(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114455
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電流センス回路
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01R19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020245
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正義
(72)【発明者】
【氏名】板坂 直哉
(72)【発明者】
【氏名】久保田 仁史輝
【テーマコード(参考)】
2G035
【Fターム(参考)】
2G035AB01
2G035AC02
2G035AD10
2G035AD11
2G035AD13
2G035AD14
2G035AD18
2G035AD20
2G035AD47
2G035AD56
(57)【要約】
【課題】回路規模の小型化を図りつつ同相入力範囲を広くすることができる電流センス回路を提供する。
【解決手段】電流検出信号生成回路41は、トランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとが等しくなるようなドレイン電流Idを抵抗R2に流すように動作し、ドレイン電流Idを電圧変換して電流検出信号Visを出力する。電流I1,I2を流すトランジスタM6,M7を設けて、トランジスタM6,M7の接続先を、トランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替える切替スイッチS1C,S2Cが設けられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス抵抗に発生する電圧降下を増幅した電流検出信号を出力する電流センス回路であって、
前記センス抵抗の一端に接続された第1の抵抗と、
前記センス抵抗の他端に接続された第2の抵抗と、
第1の電源電位が供給される第1の電源ラインと前記第1の抵抗との間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1の電源ラインと前記第2の抵抗との間に接続された第2のトランジスタとを有し、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのエミッタ電位又はソース電位が等しくなるような第1の電流を前記第2の抵抗に供給するように動作し、前記第1の電流を変換して前記電流検出信号として出力する電流検出信号生成回路と、
前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと第2の電源電位が供給される第2の電源ラインとの間に接続された第3の抵抗と、
前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースと前記第2の電源ラインとの間に接続された第4の抵抗とを備えた
電流センス回路。
【請求項2】
センス抵抗に発生する電圧降下を増幅した電流検出信号を出力する電流センス回路であって、
前記センス抵抗の一端との間に接続された第1の抵抗と、
前記センス抵抗の他端との間に接続された第2の抵抗と、
第1の電源電位が供給される第1の電源ラインと前記第1の抵抗との間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1の電源ラインと前記第2の抵抗との間に接続された第2のトランジスタとを有し、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのエミッタ電位又はソース電位が等しくなるような第1の電流を前記第2の抵抗に供給するように動作し、前記第1の電流を変換して前記電流検出信号として出力する電流検出信号生成回路と、
前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと第2の電源電位が供給される第2の電源ラインとの間に接続された第1の電流源と、
前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースと前記第2の電源ラインとの間に接続された第2の電流源とを備えた
電流センス回路。
【請求項3】
請求項1に記載の電流センス回路において、
前記第3の抵抗及び第4の抵抗の接続先を各々、前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと、前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースとの間で切り替える第1の切替部を備えた
電流センス回路。
【請求項4】
請求項2に記載の電流センス回路において、
前記第1の電流源及び前記第2の電流源の接続先を各々、前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと、前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースとの間で切り替える第2の切替部を備えた
電流センス回路。
【請求項5】
請求項3に記載の電流センス回路において、
前記第1の切替部にクロック信号を出力して制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第3の抵抗が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第4の抵抗が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続される第1の状態と、前記第3の抵抗が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第4の抵抗が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続される第2の状態とが交互に切り替わるように制御する
電流センス回路。
【請求項6】
請求項4に記載の電流センス回路において、
前記第2の切替部にクロック信号を出力して制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1の電流源が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第2の電流源が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続される第1の状態と、前記第1の電流源が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第2の電流源が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続される第2の状態とが交互に切り替わるように制御する
電流センス回路。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電流センス回路において、
前記クロック信号のデューティ比が可変に設けられている、
電流センス回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を検出するセンス抵抗に発生する電圧降下に相当する電流検出信号を出力する電流センス回路として、例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。特許文献1の電流センス回路は、同相入力電圧の範囲を広くするため、同相入力電圧が低いときに有効な演算増幅器と、同相入力電圧が高いときに有効な演算増幅器とを設けて同相入力範囲を広くする技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、2つの演算増幅器が必要となり、回路規模が大きく、チップサイズが増加してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路規模の小型化を図りつつ同相入力範囲を広くすることができる電流センス回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電流センス回路は、下記の[1]~[7]を特徴としている。
[1]
センス抵抗に発生する電圧降下を増幅した電流検出信号を出力する電流センス回路であって、
前記センス抵抗の一端に接続された第1の抵抗と、
前記センス抵抗の他端に接続された第2の抵抗と、
第1の電源電位が供給される第1の電源ラインと前記第1の抵抗との間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1の電源ラインと前記第2の抵抗との間に接続された第2のトランジスタとを有し、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのエミッタ電位又はソース電位が等しくなるような第1の電流を前記第2の抵抗に供給するように動作し、前記第1の電流を変換して前記電流検出信号として出力する電流検出信号生成回路と、
前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと第2の電源電位が供給される第2の電源ラインとの間に接続された第3の抵抗と、
前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースと前記第2の電源ラインとの間に接続された第4の抵抗とを備えた
電流センス回路であること。
[2]
センス抵抗に発生する電圧降下を増幅した電流検出信号を出力する電流センス回路であって、
前記センス抵抗の一端との間に接続された第1の抵抗と、
前記センス抵抗の他端との間に接続された第2の抵抗と、
第1の電源電位が供給される第1の電源ラインと前記第1の抵抗との間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1の電源ラインと前記第2の抵抗との間に接続された第2のトランジスタとを有し、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのエミッタ電位又はソース電位が等しくなるような第1の電流を前記第2の抵抗に供給するように動作し、前記第1の電流を変換して前記電流検出信号として出力する電流検出信号生成回路と、
前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと第2の電源電位が供給される第2の電源ラインとの間に接続された第1の電流源と、
前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースと前記第2の電源ラインとの間に接続された第2の電流源とを備えた
電流センス回路であること。
[3]
[1]に記載の電流センス回路において、
前記第3の抵抗及び第4の抵抗の接続先を各々、前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと、前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースとの間で切り替える第1の切替部を備えた
電流センス回路であること。
[4]
[2]に記載の電流センス回路において、
前記第1の電流源及び前記第2の電流源の接続先を各々、前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと、前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースとの間で切り替える第2の切替部を備えた
電流センス回路であること。
[5]
[3]に記載の電流センス回路において、
前記第1の切替部にクロック信号を出力して制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第3の抵抗が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第4の抵抗が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続される第1の状態と、前記第3の抵抗が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第4の抵抗が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続される第2の状態とが交互に切り替わるように制御する
電流センス回路であること。
[6]
[4]に記載の電流センス回路において、
前記第2の切替部にクロック信号を出力して制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1の電流源が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第2の電流源が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続される第1の状態と、前記第1の電流源が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第2の電流源が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続される第2の状態とが交互に切り替わるように制御する
電流センス回路であること。
[7]
[5]又は[6]に記載の電流センス回路において、
前記クロック信号のデューティ比が可変に設けられている、
電流センス回路であること。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回路規模の小型化を図りつつ同相入力範囲を広くすることができる電流センス回路を提供することができる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の電流センス回路を組み込んだバッテリの充電装置の一実施形態を示す回路図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における
図1に示す電流センス回路の詳細を示す回路図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態における
図1に示す電流センス回路の詳細を示す回路図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態における
図1に示す電流センス回路の詳細を示す回路図である。
【
図5】
図5は、電流I1,I2のミスマッチ度が異なる複数の
図4に示す電流センサ回路の電流検出信号Visのシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態の電流センス回路4は、
図1に示すように、例えばバッテリ3の充電装置1に用いられる。充電装置1は、トランジスタM11,M12、コイルLout、コンデンサCout、トランジスタM11,M12を制御する制御部2を有する周知の降圧型DC/DCコンバータから構成され、入力電圧V+を降圧した出力電圧Voutをバッテリ3に供給する。
【0012】
充電装置1は、コイルLoutに流れるインダクタ電流を検出するためのセンス抵抗Rsと、センス抵抗Rsに流れる電流Isを検出する電流センス回路4と、バッテリ3に供給される出力電圧Voutを検出する電圧検出抵抗R11,R12とを有している。制御部2には、電流センス回路4により検出された電流検出信号、電圧検出抵抗R11,R12により検出された電圧検出信号が供給される。制御部2は、これら電流検出信号、電圧検出信号に基づいてトランジスタM11,M12のオンオフを制御する。
【0013】
次に、上述した電流センス回路4の詳細について
図2を参照して説明する。同図に示すように、電流センス回路4は、センス抵抗Rsに発生する電圧降下Rs×Isを増幅した電流検出信号Visを出力する電流検出信号生成回路41と、電流検出信号生成回路41の同相入力範囲を拡大するための同相入力範囲拡大回路42とを備えている。
【0014】
電流検出信号生成回路41は、電流源411と、トランジスタQ11,第1のトランジスタとしてのトランジスタQ12と、トランジスタQ21,第2のトランジスタとしてのトランジスタQ22と、第1の抵抗としての抵抗R1,第2の抵抗としての抵抗R2と、抵抗R5,R6と、オペアンプ412と、トランジスタM2と、抵抗R7とを有している。
【0015】
電流源411は、第1の電源ラインとしての電源ラインL1と、トランジスタQ11,Q21のコレクタとの間に接続されている。電源ラインL1には、電圧源5から第1の電源電位としての電源V+が供給されている。トランジスタQ11,Q12、Q21,Q22は、NPN型のバイポーラトランジスタから構成されている。トランジスタQ11,Q21は、ベースとコレクタが接続されている。トランジスタQ12,Q22は、ベースがトランジスタQ11,Q21のベース及びコレクタに接続されている。トランジスタQ11,Q12のエミッタは互いに共通接続され、トランジスタQ21,Q22のエミッタは互いに共通接続されている。
【0016】
トランジスタQ11,Q12は、カレントミラー回路を構成し、トランジスタQ11に流れる電流がトランジスタQ12のエミッタ電流Ie1として折り返される。トランジスタQ21,Q22は、カレントミラー回路を構成し、トランジスタQ21に流れる電流がトランジスタQ22のエミッタ電流Ie2として折り返される。
【0017】
抵抗R1は、トランジスタQ11,Q12のエミッタと入力端子INNとの間に接続される。抵抗R2は、トランジスタQ21,Q22のエミッタと入力端子INPとの間に接続される。抵抗R1,R2は同一の抵抗値を有する(R1=R2)。入力端子INNは、センス抵抗Rsの一端に接続され、入力端子INPは、センス抵抗Rsの他端に接続される。抵抗R5は、トランジスタQ12のコレクタと電源ラインL1との間に接続される。抵抗R6は、トランジスタQ22のコレクタと電源ラインL1との間に接続される。抵抗R5,R6は同一の抵抗値を有する(R5=R6)。
【0018】
オペアンプ412は、非反転入力に抵抗R6とトランジスタQ22のコレクタとの接続点が接続され、反転入力に抵抗R5とトランジスタQ12のコレクタとの接続点が接続されている。オペアンプ412の出力は、トランジスタM2のゲートに接続されている。トランジスタM2は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM2は、ドレインにトランジスタQ22のエミッタが接続されている。抵抗R7は、トランジスタM2のソースと電源ラインL1との間に接続されている。
【0019】
以上の構成によれば、カレントミラー回路の働きにより、トランジスタQ12,Q22のエミッタ電位が等しい場合には、等しいエミッタ電流Ie1,Ie2が流れる。センス抵抗Rsに電流が流れていない場合、トランジスタQ11,Q12,Q21,Q22のエミッタは同じ電位となる。このとき、オペアンプ412は、トランジスタM2を制御して、ドレイン電流Idを遮断する。これに対して、センス抵抗Rsに電流が流れると、センス抵抗Rsで発生する電圧降下Rs×IsだけトランジスタQ11,Q12とトランジスタQ21,Q22とのエミッタに電位差が生じる。このため、オペアンプ412は、トランジスタM2を制御して、トランジスタQ11,Q12とトランジスタQ21,Q22とのエミッタが等しくなるように式(1)に示すドレイン電流Id(=第1の電流)を抵抗R2に供給する。
Id=Is×Rs/R2 …(1)
【0020】
式(1)からも明らかなように、ドレイン電流Idは、電流Isに応じた値である。
【0021】
電流検出信号生成回路41はさらに、トランジスタM3と、抵抗R8,R9と、オペアンプ413とを備え、ドレイン電流Idを電圧変換して電流検出信号Visとして出力端子OUTから出力する。抵抗R8,R9は、電源ラインL1とグランドラインL2との間に直列接続されている。第2の電源ラインとしてのグランドラインL2は、第2の電源電位としてのグランド電位が供給されている。トランジスタM3は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、抵抗R8,R9の間に接続されている。オペアンプ413は、非反転入力に抵抗R7及びトランジスタM2のソースに接続され、反転入力がトランジスタM3のソースに接続され、出力がトランジスタM3のゲートに接続される。
【0022】
オペアンプ413は、ドレイン電流Idが流れる抵抗R7とトランジスタM2のソースとの接続点電圧に応じた電流が抵抗R8,R9に流れるようにトランジスタM3を制御する。抵抗R9とトランジスタM3のドレインは出力端子OUTに接続され、出力端子OUTから電圧降下Rs×Isを増幅した電流検出信号Visが出力される。
【0023】
ところで、
図1に示すように、充電装置1に電流センス回路4を組み込んだ場合、入力端子INN,INPには、バッテリ電圧に応じた入力電圧Vsn,Vspが入力される。バッテリ電圧は、充電が進むと高くなり、これに応じて入力電圧Vsn,Vspも高くなる。入力電圧Vsn,Vspが高くなると、電圧V+と入力電圧Vsn,Vspとの差分が小さくなり、トランジスタQ11,Q12、Q21,Q22のベース・エミッタ電圧が最低動作電圧を下回る虞がある。
【0024】
そこで、本実施形態では、電流センス回路4は、同相入力範囲拡大回路42を備えている。同相入力範囲拡大回路42は、第3の抵抗としての抵抗R3,第4の抵抗としての抵抗R4と、トランジスタM4とを備えている。抵抗R3,R4は同一の抵抗値を有する(R3≒R4)。抵抗R3は、トランジスタQ11,Q12のエミッタと、グランドラインL2との間に接続されている。抵抗R4は、トランジスタQ21,Q22のエミッタと、グランドラインL2との間に接続されている。トランジスタM4は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM4は、抵抗R3,R4とグランドラインL2との間に接続されている。トランジスタM4は、入力電圧Vsn,Vspの同相入力が高いときにオンされ、低いときにオフされる。
【0025】
よって、同相入力が低い場合(=トランジスタM4がオフの場合)、トランジスタQ11,Q12のエミッタ電位VenとトランジスタQ21,Q22のエミッタ電位Vepは下記の式(2)で示される。
Ven=Vsn,Vep=Vsp …(2)
なお、式(2)においては、抵抗R1,R2に電流が流れることにより発生する電圧降下は無視している。
【0026】
また、同相入力が高い場合(=トランジスタM4がオンの場合)、エミッタ電位Ven,Vepは下記の式(3)で表される。
Ven=Vsn×R3/(R1+R3),
Vep=Vsp×R4/(R2+R4) …(3)
【0027】
以上の構成によれば、式(2)及び式(3)から明らかなように、同相入力が高い場合、抵抗R3,R4によりエミッタ電位Ven,Vepを低減させることができ、同相入力範囲を拡大することができる。
【0028】
また、上述した実施形態によれば、同相入力が低い場合は、抵抗R3,R4によりエミッタ電位Ven,Vepが低減されないため、精度よく電流Isを検出することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電流センス回路4Bについて
図3を参照して説明する。なお、
図3において、第1実施形態で既に説明した
図2に示す電流センス回路4と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、
図3からは
図2に示すオペアンプ413、トランジスタM3、抵抗R8,R9は省略されている。
【0030】
上述した第1実施形態では、抵抗R3,R4のミスマッチ(同一抵抗値とならない)による電流検出信号Visのばらつきや、同相入力依存性が発生する、という虞があった。そこで、第2実施形態では、抵抗R3,R4の接続をトランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替えて、抵抗R3,R4のミスマッチによる電流検出信号Visのばらつきや同相入力依存性の低減を図った。
【0031】
図3に示すように、電流センス回路4Bは、電流検出信号生成回路41と、同相入力範囲拡大回路42Bとを有している。
【0032】
電流検出信号生成回路41は、第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。同相入力範囲拡大回路42Bは、抵抗R3,R4と、第1の切替部421と、制御部422とを有している。抵抗R3は、グランドラインL2と第1の切替部421との間に接続されている。抵抗R4は、グランドラインL2と第1の切替部421との間に接続されている。
【0033】
第1の切替部421は、抵抗R3,R4の接続先を各々、トランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替える。第1の切替部421は、切替スイッチS1,S2を有する。切替スイッチS1は、抵抗R3の接続をトランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替える。切替スイッチS2は、抵抗R4の接続をトランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替える。
【0034】
今、
図3に示すように、切替スイッチS1,S2により、抵抗R3がトランジスタQ11,Q12のエミッタに接続され、抵抗R4がトランジスタQ21,Q22のエミッタに接続される状態を第1の状態とする。第1の状態において、エミッタ電位Ven,Vepは下記の式(4)で示される。
Ven=Vsn×R3/(R1+R3),
Vep=Vsp×R4/(R2+R4) …(4)
【0035】
次に、切替スイッチS1,S2により、抵抗R3がトランジスタQ21,Q22のエミッタに接続され、抵抗R4がトランジスタQ11,Q12のエミッタに接続される状態を第2の状態とする。第2の状態において、エミッタ電位Ven,Vepは下記の式(5)で示される。
Ven=Vsn×R4/(R1+R4),
Vep=Vsp×R3/(R2+R3) …(5)
【0036】
制御部422は、切替スイッチS1,S2に互いに反転されたクロック信号を供給する。制御部422は、例えばデューティ50%のクロック信号を出力する。これにより、制御部422は、第1の状態と第2の状態とに周期的に交互に切り替わるように切替スイッチS1,S2を制御する。このように、抵抗R3,R4の接続を切り替えることにより、エミッタ電位Ven,Vepは、抵抗R3,R4の抵抗値の平均に応じた値となり、抵抗R3,R4のミスマッチによる電流検出信号Visのばらつきの低減を図ることができる。
【0037】
また、第1実施形態と同様に入力電圧Vsn,Vspを抵抗R3,R4によって分圧して、エミッタ電位Ven,Vepを低減させることができるため、第1実施形態と同様に同相入力範囲を拡大することができる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の電流センス回路4Cについて
図4を参照して説明する。なお、
図4において、第1実施形態で既に説明した
図2に示す電流センス回路4と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、
図4からは
図2に示すオペアンプ413、トランジスタM3、抵抗R8,R9は省略されている。
【0039】
図4に示すように、電流センス回路4Cは、電流検出信号生成回路41と、同相入力範囲拡大回路42Cとを有している。
【0040】
電流検出信号生成回路41は、第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。同相入力範囲拡大回路42Cは、電流源423と、トランジスタM5~M7と、第2の切替部421Cとを有している。
【0041】
電流源423は、トランジスタM5に電流を供給する。トランジスタM5~M7は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM5は、ゲート・ドレインが接続されている。トランジスタM5は、ドレインが電流源423に接続され、ソースがグランドラインL2に接続されている。第1の電流源としてのトランジスタM6,第2の電流源としてのトランジスタM7は、ゲートがトランジスタM5のゲート・ドレインに接続されている。
【0042】
トランジスタM6は、ソースがグランドラインL2に接続され、ドレインが第2の切替部421Cに接続されている。トランジスタM7は、ソースがグランドラインL2に接続され、ドレインが第2の切替部421Cに接続されている。トランジスタM5~M7は、カレントミラー回路を構成し、トランジスタM5に流れる電流がトランジスタM6,M7に折り返される。トランジスタM6,M7により折り返される電流I1,I2は同一の電流値となるように設計されている(I1≒I2)。
【0043】
第2の切替部421Cは、切替スイッチS1C,S2Cを有している。切替スイッチS1Cは、トランジスタM6のドレインの接続をトランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替える。切替スイッチS2Cは、トランジスタM7のドレインの接続をトランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替える。
【0044】
今、
図4に示すように、切替スイッチS1C,S2Cにより、トランジスタM6がトランジスタQ11,Q12のエミッタに接続され、トランジスタM7がトランジスタQ21,Q22のエミッタに接続される状態を第1の状態とする。第1の状態において、エミッタ電位Ven,Vepは下記の式(6)で示される。
Ven=Vsn+R1×(Ie1-I1),
Vep=Vsp+R2×(Ie2+Id-I2) …(6)
【0045】
次に、切替スイッチS1C,S2Cにより、トランジスタM6がトランジスタQ21,Q22のエミッタに接続され、トランジスタM7がトランジスタQ11,Q12のエミッタに接続される状態を第2の状態とする。第2の状態において、エミッタ電位Ven,Vepは下記の式(7)で示される。
Ven=Vsn+R1×(Ie1-I2),
Vep=Vsp+R2×(Ie2+Id-I1) …(7)
【0046】
式(6),(7)からも明らかなように、トランジスタM6,M7に電流が流れる経路を設けることにより、エミッタ電位Ven,Vepを低減して、同相入力範囲を拡大することができる。電流I1,I2は、実際にはミスマッチ(同一電流値とならない)が生じる。
【0047】
本実施形態では、制御部422は、切替スイッチS1C,S2Cに互いに反転されたクロック信号を供給する。制御部422は、例えばデューティが50%のクロック信号を出力する。これにより、制御部422は、第1の状態と第2の状態とに周期的に交互に切り替わるように切替スイッチS1C,S2Cを制御する。このように、トランジスタM6,M7の接続を切り替えることにより、エミッタ電位Ven,Vepは、トランジスタM6,M7により折り返された電流I1,I2の平均に応じた値となり、電流I1,I2のミスマッチによる電流検出信号Visのばらつきの低減を図ることができる。
【0048】
本発明者らは、電流I1,I2のミスマッチ度合がそれぞれ異なる
図4に示す複数の電流センス回路4Cにおいて、同じ電流をセンス抵抗Rsに流した場合に電流検出信号Visについてモンテカルロシミュレーションを行った。結果を
図5に示す。なお、出力端子OUTにはフィルタを設け、電流検出信号Visの平均値を計測した。
【0049】
同図の左側に示すように、切替スイッチS1C,S2Cにクロックが入力される前、即ち切替スイッチS1C,S2Cが切り替えられていない場合、電流センス回路4Cごとに電流検出信号Visが大きくばらつく。これに対して、同図の右側に示すように、切替スイッチS1C,S2Cのクロックが入力され、切替スイッチS1C,S2Cの切替制御が行われると、電流検出信号Visのばらつきをクロック入力前の5分の1程度に抑えることができることが分かる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0051】
なお、第1実施形態では、抵抗R3,R4とグランドとの間にトランジスタM4を設けていたが、これに限ったものではない。電流検出精度が十分であれば、トランジスタM4を設けることは必須ではなく、抵抗R3,R4は直接グランドラインL2に接続されていてもよい。
【0052】
また、第3実施形態では、電流センス回路4Cは、切替スイッチS1C,S2Cを有していたが、これに限ったものではない。切替スイッチS1C,S2Cは必須ではない。電流検出精度が十分であれば、切替スイッチS1C,S2Cはなくてもよく、トランジスタM6をトランジスタQ11,Q12のエミッタに接続し、トランジスタM7をトランジスタQ21,Q22のエミッタに接続してもよい。
【0053】
第3及び第4実施形態では、制御部422は、デューティ50%のクロック信号を出力して切替スイッチS1,S2、S1C,S2Cを制御していたが、これに限ったものではない。抵抗R3,R4、電流I1,I2のミスマッチに起因する電流検出信号Visのばらつきは、デューティ50%のクロック信号により低減することができる。しかしながら、電流検出信号Visのばらつきの要因は、抵抗R3,R4、電流I1,I2のミスマッチだけでなない。そこで、クロック信号のデューティを可変にして、電流検出信号Visのオフセット電圧が一定範囲内となるようなデューティに調整するようにしてもよい。
【0054】
上述した実施形態によれば、電流検出信号生成回路41は、4つのトランジスタQ11,Q12、Q21,Q22を有していたが、これに限ったものではない。例えば、カレントミラー回路を構成する2つのトランジスタの一方を第1のトランジスタとし、他方を第2のトランジスタとし、電流検出信号生成回路41は2つのトランジスタを有していてもよい。この場合は、2つのトランジスタの一方のコレクタとベースを接続し、他方のトランジスタのベースと接続し、電流源411は電源ラインL1と2つのトランジスタの一方のコレクタとの間に接続する構成とすればよい。なお、他方のトランジスタのコレクタは、別の電流源や抵抗を介して電源ラインL1に接続するなど、コレクタ電流を供給する構成とすればよい。
【0055】
上述した実施形態によれば、トランジスタQ11,Q12、Q21,Q22としてはバイポーラトランジスタを用いていたが、これに限ったものではない。トランジスタQ11,Q12、Q21,Q22としては電界効果トランジスタから構成されていてもよい。この場合、NPN型をNチャンネル、トランジスタQ11,Q12、Q21,Q22のベースをゲート、エミッタをソース、コレクタをドレインに読み替えて説明することができる。
【0056】
上述した実施形態によれば、抵抗R3,R4や電流I1,I2によりエミッタ電位Ven,Vepを低減させて、同相入力範囲を拡大させていたが、これに限ったものではない。
図1~
図5に示すトランジスタQ11,Q12、Q21,Q22、M2~M7の導電型を逆にして、電圧源5の正極に接続されている部分をグランドに接続し、グランドに接続されている部分を電圧源5の正極に接続してもよい。この場合、同相入力が低下するとトランジスタQ11,Q12、Q21,Q22のベース・エミッタ電圧が最低動作電圧を下回る場合には、抵抗R3,R4や電流I1,I2によりエミッタ電位Ven,Vepを増加させて、同相入力範囲を拡大する。
【符号の説明】
【0057】
4,4B,4C 電流センス回路
41 電流検出信号生成回路
421 第1の切替部
421C 第2の切替部
422 制御部
Id ドレイン電流(第1の電流)
L1 電源ライン(第1の電源ライン)
L2 グランドライン(第2の電源ライン)
M6 トランジスタ(第1の電流源)
M7 トランジスタ(第2の電流源)
Q12 トランジスタ(第1のトランジスタ)
Q22 トランジスタ(第2のトランジスタ)
R1 抵抗(第1の抵抗)
R2 抵抗(第2の抵抗)
R3 抵抗(第3の抵抗)
R4 抵抗(第4の抵抗)
Rs センス抵抗
Vis 電流検出信号
V+ 電圧(第1の電源電圧)