(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114456
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電流センス回路
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01R19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020246
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正義
(72)【発明者】
【氏名】板坂 直哉
(72)【発明者】
【氏名】久保田 仁史輝
【テーマコード(参考)】
2G035
【Fターム(参考)】
2G035AB01
2G035AC02
2G035AD10
2G035AD11
2G035AD13
2G035AD14
2G035AD18
2G035AD20
2G035AD47
2G035AD56
(57)【要約】
【課題】電流検出信号のオフセット電圧のばらつきを低減できる電流センス回路を提供する。
【解決手段】第1の切替部42が、抵抗R1及び抵抗R2の接続先を各々、トランジスタQ12のエミッタとトランジスタQ22のエミッタとの間で切り替える。第2の切替部43が、トランジスタQ12及びトランジスタQ22のコレクタの接続先を各々、オペアンプ44の反転入力及び非反転入力の間で切り替える。オペアンプ44は、トランジスタQ12、Q22のエミッタ電位が等しくなるようなドレイン電流Idを抵抗R2に供給するように動作する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス抵抗に発生する電圧降下を増幅した電流検出信号を出力する電流センス回路であって、
前記センス抵抗の一端に接続された第1の抵抗と、
前記センス抵抗の他端に接続された第2の抵抗と、
第1の電源電位が供給される第1の電源ラインと前記第1の抵抗又は前記第2の抵抗との間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1の電源ラインと前記第1の抵抗又は前記第2の抵抗との間に接続された第2のトランジスタと、
前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗の接続先を各々、前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースとの間で切り替える第1の切替部と、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインが入力され、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのエミッタ電位又はソース電位が等しくなるような第1の電流を前記第2の抵抗に供給するように動作するオペアンプと、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインの接続先を各々、前記オペアンプの反転入力及び非反転入力の間で切り替える第2の切替部とを備えた
電流センス回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電流センス回路であって、
前記第1の切替部及び前記第2の切替部にクロック信号を出力して制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1の抵抗が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第2の抵抗が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第1のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記オペアンプの反転入力に接続され、かつ、前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記オペアンプの非反転入力に接続された第1の状態と、前記第1の抵抗が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第2の抵抗が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第1のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記オペアンプの非反転入力に接続され、かつ、前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記オペアンプの反転入力に接続された第2の状態とが交互に切り替わるように制御する
電流センス回路。
【請求項3】
請求項2に記載の電流センス回路において、
前記クロック信号のデューティ比が可変に設けられている、
電流センス回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を検出するセンス抵抗に発生する電圧降下に相当する電流検出信号を出力する電流センス回路として、例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。特許文献1の電流センス回路は、センス抵抗の両端電圧を増幅して、電流検出信号として出力するオペアンプを有している。
【0003】
しかしながら、上述した電流センス回路は、製品ごとに電流検出信号のオフセット電圧がばらつく、という問題があった。そこで、特許文献1に特許文献2の技術を適応してオペアンプとしてチョッパオペアンプを用いて、オフセット電圧のばらつきを低減させることが考えられる。
【0004】
特許文献1に特許文献2の技術を適用すれば、オペアンプ自体のオフセット電圧のばらつきは低減できる。しかしながら、オペアンプの2つの入力とセンス抵抗の両端との間に各々接続される2つの抵抗のばらつきに起因するオフセット電圧のばらつきを低減することができず、十分にオフセット電圧のばらつきを低減することができない、という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7239204号明細書
【特許文献2】米国特許第10396724号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電流検出信号のオフセット電圧のばらつきを低減できる電流センス回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電流センス回路は、下記の[1]~[3]を特徴としている。
[1]
センス抵抗に発生する電圧降下を増幅した電流検出信号を出力する電流センス回路であって、
前記センス抵抗の一端に接続された第1の抵抗と、
前記センス抵抗の他端に接続された第2の抵抗と、
第1の電源電位が供給される第1の電源ラインと前記第1の抵抗又は前記第2の抵抗との間に接続された第1のトランジスタと、
前記第1の電源ラインと前記第1の抵抗又は前記第2の抵抗との間に接続された第2のトランジスタと、
前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗の接続先を各々、前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースと前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースとの間で切り替える第1の切替部と、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインが入力され、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのエミッタ電位又はソース電位が等しくなるような第1の電流を前記第2の抵抗に供給するように動作するオペアンプと、
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインの接続先を各々、前記オペアンプの反転入力及び非反転入力の間で切り替える第2の切替部とを備えた
電流センス回路であること。
[2]
[1]に記載の電流センス回路であって、
前記第1の切替部及び前記第2の切替部にクロック信号を出力して制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1の抵抗が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第2の抵抗が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第1のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記オペアンプの反転入力に接続され、かつ、前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記オペアンプの非反転入力に接続された第1の状態と、前記第1の抵抗が前記第2のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第2の抵抗が前記第1のトランジスタのエミッタ又はソースに接続され、かつ、前記第1のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記オペアンプの非反転入力に接続され、かつ、前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記オペアンプの反転入力に接続された第2の状態とが交互に切り替わるように制御する
電流センス回路であること。
[3]
[2]に記載の電流センス回路において、
前記クロック信号のデューティ比が可変に設けられている、
電流センス回路であること。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電流検出信号のオフセット電圧のばらつきを低減できる電流センス回路を提供することができる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の電流センス回路を組み込んだバッテリの充電装置の一実施形態を示す回路図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における
図1に示す電流センス回路の詳細を示す回路図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態における
図1に示す電流センス回路の詳細を示す回路図である。
【
図4】
図4は、抵抗R1,R2のミスマッチ度が異なる複数の
図3に示す電流センス回路の電流検出信号Visのシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態の電流センス回路4は、
図1に示すように、例えばバッテリ3の充電装置1に用いられる。充電装置1は、トランジスタM11,M12、コイルLout、コンデンサCout、トランジスタM11,M12を制御する制御部2を有する周知の降圧型DC/DCコンバータから構成され、入力電圧V+を降圧した出力電圧Voutをバッテリ3に供給する。
【0013】
充電装置1は、コイルLoutに流れるインダクタ電流を検出するためのセンス抵抗Rsと、センス抵抗Rsに流れる電流Isを検出する電流センス回路4と、バッテリ3に供給される出力電圧Voutを検出する電圧検出抵抗R11,R12とを有している。制御部2には、電流センス回路4により検出された電流検出信号、電圧検出抵抗R11,R12により検出された電圧検出信号が供給される。制御部2は、これら電流検出信号、電圧検出信号に基づいてトランジスタM11,M12のオンオフを制御する。
【0014】
次に、上述した電流センス回路4の詳細について
図2を参照して説明する。同図に示すように、電流センス回路4は、電流源41と、トランジスタQ11,第1のトランジスタとしてのトランジスタQ12と、トランジスタQ21,第2のトランジスタとしてのトランジスタQ22と、第1の抵抗としての抵抗R1,第2の抵抗としての抵抗R2と、第1の切替部42と、抵抗R5,R6と、第2の切替部43と、オペアンプ44と、トランジスタM2と、抵抗R7と、制御部45とを有している。
【0015】
電流源41は、第1の電源電位としての電圧V+が供給される第1の電源ラインとしての電源ラインLと、トランジスタQ11,Q21のコレクタとの間に接続されている。トランジスタQ11,Q12、Q21,Q22は、NPN型のバイポーラトランジスタから構成されている。トランジスタQ11,Q21は、自身のベースとコレクタが接続されている。トランジスタQ12,Q22は、ベースがトランジスタQ11,Q21のベース及びコレクタに接続されている。トランジスタQ11,Q12のエミッタは互いに共通接続され、トランジスタQ21,Q22のエミッタは互いに共通接続されている。
【0016】
トランジスタQ11,Q12は、カレントミラー回路を構成し、トランジスタQ11に流れる電流がトランジスタQ12のエミッタ電流Ie1として折り返される。トランジスタQ21,Q22は、カレントミラー回路を構成し、トランジスタQ21に流れる電流がトランジスタQ22のエミッタ電流Ie2として折り返される。
【0017】
抵抗R1は、入力端子INNに接続される。抵抗R2は、入力端子INPに接続される。抵抗R1,R2は同一の抵抗値を有する(R1≒R2)。入力端子INNは、センス抵抗Rsの一端に接続され、入力端子INPは、センス抵抗Rsの他端に接続される。第1の切替部42は、抵抗R1,R2の接続先を各々、トランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替える。
【0018】
第1の切替部42は、切替スイッチS1,S2を有している。切替スイッチS1は、抵抗R1とトランジスタQ11,Q12、Q21,Q22との間に設けられ、抵抗R1の接続先をトランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替える。切替スイッチS2は、抵抗R2とトランジスタQ11,Q12、Q21,Q22との間に設けられ、抵抗R2の接続先をトランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替える。
【0019】
抵抗R5は、トランジスタQ12のコレクタと電源ラインLとの間に接続される。抵抗R6は、トランジスタQ22のコレクタと電源ラインLとの間に接続される。抵抗R5,R6は同一の抵抗値を有する(R5=R6)。第2の切替部43は、トランジスタQ12,Q22のコレクタの接続先を各々、後述するオペアンプ44の反転入力と非反転入力との間で切り替える。
【0020】
第2の切替部43は、切替スイッチS3,S4を有している。切替スイッチS3は、抵抗R5及びトランジスタQ12のコレクタの接続点と、後述するオペアンプ44の反転入力及び非反転入力との間に設けられている。切替スイッチS3は、トランジスタQ12のコレクタの接続先をオペアンプ44の反転入力と非反転入力との間で切り替える。
【0021】
切替スイッチS4は、抵抗R6及びトランジスタQ22のコレクタの接続点と、オペアンプ44の反転入力及び非反転入力との間に設けられている。切替スイッチS4は、トランジスタQ22のコレクタの接続先をオペアンプ44の反転入力と非反転入力との間で切り替える。
【0022】
オペアンプ44の出力は、トランジスタM2のゲートに接続されている。トランジスタM2は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM2は、ドレインが抵抗R2と切替スイッチS2の接続点に接続されている。抵抗R7は、トランジスタM2のソースと電源ラインLとの間に接続されている。
【0023】
次に、第1の切替部42、第2の切替部43がなく、抵抗R1がトランジスタQ11,Q12のエミッタ、抵抗R2がトランジスタQ21,Q22のエミッタに接続され、トランジスタQ12のコレクタがオペアンプ44の反転入力、トランジスタQ22のコレクタがオペアンプ44の非反転入力に接続されている従来の電流センス回路4の基本動作について説明する。
【0024】
カレントミラー回路の働きにより、トランジスタQ12,Q22のエミッタ電位が等しい場合には、等しいエミッタ電流Ie1,Ie2が流れる。センス抵抗Rsに電流が流れていない場合、入力端子INN,INPに入力される電圧Vn,Vpは等しいため、トランジスタQ11,Q12,Q21,Q22のエミッタ電位Ven,Vepは同じ電位となる。
【0025】
これに対して、センス抵抗Rsに電流が流れると、下記の式(1)に示すようにセンス抵抗Rsで発生する電圧降下Rs×IsだけトランジスタQ11,Q12とトランジスタQ21,Q22とのエミッタに電位差ΔVeが生じる。
ΔVe=Rs×Is …(1)
【0026】
このため、オペアンプ44は、トランジスタM2を制御して、トランジスタQ11,Q12とトランジスタQ21,Q22とのエミッタ電位Ven,Vepが等しくなるように式(2)に示すドレイン電流Id(=第1の電流)を抵抗R2に供給する。
Id=Is×Rs/R2 …(2)
【0027】
電流センス回路4はさらに、トランジスタM3と、抵抗R8,R9と、オペアンプ46とを備え、ドレイン電流Idを電圧変換して電流検出信号Visとして出力端子OUTから出力する。抵抗R8,R9は、電源ラインLとグランドとの間に直列接続されている。トランジスタM3は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、抵抗R8,R9の間に接続されている。オペアンプ46は、非反転入力に抵抗R7及びトランジスタM2のソースに接続され、反転入力がトランジスタM3のソースに接続され、出力がトランジスタM3のゲートに接続される。
【0028】
オペアンプ46は、ドレイン電流Idが流れる抵抗R7とトランジスタM2のソースとの接続点電圧に応じた電流が抵抗R8,R9に流れるようにトランジスタM3を制御する。抵抗R9とトランジスタM3のドレインは出力端子OUTに接続され、出力端子OUTから電圧降下Rs×Isを増幅した電流検出信号Visが出力される。
【0029】
ところで、抵抗R1,R2にミスマッチ(同一抵抗値とならない)が生じると、下記の式(3)に示すように、上述したエミッタ電位差ΔVeにはセンス抵抗Rsで発生する電圧降下Rs×Isに加えて抵抗R1,R2で発生する電圧降下の差分が加算される。
ΔVe=Rs×Is+(R1-R2)×Ie1(=Ie2) …(3)
よって、ドレイン電流Idは、式(4)に示すように、抵抗R1の抵抗値から抵抗R2の抵抗値を差し引いた値(R1-R2)に応じたオフセットが加算され、ドレイン電流Idに応じた電流検出信号Visのオフセット電圧がばらつく。
Id={Is×Rs+(R1-R2)×Ie1}/R2 …(4)
【0030】
そこで、本実施形態では、抵抗R1,R2の接続先をトランジスタQ11,Q12のエミッタと、トランジスタQ21,Q22のエミッタとの間で切り替えると共に、トランジスタQ12,Q22のコレクタの接続先をオペアンプ44の非反転入力と反転入力との間で切り替えることにより、抵抗R1,R2のミスマッチによる電流検出信号Visのばらつきの低減を図った。
【0031】
今、
図2に示すように、切替スイッチS1,S2により抵抗R1がトランジスタQ11,Q12のエミッタ、抵抗R2がトランジスタQ21,Q22のエミッタに接続され、切替スイッチS3,S4によりトランジスタQ12のコレクタがオペアンプ44の反転入力、トランジスタQ22のコレクタがオペアンプ44の非反転入力に接続された状態を第1の状態とする。第1の状態において、ドレイン電流Idは上記式(4)で示される。
【0032】
次に、切替スイッチS1,S2により抵抗R1がトランジスタQ21,Q22のエミッタ、抵抗R2がトランジスタQ11,Q12のエミッタに接続され、切替スイッチS3,S4によりトランジスタQ12のコレクタがオペアンプ44の非反転入力、トランジスタQ22のコレクタがオペアンプ44の反転入力に接続されている状態を第2の状態とする。
【0033】
第2の状態において、ドレイン電流Idは、式(5)に示すように、第1の状態とは逆に抵抗R2の抵抗値から抵抗R1の抵抗値を差し引いた値(R2-R1)に応じたオフセットが加算される。
Id={Is×Rs+(R2-R1)×Ie1}/R2 …(5)
【0034】
制御部45は、切替スイッチS1,S2に互いに反転されたクロック信号を供給するとともに切替スイッチS3,S4に互いに反転されたクロック信号を供給する。制御部45は、例えばデューティ50%のクロック信号を出力する。これにより、制御部45は、第1の状態と第2の状態とに周期的に交互に切り替わるように切替スイッチS1,S2、S3,S4を制御する。このように、第1の状態と第2の状態とを交互に切り替えることにより、ドレイン電流Idは、抵抗R1,R2のばらつきが相殺された値となり、抵抗R1,R2のミスマッチによる電流検出信号Visのばらつきの低減を図ることができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の電流センス回路4Bについて
図3を参照して説明する。なお、
図3において、第1実施形態で既に説明した
図2に示す電流センス回路4と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。なお、
図3からは
図2に示すオペアンプ46、抵抗R8,R9、トランジスタM3については省略している。
【0036】
第1実施形態と第2実施形態とで大きく異なる点は、第2の切替部43Bの構成である。第2の切替部43B以外の部分は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
第2の切替部43Bは、切替スイッチS3B,S4Bを有している。切替スイッチS3Bは、抵抗R5とオペアンプ44の反転入力との接続点と、トランジスタQ12,Q22のコレクタとの間に設けられている。切替スイッチS3Bを切り替えることにより、オペアンプ44の反転入力をトランジスタQ12のコレクタと、トランジスタQ22のコレクタとの間で切り替える。切替スイッチS4Bは、抵抗R6とオペアンプ44の非反転入力との接続点と、トランジスタQ12,Q22のコレクタとの間に設けられている。切替スイッチS4Bを切り替えることにより、オペアンプ44の非反転入力をトランジスタQ12のコレクタと、トランジスタQ22のコレクタとの間で切り替える。
【0038】
今、
図3に示すように、切替スイッチS1,S2により抵抗R1がトランジスタQ11,Q12のエミッタ、抵抗R2がトランジスタQ21,Q22のエミッタに接続され、切替スイッチS3B,S4BによりトランジスタQ12のコレクタがオペアンプ44の反転入力、トランジスタQ22のコレクタがオペアンプ44の非反転入力に接続された状態を第1の状態とする。
【0039】
次に、切替スイッチS1,S2により抵抗R1がトランジスタQ21,Q22のエミッタ、抵抗R2がトランジスタQ11,Q12のエミッタに接続され、切替スイッチS3B,S4BによりトランジスタQ12のコレクタがオペアンプ44の非反転入力、トランジスタQ22のコレクタがオペアンプ44の反転入力に接続されている状態を第2の状態とする。
【0040】
制御部45(
図3には不図示)は、第1実施形態と同様に、第1の状態と第2の状態とに周期的に交互に切り替わるように切替スイッチS1,S2、S3B,S4Bを制御する。これにより、第1実施形態と同様に、抵抗R1,R2のミスマッチによる電流検出信号Visのばらつきの低減を図ることができる。
【0041】
本発明者らは、抵抗R1,R2のミスマッチ度合がそれぞれ異なる
図3に示す複数の電流センス回路4Bにおいて、同じ電流をセンス抵抗Rsに流した場合に電流検出信号Visについてモンテカルロシミュレーションを行った。結果を
図4に示す。なお、出力端子OUTにはフィルタを設け、電流検出信号Visの平均値を計測した。
【0042】
同図の左側に示すように、切替スイッチS1,S2、S3B,S4Bにクロックが入力される前、即ち切替スイッチS1,S2、S3B,S4Bが切り替えられていない場合、電流センス回路4Bごとに電流検出信号Visが大きくばらつく。これに対して、同図の右側に示すように、切替スイッチS1,S2、S3B,S4Bのクロックが入力され、切替スイッチS1,S2、S3B,S4Bの切替制御が行われると、電流検出信号Visのばらつきはクロック入力前の半分程度に抑えることができることが分かる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0044】
第1及び第2実施形態では、制御部45は、デューティ50%のクロック信号を出力して切替スイッチS1,S2、S3,S4、S3B,S4Bを制御していたが、これに限ったものではない。抵抗R1,R2のミスマッチに起因する電流検出信号Visのばらつきは、デューティ50%のクロック信号により低減することができる。しかしながら、電流検出信号Visのばらつきの要因は、抵抗R1,R2のミスマッチだけでなない。そこで、クロック信号のデューティを可変にして、電流検出信号Visのオフセット電圧が一定範囲内となるようなデューティに調整するようにしてもよい。
【0045】
上述した実施形態によれば、電流センス回路4は、4つのトランジスタQ11,Q12、Q21,Q22を有していたが、これに限ったものではない。例えば、カレントミラー回路を構成する2つのトランジスタの一方を第1のトランジスタとし、他方を第2のトランジスタとし、電流センス回路4は2つのトランジスタを有していてもよい。この場合は、2つのトランジスタの一方のコレクタとベースを接続し、他方のトランジスタのベースと接続し、電流源411は電源ラインL1と2つのトランジスタの一方のコレクタとの間に接続する構成とすればよい。なお、他方のトランジスタのコレクタは、別の電流源や抵抗を介して電源ラインL1に接続するなど、コレクタ電流を供給する構成とすればよい。
【0046】
上述した実施形態によれば、トランジスタQ11,Q12、Q21,Q22としてはバイポーラトランジスタを用いていたが、これに限ったものではない。トランジスタQ11,Q12、Q21,Q22としては電界効果トランジスタから構成されていてもよい。この場合、NPN型をNチャンネル、トランジスタQ11,Q12、Q21,Q22のベースをゲート、エミッタをソース、コレクタをドレインに読み替えて説明することができる。
【0047】
また、
図2及び
図3に示すトランジスタQ11,Q12、Q21,Q22、M2、M3の導電型を逆にして、電源ラインLにグランドを供給し、グランドに接続されている電源ラインに電圧V+を供給してもよい。
【符号の説明】
【0048】
4,4B 電流センス回路
42 第1の切替部
43,43B 第2の切替部
44 オペアンプ
45 制御部
Id ドレイン電流(第1の電流)
L 電源ライン(第1の電源ライン)
Q12 トランジスタ(第1のトランジスタ)
Q22 トランジスタ(第2のトランジスタ)
R1 抵抗(第1の抵抗)
R2 抵抗(第2の抵抗)
Rs センス抵抗
Vis 電流検出信号
V+ 電圧(第1の電源電位)