(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011445
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスク、反射型マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/24 20120101AFI20240118BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G03F1/24
C23C14/06 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113411
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広朗
(72)【発明者】
【氏名】赤木 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】筆谷 大河
(72)【発明者】
【氏名】瀧 駿也
(72)【発明者】
【氏名】金子 智也
【テーマコード(参考)】
2H195
4K029
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BB31
2H195BB35
2H195BC04
2H195BC16
2H195BC19
2H195BC24
2H195CA01
2H195CA07
2H195CA22
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA01
4K029BA11
4K029BA35
4K029BA46
4K029BA58
4K029BB02
4K029CA05
4K029CA08
4K029DC03
4K029DC05
(57)【要約】
【課題】 荷電粒子線による加工を行った際に、絶縁破壊の発生が抑制される、反射型マスクブランクの提供。
【解決手段】 基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜とをこの順で有する反射型マスクブランクであって、上記保護膜の上記吸収体膜側に、単層構造または互いに隣接する層で構成される複層構造の絶縁層が含まれ、上記絶縁層が単層構造である場合、上記絶縁層のシート抵抗値が500kΩ/sq.以上であり、かつ、上記絶縁層の厚みが20nm以上であり、上記絶縁層が互いに隣接する層で構成される複層構造である場合、上記絶縁層を構成する各層のシート抵抗値がそれぞれ500kΩ/sq.以上であり、かつ、上記各層の合計厚みが20nm以上である、反射型マスクブランク。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
EUV光を反射する多層反射膜と、
保護膜と、
吸収体膜とをこの順で有する反射型マスクブランクであって、
前記保護膜の前記吸収体膜側に、単層構造または互いに隣接する層で構成される複層構造の絶縁層が含まれ、
前記絶縁層が単層構造である場合、前記絶縁層のシート抵抗値が500kΩ/sq.以上であり、かつ、前記絶縁層の厚みが20nm以上であり、
前記絶縁層が互いに隣接する層で構成される複層構造である場合、前記絶縁層を構成する各層のシート抵抗値がそれぞれ500kΩ/sq.以上であり、かつ、前記各層の合計厚みが20nm以上である、反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記保護膜の前記基板側とは反対側に、シート抵抗値が500kΩ/sq.未満である非絶縁層が含まれる、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記絶縁層が、前記反射型マスクブランクの前記基板とは最も離れた表面側に配置される、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記反射型マスクブランクの前記基板とは最も離れた表面側に配置される層のシート抵抗値が、1kΩ/sq.以下である、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記反射型マスクブランクの前記基板とは最も離れた位置の表面と、前記保護膜との間の絶縁破壊電圧が、3.00V以上である、請求項1に記載のマスクブランク。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングして形成される吸収体膜パターンを有する、反射型マスク。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングする工程を含む、反射型マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造の露光プロセスで使用されるEUV(Etreme Ultra Violet:極端紫外)露光に用いられる反射型マスクブランク、反射型マスク、および、反射型マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの更なる微細化のために、光源として中心波長13.5nm付近のEUV光を使用したEUVリソグラフィが検討されている。
【0003】
EUVリソグラフィにおけるEUV露光では、EUV光の特性から、反射光学系および反射型マスクが用いられる。反射型マスクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜上にEUV光を吸収する吸収体膜がパターニングされている。吸収体膜は、結果としてEUV光の反射率が低くなればよく、吸収体膜は、EUV光の吸収率が高い材料で形成される場合もあれば、位相シフト膜であることもある。なお、位相シフト膜とは、透過したEUV光に位相差を与え、位相差が生じたEUV光同士の干渉により、EUV光の反射率が低くなる膜のことをいう。
なお、上記吸収体膜のパターニングの際に、多層反射膜を保護する目的で、多層反射膜と吸収体膜との間に保護膜が設けられることも多い。
【0004】
反射型マスクは、例えば、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜とをこの順で有する反射型マスクブランクの吸収体膜をパターニングして得られる。反射型マスクを用いてEUV露光を行う場合、露光装置の照明光学系より反射型マスクに入射したEUV光は、吸収体膜の無い部分(開口部)では反射され、吸収体膜の有る部分(非開口部)では反射が小さくなる。結果として、マスクパターンが露光装置の縮小投影光学系を通してウエハ上にレジストパターンとして転写され、その後の処理が実施される。
【0005】
上記のようなパターニングに供される反射型マスクブランクとしては、例えば、特許文献1の実施例では、基板上に、多層反射膜と、位相シフト膜とを有し、最表層がケイ素化合物(SiO2)を含む材料からなる態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反射型マスクブランクまたは反射型マスクでは、吸収体膜および吸収体膜の保護膜とは反対側に配置される膜の加工を行い、位置合わせ用のアラインメントマークを形成する場合がある。上記アラインメントマークの形成において、吸収体膜および吸収体膜の保護膜とは反対側に配置される膜の加工は、電子線、および、イオンビーム等の荷電粒子線を、吸収体膜および吸収体膜の保護膜とは反対側に配置される膜に照射して実施される場合がある。
また、反射型マスクのマスクパターンの修正のため、荷電粒子線による吸収体膜の加工が実施される場合がある。
【0008】
ここで、反射型マスクブランクまたは反射型マスクが絶縁層を有している場合、荷電粒子線による加工を行うと、その絶縁性によって反射型マスクブランクまたは反射型マスクの表面に電荷が蓄積する場合がある。
上記のように電荷が蓄積した状態で荷電粒子線による加工を続けると、蓄積した電荷によって生じる電位差により、絶縁破壊が発生し得る。絶縁破壊が発生すると、欠陥の原因ともなるため、絶縁破壊の発生の抑制が望まれる。
本発明者らが特許文献1に記載の反射型マスクブランクについて、荷電粒子線による加工を試みたところ、絶縁層に絶縁破壊が発生する場合があり、改善が必要であった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、荷電粒子線による加工を行った際に、絶縁破壊の発生が抑制される、反射型マスクブランクの提供を課題とする。
また、本発明は、反射型マスク、および、反射型マスクの製造方法の提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、反射型マスクブランクにおいて、絶縁層の厚みが所定値以上であると、絶縁破壊の発生が抑制されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
〔1〕 基板と、
EUV光を反射する多層反射膜と、
保護膜と、
吸収体膜とをこの順で有する反射型マスクブランクであって、
上記保護膜の上記吸収体膜側に、単層構造または互いに隣接する層で構成される複層構造の絶縁層が含まれ、
上記絶縁層が単層構造である場合、上記絶縁層のシート抵抗値が500kΩ/sq.以上であり、かつ、上記絶縁層の厚みが20nm以上であり、
上記絶縁層が互いに隣接する層で構成される複層構造である場合、上記絶縁層を構成する各層のシート抵抗値がそれぞれ500kΩ/sq.以上であり、かつ、上記各層の合計厚みが20nm以上である、反射型マスクブランク。
〔2〕 上記保護膜の上記基板側とは反対側に、シート抵抗値が500kΩ/sq.未満である非絶縁層が含まれる、〔1〕に記載の反射型マスクブランク。
〔3〕 上記絶縁層が、上記反射型マスクブランクの上記基板とは最も離れた表面側に配置される、〔1〕または〔2〕に記載の反射型マスクブランク。
〔4〕 上記反射型マスクブランクの上記基板とは最も離れた表面側に配置される層のシート抵抗値が、1kΩ/sq.以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載の反射型マスクブランク。
〔5〕 上記反射型マスクブランクの上記基板とは最も離れた位置の表面と、上記保護膜との間の絶縁破壊電圧が、3.00V以上である、〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載のマスクブランク。
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランクの上記吸収体膜をパターニングして形成される吸収体膜パターンを有する、反射型マスク。
〔7〕 〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の反射型マスクブランクの上記吸収体膜をパターニングする工程を含む、反射型マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、荷電粒子線による加工を行った際に、絶縁破壊の発生が抑制される、反射型マスクブランクを提供できる。
また、本発明によれば、反射型マスク、および、反射型マスクの製造方法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の反射型マスクブランクの一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の反射型マスクブランクの一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の反射型マスクブランクの一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の反射型マスクブランクの一例を示す模式図である。
【
図5】本発明の反射型マスクブランクの一例を示す模式図である。
【
図6】本発明の反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造工程の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
【0015】
本明細書における各記載の意味を示す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、各元素は、それぞれ対応する元素記号で表す場合がある。
【0016】
<反射型マスクブランク>
本発明の反射型マスクブランクは、基板と、EUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜とをこの順で有する反射型マスクブランクであって、保護膜の吸収体膜側に、単層構造または互いに隣接する層で構成される複層構造の絶縁層が含まれ、絶縁層が単層構造である場合、絶縁層のシート抵抗値が500kΩ/sq.以上であり、かつ、絶縁層の厚みが20nm以上であり、絶縁層が互いに隣接する層で構成される複層構造である場合、絶縁層を構成する各層のシート抵抗値がそれぞれ500kΩ/sq.以上であり、かつ、各層の合計厚みが20nm以上である。
【0017】
本発明の反射型マスクブランクに対して、荷電粒子線による加工を行った際に絶縁破壊の発生が抑制される機序は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
反射型マスクブランクを加工する際(特に、吸収体膜の加工を行う際)には、荷電粒子線を用いる場合が多い。
一方、反射型マスクブランクにおいて、例えば、吸収体膜の一部の層として、保護膜の吸収体膜側に、シート抵抗値が500kΩ/sq.以上の絶縁層が配置されることがある。
反射型マスクブランクが上記のような絶縁層を有する場合、荷電粒子線による加工を続けていくと、絶縁層または絶縁層の基板側とは反対側に配置される層は、荷電粒子線の荷電粒子が有する電荷の符号と同じ符号の電荷が蓄積されやすい。上記状態で荷電粒子線による加工を続けていくと、絶縁層の保護膜側の表面と、絶縁層の保護膜側とは反対側の表面との間に生じる電位差が大きくなり、電界強度(電位差/絶縁層の厚み)が一定値以上になると、絶縁破壊が発生し得る。
ここで、本発明の反射型マスクブランクでは、絶縁層の厚みが20nm以上である。そうすると、本発明の反射型マスクブランクにおいては、電界強度が絶縁層の厚みによって大きくなりにくいと考えられる。結果として、本発明の反射型マスクブランクは、荷電粒子線による加工を行った際に、絶縁破壊の発生が抑制されると推測される。
【0018】
以下、図面を用いて、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様、第2実施態様、および、第3実施態様について説明する。
【0019】
<反射型マスクブランクの第1実施態様>
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様を
図1に示す。
図1に示す、反射型マスクブランク10aは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、吸収体膜14taとをこの順に有する。吸収体膜14taは、基板11側から第1吸収体膜14aと、第2吸収体膜14bとから構成され、第2吸収体膜14bはシート抵抗値が500kΩ/sq.以上を示す絶縁層に該当する。なお、第2吸収体膜14bの厚みは、20nm以上である。
図1に示す、反射型マスクブランク10aにおいては、絶縁層である第2吸収体膜14bの厚みが20nm以上であるため、電界強度が大きくなりにくく、結果として絶縁破壊の発生が抑制される。
【0020】
以下、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する構成について説明する。
【0021】
[基板]
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する基板は、熱膨張係数が小さいことが好ましい。基板の熱膨張係数が小さい方が、EUV光による露光時の熱により、吸収体膜パターンに歪みが生じることを抑制できる。
基板の熱膨張係数は、20℃において、0±1.0×10-7/℃が好ましく、0±0.3×10-7/℃がより好ましい。
熱膨張係数が小さい材料としては、SiO2-TiO2系ガラス等が挙げられるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、石英ガラス、金属シリコン、および、金属等の基板も使用できる。
SiO2-TiO2系ガラスは、SiO2を90~95質量%、TiO2を5~10質量%含む石英ガラスを用いることが好ましい。TiO2の含有量が5~10質量%であると、室温付近での線膨張係数が略ゼロであり、室温付近での寸法変化がほとんど生じない。なお、SiO2-TiO2系ガラスは、SiO2およびTiO2以外の微量成分を含んでもよい。
【0022】
基板の多層反射膜が積層される側の面(以下、「第1主面」ともいう。)は、高い表面平滑性を有することが好ましい。第1主面の表面平滑性は、表面粗さで評価できる。第1主面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さRqで、0.15nm以下が好ましい。なお、表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定でき、表面粗さは、JIS-B0601に基づく二乗平均平方根粗さRqとして説明する。
第1主面は、反射型マスクブランクを用いて得られる反射型マスクのパターン転写精度および位置精度を高められる点で、所定の平坦度となるように表面加工されることが好ましい。基板は、第1主面の所定の領域(例えば、132mm×132mmの領域)において、平坦度は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、30nm以下がさらに好ましい。平坦度は、フジノン社製平坦度測定器によって測定できる。
基板の大きさおよび厚さ等は、マスクの設計値等により適宜決定される。例えば、外形は6インチ(152mm)角、および、厚さは0.25インチ(6.3mm)等が挙げられる。
さらに、基板は、基板上に形成される膜(多層反射膜、位相シフト膜等)の膜応力による変形を防止する点で、高い剛性を有することが好ましい。例えば、基板のヤング率は、65GPa以上が好ましい。
【0023】
[多層反射膜]
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する多層反射膜は、EUVマスクブランクの反射膜として所望の特性を有する限り特に限定されない。多層反射膜は、EUV光に対して高い反射率を有することが好ましく、具体的には、EUV光が入射角6°で多層反射膜の表面に入射した際、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。また、多層反射膜の上に、保護膜が積層されている場合でも、同様に、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。
【0024】
多層反射膜は、高いEUV光の反射率を達成できることから、通常はEUV光に対して高い屈折率を示す高屈折率層と、EUV光に対して低い屈折率を示す低屈折率層とを交互に複数回積層させた多層反射膜が用いられる。
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを基板側からこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層してもよいし、低屈折率層と高屈折率層とをこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。
高屈折率層としては、Siを含む層を用いることができる。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、B、C、N、およびOからなる群から選択される1種以上を含むSi化合物を用いることができる。Siを含む高屈折率層を用いることによって、EUV光の反射率に優れた反射型マスクが得られる。
低屈折率層としては、Mo、Ru、Rh、およびPtからなる群から選択される金属、またはこれらの合金を含む層を用いることができる。
上記高屈折率層には、Siが広く使用され、低屈折率層にはMoが広く使用される。すなわち、Mo/Si多層反射膜が最も一般的である。但し、多層反射膜はこれに限定されず、Ru/Si多層反射膜、Mo/Be多層反射膜、Mo化合物/Si化合物多層反射膜、Si/Mo/Ru多層反射膜、Si/Mo/Ru/Mo多層反射膜、Si/Ru/Mo/Ru多層反射膜も使用できる。
【0025】
多層反射膜を構成する各層の厚みおよび層の繰り返し単位の数は、使用する膜材料および反射層に要求されるEUV光の反射率に応じて適宜選択できる。Mo/Si多層反射膜を例にとると、EUV光の反射率の最大値が60%以上の多層反射膜とするには、厚み2.3±0.1nmのMo膜と、厚み4.5±0.1nmのSi膜とを繰り返し単位数が30~60になるように積層させればよい。
【0026】
なお、多層反射膜を構成する各層は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等、公知の成膜方法を用いて所望の厚さになるように成膜できる。例えば、イオンビームスパッタリング法を用いて多層反射膜を作製する場合、高屈折率材料のターゲットおよび低屈折率材料のターゲットに対して、イオン源からイオン粒子を供給して行う。多層反射膜がMo/Si多層反射膜である場合、イオンビームスパッタリング法により、例えば、まずSiターゲットを用いて、所定の厚みのSi層を基板上に成膜する。その後、Moターゲットを用いて、所定の厚みのMo層を成膜する。このSi層およびMo層を1周期として、30~60周期積層させることにより、Mo/Si多層反射膜が成膜される。
【0027】
多層反射膜の保護膜と接する層は、酸化されにくい材料からなる層が好ましい。酸化されにくい材料からなる層は、多層反射膜のキャップ層として機能する。酸化されにくい材料からなる層としては、Si層が挙げられる。多層反射膜がSi/Mo多層反射膜である場合、保護膜と接する層をSi層とすると、保護膜と接する層がキャップ層として機能する。その場合キャップ層の厚みは、11±2nmが好ましい。
【0028】
[保護膜]
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する保護膜は、エッチングプロセス(通常はドライエッチングプロセス)により吸収体膜にパターン形成する際に、多層反射膜がエッチングプロセスによるダメージを受けないよう、多層反射膜を保護する目的で設けられる。
上記目的を達成できる材料としては、Ru、および、Rhからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む材料が挙げられる。すなわち、保護膜は、Ru、および、Rhからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。
より具体的には、上記材料として、Ru金属単体、Ruと、Si、Ti、Nb、Rh、および、Zrからなる群から選択される1種以上の金属とを含むRu合金、ならびに、Rh金属単体、Rhと、Si、Ti、Nb、Rh、Ta、および、Zrからなる群から選択される1種以上の金属とを含むRh合金、上記Rh合金と窒素とを含むRh含有窒化物、および、上記Rh合金と窒素と酸素とを含むRh含有酸窒化物等のRh系材料が挙げられる。
また、上記目的を達成できる材料として、Alおよびこれらの金属と窒素とを含む窒化物、および、Al2O3等も例示される。
なかでも、上記目的を達成できる材料としては、Ru金属単体、Ru合金、Rh金属単体、または、Rh合金が好ましい。Ru合金としては、Ru-Si合金が好ましく、Rh合金としては、Rh-Si合金が好ましい。
【0029】
保護膜の厚みは、保護膜としての機能を果たすことができる限り特に制限されない。多層反射膜で反射されたEUV光の反射率を保つ点から、保護膜の厚みは、1~10nmが好ましく、1.5~6nmがより好ましく、2~5nmがさらに好ましい。
保護膜の材料が、Ru金属単体、Ru合金、Rh金属単体、または、Rh合金であって、保護膜の厚みが上記好ましい厚みであることも好ましい。
【0030】
保護膜は、単一の層からなる膜でもよいし、複数の層からなる多層膜でもよい。保護膜が多層膜である場合、多層膜を構成する各層は、上記好ましい材料からなることが好ましい。また、保護膜が多層膜である場合、多層膜の合計厚みが、上記好ましい範囲の保護膜の厚みであることも好ましい。
【0031】
保護膜のシート抵抗値は、1.0×103Ω/sq.未満が好ましく、7.5×102Ω/sq.以下がより好ましく、5.0×102Ω/sq.以下がさらに好ましい。保護膜のシート抵抗値の下限は特に制限されないが、1.0×10-1Ω/sq.以上が挙げられ、1.0×100Ω/sq.以上が好ましい。
シート抵抗値は、四探針法で保護膜に測定端子を接触させて測定できる。より具体的には、シート抵抗値は、表面抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスタGX MCP-T700)で測定できる。
保護膜のシート抵抗値は、例えば、反射型マスクブランクの保護膜を、エッチング等の方法で露出させて測定してもよい。また、保護膜のシート抵抗値は、保護膜の成分および厚さを公知の分析方法(例えば、透過型走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光)で分析し、同様の成分および厚さの測定用サンプルを他の基板(例えば絶縁性の基板)上に作製して測定してもよいし、保護膜の作製条件と同様の条件で測定用サンプルを他の基板(例えば絶縁性の基板)上に作製して測定してもよい。
なお、保護膜のシート抵抗値は、反射型マスクブランクを製造する途中の状態の積層体、すなわち、例えば、基板、多層反射膜および保護膜を形成したサンプルを用いて測定してもよい。
上述した方法によれば、同様のシート抵抗値が得られる。
【0032】
保護膜は、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等、公知の成膜方法を用いて成膜できる。マグネトロンスパッタリング法によりRu膜を成膜する場合、ターゲットとしてRuターゲットを用い、スパッタガスとしてArガスを使用して成膜することが好ましい。
【0033】
[吸収体膜]
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する吸収体膜(第1吸収体膜および第2吸収体膜)のうち、第2吸収体膜は、シート抵抗値が500kΩ/sq.以上を示す絶縁層に該当する。なお、第2吸収体膜の厚みは、20nm以上である。
吸収体膜(第1吸収体膜および第2吸収体膜)は、吸収体膜をパターン化した際に、多層反射膜で反射されるEUV光と、吸収体膜で反射されるEUV光とのコントラストが高いことが求められる。
パターン化された吸収体膜(吸収体膜パターン)は、EUV光を吸収してバイナリマスクとして機能してもよく、EUV光を反射しつつ多層反射膜からのEUV光と干渉してコントラストを生じせしめる位相シフトマスクとして機能してもよい。
また、吸収体膜としては、いわゆる反射防止機能を有する膜も挙げられる。つまり、吸収体膜が多層膜(複層構造の吸収体膜)である場合、吸収体膜の保護膜側とは反対側に配置される層は、検査光(例えば、波長193~248nm)を用いて吸収体膜パターン検査する際の反射防止膜であってもよい。
【0034】
吸収体膜パターンをバイナリマスクとして用いる場合には、吸収体膜がEUV光を吸収し、EUV光の反射率が低い必要がある。具体的には、EUV光が吸収体膜の表面に照射された際の、波長13.5nm付近のEUV光の反射率の最大値は、2%以下が好ましい。
吸収体膜(第1吸収体膜および第2吸収体膜)は、Ta、Ti、SnおよびCrからなる群から選択される1種以上の元素と、O、N、B、Hf、および、Hからなる群から選択される1種以上の元素とを含むことが好ましい。これらの中でも、NまたはBを含むことが好ましい。NまたはBを含むことで、吸収体膜の結晶状態をアモルファスまたは微結晶の構造にできる。
吸収体膜パターンをバイナリマスクとして用いる場合、吸収体膜の厚みは、40~70nmが好ましく、50~65nmがより好ましい。ただし、第1実施態様においては第2吸収体膜の厚みが20nm以上となるようにする。
【0035】
吸収体膜パターンを位相シフトマスクとして用いる場合には、吸収体膜のEUV光の反射率は2%以上が好ましい。位相シフト効果を十分に得るためには、吸収体膜のEUV光の反射率は9~15%が好ましい。位相シフトマスクとして吸収体膜を用いると、ウエハ上の光学像のコントラストが向上し、露光マージンが増加する。
位相シフトマスクを形成する材料としては、例えば、Cr、Nb、Ru、Ta、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される1種以上の元素を含む材料が挙げられる。
吸収体膜は、Ru、Re、Ir、Ag、Os、Au、PdおよびPtからなる群から選択される第1元素を含む第1層と、Nb、TaおよびCrからなる群から選択される第2元素を含む第2層とを含むことが好ましい。上記第1層および第2層は、N、O、B、SiおよびCからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことも好ましい。第1層が上記第1吸収体膜に該当し、第2層が上記第2吸収体膜に該当することも好ましい。
位相シフトマスクを形成する材料としては、例えば、上記元素の単体、上記元素を含む合金、上記元素の酸化物、上記元素の窒化物、上記元素の酸窒化物、上記元素のホウ化物、上記元素のケイ化物(シリサイド)、および、上記元素の炭化物、ならびに、上記元素を1種以上含む複合酸化物、上記元素を1種以上含む複合窒化物、上記元素を1種以上含む複合酸窒化物、上記元素を1種以上含む複合ホウ化物、上記元素を1種以上含む複合ケイ化物、および、上記元素を1種以上含む複合炭化物が挙げられる。
例えば、位相シフトマスクを形成する材料としては、Ru金属単体、Ru窒化物、Ru酸窒化物、Ta窒化物、Ta酸窒化物、RuとCr、Au、Pt、Re、Hf、TiおよびSiからなる群から選択される1種以上の金属とを含むRu合金、TaとNbとの合金、Ru合金またはTaNb合金と酸素とを含む酸化物、Ru合金またはTaNb合金と窒素とを含む窒化物、Ru合金またはTaNb合金と酸素と窒素とを含む酸窒化物等が例示される。
ただし、上記保護膜と接する層を形成する位相シフトマスクの材料は、上記保護膜を形成する材料とは異なる材料を選択する。
吸収体膜パターンを位相シフトマスクとして用いる場合、吸収体膜の厚みは、30~60nmが好ましく、35~55nmがより好ましい。ただし、第1実施態様においては第2吸収体膜の厚みが20nm以上となるようにする。
【0036】
吸収体膜の結晶状態は、アモルファスが好ましい。これにより、吸収体膜の平滑性および平坦度を高められる。また、吸収体膜の平滑性および平坦度が高くなると、吸収体膜パターンのエッジラフネスが小さくなり、吸収体膜パターンの寸法精度を高くできる。
【0037】
吸収体膜は、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法等の公知の成膜方法を用いて形成できる。例えば、吸収体膜として、マグネトロンスパッタリング法を用いて酸化Ru膜を形成する場合、Ruターゲットを用い、Arガスおよび酸素ガスを含むガスを供給してスパッタリングを行い、吸収体膜を成膜できる。
【0038】
図1において、吸収体膜14taは、第1吸収体膜14aおよび第2吸収体膜14bの2層構成である。
第2吸収体膜14bは、上述したように、シート抵抗値が500kΩ/sq.以上である層である。つまり、第2吸収体膜14bは、吸収体膜として機能するとともに、シート抵抗値が所定値以上である絶縁層に該当する。
上記シート抵抗値は、保護膜のシート抵抗値の測定方法と同様の方法で測定できる。
第2吸収体膜14bを構成する材料は、例えば、上記第2元素と、OおよびBからなる群から選択される元素とを含む材料が例示される。より具体的には、Ta酸化物、Ta酸窒化物、Taホウ化物、Ta酸ホウ化物、Cr酸化物、Cr酸窒化物およびCr酸ホウ化物が挙げられる。
【0039】
第2吸収体膜14のシート抵抗値は、500kΩ/sq.以上であり、1000kΩ/sq.以上が好ましい。上限は特に制限されないが、250GΩ/sq.以下が好ましく、50GΩ/sq.以下がより好ましい。
第2吸収体膜14bの厚みは、20nm以上であり、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。
【0040】
また、第1吸収体膜14aのシート抵抗値は、500kΩ/sq.未満が好ましく、1.0×103Ω/sq.未満が好ましく、7.5×102Ω/sq.以下がより好ましく、5.0×102Ω/sq.以下がさらに好ましい。第1吸収体膜14aのシート抵抗値の下限は特に制限されず、1.0×10-1Ω/sq.以上が好ましく、1.0×100Ω/sq.以上がより好ましい。
第1吸収体膜14aのシート抵抗値が500kΩ/sq.未満の場合、第1吸収体膜14aは、後述する非絶縁層に該当する。
上記シート抵抗値は、保護膜のシート抵抗値の測定方法と同様の方法で測定できる。
第1吸収体膜14aを構成する材料は、例えば、上記第1元素を含む材料が例示される。より具体的には、Ru金属単体、Ru窒化物、Ru酸化物、Ru酸窒化物、Ruホウ化物、Ir金属単体、Ir窒化物、Ir酸化物、Ir酸窒化物、Irホウ化物、Ta窒化物、および、Pt金属単体が挙げられる。
【0041】
[絶縁層]
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有する絶縁層は、シート抵抗値が、500kΩ/sq.以上の層である。
図1に示す態様においては、第2吸収体膜14bが絶縁層に該当する。
絶縁層は、単層構造であってもよく、互いに隣接する層で構成される複層構造であってもよい。絶縁層が単層構造である場合、絶縁層のシート抵抗値が500kΩ/sq.以上であり、かつ、絶縁層の厚みが20nm以上である。
また、本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様は、上記態様に制限されず、絶縁層が互いに隣接する層で構成される複層構造であってもよい。絶縁層が互いに隣接する層で構成される複層構造である場合、絶縁層を構成する各層のシート抵抗値がそれぞれ500kΩ/sq.以上であり、かつ、各層の合計厚みが20nm以上である。
シート抵抗値は、保護膜のシート抵抗値の測定方法に準じて測定できる。
絶縁層は、反射型マスクブランクの基板とは最も離れた表面側に配置されることも好ましい。
【0042】
[非絶縁層]
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様では、非絶縁層を有していてもよい。非絶縁層は、シート抵抗値が、500kΩ/sq.未満の層である。
図1に示す態様では第1吸収体膜14aが非絶縁層に該当する。
シート抵抗値は、保護膜のシート抵抗値の測定方法に準じて測定できる。
【0043】
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様が有していてもよい非絶縁層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。反射型マスクブランクが非絶縁層を2層以上有する場合、2層以上の非絶縁層は、互いに隣接して配置されていてもよく、他の層が2層以上の非絶縁層の間に配置されていてもよい。
【0044】
[ハードマスク膜]
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様は、ハードマスク膜を有していてもよい。ハードマスク膜は、吸収体膜の基板側とは反対側に配置されることが好ましい。ハードマスク膜を有する態様を
図2に示す。
図2に示す反射型マスクブランク10bは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、吸収体膜14taと、ハードマスク膜15をこの順に有する。ハードマスク膜15は、反射型マスクブランク10bの基板11とは最も離れた表面側に配置されている。吸収体膜14taは、基板11側から第1吸収体膜14aと、第2吸収体膜14bとから構成され、第2吸収体膜14bはシート抵抗値が500kΩ/sq.以上を示す絶縁層に該当する。なお、第2吸収体膜14bの厚みは、20nm以上である。
ハードマスク膜15以外の構成は、上述した通りである。
【0045】
ハードマスク膜を構成する材料に含まれる元素としては、Si、Ti、Cr、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、In、Sn、Hf、TaおよびIrからなる群から選択される少なくとも1種の元素が好ましい。
【0046】
ハードマスク膜としては、Si系膜、Cr系膜、Nb系膜、Mo系膜、Ru系膜、および、Ta系膜等、ドライエッチングに対して耐性の高い材料が用いられることが好ましい。上記ハードマスク膜は、上記元素と、O、N、C、BおよびHからなる群から選択される1種以上の元素とを含む材料からなる膜が好ましく、上記元素と、NおよびCからなる群から選択される1種以上の元素とを含む材料からなる膜がより好ましい。なお、以下、CrとOとを含む材料を、「CrO」のように、また、CrとOとNとを含む材料を「CrON」のようにも記載する。
Si系膜を構成する材料としては、例えば、Si(Si単体)、SiO2、SiON、SiN、SiO、SiC、SiCO、SiCN、およびSiCON等が挙げられる。
Cr系膜を構成する材料としては、例えば、Cr(Cr単体)、CrC、CrB、CrBN、CrO、CrN、および、CrON等が挙げられる。
Nb系膜を構成する材料としては、例えば、Nb(Nb単体)、NbC、NbB、NbBN、NbO、NbN、および、NbON等が挙げられる。
Mo系膜を構成する材料としては、例えば、Mo(Mo単体)、MoC、MoB、MoBN、MoO、MoN、および、MoON等が挙げられる。
Ru系膜を構成する材料としては、例えば、Ru(Ru単体)、RuC、RuB、RuBN、RuO、RuN、および、RuON等が挙げられる。
Ta系膜を構成する材料としては、例えば、Ta(Ta単体)、TaC、TaB、TaBN、TaO、TaN、および、TaON等が挙げられる。
【0047】
吸収体膜上にハードマスク膜を形成すると、吸収体膜パターンの最小線幅が小さくなっても、ドライエッチングを実施できる。そのため、吸収体膜パターンの微細化に対して有効である。
【0048】
ハードマスク膜の厚みは、1~20nmが好ましく、5~15nmがより好ましい。
【0049】
ハードマスク膜は公知の成膜方法で形成でき、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法により形成できる。
スパッタリング法によって、RuON膜を形成する場合、He、Ar、Ne、Kr、Xeのうち少なくともひとつを含む不活性ガスと酸素ガスと窒素ガスとを混合したガス雰囲気中で、Ruターゲットを用いた反応性スパッタリング法を実施すればよい。
【0050】
なお、
図2に示す態様において、ハードマスク膜15は、上記非絶縁層に該当してもよく、上記絶縁層の一部に該当してもよい。すなわち、
図2に示す態様のハードマスク膜のシート抵抗値は、500kΩ/sq.未満であってもよく、500kΩ/sq.以上であってもよい。
図2に示す態様において、ハードマスク膜15が非絶縁層に該当する場合、ハードマスク膜15のシート抵抗値は、1kΩ/sq.以下が好ましく、750Ω/sq.以下がより好ましく、500Ω/sq.以下がさらに好ましい。ハードマスク膜15のシート抵抗値の下限は特に制限されないが、0.1Ω/sq.以上が挙げられ、1Ω/sq.以上が好ましい。
シート抵抗値の測定方法は上述した通りである。
図2に示す態様において、ハードマスク膜15のシート抵抗値が1kΩ/sq.以下である場合、反射型マスクブランク10bの基板11とは最も離れた表面側に配置される層のシート抵抗値が、1kΩ/sq.以下である態様に該当する。
【0051】
[裏面導電膜]
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様は、基板の上記第1主面とは反対側の面(第2主面)に、裏面導電膜を有していてもよい。裏面導電膜を備えることにより、反射型マスクブランクは、静電チャックによる取り扱いが可能となる。
裏面導電膜は、シート抵抗値が低いことが好ましい。裏面導電膜のシート抵抗値は、例えば、200Ω/sq.以下が好ましく、100Ω/sq.以下がより好ましい。
裏面導電膜の構成材料としては、公知の文献に記載されているものから広く選択できる。例えば、特表2003-501823号公報に記載の高誘電率のコーティング、具体的には、Si、Mo、Cr、CrON、または、TaSiからなるコーティングを適用できる。また、裏面導電膜の構成材料は、Crと、B、N、O、およびCからなる群から選択される1種以上とを含むCr化合物、または、Taと、B、N、O、およびCからなる群から選択される1種以上をと含むTa化合物であってもよい。
裏面導電膜の厚さは、10~1000nmが好ましく、10~400nmがより好ましい。
また、裏面導電膜は、反射型マスクブランクの第2主面側の応力調整の機能を備えていてもよい。すなわち、裏面導電膜は、第1主面側に形成された各種膜からの応力とバランスをとって、反射型マスクブランクを平坦にするように調整できる。
裏面導電膜は、公知の成膜方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法といったスパッタリング法、CVD法、真空蒸着法、電解メッキ法を用いて形成できる。
【0052】
[絶縁破壊電圧]
本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様の絶縁破壊電圧は、3.00V以上が好ましい。絶縁破壊電圧は、反射型マスクブランクの基板とは最も離れた位置の表面と、保護膜との間で測定する。詳細な絶縁破壊電圧の測定方法は、後段の実施例の手順の部分の測定方法に従う。なお、絶縁破壊電圧は、エッチング等の方法で、保護膜を露出させて測定してもよい。
絶縁破壊電圧は、絶縁層に用いる材料、および、絶縁層の厚み等によって調整できる。
絶縁破壊電圧が大きいと、荷電粒子線による加工を行った際に、絶縁破壊の発生が抑制されやすい。
【0053】
<反射型マスクブランクの第1実施態様の変形例>
【0054】
以下、反射型マスクブランクの第1実施態様の変形例について説明する。なお、以下の変形例の態様においても、上述した反射型マスクブランクの第1実施態様が有していてもよい構成を有していてもよい。
【0055】
上述した
図1に示す本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様においては、吸収体膜14taは2層構造であり、保護膜13側から順に第1吸収体膜14aおよび第2吸収体膜14bで構成されるが、本発明はこの実施態様には限定されない。
例えば、本発明の反射型マスクブランクは、
図3に示す態様であってもよい。
図3に示す反射型マスクブランク10cは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、吸収体膜14tbとをこの順に有する。吸収体膜14tbは、基板11側から第2吸収体膜14bと、第1吸収体膜14aとから構成され、第2吸収体膜14bはシート抵抗値が500kΩ/sq.以上を示す絶縁層に該当する。なお、第2吸収体膜14bの厚みは、20nm以上である。
図3に示す態様において、第1吸収体膜14aと、第2吸収体膜14bとの位置が入れ替わっている以外は、
図1に示す態様と同様のため、各構成の説明を省略する。
【0056】
また、本発明の反射型マスクブランクは、例えば、吸収体膜が3層以上の構造であり、そのうちの1つの層が上述した厚み20nm以上の絶縁層に該当する態様であってもよい。例えば、吸収体膜が3層構造であり、基板側から第1吸収体膜、第2吸収体膜、および、第3吸収体膜が配置され、第3吸収体膜が厚み20nm以上の絶縁層であってもよい。すなわち、
図1に示す本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様において、第1吸収体膜14aが2層以上で構成されていてもよい。
【0057】
また、本発明の反射型マスクブランクは、例えば、吸収体膜が3層以上の構造であり、そのうちの互いに隣接する2つ以上の層が、隣接する層で構成される複層構造の絶縁層に該当し、合計厚みが20nm以上であってもよい。例えば、吸収体膜が3層構造であり、基板側から第1吸収体膜、第2吸収体膜、および、第3吸収体膜が配置され、第2吸収体膜および第3吸収体膜のシート抵抗値が500kΩ/sq.以上であって、第2吸収体膜および第3吸収体膜の合計厚みが20nm以上であってもよい。すなわち、
図1に示す本発明の反射型マスクブランクの第1実施態様において、第2吸収体膜14bが2層以上で構成されていてもよい。
また、吸収体膜が3層以上の構造であり、吸収体膜を構成する各層のシート抵抗値が500kΩ/sq.以上であって、吸収体膜の合計厚みが20nm以上であってもよい。
【0058】
また、本発明の反射型マスクブランクは、吸収体膜が単層構造であり、その単層自体が上述した厚み20nm以上の絶縁層に該当する態様であってもよい。すなわち、本発明の反射型マスクブランクは、
図4に示す態様であってもよい。
図4に示す反射型マスクブランク10dは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、吸収体膜14sとをこの順に有する。吸収体膜14sは、シート抵抗値が500kΩ/sq.以上を示す絶縁層に該当し、吸収体膜14sの厚みは、20nm以上である。
吸収体膜14sを構成する材料の好ましい態様は、
図1の態様における第2吸収体膜14bを構成する材料の好ましい態様と同様である。
図4に示す態様において、吸収体膜が単層構造である以外は、
図1に示す態様と同様のため、各構成の説明を省略する。
【0059】
また、上述した
図1に示す反射型マスクブランクの第1実施態様においては、第1吸収体膜14aは非絶縁層に該当したが、第1吸収体膜14aが絶縁層に該当してもよい。
【0060】
また、本発明の反射型マスクブランクにおいては、保護膜の吸収体膜側に、単層構造または互いに隣接する層で構成される複層構造の絶縁層が含まれればよく、上記態様とは異なり、吸収体膜とは別の部材の絶縁層が含まれる態様であってもよい。吸収体膜とは別の部材の絶縁層の厚みが20nm以上である場合、吸収体膜は絶縁層に該当しなくてもよい。
例えば、本発明の反射型マスクブランクは、
図2に示す態様において、第1吸収体膜14aおよび第2吸収体膜14bが絶縁層に該当せず、ハードマスク膜15が絶縁層(シート抵抗値が500kΩ/sq.以上)に該当し、ハードマスク膜15の厚みが20nm以上であってもよい。
【0061】
<反射型マスクブランクの第2実施態様>
本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様を
図5に示す。
図5に示す反射型マスクブランク10eは、基板11と、多層反射膜12と、保護膜13と、吸収体膜14tcと、ハードマスク膜15aをこの順に有する。ハードマスク膜15aは、反射型マスクブランク10eの基板11とは最も離れた表面側に配置され、ハードマスク膜15aのシート抵抗値は500kΩ/sq.以上である。吸収体膜14tcは、基板11側から第1吸収体膜14cと、第2吸収体膜14dとから構成され、第2吸収体膜14dのシート抵抗値は500kΩ/sq.以上である。また、第2吸収体膜14dと、ハードマスク膜15aとは、互いに隣接する。
なお、第2吸収体膜14dおよびハードマスク膜15aの厚みは、それぞれ20nm未満であって、第2吸収体膜14dおよびハードマスク膜15aの合計厚みが20nm以上である。すなわち、第2吸収体膜14dおよびハードマスク膜15aが、互いに隣接する層で構成される複層構造の絶縁層に該当する。
図5に示す、反射型マスクブランク10eにおいても、絶縁層である第2吸収体膜14dおよびハードマスク膜15aの合計厚みが20nm以上であるため、電界強度が大きくなりにくく、結果として絶縁破壊の発生が抑制される。
【0062】
図5に示す本発明の反射型マスクブランクの第2実施態様において、第2吸収体膜14dおよびハードマスク膜15aの厚み、ならびに、ハードマスク膜15aのシート抵抗値が異なる以外の構成は、第1実施態様の反射型マスクブランクの構成と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
<反射型マスクの製造方法および反射型マスク>
反射型マスクは、本発明の反射型マスクブランクが有する吸収体膜をパターニングして得られる。反射型マスクの製造方法の一例を、
図6を参照しながら説明する。なお、以下、
図4で説明した第1実施態様の変形例の反射型マスクブランク10dを用いて反射型マスクを製造する方法について説明するが、上記他の態様であっても、同様に反射型マスクを製造できる。
【0064】
図6の(a)は、基板11、多層反射膜12、保護膜13、および、吸収体膜14sをこの順に有する反射型マスクブランク上に、レジストパターン40を形成した状態を示す。レジストパターン40の形成方法は公知の方法を用いることができ、例えば、反射型マスクブランクの吸収体膜14s上にレジストを塗布し、露光および現像を行ってレジストパターン40を形成する。なお、レジストパターン40は、反射型マスクを用いてウエハ上に形成するパターンに対応する。
その後、
図6の(a)のレジストパターン40をマスクとして、吸収体膜14sをエッチングしてパターニングし、レジストパターン40を除去して、
図5の(b)に示す吸収体膜パターン14ptを有する積層体を得る。
なお、反射型マスクブランクがハードマスク膜を有する場合、吸収体膜14sのエッチングを行う前に、レジストパターン40の開口部に配置されているハードマスク膜をエッチングで除去し、吸収体膜14sをエッチングしてパターニングしてもよい。
次いで、
図6の(c)に示すように、
図6の(b)の積層体上に露光領域の枠に対応するレジストパターン41を形成し、
図6の(c)のレジストパターン41をマスクとしてドライエッチングを行う。ドライエッチングは、基板11に到達するまで実施する。ドライエッチング後、レジストパターン41を除去し、
図6の(d)に示す反射型マスクを得る。
【0065】
吸収体膜パターン14ptを形成する際のドライエッチングは、例えば、Cl系ガスを用いたドライエッチング、および、F系ガスを用いたドライエッチングが挙げられる。
反射型マスクブランクがハードマスク膜を有する場合、レジストパターン40の開口部に配置されているハードマスク膜のエッチングは、薬液を用いたウェットエッチングでもよく、ドライエッチングでもよい。ハードマスク膜のエッチングは、ハードマスク膜がエッチングされ、かつ、吸収体膜14sがエッチングされない方法を選択することも好ましい。
レジストパターン40または41の除去は、公知の方法で行えばよく、洗浄液による除去が挙げられる。洗浄液としては、硫酸-過酸化水素水溶液(SPM)、硫酸、アンモニア水、アンモニア-過酸化水素水溶液(APM)、OHラジカル洗浄水、および、オゾン水等が挙げられる。
【0066】
本発明の反射型マスクブランクの位相シフト膜をパターニングして得られる反射型マスクは、EUV光による露光に用いられる反射型マスクとして好適に適用できる。
【実施例0067】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
なお、後述する例1~3は実施例であり、例4~7は比較例である。
【0068】
<反射型マスクブランクの製造>
以下の手順で、例1の反射型マスクブランクを製造した。
基板としては、SiO2-TiO2系のガラス基板(外形が152mm角、厚さが約6.3mm)を使用した。このガラス基板は、熱膨張率が0.2×10-7/℃、ヤング率が67GPa、ポアソン比が0.17、比剛性が3.07×107m2/s2である。ガラス基板は、主面の表面粗さ(二乗平均平方根高さSq)が0.15nm以下、平坦度が100nm以下となるように研磨して使用した。
ガラス基板の裏面(加工した面とは反対側の面)上には、マグネトロンスパッタリング法を用いて、厚さが約100nmのCrN層を成膜し、静電チャック用の裏面導電膜を形成した。CrN層のシート抵抗値は約100Ω/□であった。
【0069】
次に、静電チャックを用いて、静電吸着方式によりガラス基板を成膜チャンバ内に固定した。この状態で、ガラス基板の第1の主面(加工した面)に、多層反射膜を成膜した。
多層反射膜の成膜には、イオンビームスパッタリング法を用い、厚さ2.3nmのMo層と、厚さ4.5nmのSi層とを交互に40回ずつ成膜し、Mo/Si多層反射膜を形成した。
Mo層の成膜には、Moターゲットを用い、Arガス雰囲気下でイオンビームスパッタリングを実施した(ガス圧:0.02Pa)。印加電圧は700Vとし、成膜速度は3.84nm/minとした。
一方、Si層の成膜には、ホウ素をドープしたSiターゲットを用い、Arガス雰囲気下でイオンビームスパッタリングを実施した(ガス圧:0.02Pa)。印加電圧は700Vとし、成膜速度は4.62nm/minとした。
多層反射膜の合計厚さ(目標値)は、(2.3nm+4.5nm)×40回=272nmである。なお、多層反射膜の最上層は、Si層とした。
【0070】
次に、イオンビームスパッタリング法により、多層反射膜の上に保護膜を形成した。
保護膜は、基板側から順に、Ru層およびRh層の2層構成とした。
Ru層の成膜には、Ruターゲットを用いて、Arガス雰囲気下でイオンビームスパッタリングを実施した(ガス圧:0.02Pa)。印加電圧は700Vとし、成膜速度は3.12nm/minとした。Ru層の厚みは、1.0nmとした。
Rh層の成膜には、Rhターゲットを用いて、Arガス雰囲気下でイオンビームスパッタリングを実施した(ガス圧:0.027Pa)。印加電圧は600Vとし、成膜速度は4.62nm/minとした。Rh層の厚みは、1.5nmとした。
【0071】
次に、イオンビームスパッタリング法およびマグネトロンスパッタリング法により、保護膜の上に吸収体膜を形成した。
吸収体膜は、基板側から順に、RuN層、TaN層およびTaON層の3層構成とした。なお、吸収体膜は、一部をマスクして形成した。
RuN層の成膜には、Ruターゲットを用いて、ArガスとN2ガスとの混合ガス(Arガス:80体積%、N2ガス:20体積%)雰囲気下でマグネトロンスパッタリングを実施した(ガス圧:0.2Pa)。印加電圧は700Vとし、成膜速度は3.0nm/minとした。RuN層の厚みは、29nmとした。
TaN層の成膜には、Taターゲットを用いて、ArガスとN2ガスとの混合ガス(Arガス:95体積%、N2ガス:5体積%)の雰囲気下で、マグネトロンスパッタリングを実施した。成膜速度は、1.74nm/minとし、TaN層の厚みは、8nmとした。
TaON層の成膜には、Taターゲットを用いて、ArガスとN2ガスとO2ガスとの混合ガス(Arガス:60体積%、N2ガス:30体積%、O2ガス:10体積%)の雰囲気下で、マグネトロンスパッタリングを実施した。成膜速度は、0.6nm/minとし、TaON層の厚みは、30nmとした。
【0072】
上記手順により、例1の反射型マスクブランクを得た。例1の反射型マスクブランクでは、上記手順でマスクした領域において、保護膜が露出し、それ以外の領域では吸収体膜が形成されていた。
例1および後述する例2~7の反射型マスクブランクの各層のシート抵抗値を上記方法で測定した結果を後段の表に示す。なお、例2~7の反射型マスクブランクは、以下のようにして得た。
【0073】
例2および4~7の反射型マスクブランクは、TaON層の厚みを後段の表に示す厚みに変更した以外は、例1の反射型マスクブランクと同様の手順で製造した。
【0074】
例3の反射型マスクブランクは、まず、TaON層の厚みを11nmとした以外は例1と同様にして各層を形成した。
続いて、TaON層上に、SiO層を成膜した。SiO層は、ハードマスク膜に該当する。
SiO層の成膜には、SiO2ターゲットを用いて、Arガス雰囲気下で高周波スパッタリングを実施した。SiO層の厚みは、25nmとした。
上記手順により、例3の反射型マスクブランクを得た。
【0075】
<測定および評価>
(絶縁破壊電圧の測定)
露出した保護膜と、反射型マスクブランクの最表面との間の絶縁破壊電圧を、マニュアルプローバー(ハイソル社製、型式:HMP-400)を用いて測定した。この際、保護膜に接触させる測定端子と、最表面に接触させる測定端子の基板平面方向の直線距離が、20mmとなるようにした。
なお、上記方法によれば、保護膜の電気抵抗値が小さい場合、最表面と、保護膜との間の絶縁破壊電圧が測定できる。
また、保護膜の電気抵抗値が小さい場合、絶縁破壊電圧は、主に保護膜よりも基板側とは反対側に存在する層の基板垂直方向の電気抵抗値およびその層の膜厚に依存し、基板の水平方向の電気抵抗値は無視できる。したがって、上記測定時の直線距離を20mmから100mmに変更して絶縁破壊電圧を測定しても、20mmの場合と同様の値となる。
絶縁破壊電圧の測定では、電圧を0Vから10mV/secの速度で掃引し、各電圧における電流値を記録して電流-電圧曲線を得た。得られた電流-電圧曲線は、一定の電圧を超えると急激に電流値が増加する形状であった。
ここで、急峻な電流値の増加は、電流-電圧曲線における傾きの変化量(電流値を電圧で2階微分した値)で評価した。具体的には、まず、上記方法で得られた電流-電圧曲線を設定最大電流値の100mAで規格化した。規格化した電流-電圧曲線において、電流値を電圧で2階微分した値が0.05よりも初めて大きくなった電圧値を、絶縁破壊電圧とした。
【0076】
(耐絶縁破壊性)
耐絶縁破壊性は、測定した絶縁破壊電圧に基づき、以下の基準で評価した。
実用上、A評価が好ましい。
・A:絶縁破壊電圧が3.00V以上
・B:絶縁破壊電圧が2.00V以上3.00V未満
・C:絶縁破壊電圧が2.00V未満
なお、絶縁破壊電圧が大きいほど、すなわち、耐絶縁破壊性に優れるほど、荷電粒子線による加工を行った際に、絶縁破壊の発生が抑制される。
【0077】
<結果>
各例の層構成と、絶縁破壊電圧および耐絶縁破壊性の評価結果を表1に示す。
なお、各層のシート抵抗値は、各層までを形成したサンプルを用い、上述した方法で測定した。
表1中、「シート抵抗値」欄の「>40M」の記載は、シート抵抗値が40MΩ/sq.以上であったことを表す。また、「10k」の記載中の「k」は、SI接頭辞の「キロ」を表し、シート抵抗値が10kΩ/sq.であったことを表す。
【0078】
【0079】
表1に示すように、例1~3の結果から、本発明の反射型マスクブランクは、耐絶縁破壊性に優れることが確認された。一方、例4~7の結果から、絶縁層の厚みが所定値以下の場合、耐絶縁破壊性に劣ることが確認された。
上述したように、耐絶縁破壊性に優れるほど、荷電粒子線による加工を行った際に、絶縁破壊の発生が抑制される。