IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特開-加工方法 図1
  • 特開-加工方法 図2
  • 特開-加工方法 図3
  • 特開-加工方法 図4
  • 特開-加工方法 図5
  • 特開-加工方法 図6
  • 特開-加工方法 図7
  • 特開-加工方法 図8
  • 特開-加工方法 図9
  • 特開-加工方法 図10
  • 特開-加工方法 図11
  • 特開-加工方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114320
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 19/02 20060101AFI20240816BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B24B19/02
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020004
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝田 友春
(72)【発明者】
【氏名】原田 成規
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
【Fターム(参考)】
3C034BB93
3C034CA05
3C034CB01
3C034DD01
3C049AA03
3C049AA12
3C049AA16
3C049AB04
3C049CB07
(57)【要約】
【課題】ワークに所定深さのスリットを形成する際の困難性を抑制することができる加工方法を提供すること。
【解決手段】加工方法は、ワークの第2面側を保持ユニットで保持し第1面を露出させる保持ステップ101と、保持ステップ101を実施した後、切削ブレードをワークの外周縁に切り込ませ第1面から第2面に貫通し所定深さよりも浅いスリットを形成する切削ステップ102と、切削ステップ102を実施した後、保持ユニットで保持されたワークを撮像して切削ステップ102で形成されたスリットの深さを確認する深さ確認ステップ103と、深さ確認ステップ103で確認されたスリットの深さに基づいて切削ブレードでスリットを切削してスリットの深さを所定深さに形成する追加切削ステップ104とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と該第1面の背面の第2面とを有したワークに該第1面から該第2面に貫通するとともに該ワークの外周縁から所定深さのスリットを形成するワークの加工方法であって、
ワークの該第2面側を保持ユニットで保持し該第1面を露出させる保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、切削ブレードをワークの外周縁に切り込ませ該第1面から該第2面に貫通し該所定深さよりも浅いスリットを形成する切削ステップと、
該切削ステップを実施した後、該保持ユニットで保持されたワークを撮像して該切削ステップで形成された該スリットの深さを確認する深さ確認ステップと、
該深さ確認ステップで確認された該スリットの深さに基づいて該切削ブレードで該スリットを切削して該スリットの深さを該所定深さに形成する追加切削ステップと、
を備えた加工方法。
【請求項2】
該追加切削ステップでは、該切削ブレードをワークの外周縁から該所定深さに切り込ませた後、該切削ブレードの中心の高さ位置がワークの下端から上端に至るように該切削ブレードをワークの厚み方向に相対移動させる、請求項1に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの外周縁から所定深さのスリットを形成する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークに所定深さのスリット加工を施す際に、切削装置(例えば、特許文献1参照)。が利用されている。
【0003】
従来、切削装置は、ワークを立てた状態で両側から固定部材で挟み込んだ状態でワックスを用いてサブストレイト上に固定し、切削ブレードの先端を所定深さに位置づけて切削することでスリットを形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-125618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のワークを立てた状態で両側から固定部材で挟み込んだ状態で固定する方法では、ワークを固定するのが難しく、ワークが傾いた状態で固定され、スリットの深さがばらつくことがあった。
【0006】
また、従来の方法では、スリットが所定深さに形成されたか否かの確認はワークをサブストレイトから取り外す必要があったため、深さが足りない場合等に追加工する際に再度固定しなければならず、改善が切望されていた。
【0007】
本発明の目的は、ワークに所定深さのスリットを形成する際の困難性を抑制することができる加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工方法は、第1面と該第1面の背面の第2面とを有したワークに該第1面から該第2面に貫通するとともに該ワークの外周縁から所定深さのスリットを形成するワークの加工方法であって、ワークの該第2面側を保持ユニットで保持し該第1面を露出させる保持ステップと、該保持ステップを実施した後、切削ブレードをワークの外周縁に切り込ませ該第1面から該第2面に貫通し該所定深さよりも浅いスリットを形成する切削ステップと、該切削ステップを実施した後、該保持ユニットで保持されたワークを撮像して該切削ステップで形成された該スリットの深さを確認する深さ確認ステップと、該深さ確認ステップで確認された該スリットの深さに基づいて該切削ブレードで該スリットを切削して該スリットの深さを該所定深さに形成する追加切削ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記加工方法において、該追加切削ステップでは、該切削ブレードをワークの外周縁から該所定深さに切り込ませた後、該切削ブレードの中心の高さ位置がワークの下端から上端に至るように該切削ブレードをワークの厚み方向に相対移動させても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ワークに所定深さのスリットを形成する際の困難性を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象のワークを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る加工方法の加工後のワークを模式的に示す斜視図である。
図3図3は、実施形態1に係る加工方法を実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
図5図5は、図4に示された保持ステップにおいて加工前のワークを固定治具に保持した状態を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、図4に示された保持ステップにおいて加工前のワークを保持ユニットに保持した状態を模式的に示す断面図である。
図7図7は、図4に示された加工方法の切削ステップにおいてワークに切削ブレードを切り込ませる状態を模式的に示す断面図である。
図8図8は、図4に示された加工方法の切削ステップ後のワークを模式的に示す平面図である。
図9図9は、図4に示された加工方法の深さ確認ステップを模式的に示す断面図である。
図10図10は、図4に示された加工方法の追加切削ステップにおいて切削ブレードをスリットの底に外周縁から所定距離切り込ませた状態を模式的に示す断面図である。
図11図11は、図10に示された切削ブレードをZ軸方向に移動させた状態を模式的に示す断面図である。
図12図12は、従来の加工方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象のワークを模式的に示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る加工方法の加工後のワークを模式的に示す斜視図である。図3は、実施形態1に係る加工方法を実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。図4は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0014】
(ワーク)
実施形態1に係る加工方法は、図1に示すワーク200を加工するワークの加工方法である。実施形態1に係る加工方法の加工対象のワーク200は、図1に示すように、厚みが一定の矩形の板状に形成され、実施形態1では、LT(タンタル酸リチウム:LiTaO)、又はLN(ニオブ酸リチウム:LiNbO)により構成されている。実施形態1では、ワーク200は、矩形の第1面201と、第1面201の背面の矩形の第2面202とを有している。第1面201と、第2面202とは、それぞれ平坦に形成されているとともに、互いに平行に配置されている。なお、以下、第1面201と第2面202の長手方向をワーク200の長手方向210と記し、第1面201と第2面202の幅方向をワーク200の幅方向211と記し、第1面201と第2面202とが重なる方向をワークの厚み方向212と記す。
【0015】
実施形態1に係る加工方法は、図2に示すように、ワーク200に第1面201から第2面202に貫通するとともに、ワーク200の外周縁203から所定深さ221のスリット220を形成する方法である。実施形態1では、スリット220は、第1面201と第2面202とに亘ってワーク200を貫通し、ワーク200の長手方向210の一端部の外周縁203に開口し、ワーク200の長手方向210に沿って直線状に延在している。また、実施形態1では、スリット220の所定深さ221は、スリット220が開口したワーク200の短辺側の外周縁203からスリット220の底222までの深さであり、ワーク200の厚み方向212に全長に亘って一定に形成されている。
【0016】
(切削装置)
実施形態1に係る加工方法は、図3に示された切削装置1により実施される。次に、切削装置1を説明する。実施形態1において、切削装置1は、ワーク200をチャックテーブル10で保持し、切削ブレード21でワーク200を切削加工する加工装置である。切削装置1は、図3に示すように、ワーク200を保持する保持面11を含むチャックテーブル10と、チャックテーブル10で保持されたワーク200を切削加工する切削ブレード21が装着されるスピンドル23を有した切削ユニット20と、チャックテーブル10で保持されたワーク200を撮像する撮像ユニット30と、制御ユニット50とを備える。
【0017】
また、切削装置1は、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させる移動ユニット40とを備える。移動ユニット40は、チャックテーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りする切削送りユニット41と、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りする割り出し送りユニット42と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りする切り込み送りユニット43と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行でかつ保持面11の中心を通る回転軸12周りに回転する回転移動ユニット44とを少なくとも備える。即ち、移動ユニット40は、チャックテーブル10と切削ユニット20とをX軸方向とY軸方向とZ軸方向と回転軸12周りとに相対的に移動させる。
【0018】
切削送りユニット41は、チャックテーブル10及び回転移動ユニット44を切削送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10を切削ユニット20に対してX軸方向に相対移動させるものである。割り出し送りユニット42は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10を切削ユニット20に対してY軸方向に相対移動させるものである。
【0019】
切り込み送りユニット43は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10を切削ユニット20に対してZ軸方向に相対移動させるものである。回転移動ユニット44は、切削送りユニット41に支持され、チャックテーブル10を支持して、チャックテーブル10とともにX軸方向に移動自在に配設されている。回転移動ユニット44は、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な回転軸12周りに回転する。
【0020】
切削送りユニット41、割り出し送りユニット42及び切り込み送りユニット43は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心に回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。また、回転移動ユニット44は、チャックテーブル10を回転軸12周りに回転するモータを備える。
【0021】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、ワーク200を保持する水平方向に沿って平坦な保持面11がポーラスセラミック等の多孔質材から形成されている。また、チャックテーブル10は、切削送りユニット41により切削ユニット20の下方の加工領域と、切削ユニット20の下方から離間してワーク200が搬入出される搬入出領域とに亘ってX軸方向に移動自在に設けられている。チャックテーブル10は、回転移動ユニット44によりZ軸方向と平行な回転軸12周りに回転自在に設けられている。このために、チャックテーブル10は、回転軸12周りに回転自在である。
【0022】
チャックテーブル10は、保持面11が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源より吸引されることで、保持面11に載置されたワーク200を吸引保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、ワーク200を保持面11に吸引保持する。
【0023】
切削ユニット20は、切削ブレード21がスピンドル23に装着され、チャックテーブル10に保持されたワーク200を切削加工する加工ユニットである。切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持されたワーク200に対して、割り出し送りユニット42によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、切り込み送りユニット43によりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット20は、図3に示すように、割り出し送りユニット42及び切り込み送りユニット43などを介して、装置本体2から立設した支持フレーム3に設けられている。切削ユニット20は、割り出し送りユニット42及び切り込み送りユニット43により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0024】
切削ユニット20は、切削ブレード21と、割り出し送りユニット42及び切り込み送りユニット43によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に中心である軸心25回りに回転可能に設けられ先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル23と、スピンドル23を軸心25回りに回転する図示しないスピンドルモータと、切削ブレード21に切削水を供給する切削水供給ノズル24とを備える。
【0025】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。切削ブレード21は、スピンドル23の先端に固定される。実施形態1において、切削ブレード21は、円環状の円形基台と、円形基台の外周縁に配設されてワーク200を切削する円環状の切り刃とを備える所謂ハブブレードである。切り刃は、SiC、アルミナ、ダイヤモンド又はCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等の砥粒を固定するボンド(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード21は、切り刃のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。なお、切削ユニット20の切削ブレード21及びスピンドル23の軸心25は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0026】
撮像ユニット30は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持されたワーク200を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持されたワーク200を撮像して、画像を得、得た画像を制御ユニット50に出力する。
【0027】
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットと、チャックテーブル10の回転軸12周りの角度を検出する角度検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20の切り刃の下端のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット50に出力する。回転角度検出ユニットは、検出したチャックテーブル10の向きである回転軸12周りの角度を制御ユニット50に出力する。
【0028】
なお、実施形態1では、切削装置1のチャックテーブル10及び切削ユニット20のX軸方向の位置、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置に基づいて(実施形態1では、基準位置からのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の距離で)定められる。また、実施形態1では、チャックテーブル10の回転軸12周りの角度は、予め定められた図示しない基準位置からの角度で定められる。
【0029】
制御ユニット50は、切削装置1の各構成要素をそれぞれ制御して、ワーク200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット50は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット50の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の各構成要素に出力する。
【0030】
また、切削装置1は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工条件などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットとを備えている。表示ユニット及び入力ユニットは、制御ユニット50に接続している。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネル等により構成される。
【0031】
(加工方法)
次に、実施形態1に係る加工方法を説明する。実施形態1に係る加工方法は、前述した構成の切削装置1が、ワーク200の所定深さ221のスリット220を形成するワークの加工方法である。実施形態1において、加工方法は、図4に示すように、保持ステップ101と、切削ステップ102と、深さ確認ステップ103と、追加切削ステップ104とを備える。
【0032】
(保持ステップ)
図5は、図4に示された保持ステップにおいて加工前のワークを固定治具に保持した状態を模式的に示す斜視図である。図6は、図4に示された保持ステップにおいて加工前のワークを保持ユニットに保持した状態を模式的に示す断面図である。保持ステップ101は、ワーク200の第2面202側を保持ユニット13で保持し第1面201を露出させるステップである。
【0033】
実施形態1において、保持ステップ101では、図5に示すように、ワーク200の長手方向210の一端部が固定治具60上から突出した状態でワーク200の第2面202の長手方向210の他端部を固定治具60の上面に固定する。なお、実施形態1では、固定治具60は、カーボン又はガラスにより構成され、各面が平坦な直方体に形成されている。実施形態1において、ワーク200は、図5に示すように、第2面202の長手方向210の他端部が図示しないワックス又は発泡剥離シート等により固定治具60の上面に固定される。なお、固定治具60は、チャックテーブル10とワーク200を保持する保持ユニット13(図6に示す)を構成する。なお、発泡剥離シートは、加熱により糊層が発泡して、固定治具60とワーク200から剥離されるものである。
【0034】
実施形態1において、保持ステップ101では、切削装置1が、搬入出領域に位置付けられたチャックテーブル10の保持面11に上面にワーク200の第2面202が固定された固定治具60が載置される。実施形態1において、保持ステップ101では、切削装置1は、オペレータにより加工条件が制御ユニット50に登録され、オペレータから加工動作の開始指示を受け付けると、図6に示すように、チャックテーブル10の保持面11に固定治具60を吸引保持して、ワーク200を固定治具60を介してチャックテーブル10の保持面11に吸引保持するとともに、切削水供給ノズル24から切削水を切削ブレード21に供給しながら切削ブレード21を軸心25回りに回転させる。
【0035】
このように、実施形態1において、保持ステップ101では、図6に示すように、第1面201と第2面202とが水平方向と平行でかつ厚み方向212がZ軸方向と平行な状態でワーク200を保持ユニット13に保持する。また、実施形態1において、保持ステップ101では、ワーク200を長手方向210が水平方向に沿う寝かした状態でかつ長手方向210の一端部が固定治具60から突出した状態で、ワーク200を保持ユニット13に保持する。なお、実施形態1では、ワーク200と保持ユニット13の固定治具60とをワックス又は発泡剥離シートにより固定したが、本発明では、固定治具60に保持面11に載置される下面と上面とに亘って貫通した孔を設け、保持面11に固定治具60を吸引保持することで、固定治具60にワーク200を吸引保持しても良い。
【0036】
(切削ステップ)
図7は、図4に示された加工方法の切削ステップにおいてワークに切削ブレードを切り込ませる状態を模式的に示す断面図である。図8は、図4に示された加工方法の切削ステップ後のワークを模式的に示す平面図である。切削ステップ102は、保持ステップ101を実施した後、切削ブレード21をワーク200の外周縁203に切り込ませ第1面201から第2面202に貫通し所定深さ221よりも浅いスリット220を形成するステップである。
【0037】
実施形態1において、切削ステップ102では、切削装置1は、移動ユニット40にチャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的に移動させて、撮像ユニット30でチャックテーブル10に保持されたワーク200を撮像する。実施形態1において、切削ステップ102では、切削装置1は、ワーク200を撮像して得た画像に基づいて、移動ユニット40を制御して、図7に示すように、保持ユニット13に保持されたワーク200の長手方向210をX軸方向と平行に位置付け、切削ブレード21の軸心25のZ軸方向の位置をワーク200の厚み方向212の中央に位置付ける。
【0038】
また、実施形態1において、切削ステップ102では、切削装置1は、ワーク200を撮像して得た画像に基づいて、移動ユニット40を制御して、切削ブレード21にチャックテーブル10に保持されたワーク200の長手方向210の一端部をX軸方向に対向させるとともに、チャックテーブル10に保持されたワーク200を切削ブレード21よりも搬入出領域寄りに位置付ける。実施形態1において、切削ステップ102では、切削装置1は、移動ユニット40を制御してチャックテーブル10をX軸方向に加工領域に向けて移動させて、軸心25回りに回転する切削ブレード21をワーク200の長手方向210の一端部の外周縁203に切り込ませる。
【0039】
また、実施形態1において、切削ステップ102では、切削装置1は、移動ユニット40を制御して、切削ブレード21をワーク200の長手方向210の一端部の外周縁203に外周縁203から所定深さ221よりも浅い(即ち短い)深さ223切り込ませて、切削ブレード21をワーク200に深さ223切り込ませた後、チャックテーブル10をX軸方向に沿って搬入出領域に向けて移動させる。実施形態1において、切削ステップ102では、図8に示すように、ワーク200の長手方向210の一端部に所定深さ221よりも浅い(即ち短い)深さ223のスリット220を形成する。
【0040】
(深さ確認ステップ)
図9は、図4に示された加工方法の深さ確認ステップを模式的に示す断面図である。深さ確認ステップ103は、切削ステップ102を実施した後、保持ユニット13で保持されたワーク200を撮像して切削ステップ102で形成されたスリット220の深さ223を確認するステップである。
【0041】
実施形態1において、深さ確認ステップ103では、図9に示すように、切削装置1は、移動ユニット40を制御して、撮像ユニット30の下方に保持ユニット13に保持されたワーク200の長手方向210の一端部を位置付ける。実施形態1において、深さ確認ステップ103では、切削装置1は、撮像ユニット30で保持ユニット13に保持されたワーク200の長手方向210の一端部を撮像する。実施形態1において、深さ確認ステップ103では、切削装置1は、撮像ユニット30が撮像して得た画像からスリット220のワーク200の長手方向210の一端部の外周縁203からの深さ223を算出する。
【0042】
(追加切削ステップ)
図10は、図4に示された加工方法の追加切削ステップにおいて切削ブレードをスリットの底に外周縁から所定距離切り込ませた状態を模式的に示す断面図である。図11は、図10に示された切削ブレードをZ軸方向に移動させた状態を模式的に示す断面図である。
【0043】
追加切削ステップ104は、深さ確認ステップ103で確認されたスリット220の深さ223に基づいて切削ブレード21でスリット220の底222を切削してスリット220の深さを所定深さ221に形成するステップである。実施形態1において、追加切削ステップ104では、切削装置1は、移動ユニット40を制御して、切削ブレード21の軸心25のZ軸方向の位置をワーク200の第2面202よりも下方に位置付ける。
【0044】
また、実施形態1において、追加切削ステップ104では、切削装置1は、移動ユニット40を制御して、切削ブレード21にチャックテーブル10に保持されたワーク200に形成されたスリット220をX軸方向に対向させるとともに、保持ユニット13に保持されたワーク200を切削ブレード21よりも搬入出領域寄りに位置付ける。実施形態1において、追加切削ステップ104では、切削装置1は、移動ユニット40を制御してチャックテーブル10をX軸方向に加工領域に向けて移動させて、図10に示すように、軸心25回りに回転する切削ブレード21をワーク200の長手方向210の一端部に形成されたスリット220の底222に切り込ませて、切削ステップ102よりもチャックテーブル10を所定深さ221と深さ223との差分、加工領域寄りに位置付ける。
【0045】
こうして、実施形態1において、追加切削ステップ104では、切削装置1は、深さ確認ステップ103で確認されたスリット220の深さ223に基づいて切削ブレード21をワーク200の一端部の外周縁203から所定深さ221に切り込ませる。また、実施形態1において、追加切削ステップ104では、切削装置1は、軸心25回りに回転する切削ブレード21をワーク200の長手方向210の一端部に形成されたスリット220の底222に切り込ませて、切削ステップ102よりもチャックテーブル10を所定深さ221と深さ223との差分、加工領域寄りに位置付けた後、図11の矢印に示すように、軸心25がワーク200の第1面201よりも上方に位置するまで切削ブレード21を上昇させる。
【0046】
すると、切削ブレード21がワーク200のスリット220の底222をワーク200の厚み方向212の全長に亘って切削して、スリット220の深さをワーク200の厚み方向212の全長に亘って所定深さ221に形成する。こうして、実施形態1において、追加切削ステップ104では、切削装置1は、深さ確認ステップ103で確認されたスリット220の深さ223に基づいて切削ブレード21でスリット220の底222を切削して、スリット220の深さを所定深さ221に形成する。
【0047】
また、実施形態1において、追加切削ステップ104では、軸心25をワーク200の第1面201よりも下方に位置付けた切削ブレード21をワーク200の一端部の外周縁203から所定深さ221切り込ませた後、軸心25が第1面201よりも上方に位置するまで切削ブレード21を上昇させることで、切削ブレード21の軸心25の高さ位置がワーク200の下端である第2面202から上端である第1面201に至るように切削ブレード21をワーク200の厚み方向212に相対移動させる。しかしながら、本発明において、追加切削ステップ104では、軸心25をワーク200の第2面202よりも上方に位置付けた切削ブレード21をワーク200の一端部の外周縁203から所定深さ221切り込ませた後、軸心25が第2面202よりも下方に位置するまで切削ブレード21を下降させてもよく、切削ブレード21を所定深さ221ワーク200の一端部の外周縁203に切り込ませた後、軸心25が第2面202よりも下方の位置と第1面201よりも上方の位置との間で昇降するように切削ブレード21を厚み方向212に移動させても良い。
【0048】
図12に示すように、チャックテーブル10の保持面11に吸引保持されたシリコン板61上の固定治具60間にワーク200の長手方向210の他端部を挟持し、シリコン板61と固定治具60とワーク200とをワックス62で固定して、チャックテーブル10をX軸方向に移動させて立てた状態のワーク200の長手方向210の一端部に切削ブレード21を切り込ませて、スリット220を形成する場合には、ワーク200の固定が困難で、ワーク200が傾いたりスリット220の深さがばらつく恐れがあった。また、図12に示す場合には、スリット220の深さを確認するために、ワーク200をシリコン板61等から取り外す必要があるとともに、スリット220の底222を再度切削するためには、ワーク200をシリコン板61及び固定治具60に再度固定する必要があった。なお、図12は、従来の加工方法を模式的に示す断面である。図12は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
このような従来の加工方法に対して、以上説明したように実施形態1に係る加工方法は、長手方向210が水平方向に沿う寝かした状態でかつ長手方向210の一端部が固定治具60から突出した状態でワーク200を保持ユニット13に保持してワーク200を切削加工するので、傾いた状態のワーク200を切削加工することを抑制でき、形成したスリット220の深さがばらつくことを抑制できる。
【0050】
また、実施形態1に係る加工方法は、切削ステップ102において所定深さ221よりも浅い深さ223のスリット220を形成、深さ確認ステップ103においてスリット220の深さ223を確認した後、追加切削ステップ104において所定深さ221のスリット220を形成するので、ワーク200に所定深さ221のスリット220を形成する際の困難性を抑制することができるという効果を奏する。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
13 保持ユニット
21 切削ブレード
25 軸心(中心)
101 保持ステップ
102 切削ステップ
103 深さ確認ステップ
104 追加切削ステップ
200 ワーク
201 第1面(上端)
202 第2面(下端)
203 外周縁
212 厚み方向
220 スリット
221 所定深さ
223 深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12