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特開2024-114382溝形状測定方法、溝形状測定装置、加工装置の制御方法、及び加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114382
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】溝形状測定方法、溝形状測定装置、加工装置の制御方法、及び加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/12 20060101AFI20240816BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240816BHJP
   B24B 49/18 20060101ALI20240816BHJP
   B24B 19/02 20060101ALI20240816BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20240816BHJP
   B23D 1/20 20060101ALI20240816BHJP
   B23Q 17/24 20060101ALI20240816BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20240816BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240816BHJP
   B23K 26/364 20140101ALN20240816BHJP
【FI】
B24B49/12
H01L21/78 C
B24B49/18
B24B19/02
B24B27/06 M
B23D1/20
B23Q17/24 A
B23Q15/00 301H
G01B11/24 D
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020119
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】清水 翼
(72)【発明者】
【氏名】田母神 崇
(72)【発明者】
【氏名】岩城 智
(72)【発明者】
【氏名】對馬 健夫
【テーマコード(参考)】
2F065
3C029
3C034
3C049
3C050
3C158
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
2F065AA52
2F065BB05
2F065FF51
2F065GG24
2F065MM07
2F065PP04
2F065QQ45
3C029CC10
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA05
3C034CA13
3C034CA22
3C034CB12
3C034CB14
3C034DD10
3C049AA03
3C049AA19
3C049AC02
3C049BA07
3C049BB02
3C049BB09
3C049BC02
3C049CB01
3C049CB03
3C050AB02
3C050AC01
3C050AD00
3C158AA03
3C158AA19
3C158AC02
3C158BA07
3C158BB02
3C158BB09
3C158BC02
3C158CB01
3C158CB03
3C158DA17
4E168AD01
4E168CA02
4E168CA06
4E168CB07
4E168CB13
4E168CB22
4E168DA04
4E168DA43
4E168FC01
4E168KA15
5F063AA01
5F063AA43
5F063AA48
5F063CC38
5F063DD06
5F063DD22
5F063DD25
5F063DE12
5F063DE13
5F063DE16
5F063DE23
5F063FF01
5F063FF33
5F063FF42
5F063FF43
(57)【要約】
【課題】加工装置の制御装置の処理負荷低減と、加工溝の確度の高い断面プロファイルの取得と、を実現可能な溝形状測定方法、溝形状測定装置、加工装置の制御方法、及び加工装置を提供する。
【解決手段】加工装置(ダイシング装置10)により被加工物(ワークW)に加工送り方向(X方向)に沿って形成された加工溝9の形状を表す複数の3次元座標データ(3次元座標データ群60)を取得する座標データ取得ステップ(ステップS1)と、3次元座標データを、加工送り方向に対して垂直な2次元平面上(2次元平面61)に投影した加工溝9の2次元投影データ62を生成する投影データ生成ステップ(ステップS2)と、2次元投影データ62に基づいて、加工溝9の断面プロファイル64を演算する断面プロファイル演算ステップ(ステップS3)と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置により被加工物に形成された加工溝の形状を表す複数の3次元座標データを取得する座標データ取得ステップと、
前記座標データ取得ステップで取得した前記3次元座標データを、2次元平面上に投影した前記加工溝の2次元投影データを生成する投影データ生成ステップと、
前記投影データ生成ステップで生成した前記2次元投影データに基づいて、前記加工溝の断面プロファイルを演算する断面プロファイル演算ステップと、
を有する溝形状測定方法。
【請求項2】
前記断面プロファイル演算ステップでは、前記2次元投影データに対してノイズ除去処理及び統計処理の少なくとも一方を施して前記断面プロファイルを演算する請求項1に記載の溝形状測定方法。
【請求項3】
前記投影データ生成ステップで実行する前記2次元投影データの生成処理、及び前記断面プロファイル演算ステップで実行する前記断面プロファイルの演算処理を、複数の演算装置で分散して実行する請求項1又は2に記載の溝形状測定方法。
【請求項4】
前記複数の演算装置の1つが、前記加工装置を制御する制御装置である請求項3に記載の溝形状測定方法。
【請求項5】
前記複数の演算装置が、複数の前記加工装置ごとに設けられた前記加工装置の制御装置と、複数の前記加工装置で共用される共用演算装置と、を含む請求項3に記載の溝形状測定方法。
【請求項6】
前記投影データ生成ステップで実行する前記2次元投影データの生成処理、及び前記断面プロファイル演算ステップで実行する前記断面プロファイルの演算処理を、前記加工装置を制御する制御装置とは異なる演算装置のみで実行する請求項1又は2に記載の溝形状測定方法。
【請求項7】
前記演算装置が、複数の前記加工装置で共用される共用演算装置である請求項6に記載の溝形状測定方法。
【請求項8】
前記断面プロファイル演算ステップで演算した前記断面プロファイルに基づいて、前記加工溝の加工状態を示す所望の数値を演算する数値演算ステップを有する請求項1に記載の溝形状測定方法。
【請求項9】
前記断面プロファイル演算ステップでは、前記2次元投影データに対してノイズ除去処理及び統計処理の少なくとも一方を施して前記断面プロファイルを演算する請求項8に記載の溝形状測定方法。
【請求項10】
前記投影データ生成ステップで実行する前記2次元投影データの生成処理、前記断面プロファイル演算ステップで実行する前記断面プロファイルの演算処理、及び前記数値演算ステップでの前記数値の演算処理を、複数の演算装置で分散して実行する請求項8又は9に記載の溝形状測定方法。
【請求項11】
前記複数の演算装置の1つが、前記加工装置を制御する制御装置である請求項10に記載の溝形状測定方法。
【請求項12】
前記複数の演算装置が、複数の前記加工装置ごとに設けられた前記加工装置の制御装置と、複数の前記加工装置で共用される共用演算装置と、を含む請求項10に記載の溝形状測定方法。
【請求項13】
前記投影データ生成ステップで実行する前記2次元投影データの生成処理、前記断面プロファイル演算ステップで実行する前記断面プロファイルの演算処理、及び前記数値演算ステップでの前記数値の演算処理を、前記加工装置を制御する制御装置とは異なる演算装置のみで実行する請求項8又は9に記載の溝形状測定方法。
【請求項14】
前記演算装置が、複数の前記加工装置で共用される共用演算装置である請求項13に記載の溝形状測定方法。
【請求項15】
加工装置により被加工物に形成された加工溝の形状を表す複数の3次元座標データを取得する座標データ取得ステップと、
前記座標データ取得ステップで取得した前記3次元座標データを、2次元平面上に投影して前記加工溝の2次元投影データを生成する投影データ生成ステップと、
前記投影データ生成ステップで生成した前記2次元投影データに基づいて、前記加工溝の断面プロファイルを演算する断面プロファイル演算ステップと、
前記断面プロファイル演算ステップで演算した前記断面プロファイルに基づいて、前記加工溝の加工状態を示す所望の数値を演算する数値演算ステップと、
前記数値演算ステップで演算された前記数値に基づいて、前記加工溝が所望の形状になるように前記加工装置を制御する制御ステップと、
を有する加工装置の制御方法。
【請求項16】
加工装置により被加工物に形成された加工溝の形状を表す複数の3次元座標データを取得する座標データ取得部と、
前記座標データ取得部が取得した前記3次元座標データを、2次元平面上に投影した前記加工溝の2次元投影データを生成する投影データ生成部と、
前記投影データ生成部が生成した前記2次元投影データに基づいて、前記加工溝の断面プロファイルを演算する断面プロファイル演算部と、
を備える溝形状測定装置。
【請求項17】
前記断面プロファイル演算部が演算した前記断面プロファイルに基づいて、前記加工溝の加工状態を示す所望の数値を演算する数値演算部を備える請求項16に記載の溝形状測定装置。
【請求項18】
被加工物に加工溝を形成する加工部と、
請求項17に記載の溝形状測定装置と、
前記数値演算部が演算した前記数値に基づいて、前記数値に基づいて、前記加工溝が所望の形状になるように前記加工部を制御する制御部と、
を備える加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工溝の断面プロファイルを測定する溝形状測定方法、溝形状測定装置、加工装置の制御方法、及び加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スピンドルによって高速に回転される円盤状のブレードによってウェーハ等のワークを切削加工するダイシング装置(加工装置)が知られている。このようなダイシング装置では、加工中のブレードの状態判定、加工溝の加工品質の良否判定、デブリの検出、及び加工溝の加工位置のずれ量の検出などのために、加工溝(カーフともいう)の断面プロファイルを測定している。
【0003】
例えば特許文献1に記載のダイシング装置は、共焦点顕微鏡をZ方向に移動させながらX方向(加工送り方向)に沿って形成された加工溝のXY平面画像の撮影を繰り返し行った後、各XY平面画像をZ方向に積み重ねて加工溝の3次元データ(3次元モデルともいう)を構成する。また、特許文献1及び特許文献2に記載のダイシング装置は、白色干渉顕微鏡あるいはレーザ変位計を用いて加工溝の形状を表す3次元座標データ群を測定して、この3次元座標データ群に基づいて加工溝の3次元データを構成する。そして、特許文献1及び特許文献2に記載のダイシング装置は、加工溝の3次元データからある断面を切り出すことで加工溝の断面プロファイルを演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-085397号公報
【特許文献2】特開2021-084201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1及び特許文献2に記載のダイシング装置は、加工溝の3次元データの構成を行う必要があり、この構成処理を行うダイシング装置の制御装置、例えばPC(Personal Computer)等の処理負荷が増加してしまう。
【0006】
図18は、従来技術の課題を説明するための説明図である。図18に示すように、上記特許文献1及び特許文献2に記載のダイシング装置では、ワークWにX方向(加工送り方向)に沿って形成された加工溝9の3次元データからある断面を切り出して加工溝9の断面プロファイルを演算している。この際に、加工溝9の形状がX方向で変化している場合には、断面の切り出し位置CP1,CP2によって断面プロファイルが変化してしまうので、加工溝9の確度の高い断面プロファイルが得られない可能性がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、加工装置の制御装置の処理負荷低減と、加工溝の確度の高い断面プロファイルの取得と、を実現可能な溝形状測定方法、溝形状測定装置、加工装置の制御方法、及び加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するための溝形状測定方法は、加工装置により被加工物に加工送り方向に沿って形成された加工溝の形状を表す複数の3次元座標データを取得する座標データ取得ステップと、座標データ取得ステップで取得した3次元座標データを、加工送り方向に対して垂直な2次元平面上に投影して加工溝の2次元投影データを生成する投影データ生成ステップと、投影データ生成ステップで生成した2次元投影データに基づいて、加工溝の断面プロファイルを演算する断面プロファイル演算ステップと、を有する。
【0009】
この溝形状測定方法によれば、加工溝の3次元データを演算することなく、加工溝の断面プロファイルを演算することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、断面プロファイル演算ステップでは、2次元投影データに対してノイズ除去処理及び統計処理の少なくとも一方を施して断面プロファイルを演算する。これにより、確度の高い断面プロファイルが得られる。
【0011】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、投影データ生成ステップで実行する2次元投影データの生成処理、及び断面プロファイル演算ステップで実行する断面プロファイルの演算処理を、複数の演算装置で分散して実行する。これにより、演算装置ごとの処理負荷を低減させることができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、複数の演算装置の1つが、加工装置を制御する制御装置である。これにより、制御装置の処理負荷を低減させることができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、複数の演算装置が、複数の加工装置ごとに設けられた加工装置の制御装置と、複数の加工装置で共用される共用演算装置と、を含む。これにより、加工装置が複数設置されている場合でも低コスト化を図りつつ、制御装置の処理負荷の低減と、加工溝の確度の高い断面プロファイルの取得と、を実現することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、投影データ生成ステップで実行する2次元投影データの生成処理、及び断面プロファイル演算ステップで実行する断面プロファイルの演算処理を、加工装置を制御する制御装置とは異なる演算装置のみで実行する。これにより、制御装置の処理負荷をより低減させることができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、演算装置が、複数の加工装置で共用される共用演算装置である。これにより、加工装置が複数設置されている場合でも低コスト化を図りつつ、制御装置の処理負荷の低減と、加工溝の確度の高い断面プロファイルの取得と、を実現することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、断面プロファイル演算ステップで演算した断面プロファイルに基づいて、加工溝の加工状態を示す所望の数値を演算する数値演算ステップを有する。これにより、加工溝の3次元データを演算することなく、加工溝の断面プロファイルと所望の数値を演算することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、断面プロファイル演算ステップでは、2次元投影データに対してノイズ除去処理及び統計処理の少なくとも一方を施して断面プロファイルを演算する。これにより、確度の高い断面プロファイルと所望の数値とが得られる。
【0018】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、投影データ生成ステップで実行する2次元投影データの生成処理、断面プロファイル演算ステップで実行する断面プロファイルの演算処理、及び数値演算ステップでの数値の演算処理を、複数の演算装置で分散して実行する。これにより、演算装置ごとの処理負荷を低減させることができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、複数の演算装置の1つが、加工装置を制御する制御装置である。これにより、制御装置の処理負荷を低減させることができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、複数の演算装置が、複数の加工装置ごとに設けられた加工装置の制御装置と、複数の加工装置で共用される共用演算装置と、を含む。これにより、加工装置が複数設置されている場合でも低コスト化を図りつつ、制御装置の処理負荷の低減と、加工溝の確度の高い断面プロファイルの取得及び断面プロファイルから所望の数値を演算する演算処理と、を実現することができる。
【0021】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、投影データ生成ステップで実行する2次元投影データの生成処理、断面プロファイル演算ステップで実行する断面プロファイルの演算処理、及び数値演算ステップでの数値の演算処理を、加工装置を制御する制御装置とは異なる演算装置のみで実行する。これにより、加工装置が複数設置されている場合でも低コスト化を図りつつ、制御装置の処理負荷の低減と、加工溝の確度の高い断面プロファイルの取得及び断面プロファイルから所望の数値を演算する演算処理と、を実現することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係る溝形状測定方法において、演算装置が、複数の加工装置で共用される共用演算装置である。これにより、加工装置が複数設置されている場合でも低コスト化を図りつつ、制御装置の処理負荷の低減と、加工溝の確度の高い断面プロファイルの取得及び断面プロファイルから所望の数値を演算する演算処理と、を実現することができる。
【0023】
本発明の目的を達成するための加工装置の制御方法は、加工装置により被加工物に形成された加工溝の形状を表す複数の3次元座標データを取得する座標データ取得ステップと、座標データ取得ステップで取得した3次元座標データを、2次元平面上に投影して加工溝の2次元投影データを生成する投影データ生成ステップと、投影データ生成ステップで生成した2次元投影データに基づいて、加工溝の断面プロファイルを演算する断面プロファイル演算ステップと、断面プロファイル演算ステップで演算した断面プロファイルに基づいて、加工溝の加工状態を示す所望の数値を演算する数値演算ステップと、数値演算ステップで演算された数値に基づいて、数値が予め定められた閾値を満たすように加工装置をフィードバック制御する制御ステップと、を有する。これにより、所望の加工形状の加工溝を形成することができる。
【0024】
本発明の目的を達成するための溝形状測定装置は、加工装置により被加工物に加工送り方向に沿って形成された加工溝の形状を表す複数の3次元座標データを取得する座標データ取得部と、座標データ取得部が取得した3次元座標データを、加工送り方向に対して垂直な2次元平面上に投影して加工溝の2次元投影データを生成する投影データ生成部と、投影データ生成部が生成した2次元投影データに基づいて、加工溝の断面プロファイルを演算する断面プロファイル演算部と、を備える。
【0025】
本発明の他の態様に係る溝形状測定装置において、断面プロファイル演算部が演算した断面プロファイルに基づいて、加工溝の加工状態を示す所望の数値を演算する数値演算部を備える。
【0026】
本発明の目的を達成するための加工装置は、加工物に加工溝を形成する加工部と、上述の溝形状測定装置と、数値演算部が演算した数値に基づいて、数値が予め定められた閾値を満たすように加工部をフィードバック制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、加工装置の制御装置の処理負荷低減と、加工溝の確度の高い断面プロファイルの取得と、を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態のダイシング装置の斜視図である。
図2】加工部の外観斜視図である。
図3】第1実施形態のダイシング装置のブロック図である。
図4】投影データ生成部による2次元投影データの生成を説明するための説明図である。
図5】断面プロファイル演算部による断面プロファイルの演算を説明するための説明図である。
図6】第1実施形態のダイシング装置による加工溝の断面プロファイルの測定処理の流れを示したフローチャートである。
図7】第2実施形態のダイシング装置のブロック図である。
図8】第3実施形態のダイシング装置のブロック図である。
図9】第4実施形態のダイシング装置のブロック図である。
図10】第5実施形態のダイシング装置のブロック図である。
図11】第6実施形態のダイシング装置のブロック図である。
図12】第6実施形態の数値演算部による演算処理の一例を説明するための説明図である。
図13】第6実施形態のダイシング装置による加工溝の断面プロファイルの測定処理及びフィードバック制御の流れを示したフローチャートである。
図14】第7実施形態のダイシング装置のブロック図である。
図15】レーザ加工部の構成の一例を示した概略図である。
図16】第7実施形態の数値演算部による数値の演算処理の一例を説明するための説明図である。
図17】第7実施形態の数値演算部による数値の演算処理の一例を説明するための説明図である。
図18】従来技術の課題を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のダイシング装置10(加工装置に相当)の斜視図である。なお、図中のXYZ方向は互いに直交する方向であり、XY方向が水平方向に平行な方向であり、Z方向が水平方向に直交な方向である。
【0030】
図1に示すように、ダイシング装置10は、シリコンウェーハ(半導体ウェーハ)等の平板状のワークW(被加工物)をダイシング加工する。また、ダイシング装置10は、ダイシング加工によりワークWに形成された加工溝9(既述の図11参照)の断面プロファイル64(図5参照)を測定する。このため、ダイシング装置10は、本発明の断面形状測定装置としても機能する。このダイシング装置10は、ロードポート12と搬送機構14と加工部16と洗浄部18とを備える。
【0031】
ロードポート12には、フレームFにマウントされたワークWを多数枚収納したカセットが載置される。搬送機構14はワークWを搬送する。加工部16はワークWのダイシング加工を行う。洗浄部18はダイシング加工済みのワークWをスピン洗浄する。また、ダイシング装置10の筐体10Aの内部には、ダイシング装置10の各部の動作を制御する装置制御用制御装置50(本発明の制御装置に相当、図3参照)等が設けられている。なお、装置制御用制御装置50が筐体10Aの外部に設けられていてもよい。
【0032】
ロードポート12に載置されたカセット内に収納されている未加工のワークWは、搬送機構14により加工部16に搬送され、個々のチップに分断するために加工部16にて切断あるいは溝入れ加工等のダイシング加工が施される。そして、加工部16による加工済みのワークWは搬送機構14により洗浄部18に搬送され、洗浄部18により洗浄された後、搬送機構14によりロードポート12に搬送されてカセット内に収納される。
【0033】
図2は、加工部16の外観斜視図である。図2及び既述の図1に示すように、加工部16は、ツインスピンドルダイサであり、一対のブレード21A,21Bと、ブレードカバー(不図示)と、一対のスピンドル22A,22Bと、顕微鏡23,24と、テーブル31と、を備える。
【0034】
ブレード21A,21Bは円盤状に形成されている。また、ブレード21A,21Bの先端形状、すなわちブレード21A,21Bの径方向に沿ったブレード外周部(刃先部)の断面形状は矩形状(V字形状等の他の形状でも可)である。ブレード21A,21Bは、Y方向において対向配置されており、それぞれY方向に平行なブレード回転軸を中心として回転自在にスピンドル22A,22Bに保持されている。
【0035】
スピンドル22A,22Bは、高周波モータを内蔵しており、ブレード回転軸を中心としてブレード21A,21Bを高速回転させる。これにより、ブレード21A,21BによりワークWがその表面(デバイス形成面)側からダイシング加工される。ブレード21A,21BによるワークWのダイシング加工によって加工溝9がワークWに形成される。
【0036】
顕微鏡23は、例えばスピンドル22A(スピンドル22Bでも可)と一体にZキャリッジ44に設けられており、Yキャリッジ43及びZキャリッジ44によってスピンドル22Aと一体にYZ方向に移動自在に保持されている。顕微鏡23は、ワークWの表面側からワークWの表面のパターン及び加工溝9を撮影する。この顕微鏡23により撮影されたワークWの表面の撮影画像は、ワークWのストリートに対するブレード21A,21Bのアライメントと、加工溝9の位置を確認するカーフチェックと、に用いられる。
【0037】
顕微鏡24は、スピンドル22B(スピンドル22Aでも可)と一体にZキャリッジ44に設けられており、Yキャリッジ43及びZキャリッジ44によってYZ方向に移動自在に保持されている。顕微鏡24は、例えば白色干渉顕微鏡及びレーザ顕微鏡(レーザ変位計)などが用いられ、加工溝9の形状(立体形状)を表す3次元座標データ群60(点群データともいう、図4参照)の取得を行う。3次元座標データ群60は、詳しくは後述するが、加工溝9の断面プロファイル64(図5参照)の生成に用いられる。なお、顕微鏡23,24の双方が、「アライメント及びカーフチェック用顕微鏡」と「3次元座標データ群取得用顕微鏡(白色干渉顕微鏡等)」とにより構成されていてもよい。
【0038】
なお、本実施形態では顕微鏡23と顕微鏡24とが別体で設けられているが、両者が一体化されていてもよい。
【0039】
テーブル31は、ポーラス状(多孔質状)に形成されたワーク保持面31aを有しており、このワーク保持面31aによりワークWをその裏面側から吸着保持する。なお、テーブル31は、後述のXキャリッジ36によりX方向に移動自在に保持され、且つ後述の回転ユニット37により回転軸CAを中心として回転自在に保持されている。
【0040】
加工部16には、Xベース32と、Xガイド34と、X駆動部35と、Xキャリッジ36と、回転ユニット37と、が設けられている。Xベース32は、X方向に延びた平板形状を有しており、且つそのZ方向の上面にはXガイド34が設けられている。Xガイド34は、X方向に延びた形状を有し、Xキャリッジ36をX方向に沿ってガイドする。X駆動部35は、例えばリニアモータ等のアクチュエータが用いられ、Xガイド34に沿ってXキャリッジ36をX方向に移動させる。
【0041】
回転ユニット37は、Xキャリッジ36の上面に設けられている。また、回転ユニット37の上面には、テーブル31が設けられている。回転ユニット37は、モータ及びギヤ等により構成される不図示の回転駆動部によって回転駆動される。これにより、回転ユニット37は、テーブル31をその回転軸CAを中心としてθ方向に回転させる。
【0042】
搬送機構14によりロードポート12から搬送されたワークWは、テーブル31により吸着保持されることで、テーブル31と一体に移動及び回転する。なお、加工部16に複数のテーブル31が設けられていてもよい。
【0043】
また、加工部16には、Yベース41と、Yガイド42と、一対のYキャリッジ43と、一対のZキャリッジ44と、が設けられている。Yベース41は、Y方向においてXベース32を跨ぐような門型形状を有している。このYベース41のX方向側の側面には、Yガイド42が設けられている。Yガイド42は、Y方向に延びた形状を有し、一対のYキャリッジ43をそれぞれY方向に沿ってガイドする。一対のYキャリッジ43は、例えばステッピングモータ及びボールスクリュー等により構成される不図示のY駆動部により、Yガイド42に沿って独立して移動される。
【0044】
一対のYキャリッジ43の各々には、ステッピングモータ等のアクチュエータにより構成される不図示のZ駆動部を介して、Zキャリッジ44がZ方向に移動自在に設けられている。そして、Zキャリッジ44の一方にはスピンドル22A及び顕微鏡23が設けられZキャリッジ44の他方にはスピンドル22B及び顕微鏡24が設けられている。
【0045】
ワークWのダイシング加工時には、加工部16の各部を駆動して、ワークWのX方向(加工送り方向)への切削送りと、ブレード21A,21BのY方向のインデックス送り及びZ方向の切込み送りと、を実行することで、ワークWの各ストリートに沿って加工溝9が形成される。
【0046】
図3は、第1実施形態のダイシング装置10のブロック図である。なお、図3では、ダイシング装置10の各構成の中で、後述の断面プロファイル64(図5参照)の演算に関係がない構成については適宜図示を省略している(後述の図7から図9も同様)。
【0047】
図3に示すように、装置制御用制御装置50は、ダイシング装置10の各部の動作を統括的に制御するものであり、本発明の制御装置及び溝形状測定装置として機能する。この装置制御用制御装置50は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、装置制御用制御装置50の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0048】
装置制御用制御装置50は、不図示の制御プログラムを実行することで、装置制御部52及び処理部54として機能する。
【0049】
装置制御部52は、ワークWのダイシング加工時には、加工部16の各部を制御して公知のアライメント及び加工溝9の形成(切削加工)を実行する(上記特許文献1及び2参照)。
【0050】
また、装置制御部52は、加工溝9の断面プロファイル64(図5参照)の測定時には、加工部16の各部(顕微鏡24等)を制御して、顕微鏡24を用いた公知の加工溝9の形状測定を実行する(上記特許文献1及び2参照)。
【0051】
例えば顕微鏡24が白色干渉顕微鏡である場合には、装置制御部52は、加工部16の各部を制御して、加工溝9のZ方向上方側に顕微鏡24が位置するようにワークWに対する顕微鏡24の位置調整を実行する。次いで、装置制御部52は、加工部16の各部を制御して、顕微鏡24をZ方向に走査させながら、顕微鏡24による加工溝9への照明光の照射と、顕微鏡24の2次元撮像素子による干渉光(加工溝9からの反射光及び参照面からの参照光)の撮像と、を連続的に実行させる。なお、加工溝9の形状測定範囲が顕微鏡24の測定可能範囲よりも広い場合には、ワークWに対する顕微鏡24の位置を相対的にX方向またはY方向に変化させた後、上述の顕微鏡24のZ方向の走査と、顕微鏡24による照明光の照射及び干渉光の撮像と、を繰り返し実行させる。なお、顕微鏡24は、後述する処理部54とは異なる顕微鏡24をZ方向に走査して撮像した画像データ群を処理又は構成する処理部に接続されていてもよい。この場合、顕微鏡24と後述する処理部54と異なる処理部とにより観察部を構成してもよい。観察部は、処理部54に接続され処理部54に対してデータ送受信できる。
【0052】
さらに、装置制御部52は、後述の処理部54により演算された断面プロファイル64(図5参照)に基づいて加工中のブレード21A,21Bの状態判定、加工溝9の加工品質の良否判定、デブリの検出、及び加工溝9の加工位置のずれ量の検出などの各種評価を実行して、この評価結果に基づいたダイシング加工の補正等を実行する。
【0053】
処理部54は、顕微鏡24による加工溝9の形状測定結果に基づいて、加工溝9の3次元データ(3次元モデル)の構成処理を行うことなく、加工溝9の断面プロファイル64(図5参照)の生成を行う。この処理部54は、座標データ取得部55、投影データ生成部56、及び断面プロファイル演算部57として機能する。なお、処理部54の機能(座標データ取得部55、投影データ生成部56、及び断面プロファイル演算部57)の内の少なくとも1つが、顕微鏡24に設けられていてもよい。
【0054】
座標データ取得部55は、顕微鏡24を用いた加工溝9の形状測定時に、この顕微鏡24から出力される各種信号などに基づいて、加工溝9の形状(3次元形状)を表す複数の3次元座標データ(XYZ座標データ)により構成される3次元座標データ群60(図4参照)を取得する。例えば顕微鏡24が白色干渉顕微鏡である場合には、座標データ取得部55は、顕微鏡24がZ方向に走査される間に顕微鏡24の2次元撮像素子からその画素ごと出力される干渉信号に基づいて、3次元座標データ群60を取得する(上記特許文献2参照)。
【0055】
図4は、投影データ生成部56による2次元投影データ62の生成を説明するための説明図である。なお、図4では、投影データ生成部56による3次元座標データ群60の2次元平面上への投影をイメージで説明するために、符号4Aに示した3次元座標データ群60を3次元データ(イメージ)で表しているが、本実施形態では加工溝9の3次元データの生成を実行してはいない。投影とは、3次元座標データ群60から2次元画像を生成するために必要なデータを取得すること、3次元座標データ群60から2次元画像を生成するために必要なデータを取得して2次元画像を生成すること、3次元座標データ群60から2次元座標データ若しくは2次元のデータを取得すること、3次元座標データ群60から2次元座標データ若しくは2次元のデータを取得して2次元画像を生成すること、3次元座標データ群60を2次元座標データ群若しくは2次元のデータに変換することや、3次元座標データ群60を2次元座標データ群若しくは2次元のデータに変換して2次元画像を生成すること等を含む。
【0056】
図4の符号4Aにイメージ図で示したように、投影データ生成部56は、加工溝9の3次元座標データ群60(点群)の各ドットを、加工送り方向であるX方向に対して垂直な仮想の2次元平面61上(YZ平面上)に投影して、符号4Bに示すような加工溝9の2次元投影データ62を生成する。なお、本明細書における「加工送り方向」は、ダイシング加工時のブレード21A,21Bに対するワークWの相対移動方向(ここではX方向)に限定されるものではなく、1つのワークWの加工完了後の測定や、現在加工中の加工溝9と角度差を持った加工済みライン(一般的には直交しているが、その限りではない)の測定を考慮すると、加工溝9の長手方向(XY面に平行な任意の方向)も含まれる。
【0057】
2次元投影データ62には、図中の矢印A1に示すように、X方向に沿った加工溝9の形状ばらつき(図11参照)、及び顕微鏡24による加工溝9の形状測定時の振動等によるデータのばらつきが発生している。このため、2次元投影データ62には、X方向に沿った加工溝9の形状ばらつきが反映されている。このような2次元投影データ62は、3次元座標データ群60の各ドットを2次元平面61に投影するだけで生成可能であるので、上記特許文献1及び特許文献2等に記載の3次元データ(3次元モデル)よりも生成処理の負荷が小さい。
【0058】
図5は、断面プロファイル演算部57による断面プロファイル64の演算を説明するための説明図である。図5の符号5Aに示すように、断面プロファイル演算部57は、投影データ生成部56が生成した2次元投影データ62に基づいて、符号5Bに示すような加工溝9の断面プロファイル64を演算する。具体的には、断面プロファイル演算部57は、2次元投影データ62に対してノイズ除去処理及び統計処理の少なくとも一方を施すことで断面プロファイル64を演算する。例えば、断面プロファイル64の理想形状を登録して2次元投影データ62との形状パターンマッチング法により理想形状を特定(ノイズ除去)したり、公知の機械学習法を用いて2次元投影データ62からノイズを除去したりしてもよい。この断面プロファイル64は、既述の装置制御部52による各種評価及びダイシング加工の補正に用いられる。
【0059】
なお、本実施形態では投影データ生成部56が3次元座標データ群60をX方向に垂直な2次元平面61上に投影しているが、2次元平面61がX方向に対して略垂直であってもよい。また、ワークWの格子状のストリートの交差部では、投影データ生成部56が、X方向に平行な加工溝9の3次元座標データ群60を2次元平面61に投影すると共に、Y方向に平行な加工溝9の3次元座標データ群60を加工溝9の長手方向であるY方向に対して垂直な仮想の2次元平面上に投影してもよい。これにより、断面プロファイル演算部57が、X方向に平行な加工溝9の断面プロファイル64と、Y方向に平行な加工溝9の断面プロファイル64と、を同時に演算可能である。
【0060】
[第1実施形態の作用]
図6は、本発明の溝形状測定方法に係る、第1実施形態のダイシング装置10による加工溝9の断面プロファイル64の測定処理の流れを示したフローチャートである。
【0061】
図6に示すように、ダイシング装置10によるワークWのダイシング加工の実行後或いは実行中に、装置制御部52が、加工部16の各部(特に顕微鏡24等)を制御して、顕微鏡24による加工溝9の形状測定を実行する。これにより、座標データ取得部55が、顕微鏡24から出力される各種信号などに基づいて、加工溝9の3次元形状を表す3次元座標データ群60を取得する(ステップS1、本発明の座標データ取得ステップに相当)。
【0062】
次いで、投影データ生成部56が、既述の図4に示したように座標データ取得部55が取得した3次元座標データ群60を2次元平面61に投影して、加工溝9の2次元投影データ62を生成する(ステップS2、本発明の投影データ生成ステップに相当)。これにより、既述の図11に示したようなX方向に沿った加工溝9の形状ばらつきを反映した2次元投影データ62が得られるので、加工溝9のX方向(加工送り方向)の形状変化を統計的(例えば平均化)に評価可能となる。また、データ欠損率の高い急峻な加工溝9の斜面も投影によってデータ点数を増やすことができる。さらに、従来のような3次元データ(3次元モデル)を生成するよりも装置制御用制御装置50の負荷を低減可能である。
【0063】
そして、断面プロファイル演算部57が、既述の図5に示したように投影データ生成部56が生成した2次元投影データ62に対してノイズ除去処理及び統計処理などを施すことで、加工溝9の断面プロファイル64を演算する(ステップS3、本発明の断面プロファイル演算ステップに相当)。ここで、2次元投影データ62にはX方向に沿った加工溝9の形状ばらつきが反映されているので、2次元投影データ62には同一Y座標で複数のZ位置に加工溝9の表面情報があらわれるが、2次元投影データ62をノイズ除去及び統計処理することにより確度の高い断面プロファイル64が得られる。
【0064】
また、顕微鏡24による加工溝9の形状測定中に振動が生じると、その形状測定結果(本発明における3次元座標データ群60のドットデータ、及び従来の3次元データ)にばらつきが生じてしまう。例えば、ダイシング装置10には、高精度・高耐久性を目的としてXガイド34及びX駆動部35にエアガイド/リニアモータを用いる場合があるが、この場合にはX方向の規制力が弱くなる。このため、ダイシング装置10の設置床環境での外乱振動、及びダイシング装置10に搭載された他ユニット(スピン洗浄等)による振動などにより、加工溝9の形状測定中にX軸が微揺動する場合には、加工溝9の形状測定結果に誤差(ばらつき)が生じてしまう。
【0065】
このような問題に対しては高剛性のステージを設計する必要があるが、本実施形態のように断面プロファイル64を演算することで、ダイシング装置10が許容できる精度レベルの振動抑制を行っておけば、X方向の形状測定データを積算・投影する効果により統計的な解析が可能となり、ロバスト性の向上を実現できる。また、従来の3次元データを測定する場合と比較して精度の高い断面プロファイル64の測定が可能になる。
【0066】
断面プロファイル64の演算が完了すると、装置制御部52が断面プロファイル64に基づいて、ブレード21A,21Bの状態判定、加工溝9の加工品質の良否判定、デブリの検出、及び加工溝9の加工位置のずれ量の検出などの各種評価を実行して、この評価結果に基づいたダイシング加工の補正等を実行する(ステップS4)。
【0067】
以上のように第1実施形態のダイシング装置10は、加工溝9の3次元座標データ群60から2次元投影データ62を生成して、この2次元投影データ62から断面プロファイル64を演算することにより、従来のように3次元データを生成してこの3次元データから断面を切り出す必要が無くなる。また、加工溝9の形状測定中に振動が発生した場合でも精度の高い断面プロファイル64の測定が可能になる。その結果、装置制御用制御装置50の処理負荷低減と、加工溝9の確度の高い断面プロファイル64の取得と、を実現可能である。また、装置制御用制御装置50の処理負荷が低減されることで、断面プロファイル64の測定速度が向上する。
【0068】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態のダイシング装置10のブロック図である。上記第1実施形態のダイシング装置10では装置制御用制御装置50が、3次元座標データ群60の取得処理と、2次元投影データ62の生成処理と、断面プロファイル64の演算処理と、を含む断面プロファイル測定処理を実行している。これに対して、第2実施形態のダイシング装置10では、断面プロファイル測定処理の一部を装置制御用制御装置50とは異なる演算装置である測定用制御装置50A、例えば、測定用制御装置50Aで実行する。
【0069】
図7に示すように、第2実施形態のダイシング装置10は、加工部16内(加工部16外又はダイシング装置10の外部でも可)に測定用制御装置50Aが設けられている点を除けば、上記第1実施形態のダイシング装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0070】
測定用制御装置50Aは、本発明の演算装置に相当するものであり、装置制御用制御装置50と共に本発明の溝形状測定装置を構成する。測定用制御装置50Aは、不図示の通信ネットワークを介して、装置制御用制御装置50に接続されている。この測定用制御装置50Aは、不図示の制御プログラムを実行することで、第1実施形態で説明した座標データ取得部55及び投影データ生成部56として機能する。これにより、第2実施形態では、測定用制御装置50Aにより座標データ取得部55による3次元座標データ群60の取得処理と、投影データ生成部56による2次元投影データ62の生成処理と、を実行可能である。すなわち、測定用制御装置50Aにより断面プロファイル測定処理の一部を実行することができる。
【0071】
また、測定用制御装置50Aには、データ格納部58が設けられている。データ格納部58は、投影データ生成部56により生成された2次元投影データ62を保存する。
【0072】
第2実施形態の装置制御用制御装置50は、本発明の制御装置に相当するものであり、その処理部54が断面プロファイル演算部57として機能する。断面プロファイル演算部57は、データ格納部58から2次元投影データ62の取得或いはデータ格納部58内の2次元投影データ62を参照して、この2次元投影データ62に基づいて第1実施形態と同様に断面プロファイル64を演算する。
【0073】
以上のように第2実施形態のダイシング装置10では、断面プロファイル測定処理を、複数の演算装置(装置制御用制御装置50、測定用制御装置50A)により分散して実行可能である。その結果、装置制御用制御装置50の処理負荷低減が図れるので、装置制御用制御装置50(装置制御部52)によりダイシング装置10の各部の動作制御を進めることができる。また、断面プロファイル64の測定速度を向上させることができる。さらに、上記第1実施形態で説明した効果と同様の効果が得られる。
【0074】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態のダイシング装置10のブロック図である。上記第2実施形態のダイシング装置10では測定用制御装置50Aが断面プロファイル測定処理の一部を実行しているが、第3実施形態のダイシング装置10では測定用制御装置50Aが断面プロファイル測定処理の全てを実行する。
【0075】
図8に示すように、第3実施形態のダイシング装置10は、上記第2実施形態のダイシング装置10と基本的には同じ構成であるので、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0076】
第3実施形態の測定用制御装置50Aは、本発明の演算装置及び溝形状測定装置に相当する。この測定用制御装置50Aは、第1実施形態で説明した座標データ取得部55、投影データ生成部56、及び断面プロファイル演算部57として機能する。これにより、第3実施形態では、測定用制御装置50Aにより座標データ取得部55による3次元座標データ群60の取得処理と、投影データ生成部56による2次元投影データ62の生成処理と、断面プロファイル演算部57による断面プロファイル64の演算処理と、を含む断面プロファイル測定処理の全てを実行可能である。
【0077】
第3実施形態のデータ格納部58は、断面プロファイル演算部57により演算された断面プロファイル64を保存する。
【0078】
第3実施形態の装置制御用制御装置50は、本発明の制御装置に相当するものであり、その処理部54は断面プロファイル参照部59として機能する。断面プロファイル参照部59は、データ格納部58内の断面プロファイル64を参照(取得でも可)する。これにより、装置制御部52による各種評価及びダイシング加工の補正を実行することができる。
【0079】
以上のように第3実施形態のダイシング装置10では、測定用制御装置50Aにより断面プロファイル測定処理の全てを実行するので、第2実施形態によりも装置制御用制御装置50の処理負荷低減が図れる。また、上記各実施形態で説明した効果と同様の効果が得られる。
【0080】
[第4実施形態]
図9は、第4実施形態のダイシング装置10のブロック図である。図9に示すように、第4実施形態では、上記第2実施形態又は上記第3実施形態のダイシング装置10が複数設けられており、各ダイシング装置10で1つの測定用制御装置50Aを共用している。
【0081】
第4実施形態の各ダイシング装置10(測定用制御装置50Aを含む)は、上記第2実施形態又は第3実施形態のダイシング装置10と基本的には同じ構成であるので、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。測定用制御装置50Aは、本発明の共用演算装置に相当するものであり、上記第2実施形態で説明したように各ダイシング装置10の装置制御用制御装置50と共に断面プロファイル測定処理を実行したり、或いは上記第3実施形態で説明したように単独で断面プロファイル測定処理を実行したりする。
【0082】
各ダイシング装置10では、断面プロファイル測定処理を実行する場合には高い処理能力が要求されるものの、ダイシング加工時には負荷が低い状態になっている。このため、第4実施形態のように複数のダイシング装置10で1つの測定用制御装置50Aを共用することで、測定用制御装置50Aの数を増加させることなく、各ダイシング装置10の装置制御用制御装置50の処理負荷低減が図れる。その結果、ダイシング装置10が複数設置されている場合でも低コスト化を図りつつ、上記各実施形態と同様の効果が得られる。なお、この場合には、複数のダイシング装置10ごとの断面プロファイル測定処理のタイミングをずらすことが好ましい。
【0083】
[第5実施形態]
図10は、第5実施形態のダイシング装置10のブロック図である。上記第3実施形態(図8参照)では、測定用制御装置50Aにより断面プロファイル測定処理(3次元座標データ群60の取得処理、2次元投影データ62の生成処理、及び断面プロファイル64の演算処理)を実行している。このように装置制御用制御装置50が断面プロファイル64の測定処理を実行しない場合には、測定用制御装置50Aが実行する処理の内容に関係なく装置制御用制御装置50の処理負荷を低減可能である。そこで、第5実施形態のダイシング装置10では、測定用制御装置50Aが従来の方法での断面プロファイル64の生成、すなわち加工溝9の3次元データからの断面プロファイル64の生成を実行する。
【0084】
図10に示すように、第5実施形態のダイシング装置10は、測定用制御装置50Aの機能が一部異なる点を除けば上記第3実施形態のダイシング装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第3実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0085】
第5実施形態の測定用制御装置50Aは、既述の座標データ取得部55の他に、3次元データ生成部70及び断面プロファイル生成部72として機能する。
【0086】
3次元データ生成部70は、座標データ取得部55が取得した3次元座標データ群60に基づいて、公知の方法(上記特許文献1及び上記特許文献2参照)で加工溝9の3次元データ(3次元モデル)を生成する。
【0087】
断面プロファイル生成部72は、3次元データ生成部70が生成した加工溝9の3次元データから、任意の断面或いはユーザに指定された断面を切り出すことで、加工溝9の断面プロファイル64を生成する。この断面プロファイル64はデータ格納部58に格納される。これにより、装置制御用制御装置50の断面プロファイル参照部59がデータ格納部58内の断面プロファイル64を参照(取得でも可)することで、装置制御部52による各種評価及びダイシング加工の補正が実行される。
【0088】
以上のように第5実施形態のダイシング装置10では、断面プロファイル64の生成に係る全ての処理を測定用制御装置50Aに実行させることで、その処理内容に関係なく、装置制御用制御装置50の処理負荷を低減させることができる。なお、上記第4実施形態(図9参照)で説明したように、第5実施形態の測定用制御装置50Aを複数のダイシング装置10で共用してもよい。
【0089】
[第6実施形態]
図11は、第6実施形態のダイシング装置10のブロック図である。第6実施形態のダイシング装置10は、断面プロファイル演算部57が演算した断面プロファイル64に基づいて加工溝9の加工状態を示す所望の数値を演算して、この数値の演算結果に基づいて加工溝9が所望の形状になるように加工部16を制御する。
【0090】
図11に示すように、第6実施形態のダイシング装置10は、加工部16が研削砥石46を備え、さらに処理部54が数値演算部65として機能する点を除けば上記第1実施形態のダイシング装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0091】
研削砥石46は、ブレード21A,21Bのドレッシング作業及びツルーイング作業に用いられる。ドレッシング作業は、ブレード21A,21Bの切れ味が低下した場合に、ブレード21A,21Bの目詰まりを解消したり、摩耗した砥粒を脱落させて新たな切刃を創出したりする作業である。ツルーイング作業は、ブレード21A,21Bの先端面が半円形形状に変形した場合に、このブレード21A,21Bの先端面をフラットに整形したり、あるいは加工溝9の仕上がり形状が得られるようにブレード21A,21Bのブレード形状を成型したりする作業である。なお、ドレッシング作業及びツルーイング作業の具体的な方法については公知技術であるのでここでは説明を省略する。また、ドレッシング作業及びツルーイング作業でそれぞれ異なる種類の研削砥石46を用いてもよい。
【0092】
図12は、第6実施形態の数値演算部65による演算処理の一例を説明するための説明図である。図12及び既述の図11に示すように、数値演算部65は、断面プロファイル演算部57が演算した断面プロファイル64に基づいて加工溝9の加工状態を示す所望の数値を演算する。この所望の数値としては、例えば加工溝9の底面の凹凸を示す数値が挙げられる。ブレード21A,21Bによる加工溝9の切削加工では、加工溝9から切削屑が排出されずに、ブレード21A,21Bの先端面の中心部が偏摩耗(異常摩耗)してその先端面が略凹状になる場合がある。
【0093】
このようなブレード21A,21Bの偏摩耗が進行すると、バリなどによる加工溝9の品質悪化、ワークWの表面の汚れ状態の変化、及び切削屑の形状変化、ブレード21A,21Bの破損や加工溝9の溝内部を加工する後工程(ステップカット時)でのフルカットブレードの加工溝蛇行やブレード破損などが発生する。このため、数値演算部65により加工溝9の底面の凹凸を示す数値(例えば、底面中央部と底面端部の高低差)を演算して、加工溝9の底面の凹凸をモニタリングすることで、ブレード21A,21Bの偏摩耗を初期段階で検出可能である。
【0094】
なお、加工溝9の加工状態を示す所望の数値は、上述の加工溝9の底面の凹凸を示す数値に限定されるものではなく、例えば、加工溝9の幅、加工深さ、形成位置のずれ量、縁部及び側壁面の形状、断面形状及びその対称性などが例として挙げられる。また、加工溝9の切削加工として、ブレード21A,21Bの一方で第1加工溝を形成して、この第1加工溝の底面にブレード21A,21Bの他方で第2加工溝を形成するステップカットを実行する場合には、上述の所望の数値として、第2加工溝の幅、第1加工溝と第2加工溝の中心位置ずれ量などが例として挙げられる。
【0095】
第6実施形態の装置制御部52は、断面プロファイル演算部57が演算した断面プロファイル64と、数値演算部65が演算した数値の演算結果とに基づいて、ブレード21A,21Bの状態判定、加工溝9の加工品質の良否判定、デブリの検出、及び加工溝9の加工位置のずれ量の検出などの各種評価を実行する。
【0096】
この際に装置制御部52は、本発明の制御部として機能して、数値演算部65による数値の演算結果に基づいて加工溝9が所望の形状になるように加工部16を制御する。具体的には装置制御部52は、数値演算部65が演算した数値と、この数値の設計値(閾値範囲)とを比較して、この比較結果に基づいて加工溝9が所望の形状になるように加工部16を制御(フィードバック制御)する。
【0097】
例えば、装置制御部52は、数値演算部65が演算した数値が既述の図12で説明した加工溝9の底面の凹凸を示す数値であり、この数値が設計値(閾値範囲)を超える場合、すなわちブレード21A,21Bが偏摩耗している場合には、加工部16を制御して、研削砥石46を用いたブレード21A,21Bのドレッシング作業を実行する。また、装置制御部52は、ブレード21A,21Bの偏摩耗(変形)の程度が大きい場合には、加工部16を制御して、研削砥石46を用いたブレード21A,21Bのツルーイング作業を実行する。このように数値演算部65が演算した数値に基づいてブレード21A,21Bの偏摩耗を初期段階で検出することで、ドレッシング作業等でのブレード21A,21Bの摩耗量を減らすことができる。その結果、ブレード21A,21Bの寿命を延ばすことができる。
【0098】
なお、ダイシング装置10でドレッシング作業又はツルーイング作業を実行する代わりに、ドレッシング作業等によりブレード21A,21Bの形状を整えることをオペレータに促してもよい。
【0099】
図13は、本発明の加工装置の制御方法に係る、第6実施形態のダイシング装置10による加工溝9の断面プロファイル64の測定処理及びフィードバック制御の流れを示したフローチャートである。なお、図13のステップS3までは、既述の図6で説明した第1実施形態と同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0100】
図13に示すように、断面プロファイル64の演算処理(ステップS3)が完了すると、数値演算部65が断面プロファイル64に基づいて加工溝9の加工状態を示す所望の数値を演算する(ステップS3A、本発明の数値演算ステップに相当)。これにより、既述の図12に示した加工溝9の底面の凹凸を示す数値などが演算される。
【0101】
次いで、装置制御部52が、断面プロファイル演算部57が演算した断面プロファイル64と、数値演算部65が演算した数値の演算結果とに基づいて、既述の各種評価を実行する(ステップS4A)。この際に装置制御部52は、数値演算部65が演算した数値と、この数値の設計値(閾値範囲)とを比較した結果に基づいて、加工溝9が所望の形状になるように加工部16を制御(フィードバック制御)する(ステップS5、本発明の制御ステップに相当)。これにより、例えば既述の図12に示したように、ブレード21A,21Bの偏摩耗が発生している場合には、装置制御部52が加工部16を制御して、ブレード21A,21Bのドレッシング作業又はツルーイング作業を実行する。なお、ドレッシング作業又はツルーイング作業の実行をオペレータに促してもよい。
【0102】
以上のように第6実施形態のダイシング装置10では、断面プロファイル64に基づいて加工溝9の加工状態を示す所望の数値を演算することで、この数値の演算結果に基づいて加工溝9が所望の形状になるように加工部16を制御(フィードバック制御)することができる。
【0103】
なお、第6実施形態のダイシング装置10で実行される数値演算部65による数値の演算処理を、上記第2実施形態及び第3実施形態のダイシング装置10と同様に測定用制御装置50Aで実行してもよい。すなわち、第6実施形態の処理部54が実行する処理の一部又は全てを測定用制御装置50Aで実行してもよい。また、第6実施形態のダイシング装置10を上記第4実施形態と同様に複数設けて、さらに各ダイシング装置10で1つの測定用制御装置50Aを共用してもよい。さらに上記第5実施形態のダイシング装置10において、第6実施形態のダイシング装置10と同様に数値演算部65による数値の演算処理、及び装置制御部52による加工部16のフィードバック制御を実行してもよい。
【0104】
[第7実施形態]
図14は、第7実施形態のダイシング装置10のブロック図である。上記各実施形態では一対のブレード21A,21Bによる切削加工でワークWに形成された加工溝9の断面プロファイル64の測定処理を例に挙げて説明したが、ダイシング装置10の構成及び加工溝9の形成方法は特に限定されない。第7実施形態のダイシング装置10は、レーザ加工(アブレーション溝加工)処理によりワークWに加工溝9を形成して、この加工溝9の断面プロファイル64の測定処理等を実行する。
【0105】
図14に示すように、第7実施形態のダイシング装置10は、加工部16の代わりにレーザ加工部80を備える点を除けば、上記第1実施形態のダイシング装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。なお、第7実施形態ではレーザ加工部80と顕微鏡24とが別体に設けられているが、両者が一体に設けられていてもよい。
【0106】
図15は、レーザ加工部80の構成の一例を示した概略図である。図15に示すように、レーザ加工部80は、ワークWのストリートにレーザ光Lを集光する。この状態で搬送機構14によりテーブル31(ワークW)をX方向に移動させることで、ストリートに沿って加工溝9(縁切り溝9a及び中抜き溝9b)を形成するレーザ加工が実行される。
【0107】
ここで第6実施形態では、レーザ加工として公知の縁切り加工及び中抜き加工を同時に実行する(例えば特開2021-192922号公報参照)。縁切り加工は、2本のレーザ光L(スポット光)を用いてストリートに沿って互いに平行な2条の縁切り溝9aを形成するレーザ加工である。中抜き加工は、ライン状のレーザ光Lを用いて、縁切り加工で形成された2条の縁切り溝9aの間に中抜き溝9bを形成するレーザ加工である。なお、縁切り加工及び中抜き加工ではなく、通常のレーザ加工を実施して加工溝9を形成してもよい。
【0108】
レーザ加工部80は、レーザヘッド82と、ミラー84A,84Bと、光軸位置センサ85と、アッテネータ(Attenuator)であるATT86と、ビームエキスパンダ(Beam Expander)であるBE88と、集光レンズ94と、位置調整部96と、集塵部98と、集光位置観察を行うカメラ(エリアセンサ等)であるLSカメラ100と、クリーニングユニット102と、パワーメータ(Power Meter)であるPM104と、ビームプロファイラ106と、を備える。
【0109】
レーザヘッド82は、レーザ光L(例えばパルスレーザ光)を出射する。このレーザ光Lの条件は、例えば、光源:UV(紫外線)-パルスレーザ、波長:400nm以下、繰り返し周波数:1~100kHz、及び平均出力:0.5~10ワットであるが、この条件に特に限定されるものではない。
【0110】
ミラー84A,84Bは、少なくとも回転可能に設けられている。なお、ミラー84A,84Bがその位置を可変可能に設けられていてもよい。光軸位置センサ85は、例えばPSD(Position Sensitive Detector)であり、ミラー84Aを通過したレーザ光Lの光軸位置とミラー84Bを通過したレーザ光Lの光軸位置とをそれぞれ検出する。光軸位置センサ85の検出結果に基づいてミラー84A,84Bの角度等を調整することで、レーザ光Lを下流の光学素子(ここではATT86)に垂直に入射させることができる。
【0111】
ATT86は、回転可能に設けられている。このATT86は、ミラー84A,84Bを経て入射したレーザ光Lを適正なレベル(振幅)に減衰させる。
【0112】
BE88は、直動可能及び回動可能に設けられている。このBE88は、ATT86から入射したレーザ光Lのビーム径を拡大又は縮小させる。これにより、縁切り加工及び中抜き加工の加工点でのレーザ光Lのビームプロファイルを変更及び調整可能である。
【0113】
集光レンズ94は、不図示のZ駆動部によりZ方向に直動可能に設けられている。また、集光レンズ94は、位置調整部96によりXY方向に直動可能に保持されている。集光レンズ94は、縁切り加工用の2本のレーザ光L及び中抜き加工用のライン状のレーザ光LをそれぞれワークWのストリートに集光させる。集光レンズ94のZ方向位置を調整することで、各レーザ光Lのフォーカス調整が可能になる。その結果、例えばワークWのストリートに対してジャストフォーカス位置でレーザ加工を実行したり或いはオフセット位置でレーザ加工を実行したりすることができる。また、集光レンズ94のXY方向位置を調整することで、縁切り加工及び中抜き加工の加工点の位置を調整することができる。
【0114】
集塵部98は、集塵ノズル(図示は省略)を有しており、レーザ加工により発生したデブリを集塵ノズルから吸引する。この集塵ノズルの位置を調整することで、集光レンズ94へのデブリの付着を低減可能である。
【0115】
LSカメラ100は、縁切り加工及び中抜き加工の加工点を撮影する。クリーニングユニット102は、集光レンズ94の汚れを除去する。
【0116】
PM104は、縁切り加工及び中抜き加工の加工点でのレーザ光Lのパワーを測定する。PM104の測定結果に基づいてATT86によるレーザ光Lの減衰率を調整することで、加工点でのレーザ光Lのエネルギーを所望の値に調整可能である。
【0117】
ビームプロファイラ106は、縁切り加工及び中抜き加工の加工点でのレーザ光Lのビームエネルギー分布を測定する。これにより、縁切り加工用あるいは中抜き加工用のレーザ光Lのビーム径、位置、及びエネルギー分布の偏りを測定可能である。
【0118】
図14に戻って、第7実施形態の装置制御用制御装置50の装置制御部52は、ワークWのレーザ加工時には、レーザ加工部80の各部を制御して公知のアライメント及び加工溝9の形成(レーザ加工)を実行する(特開2021-192922号公報参照)。また、装置制御部52は、加工溝9の断面プロファイル64の測定時には、上記第1実施形態と同様に顕微鏡24等を制御して、顕微鏡24を用いた加工溝9の形状測定を実行する。
【0119】
第7実施形態の装置制御用制御装置50の処理部54は、上記第6実施形態と同様に数値演算部65として機能する点を除けば上記第1実施形態の処理部54と基本的に同じであり、顕微鏡24による加工溝9の形状測定結果に基づいて加工溝9の断面プロファイル64を生成する。
【0120】
図16及び図17は、第7実施形態の数値演算部65による数値の演算処理の一例を説明するための説明図である。第7実施形態の数値演算部65は、断面プロファイル演算部57が演算した断面プロファイル64に基づいて、レーザ加工により形成された加工溝9(縁切り溝9a及び中抜き溝9b)の加工状態を示す所望の数値を演算する。
【0121】
図16に示すように、第7実施形態における所望の数値の一例として、加工溝9の底面のX方向(加工送り方向、長手方向)における凹凸を示す数値が挙げられる。レーザ加工時には、レーザヘッド82から出射されるレーザ光Lの出力異常、集光レンズ94による縁切り加工用及び中抜き加工用のレーザ光Lのフォーカス異常、及びレーザ光L(パルスレーザ光)のパルスピッチ異常により、加工溝9の底面のX方向に沿って凹凸が発生し、この凹凸が断面プロファイル64にも反映される。このため、数値演算部65により加工溝9の底面のX方向における凹凸を示す数値(例えば、図中のドット表示で示した凹凸のばらつき範囲64S)を演算することで、レーザ光Lの出力異常、フォーカス異常、及びパルスピッチ異常等を検出可能である。
【0122】
また、図17に示すように、第7実施形態における所望の数値の他の例として、加工溝9の断面形状の偏りを示す数値が挙げられる。レーザ加工時には、中抜き加工用のレーザ光Lの位置変動、レーザ光Lの光軸変動、縁切り加工用及び中抜き加工用のレーザ光Lの位置変動、及びレーザ光Lのビーム径変動により、加工溝9の断面形状の偏りが発生する。このため、数値演算部65により加工溝9の断面形状の偏りを示す数値、例えば加工溝9のY方向両端部の深さD1,D2の比を演算することで、レーザ光Lの位置変動、光軸変動、及びビーム径変動等を検出可能である。
【0123】
図14に戻って、第7実施形態の装置制御部52は、断面プロファイル演算部57が演算した断面プロファイル64と、数値演算部65が演算した数値の演算結果とに基づいて、レーザ加工部80の各部の状態判定、加工溝9の加工品質の良否判定、デブリの検出、及び加工溝9の加工位置のずれ量の検出などの各種評価を実行する。
【0124】
また、第7実施形態の装置制御部52は、第6実施形態の装置制御部52と同様に、数値演算部65による数値の演算結果に基づいて加工溝9が所望の形状になるようにレーザ加工部80を制御(フィードバック制御)する。
【0125】
例えば、装置制御部52は、数値演算部65が演算した数値が既述の図16で説明した加工溝9の底面のX方向における凹凸を示す数値であり、この数値が設計値(閾値範囲)を超える場合には既述のレーザ光Lの出力異常、フォーカス異常、及びパルスピッチ異常の少なくともいずれか1つが発生したと判定する。
【0126】
そして、装置制御部52は、レーザ光Lの出力異常が発生した場合には、PM104の測定結果に基づいてATT86でのレーザ光Lの減衰率を調整するパワーキャリブレーションを実行して、縁切り加工及び中抜き加工の加工点でのレーザ光Lのエネルギーを所望の値に調整する。また、装置制御部52は、レーザ光Lのフォーカス異常が発生した場合には、集光レンズ94のZ位置を調整することで、縁切り加工用及び中抜き加工用のレーザ光Lの集光位置を適正に調整する。
【0127】
さらに、装置制御部52は、レーザ光Lのパルスピッチの異常が発生した場合には、レーザ加工時のX駆動部35によるテーブル31のX方向の移動速度(加工送り速度)、及びレーザヘッド82から出射されるレーザ光Lの周波数を調整する。なお、この場合には、オペレータによるX駆動部35及びレーザヘッド82の点検を促してもよい。
【0128】
装置制御部52は、数値演算部65が演算した数値が既述の図17で説明した加工溝9の断面形状の偏りを示す数値であり、この数値が設計値(閾値範囲)を超える場合には既述のレーザ光Lの位置変動、光軸変動、及びビーム径変動の少なくともいずれか1つが発生したと判定する。
【0129】
そして、装置制御部52は、中抜き加工用のレーザ光Lの位置変動が発生した場合には、BE88を制御してレーザ光Lのビーム径を調整することで、中抜き加工用のレーザ光Lの位置やビームプロファイルを整える。また、装置制御部52は、レーザ光Lの光軸変動が発生した場合には、ミラー84A,84Bの角度調整を実行することで、レーザ光LをATT86に垂直入射させる。
【0130】
さらに、装置制御部52は、縁切り加工用及び中抜き加工用のレーザ光Lの位置変動が発生した場合には、位置調整部96により集光レンズ94のXY方向位置を調整することで、縁切り加工用及び中抜き加工用のレーザ光Lの加工点の位置を適正に調整する。さらにまた、レーザ光Lのビーム径変動が発生した場合には、BE88を制御してレーザ光Lのビーム径を調整することで、縁切り加工用及び中抜き加工用のレーザ光Lのビーム径を適正に調整する。
【0131】
なお、第7実施形態のダイシング装置10による加工溝9の断面プロファイル64の測定処理及びフィードバック制御の流れは、既述の図13で説明した第6実施形態と基本的に同じであるので、ここでは具体的な説明は省略する。
【0132】
以上のようにレーザ加工を実行する第7実施形態のダイシング装置10においても2次元投影データ62から断面プロファイル64を演算することで、上記第1実施形態と同様に装置制御用制御装置50の処理負荷低減と、加工溝9の確度の高い断面プロファイル64の取得とを実現可能である。また、第7実施形態のダイシング装置10においても上記第6実施形態と同様に断面プロファイル64に基づいて加工溝9の加工状態を示す所望の数値を演算することで、加工溝9が所望の形状になるようにレーザ加工部80を制御(フィードバック制御)することができる。
【0133】
なお、上記第2実施形態及び第3実施形態のダイシング装置10と同様に、第7実施形態の処理部54が実行する処理の一部又は全てを測定用制御装置50Aで実行してもよい。また、第7実施形態のダイシング装置10を上記第4実施形態と同様に複数設けて、さらに各ダイシング装置10で1つの測定用制御装置50Aを共用してもよい。さらに上記第5実施形態のダイシング装置10において、第7実施形態のダイシング装置10と同様にレーザ加工を実行してもよい。
【0134】
[その他]
上記各実施形態では切削加工又はレーザ加工によりワークWに形成された加工溝9の断面プロファイル64の測定処理を例に挙げて説明したが、ダイシング装置10の構成及び加工溝9(ハーフカット溝を含む)の形成方法は特に限定されない。
【0135】
上記第2実施形態から上記第4実施形態では測定用制御装置50Aの数が1つであるが、測定用制御装置50Aが複数設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0136】
9…加工溝、9a…縁切り溝、9b…中抜き溝、10…ダイシング装置、10A…筐体
、12…ロードポート、14…搬送機構、16…加工部、18…洗浄部、21A…ブレード、21B…ブレー、22A…スピンドル、22B…スピンドル、23…顕微鏡、24…顕微鏡、31…テーブル、31a…ワーク保持面、32…Xベース、34…Xガイド、35…X駆動部、36…Xキャリッジ、37…回転ユニット、41…Yベース、42…Yガイド、43…Yキャリッジ、44…Zキャリッジ、46…研削砥石、50…装置制御用制御装置、50A…測定用制御装置、52…装置制御部、54…処理部、55…座標データ取得部、56…投影データ生成部、57…断面プロファイル演算部、58…データ格納部、59…断面プロファイル参照部、60…3次元座標データ、61…2次元平面、62…2次元投影データ、64…断面プロファイル、65…数値演算部、70…3次元データ生成部、72…断面プロファイル生成部、80…レーザ加工部、82…レーザヘッド、84A…ミラー、84B…ミラー、85…光軸位置センサ、86…アッテネータ(ATT)、88…ビームエキスパンダ(BE)、90…ライン素子、92…分岐素子、94…集光レンズ、96…位置調整部、98…集塵部、100…ラインスキャン(LS)カメラ、102…クリーニングユニット、104…パワーメータ(PM)、106…ビームプロファイラ、CA…回転軸、CP1,CP2…切り出し位置、F…フレーム、PC50…装置制御用PC、PC50A…測定用PC、W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18