(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114435
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】プラズマ測定方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240816BHJP
H05H 1/00 20060101ALI20240816BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20240816BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20240816BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/00 A
H05H1/46 B
C23C16/52
C23C16/50
H01L21/302 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020210
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】芦田 光利
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA05
2G084CC16
2G084CC33
2G084DD19
2G084DD38
2G084DD42
2G084DD55
2G084DD56
2G084DD62
2G084FF15
2G084HH02
2G084HH16
2G084HH19
2G084HH20
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH27
2G084HH44
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030JA19
4K030JA20
4K030KA39
4K030KA41
5F004BB13
5F004BB14
5F004BB22
5F004BB28
5F004BD01
5F004CA06
5F004CB06
5F004DA23
5F004DA25
5F004DA26
(57)【要約】
【課題】プラズマ状態をより精度良く測定することを提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置に設けられたプローブ装置と、交流電圧を出力する信号発信器を含む測定回路と、を使用してプラズマ状態を測定するプラズマ測定方法であって、(A)前記プラズマ処理装置にプラズマが生成されていない状態において、前記信号発信器から前記プローブ装置へ前記交流電圧を出力したときに前記測定回路にて電流の大きさと位相とを含む第1電流を測定する工程と、(B)前記プラズマ処理装置にプラズマが生成された状態において、前記信号発信器から前記プローブ装置へ前記交流電圧を出力したときに前記測定回路にて電流の大きさと位相とを含む第2電流を測定する工程と、(C)測定した前記第1電流及び前記第2電流に含まれる電流の大きさと位相とを用いてベクトル演算により前記プラズマに流れる電流を測定する工程と、を有するプラズマ測定方法が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置に設けられたプローブ装置と、交流電圧を出力する信号発信器を含む測定回路と、を使用してプラズマ状態を測定するプラズマ測定方法であって、
(A)前記プラズマ処理装置にプラズマが生成されていない状態において、前記信号発信器から前記プローブ装置へ前記交流電圧を出力したときに前記測定回路にて電流の大きさと位相とを含む第1電流を測定する工程と、
(B)前記プラズマ処理装置にプラズマが生成された状態において、前記信号発信器から前記プローブ装置へ前記交流電圧を出力したときに前記測定回路にて電流の大きさと位相とを含む第2電流を測定する工程と、
(C)測定した前記第1電流及び前記第2電流に含まれる電流の大きさと位相とを用いてベクトル演算により前記プラズマに流れる電流を測定する工程と、
を有するプラズマ測定方法。
【請求項2】
前記(A)の工程は、測定した前記第1電流の位相に基づき前記測定回路にて生じる位相のずれを算出し、
前記(C)の工程は、前記第2電流の大きさから前記第1電流の大きさと、前記位相のずれと、を減算することにより、前記プラズマに流れる電流を測定する、
請求項1に記載のプラズマ測定方法。
【請求項3】
前記(C)の工程は、前記測定回路にて測定される前記第1電流と前記交流電圧との直交関係に基づき、前記位相のずれを算出する、
請求項2に記載のプラズマ測定方法。
【請求項4】
更に、(D)測定した前記プラズマに流れる電流に基づき、前記プラズマ状態を示すプラズマの電子密度、電子温度、又はイオン密度の少なくともいずれかを導出する工程を有する、
請求項1に記載のプラズマ測定方法。
【請求項5】
前記(D)の工程は、測定した前記プラズマに流れる電流から周波数解析により前記交流電圧の周波数の1倍波の第1電流と、前記交流電圧の周波数の2倍波の第1電流とを算出し、
算出した前記1倍波の第1電流と前記2倍波の第1電流とを使用して前記プラズマの電子密度、前記電子温度、又は前記イオン密度の少なくともいずれかを導出する、
請求項4に記載のプラズマ測定方法。
【請求項6】
前記(A)の工程は、前記プラズマが生成されていない状態において、前記第1電流を定期的又は不定期に繰り返し測定する、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ測定方法。
【請求項7】
前記(A)の工程は、測定した最新の前記第1電流の位相に基づき前記位相のずれを算出する、
請求項2に記載のプラズマ測定方法。
【請求項8】
前記プローブ装置は、前記プラズマ処理装置が有する処理容器の壁に形成された開口部に、真空空間と大気空間の間をシールするシール部材を介して取り付けられる、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ測定方法。
【請求項9】
プローブ装置と、交流電圧を出力する信号発信器を含む測定回路と、通信部と制御部とを有する制御装置と、を備えるプラズマ処理装置であって、
前記通信部は、
前記プラズマ処理装置にプラズマが生成されていない状態において、前記信号発信器から前記プローブ装置へ前記交流電圧を出力したときに前記測定回路にて測定された、電流の大きさと位相とを含む第1電流を受信し、
前記プラズマ処理装置にプラズマが生成された状態において、前記信号発信器から前記プローブ装置へ前記交流電圧を出力したときに前記測定回路にて測定された、電流の大きさと位相とを含む第2電流を受信し、
前記制御部は、
受信した前記第1電流及び前記第2電流に含まれる電流の大きさと位相とを用いたベクトル演算により前記プラズマに流れる電流を測定し、
測定した前記プラズマに流れる電流に基づきプラズマ状態を測定する、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ測定方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、処理容器の壁に形成された開口部に取り付けられるアンテナ部と、アンテナ部に接続される電極と、誘電体から形成され、アンテナ部を周囲から支持する誘電体支持部と、を有するプローブ装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ状態をより精度良く測定することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、プラズマ処理装置に設けられたプローブ装置と、交流電圧を出力する信号発信器を含む測定回路と、を使用してプラズマ状態を測定するプラズマ測定方法であって、(A)前記プラズマ処理装置にプラズマが生成されていない状態において、前記信号発信器から前記プローブ装置へ前記交流電圧を出力したときに前記測定回路にて電流の大きさと位相とを含む第1電流を測定する工程と、(B)前記プラズマ処理装置にプラズマが生成された状態において、前記信号発信器から前記プローブ装置へ前記交流電圧を出力したときに前記測定回路にて電流の大きさと位相とを含む第2電流を測定する工程と、(C)測定した前記第1電流及び前記第2電流に含まれる電流の大きさと位相とを用いてベクトル演算により前記プラズマに流れる電流を測定する工程と、を有するプラズマ測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、プラズマ状態をより精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面模式図。
【
図3】一実施形態に係る計測系及び制御装置の機能構成例を示す図。
【
図4】測定した電流信号及び信号の周波数解析結果の一例を示す図。
【
図5】一実施形態に係る計測系の等価回路の一例を示す図。
【
図6】一実施形態に係るプラズマ測定方法を説明するための図。
【
図7】一実施形態に係るプラズマ測定方法(準備)の一例を示すフローチャート。
【
図8】一実施形態に係るプラズマ測定方法の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[プラズマ処理装置]
図1に、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置100の断面図の一例を示す。プラズマ処理装置100は、半導体ウェハを一例とする基板Wを収容する処理容器1を有する。プラズマ処理装置100は、マイクロ波によって処理容器1の天壁10の下面に形成される表面波プラズマにより、基板Wに対してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の一例である。プラズマ処理としては、プラズマを用いた成膜処理、エッチング処理またはアッシング処理等が例示される。
【0010】
プラズマ処理装置100は、処理容器1とマイクロ波プラズマ源2と制御装置3とを有する。処理容器1は、気密に構成されたアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料からなる略円筒状の容器であり、接地されている。
【0011】
処理容器1は、天壁10を有し、内部に基板Wをプラズマ処理する空間(プラズマ生成空間U)を形成する。天壁10は、円盤状であり、処理容器1の上部開口を塞ぐ蓋体である。処理容器1と天壁10との接触面には支持リング129が設けられ、これにより、処理容器1の内部は気密にシールされている。天壁10は、アルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料から形成されている。
【0012】
マイクロ波プラズマ源2は、マイクロ波出力部30とマイクロ波伝送部40とマイクロ波放射機構50とを有する。マイクロ波出力部30は、複数経路に分配してマイクロ波を出力する。マイクロ波は、マイクロ波伝送部40とマイクロ波放射機構50とを通って処理容器1の内部に導入される。処理容器1内に供給されたガスは、導入されたマイクロ波の電界により励起され、これにより表面波プラズマが形成される。
【0013】
処理容器1内には基板Wを載置する載置台11が設けられている。載置台11は、処理容器1の底部中央に絶縁部材12aを介して立設された筒状の支持部材12により支持されている。載置台11及び支持部材12を構成する材料としては、表面をアルマイト処理(陽極酸化処理)したアルミニウム等の金属や内部に高周波用の電極を有した絶縁部材(セラミックス等)が例示される。載置台11には、基板Wを静電吸着するための静電チャック、温度制御機構、基板Wの裏面に熱伝達用のガスを供給するガス流路等が設けられてもよい。
【0014】
載置台11には、整合器13を介して高周波バイアス電源14が接続されている。高周波バイアス電源14から載置台11に高周波電力が供給されることにより、基板W側にプラズマ中のイオンが引き込まれる。なお、高周波バイアス電源14はプラズマ処理の特性によっては設けなくてもよい。
【0015】
処理容器1の底部には排気管15が接続されており、排気管15には真空ポンプを含む排気装置16が接続されている。排気装置16を作動させると処理容器1内が排気され、これにより、処理容器1内が所定の真空度まで高速に減圧される。処理容器1の側壁には、基板Wの搬入出を行うための搬入出口17と、搬入出口17を開閉するゲートバルブ18とが設けられている。
【0016】
マイクロ波伝送部40は、マイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波を伝送する。
図2は、
図1のA-A断面を示し、プラズマ処理装置100の天壁の下面例を示す。
図2を参照すると、マイクロ波伝送部40内の中央マイクロ波導入部43bは、天壁10の中央に配置され、6つの周縁マイクロ波導入部43aは、天壁10の周辺に円周方向に等間隔に配置される。中央マイクロ波導入部43b及び6つの周縁マイクロ波導入部43aは、それぞれに対応して設けられる、
図1に示すアンプ部42から出力されたマイクロ波をマイクロ波放射機構50に導入する機能およびインピーダンスを整合する機能を有する。以下、周縁マイクロ波導入部43aおよび中央マイクロ波導入部43bを総称して、マイクロ波導入部43ともいう。
【0017】
図1及び
図2に示すように、外周側の6つの誘電体窓123は、6つの周縁マイクロ波導入部43aの下方にて天壁10の内部に配置されている。また、中央の1つの誘電体窓133は、中央マイクロ波導入部43bの下方にて天壁10の内部に配置されている。なお、周縁マイクロ波導入部43a及び誘電体窓123の個数は6つに限らず、2つ以上であり得る。ただし、周縁マイクロ波導入部43aの個数は3つ以上が好ましく、例えば3つ~6つであってもよい。
【0018】
図1に示すマイクロ波放射機構50は、遅波板121,131、スロット122,132及び誘電体窓123,133を有する。遅波板121,131は、マイクロ波を透過させる円盤状の誘電体から形成され、天壁10の上面に配置されている。遅波板121,131は、比誘電率が真空よりも大きい、例えば、石英、アルミナ(Al
2O
3)等のセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により形成されている。これにより、遅波板121,131内を透過するマイクロ波の波長を、真空中を伝搬するマイクロ波の波長よりも短くしてスロット122,132を含むアンテナを小さくする機能を有する。
【0019】
遅波板121,131の下には、天壁10に形成されたスロット122,132を介して誘電体窓123,133が天壁10の開口の裏面に当接されている。誘電体窓123、133は、例えば、石英、アルミナ(Al2O3)等のセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により形成されている。誘電体窓123,133は、天壁10に形成された開口の厚み分だけ天井面から凹んだ位置に設けられ、マイクロ波をプラズマ生成空間Uに供給する。
【0020】
周縁マイクロ波導入部43aおよび中央マイクロ波導入部43bは、筒状の外側導体52およびその中心に設けられた棒状の内側導体53を同軸状に配置する。外側導体52と内側導体53の間には、マイクロ波電力が給電され、マイクロ波放射機構50に向かってマイクロ波が伝搬するマイクロ波伝送路44となっている。
【0021】
周縁マイクロ波導入部43aおよび中央マイクロ波導入部43bには、スラグ54と、その先端部に位置するインピーダンス調整部材140とが設けられている。スラグ54を移動させることにより、処理容器1内の負荷(プラズマ)のインピーダンスをマイクロ波出力部30におけるマイクロ波電源の特性インピーダンスに整合させる機能を有する。インピーダンス調整部材140は、誘電体で形成され、その比誘電率によりマイクロ波伝送路44のインピーダンスを調整するようになっている。
【0022】
天壁10には、シャワー構造のガス導入部21が設けられている。ガス供給源22から供給されるガスは、ガス供給配管111を介してガス拡散室62からガス導入部21を通り、処理容器1内にシャワー状に供給される。ガス導入部21は、天壁10に形成された複数のガス供給孔60からガスを供給するガスシャワーヘッドの一例である。ガスの一例としては、例えばArガス等のプラズマ生成用のガスや、例えばO2ガスやN2ガス等の高エネルギーで分解させたいガス、シランガス等の処理ガスが挙げられる。
【0023】
プラズマ処理装置100の各部は、制御装置3により制御される。制御装置3は、マイクロプロセッサ4、ROM(Read Only Memory)5、RAM(Random Access Memory)6を有している。ROM5やRAM6にはプラズマ処理装置100のプロセスシーケンス及び制御パラメータであるプロセスレシピが記憶されている。マイクロプロセッサ4は、プロセスシーケンス及びプロセスレシピに基づき、プラズマ処理装置100の各部を制御する。また、制御装置3は、通信インターフェース(I/F)7を有し、他機器との通信が可能になっている。また、制御装置3は、ディスプレイ8を有し、プロセスシーケンス及びプロセスレシピに従って所定の制御を行う際の結果の表示が可能になっている。
【0024】
かかる構成のプラズマ処理装置100においてプラズマ処理を行う際には、まず、基板Wが、搬送アーム(図示せず)上に保持された状態で、開口したゲートバルブ18から搬入出口17を通り処理容器1内に搬入される。基板Wは、載置台11の上方まで搬送されると、搬送アームからプッシャーピンに移され、プッシャーピンが降下することにより載置台11に載置される。ゲートバルブ18は基板Wを搬入後に閉じられる。処理容器1の内部の圧力は、排気装置16により所定の真空度に保持される。処理ガスがガス導入部21からシャワー状に処理容器1内に導入される。マイクロ波導入部43を介してマイクロ波放射機構50から放射されたマイクロ波が天壁の内部表面である下面近傍を伝搬する。表面波マイクロ波の電界により、ガスが励起され、処理容器1内の天壁下のプラズマ生成空間Uに生成された表面波プラズマによって基板Wにプラズマ処理が施される。
【0025】
[プローブ装置]
プローブ装置70について、
図1及び
図3を参照しながら説明を続ける。
図3は、一実施形態に係る計測系及び制御装置の機能構成例を示す図である。
図1に示すように、処理容器1の側壁には円周方向に1又は複数の開口部1bが形成され、1又は複数のプローブ装置70が真空空間と大気空間の間をシールするシール部材(図示せず)を介して取り付けられている。
【0026】
プローブ装置70の先端面と処理容器1の壁の開口部1b付近の裏面には、所定の幅の隙間が形成されている。その隙間は、プローブ装置70が処理容器1の壁とDC的に接続されない程度に広い空間であって、プラズマやガスが入り込まない程度に狭い空間に設計される。ただし、プローブ装置70は、載置台に形成された開口部にシール部材を介して取り付けられてもよい。
【0027】
図3に示すように、プラズマ状態を測定する計測系は、プローブ装置70及び測定回路85から構成される。測定回路85は、モニタ装置80、コンデンサ72及び同軸ケーブル81を有する。モニタ装置80は、制御装置3に通信可能に接続されている。
【0028】
プローブ装置70は、プラズマ処理装置100の外部にて同軸ケーブル81によりモニタ装置80に接続されている。モニタ装置80は、信号発信器82を有し、信号発信器82は、同軸ケーブル81に所定周波数の交流電圧の信号を出力する。交流電圧の信号は、同軸ケーブル81を伝送され、プローブ装置70に交流電圧が印加される。コンデンサ72は同軸ケーブル81に接続され、交流電圧の信号をプローブ装置70に伝送し、直流電圧の信号を遮断する。これにより、モニタ装置80は交流電圧の信号のみをプラズマ側から受信する。
【0029】
プローブ装置70は、プラズマ生成空間Uにて生成されるプラズマをセンシングする。プローブ装置70は、プラズマ側に伝送する信号に対して、プラズマ側に流れた電流信号を検出し、モニタ装置80に送信する。プラズマ側に流れた電流信号は、モニタ装置80から制御装置3に送信され、制御装置3の通信部32により受信される。受信信号の電流値は、記憶部31に記憶される。制御部33の解析部34は、受信信号の電流値をFFT(高速フーリエ変換)解析する。制御部33の算出部35は、解析結果に基づき後述するプラズマ電子温度Teやプラズマ電子密度Neを算出する。これにより、プラズマ状態を正確に推定することができる。
【0030】
なお、記憶部31は、
図1に示すROM5又はRAM6により実現される。通信部32は、通信インターフェース7により実現される。制御部33の解析部34及び算出部35は、マイクロプロセッサ4により実現される。
【0031】
[プローブ装置での測定]
以上に説明した、本実施形態のプローブ装置70により測定し、モニタ装置80により受信した電流信号及び電流信号の周波数解析(FFT)結果の一例を
図4に示す。
図4(a)は電流信号の一例である電流値Iの波形を示す。測定された電流信号(電流値I)は、モニタ装置80から制御装置3に送信され、制御装置3の通信部32により受信される。電流信号は、制御装置3の解析部34によりFFT(高速フーリエ変換)される。これにより、
図4(b)に示すように、各周波数に対する振幅成分及び位相成分に変換される。プラズマでは、所定の電圧に対して指数関数的に電流が流れる。測定した電流値Iには、基本周波数を有する基本波(1倍波)の成分と、基本波に対して周波数が2倍、3倍及び4倍等の高調波成分が含まれている。
【0032】
図4(b)の基本波の振幅成分は、交流電圧の周波数の1倍波の第1電流を示す。基本波に対して周波数が2倍の高調波成分は、交流電圧の周波数の2倍波の第1電流を示す。以下のプラズマ電子密度N
e、プラズマ電子温度T
eの算出では、1倍波の第1電流及び2倍波の第1電流を使用し、プラズマ電子密度N
e、プラズマ電子温度T
eの算出精度にほぼ影響を与えない3倍波、4倍波、及びそれ以上の高調波の第1電流は使用しない。
【0033】
[プラズマ測定]
図5は、一実施形態に係る計測系(測定回路85)の等価回路の一例を示す図である。
図5(a)(b)のプローブ装置70を通る点線の右側は処理容器1内を示し、点線の左側は測定回路85の等価回路である。本実施形態に係るプラズマ測定方法(準備段階)では、
図5(a)に示すように処理容器1にプラズマが生成されていない状態において、信号発信器82からプローブ装置70に交流電圧(以下、「交流電圧Vt」と表記する。)を印加する。このときプローブ装置70は、測定回路85に流れる電流Itを測定する。計測系の構造上、測定回路85が有する浮遊容量Csに浮遊電流(以下、「浮遊電流Is」と表記する。)が流れる。
図5(a)に示すように、プラズマが生成されていない状態では、測定回路85にて測定した電流Itは、浮遊容量Csに流れる浮遊電流Isに等しい。なお、電流Itは、測定回路85に設けた図示しない電圧計で抵抗成分(図示せず)を通して電圧降下を計測することにより得る。
【0034】
このようにしてプラズマが生成されていない状態においてプローブ装置70に交流電圧Vtを印加すると、測定回路85にて電流Itが測定される。このとき測定された電流Itは、電流の大きさ(振幅)と位相とを含む第1電流の一例であり、
図5(a)に示すようにプラズマが生成されていない状態では浮遊電流Isに等しい。測定回路85にて測定される電流Itは、(1)式により示される。
【0035】
【数1】
は電子の平均速度、Aはプローブ装置70のプラズマに接している面積(つまり、開口部1bの面積)、V
Biasはプローブ印加電圧、Φ
pはプラズマ電位、T
eはプラズマの電子温度、u
Bはボーム速度である。また、V
dcは自己バイアス電圧、V
0はプラズマにかかる電圧Vpに等しい。V
0はコンデンサ72の容量成分Caにおける電圧Vaを考慮し、プローブ装置70に印加した交流電圧Vtから電圧Vaを減算した値となる。
【0036】
(1)式を、第1種変形ベッセル関数Ikを用いて変形し、測定した電流Itを(2)式のようにDC成分とAC成分に分離する。
【0037】
【数2】
(2)式の右辺の上段の項は、測定した電流ItのDC成分であり、(2)式の右辺の下段の項は、cos(kωt)に変数を掛け合わせた電流ItのAC成分である。測定した電流ItのDC成分は、プローブ装置70とプラズマとの間に流れる直流電流を示す。本実施形態では、
図3に示すようにプローブ装置70と同軸ケーブル81とは、コンデンサ72によりDC的に接続されていないため、(2)式の電流ItのDC成分は0とする。その結果、(3)式が導かれる。
【0038】
【数3】
(3)式をフーリエ級数展開すると(4)式が得られる。
【0039】
【数4】
(4)式の左辺は、実測値であり、1倍波(1ω)の電流i
1ωの振幅と2倍波(2ω)の電流i
2ωの振幅の絶対値の比を示す。1倍波(1ω)の電流i
1ωの大きさ及び2倍波(2ω)の電流i
2ωの大きさは、制御部33の解析部34が電流ItをFFT解析することにより得られる(
図4参照)。|i
1ω|は、測定した電流Itの1倍波の電流値(i
1ω)の絶対値であり、|i
2ω|は、測定した電流Itの2倍波の電流値(i
2ω)の絶対値である。(4)式の右辺は、電流Itを第1種変形ベッセル関数で展開したときの1倍波と2倍波との比を示す。I
1は一次のベッセル関数であり、I
2は二次のベッセル関数である。
【0040】
更に、1倍波における電流i1ωのAC成分を(5)式に示す。
【0041】
【数5】
(5)式を用いて算出した1倍波における電流i
1ωの絶対値を、(4)式の近似式である(6)式の|i
1ω|に代入することで、プラズマ中のイオン密度n
iが算出される。イオン密度n
iはプラズマ電子密度N
eに等しい。以上から、プラズマ電子密度N
eが算出される。
【0042】
【数6】
eは電子素量、u
Bはボーム速度、I
0(V
o/T
e)は零次のベッセル関数、I
1(V
o/T
e)は一次のベッセル関数を示す。なお、Aはプローブ装置70のプラズマに接している面積(つまり、開口部1bの面積)、V
0はプラズマにかかる電圧Vpである。
【0043】
よって、プラズマにかかる電圧Vp(プラズマ電圧Vp)とプラズマに流れる電流Ip(プラズマ電流Ip)との関係を正確に求めれば、(6)式を使用してプラズマ電子密度Ne、プラズマ電子温度Teを精度良く測定することができる。
【0044】
そこで、
図5(b)に示すように処理容器1にプラズマが生成された状態において、信号発信器82からプローブ装置70に交流電圧Vtを印加する。プローブ装置70は直流電圧を使用しないためプラズマ処理中も測定できる。このときプローブ装置70は、測定回路85に流れる電流Itを測定する。
【0045】
図5(b)に示すように、計測系の構造上、測定回路85が有する浮遊容量Csに浮遊電流Isが流れる。また、プラズマが生成されている状態では、プラズマ電流Ipが流れる。よって、測定回路85にて測定した電流Itは、浮遊容量Csに流れる浮遊電流Isとプラズマ電流Ipとの和に等しい。
【0046】
このようにしてプラズマが生成されている状態においてプローブ装置70に交流電圧Vtを印加すると、測定回路85にて電流Itが測定される。このとき測定された電流Itは、電流の大きさと位相とを含む第2電流の一例であり、浮遊電流Isとプラズマ電流Ipとの和に等しい。
【0047】
そのため、
図5(b)に示すプラズマが生成されている状態において測定された電流It(第2電流)から、
図5(a)に示すプラズマが生成されていない状態おいて測定された電流It(第1電流)に等しい浮遊電流Isを減算する。これにより、プラズマ電流Ipを算出することができる。
【0048】
つまり、
図6(b)に示すように、測定した電流It(第2電流)に含まれる電流の大きさと位相及び浮遊電流Is(第1電流)に含まれる電流の大きさと位相とを用いてベクトル演算により電流Itから浮遊電流Isを引いてプラズマ電流Ipを算出する。
【0049】
また、コンデンサ72の容量成分Caにかかる電圧Vaは、プラズマ電流Ipに(1/jωC、ここではC=Ca)を乗算したものである。よって、プラズマ電圧Vpは、信号発信器82からプローブ装置70に印加された交流電圧Vtからコンデンサ72の容量成分Caにかかる電圧Vaを減算することにより算出される。これにより、プラズマにかかる電圧Vpとプラズマ電流Ipとの関係を求めることができる。
【0050】
なお、プラズマにかかる電圧Vpは、後述するようにVtcosθに等しいことから(
図6(c)参照)、コンデンサ72の容量成分Caの値を用いて容量成分Caにかかる電圧Vaを計算しなくても、プラズマ電圧Vpを導出することが可能である。
【0051】
[計測系の遅延による位相のずれ]
本実施形態に係るプラズマ測定方法では、
図5(a)に示すようにプラズマが着火していないときに、交流電圧Vtを出力し、浮遊容量Csに交流電圧Vtを印加し、プラズマ着火前に浮遊容量Csに流れる電流値Isを測定しておく。容量成分Cにおける電圧と電流の関係では、交流電圧Vと交流電流Iとは直交し、交流電圧Vと交流電流Iの位相が90度ずれる。本来的には交流電圧Vtに対して浮遊容量Csに流れる電流Isの位相は90度進む。ところが、測定回路85には、モニタ装置80内のオペアンプや測定回路85を形成する基板の温度や湿度に起因して、測定された電流Itをモニタ装置80が取得するまでに遅延時間が発生する。この結果、本来の交流電圧Vと交流電流Iとの位相差90度に対して実際には交流電圧Vtに対する交流電流Isの位相差は90度からずれてしまう。
【0052】
そこで、プラズマが着火していないときに、交流電圧Vtを信号発信器82からプローブ装置70に印加し、基板(測定回路85)に流れる電流Itを観測する。測定した電流Itは、浮遊電流Isに等しい。また、交流電圧Vtと浮遊電流Isとは本来ならば直交する。よって、この時の交流電圧Vtと測定した電流Itとは直交するはずである。
【0053】
これに対して、測定された浮遊電流Isの位相が交流電圧Vtの位相に対して90度進んだ値からずれている場合、測定された浮遊電流Isは、測定回路85で発生する遅延の影響を受けて位相が回転して検出されたと考えられる。よって、プラズマが着火していないときに測定回路85にて測定される電流Itと交流電圧Vtとの直交関係を使用して、電流Itの位相のずれを浮遊電流Isの位相のずれとして事前に算出する。
【0054】
例えば、
図6(b)の例では、測定した電流Itの位相が回転していない。交流電圧Vtと、プラズマが着火していないときに測定された電流It(=Is)と、が直交している場合、すなわち位相のずれがない場合には、浮遊電流IsがY軸上にあることになる。このときの「位相のずれがない」とは、測定された浮遊電流Isの位相が交流電圧Vtの位相に対して90度進んでいる状態を示す。一方、
図6(a)の例では、測定した浮遊電流Isの位相が回転して検出されている。測定回路85で発生する遅延の影響を受けると、
図6(a)に示すように、測定された浮遊電流Isの位相が交流電圧Vtの位相に対して90度進んだ値からずれ、Y軸上からα度ずれる。そこで、そのずれている値を計測系での遅延の影響による位相のずれとして予め算出し、制御装置3の記憶部31に位相のずれ(位相差α)を保存する。
【0055】
(位相のずれを考慮したプラズマ電流Ipの測定)
次に、プラズマを着火した状態において、交流電圧Vtを信号発信器82からプローブ装置70に印加し、測定回路85にて電流値Itを測定する。測定した電流値Itは、位相のずれαがないとき、
図6(b)に示すように浮遊電流Isとプラズマ電流Ipとの合算値であり、測定した電流値Itからベクトル演算により浮遊電流Isを減算することにより、プラズマ電流Ipを正確に算出することができる。
【0056】
これに対して、測定した電流値Itに位相差αがあるとき、測定した電流値Itからベクトル演算により浮遊電流Isを減算し、更に
図6(a)に示す事前に測定された位相差αを減算し、測定回路85における電流測定の遅延分を位相からキャンセルする。これにより、プラズマ電流Ipを正確に算出することができる。
【0057】
ここで、プラズマを純粋な抵抗と考えると、プラズマ電流Ipとプラズマにかかる電圧Vpとは同位相になるため、求められたプラズマ電流Ipから、交流電圧Vtとプラズマにかかる電圧Vpの位相差も把握することができる。この位相差θ(=ωt)から実際にプラズマに印加されている電圧Vpの値を(7)式により正確に求めることができる。
【0058】
Vp=Vt×cosθ・・・(7)
このように、測定回路85で発生する遅延に基づく位相差αを考慮してプラズマ電流Ipとプラズマ電圧Vpとを算出し、(6)式のVoにプラズマ電圧Vpの値を代入する。
【0059】
また、実測値である測定された電流Itから周波数解析により交流電圧Vtの周波数の1倍波の第1電流を算出する。そして、(6)式の|i1ω|に1倍波の第1電流の絶対値を代入する。これにより、より正確なプラズマの電子密度Ne、電子温度Te又はイオン密度Niの少なくともいずれかを導出することができる。
【0060】
なお、上記の説明では、プラズマの電子密度Ne等の算出に必要となる1倍波の電流と2倍波の電流とを区別せずに説明を行った。しかし、測定回路85で生じる位相差は、厳密には1倍波の電流に対する位相差と、2倍波の電流に対する位相差とがそれぞれ異なっている。よって、プラズマが着火していない状態における浮遊電流Isの測定では、信号発信器82から1倍波の交流電圧Vt1と、2倍波の交流電圧Vt2とをそれぞれ出力する。そして、1倍波の交流電圧Vt1及び2倍波の交流電圧Vt2のそれぞれの浮遊電流Is(1倍波の浮遊電流Is1および2倍波の浮遊電流Is2)を測定しておく。これにより、測定回路85で発生する1倍波の電流に対する位相差α1と、2倍波の電流に対する位相差α2とを加味した、より正確なプラズマ密度Ne等の算出が可能となる。
【0061】
なお、信号発信器82から1倍波の交流電圧Vt1と2倍波の交流電圧Vt2とをそれぞれ出力する替わりに、1倍波の交流電圧Vt1と2倍波の交流電圧Vt2とを重畳した交流電圧Vtを出力してもよい。または、1倍波の交流電圧Vt1と2倍波の交流電圧Vt2とを別々に、別のタイミングで出力してもよい。
【0062】
図5(a)に示すプラズマが生成されていない状態において、電流It(第1電流)を定期的又は不定期に繰り返し測定してもよい。そして、測定した最新の電流Itの位相に基づき浮遊電流Isの位相差αを算出してもよい。このようにしてプラズマが着火していない間、常に電流Itを得るための交流電圧Vtをプローブ装置70に印加し続ける。これにより、最新の基準となる位相差αを常に更新し、記憶部31に記憶しておくことで、プラズマが生成されている状態において測定された電流Itに基づき、プラズマ状態をより精度良く測定することができる。
【0063】
[プラズマ測定方法(準備)]
図5(a)に示すプラズマが生成されていない状態において行われるプラズマ測定方法(準備)について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、一実施形態に係るプラズマ測定方法(準備)の一例を示すフローチャートである。
【0064】
本処理では、ステップS1において、モニタ装置80は、プラズマ処理装置100にプラズマが生成されていない状態かを判定する。モニタ装置80は、プラズマが生成されているか否かをレシピ情報から取得してもよい。例えば、モニタ装置80は、レシピ情報からプロセス中の時間を判定し、プロセスの開始前及び終了後のアイドル状態では、プラズマが生成されていないと判定してもよい。ただし、プラズマが生成されているか否かの判定方法はこれに限らない。モニタ装置80は、プラズマが生成されている状態であると判定すると、本処理を終了する。
【0065】
一方、ステップS1において、モニタ装置80は、プラズマ処理装置100にプラズマが生成されていない状態であると判定すると、ステップS2に進む。そして、ステップS2において、信号発信器82からプローブ装置70へ交流電圧Vtを印加し、このときに測定回路85にて電流の大きさ(振幅)と位相とを含む電流It(第1電流)を測定する。測定された電流Itは、電流の大きさ(振幅)と位相とを含む。測定された電流Itは、浮遊電流Isに等しい(
図5(a)参照)。よって、電流Itを測定することにより浮遊電流Isを測定することができる。測定された浮遊電流Isの信号は、モニタ装置80から制御装置3に送信される。制御装置3は、電流の大きさ(振幅)と位相とを含む浮遊電流Isを受信する。
【0066】
次に、ステップS3において、制御装置3の算出部35は、電流の大きさ(振幅)と位相とを含む浮遊電流Isに基づき、浮遊電流Isの位相のずれ(位相差α)を算出する。容量成分Cにおける電圧と電流の関係では、交流電圧Vと交流電流Iの位相が90度ずれる。よって、算出部35は、測定回路85にて測定される電流Itと交流電圧Vtとの直交関係から、第1電流(電流It)の位相のずれ、つまり、浮遊電流Isの位相が交流電圧Vtの位相から90度ずれる正常な状態に対して更にずれている位相差αを算出する。そして、算出部35は、測定した浮遊電流Isの大きさと、算出した位相差αとを記憶部31に保存し、本処理を終了する。
【0067】
[測定処理]
図5(b)に一例を示すプラズマが生成された状態において行われる測定処理について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、一実施形態に係るプラズマ測定方法の一例を示すフローチャートである。
図8のプラズマ測定方法が実行される前に、
図7のプラズマ測定方法が最低一回実行され、制御装置3の記憶部31には浮遊電流Isの大きさと位相差αとが記憶されているものとする。
【0068】
本処理では、ステップS11において、モニタ装置80は、プラズマ処理装置100にプラズマが生成されている状態かを判定する。判定方法は、
図7のステップS1にて説明した方法でよい。モニタ装置80は、プラズマが生成されていない状態であると判定すると、本処理を終了する。
【0069】
一方、ステップS11において、モニタ装置80は、プラズマ処理装置100にプラズマが生成されている状態であると判定すると、ステップS12に進む。そして、ステップS12において、信号発信器82からプローブ装置70へ交流電圧Vtを印加し、このときに測定回路85にて電流の大きさ(振幅)と位相とを含む電流It(第2電流)を測定する。次に、ステップS13において、測定された電流Itから、事前に測定した浮遊電流Isの大きさと浮遊電流Isの位相差αとを減算するベクトル演算を行う(
図5(b)及び
図6(a)(b)参照)。これにより、測定回路85における電流測定の遅延分を測定された電流Itの位相からキャンセルすることによってプラズマ電流Ipを正確に算出することができる。
【0070】
次に、ステップS14において、プラズマにかかる電圧Vpを算出する。プラズマを純粋な抵抗と考えると、プラズマ電流Ipとプラズマにかかる電圧Vpとは同位相になるため、求められたプラズマ電流Ipから、交流電圧Vtとプラズマにかかる電圧Vpの位相差を把握することができる。この位相差θから実際にプラズマに印加されている電圧Vpの値を(7)式により正確に求めることができる。
【0071】
次に、ステップS15において、算出したプラズマ電流Ipとプラズマ電圧Vpとの関係から、(6)式によりプラズマ電子温度Te及びプラズマ電子密度Neを算出し、本処理を終了する。
【0072】
以上に説明したように、本実施形態のプラズマ測定方法及びプラズマ処理装置によれば測定回路85による遅延を考慮することで、プラズマ状態をより精度良く測定することができる。
【0073】
今回開示された実施形態に係るプラズマ測定方法及びプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0074】
本開示のプラズマ処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【0075】
本明細書に開示のプラズマ処理装置は、一枚ずつ基板を処理する枚葉装置、複数枚の基板を一括処理するバッチ装置及びセミバッチ装置のいずれにも適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 処理容器
2 マイクロ波プラズマ源
3 制御装置
11 載置台
70 プローブ装置
80 モニタ装置
85 測定回路
100 プラズマ処理装置