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特開2024-114594電力供給システムおよびスイッチング電源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114594
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電力供給システムおよびスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023197125
(22)【出願日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2023019791
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多賀 史朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 哲平
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730BB02
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD12
5H730DD32
5H730EE07
5H730EE57
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF09
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】エナジーハーベスト電源の電圧をスイッチング電源装置によって昇圧する際に、エナジーハーベスト電源のインピーダンスとスイッチング電源装置のインピーダンスが近い値となることが好ましい。
【解決手段】エナジーハーベスト電源とエナジーハーベスト電源から供給される入力電圧を昇圧して出力するスイッチング電源装置を備える電力供給システムであって、スイッチング電源装置は、入力端子と、出力端子と、コイルと、第1スイッチと、ダイオードと、コンデンサと、入力電圧に基づいた変換電圧を出力する電圧変換部と、変換電圧に応じた周波数を有し、第1スイッチを駆動する信号を出力するスイッチ制御回路を有し、電圧変換部は、スイッチ制御回路に入力電圧が入力された場合に比べて、エナジーハーベスト電源の出力インピーダンスと、スイッチング電源装置の入力インピーダンスが近い値となるように入力電圧を変換する電力供給システムを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナジーハーベスト電源と、前記エナジーハーベスト電源から供給される入力電圧を昇圧して出力するスイッチング電源装置とを備える電力供給システムであって、
前記スイッチング電源装置は、
前記入力電圧が与えられる入力端子と、
昇圧された電圧が出力される出力端子と、
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子が前記入力端子に接続されたコイルと、
前記コイルの前記第2端子とグランド端子の間に配置された第1スイッチと、
前記第2端子から前記出力端子に向かって順方向に配置されたダイオードと、
前記出力端子と前記グランド端子の間に配置されたコンデンサと、
前記入力電圧に基づいた変換電圧を出力する電圧変換部と、
前記電圧変換部から出力される前記変換電圧が入力され、前記変換電圧に応じた周波数を有し、前記第1スイッチを駆動する駆動信号を出力するスイッチ制御回路と
を有し、
前記電圧変換部は、前記電圧変換部を介さずに前記スイッチ制御回路に前記入力電圧が入力された場合に比べて、前記エナジーハーベスト電源の出力インピーダンスと、前記スイッチング電源装置の入力インピーダンスがより近い値となるように前記入力電圧を変換する
電力供給システム。
【請求項2】
前記電圧変換部は、
前記変換電圧を出力する変換電圧出力端子と、
前記入力端子と前記変換電圧出力端子の間に配置されたパッシブ回路またはアクティブ回路を有する
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記パッシブ回路は、前記入力端子と前記変換電圧出力端子の間に配置された抵抗素子を有する
請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記抵抗素子の抵抗値は1kΩ以上10MΩ以下である
請求項3に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記電圧変換部は、前記変換電圧が定められた閾値に達したときに、前記変換電圧を前記閾値に保持する電圧リミット回路を更に有する
請求項1から4のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記電圧変換部は、前記変換電圧が定められた閾値に達したときに、前記変換電圧を前記閾値に保持する電圧リミット回路を更に有し、
前記電圧リミット回路は、
前記変換電圧出力端子から前記グランド端子に向かって順方向に配置された電圧リミッタ用ダイオードを有する
請求項2から4のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記電圧変換部は、
前記入力電圧に応じた第2変換電圧を生成する第2変換部と、
前記第2変換電圧を前記変換電圧出力端子に印加するか否かを切り替える第2スイッチと
を有し、
前記第2変換電圧は、前記第2スイッチがオフ状態の場合の前記変換電圧よりも高い電圧である
請求項2から4のいずれか一項に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記第2変換部は、前記入力電圧に応じて前記第2スイッチを制御する
請求項7に記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記アクティブ回路は、前記入力端子から前記変換電圧出力端子に向かって順方向に配置された電圧変換用ダイオードを有する
請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項10】
前記電圧変換部は、
マイクロコントローラと、
前記変換電圧を出力する変換電圧出力端子と、
前記入力端子と前記変換電圧出力端子の間に配置された可変抵抗器と
を有し、
前記マイクロコントローラは、前記入力端子に前記入力電圧を供給する前記エナジーハーベスト電源に基づいて、前記可変抵抗器の抵抗値を設定する
請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項11】
前記電力供給システムは前記エナジーハーベスト電源を複数備え、
前記マイクロコントローラは、複数の前記エナジーハーベスト電源のうち、前記入力端子に前記入力電圧を供給する前記エナジーハーベスト電源を選択し、選択した前記エナジーハーベスト電源に基づいて前記可変抵抗器の抵抗値を設定する
請求項10に記載の電力供給システム。
【請求項12】
エナジーハーベスト電源から供給される入力電圧を昇圧して出力するスイッチング電源装置であって、
前記入力電圧が与えられる入力端子と、
昇圧された電圧が出力される出力端子と、
第1端子および第2端子を有し、前記第1端子が前記入力端子に接続されたコイルと、
前記コイルの前記第2端子とグランド端子の間に配置された第1スイッチと、
前記第2端子から前記出力端子に向かって順方向に配置されたダイオードと、
前記出力端子と前記グランド端子の間に配置されたコンデンサと、
前記入力電圧に基づいた変換電圧を出力する電圧変換部と、
前記電圧変換部から出力される前記変換電圧が入力され、前記変換電圧に応じた周波数を有し、前記第1スイッチを駆動する駆動信号を出力するスイッチ制御回路と
を有し、
前記電圧変換部は、前記電圧変換部を介さずに前記スイッチ制御回路に前記入力電圧が入力された場合に比べて、前記エナジーハーベスト電源の出力インピーダンスと、前記スイッチング電源装置の入力インピーダンスがより近い値となるように前記入力電圧を変換する
スイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムおよびスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇圧型のスイッチング電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2019-115189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エナジーハーベスト電源の電圧をスイッチング電源装置によって昇圧する際に、エナジーハーベスト電源のインピーダンスとスイッチング電源装置のインピーダンスが近い値となることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、エナジーハーベスト電源と、エナジーハーベスト電源から供給される入力電圧を昇圧して出力するスイッチング電源装置とを備える電力供給システムを提供する。スイッチング電源装置は、入力電圧が与えられる入力端子と、昇圧された電圧が出力される出力端子を有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、スイッチング電源装置は、第1端子および第2端子を有し、第1端子が入力端子に接続されたコイルを有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、スイッチング電源装置は、コイルの第2端子とグランド端子の間に配置された第1スイッチを有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、スイッチング電源装置は、第2端子から出力端子に向かって順方向に配置されたダイオードを有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、スイッチング電源装置は、出力端子とグランド端子の間に配置されたコンデンサを有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、スイッチング電源装置は、入力電圧に基づいた変換電圧を出力する電圧変換部を有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、スイッチング電源装置は、電圧変換部から出力される変換電圧が入力され、変換電圧に応じた周波数を有し、第1スイッチを駆動する駆動信号を出力するスイッチ制御回路を有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧変換部は、電圧変換部を介さずにスイッチ制御回路に入力電圧が入力された場合に比べて、エナジーハーベスト電源の出力インピーダンスと、スイッチング電源装置の入力インピーダンスがより近い値となるように前記入力電圧を変換してよい。
【0005】
上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧変換部は、変換電圧を出力する変換電圧出力端子を有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧変換部は、入力端子と変換電圧出力端子の間に配置されたパッシブ回路またはアクティブ回路を有してよい。
【0006】
上記いずれかの電力供給システムにおいて、パッシブ回路は、入力端子と変換電圧出力端子の間に配置された抵抗素子を有してよい。
【0007】
上記いずれかの電力供給システムにおいて、抵抗素子の抵抗値は1kΩ以上10MΩ以下であってよい。
【0008】
上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧変換部は、前記変換電圧が定められた閾値に達したときに、変換電圧を閾値に保持する電圧リミット回路を更に有してよい。
【0009】
上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧リミット回路は、変換電圧出力端子からグランド端子に向かって順方向に配置された電圧リミッタ用ダイオードを有してよい。
【0010】
上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧変換部は、入力電圧に応じた第2変換電圧を生成する第2変換部を有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧変換部は、第2変換電圧を変換電圧出力端子に印加するか否かを切り替える第2スイッチを有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、第2変換電圧は、第2スイッチがオフ状態の場合の変換電圧よりも高い電圧であってよい。
【0011】
上記いずれかの電力供給システムにおいて、第2変換部は、入力電圧に応じて第2スイッチを制御してよい。
【0012】
上記いずれかの電力供給システムにおいて、アクティブ回路は、入力端子から変換電圧出力端子に向かって順方向に配置された電圧変換用ダイオードを有してよい。
【0013】
上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧変換部は、マイクロコントローラを有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧変換部は、変換電圧を出力する変換電圧出力端子を有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、電圧変換部は、入力端子と変換電圧出力端子の間に配置された可変抵抗器を有してよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、マイクロコントローラは、入力端子に入力電圧を供給するエナジーハーベスト電源に基づいて、可変抵抗器の抵抗値を設定してよい。
【0014】
上記いずれかの電力供給システムは、エナジーハーベスト電源を複数備えてよい。上記いずれかの電力供給システムにおいて、マイクロコントローラは、複数のエナジーハーベスト電源のうち、入力端子に入力電圧を供給するエナジーハーベスト電源を選択し、選択したエナジーハーベスト電源に基づいて可変抵抗器の抵抗値を設定してよい。
【0015】
本発明の第2の態様においては、エナジーハーベスト電源から供給される入力電圧を昇圧して出力するスイッチング電源装置を提供する。スイッチング電源装置は、入力電圧が与えられる入力端子と、昇圧された電圧が出力される出力端子を有してよい。上記いずれかのスイッチング電源装置は、第1端子および第2端子を有し、第1端子が入力端子に接続されたコイルを有してよい。上記いずれかのスイッチング電源装置は、コイルの第2端子とグランド端子の間に配置された第1スイッチを有してよい。上記いずれかのスイッチング電源装置は、第2端子から出力端子に向かって順方向に配置されたダイオードを有してよい。上記いずれかのスイッチング電源装置は、出力端子とグランド端子の間に配置されたコンデンサを有してよい。上記いずれかのスイッチング電源装置は、入力電圧に基づいた変換電圧を出力する電圧変換部を有してよい。上記いずれかのスイッチング電源装置は、電圧変換部から出力される変換電圧が入力され、変換電圧に応じた周波数を有し、第1スイッチを駆動する駆動信号を出力するスイッチ制御回路を有してよい。上記いずれかのスイッチング電源装置において、電圧変換部は、電圧変換部を介さずにスイッチ制御回路に入力電圧が入力された場合に比べて、エナジーハーベスト電源の出力インピーダンスと、スイッチング電源装置の入力インピーダンスがより近い値となるように入力電圧を変換してよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施例に係る電力供給システム10を示す図である。
図2図1における発振回路72のリングオシレータに設けられたインバータ80の構成例を示す図である。
図3図1における昇圧部74の構成例を示す図である。
図4図3におけるチャージポンプ86の構成例を示す図である。
図5図3における変換部88の構成例を示す図である。
図6図1における駆動部76の構成例を示す図である。
図7】信号CLK2と駆動部76により出力される駆動信号CLK3との関係を示す図である。
図8】電力供給システム10の比較例を示す図である。
図9】電圧変換部42として、抵抗素子46を用いる本発明の第2の実施例を示す図である。
図10】抵抗素子46の値を0Ω~1MΩまで振ったときの入力電圧Vinと入力インピーダンスRinの関係を示す図である。
図11】エナジーハーベスト電源の一例として、920MHzのマイクロ波信号を受電し、AC/DC変換して直流電力を得るレクテナ280の回路例を示す図である。
図12】マイクロ波信号強度を変化させたときのレクテナ280の出力インピーダンスと、各マイクロ波信号強度で出力電力が最大となる最適出力電圧の関係を示す図である。
図13】電圧変換部42として、電圧リミット回路47を用いる本発明の第3の実施例を示す図である。
図14】出力強化機能をもつスイッチング電源装置20を有する第4の実施例を示す図である。
図15】電圧変換部42として、電圧変換用ダイオード60を使用する第5の実施例を示す図である。
図16】電圧変換部42として、可変抵抗器64およびマイクロコントローラ62を有する第6の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本明細書では、各図における同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、説明の便宜上一部の構成を図示しない場合がある。
【0019】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0020】
エナジーハーベストによって得られる電力は一般的には小さい電力であり、取り出せる電圧および電流は小さく、またその環境の変化により電力の時間的変化も大きいものである。このような微小な電力を収集し、センサーやマイコン、BLE等が動作可能な電圧までキャパシタや2次電池に充電するのに昇圧ICが使用される。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施例に係る電力供給システム10を示す図である。電力供給システム10は、エナジーハーベスト電源12とスイッチング電源装置20を備える。スイッチング電源装置20はエナジーハーベスト電源12から供給される入力電圧Vinを昇圧して出力する。スイッチング電源装置20は、例えば、昇圧型DC/DCコンバータである。
【0022】
エナジーハーベスト電源12は、例えば、太陽光、白熱灯、蛍光灯、LED等の光エネルギーをエネルギー源とする光発電、機械の発する熱や環境温度等の熱エネルギーをエネルギー源とする熱電発電、機械の発する振動や橋・道路等の振動をエネルギー源とする振動発電、電磁波、電波等をエネルギーとする電磁波発電、または、微生物燃料電池に代表される生物の活動量をエネルギーに変換する生物発電、等の電源が持つ出力インピーダンスが負荷への電力の供給を制限するように働く電源である。このような電源からより多くの電力を取り出すためには、電源に接続されるスイッチング電源装置20の入力インピーダンスを電源の出力インピーダンスに近づけることが好ましい。
【0023】
スイッチング電源装置20は、入力電圧Vinが与えられる入力端子22と、昇圧された電圧が出力される出力端子24と、第1端子31および第2端子32を有し、第1端子31が入力端子22に接続されたコイル30と、コイル30の第2端子32とグランド端子34の間に配置された第1スイッチ36と、第2端子32から出力端子24に向かって順方向に配置されたダイオード38と、出力端子24とグランド端子34の間に配置されたコンデンサ40と、入力電圧Vinに基づいた変換電圧Vin2を出力する電圧変換部42と、電圧変換部42から出力される変換電圧Vin2が入力され、変換電圧Vin2に応じた周波数を有し、第1スイッチ36を駆動する駆動信号を出力するスイッチ制御回路70を有する。第1スイッチ36の一端は、コイル30の第2端子32と接続してよい。第1スイッチ36の他端は、グランド端子34に接続されてよい。ダイオード38のアノード端子は、第2端子32に接続されてよい。ダイオード38のカソード端子は、出力端子24に接続されてよい。コンデンサ40の一端は、出力端子24に接続されてよい。コンデンサ40の他端は、グランド端子34に接続されてよい。各端子および構成要素は、配線等を用いて接続されてよい。各グランド端子34は共通の端子であってよく、異なる端子であってもよい。
【0024】
第1スイッチ36は、例えば駆動信号によりオン、オフを制御するnMOSFETであってよい。本明細書では、MOSFETを単にMOSと称する場合がある。駆動信号により第1スイッチ36がオンすると、入力端子22からコイル30、第1スイッチ36を介してグランド端子34に電流が流れ、コイル30にエネルギーが蓄えられる。第1スイッチ36がオフすると、コイル30に蓄えられたエネルギーはダイオード38を介してコンデンサ40に充電され、出力電圧Vstrgが上昇する。
【0025】
スイッチ制御回路70は、変換電圧Vin2の上昇に伴って発振周波数が上昇する発振回路72と、発振回路72が出力する発振信号CLK1および変換電圧Vin2を昇圧する昇圧部74と、第1スイッチ36を駆動する駆動信号CLK3を生成する駆動部76とを備える。駆動部76は、駆動信号CLK3により第1スイッチ36のスイッチング動作を制御する。
【0026】
発振回路72は、例えばリングオシレータであり、n個(奇数個)のインバータが直列に接続され、最終段のインバータの出力は、初段のインバータの入力に接続され、発振信号CLK1を出力する。発振信号CLK1の周波数は入力された電圧Vin2に応じて変化する。発振信号CLK1の振幅(波高値)は変換電圧Vin2である。
【0027】
図2は、図1における発振回路72のリングオシレータに設けられたインバータ80の構成例を示す図である。インバータ80はpMOSスイッチ82とnMOSスイッチ84を有し、インバータ80に入力された信号がpMOSスイッチ82とnMOSスイッチ84のゲート端子に入力される。pMOSスイッチ82のソース端子には、入力電圧Vin2が入力され、nMOSスイッチ84のソース端子には、グランド端子が接続され、pMOSスイッチ82のドレインとnMOSスイッチ84のドレインは出力に接続され、入力信号に応じて電圧を出力する。リングオシレータは変換電圧Vin2を制御電圧とする電圧制御発振器であり、変換電圧Vin2の上昇に伴って、発振周波数も上昇する。
【0028】
図3は、図1における昇圧部74の構成例を示す図である。昇圧部74は、発振信号CLK1と入力電圧Vin2とが入力され、振幅が昇圧電圧Vboostの信号CLK2と昇圧電圧Vboostが出力される、2入力2出力の構成であってよい。昇圧部74は、チャージポンプ86と変換部88を有する。チャージポンプ86は、入力電圧Vin2を電圧Vboostに昇圧する。変換部88は、入力された発振信号CLK1の振幅Vin2を電圧Vboostに変換した信号CLK2を出力する。
【0029】
図4は、図3におけるチャージポンプ86の構成例を示す図である。チャージポンプ86は、インバータ105、インバータ110に入力された相補的信号CLK1、-CLK1により、nMOSスイッチ120-1~120-5を介して昇圧用コンデンサ130-1~130-4に電荷が流れ込み、nMOSスイッチ120-1~120-5の間の各ノードを昇圧し、入力電圧Vin2のx倍の電圧値を有する電圧Vboostを出力する。
例えば、3段のnMOSスイッチ120-1~120-3のみの場合には、昇圧電圧Vboostは3×Vin2となり、図4のような5段の場合には、昇圧電圧Vboostは5×Vin2となる。
【0030】
図5は、図3における変換部88の構成例を示す図である。変換部88は、複数のインバータ150、インバータ155、インバータ160と、複数のMOSスイッチ170、MOSスイッチ180、MOSスイッチ190、MOSスイッチ200を有する。変換部88は、発振信号CLK1と、変換電圧Vin2と、チャージポンプ86からの電圧Vboostとが入力され、振幅を変換電圧Vin2から昇圧電圧Vboostに変換した信号CLK2を出力する。なお、インバータ150、インバータ155、インバータ160は、図2に示すものと同様であってよい。
【0031】
図6は、図1における駆動部76の構成例を示す図である。駆動部76は、昇圧部74で昇圧された信号CLK2に対して、変換電圧Vin2によらない固定のハイサイドのパルス幅の信号を出力する。駆動部76は、複数のMOSスイッチ210、MOSスイッチ215、MOSスイッチ220、MOSスイッチ225、MOSスイッチ230、MOSスイッチ235と、複数のインバータ240、インバータ250と、抵抗260と、コンデンサ270を有する。駆動部76は、昇圧電圧Vboostおよび信号CLK2が入力され、抵抗260の抵抗値Rとコンデンサ270の容量Cの比(例えば信号の立ち上がりを基準にR×Cの時定数τ)で決まる固定のパルス幅の信号を駆動信号CLK3として出力してよい。
【0032】
図7は、信号CLK2と駆動部76により出力される駆動信号CLK3との関係を示す図である。信号CLK2は、発振回路72における発振動作において変換電圧Vin2に依存するパルス幅を有する。一方駆動信号CLK3は、駆動部76において変換電圧Vin2に依存したパルス幅から固定のパルス幅へ変更される。本例の駆動信号CLK3は、信号CLK2と同一周期である。駆動信号CLK3の信号の立ち上がりタイミングは、信号CLK2と同一であってよい。駆動信号CLK3のパルス幅は、信号CLK2のパルス幅よりも小さくてよい。
【0033】
変換電圧Vin2が小さい時には発振回路72の発振信号CLK1の周波数であるスイッチング周波数が低下するので、単位時間あたりに第1スイッチ36のオンする回数が減少する。これにより、入力端子22から過度の電流を引き込むことなく、入力電圧Vinの低下を抑制できる。従って、小さい電力のエナジーハーベストにおいても、電圧の昇圧が可能である。また、一般的な昇圧ICと異なり、スイッチ制御回路70の消費電流を出力Vstrgから引き込まないため、入力電圧Vinが低下しても、コンデンサ40に充電された電力をほとんど消費しない。
【0034】
ここでコイルのインダクタンスをLとし、駆動信号CLK3の固定のパルス幅をTon、駆動信号CLK3の周波数をfoscとすると、入力端子22からコイル30を介して第1スイッチ36に流れる平均電流Iswは次式で表される。
【数1】
【0035】
一方、ダイオード38を介して出力される平均電流Istrgは次式で表される。
【数2】
【0036】
(1)式と(2)式の和(Isw+Istrg)が入力電流Iinであるとみなせるが、Vin<<Vstrgの条件では入力電流Iinは次式となる。
【数3】
【0037】
したがって、駆動信号CLK3のパルス幅が固定の場合は、スイッチング電源装置20の入力インピーダンスRinは次式と近似できる。
【数4】
【0038】
(4)式より入力インピーダンスは第1スイッチ36の駆動信号周波数に反比例する。
駆動信号周波数は発振回路72であるリングオシレータの発振周波数であり、変換電圧Vin2により発振周波数が決まることから、すなわち、電圧変換部42が変換電圧Vin2を適切に制御することにより、入力インピーダンスを制御できる。
【0039】
電圧変換部42は、少なくとも入力電圧Vinに基づいて変換電圧Vin2を出力する、抵抗、ダイオード、トランジスタおよびそれらを含む一つまたは複数の素子で構成されたパッシブ回路またはアクティブ回路であってよい。電圧変換部42は、スイッチ制御回路70に入力電圧Vinが入力された場合に比べて、エナジーハーベスト電源12の出力インピーダンスと、スイッチング電源装置20の入力インピーダンスがより近い値となるように入力電圧Vinを変換してよい。スイッチ制御回路70に入力電圧Vinが入力された場合とは、電圧変換部を介さずに(例えば、電圧変換部42が設けられずに)、入力電圧Vinがそのままスイッチ制御回路70に入力されることを指す。エナジーハーベスト電源12の出力インピーダンスと、スイッチング電源装置20の入力インピーダンスは、入力電圧Vinが0.5Vの条件で比較してよく、1Vの条件で比較してよく、1.5Vの条件で比較してよく、2Vの条件で比較してよく、他の入力電圧Vinの条件で比較してもよい。入力電圧Vinは電圧変換部42にて変換され、変換電圧Vin2となり、スイッチ制御回路70に出力される。電圧変換部42が、エナジーハーベスト電源12の出力インピーダンスとスイッチング電源装置20の入力インピーダンスが近い値となるように変換電圧Vin2を出力することにより、高効率の電力供給システムを実現できる。
【0040】
図8は、電力供給システム10の比較例を示す図である。比較例の電力供給システム10は図1の電力供給システム10と比べて、電圧変換部42を備えない点で相違する。その他の構成は図1の電力供給システム10と同様である。
【0041】
比較例の電力供給システム10は、電圧変換部42を備えないため、入力電圧Vinがそのままスイッチ制御回路70へ入力される。比較例の電力供給システム10においても、スイッチ制御回路70が発生する駆動信号CLK3の周波数は入力電圧Vinが上昇するとともに上昇する。そのため、入力電圧Vinが上昇すればコイル30に流れる平均電流も急激に増加し、スイッチング電源装置20の入力インピーダンスは大幅に低下する。
これはソーラーセルのように照度の上昇による電力増加に伴って出力インピーダンスが低下するエナジーハーベスト電源12には好都合であるが、電波を整流するような出力インピーダンスがあまり変化しないエナジーハーベスト電源12や、スイッチング電源装置20の入力インピーダンスと大きく異なるインピーダンスを持つエナジーハーベスト電源12に対しては、エナジーハーベスト電源12のインピーダンスとスイッチング電源装置20のインピーダンスがマッチしなくなり、電力伝送効率を大きく低下させることになる。
【0042】
インピーダンスをマッチさせる手段として、最大電力追従(MPPT)機能を持つ昇圧ICを用いることも考えられる。しかし、MPPT機能を持つ昇圧ICは消費電力が大きく、出力電力を自己消費してしまう。このため、入力電力が一時的に低下または消失するような、低電力で不安定なエネルギー環境においては、有効に昇圧動作させることができない。
【0043】
図9は、電圧変換部42として、抵抗素子46を用いる本発明の第2の実施例を示す図である。電圧変換部42は、変換電圧Vin2を出力する変換電圧出力端子44と、入力端子22と変換電圧出力端子44の間に配置されたパッシブ回路45またはアクティブ回路を有してよい。本例のパッシブ回路45は、入力端子22と変換電圧出力端子44の間に配置された抵抗素子46を有する。抵抗素子46の一端は入力端子22に接続されてよい。抵抗素子46の他端は変換電圧出力端子44に接続されてよい。抵抗素子46は、スイッチング電源装置20に含まれるICチップに内蔵された、ポリシリコン抵抗、ディフュージョン抵抗、nMOS、または、pMOSなどを用いてもよい。抵抗素子46は、ディスクリート抵抗素子を用いてもよい。これらの抵抗素子46は、可変抵抗器であってもよい。また、抵抗素子46はエナジーハーベスト電源12の出力インピーダンスとスイッチング電源装置20の入力インピーダンスが近い値となるよう選定されてよい。
【0044】
スイッチ制御回路70に流入する電流Iin2は変換電圧Vin2の上昇に伴って増加するため、入力電圧Vinが上昇しても、変換電圧Vin2はRd×Iin2だけ電圧降下し、変換電圧Vin2の電圧上昇が妨げられる。その結果、スイッチ制御回路70の発生する駆動信号CLK3の周波数の上昇が抑えられ、スイッチング電源装置20の入力インピーダンスが低下するのを緩和することができる。
【0045】
図10は、抵抗素子46の抵抗値を0Ω~1MΩまで振ったときの入力電圧Vinと入力インピーダンスRinの関係を示す図である。抵抗値が0Ωとは、抵抗素子46を設けていないことを指している。電圧変換部42として使用する抵抗素子46の値により、入力インピーダンスRinを幅広く設定可能であることを示している。抵抗素子46の抵抗値は1kΩ以上10MΩ以下であってよく、10kΩ以上1MΩ以下であってよく、100kΩ以上1MΩ以下であってよい。エナジーハーベスト電源12の出力インピーダンスはその種類により、数十Ω~数十kΩまで広い範囲の値をとることが知られており、本実施例を用いれば、各エナジーハーベスト電源12に適した入力インピーダンスでの高効率の昇圧動作を実現できる。また、MPPT回路のような出力電力を消費する動作ではないため、一時的に入力電力が低下または消失するような、低電力で不安定なエネルギー環境であっても、電力を消費することなく、有効な昇圧動作が可能である。
【0046】
図11は、エナジーハーベスト電源の一例として、920MHzのマイクロ波信号を受電し、AC/DC変換して直流電力を得るレクテナ280の回路例を示す図である。図11のレクテナ280はアンテナ282と、整合回路284と、整流回路286を備える。
【0047】
図12は、マイクロ波信号強度を変化させたときのレクテナ280の出力インピーダンスと、各マイクロ波信号強度で出力電力が最大となる最適出力電圧の関係を示す図である。入力されるマイクロ波信号強度の上昇とともに最適出力電圧は上昇する。最適出力電圧が約0.1Vから約2Vまで上昇すると、出力抵抗は約8kΩから約4kΩに減少する。
【0048】
図10のグラフより、電圧変換部42を設けない方式(例えば抵抗素子46の抵抗値が0Ω)では、入力電圧Vinが約2Vまで上昇すると、入力インピーダンスRinは約100Ωまで低下する。このため、レクテナ280に対して伝送効率は低くなってしまう。これに対して、電圧変換部42の抵抗素子46の抵抗値=470kΩを選択することにより、レクテナ280の出力インピーダンスに近いスイッチング電源装置20の入力インピーダンス(1kΩから数kΩ程度)を実現でき、伝送効率を高くすることができる。また、図10で示される入力インピーダンスは、図12のレクテナ280の出力インピーダンスと同様に、電圧上昇とともに追従して減少しており、より広いマイクロ波入力電力範囲にわたって高効率を得ることに適している。エナジーハーベスト電源12が、レクテナ280のように、出力電圧の上昇に応じて出力インピーダンスが減少する電源である場合に、電圧変換部42は抵抗素子46を有してよい。
【0049】
図13は、電圧変換部42として、電圧リミット回路47を用いる本発明の第3の実施例を示す図である。電圧変換部42は、変換電圧Vin2が定められた閾値に達したときに、変換電圧Vin2を閾値に保持する電圧リミット回路47を有してよい。本例の電圧変換部42は、パッシブ回路45の一例である抵抗素子46と電圧リミット回路47を有する。電圧変換部42は、電圧リミット回路47のみを有してもよい。
【0050】
本例の電圧リミット回路47は、変換電圧出力端子44からグランド端子34に向かって順方向に配置された電圧リミッタ用ダイオード48を有する。電圧リミッタ用ダイオード48のアノード端子は、変換電圧Vin2に接続されてよい。電圧リミッタ用ダイオード48のカソード端子は、グランド端子34に接続されてよい。電圧リミット回路47はダイオードに限らず、例えば変換電圧Vin2が定められた閾値に達したときに、グランド端子34に電流を流して変換電圧Vin2を閾値に保持するMOS、バイポーラトランジスタ、抵抗、キャパシタ等で構成されたパッシブまたはアクティブ回路を有してよい。
【0051】
電圧リミット回路47にダイオードを用いると変換電圧Vin2はダイオードの順方向電圧Vfに制限されるため、図10に示したグラフよりも入力インピーダンスの入力電圧依存性をよりフラットに保つことができる。電圧リミッタに使用する電圧リミッタ用ダイオード48は、複数のダイオードを直列にしてもよい。例えば、2個のダイオードを直列にした場合の電圧リミット値は2×Vfとなる。
【0052】
図14は、出力強化機能をもつスイッチング電源装置20を有する第4の実施例を示す図である。本例の電圧変換部42は、抵抗素子46および変換電圧出力端子44に加えて、入力電圧Vinに応じた第2変換電圧Vin3を生成する第2変換部50と、第2変換電圧Vin3を変換電圧出力端子44に印加するか否かを切り替える第2スイッチ52を有する。
【0053】
第2変換電圧Vin3は、第2スイッチ52がオフ状態の場合の変換電圧Vin2よりも高い電圧であってよい。第2変換部50は、入力電圧Vinに応じて第2スイッチ52を制御してよい。通常、第2スイッチ52はオフしており、スイッチング電源装置20は実施例2と同様に抵抗素子46の値で決まる入力インピーダンスで動作する。第2変換部50は、スイッチング電源装置20から電力が供給される後段のシステムの消費電力に基づいて、第2スイッチ52を制御してよい。例えばスイッチング電源装置20は、後段システムの消費電力が所定の閾値以上の場合に、第2スイッチ52をオン状態に制御してよい。これによりスイッチ制御回路70には、変換電圧Vin2よりも高い第2変換電圧Vin3が印加され、より大きな電力を後段システムに出力できる。第2変換電圧Vin3は、入力電圧Vinより小さい電圧であってよい。例えば第2変換電圧Vin3は、入力電圧Vinと変換電圧Vin2の間の電圧であってよく、入力電圧Vinよりも高い電圧であってもよい。第2変換部50は、後段システムの消費電力が所定の閾値以上であり、且つ、スイッチング電源装置20からの出力電力が増加可能である場合に、第2スイッチ52をオン状態に制御してよい。スイッチング電源装置20からの出力電力が増加可能であるかは、入力電力Vinの大きさ、入力電流Iinの大きさ、および、エナジーハーベスト電源12の出力インピーダンスRsの少なくともいずれかから、第2変換部50が判断してよい。第2変換部50は、入力電圧Vinおよび入力電流Iinの少なくとも一方が所定の閾値以上の場合に、出力電力の増加が可能と判断してよい。第2変換部50は、出力インピーダンスRsが所定の閾値以下の場合に、出力電力の増加が可能と判断してよい。これにより、スイッチ制御回路70から出力される駆動信号の周波数が増加し、スイッチング電源装置20が引き込む入力電流Iinが増加し、出力電力を増加させることができる。
【0054】
第2変換部50は、A/Dコンバータ54、マイクロコントローラ56、D/Aコンバータ58を備えてよい。A/Dコンバータ54は、入力電圧Vinを入力とし、D/Aコンバータ58は、第2スイッチ52を通して変換電圧Vin2に第2変換電圧Vin3を出力する。マイクロコントローラ56は、A/Dコンバータ54の出力に接続され、D/Aコンバータ58と第2スイッチ52を制御する。
【0055】
マイクロコントローラ56は、A/Dコンバータ54で測定した入力電圧Vinの値および入力電流Iinの値の結果に基づいて、第2スイッチ52をオン状態にして、D/Aコンバータ58の出力で変換電圧Vin2を駆動する。マイクロコントローラ56は、入力電圧Vinの値が所定の閾値以上である場合に第2スイッチ52をオン状態にしてよく、入力電流Iinの値が所定の閾値以上である場合に第2スイッチ52をオン状態にしてよい。D/Aコンバータ58の出力電圧である第2変換電圧Vin3は、入力電圧Vinと抵抗素子46で決まる変換電圧Vin2よりも高い電圧であってよい。
【0056】
マイクロコントローラ56は、A/Dコンバータ54の出力結果に基づいて、入力電力の大きさ、または/およびエナジーハーベスト電源12の出力インピーダンスを推定し、出力電力の増加が可能かどうかを判断する。出力電力の増加が可能であれば、マイクロコントローラ56は、D/Aコンバータ58を第2変換電圧Vin3に設定し、第2スイッチ52をオン状態にして変換電圧Vin2を所定の電圧に上昇させる。これにより駆動信号CLK3の周波数を増大させて、出力電力を増大させる。
【0057】
図15は、電圧変換部42として、電圧変換用ダイオード60を使用する第5の実施例を示す図である。本例の電圧変換部42は、変換電圧Vin2を出力する変換電圧出力端子44とアクティブ回路49を有する。本例のアクティブ回路49は、入力端子22から変換電圧出力端子44に向かって順方向に配置された電圧変換用ダイオード60を有する。電圧変換用ダイオード60のアノード端子は、入力端子22に接続されてよい。電圧変換用ダイオード60のカソード端子は、変換電圧出力端子44に接続されてよい。電圧変換用ダイオード60は、一つまたは複数のダイオードを直列に接続し、入力電圧Vinと変換電圧Vin2の間に順方向に接続する。ここで電圧変換用ダイオード60の順方向電圧をVf2とすると、実施例5における入力電圧Vinは次式であらわされる。
【数5】
【0058】
ソーラー発電セルの最適出力電圧は開放電圧Vsの約80%であるが、照度の変化に対して、開放電圧Vsの変化は小さく、低電力の場合は電流供給能力が低下するため、入力電流Iinにより入力電圧Vinが最適点から大きく低下する。このような用途には、電圧変換部42に電圧変換用ダイオード60を使用する実施例5を使用すれば、入力電圧Vinは(5)式となるように、入力インピーダンスは自動的に調整され、ダイオードの順方向電圧Vf2は、スイッチ制御回路70への入力電流Iin2の変化による変化が小さいことから、ソーラー発電セルに照射される光の照度が低下しても、スイッチング電源装置20の入力電圧Vinが低下することなく、低電力まで高効率で電力を取り出すことができる。エナジーハーベスト電源12がソーラーセルを含む場合に、電圧変換部42は電圧変換用ダイオードを備えてよい。
【0059】
図16は、電圧変換部42として、可変抵抗器64およびマイクロコントローラ62を有する第6の実施例を示す図である。本例の電圧変換部42は、マイクロコントローラ62と、変換電圧Vin2を出力する変換電圧出力端子44と、入力端子22と変換電圧出力端子44の間に配置された可変抵抗器64を有する。可変抵抗器64の一端は、入力端子22に接続されてよい。可変抵抗器64の他端は、変換電圧出力端子44に接続されてよい。
【0060】
マイクロコントローラ62は、入力端子22に入力電圧Vinを供給するエナジーハーベスト電源12に基づいて、可変抵抗器64の抵抗値を設定する。マイクロコントローラ62は、エナジーハーベスト電源12の出力インピーダンスに基づいて可変抵抗器64の抵抗値を設定してよい。マイクロコントローラ62は、入力端子22に接続されるエナジーハーベスト電源12に基づいて、可変抵抗器64の抵抗値を設定してよい。抵抗値の設定は、スイッチ制御回路70に入力電圧Vinが入力された場合に比べて、入力端子22に接続されるエナジーハーベスト電源12の出力インピーダンスと、スイッチング電源装置20の入力インピーダンスがより近い値となるように行われる。これにより、電圧変換部42の構成を変えることなく様々なエナジーハーベスト電源12に対してインピーダンスをマッチさせることができる。
【0061】
第6の実施例における電力供給システム10は、エナジーハーベスト電源12を複数備えてよい。マイクロコントローラ62は、複数のエナジーハーベスト電源12のうち、入力端子22に入力電圧Vinを供給するエナジーハーベスト電源12を選択し、選択したエナジーハーベスト電源12に基づいて可変抵抗器64の抵抗値を設定してよい。マイクロコントローラ62は、複数のエナジーハーベスト電源12のうち、入力端子22に接続されるエナジーハーベスト電源12を選択し、選択したエナジーハーベスト電源12に基づいて可変抵抗器64の抵抗値を設定してよい。
【0062】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0063】
10・・・電力供給システム、12・・・エナジーハーベスト電源、20・・・スイッチング電源装置、22・・・入力端子、24・・・出力端子、30・・・コイル、31・・・第1端子、32・・・第2端子、34・・・グランド端子、36・・・第1スイッチ、38・・・ダイオード、40・・・コンデンサ、42・・・電圧変換部、44・・・変換電圧出力端子、45・・・パッシブ回路、46・・・抵抗素子、47・・・電圧リミット回路、48・・・電圧リミッタ用ダイオード、49・・・アクティブ回路、50・・・第2変換部、52・・・第2スイッチ、54・・・A/Dコンバータ、56・・・マイクロコントローラ、58・・・D/Aコンバータ、60・・・電圧変換用ダイオード、62・・・マイクロコントローラ、64・・・可変抵抗器、70・・・スイッチ制御回路、72・・・発振回路、74・・・昇圧部、76・・・駆動部、80・・・インバータ、82・・・pMOSスイッチ、84・・・nMOSスイッチ、86・・・チャージポンプ、88・・・変換部、105・・・インバータ、110・・・インバータ、120・・・nMOSスイッチ、130・・・昇圧用コンデンサ、150・・・インバータ、155・・・インバータ、160・・・インバータ、170・・・MOSスイッチ、180・・・MOSスイッチ、190・・・MOSスイッチ、200・・・MOSスイッチ、210・・・MOSスイッチ、215・・・MOSスイッチ、220・・・MOSスイッチ、225・・・MOSスイッチ、230・・・MOSスイッチ、235・・・MOSスイッチ、240・・・インバータ、250・・・インバータ、260・・・抵抗、270・・・コンデンサ、280・・・レクテナ、282・・・アンテナ、284・・・整合回路、286・・・整流回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16