(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114537
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ダイシングテープの張力異常検知装置及び方法並びにダイシングテープ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020375
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】木▲崎▼ 清貴
(72)【発明者】
【氏名】石川 一政
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA52
5F131CA70
5F131EC33
5F131EC63
5F131EC64
5F131EC66
5F131EC69
(57)【要約】
【課題】ダイシングテープの張力の適否を定量的に判定して、ダイシングテープの張力異常を正確に検知可能なダイシングテープの張力異常検知装置及び方法並びにダイシングテープを提供する。
【解決手段】張力異常検知装置4は、一方面6aにマーキング穴6bが設けられたダイシングテープ6を一方面6a側から撮影するカメラ41と、予め記憶されたワークW貼着前のダイシングテープ6におけるマーキング穴6bの初期状態量とカメラ41が撮影した画像に表れたワークW貼着後のダイシングテープ6におけるマーキング穴6bの現状態量との差である状態変化量を測定する測定部42と、状態変化量が、予め設定された適正状態変化量範囲内である場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が適切であると判定し、状態変化量が、適正状態変化量範囲内に属しない場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が異常であると判定する判定部43と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが貼着されたダイシングテープの張力異常検知装置であって、
一方面にマーキングが設けられた前記ダイシングテープを前記一方面側から撮影する撮影部と、
予め記憶されたワーク貼着前の前記ダイシングテープにおける前記マーキングの初期状態量と前記撮影部が撮影した画像に表れたワーク貼着後の前記ダイシングテープにおける前記マーキングの現状態量との差である状態変化量を測定する測定部と、
前記状態変化量が、予め設定された前記ダイシングテープに作用する張力の適正範囲に応じた適正状態変化量範囲内である場合には、前記張力が適切であると判定し、前記状態変化量が、前記適正状態変化量範囲内に属しない場合には、前記張力が異常であると判定する判定部と、
を備えていることを特徴とするダイシングテープの張力異常検知装置。
【請求項2】
前記マーキングは、前記一方面に所定の間隔を空けてドット状に設けられた複数のマーキング穴であり、
前記状態変化量は、ワーク貼着前後における前記マーキング穴の間隔の拡大量であることを特徴とする請求項1に記載のダイシングテープの張力異常検知装置。
【請求項3】
前記マーキングは、前記一方面に所定の間隔を空けて格子状に設けられた複数のマーキング線であり、
前記状態変化量は、ワーク貼着前後における前記マーキング線の歪み量であることを特徴とする請求項1に記載のダイシングテープの張力異常検知装置。
【請求項4】
前記撮影部は、前記ダイシングテープのうち前記ワークが貼付されていない撮影位置において前記ダイシングテープを撮影することを特徴とする請求項1に記載のダイシングテープの張力異常検知装置。
【請求項5】
前記撮影部は、平面視で前記ワークが前記撮影部に対して相対的に移動する搬送方向において前記ワークの前方又は後方に設定された撮影位置において前記ダイシングテープを撮影することを特徴とする請求項4に記載のダイシングテープの張力異常検知装置。
【請求項6】
前記撮影部は、平面視で前記ワークが前記撮影部に対して相対的に移動する搬送方向に対して垂直な幅方向において前記ワークの側方に設定された撮影位置において前記ダイシングテープを撮影することを特徴とする請求項4に記載のダイシングテープの張力異常検知装置。
【請求項7】
ワークが貼着されたダイシングテープの張力異常検知方法であって、
一方面にマーキングが設けられた前記ダイシングテープを前記一方面側から撮影部を用いて撮影する工程と、
予め記憶されたワーク貼着前の前記ダイシングテープにおける前記マーキングの初期状態量と前記撮影部が撮影した画像に表れたワーク貼着後の前記ダイシングテープにおける前記マーキングの現状態量との差である状態変化量を測定する工程と、
前記状態変化量が、予め設定された前記ダイシングテープに作用する張力の適正範囲に応じた適正状態変化量範囲内である場合には、前記張力が適切であると判定し、前記状態変化量が、前記適正状態変化量範囲内に属しない場合には、前記張力が異常であると判定する工程と、
を含むことを特徴とするダイシングテープの張力異常検知方法。
【請求項8】
ワークが貼着された状態で生じる張力の異常検知に用いられるダイシングテープであって、
一方面に設けられたマーキングは、前記ダイシングテープに作用する張力に応じて状態量が変化するように構成されていることを特徴とするダイシングテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングテープの張力異常検知装置及び方法並びにこれらに用いられるダイシングテープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体基板(以下、「ワーク」という)をチップに割断する工程があり、その工程では、ワークに貼着されたダイシングテープが個々のチップの位置を拘束することにより、チップの割断を効率よく行うことができる。
【0003】
特許文献1には、テーブル211に吸着固定されたウェーハWにエキスパンドテープEを貼着用ローラの加圧力により貼り付けることが記載されている。なお、符号は、特許文献1のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、新しいダイシングテープを使用する場合には、サンプルワークをダイシングテープに貼着させて、その貼り付け状態をオペレータが目視で確認することで、ダイシングテープの張力を含むパラメータの調整を行っているのが現状である。また、生産プロセスにおいても、オペレータは、ワークが貼着されたダイシングテープの貼り付け状態から、パラメータが適切に保たれていることを定期的に目視で確認している。
【0006】
このようにオペレータの目視によってダイシングテープの張力を確認すると、オペレータの熟練度等によってはダイシングテープの張力が不十分になる虞があり、ダイシングテープの張力が適切でない場合には、エキスパンド時にチップ間の適正な間隔が確保できず、チップの位置検知が困難になるという問題があった。
【0007】
そこで、ダイシングテープの張力の適否を定量的に判定して、ダイシングテープの張力異常を正確に検知するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るダイシングテープの張力異常検知装置は、ワークが貼着されたダイシングテープの張力異常検知装置であって、一方面にマーキングが設けられた前記ダイシングテープを前記一方面側から撮影する撮影部と、予め記憶されたワーク貼着前の前記ダイシングテープにおける前記マーキングの初期状態量と前記撮影部が撮影した画像に表れたワーク貼着後の前記ダイシングテープにおける前記マーキングの現状態量との差である状態変化量を測定する測定部と、前記状態変化量が、予め設定された前記ダイシングテープに作用する張力の適正範囲に応じた適正状態変化量範囲内である場合には、前記張力が適切であると判定し、前記状態変化量が、前記適正状態変化量範囲内に属しない場合には、前記張力が異常であると判定する判定部と、を備えている。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るダイシングテープの張力異常検知方法は、ワークが貼着されたダイシングテープの張力異常検知方法であって、一方面にマーキングが設けられた前記ダイシングテープを前記一方面側から撮影部を用いて撮影する工程と、予め記憶されたワーク貼着前の前記ダイシングテープにおける前記マーキングの初期状態量と前記撮影部が撮影した画像に表れたワーク貼着後の前記ダイシングテープにおける前記マーキングの現状態量との差である状態変化量を測定する工程と、前記状態変化量が、予め設定された前記ダイシングテープに作用する張力の適正範囲に応じた適正状態変化量範囲内である場合には、前記張力が適切であると判定し、前記状態変化量が、前記適正状態変化量範囲内に属しない場合には、前記張力が異常であると判定する工程と、を含む。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るダイシングテープは、ワークが貼着された状態で生じる張力の異常検知に用いられるダイシングテープであって、一方面に設けられたマーキングは、前記ダイシングテープに作用する張力に応じて状態量が変化するように構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ダイシングテープの張力の適否を定量的に判定して、ダイシングテープの張力異常を正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る張力異常検知装置を適用したテープ貼付システムの構成を示す模式図。
【
図3】展開状態のプリカット刃を示す平面図及び要部拡大斜視図。
【
図4】ダイシングテープの一方面側を示す斜視図及び一部拡大図。
【
図5】ダイシングテープ内に4カ所設定された撮影位置の位置関係を示す平面図及びA-A線断面図。
【
図6】テープ貼付システムの主要構成を示すブロック図。
【
図7】ワークにダイシングテープを貼り付ける様子を示す斜視図。
【
図8】ダイシングテープに作用する張力に応じてマーキング穴間の間隔が変化する様子を示す模式図。
【
図9】ダイシングテープに作用する張力に応じてマーキング線の歪み量が変化する様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0014】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0015】
また、図面は、特徴を分かり易くするために一部の構成要素を省略したり、特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0016】
また、本実施形態において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、各構成要素が図面に描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0017】
図1は、テープ貼付システム1の構成を示す模式図である。テープ貼付システム1は、搬送装置2と、貼付装置3と、ダイシングテープ6の張力異常検知装置(以下、単に「張力異常検知装置」という)4と、を備えている。
【0018】
テープ貼付システム1は、ワークW及びダイシングフレーム5をダイシングテープ6で一体に貼着するものである。ワークWは、例えば、シリコンウェハ等の半導体基板であるが、これに限定されるものではない。ダイシングテープ6は、紫外線硬化テープ等である。
【0019】
図2に示すように、ダイシングテープ6は、長尺状のセパレータ7上に、具体的にはセパレータ7の幅方向D1の略中央且つセパレータ7の長手方向D2に略等間隔に隙間を空けて配置されている。ダイシングテープ6は、ワークWに貼り付け可能な貼付面がセパレータ7に対向するようにセパレータ7に剥離可能に設けられている。セパレータ7は、例えば、剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)等である。
【0020】
セパレータ7においてダイシングテープ6の幅方向D1の両側には、長手方向D2に亘って長尺状で且つダイシングテープ6とは分離した状態で保護シート8が設けられている。なお、保護シート8は、ダイシングテープ6と同じ樹脂等で形成してもよい。
【0021】
図1に戻り、搬送装置2は、上面中央にワークWを保持する内周側テーブル21と、ダイシングフレーム5を載置する外周側テーブル22と、内周側テーブル21及び外周側テーブル22を搬送方向D3に沿ってスライドさせるスライダ23と、を備えている。
【0022】
内周側テーブル21の表面には、無数の気孔を有する多孔質材料からなる吸着体が埋設されている。吸着体の気孔の粗さは、例えば、#400又は#800等である。
【0023】
内周側テーブル21は、図示しない真空源及び圧縮空気源に切換自在に接続されている。真空源が起動すると、内周側テーブル21に載置されたワークWと吸着体の上面(吸着面)との間に負圧が供給されて、ワークWが吸着面に吸着保持される。また、圧縮空気源が起動すると、ワークWと吸着面との間に圧縮空気(リリースエアー)が供給されて、ワークWと吸着面との吸着が解除される。
【0024】
貼付装置3は、公知の構成から成るダイシングテープ6のテープ貼付ユニット3Aと、ダイシングテープ6にマーキングを形成するマーキングユニット3Bと、を備えている。
【0025】
テープ貼付ユニット3Aは、ダイシングテープ6を繰り出し可能に支持する送りローラ31と、ダイシングテープ6に繰出力を付与してセパレータ7を巻き取る第1の巻取ローラ32と、セパレータ7から剥離された保護シート8を巻き取る第2の巻取ローラ33と、ダイシングテープ6をワークWに貼付する押圧ローラ34と、ダイシングテープ6から剥離されたセパレータ7の軌道を規制するナイフプレート35と、を備えている。
【0026】
マーキングユニット3Bは、ダイシングテープ6の軌道の一部を挟むように配置されたパンチングローラ36及びサポートローラ37を備えている。
【0027】
パンチングローラ36の表面には、
図3(a)、(b)に示すように、基板38aに微小な針38bがドット状に配設されたプリカット刃38が装着されている。プリカット刃38の幅寸法は、ダイシングテープ6の幅寸法より長く設定されている。隣り合う針38bの間隔は、例えば5mmに設定される。サポートローラ37は、パンチングローラ36との間隔を調整可能であり、ダイシングテープ6をパンチングローラ36に向けて押し付ける。これにより、パンチングローラ36及びサポートローラ37の間を通過したダイシングテープ6は、
図4に示すように、針38bによって一方面6a全面にドット状にマーキング穴6bが形成される。ワークWが貼付される前のダイシングテープ6におけるマーキング穴6b間の間隔は、針38bの間隔に等しい。以下では、マーキング穴6b間の間隔を「状態量」といい、ワークWが貼付される前のダイシングテープ6におけるマーキング穴6b間の間隔を「初期状態量」という。
【0028】
図1に戻り、貼付装置3に対して搬送方向D3の後方には、撮影部としてのカメラ41を備えている。カメラ41は、スライダ23の通過領域の上方に配置されている。カメラ41は、カメラ41を
図1の紙面上で垂直な幅方向にスライド可能な図示しないスライド機構に接続されている。カメラ41は、ワークWが貼付されたダイシングテープ6を上方から撮影する。
【0029】
図5に示すように、カメラ41が撮影を行う撮影位置Pは、ダイシングテープ6のうちワークW及びダイシングフレーム5が貼付されていない領域内に4カ所設定される。以下、各撮影位置Pを区別する場合には、符号P1、P2、P3、P4を付して区別する。撮影位置P1は、搬送方向D3においてワークWの前方に設定されており、撮影位置P2は、搬送方向D3においてワークWの後方に設定されている。また、撮影位置P3,P4は、搬送方向D3に垂直な幅方向D4においてワークWの側方にそれぞれ設定されている。なお、カメラ41の撮影位置Pの数は4点に限らず、3点以下でも5点以上であっても構わない。
【0030】
また、
図6に示すように、張力異常検知装置4は、測定部42と、判定部43と、記憶部44と、を備えている。張力異常検知装置4の作用については後述する。
【0031】
テープ貼付システム1の動作は、
図6に示すコントローラ9を介して制御される。コントローラ9は、テープ貼付システム1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。コントローラ9は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、コントローラ9の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。
【0032】
次に、テープ貼付システム1の動作について図面に基づいて説明する。
【0033】
<ワーク搬送>
まず、ダイシングフレーム5が、図示しない搬送ハンド等により外周側テーブル22上に移載される。
【0034】
次に、ワークWが、図示しない搬送ハンド等により内周側テーブル21上に移載される。その後、圧縮空気源からワークWと吸着面との間に負圧が供給されると、ワークWが内周側テーブル21に吸着される。ワークWの上面とダイシングフレーム5の上面とは、略面一に設定される。
【0035】
<テープ貼付>
次に、
図7(a)に示すように、スライダ23を駆動して、貼付装置3の下方にダイシングフレーム5の一方端(貼り付け開始位置)が配置されるように、内周側テーブル21及び外周側テーブル22を移動させる。内周側テーブル21及び外周側テーブル22の移動速度は、例えば10mm/秒に設定される。
【0036】
次に、第1の巻取ローラ32が回転してダイシングテープ6が繰り出される。そして、パンチングローラ36及びサポートローラ37の間を通過したダイシングテープ6の一方面6a全面には、マーキング穴6bが形成される。このとき、マーキング穴6bの初期状態量は、針38bの間隔と等しい。
【0037】
その後、保護シート8がセパレータ7から剥離された後に、押圧ローラ34がダイシングテープ6をダイシングフレーム5の一方端(貼り始め位置)に押し当てて所定の押圧力で貼着する。なお、第1の巻取ローラ32の巻取速度は、例えば10mm/秒に設定される。第2の巻取ローラ33の巻取速度は、第1の巻取ローラ32の巻取速度と略等しく設定される。
【0038】
その後、
図7(b)に示すように、内周側テーブル21及び外周側テーブル22が搬送方向D3に沿って移動し、ダイシングテープ6が徐々に貼り進められ、
図7(c)に示すように、ダイシングテープ6がダイシングフレーム5の他方端(貼り終わり位置)まで達すると、ワークWとダイシングフレーム5とが、ダイシングテープ6を介して一体に貼着される。
【0039】
<張力判定>
次に、スライダ23を駆動して、カメラ41の下方にダイシングテープ6が位置するように、内周側テーブル21及び外周側テーブル22を移動させる。
【0040】
さらに、内周側テーブル21及び外周側テーブル22を搬送方向D3へ移動させながら、カメラ41を幅方向D4へ移動させることにより、カメラ41が、撮影位置P1、P2、P3、P4の少なくとも何れか1カ所においてダイシングテープ6を撮影する。カメラ41が撮影した画像は、記憶部44に記憶される。
【0041】
測定部42は、カメラ41が撮影した画像に基づいて、ワークWが貼付された後のダイシングテープ6におけるマーキング穴6b間の間隔を測定する。ダイシングテープ6に作用する張力によってダイシングテープ6が伸びるため、
図8に示すように、
図8に、ワークWの貼着前後でマーキング穴6bの間隔は拡がる。以下では、ワークWが貼付される後のダイシングテープ6におけるマーキング穴6b間の間隔を「現状態量」という。
図8中の符号L1は、初期状態量に対応し、符号L2は現状態量にそれぞれ対応する。
【0042】
次に、測定部42は、予め記憶部44に記憶された初期状態量と測定部42が測定した現状態量との差、すなわちワークWの貼着前後におけるマーキング穴6bの間隔の拡大量である状態変化量を導出する。この状態変化量は、記憶部44に記憶される。
【0043】
次に、判定部43は、撮影位置Pにおけるダイシングテープ6の張力が適正範囲内に属するか否かを判定する。
【0044】
具体的には、判定部43は、測定部42が導出した状態変化量と、予め設定されたマーキング穴6b間の間隔の状態変化量の適正範囲(適正状態変化量範囲)とを比較する。なお、「適正状態変化量範囲」とは、ダイシングテープ6に作用する張力の適正範囲に対応するマーキング穴6bの状態変化量の適正範囲であって、予め実験等により算出されて記憶部44に記憶される。
【0045】
そして、判定部43は、状態変化量が適正状態変化量範囲内である場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が適切であると判定する。一方、判定部43は、状態変化量が適正状態変化量範囲内に属しない場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が異常であると判定する。
【0046】
ダイシングテープ6の張力が異常であると判定された場合には、図示しない報知部等を介して張力異常をオペレータに報知しても構わない。報知部による報知は、光、音声又はテキストメッセージ等の何れであっても構わない。
【0047】
また、ダイシングテープ6の張力が異常であると判定された場合には、図示しない補正部により張力を測定したワークWの次のワークWに貼り付けるダイシングテープ6の張力が適正範囲内に収まるように、スライダ23の移動速度及び第1の巻取ローラ32の巻取速度を制御しても構わない。
【0048】
一般的に、ダイシングテープ6の張力は、スライダ23と第1の巻取ローラ32との相対速度に応じて設定される。すなわち、スライダ23の移動速度が第1の巻取ローラ32の巻取速度に対して相対的に高速である場合には、ダイシングテープ6に作用する張力は高くなる。一方、スライダ23の移動速度が第1の巻取ローラ32の巻取速度に対して相対的に低速である場合には、ダイシングテープ6に作用する張力は低くなる。
【0049】
そこで、判定部43が、ダイシングテープ6の張力が適正範囲を下回ると判定した場合には、補正部は、ダイシングテープ6の張力が増すように、スライダ23の移動速度を高速化させる、又は第1の巻取ローラ32の巻取速度を低速化させる。
【0050】
一方、判定部43が、ダイシングテープ6の張力が適正範囲を上回ると判定した場合には、補正部は、ダイシングテープ6の張力が低下するように、スライダ23の移動速度を低速化させる、又は第1の巻取ローラ32の巻取速度を高速化させる。
【0051】
なお、ダイシングテープ6内の張力分布は、幅方向D4の中央が最も高く、幅方向D4の外側に向かって徐々に低下するように形成される。すなわち、ダイシングテープ6内の張力分布において、撮影位置P1、P2における張力が最大であり、撮影位置P3、P4における張力は撮影位置P1、P2よりも小さい。
【0052】
したがって、撮影位置P1、P2においてダイシングテープ6に作用する最大張力の異常検知を行うことにより、ダイシングテープ6に作用する張力が過大にならないように張力異常検知を行うことができる。また、撮影位置P3,P4においてダイシングテープ6に作用する最小張力をモニタリングすることにより、ダイシングテープ6に作用する張力が過小にならないように張力異常検知を行うことができる。
【0053】
このようにして、本実施形態に係る張力異常検知装置4は、ワークWが貼着されたダイシングテープ6の張力異常検知装置4であって、一方面6aにマーキング穴6bが設けられたダイシングテープ6を一方面6a側から撮影するカメラ41と、予め記憶されたワークW貼着前のダイシングテープ6におけるマーキング穴6bの初期状態量とカメラ41が撮影した画像に表れたワークW貼着後のダイシングテープ6におけるマーキング穴6bの現状態量との差である状態変化量を測定する測定部42と、状態変化量が、予め設定された適正状態変化量範囲内である場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が適切であると判定し、状態変化量が、適正状態変化量範囲内に属しない場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が異常であると判定する判定部43と、を備えている構成とした。
【0054】
この構成によれば、測定部42が、ワークWの貼着前後におけるマーキング穴6bの状態変化量を測定し、判定部43が、マーキング穴6bの状態変化量と適正状態変化量範囲とを比較することにより、ダイシングテープ6の張力の適否を定量的に判定可能なため、ダイシングテープ6の張力異常を正確に検知することができる。
【0055】
さらに、測定部42が、ダイシングテープ6に非接触でマーキング穴6bの状態変化量を測定可能なため、ダイシングテープ6及びワークWにダメージを与えることなく、ダイシングテープ6の張力異常を検知することができる。
【0056】
また、張力異常検知装置4は、カメラ41が、ダイシングテープ6のうちワークWが貼付されていない撮影位置Pにおいてダイシングテープ6を撮影する構成とした。
【0057】
この構成によれば、ダイシングテープ6の張力異常を正確に検知することができる。
【0058】
また、張力異常検知装置4は、撮影位置P1、P2が、平面視でダイシングテープ6がワークWに対して相対的に移動する搬送方向D3においてワークWの前方又は後方に設定されている構成とした。
【0059】
この構成によれば、ダイシングテープ6に作用する張力が最も高い場所に撮影位置P1,P2が設定されるため、ダイシングテープ6に作用する張力の最大値が適正範囲内に属するか否かを判定することにより、ダイシングテープ6に作用する張力が過大になることを抑制できる。
【0060】
また、張力異常検知装置4は、撮影位置P3、P4が、平面視でダイシングテープ6が幅方向D4においてワークWの側方に設定されている構成とした。
【0061】
この構成によれば、ダイシングテープ6に作用する張力が低くなりがちな場所に撮影位置P3,P4が設定されるため、ダイシングテープ6に作用する張力の最小値が適正範囲内に属するか否かを判定することにより、ダイシングテープ6に作用する張力が過小になることを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態に係るワークWが貼着されたダイシングテープ6の張力異常検知方法は、ワークWが貼着されたダイシングテープ6の張力異常検知方法であって、一方面6aにマーキング穴6bが設けられたダイシングテープ6内の任意の撮影位置Pをカメラ41で一方面6a側から撮影する工程と、測定部42が、予め記憶されたワークW貼着前のダイシングテープ6におけるマーキング穴6bの初期状態量とカメラ41が撮影した画像に表れたワークW貼着後のダイシングテープ6におけるマーキング穴6bの現状態量との差である状態変化量を測定する工程と、判定部43は、状態変化量が予め設定された適正状態変化量範囲内である場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が適切であると判定し、状態変化量が適正状態変化量範囲内に属しない場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が異常であると判定する工程と、を含む構成した。
【0063】
この構成によれば、測定部42が、ワークWの貼着前後におけるマーキング穴6bの状態変化量を測定し、判定部43が、マーキング穴6bの状態変化量と適正状態変化量範囲とを比較することにより、ダイシングテープ6の張力の適否を定量的に判定可能なため、ダイシングテープ6の張力異常を正確に検知することができる。
【0064】
さらに、測定部42が、ダイシングテープ6に非接触でマーキング穴6bの状態変化量を測定可能なため、ダイシングテープ6及びワークWにダメージを与えることなく、ダイシングテープ6の張力異常を検知することができる。
【0065】
また、本実施形態に係るダイシングテープ6は、ワークWが貼着された状態で生じる張力の異常検知に用いられるダイシングテープ6であって、一方面6aに設けられたマーキング穴6bが、ダイシングテープ6に作用する張力に応じて状態量が変化するように構成されている。
【0066】
この構成により、張力異常検知装置4に用いられて、ダイシングテープ6に作用する張力に応じて状態量が変化するマーキング穴6bを備えたダイシングテープ6を得ることができる。
【0067】
以下、本発明の変形例について説明する。
<変形例1>
上述した実施形態では、貼付装置3として、ダイシングテープ6へのマーキング穴6bの形成とダイシングテープ6のワークWへの貼付を連続して行う構成を例示したが、貼付装置3は、これに限定されるものではなく、例えば、ダイシングテープ6にマーキング穴6bを穿孔するマーキングユニット3Bと、マーキング穴6bが形成された後にロール状に巻き取られたダイシングテープ6をワークWに貼付するテープ貼付ユニット3Aと、が分離して構成されたものであっても構わない。
【0068】
<変形例2>
上述した実施形態では、プリカット刃38として基板38a上にグリッド状に配置された多数の針38bを備えているものを例示したが、ダイシングテープ6にマーキングを形成する手段は、これに限定されるものではなく、例えば、基板上に格子状に配置されたプリカット刃を備えているものであっても構わない。このような格子状に配置されたプリカット刃は、例えば、ダイシングテープ6の幅方向D1及び長手方向D2にそれぞれ平行になるように配置され、
図9に示すように、幅方向D1及び長手方向D2に平行な格子状のマーキング線をダイシングテープ6に形成することができる。
【0069】
そして、ダイシングテープ6内に格子状に形成されたマーキング線6cは、ダイシングテープ6に作用する張力によって幅方向D1又は長手方向D2に僅かに歪む。このようなダイシングテープ6に作用する張力に応じたマーキング線6cの状態変化に着目して、判定部43は、撮影位置Pにおけるダイシングテープ6の張力が適正範囲内に属するか否かを判定する。
【0070】
具体的には、まず、「状態量」を、ダイシングテープ6におけるマーキング線6cの幅方向D1又は長手方向D2に対する歪み量に、「初期状態量」を、ワークWが貼付される前のダイシングテープ6におけるマーキング線6cの幅方向D1又は長手方向D2に対する初期歪み量に、「現状態量」を、カメラ41の撮影画像から測定部42が導出した、ワークWが貼付された後のダイシングテープ6におけるマーキング線6cの幅方向D1又は長手方向D2に対する歪み量に、「状態変化量」を、ワークWの貼着前後のダイシングテープ6におけるマーキング線6cの歪み量の変化量に、それぞれ設定する。なお、
図9は、長手方向D2に略平行に形成された、換言すれば初期状態量ゼロのマーキング線6cが幅方向D1に歪む場合を例示しており、
図9中の符号L3は、現状態量に対応する。
【0071】
そして、判定部43は、測定部42が導出した状態変化量と、予め設定された適正な状態変化量範囲(適正状態変化量範囲)とを比較する。なお、「適正状態変化量範囲」とは、ダイシングテープ6に作用する張力が適正範囲である場合に対応するマーキング線6cの状態変化量の適正範囲であって、予め実験等により算出されて記憶部44に記憶される。
【0072】
判定部43は、状態変化量が適正状態変化量範囲内である場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が適切であると判定する。一方、判定部43は、状態変化量が適正状態変化量範囲内に属しない場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が異常であると判定する。
【0073】
<変形例3>
また、上述した実施形態や変形例では、ダイシングテープ6の状態変化に着目してダイシングテープ6に作用する張力の異常検知を行ったが、例えば、ワークWの状態変化に基づいてダイシングテープ6に作用する張力の異常検知を行っても構わない。
【0074】
例えば、ワークWが裏面研削によりチップ化される、いわゆる先ダイシングウェハである場合、ダイシングテープ6に作用する張力によってダイシングテープ6が幅方向D1及び長手方向D2にそれぞれ伸びるため、チップ間の隙間が僅かに変化する。このようなダイシングテープ6に作用する張力に応じたチップ間の間隔の状態変化に着目して、判定部43が、撮影位置Pにおけるダイシングテープ6の張力が適正範囲内に属するか否かを判定することが考えられる。
【0075】
具体的には、まず、「状態量」を、ワークW内のチップ間の間隔に、「初期状態量」を、ワークWが貼付される前のダイシングテープ6におけるワークW内のチップ間の初期間隔に、「現状態量」を、カメラ41の撮影画像から測定部42が導出したワークWが貼付された後のダイシングテープ6におけるワークW内のチップ間の間隔に、「状態変化量」を、ワークWの貼着前後のダイシングテープ6におけるワークW内のチップ間の間隔の変化量にそれぞれ設定する。
【0076】
そして、判定部43は、測定部42が導出した状態変化量と、予め設定された適正な状態変化量範囲(適正状態変化量範囲)とを比較する。なお、「適正状態変化量範囲」とは、ダイシングテープ6に作用する張力が適正範囲である場合に対応するワークW内のチップ間隔の状態変化量の適正範囲であって、予め実験等により算出されて記憶部44に記憶される。
【0077】
判定部43は、状態変化量が適正状態変化量範囲内である場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が適切であると判定する。一方、判定部43は、状態変化量が適正状態変化量範囲内に属しない場合には、ダイシングテープ6に作用する張力が異常であると判定する。
【0078】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0079】
1 :テープ貼付システム
2 :搬送装置
3 :貼付装置
3A:テープ貼付ユニット
3B:マーキングユニット
4 :張力異常検知装置
5 :ダイシングフレーム
6 :ダイシングテープ
6a:一方面
6b:マーキング穴
6c:マーキング線
7 :セパレータ
8 :保護シート
9 :コントローラ
21:内周側テーブル
22:外周側テーブル
23:スライダ
31:送りローラ
32:第1の巻取ローラ
33:第2の巻取ローラ
34:押圧ローラ
35:ナイフプレート
36:パンチングローラ
37:サポートローラ
38:プリカット刃
41:カメラ
42:測定部
43:判定部
44:記憶部
P、P1~P4:撮影位置
W :ワーク