IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京精密の特許一覧

<>
  • 特開-収容ボックス 図1
  • 特開-収容ボックス 図2
  • 特開-収容ボックス 図3
  • 特開-収容ボックス 図4
  • 特開-収容ボックス 図5
  • 特開-収容ボックス 図6
  • 特開-収容ボックス 図7
  • 特開-収容ボックス 図8
  • 特開-収容ボックス 図9
  • 特開-収容ボックス 図10
  • 特開-収容ボックス 図11
  • 特開-収容ボックス 図12
  • 特開-収容ボックス 図13
  • 特開-収容ボックス 図14
  • 特開-収容ボックス 図15
  • 特開-収容ボックス 図16
  • 特開-収容ボックス 図17
  • 特開-収容ボックス 図18
  • 特開-収容ボックス 図19
  • 特開-収容ボックス 図20
  • 特開-収容ボックス 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114633
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】収容ボックス
(51)【国際特許分類】
   A47G 29/122 20060101AFI20240816BHJP
   E05B 47/00 20060101ALI20240816BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20240816BHJP
   E05B 65/02 20060101ALI20240816BHJP
   E05B 65/10 20060101ALI20240816BHJP
   G07F 17/12 20060101ALI20240816BHJP
   G07F 15/04 20060101ALI20240816BHJP
   A47B 55/00 20060101ALI20240816BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20240816BHJP
   B65G 1/14 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A47G29/122 D
E05B47/00 H
E05B65/00 D
E05B65/02 D
E05B65/10 J
G07F17/12
G07F15/04 102
A47B55/00
A47B97/00 M
B65G1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013245
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2023019778
(32)【優先日】2023-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川島 直人
(72)【発明者】
【氏名】西田 鉄郎
【テーマコード(参考)】
3B067
3E047
3F022
3K100
【Fターム(参考)】
3B067AA01
3B067AA05
3E047JA04
3E047LA03
3F022FF01
3F022MM51
3F022PP03
3F022QQ01
3K100CA05
3K100CA41
3K100CA45
3K100CC10
3K100CD10
(57)【要約】
【課題】 小型の収容室を多数備える場合であっても十分な配線スペースを確保でき、両開きにも対応可能な収容ボックスを提供すること。
【解決手段】 それぞれが少なくとも前方に開口する複数の収容室からなる収容室群と、収容室のそれぞれを開閉する施錠可能とされた扉とを備え、収容室群は、左右に隣り合って並ぶ一組の収容室を一単位とし、一単位が上下に複数段、積み重なるように構成され、一単位を構成する収容室は、一体とされた空間を、中空構造の柱状部材を共有することにより2つに区画して形成され、中空構造は、複数段にわたって連通する、収容ボックス。
【選択図】 図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前方に開口する複数の収容室からなる収容室群と、前記収容室のそれぞれを開閉する施錠可能とされた扉とを備え、
前記収容室群は、左右に隣り合って並ぶ一組の前記収容室を一単位とし、前記一単位が上下に複数段、積み重なるように構成され、
前記一単位を構成する前記収容室は、一体とされた空間を、中空構造の柱状部材を共有することにより2つに区画して形成され、
前記中空構造は、前記複数段にわたって連通する、収容ボックス。
【請求項2】
前記扉の施錠は、前記収容室ごとに配置される電子錠により行われ、
最上段の前記一単位の上側、及び、最下段の前記一単位の下側からなる群より選択される少なくとも一方に、前記電子錠を制御する制御装置を収容する制御室を更に備える、請求項1に記載の収容ボックス。
【請求項3】
前記一単位を構成する前記収容室の前記扉のそれぞれは、
正面視において、前記一単位の横幅方向の略中心を通り上下方向に延びる仮想線に対して対称に開閉する開き戸である、請求項2に記載の収容ボックス。
【請求項4】
前記一単位を構成する前記収容室の前記扉は、
左右の端部を軸に、前記仮想線から前記軸の方向にそれぞれ回転して開閉する、請求項3に記載の収容ボックス。
【請求項5】
前記電子錠が、前記柱状部材の前記中空構造に収容され、
前記制御装置と、前記電子錠とは、連通する前記中空構造に挿し通されたケーブルによって接続される、請求項4に記載の収容ボックス。
【請求項6】
前記電子錠は、前記収容室ごとに配置されるスレーブ基板に接続され、前記制御装置と、前記スレーブ基板とは、前記制御装置をマスタとして、前記ケーブルによってシリアル接続される、請求項5に記載の収容ボックス。
【請求項7】
前記収容室には、電子機器の充電用デバイスが配置され、前記充電用デバイスは、連通する前記中空構造に挿し通された電源ケーブルによって、前記制御室に配置された電源供給装置と接続される、請求項6に記載の収容ボックス。
【請求項8】
前記制御装置は、ホスト装置から受信した命令により、前記電子錠の施錠状態を制御し、
前記命令によらず、前記扉の前記電子錠を開錠するための緊急開錠機構を更に備える、請求項7に記載の収容ボックス。
【請求項9】
前記緊急開錠機構は、専用工具によって除去可能な保護具により保護される、請求項8に記載の収容ボックス。
【請求項10】
前記収容ボックスは、前記中空構造の内部において前記収容ボックスの高さ方向に伸びる主軸と、前記主軸の長さの中途位置において、前記主軸から略垂直に伸びる開錠ロッドと、前記主軸を前記高さ方向に移動させる移動機構と、を備え、
前記開錠ロッドは、前記電子錠が備える機械的開錠手段に対応する位置に配置され、前記移動によって、前記機械的開錠手段に接触し、前記機械的開錠手段を作動させて前記電子錠を開錠させる、請求項2に記載の収容ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅のエントランス、駅、公共施設、及び、会社内等に設置され、荷物、レンタル物、及び、郵便物等(以下、「被収容物」ともいう。)の受け渡し等に使われる収容ボックスが知られている。
収容ボックスは、被収容物を収容するための収容室を複数備える。収容室の大きさ、及び、形状は、被収容物の種類、及び、大きさ等に応じて調整される。
【0003】
なかでも、貸し出しサービス等に供される携帯電話、スマートフォン、及び、タブレット等の情報端末を含む小型の電子機器を収容する収容ボックスが知られている。
特許文献1には、「複数の収納ボックス(2)を有するボックス集合体(3)と、前記ボックス集合体の各収納ボックスの前面開口(4)を個別に開閉する扉体(5)と、前記扉体を閉じた状態にて施錠可能な施錠装置(6)と、を有するロッカー装置(1)であって、前記ロッカー装置の各収納ボックス(2)内には、携帯電話機充電用の接続口(13)が設けられていることを特徴とするロッカー装置。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-126277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
収容ボックスには、限られた設置スペースをより有効に活用することが求められる。収容ボックスに小型の電子機器等の被収容物をより多く、個々に収容するためには、被収容物の大きさに応じて収容室をより小さくする方法がある。より小さい収容室を多数備える収容ボックスは、小さな被収容物を個々に収容する際に、優れた収容能力を発揮する。
【0006】
一方で、より小さな収容室が多数集約されるに従い、収容ボックスにおける配線の経路が限定される、又は、複雑化する問題がある。この配線は、典型的には、収容ボックスの扉の電子錠の制御等に使用される。収容室の扉は、扉ごとに設けられた電子錠により施錠可能とされる。収容室が増えれば、その分、電子錠が必要となる。複数の電子錠と、制御用コントローラとは、典型的には、一系統、又は、複数系統のケーブルにより接続される。収容室が集約される程、ケーブルの数、及び/又は、長さが増加し、配線のためのスペース(配線スペース)は圧迫され、経路も限定される。
更に、特許文献1のように、収容室に電子機器等の充電のための電源端子等を配置する場合、収容室ごとの電源ケーブルも必要となるため、配線スペースは更に圧迫される。
【0007】
また、特許文献1のロッカー装置においては、配線スペースは背面側に設けられている。しかし、上記の構成では、背面側に扉を設けることが困難になる。すなわち、1つの収容室が前面側と背面側とに2つの扉を有する「両開き」方式とすることが難しい。
「両開き」方式の収容ボックスは、前面側と背面側とを別用途にも使用できる。そのため、集合住宅等に設置される収容ボックスにおいて採用されることが多い。例えば、前面側を宅配業者の配達用、背面側を住人の受領用として使用される。
特許文献1のように、背面側を配線スペースとすると、「両開き」方式が採用できず、収容ボックスの用途は限定されてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、小型の収容室を多数備える場合であっても十分な配線スペースを確保でき、両開きにも対応可能な収容ボックスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決することができることを見出した。
【0010】
[1] 少なくとも前方に開口する複数の収容室からなる収容室群と、上記収容室のそれぞれを開閉する施錠可能とされた扉とを備え、上記収容室群は、左右に隣り合って並ぶ一組の上記収容室を一単位とし、上記一単位が上下に複数段、積み重なるように構成され、上記一単位を構成する上記収容室は、一体とされた空間を、中空構造の柱状部材を共有することにより2つに区画して形成され、上記中空構造は、上記複数段にわたって連通する、収容ボックス。
[2] 上記扉の施錠は、上記収容室ごとに配置される電子錠により行われ、最上段の上記一単位の上側、及び、最下段の上記一単位の下側からなる群より選択される少なくとも一方に、上記電子錠を制御する制御装置を収容する制御室を更に備える、[1]に記載の収容ボックス。
[3] 上記一単位を構成する上記収容室の上記扉のそれぞれは、正面視において、上記一単位の横幅方向の略中心を通り上下方向に延びる仮想線に対して対称に開閉する開き戸である、[2]に記載の収容ボックス。
[4] 上記一単位を構成する上記収容室の上記扉は、左右の端部を軸に、上記仮想線から上記軸の方向にそれぞれ回転して開閉する、[3]に記載の収容ボックス。
[5] 上記電子錠が、上記柱状部材の上記中空構造に収容され、上記制御装置と、上記電子錠とは、連通する上記中空構造に挿し通されたケーブルによって接続される、[4]に記載の収容ボックス。
[6] 上記電子錠は、上記収容室ごとに配置されるスレーブ基板に接続され、上記制御装置と、上記スレーブ基板とは、上記制御装置をマスタとして、上記ケーブルによってシリアル接続される、[5]に記載の収容ボックス。
[7] 上記収容室には、電子機器の充電用デバイスが配置され、上記充電用デバイスは、連通する上記中空構造に挿し通された電源ケーブルによって、上記制御室に配置された電源供給装置と接続される、[6]に記載の収容ボックス。
[8] 上記制御装置は、ホスト装置から受信した命令により、上記電子錠の施錠状態を制御し、上記命令によらず、上記扉の上記電子錠を開錠するための緊急開錠機構を更に備える、[7]に記載の収容ボックス。
[9] 上記緊急開錠機構は、専用工具によって除去可能な保護具により保護される、[8]に記載の収容ボックス。
[10]
上記収容ボックスは、上記中空構造の内部において上記収容ボックスの高さ方向に伸びる主軸と、上記主軸の長さの中途位置において、上記主軸から略垂直に伸びる開錠ロッドと、上記主軸を上記高さ方向に移動させる移動機構と、を備え、上記開錠ロッドは、上記電子錠が備える機械的開錠手段に対応する位置に配置され、上記移動によって、上記機械的開錠手段に接触し、上記機械的開錠手段を作動させて上記電子錠を開錠させる、[2]に記載の収容ボックス。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型の収容室を多数備える場合であっても十分な配線スペースを確保でき、両開きにも対応可能な収容ボックスが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の収容ボックスの第1の実施例の正面図(扉を閉じた状態)である。
図2】本発明の収容ボックスの第1の実施例の斜視図(扉を開いた状態)である。
図3】本発明の収容ボックスの第1の実施例の正面図(扉を開いた状態)である。
図4】(a)はA-B部分拡大図(扉を閉じた状態)である。(b)はA-B部分拡大図(扉を開いた状態)である。
図5】(a)はC-C′断面図である。(b)はD-D′断面図である。
図6】電子錠の側面模式図である。(a)は施錠状態、(b)は開錠状態である。
図7】柱状部材と電子錠との位置関係の説明図である。(a)は正面図である。(b)はE-E′一部断面図である。
図8】緊急開錠機構の説明図である。(a)は施錠状態、(b)は開錠状態である。
図9】本発明の収容ボックスの第1の実施例の機能ブロック図である。
図10】本発明の収容ボックスの第1の変形例における、(a)一単位の正面図(扉を閉じた状態)、(b)一単位の正面図(扉を開いた状態)、及び、(c)一単位のF-F′断面図である。
図11】本発明の収容ボックスの第2の変形例における、(a)一単位の正面図(扉を閉じた状態)、(b)一単位の正面図(扉を開いた状態)、及び、(c)一単位のG-G′断面図である。
図12】本発明の収容ボックスの第2の実施例の正面図(扉を閉じた状態)である。
図13】本発明の収容ボックスの第2の実施例の平面図(扉を閉じた状態)である。
図14】本発明の収容ボックスの第2の実施例の右側面図(扉を閉じた状態)である。
図15】収容ボックスのH-H′線端面図である。
図16】収容ボックスのJ-J′部分拡大図である。
図17】収容ボックスのL-L′線端面図である。
図18】主軸が上方向に移動して、解除レバーが上方向にスライドした状態を表す図である。
図19】主軸が上方向に移動して、解除レバーが上方向にスライドした状態を表す図である。
図20】本発明の収容ボックス(変形例)のH-H′線断面図である。
図21】本発明の収容ボックス(変形例)のP-P′部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化した一例であって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、及び、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合があり、また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なることがある。
【0015】
[収容ボックス]
本発明の収容ボックスの第1の実施例(実施例1)について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施例1の正面図(扉を閉じた状態)である。図2は実施例1の斜視図(収容室の扉を開いた状態)である。図3は、実施例1の正面図(扉を開いた状態)である。
また、図4(a)は、A-B部分拡大図(扉を閉じた状態)である。図4(b)は、A-B部分拡大図(扉を開いた状態)である。図5(a)は、C-C′断面図である。図5(b)は、D-D′断面図である。
【0016】
収容ボックス100は、筐体11と、複数の収容室20(収容室群)と、扉12とを備える。収容室20は、上下、左右、及び、背面を筐体11で区画され、前方に開口する。この開口は、扉12によってそれぞれ独立に開閉される。
収容室群は、左右に隣り合って並ぶ一組の収容室20を一単位として、これが上下方向に積み重なるように配置されて構成される。なお、上下は、左右に対して交差する方向である。また、例えば、図3において、扉12が設けられた方向が正面であり、正面と反対側が背面である。
左右に隣り合って並ぶ一組の収容室20の扉12は、仮想線M(図1、4)を中心に、中央から左右へと回転して開く(観音開き方式)。なお、それぞれの扉12は、後述する電子錠により、独立に施錠可能とされる。
【0017】
収容室群は、一単位1、一単位2、・・・、一単位10が上から順に並び、2列10段に構成される。
しかし、収容室群のレイアウトは上記に限定されない。少なくとも左右に隣り合って並ぶ一組の収容室20を有していればよいため、最小構成は、2列1段である。また、一単位が横に連なってもよい。その場合、4列10段等とされてもよい。段数は特に限定されず、用途に応じて適宜選択されてよい。
なお、上下に積み重なるように配置される一単位のそれぞれは、構造上、それぞれ独立してもよいし、一体とされてもよい。一単位のそれぞれが独立している場合、それぞれをビス等により相互に固定することで、収容ボックス100が構成される。
【0018】
複数段、積み重なるように配置された一単位のうち、最下段の一単位10の下側の段14には、前方に開口する制御室26が設けられる。制御室26の開口には、錠前16によって施錠可能とされた扉15が配置される。扉15のロック機構は、扉12のロック機構とは異なる方式である。
収容ボックス100においては、扉12は後述する電子錠により施錠され、扉15は、機械式の錠前16により施錠される。
通常、扉12は、ユーザにより使用され、扉15は、メンテナンス等を行う技術者等により使用される。ロック機構を異なる方式とすることで、扉12、15の開錠資格者を容易に管理できる点で好ましい。また、扉15を機械式の錠前16としたため、電気系の不具合の発生時であっても、技術者等は、制御室26に容易にアクセスできる。
【0019】
制御室26には、制御装置であるマスタコントローラ27が配置される。マスタコントローラ27は、電子錠による扉12の施錠状態等を制御する。なお、制御方法については後述する。
【0020】
また、制御室26には、収容室20の個数に応じた電源供給装置29が収容される。電源供給装置29は、収容室20にそれぞれ配置された充電パッド24と一対一で接続される。充電パッド24は、電子機器の充電用デバイスである。電源供給装置29と、充電パッド24とは、電源ケーブル30によって接続される。
充電パッド24は、近傍に(典型的には、接触して)載置された電子機器に非接触で充電するための充電用デバイスである。非接触の充電は、ワイヤレス給電ともいわれる。充電パッド24は、「Qi」規格のワイヤレス給電に対応する充電用デバイスである。充電パッド24は、一対一で、AC/DCアダプタである電源供給装置29と接続される。
【0021】
収容ボックス100は、収容室20のそれぞれに充電パッド24を有するため、電子機器等を収容中にこれを充電できる。特に、電子機器が、貸し出し用のスマートフォン、及び、タブレット等の情報端末を含む場合、これは好ましい特徴の一つとなる。すなわち、収容ボックス100に、使用済みの情報端末の返却窓口、次の貸し出しまでの保管場所、情報端末の充電場所、及び、貸し出し窓口としての機能を兼ねて担わせることができる。
【0022】
例えば、貸し出し用の情報端末を限られた場所のみでユーザに使用させる場合(言い換えれば、所定場所以外への持ち出しを禁止にする場合)に収容ボックス100は特に有用である。情報端末の使用を許可する場所の出入り口等に収容ボックス100を設置することができる。ユーザは、当該場所から外出する際には、収容ボックス100の所定の収容室20に情報端末を預ける。情報端末は、ユーザの外出中に充電される。ユーザが外出先から戻ると、マスタコントローラ27からの命令に応じて、預けられたのと同一の、又は、異なる情報端末が収容された扉12が開錠される。
【0023】
充電パッド24は、「Qi」規格以外のワイヤレス給電方法、又は、その他の給電方法に対応してもよい。その場合、規格に応じて、電源供給装置29の個数は調整されてよい。1つの電源供給装置29から、すべての充電パッド24に電源が供給されてもよい。また、電源供給装置29を介さず、装置外の商用電源から直接、電源ケーブル30によって供給されてもよい。また、充電用デバイスは、充電用の接続端子等であってもよい。また、収容ボックス100は、充電パッド24を有していなくてもよい。
【0024】
マスタコントローラ27、及び、電源供給装置29は、制御室26の背面側に設けられる(図示しない)孔を介して、商用電源と接続され得る。収容ボックス100には、ブレーカ31が配置される。なお、収容ボックス100は、ブレーカ31を有さなくてもよい。
【0025】
一単位2は、左右に隣り合って並ぶ一組の収容室20により構成される。一組の収容室20は、一体として構成された空間が、柱状部材21により区画されることで形成される。柱状部材21は、一組の収容室20の間で共有される。また、柱状部材21は、一体として構成される上記空間の、幅方向の略中間に配置される。
上記空間は、上下左右、及び、背面が筐体11により区画される。上記空間は、収容室20の2つ分よりも大きな容積を有する。また、上記空間の開口は、同一形状の2つの扉12により開閉される。2つの扉12は、観音開き方式とされ、中央から左右へと、仮想線Mに対して対称に開閉する。
【0026】
柱状部材21は角筒状の部材であり、中空構造である。すなわち、柱状部材21の内部には、空間42が存在する(図5(a)、(b))。更に、この空間42の上側、及び、下側の筐体11には、孔40が設けられる。
一単位1~10には、それぞれ、空間42、及び、孔40が設けられる。更に、収容室群は一単位1~10が複数段、積み重なるように配置されて構成されるため、柱状部材21の中空構造は、複数段にわたって連通する。なお、一単位1の上側の孔40には蓋がされてもよい。すなわち、最下段、又は、最上段の一単位の下側、又は、上側であって、制御室が連結しない方には、孔40に蓋がされていてよい。
【0027】
この連通する中空構造は、配線スペースとして活用される。すなわち、このスペースに、ケーブル28、及び、電源ケーブル30が挿し通される。連通する中空構造に挿し通されるケーブル28により、電子錠60は、(後述するスレーブ基板を介して)マスタコントローラ27と接続される。また、連通する中空構造に挿し通される電源ケーブル30により、充電パッド24は、電源供給装置29と接続される。
【0028】
従来、配線スペースは収容ボックスの背面、又は、側壁内に設けられることがあった。しかし、配線スペースを収容ボックスの背面に設けた場合、収容室の背面側に扉を設置するのが困難となる。これは、両開き式の収容ボックスの実現の妨げとなった。
また、背面に設けた場合、オンサイトでのメンテナンス性にも改善すべき点があった。特に、建築物の壁を背に収容ボックスが設置された場合、その状態では配線スペースへのアクセスが悪く、オンサイトでのメンテナンスが困難だった。
【0029】
一方で、筐体のうち、側壁内部に配線スペースを設けた場合、配線スペースが狭小となったり、収容ボックス全体の配線経路が煩雑となりやすかった。
従来の収容ボックスは、1つの独立した収容室を上下に重ねた形態の「一列の収容室ユニット」を単位として構成されることが多かった。この一列の収容室ユニットを左右に隣り合うように並べ、収容室群が構成されていた。
この場合、「一列の収容室ユニット」を構成する各収容室への配線は、左右一方側の側壁内部に収容される。すなわち、配線スペースは、一列の収容室ユニットごとに、側壁内部に設けられる。
【0030】
収容力の向上(限られた設置スペースへの収容室の集約)のためには、より薄い側壁が求められる。しかし、側壁が薄くなれば、配線スペースは圧迫される。従って、収容力を高めようとするとメンテナンス性が犠牲になっていた。
また、一列の収容室ユニットを基本単位として構成されるため、配線スペースも基本単位と同数必要となる。そのため、配線スペースの個数が多くなりやすく、結果として収容ボックス全体の配線が煩雑となりやすかった。
【0031】
これに対し、収容ボックス100では、配線スペースとして、柱状部材21内の連通する中空構造が提供される。この中空構造は、左右に隣り合って並ぶ収容室20の間に設けられる。そのため、背面側に配線スペースを設ける必要がない。また、背面側に配線スペースがないため、両開き方式も採用できる。両開き方式とするためには、扉12と同様の扉を、収容室20の背面側に更に設ければよい。
【0032】
また、一体をなす空間を区画し、2つの収容室20を形成するための「しきり」としても、柱状部材21は機能する。すなわち、隣り合う2つの収容室20により、柱状部材21が共有される。従って、柱状部材21の横幅を、従来の側壁の2倍としても、収容ボックス全体の横幅が大きくなることはない(同じか、より小さい)。
また、従来の側壁の2倍の横幅の柱状部材21を採用しても、収容室の広さ(横幅)に与える影響は従来と同様か、それ以下である。
一方で、配線スペースとしては、側壁内より幅広となるためメンテナンス性が向上する。また、設置形態によらず、オンサイトでのメンテナンスも容易である。
【0033】
特に、収容ボックス100は、一単位10の下側に制御室26を有するため、よりメンテナンス性が高い。収容室20に対して追加の配線が必要になっても、扉12、及び、扉15を開けて、中空構造を挿し通すように配線すればよい。
例えば、収容室20に各種センサ(扉開閉センサ、及び、荷物センサ)等を追加する場合も、配線の追加は容易である。
また、収容ボックス100が建築物の壁を背に設置されたとしても、前方からメンテナンスできる。
なお、制御室26は、最上段の一単位1の上側に配置されてもよい。この場合、連通する中空構造に対して、上側からケーブル28等が挿し通される。
また、制御室26は、最上段の一単位1の上側、及び、最下段の一単位10の下側の両方に配置されてもよい。収容室群に含まれる収容室20の個数、言い換えれば、一単位の段数をより多くできる点で、制御室26は、一単位1の上側、一単位10の下側のいずれか一方に配置されることが好ましい。
【0034】
更に、柱状部材21により区画される空間42(連通する中空構造)に配線等をまとめることにより、更に別の効果がもたらされる。それは、扉12の施錠のための電子錠を空間42に収納できることである。空間42に一組の収容室20の施錠のための電子錠2個を集約することで、収容ボックス100の配線はより単純化され、メンテナンス性もより向上する。
以下では、上記に関連する扉12のロック機構の構成、及び、扉12の開閉方式等について説明する。なお、説明には、図1~5に加えて、図6の電子錠の側面模式図(一部断面図)、及び、図7の柱状部材と電子錠との位置関係の説明図等が使用される。
【0035】
まず、図4に示されるように、柱状部材21は、正面視で3枚の前面板35、36、37を含んで構成される。前面板35、36、及び、前面板35、37には、それぞれ両者にわたる施錠孔22が設けられる。
【0036】
施錠孔22は、柱状部材21の正面側から空間42側へと向かう厚み方向に、前面板35、36、37を貫通するように設けられる(図5(a))。施錠孔22の裏側(空間42)には、扉12を施錠するための電子錠60が配置される。なお、図4、5では、電子錠60の図示は省略される。
【0037】
扉12の背面側には、ロック機構を構成するストライク板23が設けられる。ストライク板23は、扉12の面の向く方向(背面側)へと延びる板状部材である。この板状部材には貫通孔が設けられる。
ストライク板23は、閉扉状態では、施錠孔22に挿し通され、空間42に配置された電子錠60まで到達する。
【0038】
図6(a)は、閉扉、かつ、施錠状態における、ストライク板23と電子錠60との関係を表した、側面模式図である。なお、説明のため、ストライク板23のみ断面図としている。
【0039】
閉扉状態では、扉12の背面側に設けられたストライク板23が施錠孔22に挿し通される。ストライク板23の貫通孔には、電子錠60のデッドボルト61が挿し通される。ストライク板23の貫通孔は、柱状のデッドボルト61の直径より大きな孔径となるよう調整される。デッドボルト61が上記貫通孔に挿入されると、扉12はロックされる。
【0040】
図6(b)は、閉扉、かつ、開錠状態におけるストライク板23と電子錠60との関係を表した、側面模式図である。なお、本図においても、ストライク板23については断面図としている。
図6(a)の施錠状態から、デッドボルト61が電子錠60側に引き込まれると開錠状態となる。
【0041】
原則として、施錠/開錠は、マスタコントローラ27から伝達される命令により実施される。しかし、収容ボックス100は、上記以外にも機械的な開錠機構を有する。
電子錠60は、機械的な開錠機構として、解除レバー62を備える。解除レバー62は、デッドボルト61と連動している。解除レバー62が前方から後方へ押し倒されると、マスタコントローラ27からの命令によらず、デッドボルト61が電子錠60側に引き込まれて開錠される。解除レバー62は緊急開錠機構を構成する。緊急開錠機構については後述する。
【0042】
図7は、柱状部材と電子錠との位置関係の説明図である。このうち、図7(a)は正面図である。また、図7(b)はE-E′一部断面図である。
図7(a)において、柱状部材21は、説明の便宜のために破線、かつ、透視可能に示されている。また、図7(b)では、説明の便宜のために、電子錠60の内部構造は示されず、主に断面の輪郭線として示される。
電子錠60はその側面が、前面板36の端面に固定される。前面板35と前面板36(37)が階段状の段違い構造とされることで、電子錠60を容易に固定できる。
施錠孔22の背面側にデッドボルト61が位置し、第2挿入口18の背面側に解除レバー62が位置するように、電子錠60の設置すべき位置が選択される。
【0043】
図8は、緊急開錠機構の説明図である。このうち図8(a)は、図7(b)において、扉12が閉じられた状態を表す図である。
第1挿入口13は、扉12に設けられ、厚み方向に貫通する。また、第2挿入口18は、前面板35に設けられ、厚み方向に貫通する。そして、第1挿入口13、第2挿入口18、及び、解除レバー62は、正面視で重なり合う位置に設けられる。
このように配置された第1挿入口13、第2挿入口18、及び、解除レバー62は、緊急開錠機構として機能する。
【0044】
図8(b)は、緊急開錠機構の使用方法の説明図である。
緊急開錠機構は、第1挿入口13から、所定の径の棒66を挿入して使用する。第1挿入口13から挿入された棒66は、第1挿入口13、第2挿入口18を貫通して、解除レバー62に至る。解除レバー62は、棒66によって後方へと押し倒される(方向P1)。
解除レバー62とデッドボルト61とは連動する。そのため、解除レバー62が押し倒されると、デッドボルト61が電子錠60側(方向P2)に引き込まれる。これにより、マスタコントローラ27からの命令によらず、電子錠60が開錠される。
【0045】
なお、第1挿入口13の内側には、雌ネジが切られている。第1挿入口13には、保護具65がねじ込まれている。保護具65は外側に雄ネジが切られた止めネジである。保護具65は専用工具によって除去(取り外し)ができる。保護具65は典型的には、いわゆる「いたずら防止ネジ」、「TRF(登録商標)」等が使用できる。
【0046】
扉12の解錠がホスト装置から受信した命令により行われる形態の収容ボックス100では、緊急開錠機構は特に有用である。何らかの不具合でホスト装置から開錠命令が受信できない場合でも、機械的に開錠できる点が優れている。また、第1挿入口13を保護具65で保護することで、開錠資格のない者による悪意の、又は、不用意な開錠も抑制される。
【0047】
一般に、収容室のロック機構にはセキュリティが求められる。そのため、収容ボックスの扉に、機械的な緊急開錠機構が設けられることはない。しかし、収容ボックス100は、後述するとおり、開錠命令をホスト装置に依存する構成である。ホスト装置が遠隔地に存在する場合等には、特に、オンサイトで緊急開錠すべき場面は多く存在する。例えば、不用意に被収容物が収容室20に閉じ込められてしまった場合である。ホスト装置が遠隔地に存在し、緊急開錠等の設定変更・命令等が容易でない場合でも、ハードウェア的な緊急開錠機構により被収容物が容易に取り出される。また、第1挿入口13が保護具65で保護されることで、ロック機構のセキュリティも確保される。
【0048】
次に、扉12の開閉方式について説明する。
左右に隣り合って並ぶ一組の収容室20の扉12の電子錠60は、柱状部材21の内部の空間42に収容される。言い換えれば、左右に並ぶ2つの扉12のための2つの電子錠60が、中央の柱状部材21に集約される。このため、扉12は、「観音開き」方式とされる。
【0049】
本明細書において、「観音開き」方式の扉12とは、一単位2の開口に配置される2つの扉12が、一単位2の横幅方向の略中心を通り上下方向に延びる仮想線Mに対して対称に開く開き戸の一種を意味する。なかでも、左右の端部を軸に、仮想線Mから軸の方向にそれぞれ回転して開閉する扉を「観音開き」方式とする。言い換えれば、「観音開き」方式は、正面視において、一単位2の開口に配置される2つの扉12が中心から外へと回転して開く扉を意味する。
【0050】
左右に隣り合って並ぶ一組の収容室20の扉12が観音開き方式とされると、電子錠60が中央部に集約される。すなわち、電子錠60を柱状部材21の内部の空間42に配設できる。空間42は、制御室26から連通する配線スペースでもある。このため、これらの電子錠60(又は、これを接続するスレーブ基板)には、制御室26のマスタコントローラ27から続くケーブル28を容易に接続できる。結果として、収容ボックス100の配線はより単純化され、メンテナンス性もより向上する。
【0051】
次に、収容ボックス100の施錠制御の方法について説明する。図9は、収容ボックス100の機能ブロック図である。
収容ボックス100は、1つのマスタコントローラ27と、収容室20ごとに配置されるスレーブ基板58とを備える。スレーブ基板58は、コントローラ54、電子錠I/F(インタフェース)55、上位通信ポート56、及び、下位通信ポート57を有する。電子錠I/F55は、電子錠60と接続される。
なお、図8では、スレーブ基板58と、電子錠60とは別体として構成されているが、一体の電子錠ユニットとされてもよい。
スレーブ基板58、及び、電子錠60は、収容室20のそれぞれに対して設けられる。スレーブ基板58、及び、電子錠60は対応する収容室20を区画する柱状部材21内に収容される。
【0052】
マスタコントローラ27は、プロセッサ51、メモリ52、及び、通信部53を有するコンピュータである。マスタコントローラ27は、ホスト装置50と接続される。ホスト装置50からの命令は、通信部53の機能により受信され、スレーブ基板58のコントローラ54へと伝達される。
具体的な一形態としては、ホスト装置50から、所定の収容室20の扉12を開錠する命令を受けると、マスタコントローラ27は、対応するスレーブ基板58のコントローラ54を制御して、電子錠60に開錠命令を送信する。なお、扉12の電子錠60は、それぞれ、電子錠I/F55を介してスレーブ基板58に接続される。
【0053】
マスタコントローラ27と、スレーブ基板58のそれぞれは、マスタコントローラ27を「マスタ」として、シリアル接続される。
詳細には、マスタコントローラ27と直接に接続されるスレーブ基板58、及び、他のスレーブ基板58と接続されるスレーブ基板58が、シリアル通信可能にマルチドロップ接続される。これにより、接続順が最上位であるマスタコントローラ27から送信される各種コマンドが、下流に接続されるスレーブ基板58のそれぞれにおいて実行される。
【0054】
なお、マスタコントローラ27と、電子錠60を制御するコントローラ54とは、一対一で接続されてもよい。マスタコントローラ27とコントローラ54とが一対一で接続されると、複数のコントローラ54のアドレス設定が不要となる。一方で、シリアル接続される場合には、必要なケーブル28の数、及び、系統が、一対一で接続される場合と比較してより少なく、配線もより単純化される。
【0055】
スレーブ基板58は、1本のシリアル接続ケーブル(ケーブル28)によって一系統で接続される。接続形態の例を説明する。
まず、制御室26に収容されたマスタコントローラ27と、一単位10の収容室20のうちの一方のスレーブ基板58が、ケーブル28によって接続される。次に、上記スレーブ基板58と、一単位9の収容室20のうちの一方のスレーブ基板58とが、ケーブル28によって接続される。続いて、一単位8、7、・・・、1までスレーブ基板58が順に接続される。
【0056】
一単位1のスレーブ基板58まで接続されたら、次は、一単位1の他方のスレーブ基板58がその下流に接続される。続いて、一単位2、3、4、・・、8、9、10と、上記と逆順に、残りのスレーブ基板58が順次下流に接続される。上記のように接続されると、スレーブ基板58は、一系統ですべて接続される。
すなわち、一組の収容室20のうち片方のスレーブ基板58を順次接続し、その後、逆順に残りの収容室20のスレーブ基板58を接続することで、あたかも「一筆書き(one-stroke writing)」のような、一系統のケーブル28による効率的な接続が実現される。
この形態では、マスタコントローラ27と一対一接続するよりも、配線がより単純となり、メンテナンス性もより向上する。
【0057】
スレーブ基板58には、自身の上位及び下位の少なくとも一方に他の機器が接続される。その接続順位は、マスタコントローラ27が最上位であり、各スレーブ基板58が順番にそれに続く。
具体的には、マスタコントローラ27と接続されたシリアル通信用のケーブル28は、スレーブ基板58の上位通信ポート56と接続され、このスレーブ基板58の下位通信ポート57と、下流に位置する別のスレーブ基板58の上位通信ポート56とが接続される。
このように、通信路において、スレーブ基板58のそれぞれはマルチドロップ接続され、上位のスレーブ基板58と下位のスレーブ基板58が1対1接続さている。ここで、上位とは、指令を送り、応答を受け取る側を意味し、下位とは、指令を受け取り、応答を送る側を意味する。
【0058】
なお、通信路におけるスレーブ基板58の接続順位(アドレス)は、マスタコントローラ27のメモリ52に記憶されていてもよい。また、ホスト装置50により記憶されていてもよい。
【0059】
ホスト装置は、収容ボックスに隣接して設置されてもよいし、遠隔地に設置されてもよい。また、有線接続であっても、無線接続であってもよい。インターネット等のコンピュータネットワークを介して接続されてもよい。
また、ホスト装置による電子錠60の施錠/開錠の命令は、種々の信号をきっかけに生成され得る。
【0060】
例えば、ホスト装置は、タッチパネルディスプレイを備えるコンピュータであってよい。この場合、ホスト装置が提供するGUI(Graphical User Interface)により、ユーザからの入力を受け付け、それを施錠/開錠命令の生成のきっかけとしてよい。
また、ホスト装置が生体認識機構を有していてもよい。この場合、ホスト装置がユーザを認識し、施錠/開錠の命令を生成し得る。
【0061】
なお、施錠/開錠の命令を生成、及び/又は、アドレスの設定は、ホスト装置によらず、マスタコントローラ27の命令により行われてもよい。この場合、収容ボックス100は、スタンドアロンで運用され得る。
【0062】
(変形例1)
次に、収容ボックスの第1の変形例(変形例1)について説明する。図10(a)は、一単位の正面図(扉を閉じた状態)である。図10(b)は一単位の正面図(扉を開いた状態)である。また、図10(c)は一単位のF-F′断面図である。
【0063】
変形例1は、扉12の開閉方式が実施例1とは異なる。変形例1における一単位の2枚の扉12は、一単位の横幅方向の略中心を通り上下方向に延びる仮想線Mに対して対称に開く開き戸である点では、実施例1と同様である。
しかし、正面視において、一単位の開口に配置される2つの扉12が仮想線Mを軸として、左右の端から中央へと回転して開く点が「観音開き」とは異なる。
【0064】
変形例1においては、電子錠(図示しない)は、筐体11によって左右の端部に区画される空間43に収容される。また、施錠孔22は、これに対応して、側壁部に形成される。
また、変形例1では、電子錠が空間43に収容されるため、柱状部材21は、段差構造を有さない。柱状部材21は、収容室20の開口と面一となる前面板36を含んで構成される。
【0065】
変形例1では、電子錠が左右の側壁内に収容されるため、中空構造から空間43へと、ケーブル28を引く必要がある。一方で、柱状部材21には電子錠を設置する必要がない。そのため、柱状部材21を単純な四角柱とすることができ、内部のスペースが確保しやすく、メンテナンス性が向上しやすい。
【0066】
なお、本発明の収容ボックスの一単位が備える2枚の扉12の開閉方式は、実施例1、及び、変形例1の方法に限定されない。一単位の横幅方向の略中心を通り上下方向に延びる仮想線Mに対して対称に開く開き戸としては、2枚の扉がいずれも、上から下へと回転して開くもの、下から上に回転して開くものであってもよい。しかし、2つの電子錠を柱状部材の中空構造に収容でき、配線がより簡略化される点、及び、スペースがより有効活用される点で、実施例1の観音開き式が好ましい。
【0067】
(変形例2)
次に、収容ボックスの第2の変形例(変形例2)について説明する。図11(a)は、一単位の正面図(扉を閉じた状態)である。図11(b)は一単位の正面図(扉を開いた状態)である。また、図11(c)は一単位のG-G′断面図である。
【0068】
単位の2枚の扉12は、一単位の横幅方向の略中心を通り上下方向に延びる仮想線Mに対して「非対称」に開く開き戸である。
変形例2の収容ボックスの一単位は、左側を軸に、右から回転して開く扉12を2枚備える。電子錠(図示しない)は、一方側は、柱状部材21内に収容される。他方側は、筐体11の側壁内に設けられた空間43に収容される。施錠孔22も、これに対応して、柱状部材21と、筐体11(側壁)にそれぞれ1つずつ設けられる。
【0069】
変形例2の収容ボックスでは、一単位のうち、一方の電子錠が柱状部材21の内部に収容される。そのため、変形例1と比較すると、配線の一部がより簡略化される。
【0070】
次に、本発明の収容ボックスの第2の実施例(実施例2)について、図面を参照しながら説明する。図12は、実施例2の収容ボックス200の正面図である。図12において、収容ボックス200は、扉12が閉じられた状態とされている。また、実施例1の収容ボックス100と同様に、左右に隣あって並ぶ一組の収容室を一単位として、これが、上下方向に積み重なるように配置されて構成されている。収容室群は一単位1、一単位2、・・・、一単位10が上から順に並び、2列10段に構成される。なお、図12では、一部の収容室群の図示が省略されている。具体的には、一単位4~一単位9の図示が省略されている。
上記収容室群は、それぞれ筐体11によって区画される。隣り合う扉12は、「観音開き」により開扉される。
【0071】
また、最下段の一単位10の下側の段14には、前方に開閉する扉15と、扉を施錠する機械式の錠前16が設けられる。扉15の内側は、収容ボックス200を制御するための機器等が収容される制御室とされる。
なお、図12の余白に記載された軸は、図面上の各方向の呼び名を定義するものである。以下の図面にも同様の軸が記載されており、これらは互いに対応している。
【0072】
図13は、収容ボックス200の平面図である。また、図14は、収容ボックス200の右側面図である。いずれの図面においても、扉12のロック(施錠)を行う電子錠60の位置を透視的に破線で図示している。
【0073】
図15は、収容ボックス200のH-H′線端面図である。なお、図15では、一部の内部機構は省略され、説明に必要な部分のみが図示されている。図示されない部分等は、実施例1の収容ボックス100と同様である。また、図16は、J-J′部分拡大図である。また、図17は、L-L′線端面図である。
【0074】
図15に戻り、一単位1は、左右に隣り合って並ぶ一組の収容室20により構成される。一組の収容室20の間は、実施例1同様、柱状部材21により区画される。この柱状部材21は角筒状の中空構造であり、内部に空間42が存在する。この空間42は、各段を貫通して、制御室26までを連通させる。
実施例1同様、空間42には、観音開きの2つの扉12の施錠・開錠のための電子錠60がそれぞれ配置される。
【0075】
収容ボックス200の特徴点の一つは、この電子錠60の緊急開錠機構にある。電子錠60の施錠/開錠は、実施例1(収容ボックス100)同様に、(図示しない)マスタコントローラ27からの命令によって実施される。緊急開錠機構は、上記命令によらない機械的な開錠機構である。
【0076】
緊急開錠機構は、機械的開錠手段である解除レバー62を含む。解除レバー62は、収容ボックス200の電子錠60ごとに設けられる。解除レバー62は、電子錠60から後方側に突出するように設けられている。この解除レバー62を上方向にスライドさせると、マスタコントローラ27の命令によらず、電子錠60が開錠される。
【0077】
収容ボックス200の緊急開錠機構は、上述の解除レバー62に加えて、上下方向に延びる主軸70と、主軸70から左右方向に延びる開錠ロッド72と、主軸70を上下に移動させる移動機構とから構成される。
【0078】
主軸70は、上下方向に延びる棒状の部材であり、空間43の上端から、下端まで、すなわち、最上段の一単位1から、最下段の制御室26へと向かう、収容ボックス200の高さ方向に延びている。主軸70は、背面視(後方から見たとき)隣り合って並ぶ電子錠60の間に収まるように配置される(図16)。また、電子錠60の後方に配置される(図17)。このように配置されることで、主軸70が上下に移動する場合も、電子錠60自体と干渉することはない。
【0079】
筐体11(天井部)は、その内側に固定された吊り下げ部84を備える。吊り下げ部84はコの字型の部材で、2本のバネ86が下向きに固定されている。2本のバネ86は、主軸70を吊り下げて保持する。
【0080】
主軸70には、高さ方向の中途位置に、主軸70を中心として左右方向に伸びる開錠ロッド72が設けられる。開錠ロッド72は、主軸70の上方向への移動に伴って、電子錠60の解除レバー62を上方向にスライドできるよう、解除レバー62の下側に配置される。収容ボックス200は、収容室20が2列10段とされた構成のため、開錠ロッド72は、各段に同じ高さの位置に設けられる。なお、これは、一単位1~10における電子錠60(解除レバー62)の上下方向の位置が同一であるためである。従って、一単位において、2つの電子錠60の解除レバー62の上下方向の位置が異なる場合、(すなわち、電子錠60の取り付け高さが、隣り合う収容室20間で異なる場合)開錠ロッド72の本数は、より多くてもよい。具体的には、収容室20の個数分(20本)設けられてもよい。
【0081】
図18、及び、図19は、主軸70が上方向に移動して、解除レバー62が上方向にスライドした状態を表す図である。図18は、図16のスライド後に対応し、図19は、図17のスライド後に対応する。
主軸70が上方向に移動すると、開錠ロッド72も上方向に移動し、解除レバー62を上に押し上げる。図では、移動方向が矢印によって示されている。解除レバー62が押し上げられることで、電子錠60のロックは解除される。
図19における破線で示された解除レバー62と開錠ロッド72とは、開錠前の状態を表し、実線で示された解除レバー62と開錠ロッド72とは、緊急開錠後の状態を表す。
なお、緊急開錠によって主軸70が上方向に移動した後は、これを吊り下げていたバネ86が収縮し、弾性力によって、開錠後の主軸70をもとの位置に戻す。
【0082】
なお、本実施例においては、解除レバー62を上方向にスライドさせることで電子錠60が開錠されるため、開錠ロッド72は、それぞれの解除レバー62の下側に配置される。しかし、解除レバー62を下方向にスライドさせることで電子錠60が開錠される場合、開錠ロッド72は、解除レバー62の上側に配置されてもよい。この場合、主軸70が下方向にスライドされることによってバネ86が伸長し、弾性力によって、開錠後の主軸70をもとの位置(上方向)に戻す。また、解錠ロッド72は、電子錠60の開錠ロッド72の構造及び機能に応じて、上記以外構成であってもよい。例えば、解錠ロッド72は、解錠レバー62に接続されていてもよいし、解錠レバー62に開口した穴に嵌合されていてもよい。
上記緊急開錠機構によれば、後述する移動機構による主軸70の上方向への移動により、複数の収容室20の電子錠60が一度に開錠でき、メンテナンス性がより向上する。
【0083】
次に、図15を参照しながら、主軸70を上下に移動させるための移動機構について説明する。
主軸70は、空間42を一単位1から制御室26まで延びる。主軸70の下端部には、主軸70を上下に移動させるためのハンドル74が配置される。ハンドルの形状は特に限定されず、オペレータの手動により主軸70を上下に移動させることができるよう、把手のような形状であればよい。図15においては、ハンドル74は解除レバー62とほぼ同様の形状である。すなわち、主軸70からほぼ直角に左右方向に伸びる棒状とされている。
【0084】
主軸70の下端にはシリンダー錠82が設置される。シリンダー錠82を回転させると、リンク機構80を介して結合された主軸70が上下に移動する。すなわち、シリンダーの回転によってリンクが作動し、主軸70が上下する。
なお、実施例2では、シリンダー錠82と主軸70とがリンク機構80を介して結合されているが、移動機構の構成は上記に限定されない。シリンダーの回転を主軸70の上下運動に変換できる機構であればよい。シリンダー錠82と主軸70とがカムを介して接続されていてもよい。
また、移動機構は、ハンドル74、及び、リンク機構80、シリンダー錠82によって構成される以外にも、スクリュー機構、ラックアンドピニオン、及び、リニアアクチュエータ等の公知の機構により構成されていてもよい。また、収容ボックス200は、いずれか1つの移動機構を備えていればよい。
【0085】
ここで、シリンダー錠82、及び、ハンドル74(移動機構)は制御室26に収容されている。制御室26は、通常は、機械式の錠前16により施錠されている。そのため、錠前16を開錠できない一般ユーザにより意図せず移動機構が操作されてしまうことが防止される。移動機構の操作はすなわち、電子錠60の緊急開錠につながる。一般ユーザによる操作を抑止することは、収容ボックス200のセキュリティ性もより向上させる。
一方で、錠前16を開錠して制御室26にアクセスできるオペレータによれば、ハンドル74、又は、シリンダー錠82を操作することによって、複数の扉12を一度に簡単に緊急開錠することができる。上記機構によれば、複数の扉12(収容室20)を備える収容ボックス200であっても、簡単な操作で一気に緊急開錠できるため、メンテナンス性がより高まる。
【0086】
また、実施例1と比較した場合、緊急開錠のために解除レバー62にアクセスするための孔を扉12に設ける必要がない。そのため、孔から侵入する雨水等の影響をより小さくできる。すなわち、堅牢性がより高まる。また、扉12の表面が(穴がないことによって)よりスッキリとした見た目となり、デザイン性にも優れる。
【0087】
次に、電子錠60のケーブル28接続について説明する。
電子錠60のそれぞれケーブル28は、列ごとにケーブル28によってシリアル接続されている。電子錠60からは引き出し線78が引き出され、コネクタ76を介してケーブル28と接続されている。このケーブル28によって、同列の電子錠60が順番に接続される。
【0088】
図20は、本実施例の変形例である収容ボックス300のH-H′線断面図である。また、図21は、図20のP-P′部分拡大図である。
収容ボックス300は、緊急開錠機構を構成する主軸70Bと、開錠ロッド72との配置が、収容ボックス200とは異なっている。
具体的には、開錠ロッド72は、主軸70Bから略垂直に、くし型に配置されている。このように配置されることで、ケーブル28へのアクセスがより容易となり、メンテナンス性がより向上する。なお、主軸70Bは、解錠ロッド72の左右の両側に1本ずつ配置されて、解錠ロッド72を左右両側から挟むように設けられていてもよい。
より具体的には、収容ボックス300の前方からオペレータが手を入れて、電子錠60の後方に収容されるケーブル28に触れるときに、主軸70B及び開錠ロッド74が邪魔になりにくい。結果として、メンテナンス性がより向上する。
【符号の説明】
【0089】
1~10 一単位、11 筐体、12 扉、13 第1挿入口、14 段、15 扉、16 錠前、18 第2挿入口、20 収容室、21 柱状部材、22 施錠孔、23 ストライク板、24 充電パッド、26 制御室、27 マスタコントローラ、28 ケーブル、29 電源供給装置、30 電源ケーブル、31 ブレーカ、35~37 前面板、40 孔、42、43 空間、50 ホスト装置、51 プロセッサ、52 メモリ、53 通信部、54 コントローラ、56 上位通信ポート、57 下位通信ポート、58 スレーブ基板、60 電子錠、61 デッドボルト、62 解除レバー、65 保護具、66 棒、100、200、300 収容ボックス、70、70B 主軸、72 開錠ロッド、74 ハンドル、76 コネクタ、78 引き出し線、80 リンク機構、82 シリンダー錠、84 吊り下げ部、86 バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21