮影するカメラと、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の視点追従用画像生成装置と、を備えることを特徴とする表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裸眼の観察者に三次元映像を提示する表示システムに係り、特に、視点追従と線光源アレイを用いた視点追従用画像生成装置、プログラムおよび表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高い臨場感や実在感を与える映像メディアの一つとして三次元映像が注目されている(例えば特許文献1、非特許文献1~4参照)。インテグラル方式などの光線再生型の三次元ディスプレイは、裸眼で両眼視差や運動視差が表現できるため、実際に実物を見ているような映像体験が期待できる。しかし、現状では、三次元ディスプレイには様々な課題があるため、二次元ディスプレイのように一般的な普及には至っていない。三次元ディスプレイの実用化を進めていくためには次のようないくつかの要件を満たすことが望まれる。
【0003】
第一の要件は、高い三次元映像品質である。三次元映像品質の主な評価指標としては解像度、奥行き再現範囲(光線密度)、視域(三次元映像が正しく見える範囲)がある。高品質な三次元映像を実現するためにはこれらすべてを向上させることが望まれる。特に解像度は二次元ディスプレイの解像度と比較して大きく劣っているため向上が望まれている。
【0004】
第二の要件は、全方向の視差である。日常生活において我々はディスプレイを様々な方向から見る機会がある。例えば、テレビを座って見ることもあれば、横になった状態で見ることもある。時には、横から覗き込むように斜めで見ることもある。また、スマートフォンにおいても使用するアプリケーションに応じて縦方向と横方向の表示を使い分ける。このようにどの方向から見ても三次元映像を見ることができるようにするためには全方向の視差があればよい。
【0005】
第三の要件は、二次元映像と三次元映像との切り替えである。三次元映像が普及しても、従来の高精細な二次元映像のニーズは高いと考えられる。そのため、ユーザ(観察者)が二次元映像と三次元映像とを特別な操作をすることなく簡単に切り替えられることが望まれる。ここで、特別な操作とは、例えばレンズの着脱などである。
以上のような要件を満たす三次元ディスプレイが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-113478号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】高木康博、「立体映像とフラットパネル型立体表示技術」、光学、第35巻、第8号、p. 400-409、2006[online],[令和4年11月11日検索],インターネット<URL:https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/35-08-sougou.pdf>
【非特許文献2】G. Lippmann, “Epreuves reversibles donnant la sensation du relief”, J. Phys. Theor. Appl., 7, (1), pp.821-825, 1908
【非特許文献3】岡市直人、外4名、「点光源アレーを用いた視点追従型インテグラル3D映像表示システムの基礎検証」、映像情報メディア学会 年次大会, 23C-1 (2022)
【非特許文献4】岡市直人、外4名、「視点追従型インテグラル3D映像表示システムの開発」, 映像情報メディア学会誌, Vol.75, No.1, p.125-130 (2021)
【非特許文献5】J.-Y. Son, et al., “Three-Dimensional Imaging Methods Based on Multiview Images”, IEEE/OSA J. Display Technology, vol. 1, no. 1, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光線再生型の三次元ディスプレイとして様々な表示方式が提案されている。しかし、いずれの方式も長所と短所がある。主な4つの方式の長所と短所は以下の(1)~(4)に示すとおりである。
(1)レンチキュラ方式(非特許文献1参照)
レンチキュラ方式はレンチキュラレンズを用いた方式であり、高い品質の三次元映像が表示可能である。しかし、光学的に一方向の視差しか表示できないため、全方向から三次元映像を観察することはできない。さらに、二次元ディスプレイの上にレンチキュラレンズを載せる構成のため、二次元映像を表示した際には、本来の二次元ディスプレイの解像度より低い二次元映像となる。
【0009】
(2)インテグラル方式(非特許文献1、2参照)
インテグラル方式はレンズアレイを用いた方式であり、全方向に視差のある映像が表示可能(フルパララックス)である。しかし、表示可能な三次元映像の品質が低い。さらに、二次元ディスプレイの上にレンズアレイを載せる構成のため、二次元映像を表示した際には、本来の二次元ディスプレイの解像度より大幅に低い二次元映像となる。
【0010】
(3)線光源アレイ方式(非特許文献5参照)
線光源アレイ方式はレンズを使用せずに二枚のパネルを用いた方式であり、高い品質の三次元映像が表示可能である。レンチキュラ方式やインテグラル方式と異なりレンズを用いないため、二次元映像を表示しても、本来の二次元ディスプレイの解像度と同じ解像度の二次元映像が表示可能(二次元映像と三次元映像との切り替えが可能)である。しかし、線光源アレイ方式は、レンチキュラ方式と等価の光線を表示することになるため光学的に一方向の視差しか表示できない。さらに、レンチキュラ方式やインテグラル方式のようなレンズを使用する方式と比較して、表示できる映像の輝度がやや低くなってしまう。
【0011】
(4)点光源アレイ方式(非特許文献3参照)
点光源アレイ方式はレンズを使用せずに二枚のパネルを用いた方式であり、全方向に視差のある映像が表示可能である。レンチキュラ方式やインテグラル方式と異なりレンズを用いないため、二次元映像を表示しても、本来の二次元ディスプレイの解像度と同じ解像度の二次元映像が表示可能(二次元映像と三次元映像との切り替えが可能)である。しかし、インテグラル方式と等価の光線を表示することになるため表示可能な三次元映像の品質が低い。さらに、レンチキュラ方式やインテグラル方式のようなレンズを使用する方式と比較して、表示できる映像の輝度が大幅に低くなってしまう。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、品質が高く全方向の視差のある三次元映像を提示することができる視点追従用画像生成装置、プログラムおよび表示システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明に係る視点追従用画像生成装置は、要素画像を表示する要素画像表示パネルと、前記要素画像表示パネルの背後に設置されて複数の線光源を所定間隔で平行に並べてなる線光源アレイ画像を表示する光源表示用ディスプレイとを有する三次元ディスプレイに用いる前記要素画像および前記線光源アレイ画像を、前記三次元ディスプレイで提示される三次元映像を観察する観察者の視点に応じて生成する視点追従用画像生成装置であって、前記観察者の顔を撮影するカメラの撮影画像を処理して、観察者の視点位置情報と、観察者の両眼を通る直線と前記三次元ディスプレイの水平方向とのなす角で示される視点回転情報と、を含む視点情報を計算する視点情報計算手段と、前記視点回転情報が0である条件のときに前記要素画像の垂直方向を所定の基準方向に一致させて、前記視点位置情報および前記視点回転情報に応じて多視点画像を並べ替え且つ回転させることで前記要素画像を生成する要素画像生成手段と、前記視点回転情報が0である条件のときに前記線光源の長手方向を前記基準方向に一致させて、前記視点回転情報に応じて前記複数の線光源を前記所定間隔を維持しながら回転させて前記線光源アレイ画像を生成する線光源アレイ画像生成手段と、を備えることとした。
【0014】
なお、視点追従用画像生成装置は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるための視点追従用画像生成プログラムで動作させることができる。
【0015】
また、本発明に係る表示システムは、要素画像を表示する要素画像表示パネルと、前記要素画像表示パネルの背後に設置されて線光源アレイ画像を表示する光源表示用ディスプレイとを有する三次元ディスプレイと、観察者の顔を撮影するカメラと、前記視点追従用画像生成装置と、を備えることとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明に係る視点追従用画像生成装置が生成する線光源アレイ画像および要素画像は、線光源アレイ方式の三次元ディスプレイに用いられるものである。線光源アレイ方式はレンチキュラ方式と等価な光線が表示可能なため、本発明に係る表示システムは、レンチキュラ方式のように品質の高い三次元映像が表示可能である。加えて表示システムは、点光源アレイ方式と比較して輝度の高い映像が表示可能である。
また、視点追従用画像生成装置は、視点追従機能において、観察者の視点位置情報だけでなく視点回転情報も取得し、線光源アレイ画像および要素画像を、観察者の両眼の視点位置と回転角度に応じて変化させる。そのため、表示システムは、視点追従機能によって、観察者の両眼の回転角度に合わせた線光源アレイ画像と要素画像を表示することで、観察者の両眼に対して常に視差のある映像が提示できるため全方向視差と同じ効果が得られる。加えて、表示システムは、要素画像を視点位置に応じて変化させることで視域も拡大できる。
したがって、視点追従用画像生成装置は、品質が高く全方向の視差のある三次元映像を提示可能な線光源アレイ画像および要素画像を生成することができる。
また、表示システムは、レンズアレイやレンチキュラレンズを用いないため、二次元映像を表示したときに本来の二次元ディスプレイの解像度と同じ解像度の二次元映像が表示可能(二次元映像と三次元映像との切り替えが可能)である。
したがって、表示システムは、二次元映像と三次元映像との切り替えが可能であり、かつ品質が高く全方向の視差のある三次元映像を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る表示システムの構成を示す模式図である。
図2】三次元ディスプレイの構成を示す模式図である。
図3】第1実施形態に係る表示システムの機能ブロック図である。
図4】三次元ディスプレイが提示する三次元映像の模式図である。
図5図5(a)~図5(c)は、視点回転のないときに表示される画像の説明図である。
図6図6(a)~図6(c)は、視点回転のあるときに表示される画像の説明図ある。
図7】カメラアレイの配置を示す模式図である。
図8】視点回転のないときに応じたカメラアレイの配置の説明図ある。
図9】視点回転のあるときに応じたカメラアレイの配置の説明図ある。
図10図10(a)~図10(b)は、仮想カメラの内部パラメータの設定の説明図である。
図11】変形例に係る表示システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る表示システムの構成について図1図4を参照して説明する。参照する図面において、三次元ディスプレイ10の水平方向をX軸、三次元ディスプレイ10の垂直方向をY軸、奥行き方向をZ軸とする。三次元ディスプレイ10の水平方向は、観察者から見て三次元ディスプレイ10の輪郭や表示画面が矩形であれば、その矩形の上辺や底辺に平行な方向を意味する。また、三次元ディスプレイ10に観察者にとって正しく表示された文字や画像が、観察者Aにとって左右方向に配列されているように見えていれば、三次元ディスプレイ10の水平方向は、観察者Aにとっての左右方向である。XY平面は、三次元ディスプレイ10の表示面に平行な面である。X軸の正の向きは、三次元映像の観察者Aから見て右であり、X軸の負の向きは、観察者Aから見て左である。Y軸の正の向きは、三次元映像の観察者Aから見て上であり、Y軸の負の向きは、観察者Aから見て下である。Z軸の正の向きは、三次元ディスプレイ10から観察者Aへの向きであり、Z軸の負の向きは、観察者Aから三次元ディスプレイ10への向きある。なお、図2では、眼によって観察者Aを示し、図2における左向きの矢印によって観察方向Dを示している。
【0019】
(表示システムの概要)
図1に示すように、表示システム1は、三次元ディスプレイ10と、視点追従用画像生成装置20と、カメラ30と、を備えている。三次元ディスプレイ10は、図2に示すように、要素画像表示用液晶パネル(要素画像表示パネル)11と、光源表示用ディスプレイ12とを有する。光源表示用ディスプレイ12は、要素画像表示用液晶パネル11の背後に設置されて複数の線光源を所定間隔で平行に並べてなる線光源アレイ画像を表示するものである。三次元ディスプレイ10は、視点追従用画像生成装置20に接続される。カメラ30は、三次元ディスプレイ10で提示される三次元映像を観察する観察者Aの顔を撮影するものである。カメラ30は、視点追従用画像生成装置20に接続される。カメラ30は、観察者の顔の画像(顔画像)を取得し、取得した顔画像を視点追従用画像生成装置20に送る。視点追従用画像生成装置20は、例えば一般的なパーソナルコンピュータ等で構成される。
【0020】
視点追従用画像生成装置20は、三次元ディスプレイ10に表示される要素画像および線光源アレイ画像を、観察者Aの視点に応じて生成するものである。本実施形態では、図3に示すように、視点追従用画像生成装置20は、要素画像生成手段21と、線光源アレイ画像生成手段22と、視点情報計算手段23と、を備えている。
要素画像生成手段21は、要素画像表示用液晶パネル11に表示する要素画像を生成するものである。線光源アレイ画像生成手段22は、光源表示用ディスプレイ12に表示する線光源アレイ画像を生成するものである。
【0021】
視点情報計算手段23は、カメラ30の撮影画像を処理して、観察者Aの視点位置情報と、観察者Aの両眼を通る直線と三次元ディスプレイ10の水平方向とのなす角で示される視点回転情報と、を含む視点情報を計算するものである。ここで、視点位置情報は、視点の三次元位置の情報である。具体的には、観察者Aの両眼を通る直線の中点の三次元座標で示される。以下では、一例として三次元ディスプレイ10が据え置きテレビのように卓上に置いてあるものとする。この場合、観察者Aの両眼を通る直線と三次元ディスプレイ10の水平方向とのなす角は、観察者Aの両眼を通る直線と、地球系の水平線とのなす角と等しい。なお、三次元ディスプレイ10は、携帯型の端末であってもよく、その場合、端末を回転して使用することもあるため、その場合には、三次元ディスプレイの水平方向と地球系の水平方向とは必ずしも一致しない。
また、回転とは、具体的には例えば観察者Aが頭を左(または右)に傾けることや横になること等を指す。また、三次元ディスプレイ10と観察者Aとの相対的な回転が重要なので、例えば観察者Aが傾かずに三次元ディスプレイ10が傾く場合や両方が傾く場合でもよい。この回転角度は360度いずれの角度でも構わない。以下、視点回転情報を、直感的に把握しやすいように、両眼の回転角度の情報という場合がある。
【0022】
要素画像生成手段21は、視点回転情報が0である条件のときに要素画像の垂直方向を所定の基準方向に一致させて、視点位置情報および視点回転情報に応じて多視点画像を並べ替え且つ回転させることで要素画像を生成する。
線光源アレイ画像生成手段22は、視点回転情報が0である条件のときに線光源の長手方向を前記基準方向に一致させて、視点回転情報に応じて複数の線光源を所定間隔を維持しながら回転させて線光源アレイ画像を生成する。ここで、線光源の長手方向とは、線が伸びている方向を意味する。線光源の線が例えば垂直方向に伸びている場合、線光源の長手方向は垂直方向となる。
なお、視点回転情報が0である条件は、観察者Aの両眼を通る直線と三次元ディスプレイ10の水平方向とが平行であることと等価である。
【0023】
ここでは、前記基準方向を一例として三次元ディスプレイ10の垂直方向であるものとする。三次元ディスプレイ10の垂直方向は、三次元ディスプレイ10の水平方向に直交する方向であり、y軸方向である。すなわち、要素画像生成手段21は、
視点回転情報が0である条件のときに要素画像の垂直方向を三次元ディスプレイ10の垂直方向に一致させて、視点位置情報および視点回転情報に応じて多視点画像を並べ替え且つ回転させることで要素画像を生成する。また、線光源アレイ画像生成手段22は、視点回転情報が0である条件のときに線光源の長手方向を三次元ディスプレイ10の垂直方向に一致させて、視点回転情報に応じて複数の線光源を所定間隔を維持しながら回転させて線光源アレイ画像を生成する。
【0024】
(表示システムの各部の構成)
[三次元ディスプレイ10]
図2に戻って、三次元ディスプレイ10の構成の説明を続ける。三次元ディスプレイ10の要素画像表示用液晶パネル11には要素画像が表示され、光源表示用ディスプレイ12には線光源アレイ画像が表示される。なお、光源表示用ディスプレイ12は、ここでは、液晶パネルで構成されるものとするが、液晶以外のディスプレイで構成されていてもよい。観察者Aから見て、要素画像表示用液晶パネル11が手前に配置されるフロントパネルであり、光源表示用ディスプレイ12が奥に配置されるリアパネルである。
【0025】
この三次元ディスプレイ10は線光源アレイ方式であり、その表示イメージを図4に示す。図4は、三次元ディスプレイ10を上から見た様子を示している。なお、図4では、昆虫(蝶)によって三次元映像Mを示し、眼によって観察者Aを示している。図4において、三次元映像Mおよび観察者Aが横から見たように示されているのは、これらを直感的に把握できるようにするためである。
【0026】
観察者Aから見て奥に配置される光源表示用ディスプレイ12には、線光源アレイ画像Iとして黒の表示領域B,B,B,B…の間に白線の画像W,W,W…が表示される。白線の画像Wは線光源であり、ここでは線光源の長手方向は、三次元ディスプレイ10の垂直方向に一致している。観察者Aから見て手前に配置される要素画像表示用液晶パネル11には、要素画像Eが表示される。なお、要素画像の垂直方向は、三次元ディスプレイ10の垂直方向に一致している。バックライトである線光源アレイ画像Lから要素画像Eを照らす光線群Gによって、三次元ディスプレイ10の表面から所定の奥行距離の位置に三次元映像Mが提示され、観察者Aによって観測される。
【0027】
[視点情報計算手段23]
視点情報計算手段23は、視点情報を計算するために、以下に示す第1処理と、第2処理と、第3処理とを実行する。
(第1処理)
視点情報計算手段23は、カメラ30より入力された顔画像から既知の手法を用いて、観察者の顔のパーツ(目、鼻、口など)の三次元位置と、顔の姿勢と、を推定する。(例えば、特許文献1や下記参考文献1,2,3参照)。
参考文献1:“OpenCV”,[online],[令和4年11月11日検索],インターネット<URL:https://opencv.org/>
参考文献2:“Dlib”,[online],[令和4年11月11日検索],インターネット<URL:http://dlib.net/>
参考文献3:“ARCore”,[online],[令和4年11月11日検索],インターネット<URL:https://developers.google.com/ar>
【0028】
(第2処理)
上記方法で得られる顔のパーツの三次元位置と、顔の姿勢と、はカメラ座標系で表される。そこで、視点情報計算手段23は、第2処理において、カメラ30と三次元ディスプレイ10についての三次元位置および姿勢の関係から、カメラ座標系における位置および姿勢を、三次元ディスプレイ座標系における位置および姿勢に変換する。ここで、三次元ディスプレイ座標系は、例えば、光源表示用ディスプレイ12の中心を原点とする座標系である。
【0029】
(第3処理)
視点情報計算手段23は、第3処理において、三次元ディスプレイ座標系における観察者の顔のパーツの三次元位置と、顔の姿勢から、視点の三次元位置(視点位置情報)と、両眼の回転角度(視点回転情報)とを抽出する。視点情報計算手段23は、上記第1~第3処理の結果得られた視点情報のうち、視点位置情報を要素画像生成手段21に送り、視点回転情報を線光源アレイ画像生成手段22および要素画像生成手段21にそれぞれ送る。
【0030】
[要素画像生成手段21]
要素画像生成手段21は、三次元モデル25と、三次元ディスプレイ仕様24と、視点位置情報と、視点回転情報と、に基づいて要素画像を生成し、要素画像表示用液晶パネル11に出力する。
【0031】
三次元モデル25は、三次元映像の被写体となるモデル(図4の場合、蝶)の三次元位置、輝度、色等のデータである。要素画像生成手段21は、視点追従用画像生成装置20の内部または外部の記憶手段に予め記憶された三次元モデル25を読み出して要素画像の生成に用いてもよい。あるいは、要素画像生成手段21は、視点追従用画像生成装置20の外部から通信ネットワークを介して入力する三次元モデル25を用いて要素画像を生成してもよい。
【0032】
三次元ディスプレイ仕様24は、三次元ディスプレイ10の表示性能に関する情報である。三次元ディスプレイ仕様24は、例えば、以下のサイズに関する情報を含む。
要素画像表示用液晶パネル11についての解像度と画素ピッチ
光源表示用ディスプレイ12についての解像度と画素ピッチ
光源表示用ディスプレイ12に表示する線光源の線間隔
光源表示用ディスプレイ12と要素画像表示用液晶パネル11との間隔
【0033】
なお、線光源の線間隔は、レンチキュラ方式におけるレンチキュラレンズのレンズピッチに相当する。レンチキュラ方式においてレンズの仕様を自由に決められるように、線光源の線間隔も所望の値に設定することができる。線光源の線間隔の具体的な例としては1mmであってもよい。線光源(例えば白線の画像)の線幅を示す画素数は1画素以上必要である。その画素数が多くなり過ぎるとクロストークの影響が大きくなるが、その反面、輝度の高い三次元ディスプレイとなる。三次元ディスプレイの用途に合わせて、線光源の線幅を示す画素数は適宜設定される。
【0034】
[線光源アレイ画像生成手段22]
線光源アレイ画像生成手段22は、三次元ディスプレイ仕様24と、視点回転情報と、に基づいて線光源アレイ画像を生成し、光源表示用ディスプレイ12に出力する。以下、視点情報に応じた、線光源アレイ画像および要素画像の表示例や生成例について説明する。
【0035】
[視点位置情報に応じた、線光源アレイ画像および要素画像の表示例]
まず、図2図4を参照して、一例として、視点情報のうち視点回転情報が0度である条件のときに、観察者Aが三次元ディスプレイ10の左右に移動するときの視点位置情報だけの寄与がある場合の表示例について説明する。このとき、線光源アレイ画像は、図2または図4のように、白線の画像が周期的に配置されたものとなる。
【0036】
例えば、図4において観察者Aが、三次元ディスプレイ10の左方(X軸の負の方向)から三次元ディスプレイ10を視た場合を想定する。この場合、要素画像生成手段21は、このときに得られる視点位置情報に基づき、後記するようにカメラアレイ(仮想的なカメラ群)の中心位置を視点位置に合わせて、三次元モデル25および三次元ディスプレイ仕様24を用いて要素画像を生成し、要素画像表示用液晶パネル11に出力する。そのため、観察者Aは、三次元映像Mの左方を視認する。
【0037】
一方、図4において観察者Aが、三次元ディスプレイ10の右方(X軸の正の方向)から三次元ディスプレイ10を視た際には、要素画像生成手段21は、このときに得られる視点位置情報に基づき、カメラアレイの中心位置を視点位置に合わせて同様に要素画像を生成し、要素画像表示用液晶パネル11に出力する。そのため、観察者Aは、三次元映像Mの右方を視認する。
【0038】
つまり、観察者Aは、視る方向によって視差が生じる、立体感がある三次元映像Mを視認できる。このようにして、表示システム1は、要素画像を視点位置に応じて変化させることで視域を拡大することができる。なお、視点位置の追従機能によって視域を拡大できることは例えば非特許文献4に開示されている。
【0039】
[視点回転情報に応じた、線光源アレイ画像および要素画像の表示例]
次に、図3図5および図6を参照して、一例として、図5(a)および図6(a)に観察方向Dを示すように、観察者Aが三次元ディスプレイ10の正面に位置しているものとして、視点回転情報に応じた表示例を説明する。
【0040】
まず、図5(c)に示すように観察者の両眼を結ぶ直線が水平線Hと一致して視点回転情報が0度であるものとする。これが線光源アレイ方式の基本的な状態である。このときに、リアパネル(光源表示用ディスプレイ12)に表示される画像は、図5(a)に示すように、黒の表示領域Bの間に、白線の画像Wが周期的に配置された線光源アレイ画像Lとなる。すなわち、線光源アレイ画像Lは、黒色をベースとして、必要な部分のみ白色の線が一定間隔で並んだ画像になる。この白線が、前(フロント)に配置される要素画像表示用液晶パネル11の光源となる。
【0041】
要素画像生成手段21(図3参照)は、このときに得られる視点情報に基づき、カメラアレイの中心位置を視点位置に合わせて要素画像を生成する。このときに、フロントパネル(要素画像表示用液晶パネル11)に表示される画像は、図5(a)に模式的に示すように、ピクセルラインが水平線Hに直交するように配置された要素画像Eとなる。この要素画像Eは、レンチキュラ方式で使用される要素画像に近い画像となる。ただし、レンチキュラ方式の要素画像とは視点画像の並びが逆という点などで異なる。
【0042】
なお、図5(a)の要素画像Eとして、把握しやすいように模式的に8個の帯が示されている。帯の数は、三次元ディスプレイの水平方向の画素数に相当する。なお、三次元ディスプレイの垂直方向の画素数は、要素画像表示用液晶パネル11の垂直方向の画素数と同じである。図5(a)の要素画像Eは、三次元映像を観察したときに横に8画素あるような映像を実現するものである。線光源アレイ画像Lにおけるそれぞれの光源画像(白線の画像W)の配置は、要素画像Eのそれぞれの帯のほぼ中心に位置している。中心の白線の画像Wは、要素画像Eの帯の中心に位置するが、左端(または右端)に向かうほど、対応する帯の中心からのずれが大きくなる(図7参照)。ただし、線光源アレイ画像Lにおけるそれぞれの光源画像(白線の画像W)の配置が、要素画像Eのそれぞれの帯の中心に位置するように構成することも可能である。
【0043】
図5(a)における矩形領域Cの拡大図を図5(b)に示す。矩形領域Cには、要素画像Eの一部として、左から順に、視点V1における縦長のピクセルライン、視点V2における縦長のピクセルライン、視点V3における縦長のピクセルライン、…、N番目の視点VNにおける縦長のピクセルライン、視点V1における縦長のピクセルライン、視点V2における縦長のピクセルラインを備えている。視点の数Nは、例えば10や20でもよい。なお、レンチキュラ方式で使用される要素画像の場合、右から順に視点1、視点2、…、視点Nとなって視点画像の並びが逆になる。
【0044】
次に、図6(c)に示すように、観察者の両眼が斜めで(水平から傾斜しており)、観察者の両眼を結ぶ直線と水平線Hとのなす角がθ(θ≠0:視点回転情報がθ度)であるものとする。このときに、図6(a)に示すように、視点回転情報に応じて、回転角度にあわせて、線光源アレイ画像Lの線光源画像(白線の画像W)と要素画像Eとが回転する。言い換えれば、基準方向(三次元ディスプレイ10の垂直方向、y軸方向)に対する線光源アレイ画像Lの線光源の角度と要素画像の角度とが変化する。この回転角度は、360度全方向に対応可能であり、観察者Aは、どの方向から見ても、両眼視差のある三次元映像を観察できる。なお、図6(a)は、観察者Aが頭を左に傾け、それに合わせた向きに、線光源アレイ画像Lの線光源画像(白線の画像W)と要素画像Eとが回転している様子を示している。これに対して図6(c)において、正面を向いた観察者が頭を右に傾けたように示されているのは、同じ図面の中で回転方向を直感的に把握できるようにするためである。
【0045】
[視点回転情報に応じた、線光源アレイ画像および要素画像の生成例]
線光源アレイ方式の三次元ディスプレイに用いる要素画像については、一般的なレンチキュラ方式の画像と同じように、観察者の視点位置を反映して配置された複数のカメラで撮影した画像を並べ替えることで生成することが可能である。ただし、本実施形態の表示システム1は、観察者の視点位置情報だけではなく、観察者の視点回転情報も取得しており、要素画像生成手段21(図3参照)は、観察者の視点位置および視点回転を反映して配置された複数のカメラ(カメラアレイ)で撮影した画像を並べ替えることで要素画像を生成する。
【0046】
図7は、三次元ディスプレイ10を上から見た様子を示している。なお、図7では、視点Vの位置に、直感的に把握しやすいように仮想的な眼(観察者A)を配置して示している。図7に示すカメラアレイ50は、CG空間(仮想空間)に配置されるものであり、一列に並んだ複数の仮想カメラCで構成される。ここでは、カメラ位置を識別するため、一端に配置されたカメラを仮想カメラCa、中央に配置されたカメラを仮想カメラCb、他端に配置されたカメラを仮想カメラCcとしている。カメラを示す三角形の2辺の延長線(破線)で挟まれた角度は画角を示し、三角形の2辺の延長線(破線)で挟まれた領域は、視域を示す。カメラアレイ50は、視点位置に応じて配置される。すなわち、カメラアレイ50の中心位置(仮想カメラCbの位置)は、視点位置と一致する。視点回転がなければ、カメラアレイ50は、X軸に平行に配置される。
【0047】
図8は、観察者Aが、視点回転角度が0度(視点回転のない状態)である場合に、三次元ディスプレイ10によって提示された三次元映像Mを観察する様子を示す図である。このとき、観察者Aは、三次元ディスプレイ10の正面から三次元映像Mを視ることで、三次元映像Mの正面を視認する。
【0048】
図9は、視点回転角度がθ度(θ≠0:観察者Aの両眼を結ぶ直線と水平線Hとのなす角がθ)である場合に、三次元ディスプレイ10によって提示された三次元映像Mを観察する様子を示す図である。このとき、観察者Aは、頭を左に傾けた状態で三次元ディスプレイ10に向かって左側から覗き込むように斜めから三次元映像Mを視ることで、三次元映像Mの左方を視認する。
なお、図8および図9では、一例としてカメラアレイ50が5つの仮想カメラで構成されるものとした。
【0049】
図8および図9に示すように、カメラアレイ50は、視点回転に応じて回転する。ただしカメラアレイ50の各カメラCは回転せず、各仮想カメラCの中心を通過する線分Sが線分Sの中点を中心に角度θだけ回転する。回転角度θは、カメラアレイ50についての基準線(例えば水平線H)と線分Sとのなす角度であって、観察者Aの視点の回転に応じて変化する。
【0050】
このとき、カメラアレイ50の各カメラの内部パラメータは、図10(a)および図10(b)のように、各カメラの位置に応じて、三次元ディスプレイ10の範囲を撮りきるように設定されていることが望ましい。内部パラメータは画角(焦点距離と画像中心)である。この場合、要素画像生成手段21は、三次元ディスプレイ10における要素画像表示用液晶パネル11のすべての表示範囲を撮影できるようにカメラ位置に応じた内部パラメータがそれぞれ設定された複数の仮想カメラからなるカメラアレイ50で撮影された被写体の多視点画像から要素画像を生成する。
【0051】
以下、図10(a)および図10(b)を参照して説明する。
図10(a)は、三次元ディスプレイ10を上から見た様子を示しており、図10(b)は、三次元ディスプレイ10を横(左)から見た様子を示している。図10(a)および図10(b)において、カメラアレイ50の三角形はカメラの位置を示し、三角形の2辺の延長線(破線)で挟まれた角度は画角を示し、三角形の2辺の延長線(破線)で挟まれた領域は、視域を示す。
【0052】
図10(a)では、視点Vは、三次元ディスプレイ10の中心に正対しているものとする。視点Vの位置には、直感的に把握しやすいように仮想的な眼(観察者A)が配置されている。カメラアレイ50において、例えばX軸の負の方向における端部(図10(a)において下、実際は左)に配置される仮想カメラCcを示す三角形の2辺の延長線(破線)は、その仮想カメラが要素画像表示用液晶パネル11のすべての表示範囲を撮影できるように内部パラメータが設定されていることを模式的に示している。なお、仮想カメラCa,Cbについても同様に内部パラメータが設定されていることを模式的に示している。
【0053】
図10(b)では、視点Vは、三次元ディスプレイ10の中心に正対し、観察者が頭を左に傾けた状態で取得された視点回転情報を反映しているものとする。カメラアレイ50において、例えばY軸の負の方向における端部(図10(b)において下、図9において最も左)に配置される仮想カメラCcを示す三角形の2辺の延長線(破線)は、その仮想カメラが要素画像表示用液晶パネル11のすべての表示範囲を撮影できるように内部パラメータが設定されていることを模式的に示している。また、カメラアレイ50において、Y軸の正の方向における端部(図10(b)において上、図9において最も右)に配置される仮想カメラCaを示す三角形の2辺の延長線(破線)は、その仮想カメラが要素画像表示用液晶パネル11のすべての表示範囲を撮影できるように内部パラメータが設定されていることを模式的に示している。なお、仮想カメラCbについても同様に内部パラメータが設定されていることを模式的に示している。
【0054】
(表示システムの処理の流れ)
表示システム1の処理の流れについて図3を参照して説明する。まず、カメラ30で、観察者の顔の画像(顔画像)を撮影する。撮影された顔画像は、視点追従用画像生成装置20に送られ、視点情報計算手段23において、観察者の顔のパーツ(目、鼻、口など)の三次元位置と、顔の姿勢と、が推定される。このときに得られる顔のパーツの三次元位置と、顔の姿勢と、はカメラ座標系なので、視点情報計算手段23は、カメラ30と三次元ディスプレイ10の三次元位置と姿勢の関係から、三次元ディスプレイ座標系に変換する。視点情報計算手段23は、観察者の顔のパーツの三次元位置と、顔の姿勢から、次の処理で必要となる視点の三次元位置(視点位置情報)と、両眼の回転角度(視点回転情報)とを抽出する。視点位置情報は、要素画像生成手段21に送られる。視点回転情報は、線光源アレイ画像生成手段22と要素画像生成手段21とに送られる。さらに、三次元ディスプレイ仕様24が、線光源アレイ画像生成手段22と要素画像生成手段21とに送られる。三次元映像の被写体となる三次元モデル25(例えば蝶の三次元モデルデータ)が要素画像生成手段21に送られる。線光源アレイ画像生成手段22は、光源表示用ディスプレイ12に表示するための線光源アレイ画像Iを生成し、光源表示用ディスプレイ12に出力する。要素画像生成手段21は、要素画像表示用液晶パネル11に表示するための要素画像Eを生成し、要素画像表示用液晶パネル11に出力する。
【0055】
(変形例1)
三次元ディスプレイ10における要素画像表示用液晶パネル11と、光源表示用ディスプレイ12とには、表示タイミングを同期させる同期信号が入力されるようにすることができる。三次元ディスプレイ10において、要素画像表示用液晶パネル11の表示タイミングと、光源表示用ディスプレイ12の表示タイミングとが一致していなくても、概ね問題ない。ただし、表示タイミングが一致していないと、例えば観察者が頭を傾けた瞬間や、姿勢を戻した瞬間などの視点回転角度が変化する瞬間に、正しい三次元映像が提示されなくなると考えられる。要素画像表示用液晶パネル11と光源表示用ディスプレイ12に同期信号を入力することで、常に正しい三次元映像を提示することが可能になる。
【0056】
(変形例2)
視点情報計算手段23は、観察者の両眼を通る直線と三次元ディスプレイ10の水平方向とのなす角で示される視点回転情報を計算し、この視点回転情報を時間方向に平滑化して、平滑化された視点回転情報を要素画像生成手段21および線光源アレイ画像生成手段22に出力するようにすることができる。表示システム1において、生成される線光源アレイ画像Lおよび要素画像Eは、観察者の視点情報に応じて常に変化するものである。観察者の視点情報のうち視点回転情報は、視点位置情報と比較して、三次元映像に与える影響が大きいと言える。そのため、なんら工夫しなければ、視点情報計算手段23において、視点回転情報の誤差を含めた小さな変化が三次元映像に大きな影響を与え、観察しにくくなることが考えられる。これに対して、視点情報計算手段23が視点回転情報を時間方向に平滑化すれば、三次元映像に与える影響を低減し、三次元映像が観察しにくくなる事態を回避する効果を奏する。
【0057】
(変形例3)
視点回転情報を時間方向に平滑化する代わりに、視点情報計算手段23は、観察者の両眼を通る直線と三次元ディスプレイ10)の水平方向とのなす角で示される視点回転情報を計算し、この視点回転情報を丸め処理して、丸め処理された視点回転情報を要素画像生成手段21および線光源アレイ画像生成手段22に出力するようにしてもよい。例えば10度ごと丸める場合、処理前の視点回転情報が-5度から5度未満の場合、丸め処理の結果として0度の視点回転情報を出力する。同様に、処理前の視点回転情報が5度から15度未満の場合、丸め処理の結果として10度の視点回転情報を出力する。この場合も、三次元映像に与える影響を低減し、三次元映像が観察しにくくなる事態を回避する効果を奏する。
【0058】
(変形例4)
第1実施形態では、線光源画像の基準方向を一例として三次元ディスプレイ10の垂直方向(y軸方向)であるものとしたが、これに限定されるものではなく、三次元ディスプレイ10の垂直方向から所定角度傾けた方向であってもよい。この場合、図11に示すように、要素画像生成手段21は、観察者Aの両眼を通る直線が水平線Hと平行である(視点回転情報が0である)条件のときに要素画像Eの垂直方向を三次元ディスプレイ10の垂直方向から所定角度α傾けた方向に一致させて、視点位置情報および視点回転情報に応じて多視点画像を並べ替え且つ回転させることで要素画像Eを生成する。そして、線光源アレイ画像生成手段22は、観察者Aの両眼を通る直線が水平線Hと平行であるときに線光源Wの長手方向を三次元ディスプレイ10の垂直方向から所定角度α傾けた方向に一致させて、視点回転情報に応じて複数の線光源W画像を所定間隔を維持しながら回転させて線光源アレイ画像Lを生成する。
【0059】
線光源画像の基準方向を三次元ディスプレイ10の垂直方向から所定角度αだけ傾けることは、言い換えると、線光源アレイ方式の基本的な状態(図5(c)参照)のときに、線光源アレイ画像Lおよび要素画像Eにオフセットの回転角度αを与えることである。また、所定角度αだけ傾けることは、レンチキュラ方式において、斜めレンチキュラ方式(非特許文献1参照)を採用することに相当する。所定角度αとしては、斜めレンチキュラ方式で提案されている角度を用いることができる。このようにすることで、表示システム1は、線光源アレイ方式の基本的な状態のときにオフセットの回転角度αを与えて線光源アレイ画像Lを回転させ、それに応じて回転させた要素画像Eを表示することで、光線密度の向上を実現できる。
【0060】
(変形例5)
前記実施形態において、カメラアレイ50は視点回転に応じて回転しカメラアレイ50の各カメラは回転しないものと説明したが、視点回転に応じてカメラアレイ50だけでなく各カメラも回転するようにしてもよい。その場合、要素画像生成手段21は、各カメラの回転にあわせて各カメラ内部パラメータを変更して要素画像を生成する。このようにすることで、例えば観察者が頭を左に傾けた状態で取得された視点回転情報がθ度であれば、観察者は、左にθ度だけ回転した三次元映像を観察することになる。つまり、三次元映像を座って視聴していた観察者が、横になっても三次元映像を同じような見え方で視聴し続けるような使用が可能となる。また、視点追従用画像生成装置20は、要素画像生成手段21の処理において、視点回転に応じてカメラアレイ50の各カメラが回転するモードと、カメラアレイ50の各カメラが回転しないモードとを切り替え可能に備えるようにしてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施形態に係る視点追従用画像生成装置および表示システムについて説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【0062】
また、前記した実施形態では、視点追従用画像生成装置を独立したハードウェアとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスク等のハードウェア資源を、前記した装置として動作させるプログラムで実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD-ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 表示システム
10 三次元ディスプレイ
11 要素画像表示用液晶パネル(要素画像表示パネル)
12 光源表示用ディスプレイ
20 視点追従用画像生成装置
21 要素画像生成手段
22 線光源アレイ画像生成手段
23 視点情報計算手段
24 三次元ディスプレイ仕様
25 三次元モデル
30 カメラ
50 カメラアレイ
A 観察者
D 観察方向
E 要素画像
L 線光源アレイ画像
B 黒の表示領域
W 白線の画像
G 光線群
M 三次元映像
H 水平線
C,Ca,Cb,Cc 仮想カメラ
V 視点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11