(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114491
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240816BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/68 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020293
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】畑中 貴之
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BB03
5F131BB23
5F131DA22
5F131DA32
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5F131DA42
5F131DB02
5F131DB22
5F131DB43
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5F131DB82
5F131EA03
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5F131HA12
5F131HA13
5F131KA34
5F131KA52
5F131KA72
5F131KB07
5F131KB54
(57)【要約】
【課題】真空部における基板の搬送を正確に行う。
【解決手段】真空搬送モジュールと、前記真空搬送モジュール内に配置され、エンドエフェクタを有する搬送ロボットと、前記エンドエフェクタ上に配置される2つの静電容量センサと、前記真空搬送モジュールに接続されるロードロックモジュールと、前記真空搬送モジュールに接続される基板処理モジュールと、前記基板処理モジュール内に配置される基板支持部と、制御部と、を備え、前記制御部は、基板を受け取る工程と、基板のノッチの位置と基準ノッチ位置との間の差分を決定する工程と、回転位置を調整しながら基板を前記基板処理モジュール内の前記基板支持部上に載置する工程と、を行うように構成される、基板処理装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空搬送モジュールと、
前記真空搬送モジュール内に配置され、エンドエフェクタを有する搬送ロボットと、
前記エンドエフェクタ上に配置される2つの静電容量センサと、
前記真空搬送モジュールに接続されるロードロックモジュールと、
前記真空搬送モジュールに接続される基板処理モジュールと、
前記基板処理モジュール内に配置される基板支持部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
(a)前記ロードロックモジュールにおいて前記エンドエフェクタで基板を受け取る工程と、
(b)前記2つの静電容量センサからの出力に基づいて、前記エンドエフェクタ上の基板のノッチの位置と基準ノッチ位置との間の差分を決定する工程と、
(c)決定した前記差分に基づいて、前記エンドエフェクタ上の基板のノッチの位置が前記基準ノッチ位置に対応するように前記エンドエフェクタ上の基板の回転位置を調整しながら、前記エンドエフェクタ上の基板を前記基板処理モジュール内の前記基板支持部上に載置する工程と、
を行うように構成される、基板処理装置。
【請求項2】
前記2つの静電容量センサが、前記エンドエフェクタ上の前記基準ノッチ位置を囲むように前記エンドエフェクタ上に配置される、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記2つの静電容量センサは、第1の静電容量センサ及び第2の静電容量センサを含み、
前記第1の静電容量センサは、前記基準ノッチ位置の左側に配置され、前記基準ノッチ位置の左辺に沿って延在する左側電極辺を有する第1のシグナル電極を有し、
前記第2の静電容量センサは、前記基準ノッチ位置の右側に配置され、前記基準ノッチ位置の右辺に沿って延在する右側電極辺を有する第2のシグナル電極を有する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記左側電極辺及び右側電極辺が平面視でV字形状を形成するように配置される、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1の静電容量センサは、第1のガード電極及び第1のグランド電極を有し、
前記第1のガード電極は、前記第1のシグナル電極を囲み、
前記第1のグランド電極は、前記第1のガード電極を囲み、
前記第2の静電容量センサは、第2のガード電極及び第2のグランド電極を有し、
前記第2のガード電極は、前記第2のシグナル電極を囲み、
前記第2のグランド電極は、前記第2のガード電極を囲む、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1の静電容量センサは、第1のガード電極及び第1のグランド電極を有し、
前記第1のガード電極は、前記第1のシグナル電極の、前記左側電極辺を除く辺の周囲を囲み、
前記第1のグランド電極は、前記第1のガード電極を囲み、
前記第2の静電容量センサは、第2のガード電極及び第2のグランド電極を有し、
前記第2のガード電極は、前記第2のシグナル電極の、前記右側電極辺を除く辺の周囲を囲み、
前記第2のグランド電極は、前記第2のガード電極を囲む、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1のシグナル電極及び前記第2のシグナル電極は、平面視で平行四辺形の形状を有する、請求項3~6の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1のシグナル電極及び前記第2のシグナル電極は、平面視で台形の形状を有する、請求項3~6の何れか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
第1の真空搬送モジュールと、
前記第1の真空搬送モジュール内に配置され、第1のエンドエフェクタを有する第1の搬送ロボットと、
前記第1のエンドエフェクタ上に配置される2つの静電容量センサと、
前記第1の真空搬送モジュールに接続されるロードロックモジュールと、
第2の真空搬送モジュールと、
前記第2の真空搬送モジュール内に配置され、第2のエンドエフェクタを有する第2の搬送ロボットと、
前記第1の真空搬送モジュールと前記第2の真空搬送モジュールとの間に配置されるパスモジュールと、
前記パスモジュール内に配置される基板支持部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
(a)前記ロードロックモジュールにおいて前記第1のエンドエフェクタで基板を受け取る工程と、
(b)前記2つの静電容量センサからの出力に基づいて、前記第1のエンドエフェクタ上の基板のノッチの位置と基準ノッチ位置との間の差分を決定する工程と、
(c)決定した前記差分に基づいて、前記第1のエンドエフェクタ上の基板のノッチの位置が前記基準ノッチ位置に対応するように前記第1のエンドエフェクタ上の基板の回転位置を調整しながら、前記第1のエンドエフェクタ上の基板を前記パスモジュール内の前記基板支持部上に載置する工程と、
(d)前記パスモジュール内の前記基板支持部上の基板を前記第2のエンドエフェクタで受け取る工程と、
を行うように構成される、基板処理装置。
【請求項10】
前記2つの静電容量センサが、前記第1のエンドエフェクタ上の前記基準ノッチ位置を囲むように前記第1のエンドエフェクタ上に配置される、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記2つの静電容量センサは、第1の静電容量センサ及び第2の静電容量センサを含み、
前記第1の静電容量センサは、前記基準ノッチ位置の左側に配置され、前記基準ノッチ位置の左辺に沿って延在する左側電極辺を有する第1のシグナル電極を有し、
前記第2の静電容量センサは、前記基準ノッチ位置の右側に配置され、前記基準ノッチ位置の右辺に沿って延在する右側電極辺を有する第2のシグナル電極を有する、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記左側電極辺及び右側電極辺が平面視でV字形状を形成するように配置される、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記第1の静電容量センサは、第1のガード電極及び第1のグランド電極を有し、
前記第1のガード電極は、前記第1のシグナル電極を囲み、
前記第1のグランド電極は、前記第1のガード電極を囲み、
前記第2の静電容量センサは、第2のガード電極及び第2のグランド電極を有し、
前記第2のガード電極は、前記第2のシグナル電極を囲み、
前記第2のグランド電極は、前記第2のガード電極を囲む、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
第1の真空搬送モジュールと、
前記第1の真空搬送モジュール内に配置され、第1のエンドエフェクタを有する第1の搬送ロボットと、
前記第1のエンドエフェクタ上に配置される2つの静電容量センサと、
前記第1の真空搬送モジュールに接続されるロードロックモジュールと、
第2の真空搬送モジュールと、
前記第2の真空搬送モジュール内に配置され、第2のエンドエフェクタを有する第2の搬送ロボットと、
前記第1の真空搬送モジュールと前記第2の真空搬送モジュールとの間に配置されるパスモジュールと、
前記パスモジュール内に配置される基板支持部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
(a)前記ロードロックモジュールにおいて前記第1のエンドエフェクタで基板を受け取る工程と、
(b)前記2つの静電容量センサからの出力に基づいて、前記第1のエンドエフェクタ上の基板のノッチの位置と基準ノッチ位置との間の差分を決定する工程と、
(c)前記第1のエンドエフェクタ上の基板を前記パスモジュール内の前記基板支持部上に載置する工程と、
(d)決定した前記差分に基づいて、前記基板支持部上の基板のノッチの位置が前記基準ノッチ位置に対応するように前記基板支持部上の基板を回転させる工程と、
(e)前記パスモジュール内の前記基板支持部上の基板を前記第2のエンドエフェクタで受け取る工程と、
を行うように構成される、基板処理装置。
【請求項15】
前記2つの静電容量センサが、前記第1のエンドエフェクタ上の前記基準ノッチ位置を囲むように前記第1のエンドエフェクタ上に配置される、請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記2つの静電容量センサは、第1の静電容量センサ及び第2の静電容量センサを含み、
前記第1の静電容量センサは、前記基準ノッチ位置の左側に配置され、前記基準ノッチ位置の左辺に沿って延在する左側電極辺を有する第1のシグナル電極を有し、
前記第2の静電容量センサは、前記基準ノッチ位置の右側に配置され、前記基準ノッチ位置の右辺に沿って延在する右側電極辺を有する第2のシグナル電極を有する、請求項15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記左側電極辺及び右側電極辺が平面視でV字形状を形成するように配置される、請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記第1の静電容量センサは、第1のガード電極及び第1のグランド電極を有し、
前記第1のガード電極は、前記第1のシグナル電極を囲み、
前記第1のグランド電極は、前記第1のガード電極を囲み、
前記第2の静電容量センサは、第2のガード電極及び第2のグランド電極を有し、
前記第2のガード電極は、前記第2のシグナル電極を囲み、
前記第2のグランド電極は、前記第2のガード電極を囲む、請求項17に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板を処理する基板処理装置や処理方法が開示されている。装置構成の一例として、基板をエンドエフェクタ上に載置して搬送する搬送ロボットにおいて、基板に設けられたノッチの位置又は配向を感知するセンサを設け、センサからの信号に基づき基板の位置合わせを行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/147148A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、真空部における基板の搬送を正確に行う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、真空搬送モジュールと、前記真空搬送モジュール内に配置され、エンドエフェクタを有する搬送ロボットと、前記エンドエフェクタ上に配置される2つの静電容量センサと、前記真空搬送モジュールに接続されるロードロックモジュールと、前記真空搬送モジュールに接続される基板処理モジュールと、前記基板処理モジュール内に配置される基板支持部と、制御部と、を備え、前記制御部は、(a)前記ロードロックモジュールにおいて前記エンドエフェクタで基板を受け取る工程と、(b)前記2つの静電容量センサからの出力に基づいて、前記エンドエフェクタ上の基板のノッチの位置と基準ノッチ位置との間の差分を決定する工程と、(c)決定した差分に基づいて、前記エンドエフェクタ上の基板のノッチの位置が前記基準ノッチ位置に対応するように前記エンドエフェクタ上の基板の回転位置を調整しながら、前記エンドエフェクタ上の基板を前記基板処理モジュール内の前記基板支持部上に載置する工程と、を行うように構成される、基板処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、真空部における基板の搬送を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態にかかる基板処理装置の構成例を示す平面図である。
【
図2】実施形態にかかる搬送アームの構成例を示す平面図である。
【
図3】実施形態にかかる電極の構成例を示す平面図である。
【
図4】実施形態にかかる基板のノッチの配置の一例を示す平面図である。
【
図5】実施形態にかかる基板のノッチの配置の一例を示す平面図である。
【
図6】実施形態にかかる静電容量センサのシステム構成を示す説明図である。
【
図7】実施形態にかかる高周波発振器及びC/V変換回路を含む回路構成の一例を示す説明図である。
【
図8】実施形態にかかるノッチ及び電極の配置の一例を示す模式図である。
【
図9】実施形態にかかる基板のノッチの配置の一例を示す模式図である。
【
図10】実施形態にかかる基板のノッチの配置の一例を示す模式図である。
【
図11】実施形態にかかる基板のノッチの配置の一例を示す模式図である。
【
図12】回転角度と静電容量との関係の一例を示すグラフである。
【
図13】実施形態にかかる基板処理方法の構成例を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態にかかる基板処理方法の構成例を示すフローチャートである。
【
図15】静電容量の値が閾値を超えた場合の一例を示す説明図である。
【
図16】実施形態にかかるゼロ点調整の方法の構成例を示すフローチャートである。
【
図17】実施形態にかかるシグナル電極の形状の他の構成例を示す平面図である。
【
図18】実施形態にかかる第3の電極の構成例を示す平面図である
【
図19】実施形態にかかる基板処理装置の構成例を示す平面図である。
【
図20】実施形態にかかる基板処理方法の構成例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(以下、「基板」という。)を収納した基板処理モジュールを真空(減圧)状態にし、当該基板に対して様々な処理工程が行われている。これら処理工程は、例えば共通の搬送モジュールの周りに基板処理モジュールを複数配置した基板処理装置を用いて行われる。
【0009】
基板処理装置は、大気雰囲気下で基板に所望の処理を施す大気モジュールを備えた大気部と、真空(減圧)雰囲気下で基板を処理する真空(減圧)モジュールを備えた減圧部(真空部)と、を備えている。大気部と真空部(減圧部)は、内部を大気雰囲気と真空(減圧)雰囲気とに切り替え可能に構成されたロードロックモジュールを介して一体に接続される。
【0010】
また基板処理装置は、特許文献1に開示されているように、真空部に設けられたトランスファモジュールにおいてロードロックモジュールと各基板処理モジュールとの間で基板を搬送する真空搬送ロボットを備えている。真空搬送ロボットは、搬送中に基板を載置するエンドエフェクタを備える。
【0011】
従来の基板処理装置では、基板は大気部に設けられたオリエンタモジュールでノッチ配向が調整された後、大気部搬送ロボットによってロードロックモジュールに搬送される。その後基板は、真空搬送ロボットによってロードロックモジュールから基板処理モジュール内の基板支持部に搬送される。
【0012】
特許文献1に開示のエンドエフェクタ上に設けたセンサによると、中心位置及びノッチ配向のズレを感知して搬送ロボットの動作補正を行うことが開示されている。
【0013】
本開示にかかる技術は、回転ズレを検出して回転角度を決定する。また、かかる回転ズレ量に基づき搬送ロボットの動作補正を行い、基板の搬送を正確に行うことを可能にする。
【0014】
以下、本実施形態にかかる基板処理装置の構成について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<基板処理装置の構成>
まず、基板処理装置の構成例について説明する。
図1は、一実施形態にかかる基板処理装置1の構成の概略を示す平面図である。一実施形態において、基板処理装置1は、基板Wにエッチング処理、成膜処理又は拡散処理等のプラズマ処理を行うためのプラズマ処理モジュールを備える。プラズマ処理モジュールは、基板処理モジュールの一例である。以下、基板処理装置1が複数の基板処理モジュールを備える場合について説明する。但し、本開示の基板処理装置1のモジュール構成はこれに限られず、基板処理の目的に応じて任意に選択され得る。
【0016】
図1に示すように、基板処理装置1は、大気部10と減圧部11がロードロックモジュール20を介して一体に接続された構成を有している。大気部10は、大気雰囲気下において基板Wに所望の処理を行う大気モジュールを備える。減圧部11は、減圧雰囲気下において基板Wに所望の処理を行う減圧モジュールを備える。
【0017】
ロードロックモジュール20は、後述のローダモジュール30及び後述の真空搬送モジュール50の幅方向(X軸方向)に沿って複数、本実施形態においては例えば2つの基板搬送室21a、21bを有している。
【0018】
基板搬送室21a、21b(以下、これらを併せて単に「基板搬送室21」という場合がある。)は、基板搬送口22、23を介して、大気部10の後述するローダモジュール30の内部空間と、減圧部11の後述する真空搬送モジュール50の内部空間を連通するように設けられている。なお、基板搬送口22、23は、それぞれゲートバルブ24、25により開閉自在に構成されている。基板搬送室21には、ローダモジュール30と真空搬送モジュール50との間で搬送される基板Wを一時的に保持するストッカ(図示せず)が設けられている。
【0019】
基板搬送室21は、基板Wを一時的に保持するように構成されている。また、基板搬送室21は、内部を大気雰囲気と減圧雰囲気(真空状態)とに切り替えられるように構成されている。すなわちロードロックモジュール20は、大気雰囲気の大気部10と、減圧雰囲気の減圧部11との間で、適切に基板Wの受渡しができるように構成されている。
【0020】
大気部10は、後述する大気部搬送ロボット40を備えたローダモジュール30と、複数の基板Wを保管可能なフープ31を載置するロードポート32とを有している。ローダモジュール30には、基板Wのノッチ位置(水平方向の向き)を調節するオリエンタモジュール33が設けられる。オリエンタモジュール33は、一例として、内部に搬入された基板Wのノッチを検知し、所望のノッチ位置となるように基板Wを回転させてノッチ位置の調節を行う。
【0021】
また上記の他、複数の基板Wを格納する格納モジュール(図示せず)などが隣接して設けられていてもよい。
【0022】
ローダモジュール30は内部が矩形の筐体からなり、筐体の内部は大気雰囲気に維持されている。ローダモジュール30の正面(
図1中のY軸負方向側の長辺)を構成する一側面には、複数、例えば5つのロードポート32が並べて配置されている。ローダモジュール30の背面(
図1中のY軸正方向側の長辺)を構成する他側面には、ロードロックモジュール20の基板搬送室21a、21bが並べて配置されている。
【0023】
ローダモジュール30の内部には、基板Wを搬送する大気部搬送ロボット40が設けられている。大気部搬送ロボット40は、基板Wを保持して移動する搬送アーム41と、搬送アーム41を回転可能に支持する回転台42と、回転台42を搭載した回転載置台43とを有している。また、ローダモジュール30の内部には、ローダモジュール30の長手方向(
図1中のX軸方向)に延伸するガイドレール44が設けられている。回転載置台43はガイドレール44上に設けられ、大気部搬送ロボット40はガイドレール44に沿って移動可能に構成されている。大気部搬送ロボット40は、オリエンタモジュール33でノッチ配向が基準ノッチ位置となるように調整された基板Wを受け取り、ローダモジュール30の内部空間を経由してロードロックモジュール20に引き渡す。
【0024】
減圧部11は、真空環境下で基板Wを搬送するように構成される真空搬送モジュール50と、真空搬送モジュール50から搬送された基板Wに所望の処理を施す基板処理モジュール70とを有している。真空搬送モジュール50及び基板処理モジュール70の内部は、それぞれ減圧(真空)雰囲気に維持可能に構成される。本実施形態においては、1つの真空搬送モジュール50に対して、複数、例えば6つの基板処理モジュール70が接続されている。なお、基板処理モジュール70の数や配置は本実施形態に限定されず、任意に設定することができる。
【0025】
真空搬送モジュール50は、ロードロックモジュール20に接続されている。一実施形態において、真空搬送モジュール50は、真空搬送空間50s及び開口部を有する。開口部は、真空搬送空間50sと連通しており、各モジュールとの接続部を構成している。真空搬送モジュール50においては、真空搬送空間50sを経由して各モジュールの間で基板Wが搬送される。一例として、ロードロックモジュール20の基板搬送室21aに搬入された基板Wは、真空搬送空間50sを経由して一の基板処理モジュール70に搬送される。基板Wは当該基板処理モジュール70で所望の処理が施される。その後、基板Wは真空搬送空間50sを経由してロードロックモジュール20の基板搬送室21bに搬送され、大気部10に搬送される。
【0026】
真空搬送空間50sには、基板Wを搬送するように構成される真空搬送ロボット80が設けられている。一実施形態において、真空搬送ロボット80は、基板Wを保持する後述するエンドエフェクタ102と、エンドエフェクタ102を移動させる搬送アーム81と、搬送アーム81を回転可能に支持する回転台82と、回転台82を搭載した回転載置台83とを有している。一実施形態において、回転載置台83は真空搬送モジュール50の中央部分に固定されている。一実施形態で、真空搬送ロボット80は、真空搬送空間50sとロードロックモジュール20との間でゲートバルブ24、25を介して基板を搬送するように構成される。また一実施形態で、真空搬送空間50sと基板処理モジュール70の基板処理空間との間でゲートバルブ71を介して基板を搬送するように構成される。
【0027】
基板処理モジュール70は、真空搬送モジュール50の側壁面に形成された基板搬送口51を介して真空搬送モジュール50と連通しており、基板搬送口51はゲートバルブ71を用いて開閉自在に構成されている。基板処理モジュール70としては、基板処理の目的に応じた処理を行うモジュールを任意に選択することができる。
【0028】
以上の基板処理装置1は、
図1に示すように制御部90を含む。制御部90は、本開示において述べられる基板Wの搬送や処理などの種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部90は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部90の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部90は、処理部、記憶部及び通信インターフェースを含んでもよい。制御部90は、例えばコンピュータにより実現される。処理部は、記憶部からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部に格納され、処理部によって記憶部から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータに読み取り可能な種々の記憶媒体Hであってもよく、通信インターフェースに接続されている通信回線であってもよい。処理部は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェースは、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介して基板処理装置1、200との間で通信してもよい。
【0029】
<エンドエフェクタ>
次に、
図2を用いて真空搬送ロボット80におけるエンドエフェクタ102の詳細な構成について説明する。
図2は本実施形態にかかるエンドエフェクタ102の構成の概略を模式的に示す平面図である。
【0030】
図2で、搬送アーム81はアーム筐体100を備え、搬送アーム81の先端におけるアーム筐体100にはエンドエフェクタ102が接続される。フォークは、エンドエフェクタ102の一例である。エンドエフェクタ102には所望の基板固定手段(図示せず)によって基板Wを固定して載置する基板載置部103が設けられる。
図2において基板載置部103に載置された基板Wの一例を点線の円で示す。基板載置部には、基板Wを載置した際に基板WのノッチNCが配置される基準ノッチ位置104が規定されている。
【0031】
真空搬送ロボット80は基板搬送室21のストッカに一時的に保持された基板Wを受け取る際に、基準ノッチ位置104に基板WのノッチNCが配置されるように動作が制御される。かかる制御の詳細については後述する。
【0032】
真空搬送ロボット80は、ノッチ位置検知部を備える。ノッチ位置検知部は、2つの静電容量センサ111a,111bと、センサ基板112と、各電極の何れかとセンサ基板112との間に設けられた同軸ケーブル113と、を備える。
【0033】
第1の静電容量センサ111aと第2の静電容量センサ111bはそれぞれ、基準ノッチ位置104に隣接し、かつ、基準ノッチ位置104を挟んで対称(
図2の例では、基準ノッチ位置104を通るX軸に平行な線に対して線対称)となるように設けられている。なお、以下の説明において、共通の構成を説明する際、2つの静電容量センサを区別せずに単に静電容量センサ111と称する場合がある。また静電容量センサ111に含まれる各構成要素について、それぞれに含まれる構成要素で共通の構成を説明する際にも同様である。
【0034】
図3は、
図2に示す静電容量センサ111の構成例の詳細を模式的に示す平面図である。
図3で、第1の静電容量センサ111aは第1のシグナル電極120a、第1のガード電極121a及び第1のグランド電極122aを備える。また、第2の静電容量センサ111bは第2のシグナル電極120b、第2のガード電極121b及び第2のグランド電極122bを備える。第1のシグナル電極120a並びに第2のシグナル電極120b、第1のガード電極121a並びに第2のガード電極121b、及び、第1のグランド電極122a並びに第2のグランド電極122bは、それぞれが基準ノッチ位置104の中心(一例として
図3で基準ノッチ位置104を示す三角形における重心の位置)を通るX軸に平行な線に対して線対称となるように設けられている。
【0035】
また
図3で、ガード電極121は、シグナル電極120の基準ノッチ位置104に対向する辺を除く3辺の外側を平面視において囲っている。また、グランド電極122は、ガード電極121の外側を平面視において囲っている。以下、第1のシグナル電極120aの基準ノッチ位置104に対向する辺を左側電極辺123と称し、第2のシグナル電極120bの基準ノッチ位置104に対向する辺を右側電極辺124と称する。第1のシグナル電極120aの左側電極辺123は基準ノッチ位置104の左辺に沿って延在し、第2のシグナル電極120bの右側電極辺124は基準ノッチ位置104の右辺に沿って延在する。
【0036】
シグナル電極120はガード電極121及びグランド電極122によって、静電容量センサ111の周方向外方に対して電気的に遮蔽されている。したがって、かかるノッチ位置検知部によれば、シグナル電極120と基板Wとが対向する方向(例えば、
図3中のZ軸正方向)に高い指向性をもって静電容量を測定することが可能となる。
【0037】
シグナル電極120の形状及び大きさは、基板WのノッチNCの形状及び大きさに合わせて決定されている。このような形状及び大きさについて、
図4及び
図5を用いて説明する。
【0038】
図4は、基板WのノッチNCが基準ノッチ位置104に整合するように配置されている場合の配置の一例を示す平面図である。
図4中の太線は、ノッチNCを含む基板Wの周縁部PNを示す。なお見やすさのため、ガード電極121及びグランド電極122は点線で示してある。基板WのノッチNCを除く部分は、シグナル電極120の上面を完全に覆っている。一方で、基準ノッチ位置104におけるノッチNCが配向する部分には、シグナル電極120が設けられていない。さらに、ノッチNCを構成する基板Wの周縁部PNの直線部分は、第1のシグナル電極120aの左側電極辺123、第2のシグナル電極120bの右側電極辺124にそれぞれ接する。
【0039】
図5は、基板WのノッチNCが基準ノッチ位置104からずれて配置されている場合の配置の一例を示す平面図である。シグナル電極120の大きさ、形状及び配置は、基板WのノッチNCが基準ノッチ位置104からずれて配置されている時にノッチNCを完全に覆うことができ、かつ、ノッチNCが基準ノッチ位置にあるときにノッチNCと重ならないような大きさ、形状及び配置に設けられる。
【0040】
図6は、真空搬送ロボット80におけるノッチ位置検知部のシステム構成を示す説明図である。上述したように、静電容量センサ111は同軸ケーブル113によってセンサ基板112に接続されている。センサ基板112は、高周波発振器140と、C/V変換回路141と、A/D変換器142と、演算部143と、通信部144と、を備える。
【0041】
図6で、同軸ケーブル113は、配線130~132を備える。配線130の一端は、シグナル電極120に接続されている。配線130の他端は、センサ基板112に設けられた後述するC/V変換回路141の入力端に接続されている。配線131の一端は、ガード電極121に接続されている。配線131の他端は、センサ基板112に設けられた後述するC/V変換回路141の入力端に接続されている。配線132の一端は、グランド電極122に接続されている。配線132の他端はセンサ基板112のグランドGCに接続されたグランド電位線GLに接続されている。なお、配線132の他端は、グランド電位線GLにスイッチ(図示せず)を介して接続されていてもよい。
【0042】
高周波発振器140は、バッテリーや外部電源等の電源(図示せず)に接続されており、当該電源からの電力を受けて高周波信号を発生するよう構成されている。なお、当該電源は演算部143及び通信部144にも接続されている。高周波発振器140は、複数の出力線150を有している。高周波発振器140は、発生した高周波信号を複数の出力線150を介して、配線130及び配線131に供給するように構成される。したがって、高周波発振器140は、ノッチ位置検知部のシグナル電極120及びガード電極121に電気的に接続されており、当該高周波発振器140からの高周波信号は、シグナル電極120及びガード電極121に与えられるように構成される。
【0043】
C/V変換回路141は、基板Wとシグナル電極120との間の静電容量値を電圧値に変換する。具体的な回路構成については、後述する。
【0044】
A/D変換器142の入力には、C/V変換回路141の出力が接続している。また、A/D変換器142は、演算部143に接続している。A/D変換器142は、演算部143からの制御信号によって制御され、C/V変換回路141の出力信号(電圧信号)を、デジタル値に変換し、検出値として演算部143に出力する。
【0045】
演算部143は、シグナル電極120及びガード電極121に対する高周波発振器140からの高周波信号の供給を制御する。具体的には後述するが、出力線150上に設けた可変抵抗器160又は可変コンデンサ161を制御し、高周波信号の振幅及び位相を調整する。また、演算部143は、上述した電源からの各構成要素に対する電力供給等を制御する。
【0046】
さらに、演算部143は、A/D変換器142から入力された検出値に基づいて、第1の静電容量センサ111a及び第2の静電容量センサ111bの測定値を取得する。一実施形態では、第1の静電容量センサ111a又は第2の静電容量センサ111bの何れかからの出力について、A/D変換器142から出力された検出値をXとした場合、演算部143では、測定値が(a・X+b)に比例した値となるように、検出値に基づいて測定値を取得している。ここで、a及びbは回路状態等によって変化する定数である。演算部143は、例えば、測定値が(a・X+b)に比例した値となるような所定の演算式(関数)情報を備え、当該関数に基づいて測定値を取得してもよい。
【0047】
演算部143における測定値の取得は、詳細については後述するが、第1の静電容量センサ111a及び第2の静電容量センサ111bのそれぞれについて行われる。一実施形態では、第1の静電容量センサ111a及び第2の静電容量センサ111bからそれぞれの電極における静電容量値を取得し、各静電容量値を比較する。当該比較により値の差の絶対値が閾値を超えた場合に回転ズレが生じたものと判定して、判定信号を通信部144に出力する。また、一実施形態では、静電容量値に基づき回転角度を算出し、算出した回転角度信号を通信部144に出力する。演算部143における測定値と基板Wの回転ズレとの関係、及び、上記の回転ズレの判定又は角度算出の方法については、後述する。また、演算部143は取得した静電容量値、判定結果及び回転角度値等を記憶しておく記憶部(図示せず)を備えていてもよい。
【0048】
通信部144は、演算部143から出力された判定信号又は回転角度信号を外部、一例として、制御部90に送信する。
【0049】
図7は、一実施形態における高周波発振器140及びC/V変換回路141を含む回路構成の詳細を示す説明図である。
図7で、一実施形態において、高周波発振器140から第1の出力線150aが配線131に接続されている。また、第2の出力線150b及び第3の出力線150cが配線130に接続されている。第1の出力線150aは所望の抵抗を備えてもよい。
【0050】
第2の出力線150bは可変抵抗器160を備え、第3の出力線150cは可変コンデンサ161を備える。可変抵抗器160及び可変コンデンサ161は、抵抗及び静電容量を演算部143によって制御可能な公知のものを用いることができる。
【0051】
配線130は演算増幅器162の反転入力端子(-)に接続され、配線131は非反転入力端子(+)に接続される。また、演算増幅器162の出力端子と反転入力端子(-)との間に帰還抵抗163が接続され、演算増幅器162に負帰還がかかっている。
【0052】
上記の他、ノッチ位置検知部のシステム構成としては、特開2022-68582号公報に開示されるシステム構成を参照し又は変更して適用することができる。また、高周波発振器140及びC/V変換回路141を含む回路構成としては、特許第3302377号公報に開示される回路構成を参照し又は変更して適用することができる。
【0053】
<静電容量値の算出方法>
上記構成を備える基板処理装置1によれば、第1の静電容量センサ111a及び第2の静電容量センサ111bからそれぞれの静電容量値を算出することができる。以下、それぞれの電極における静電容量値の取得の具体的な方法について、図を用いて説明する。
【0054】
図8は、基板WのノッチNC及び第1のシグナル電極120a並びに第2のシグナル電極120bの平面図を模式的に示した説明図である。説明の便宜のため、
図8の例では、ノッチNCは模式的に面積1(斜辺長さ2)の直角二等辺三角形とみなす。また、ガード電極121及びグランド電極122については図示を省略する。以下、ノッチNCを模式的に示す二等辺三角形を単にノッチNCと称し、また、二等辺三角形の斜辺を、ノッチ外周部NPと称する。また、第1のシグナル電極120a及び第2のシグナル電極120bのそれぞれは対角が135°及び45°で、長辺長さが2以上及び短辺長さが√(2)以上である面積S
0の平行四辺形とみなす。また、第1のシグナル電極120a及び第2のシグナル電極120bのそれぞれは、
図8のように基準ノッチ位置104を挟むように配置されている。
【0055】
図9~
図11は、ノッチNCが第1のシグナル電極120aの側に移動している場合の回転ズレの一例を示す説明図である。以下各図において、電極と対向しないノッチNCの面積をS
1、電極と対向するノッチNCの面積をS
2とする。また、回転ズレによりノッチNCが移動したときのノッチNC外周部の移動距離をtとする。また、基板Wと第1のシグナル電極120a又は第2のシグナル電極120bとの距離はdとする。
【0056】
図9で、第1のシグナル電極120a及び第2のシグナル電極120bは、ノッチNCが重なっておらず全面において基板Wが重なっている状態であり、t=0の時である。この時、S
1=1、S
2=0である。
【0057】
図10で、基板Wの回転ズレによりノッチNCが第1のシグナル電極120aの側に移動している状態であり、ノッチNC外周部の移動距離tが0<t<2の範囲である。このとき、ノッチNCの面積は1であるので、電極と対向するノッチNCの面積S
2は以下の式(1)で表される。
S
2=1-S
1=1-(1-t+1/4t
2)=t-1/4t
2・・・ (1)
【0058】
図11で、基板Wの回転ズレによりノッチNCが第1のシグナル電極120aに完全に重なっている状態であり、t≧2の時である。この時、S
1=0、S
2=1である。
【0059】
ここで、
図9において、基板Wと、第1のシグナル電極120a又は第2のシグナル電極120bとの間の静電容量をC
0とすると、C
0は以下の式(2)で表される。ただし、ε
0は真空の誘電率である。
C
0=ε
0×(S
0/d)・・・ (2)
【0060】
ノッチNCが第1のシグナル電極120aの側に移動している
図9~
図11の状態では、第2のシグナル電極120b上には全面において基板Wが重なっている状態である。このため、基板Wと第2のシグナル電極120bとの間の静電容量C
2についてC
2=C
0が成り立つ。
【0061】
長さtが0<t<2の範囲である
図10の状態において、基板Wと第1のシグナル電極120aとの間の静電容量C
1は以下の式(3)で表される。
C
1=C
0-ε
0×(S
2/d)
これに式(1)を代入して整理し、
C
1=C
0-ε
0/d×(t-1/4t
2)・・・ (3)
【0062】
図12は、上記式(3)に基づいて導かれる回転ズレにおける回転角度θと、基板Wと第1のシグナル電極120aとの間の静電容量C
1との関係を示すグラフである。なお、ノッチNC外周部の移動距離がt=0のとき回転角度はθ=0であり、t>0の範囲ではtの値及び基板Wの直径から回転角度を求めることができる。例えば、t=2の時の回転角度をθ=θ1とし、基板Wの直径を300としたとき、θ1≒0.76°と近似的に求められる。
【0063】
図12で、静電容量C
1は回転角度θが0≦θ≦θ1の範囲で、式(3)の関係に従いながら概ね一様に減少する。なお
図12で、θ>θ1では、ノッチNCが第1のシグナル電極120aに完全に重なった後、電極と対向するノッチNCの面積S
2が変化しないため、静電容量C
1は変化しない。
【0064】
なお上記において基板Wが第1のシグナル電極120aの側に回転している場合を説明したが、基板Wが第2に電極120bの側に回転している場合でも、第1のシグナル電極120a及び第2のシグナル電極120bの対称性(線対称)の観点から同様である。
【0065】
<第1の基板処理方法>
上記静電容量値の算出方法によれば、式(3)に基づいて回転ズレにより減少した静電容量C
1と、変化しない静電容量C
2とを比較することにより、値の差の絶対値が閾値を超えた場合に回転ズレが生じたものと判定することができる。以下、
図13を用いて回転ズレの判定に伴って行うことができる、第1の基板処理方法MT1について説明する。
図13は、第1の基板処理方法MT1の構成の概略を示すフローチャートである。
【0066】
工程ST1で、真空搬送ロボット80により、ロードロックモジュール20から基板Wをエンドエフェクタで受け取る。
【0067】
工程ST2で、ノッチ位置検知部により、静電容量C1及び静電容量C2を取得する。
【0068】
工程ST3で、演算部143により上記工程ST2で取得した静電容量C1と静電容量C2との差の絶対値(|C1-C2|)を算出し、あらかじめ定められた閾値とが比較される。
【0069】
工程ST3で上記差の絶対値が閾値よりも大きいとき、回転ズレが生じていると判定され、工程ST4に進む。工程ST4で、演算部143から出力された判定信号を通信部144から制御部90に送信する。
【0070】
工程ST5で、上記工程ST4において回転ズレが生じている判定信号を受けた制御部90は、基板処理装置1を制御して基板Wをオリエンタモジュール33に搬送し、基板Wのノッチ配向を再度調整する。その後、再度基板Wをロードロックモジュール20に搬送し、工程ST1以降の工程を再度実行してもよい。その他の場合は、終了する。
【0071】
工程ST3で上記差の絶対値が閾値以下であるとき、工程ST6に進む。工程ST6では、回転ズレが生じておらず基板Wのノッチ配向が正常であると判定して、基板Wを基板処理モジュール70に搬送する。基板処理モジュール70で所望の処理を実行し、その後、終了する。
【0072】
<第2の基板処理方法>
上記静電容量値の算出方法によれば、式(3)に基づいて静電容量C
1から回転角度θを算出することができる。以下、
図14を用いて回転角度の算出に伴って行うことができる、第2の基板処理方法MT2について説明する。
図14は、第2の基板処理方法MT2の構成の概略を示すフローチャートである。
【0073】
工程ST11で、真空搬送ロボット80の第1の動作により、ロードロックモジュール20から基板Wをエンドエフェクタで受け取る。第1の動作は、あらかじめ定められた真空搬送ロボット80の制御動作であって、制御部90に記憶され、又は実行される。
【0074】
工程ST12で、ノッチ位置検知部により、静電容量C1と静電容量C2を取得する。
【0075】
工程ST13で、演算部143により上記工程ST2で取得した静電容量C1と静電容量C2から回転方向を決定し、回転角度θを算出する。なお、静電容量C1と静電容量C2とを比較し、静電容量C1が小さい場合は基板Wの回転方向は第1のシグナル電極120aの側であり、静電容量C2が小さい場合は基板Wの回転方向は第2のシグナル電極120bの側であると決定することができる。回転方向の決定後、静電容量C1又は静電容量C2から上記式(3)に基づいて回転角度θを算出する。演算部143は回転角度θの値の情報を含む回転角度信号を通信部144に出力し、制御部90に出力する。
【0076】
工程ST14で、演算部143は回転角度θの値の情報を含む回転角度信号を通信部144に出力し、通信部144は回転角度信号を制御部90に送信する。
【0077】
工程ST15で、制御部90は回転角度信号に基づき、あらかじめ定められた第2の動作を補正して第3の動作を決定する。
【0078】
工程ST15において、第2の動作は、第1の動作に続けて制御部90によって制御される真空搬送ロボット80の動作であって、回転ズレが生じておらず基板Wのノッチ配向が正常である場合にロードロックモジュール20から基板処理モジュール70に基板Wを搬送する動作である。
【0079】
工程ST15において、第3の動作は、補正を行わず第2の動作により基板Wを基板処理モジュール70に搬送したとしたならば基板処理モジュール70内の基板支持部において生じるであろう基板Wの回転ズレを、生じないように搬送する動作である。第2の動作を第3の動作に補正する場合、補正後における基板WのノッチNC位置が、補正前における基準ノッチ位置104に対応する位置となるように補正する。当該補正は、一例として、第2の動作におけるエンドエフェクタ102の水平方向の回動角度を、上記回転ズレにおける回転角度θに基づいて変更する補正である。
【0080】
工程ST16で、第2の動作を補正して決定した第3の動作により、基板処理モジュール70に基板Wを搬送し基板支持部に載置する。
【0081】
一実施形態において、制御部90は、以下の工程(a)~(c)を行うように構成される。
(a)ロードロックモジュール20においてエンドエフェクタ102で基板Wを受け取る工程
(b)2つの静電容量センサ111a,111bからの出力に基づいて、エンドエフェクタ102上の基板WのノッチNCの位置と基準ノッチ位置104との間の差分を決定する工程
(c)決定した差分に基づいて、エンドエフェクタ102上の基板WのノッチNCの位置が基準ノッチ位置104に対応する(一致する)ようにエンドエフェクタ102上の基板Wの回転位置を調整しながら、エンドエフェクタ102上の基板Wを基板処理モジュール70内の基板支持部上に載置する工程
【0082】
なお、エンドエフェクタ102上の基板WのノッチNCの位置と基準ノッチ位置104との間の差分は、上記の回転角度θ(即ち、基板WのノッチNCの、基準ノッチ位置104からの移動量)に基づいて決定される。
【0083】
上記の構成を有する第2の実施形態にかかる基板処理方法MT2によれば、真空搬送ロボット80で基板Wを受け取った後であっても基板Wの回転角度θを算出することができる。また、真空搬送ロボット80の動作を補正することによって、基板処理モジュール70の基板支持部において基板Wのノッチ配向が正常となるように、基板Wを搬送することができる。
【0084】
<静電容量センサのゼロ点補正>
以下、上記構成を有するノッチ位置検知部のゼロ点補正について
図15を用いて説明する。ノッチ位置検知部は、検出対象がないか、又は検出対象が実際には変化しない状態でも、検知する静電容量値が変化する場合がある。このため、定期的にゼロ点調整をすることが好ましい。ゼロ点調整は、例えば
図15に示すように、第1の静電容量センサ111a又は第2の静電容量センサ111bにおける静電容量C
1又はC
2の値が閾値THを超えた時刻T1において実行する。なお、ゼロ点調整は、エンドエフェクタ102上において基板Wが載置されていない状態において実施する。
【0085】
図16は、ノッチ位置検知部のゼロ点調整の方法MT3の構成の概略を示すフローチャートである。
【0086】
工程ST21で、エンドエフェクタ102上において基板Wが載置されていないことを確認する。載置されている場合は、基板Wの搬出後、再度実行する。載置されていない場合は、工程ST22に進む。
【0087】
工程ST22で、第1の静電容量センサ111aにおける静電容量C1若しくは第2の静電容量センサ111bにおける静電容量C2との何れかと、あらかじめ定められた閾値とを比較する。比較の結果、静電容量C1若しくは静電容量C2の何れも閾値を超えていなかった場合は、終了する。終了後、所望の期間経過後に再度ゼロ点調整を実行することとしてもよい。比較の結果、静電容量C1若しくは静電容量C2の何れかが閾値を超えていた場合は、工程ST23に進む。
【0088】
工程ST23で、エンドエフェクタ102上における基板の載置を禁止し、ゼロ点調整を実行する。
【0089】
工程ST24で、エンドエフェクタ102上における基板の載置を許可し、その後、終了する。
【0090】
一実施形態で、ゼロ点調整は、
図7に示すC/V変換回路141における、可変抵抗器160及び可変コンデンサ161を制御することで、シグナル電極120とガード電極121それぞれにおける高周波信号の位相及び振幅を同期させることを含む。上述したように、シグナル電極120とガード電極121に対しては高周波発振器140によって高周波信号が供給されている。この際、シグナル電極120とガード電極121それぞれにおける高周波信号の位相及び振幅がずれていると、演算増幅器162の出力端子側における出力電圧が時間変動する。可変抵抗器160及び可変コンデンサ161を制御することで、シグナル電極120とガード電極121それぞれにおける高周波信号の位相及び振幅を同期させることで、演算増幅器162の出力端子側における出力電圧を安定化させることができる。
【0091】
上記実施形態ではシグナル電極120の形状が平行四辺形である例について説明したが、本開示にかかるシグナル電極120の形状はこれに限定されない。
図17は、シグナル電極120の他の形状の一例を模式的に示す平面図である。
【0092】
図17で、第1のシグナル電極120a及び第2のシグナル電極120bのそれぞれは台形であり、基準ノッチ位置104を挟んで線対称となるように設けられる。このように、基準ノッチ位置104に対向する辺の反対側の辺に接する角は、所望の角度を有するように変更しても、上記基板処理方法MT1、MT2等を実行することができる。
【0093】
また、上記実施形態ではノッチ位置検知部として2つの静電容量センサ111を備える例について説明したが、静電容量センサ111の個数はこれに限定されない。
図18は、ノッチ位置検知部が第1の静電容量センサ111a及び第2の静電容量センサ111bに加えて更に備える、第3の静電容量センサ111cの構成を模式的に示す平面図である。
【0094】
図18で、第3の静電容量センサ111cは、第3のシグナル電極120cと、第3のシグナル電極120cを囲う第3のガード電極121cと、第3のガード電極121cを更に囲う第3のグランド電極122cを含む。また、他の静電容量センサ111と同様に、第3の同軸ケーブル113cに含まれる各配線によってセンサ基板112に接続されている。第1の静電容量センサ111a及び第2の静電容量センサ111bと異なり、第3のシグナル電極120cの全周が第3のガード電極121cに囲まれており、かかる第3の静電容量センサ111cによれば、第3のシグナル電極120cと基板Wとが対向する方向(例えば、
図18中のZ軸正方向)にさらに高い指向性をもって静電容量を測定することが可能となる。
【0095】
第3の静電容量センサ111cは、第3のシグナル電極120cの面積が、第1のシグナル電極120a及び第2のシグナル電極120bのそれぞれの面積と同じとなるように設ける。また、エンドエフェクタ102上に基板Wを載置した際に常に基板Wと対向する位置に設けられる。
【0096】
かかる第3の静電容量センサ111cを含むノッチ位置検知部によれば、静電容量を算出する際に、第1のシグナル電極120a又は第2のシグナル電極120bの全面が基板Wに覆われている時の静電容量C0として、第3の静電容量センサ111cにおいて算出される静電容量を用いることができる。第3の静電容量センサ111cの静電容量を基準の静電容量C0として用いることで、静電容量C1及びC2をより正確に算出することができる。
【0097】
以下、
図19を用いて、一実施形態にかかる基板処理装置200について説明する。基板処理装置200は、第1の真空搬送モジュール50aと第2の真空搬送モジュール50bを備え、これらがパスモジュール201により接続された構成を有する。なお、第1の真空搬送モジュール50a及び第2の真空搬送モジュール50bのそれぞれは、パスモジュール201を除いて、上述した
図1の例における基板処理装置1の真空搬送モジュール50と同様の構成を有する。すなわち、第1の真空搬送モジュール50a及び第2の真空搬送モジュール50bの何れにおいても、上記静電容量の算出や、上記基板処理方法MT1、MT2等を実施可能な構成を有する。一実施形態において、基板処理装置200又はパスモジュール201は、特開2022-104056に記載された基板処理装置200又はパスモジュールと略同一の構成を有する。また、パスモジュール201は、内部において回転機構を含む基板支持部202a、202b(以下、単に基板支持部202という場合もある)を備える。基板支持部202a、202bに載置された基板Wは、回転機構によって回転し、ノッチ配向を調整するように制御することができる。
【0098】
上記構成を備える基板処理装置200によれば、以下の基板処理方法MT4を実行可能である。
図20は、基板処理方法MT4の構成の概略を示すフローチャートである。
【0099】
工程ST31で、第1の真空搬送ロボット80aにより、ロードロックモジュール20から基板Wを第1の搬送アーム81aの第1のエンドエフェクタ102aで受け取る。
【0100】
工程ST32で、第1の搬送エンドエフェクタ102aにおけるノッ位置検知部により、静電容量C1と静電容量C2を取得する。
【0101】
工程ST33で、演算部143により上記工程ST32で取得した静電容量C1と静電容量C2から回転方向を決定し、回転角度θを算出する。なお、静電容量C1と静電容量C2とを比較し、静電容量C1が小さい場合は基板Wの回転方向は第1のシグナル電極120aの側であり、静電容量C2が小さい場合は基板Wの回転方向は第2のシグナル電極120bの側であると決定することができる。回転方向の決定後、静電容量C1又は静電容量C2から上記式(3)に基づいて回転角度θを算出する。演算部143は回転角度θの値の情報を含む回転角度信号を通信部144に出力し、制御部90に出力する。
【0102】
工程ST34で、演算部143は回転角度θの値の情報を含む回転角度信号を通信部144に出力し、通信部144は回転角度信号を制御部90に送信する。
【0103】
工程ST35で、制御部90は第1の真空搬送ロボット80aを制御して、基板Wをパスモジュール201の基板支持部202aに搬送する。
【0104】
工程ST36で、制御部90は回転角度信号に基づき、基板支持部202aの回転機構を制御して、基板WのノッチNCの位置が基準ノッチ位置104に対応する位置となるように回転させる。その後、終了する。
【0105】
上記基板処理方法の終了後は、第1の真空搬送ロボット80aで再度基板Wを受け取り、第1の真空搬送モジュール50aに接続された基板処理モジュール70に基板を搬送し、所望の処理を行ってもよい。また、第2の真空搬送ロボット80bで再度基板Wを受け取り、第2の真空搬送モジュール50bに接続された基板処理モジュール70に基板を搬送し、所望の処理を行ってもよい。
【0106】
一実施形態において、制御部90は、以下の工程(a)~(e)を行うように構成される。
(a)ロードロックモジュール20において第1のエンドエフェクタ102aで基板Wを受け取る工程
(b)2つの静電容量センサ111a,111bからの出力に基づいて、第1のエンドエフェクタ102a上の基板WのノッチNCの位置と基準ノッチ位置104との間の差分を決定する工程
(c)第1のエンドエフェクタ102a上の基板Wをパスモジュール201内の基板支持部202上に載置する工程
(d)決定した差分に基づいて、パスモジュール201内の基板支持部202上の基板WのノッチNCの位置が基準ノッチ位置104に対応する(一致する)ようにパスモジュール201内の基板支持部202上の基板Wを回転させる工程
(e)パスモジュール201内の基板支持部202上の基板Wを第2のエンドエフェクタ102bで受け取る工程
【0107】
なお、パスモジュール201内の基板支持部202上の基板Wの回転は、パスモジュール201内の基板支持部202に備えられる回転機構により行われる。
【0108】
上記の構成を有する基板処理方法MT4によれば、真空搬送ロボット80で基板Wを受け取った後であっても基板Wの回転角度θを算出することができる。また、算出した回転角度θに基づいて、パスモジュール内に設けられた基板支持部により、基板Wのノッチ配向が正常となるように、基板Wを回転することができる。
【0109】
一実施形態において、制御部90は、以下の工程(a)~(d)を行うように構成される。
(a)ロードロックモジュール20において第1のエンドエフェクタ102aで基板Wを受け取る工程
(b)2つの静電容量センサ111a,111bからの出力に基づいて、第1のエンドエフェクタ102a上の基板WのノッチNCの位置と基準ノッチ位置104との間の差分を決定する工程
(c)決定した差分に基づいて、第1のエンドエフェクタ102a上の基板WのノッチNCの位置が基準ノッチ位置104に対応するように第1のエンドエフェクタ102a上の基板Wの回転位置を調整しながら、第1のエンドエフェクタ102a上の基板Wをパスモジュール201内の基板支持部202上に載置する工程
(d)パスモジュール201内の基板支持部202上の基板Wを第2のエンドエフェクタ102bで受け取る工程
【0110】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。例えば、上記実施形態の構成要件は任意に組み合わせることができる。当該任意の組み合せからは、組み合わせにかかるそれぞれの構成要件についての作用及び効果が当然に得られるとともに、本明細書の記載から当業者には明らかな他の作用及び他の効果が得られる。
【0111】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【符号の説明】
【0112】
1 基板処理装置
20 ロードロックモジュール
50 真空搬送モジュール
70 基板処理モジュール
80 真空搬送ロボット
81 搬送アーム
90 制御部
102 エンドエフェクタ
104 基準ノッチ位置
111 静電容量センサ
112 センサ基板
W 基板
NC ノッチ