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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114446
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】共振器及び周波数可変型共振器
(51)【国際特許分類】
   H01P 7/08 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
H01P7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020226
(22)【出願日】2023-02-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発」委託研究、 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】川上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山道 智博
(72)【発明者】
【氏名】浦出 芳郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛子
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HB02
5J006HB11
5J006HB13
5J006HB17
5J006LA22
(57)【要約】
【課題】フットプリントを効率的に抑制できるステップインピーダンス型の共振器を提供する。
【解決手段】SIR100は、湾曲導波路C1及びC2と、フィッシュボーン型導波路F1とからなるステップインピーダンス共振器として構成される。湾曲導波路C1及びC2は、第1のインピーダンスを有する。フィッシュボーン型導波路F1は、第2のインピーダンスを有する。湾曲導波路C1及びC2とフィッシュボーン型導波路F1とが直列的に接続されたステップインピーダンス共振器が構成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のインピーダンスを有するコプレーナ導波路と、
フィッシュボーン型導波路を含む、前記第1のインピーダンスとは異なる第2のインピーダンスを有する区間と、を備え、
前記コプレーナ導波路と前記フィッシュボーン型導波路を含む区間とが直列的に接続されたステップインピーダンス共振器として構成される、
共振器。
【請求項2】
前記フィッシュボーン型導波路を含む区間に含まれる導波路は、インピーダンス整合している、
請求項1に記載の共振器。
【請求項3】
前記第1のインピーダンスを有するコプレーナ導波路は、湾曲導波路として構成される、
請求項2に記載の共振器。
【請求項4】
前記湾曲導波路は、第1の湾曲導波路と第2の湾曲導波路とを含み、前記第1の湾曲導波路と前記第2の湾曲導波路との間に、前記フィッシュボーン型導波路を含む区間が挿入される、
請求項3に記載の共振器。
【請求項5】
前記フィッシュボーン型導波路を含む区間は、同じ構成を有する複数の前記フィッシュボーン型導波路と、コプレーナ導波路からなる少なくとも1つの直線導波路と、を有し、前記複数のフィッシュボーン型導波路のうちの隣接する2本の間は、前記少なくとも1つの直線導波路のうちの1つによって接続される、
請求項4に記載の共振器。
【請求項6】
前記フィッシュボーン型導波路を含む区間は、前記フィッシュボーン型導波路が配置される複数の区間と、複数の前記湾曲導波路と、を備え、前記複数の区間のうちの隣接する2つの間は、前記複数の湾曲導波路のうちの1本により接続される、
請求項2に記載の共振器。
【請求項7】
前記複数の湾曲導波路のそれぞれは、U字型のコプレーナ導波路として構成される、
請求項6に記載の共振器。
【請求項8】
前記複数の湾曲導波路のうちで、1つの前記区間に接続される2本は、互いに逆方向に湾曲している、
請求項7に記載の共振器。
【請求項9】
第1の方向を長手方向とする前記複数の区間は、前記第1の方向に直交する第2の方向に配列され、
前記複数の湾曲導波路のうちの、1つの前記区間に接続される2本の前記湾曲導波路の一方は、前記1つの区間の一方の端部から、前記第1の方向に突き出てから反時計回り方向に湾曲して前記第1の方向とは反対の方向へ向けて延在するコプレーナ導波路として構成され、
前記2本の前記湾曲導波路の他方は、前記1つの区間の他方の端部から、前記第1の方向とは反対の方向に突き出てから反時計回り方向に湾曲して前記第1の方向へ向けて延在するコプレーナ導波路として構成される、
請求項8に記載の共振器。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の前記共振器と、
制御信号に応じて共振周波数が制御される外部共振器と、
前記制御信号が入力される制御ポートと、を備え、
前記共振器の一端は、前記外部共振器と磁気的に接続され、
前記共振器の他端は、前記制御ポートと電気的に接続され、
前記共振器の共振周波数は、前記外部共振器の共振周波数と異なる、
周波数可変型共振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、共振器及び周波数可変型共振器に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ビット等に用いられる超伝導量子回路においては、高周波の伝送線路として、コプレーナ導波路(Coplanar Waveguide、CPW)が広く用いられている。CPWは、基板の表面にパターンを形成する簡潔な構造からなり、それ自体がインダクタンス及びキャパシタンスを有している。そのため、インピーダンスが異なるCPWを組み合わせたステップインピーダンス共振器(Stepped Impedance Resonator、以下SIR)(例えば、特許文献1及び2)などの共振器を構成することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/102385号
【特許文献2】特開2010-87830号公報
【特許文献3】特開2022-111146号公報
【特許文献4】特開2005-294382号公報
【特許文献5】特許第6437607号
【特許文献6】特許第6749382号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】K.Nakagawa et al., ”Transmission properties of fishbone-type superconducting transmission lines”, October 22, 2020, Japanese Journal of Applied Physics, Vol 59, No. 11, 110904
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、分布定数型のSIRを構成する場合、共振周波数の波長と同じオーダーの長さの直線状のCPWが必要となるため、共振器を搭載するには長大なチップ形状が要求される。このため、チップの占有面積、いわゆるフットプリントの大きさから、チップ形状やパターン設計が制約されてしまう。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、フットプリントを効率的に抑制できるステップインピーダンス型の共振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様である共振器は、第1のインピーダンスを有するコプレーナ導波路と、フィッシュボーン型導波路を含む、前記第1のインピーダンスとは異なる第2のインピーダンスを有する区間と、を備え、前記コプレーナ導波路と前記フィッシュボーン型導波路を含む区間とが直列的に接続されたステップインピーダンス共振器として構成されるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、フットプリントを効率的に抑制できるステップインピーダンス型の共振器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】コプレーナ導波路で構成されたステップインピーダンス共振器の構成を模式的に示す図である。
図2】メアンダ型導波路で構成された共振器の構成を模式的に示す図である。
図3】フィッシュボーン型導波路で構成された共振器の構成を模式的に示す図である。
図4図3に示した共振器の領域Aの拡大図である。
図5】所定の曲率にて湾曲させた場合のフィッシュボーン型導波路を模式的に示す図である。
図6】実施の形態1にかかるステップインピーダンス共振器の構成を模式的に示す図である。
図7】実施の形態2にかかるステップインピーダンス共振器の構成例を模式的に示す図である。
図8】障害物による干渉を回避できるステップインピーダンス共振器のレイアウトを示す図である。
図9】実施の形態2にかかるステップインピーダンス共振器の変形例の構成を模式的に示す図である。
図10図9のステップインピーダンス共振器の変形例の構成を模式的に示す図である。
図11】実施の形態3にかかる周波数可変型共振器の構成を模式的に示す図である。
図12】磁気的結合構造の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0011】
実施の形態1
実施の形態1にかかるフィルタ機能を有する共振器を理解するための前提として、直線のコプレーナ導波路(Coplanar Waveguide、CPWとも称する)で構成される共振器、メアンダ型導波路で構成される共振器、及び、フィッシュボーン(Fishbone)型導波路で構成される共振器について説明する。
【0012】
まず、CPWで構成されたステップインピーダンス共振器(Stepped Impedance Resonator、以下SIR)について説明する。図1に、CPWで構成された周波数20GHzのステップインピーダンス共振器(SIR)1000の構成を模式的に示す。
【0013】
以下、図においては、紙面を左から右へ向かう方向をX方向、下から上へ向かう方向をY方向とする。また、X方向を第1の方向、Y方向第2の方向とも称する。
【0014】
SIRは、自身の共振周波数の帯域の交流成分と、直流成分と、を選択的に透過するフィルタとして機能する。CPWの特性インピーダンスは、一般に、基準値である50Ωに設定されるが、基準値とは異なる特性インピーダンスを有する区間を設けることにより、SIRを構成することができる。この例では、SIR1000は、特性インピーダンスが基準値である50ΩのCPW1001とCPW1003との間に、共振周波数が20GHzで、特性インピーダンスが20ΩのCPW1002が挿入されたものとして構成される。
【0015】
この例では、SIR1000は、例えば非導電性の基板S上に形成されている。SIR1000の周囲には、グランドと接続され、かつ、SIR1000に対して絶縁されたグランド導体GNDが形成されている。図1では、SIR1000とグランド導体の間は、間隙によって絶縁されており、間隙には基板Sが露出している。
【0016】
しかし、上述したように、SIR1000では、直線導波路を一方向に連結するため、長さ方向(図1のX方向)の寸法が大きくなり、その結果、フットプリントが増大してしまうという欠点が有る。
【0017】
これに対し、チップ形状やパターン設計の自由度を高めるために、CPWの一部を所定の曲率で湾曲させた形状の導波路、いわゆるメアンダ型導波路(例えば、特許文献3)の導入が広く行われている。図2に、メアンダ型導波路で構成された周波数10GHzの共振器2000の構成を模式的に示す。共振器2000では、導波路2001を所定の曲率にて湾曲させることにより、直線形状の導波路で構成した共振器(例えば、図1のSIR100)の場合に比べて、フットプリントを削減でき、集積性を向上させることができる。
【0018】
SIR1000の場合と同様に、SIR2000は、基板S上に形成されており、SIR2000の周囲には、グランドと接続され、かつ、SIR2000に対して絶縁されたグランド導体GNDが形成されている。よって、SIR2000とグランド導体の間は間隙によって絶縁されており、間隙には基板Sが露出している。
【0019】
しかし、導波路が多重に湾曲している場合や、隣接する導波路が長く平行に並べられた場合、所望の共振モードとは異なる共振モードが生じてしまう恐れが有り、設計が難しくなるという問題がある。
【0020】
共振器のフットプリントを削減する手法として、フィッシュボーン(Fishbone)型導波路(特許文献4及び非特許文献1)の導入も知られている。図3に、フィッシュボーン型導波路で構成された周波数10GHzの共振器3000の構成を模式的に示す。フィッシュボーン型導波路で構成された共振器3000は、図3のX方向に延在する直線導波路3001に直交する方向(図3の+Y方向及び-Y方向)に、複数の短い導波路構造3002(それぞれをスタブと称する)が延在している構成を有する。
【0021】
SIR1000及び2000の場合と同様に、共振器3000は、基板S上に形成されており、SIR3000の周囲には、グランドと接続され、かつ、SIR3000に対して絶縁されたグランド導体GNDが形成されている。よって、SIR3000とグランド導体の間は間隙によって絶縁されており、間隙には基板Sが露出している。
【0022】
図4に、図3に示した共振器3000の領域Aの拡大図を示す。共振器3000では、隣接する2本のスタブ3002の間には、グランド導体GNDがY方向に延在している。図4では、隣接する2本のスタブ3002の間のグランド導体GNDを符号3003で表示している。
【0023】
共振器3000では、スタブ3002の寸法やX方向の間隔を変更することによって、共振器3000の特性インピーダンスや位相速度を任意に調整することができる。図3の共振器3000では、スタブ3002の長さを90μm、特性インピーダンスを約30Ωとしている。
【0024】
共振器3000は、スタブによって単位長さあたりのキャパシタンス及びインダクタンスが増加するため、位相速度が遅くなり、スタブを有しない導波路で同じ特性インピーダンスを有する共振器を構成する場合(例えば、図1のSIR1000)と比べて、実効波長が短くなるので長さ(X方向の寸法)を短縮することができる。
【0025】
フィッシュボーン型導波路で構成された共振器3000において、更にX方向の寸法を短縮するには、図2のメアンダ型導波路で構成された共振器2000のように、フィッシュボーン型導波路を所定の曲率にて湾曲させることが考え得る。図5に、所定の曲率にて湾曲させる場合のフィッシュボーン型導波路を模式的に示す。なお、図5では、図面の簡略化のため、グランド導体GNDについては表示を省略している。フィッシュボーン型導波路を湾曲させた場合、曲率中心側に突き出したスタブ間の間隔が狭まり、反対方向に突き出したスタブ間の間隔は広がってしまう。その結果、共振器としての特性が変動するおそれがあり、フィッシュボーン型導波路を湾曲させるのは、一般に困難である。
【0026】
上述した共振器の欠点を解消するため、本実施の形態においては、効率的にフットプリントを削減できるSIRについて説明する。なお、以降においても、共振器の周囲には、上述と同様にグランド導体GNDが形成されている。また、フィッシュボーン型導波路の隣接する2本のスタブの間のグランド導体GNDについては、図面の簡略化のため、表示を省略している。
【0027】
図6に、実施の形態1にかかるステップインピーダンス共振器(SIR)100の構成を模式的に示す。SIR100は、2本の湾曲したCPWである湾曲導波路C1及びC2の間に、X方向を長手方向とする1本のフィッシュボーン(Fishbone)型導波路F1が挿入された構成を有する。湾曲導波路C1及びC2は、それぞれ、第1及び第2の湾曲導波路とも称する。
【0028】
湾曲導波路C1及びC2は、U字型のCPWとして構成される。この例では、湾曲導波路C1及びC2は、反対側に湾曲している例を示している。つまり、湾曲導波路C1は-Y側に湾曲し、湾曲導波路C2は+Y側に湾曲している、より具体的には、湾曲導波路C1は、フィッシュボーン型導波路F1の-X側の端部から-X方向に突き出してから、反時計回りに湾曲して、+X方向に延在するU字を描くように形成される。湾曲導波路C2は、フィッシュボーン型導波路F1の+X側の端部から+X方向に突き出してから、反時計回りに湾曲して、-X方向に延在するU字を描くように形成される。
【0029】
なお、湾曲導波路C1及びC2は例示に過ぎず、互いに同じ側、すなわち、+Y側に湾曲していてもよいし、-Y側に湾曲していてもよい。
【0030】
さらに、湾曲導波路C1及びC2は例示に過ぎず、湾曲導波路C1及びC2の代わりに、それぞれ直線状のコプレーナ導波路としてもよい。
【0031】
次いで、SIR100のフィルタ機能について検討する。本構成では、湾曲導波路C1及びC2の特性インピーダンスは基準値である50Ω、フィッシュボーン型導波路F1の特性インピーダンスは基準値の50Ωとは異なる値、例えば20Ωであるものとする。このように、ポートに直接に接続される湾曲導波路の特性インピーダンスを基準値とし、湾曲導波路で挟まれる部分の特性インピーダンスが基準値とは異なる値となるようにマッチングすることで、SIRを構成することができる。
これにより、SIR100の全体によってステップインピーダンス共振器が構成される。
【0032】
なお、フィルタ機能を強化するには、フィッシュボーン型導波路F1の特性インピーダンスと、湾曲導波路C1及びC2の特性インピーダンスと、の差分は、大きいほど好ましい。
【0033】
以下では、SIRを構成するフィッシュボーン型導波路のインピーダンスを第2のインピーダンス、フィッシュボーン型導波路以外のコプレーナ導波路のインピーダンスを第1のインピーダンスとも称する。
【0034】
SIR100の共振周波数は、フィッシュボーン型導波路F1の長さ及びスタブの長さや幅、スタブ間の間隙、中心導体部の幅、間隙の幅などによって決定される。なお、SIR100の共振周波数には、最も周波数の低い基本モードの共振周波数だけでなく、高次のモードの共振周波数が存在する。これにより、SIR100は主として基本モードの共振周波数で共振するとともに、共振周波数以外の周波数の透過を防止するフィルタとして機能することができる。
【0035】
SIR100は、例えば、湾曲導波路C1及びC2とフィッシュボーン型導波路F1とを半導体プロセスによって同じ半導体基板上にモノリシックに作製した、半導体チップとして提供することができる。
【0036】
本構成では、2本の湾曲導波路C1及びC2の間に、長手方向(すなわち図6のX方向)の寸法が短いフィッシュボーン型導波路F1を挿入しているため、SIR100の長手方向の寸法を、CPWのみで構成される共振器と比べて短縮することができる。従って、SIR100の占有面積、すなわちフットプリントを削減することができる。
【0037】
これにより、SIR100の寸法の制約を除去ないしは軽減することで、チップ形状やパターン設計の自由度を向上させることができる。
【0038】
また、本構成は、単なるフィッシュボーン型導波路よりも多様な(長大でない)設計パターンに適用することができる。
【0039】
実施の形態2
実施の形態1にかかるSIR100は、2本の湾曲導波路の間に1本のフィッシュボーン型導波路が挿入されるものとして説明したが、これは例示に過ぎず、複数のフィッシュボーン型導波路が配列されてもよい。換言すれば、2本の湾曲導波路の間に、N個のフィッシュボーン型導波路とN-1本のCPWからなる直線導波路とを交互に配列して、すなわち、隣接する2つのフィッシュボーン型導波路の間のそれぞれに1つずつ直線導波路を配置して、共振器を構成してもよい。以下、具体的に説明する。
【0040】
図7に、実施の形態2にかかるSIR200の構成例を模式的に示す。SIR200は、実施の形態1にかかるSIR100の変形例であり、SIR100の湾曲導波路C1及びC2に対応するものとして、湾曲導波路C11及びC12が設けられる。SIR100のフィッシュボーン型導波路F1は、3本のフィッシュボーン型導波路F11~F13と2本の直線導波路L11及びL12とがX方向に交互に接続された構成に置換されている。
【0041】
より具体的には、フィッシュボーン型導波路F11の一端は湾曲導波路C11と接続され、フィッシュボーン型導波路F13の一端は湾曲導波路C12と接続される。フィッシュボーン型導波路F11及びF12の間は直線導波路L11で接続され、フィッシュボーン型導波路F12及びF13の間は直線導波路L12で接続される。以下では、フィッシュボーン型導波路F11及びF13を、それぞれ第1及び第2のフィッシュボーン型導波路とも称する。直線導波路L11及びL12を、それぞれ第1及び第2のコプレーナ導波路とも称する。
【0042】
本構成では、フィッシュボーン型導波路F11、F12及びF13と直線導波路L11及びL12とのインピーダンスをマッチングさせることで、フィッシュボーン型導波路F11、F12及びF13及び直線導波路L11及びL12とからなるステップインピーダンス共振器を構成することができる。
【0043】
湾曲導波路C11及びC12の特性インピーダンスが基準値の50Ωであるとき、例えば、フィッシュボーン型導波路F11、F12及びF13、直線導波路L11及びL12の特性インピーダンスを20Ωにマッチングさせることによって、SIRを構成することができる。
【0044】
すなわち、ポートに直接に接続される湾曲導波路の特性インピーダンスを基準値とし、湾曲導波路で挟まれる部分の特性インピーダンスが基準値とは異なる同一の値となるようにマッチングすることで、図6のSIR100と同様に、SIRを構成することができる。
【0045】
SIR200のように、複数のフィッシュボーン型導波路と、その間を接続する導波路とから構成される部分を有するSIRの共振周波数は、それぞれの導波路の共振周波数によって決まる。ここで、各区間の共振周波数は、各区間が単独で半波長となる波で振動した場合の周波数である。ここで、Nを2以上の整数、複数のフィッシュボーン型導波路の数をN、その間を接続する導波路の数をN-1、フィッシュボーン型導波路の共振周波数をfF1~fFN、接続導波路の共振周波数をfW1~fWN-1とする。この場合、SIR全体の基本モードの共振周波数fは、以下の式で表される。
【数1】
【0046】
また、SIR全体の基本モードの共振周波数fは、各区間の信号の通過時間を用いて表すこともできる。区間の通過時間は、区間の長さを、区間の位相速度で割った値であるものとする。ここでは、複数のフィッシュボーン型導波路のそれぞれの信号の通過時間をTF1~TFNとし、接続導波路の信号の通過時間をTA1~TAN-1とする。この場合、SIR全体の基本モードの共振周波数fは、以下の式で表される。
【数2】
【0047】
SIR200においては、湾曲導波路C11及びC12に挟まれる区間に、フィッシュボーン型導波路F11、F12及びF13、直線導波路L11及びL12の5つの導波路の区間が配置される。ここでは、フィッシュボーン型導波路F11、F12及びF13のそれぞれの共振周波数をfF11、fF12及びfF13とし、直線導波路L11及びL12のそれぞれの共振周波数をfL11及びfL12とする。この場合、SIR200全体の基本モードの共振周波数fは、以下の式で表される。
【数3】
【0048】
また、フィッシュボーン型導波路F11、F12及びF13のそれぞれの通過時間をTF11、TF12及びTF13、直線導波路L11及びL12のそれぞれの通過時間をTL11及びTL12とする。この場合、SIR200全体の基本モードの共振周波数fは、以下の式で表される。
【0049】
【数4】
【0050】
よって、本構成においても、フィッシュボーン型導波路を用いることで、SIR200の長手方向の寸法を、CPWのみで構成される共振器と比べて短縮することができる。これにより、SIR200のフットプリントを削減し、SIR100の寸法の制約を除去ないしは軽減して、チップ形状やパターン設計の自由度を向上させることができる。
【0051】
なお、SIR200は、実施の形態1にかかるSIR100と比較して、フィッシュボーン型導波路を分割して配置したものと捉えることができる。これにより、SIR200の配置の自由度を高めることができる。例えば、SIR200の設置位置に干渉する部品などが有る場合、干渉する位置にはフィッシュボーン型導波路ではなくCPWからなる直線導波路を配置することが可能である。
【0052】
図8に、障害物による干渉を回避できるSIR200のレイアウトを示す。この例では、SIR200の長手方向であるX方向に対して直交するY方向に沿って、SIR200に向かって障害物OBSが突き出ている。そこで、SIR200は、障害物OBSがY方向に幅が広いフィッシュボーン型導波路に干渉しないように配置すればよい。具体的には、障害物OBSのY方向の延長線上に、直線導波路が配置されるようにすることで、SIR200のY方向に大きくシフトさせることなく、障害物OBSと干渉しないように配置することができる。
【0053】
また、本構成では、フィッシュボーン型導波路に挟まれたCPWによって、SIR200が形成される基板面、すなわちグランド面が隔てられる部分が生じる。これらの間の電位を均一化するため、図8に示すように、エアブリッジ210を形成してもよい。エアブリッジとは、超伝導体などの導電体によって導波路を跨ぐ、導波路とは電気的に絶縁された空中架橋構造を形成することで、導波路によって隔てられたグランド面を電気的に接続する構造のことである。エアブリッジの有効性は、例えば、特許文献5及び特許文献6に記載されている。エアブリッジを設けることにより、所望のモード以外の共振周波数を抑制することができる。ただし、接続構造はエアブリッジに限られるものではなく、グランド面を電気的に接続する各種の導体であればよい。この場合、エアブリッジ210は、空中架橋構造の機械的強度を確保するためになるべく短いことが望ましく、例えば、フィッシュボーン型導波路F11~F13のスタブの長さ、すなわちY方向の幅よりも短いことが望ましい。
【0054】
なお、SIR200の一部のCPWを湾曲させることで、SIRのフットプリントを更に削減することも可能である。
【0055】
図9に、実施の形態2にかかるSIR200の変形例であるSIR201の構成を模式的に示す。この例では、SIR200のフィッシュボーン型導波路F11~F13に対応するものとして、それぞれ、フィッシュボーン型導波路F21~F23が配置される。SIR200の湾曲導波路C11及びC12に代えて、それぞれCPWからなる直線導波路L21及びL22が配置される。SIR200の直線導波路L11及びL12に代えて、それぞれCPWからなるU字型の湾曲導波路C21及びC22が配置される。
【0056】
湾曲導波路C21及びC22は、U字型のCPWとして構成されるが、インピーダンス整合に支障が生じない程度に、緩やかな曲率にて湾曲することが好ましい。この例では、湾曲導波路C21及びC22は、互いに反対側に湾曲している例を示している。つまり、湾曲導波路C21は曲率中心が-X側となるように湾曲し、湾曲導波路C22は曲率中心が+X側となるように湾曲している。
【0057】
より具体的には、湾曲導波路C21は、X方向を長手方向とするフィッシュボーン型導波路F22の+X側の端部から+X方向へ延在し、その後反時計回り方向に湾曲して+Y方向を経て-X方向へ延在して、X方向を長手方向とするフィッシュボーン型導波路F21の+X側の端部と接続される。湾曲導波路C22は、フィッシュボーン型導波路F22の-X側の端部から-X方向へ延在し、その後反時計回り方向に湾曲して-Y方向を経て+X方向へ延在して、X方向を長手方向とするフィッシュボーン型導波路F23の-X側の端部と接続される。
【0058】
直線導波路L21は、フィッシュボーン型導波路F21の-X側の端部から-X方向へ延在している。直線導波路L22は、フィッシュボーン型導波路F23の+X側の端部から+X方向へ延在している。
【0059】
次いで、SIR201の設計について説明する。ここでは、直線導波路L21及びL22の特性インピーダンスをZ0とする。直線導波路L21及びL22で挟まれる区間、すなわち、フィッシュボーン型導波路F21、F22及びF23、湾曲導波路C21及びC22の特性インピーダンスをZ1とする。本構成においてSIRを実現するため、Z0とZ1とは、異なる値として設定される。
【0060】
また、上述の実施の形態と同様に、特性インピーダンスZ0と、フィッシュボーン型導波路F21、F22及びF23、湾曲導波路C21及びC22の特性インピーダンスZ1と、の差分は、大きいほど好ましい。例えば、この差分は、20Ω以上であることが好ましく、30Ω以上であることがさらに好ましい。そこで、本実施の形態では、直線導波路L21及びL22の特性インピーダンスZ0を基準値である50Ω、フィッシュボーン型導波路F21、F22及びF23、湾曲導波路C21及びC22の特性インピーダンスZ1を20Ωとした。但し、特性インピーダンスの値はこの例に限られるものではなく、異なる値である限り、それぞれ任意の値としてもよい。
【0061】
SIR201の共振周波数は、上述した式[1]及び[2]によって決定される。ここでは、フィッシュボーン型導波路F21、F22及びF23のそれぞれの共振周波数をfF21、fF22及びfF23とし、湾曲導波路C21及びC22のそれぞれの共振周波数をfC21及びfC22とする。この場合、式[1]より、SIR201全体の基本モードの共振周波数fは、以下の式で表される。
【数5】
【0062】
また、フィッシュボーン型導波路F21、F22及びF23のそれぞれの信号の通過時間をTF21、TF22及びTF23とし、湾曲導波路C21及びC22のそれぞれの信号の通過時間をTC21及びTC22とする。この場合、式[2]より、SIR201全体の基本モードの共振周波数fは、以下の式で表される。
【数6】
【0063】
ここでは、説明の簡略化のため、基本モードにおける共振周波数について説明したが、SIR201の共振周波数には、最も周波数の低い基本モードの共振周波数だけでなく、高次のモードの共振周波数も存在する。高次のモードの共振周波数については、説明を省略する。
【0064】
本構成によれば、フィッシュボーン型導波路F21~F23をY方向に並列配置することができ、SIR201の占有領域を正方形に近い形状にすることができる。これにより、SIR201のフットプリントを、SIR200と比べて、削減することができる。従って、一方向の寸法が制限される環境下においては、SIR201の方が、SIR200と比べて、より容易に配置することが可能となる。
【0065】
図9のSIR201においても、図8の場合と同様に、1つのフィッシュボーン型導波路を複数に分割して、レイアウトの自由度を高めることができる。また、エアブリッジを設けることも可能である。図10に、図9のSIR201の変形例であるSIR202の構成を模式的に示す。
【0066】
SIR202では、SIR201のフィッシュボーン型導波路F21のそれぞれが配置されていた区間に、複数のフィッシュボーン型導波路と、隣接する2つのフィッシュボーン型導波路の間のそれぞれを接続する1つ以上の直線導波路が配置される。具体的には、SIR201のフィッシュボーン型導波路F21に代えてフィッシュボーン型導波路F211及びF212が設けられ、フィッシュボーン型導波路F211及びF212の間は直線導波路L211で接続される。SIR201のフィッシュボーン型導波路F22に代えてフィッシュボーン型導波路F221及びF222が設けられ、フィッシュボーン型導波路F221及びF222の間は直線導波路L212で接続される。SIR201のフィッシュボーン型導波路F23に代えてフィッシュボーン型導波路F231及びF232が設けられ、フィッシュボーン型導波路F231及びF232の間は直線導波路L213で接続される。
【0067】
ここで、直線導波路L21及びL22の特性インピーダンスZ0とする。直線導波路L21及びL22で挟まれる区間、すなわち、フィッシュボーン型導波路F211、F212、F221、F222、F231及びF232、湾曲導波路C21及びC22、直線導波路L211~L213の特性インピーダンスをZ1とする。Z0とZ1との関係については、SIR201と同様であるので、重複する説明については省略する。
【0068】
SIR202の共振周波数は、上述した式[1]及び[2]によって決定される。ここでは、フィッシュボーン型導波路F211、F212、F221、F222、F231及びF232のそれぞれの共振周波数をfF211、fF212、fF221、fF222、fF231、及びfF232とする。また、直線導波路L211~L213のそれぞれの共振周波数をfL211~fL213とする。この場合、SIR202全体の基本モードの共振周波数fは、以下の式で表される。
【数7】
但し、
【数8】
【数9】
【数10】
【0069】
また、フィッシュボーン型導波路F211、F212、F221、F222、F231及びF232のそれぞれの信号の通過時間をTF211、TF212、TF221、TF222、TF231及びTF232とする。また、直線導波路L211~L213のそれぞれの信号の通過時間をTL211~TL213とする。この場合、SIR202全体の基本モードの共振周波数fは、以下の式で表される。
【数11】
但し、
【数12】
【数13】
【数14】
【0070】
ここでは、説明の簡略化のため、基本モードにおける共振周波数について説明したが、SIR202の共振周波数には、最も周波数の低い基本モードの共振周波数だけでなく、高次のモードの共振周波数も存在する。高次のモードの共振周波数については、説明を省略する。
【0071】
また、直線導波路L211~L213の両端のグランド導体は、それぞれエアブリッジ211~213によって電気的に接続される。これにより、導波路によってグランド導体が隔てられた場合でも、エアブリッジを形成することで、グランド導体の電位を均一化することが可能となる。
【0072】
実施の形態3
実施の形態3にかかる周波数可変型共振器について説明する。周波数可変型共振器は、超伝導を用いた量子情報処理回路において、例えば量子ビットを生成する量子回路や、増幅器の一種であるパラメトリック増幅器等に用いられる、超伝導量子回路として構成される。
【0073】
図11に、実施の形態3にかかる周波数可変型共振器300の構成を模式的に示す。周波数可変型共振器300は、共振器301及び制御ラインを有するものとして構成される。なお、共振器301は、外部共振器とも称する。
【0074】
共振器301は、外部から制御ポート302に供給され、制御ラインを通じて共振器301に入力される制御信号CONに応じた周波数で発振するものとして構成される。なお、共振器301は、制御信号CONに応じた周波数で発振することができる限り、各種の構成の共振器を用いることができる。
【0075】
制御ラインは、上述の実施の形態で説明したSIRが用いられる。ここでは、制御ラインとして、実施の形態2にかかるSIR201を用いる例について説明する。
【0076】
直線導波路L21は、制御ポート302と接続される。直線導波路L22は、共振器301に近接した位置へ向けて延在しており、端部において幅が狭くなっており、その端部は、磁気的結合構造311によって共振器301と磁気的に結合される。
【0077】
図12に、磁気的結合構造311の拡大図を示す。図12では、理解を容易にするため、導体部分にハッチングを付している。直線導波路L22は、共振器301の端部に対して+Y方向にシフトした位置に設けられており、その端部は、グランド導体GNDと接続されている。直線導波路L22の+Y側では、符号S1で示すようにX方向に延在する領域の導体が除去されて、基板が露出している。直線導波路L22の-Y側では、符号S2で示すようにX方向に延在する領域の導体が除去されて、基板が露出している。但し、符号S2で示される領域の共振器301側の端部は、-Y方向に屈曲して-Y方向に所定の長さで延在している。
【0078】
共振器301は、符号S3で示すように周囲の導体が除去されて基板が露出している。共振器301の導体の-X側の端部には、超伝導量子干渉計 (superconducting quantum interference device:SQUID)303が設けられている。このSQUID303によって、直線導波路L22と共振器301とが磁気的に結合される。
【0079】
SIR201のその他の構成は、実施の形態2と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0080】
周波数可変型共振器300は、例えば、共振器301と制御ラインを構成するSIR201とを半導体プロセスによって同じ半導体基板上にモノリシックに作製した、半導体チップとして提供することができる。
【0081】
制御ポート302は、例えば制御信号CONを出力する電子回路と、図示しないコネクタ及び高周波ケーブルを介して接続される。この場合、高周波の反射損失を抑制するため、高周波ケーブルの特性インピーダンスと、制御ポート302に接続された制御ラインであるSIR201の特性インピーダンスとは、同じ値であることが好ましい。一般的に、高周波ケーブルの特性インピーダンスは、50Ω(オーム)又は75Ωであることが多い。そこで、本実施の形態では、高周波ケーブルの特性インピーダンスが50Ωであるものとする。但し、高周波ケーブル及び制御ラインであるSIR201の特性インピーダンスの値は例示に過ぎず、任意の値としてもよい。
【0082】
制御ラインであるSIR201は、基本モードの共振周波数と高次のモードの共振周波数とが、共振器301の共振周波数fと異なる周波数となるように構成される。これにより、SIR201に、フィッシュボーン型導波路F23の端部において共振器301の共振エネルギーを反射するフィルタとしての機能を付与することができる。
【0083】
したがって、共振器301が発振して、共振周波数fの信号が制御ラインであるSIR201に漏れ出た場合でも、SIR201の共振周波数は、共振器301の共振周波数fとは異なるため、SIR201により反射される。これにより、共振器301の共振エネルギーが制御ポート302へ透過することを、好適に防止することができる。
【0084】
また、SIR201のフィルタ機能を効率化するため、SIR201の透過率が共振器301の共振周波数fにおいて最も低くなるように設計することが好ましい。この場合、SIR201の基本モードの共振周波数は、共振器301の共振周波数fの2倍±10%であることが好ましく、2倍であることが最も好ましい。換言すると、SIR201の共振周波数は、共振器301の共振周波数fの2倍の0.9倍以上、且つ、共振器301の共振周波数の2倍の1.1倍以下であることが好ましく、2倍であることが最も好ましい。
【0085】
なお、制御ラインの寸法によっては、周波数可変型共振器300において、意図した共振周波数とは異なる共振周波数が現れることがある。このような現象を防ぐため、制御ラインを囲むように、上述したように、エアブリッジなどの導電体を形成することが好ましい。
【0086】
以上説明したように、本構成によれば、周波数可変型共振器において、制御ラインとしてSIR201を設けることで、共振器301から制御ポート302へのエネルギーの透過、すなわち内部損失を抑制することができる。
【0087】
なお、周波数可変型共振器300は、例えばトランズモンに用いられてもよいし、ジョセフソンパラメトリック発振器やジョセフソンパラメトリック増幅器に用いられてもよい。ジョセフソンパラメトリック増幅器での内部Q値の上昇は信号の増幅効率(量子効率)の上昇につながる。ただし、周波数可変型共振器300をトランズモンに適用する場合において、高周波の制御信号CON1が用いられる場合、制御ラインを構成するSIR201を考慮して、外部から制御ポート302に供給される高周波の制御信号CONを予め校正しておく必要がある。つまり、周波数可変型共振器300をトランズモンに適用する場合には、SIR201を透過した後の制御信号CONが所望の矩形波になるように、SIR201を透過する前の制御信号CONを予め校正しておく必要がある。
【0088】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態3では、制御ラインとしてSIR201を用いるものとして説明したが、これは例示に過ぎない。すなわち、SIR201以外の上述の実施の形態にかかるSIRのいずれかを制御ラインに用いてもよい。
【0089】
実施の形態2においては、3つのフィッシュボーン導波路と、これらの間を接続する2本の曲線導波路又は直線導波路が交互に接続される構成について説明したが、これは例示に過ぎない。すなわち、Mを2以上の整数として、任意のM本のフィッシュボーン導波路と、これらの間を接続するM-1本の曲線導波路又は直線導波路が交互に接続される構成としてもよい。例えば、2つのフィッシュボーン導波路と、これらの間を接続する1本の曲線導波路又は直線導波路が接続される構成としてもよい。また、4つ以上のフィッシュボーン導波路と、これらの間を接続する3本以上の曲線導波路又は直線導波路が接続される構成としてもよい。
【0090】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0091】
(付記1)第1のインピーダンスを有するコプレーナ導波路と、フィッシュボーン型導波路を含む、前記第1のインピーダンスとは異なる第2のインピーダンスを有する区間と、を備え、前記コプレーナ導波路と前記フィッシュボーン型導波路を含む区間とが直列的に接続されたステップインピーダンス共振器として構成される、
共振器。
【0092】
(付記2)前記フィッシュボーン型導波路を含む区間に含まれる導波路は、インピーダンス整合している、付記1に記載の共振器。
【0093】
(付記3)前記第1のインピーダンスを有するコプレーナ導波路は、湾曲導波路として構成される、付記2に記載の共振器。
【0094】
(付記4)前記湾曲導波路は、第1の湾曲導波路と第2の湾曲導波路とを含み、前記第1の湾曲導波路と前記第2の湾曲導波路との間に、前記フィッシュボーン型導波路を含む区間が挿入される、付記3に記載の共振器。
【0095】
(付記5)前記フィッシュボーン型導波路を含む区間は、複数の前記フィッシュボーン型導波路と、コプレーナ導波路からなる少なくとも1つの直線導波路と、を有し、前記複数のフィッシュボーン型導波路のうちの隣接する2本の間は、前記少なくとも1つの直線導波路のうちの1つによって接続される、
付記4に記載の共振器。
【0096】
(付記6)前記フィッシュボーン型導波路を含む区間は、前記フィッシュボーン型導波路が配置される複数の区間と、複数の前記湾曲導波路と、を備え、前記複数の区間のうちの隣接する2つの間は、前記複数の湾曲導波路のうちの1本により接続される、付記2に記載の共振器。
【0097】
(付記7)前記複数の湾曲導波路のそれぞれは、U字型のコプレーナ導波路として構成される、付記6に記載の共振器。
【0098】
(付記8)前記複数の湾曲導波路のうちで、1つの前記区間に接続される2本は、互いに逆方向に湾曲している、付記7に記載の共振器。
【0099】
(付記9)第1の方向を長手方向とする前記複数の区間は、前記第1の方向に直交する第2の方向に配列され、前記複数の湾曲導波路のうちの、1つの前記区間に接続される2本の前記湾曲導波路の一方は、前記1つの区間の一方の端部から、前記第1の方向に突き出てから反時計回り方向に湾曲して前記第1の方向とは反対の方向へ向けて延在するコプレーナ導波路として構成され、前記2本の前記湾曲導波路の他方は、前記1つの区間の他方の端部から、前記第1の方向とは反対の方向に突き出てから反時計回り方向に湾曲して前記第1の方向へ向けて延在するコプレーナ導波路として構成される、付記8に記載の共振器。
【0100】
(付記10)前記複数の区間の一方の端の第1の区間は、前記湾曲導波路と接続される端部とは反対の端部に、直線状の第1のコプレーナ導波路が接続され、前記複数の区間の他方の端の第2の区間は、前記湾曲導波路と接続される端部とは反対の端部に、直線状の第2のコプレーナ導波路が接続される、付記7又は8に記載の共振器。
【0101】
(付記11)前記複数の区間のそれぞれには、1つの前記フィッシュボーン型導波路が配置される、付記6乃至10のいずれか一つに記載の共振器。
【0102】
(付記12)前記複数の区間のそれぞれには、複数の前記フィッシュボーン型導波路と、前記複数のフィッシュボーン型導波路のうちの隣接する2つの間のそれぞれを接続する、1つ以上の直線状のコプレーナ導波路と、が配置される、付記6乃至10のいずれか一つに記載の共振器。
【0103】
(付記13)前記複数のフィッシュボーン型導波路及び前記複数の直線導波路の周囲にグランド導体が設けられ、前記複数の直線導波路の一部又は全部の上を跨ぎ、かつ、両端が前記グランド導体と接続される導電経路が形成される、付記5に記載の共振器。
【0104】
(付記14)前記複数の区間及び前記複数の湾曲導波路の周囲にグランド導体が設けられ、前記複数の湾曲導波路の一部又は全部の上を跨ぎ、かつ、両端が前記グランド導体と接続される導電経路が形成される、付記6乃至12のいずれか一つに記載の共振器。
【0105】
(付記15)前記複数の区間及び前記複数の湾曲導波路の周囲にグランド導体が設けられ、前記複数の一部又は全部の前記1つ以上の直線状の導波路の一部又は全部の上には、前記複数の一部又は全部の前記1つ以上の直線状の導波路の一部又は全部の上を跨ぎ、かつ、両端が前記グランド導体と接続された導電経路が形成される、付記12に記載の共振器。
【0106】
(付記16)付記1又は2に記載の前記共振器と、制御信号に応じて共振周波数が制御される外部共振器と、前記制御信号が入力される制御ポートと、を備え、前記共振器の一端は、前記外部共振器と磁気的に接続され、前記共振器の他端は、前記制御ポートと電気的に接続され、前記共振器の共振周波数は、前記外部共振器の共振周波数と異なる、周波数可変型共振器。
【符号の説明】
【0107】
100、200、201 SIR
210 エアブリッジ
300 周波数可変型共振器
301 共振器
302 制御ポート
303 SQUID
311 磁気的結合構造
2000、3000 共振器
2001 導波路
3001 直線導波路
3002 導波路構造
C1、C2、C11、C12、C21、C22 湾曲導波路
CON 制御信号
F1、F11~F13、F21~F23 フィッシュボーン型導波路
L11、L12、L21、L22 直線導波路
OBS 障害物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12