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特開2024-114652二酸化炭素分離用アミン組成物、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114652
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離用アミン組成物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240816BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240816BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240816BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240816BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017830
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023018851
(32)【優先日】2023-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023204267
(32)【優先日】2023-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】原 範之
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 学
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA03
4D002BA12
4D002CA06
4D002CA07
4D002DA31
4D002GA01
4D002GB08
4D002GB11
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB07
4D020BC01
4D020CB01
4D020CB08
4D020CB18
4D020CC05
4D020DA03
4D020DB06
4D020DB07
4G146JA02
4G146JC08
4G146JC28
(57)【要約】
【課題】 先行技術に記載されたピペラジン含有水溶液については、冬季屋外等の氷点下の低温下では、溶液全体が凝固してしまうという課題があった。
【解決手段】
下記一般式(1)、又は(2)で示されるアミン化合物(A)と下記一般式(3)示されるアミン化合物(B)と二酸化炭素を含む(前記アミン化合物(A)及びアミン化合物(B)は、各々独立して、炭酸塩又はカルバミン酸塩を形成していてもよい)、ことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物を用いる。
【化1】
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、又は(2)で示されるアミン化合物(A)と下記一般式(3)示されるアミン化合物(B)と二酸化炭素を含む(前記アミン化合物(A)及びアミン化合物(B)は、各々独立して、炭酸塩又はカルバミン酸塩を形成していてもよい)、ことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物。
【化1】
[上記式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。a及びbは、各々独立して、0又は1を表す。]
【化2】
[上記式中、Rは、各々独立して、炭素数1~3のアルキル基を表す。]
【化3】
[上記式中、R、及びRは、各々独立して、炭素数2~3のアルキレン基を表す。]
【請求項2】
上記のアミン化合物(A)が、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンからなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物(A)である、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項3】
上記のアミン化合物(B)が、ピペラジン、又はホモピペラジンである、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項4】
アミン化合物(A)、及びアミン化合物(B)の総物質量100物質量部(モル部)に対して、二酸化炭素の物質量が10~150物質量部(モル部)である、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項5】
アミン化合物(A)とアミン化合物(B)の組成比について、アミン化合物(A)100質量部に対して、アミン化合物(B)が5~1000質量部である、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項6】
さらに下記一般式(4)又は(5)で示されるアミン化合物(C)を含む、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【化4】
[上記式中、R、及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、総炭素数が5~11の2,3-ジアルコキシプロピル基、炭素数2~7のアミノアルキル基、又は炭素数4~10のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は環を形成したシクロアルキル基でもよい。]
【化5】
[上記式中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、総炭素数が5~11の2,3-ジアルコキシプロピル基、炭素数2~7のアミノアルキル基、又は炭素数4~10のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は環を形成したシクロアルキル基でもよい。R、及びRは、各々独立して、炭素数2~3のアルキレン基を表す。]
【請求項7】
上記のアミン化合物(C)が、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、1-(アミノエチルアミノ)-2,3-ジヒドロキシプロパン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物(C)である、請求項6に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項8】
さらに水を含み、当該水の濃度が、水を含んだ状態の二酸化炭素分離用組成物全体の30~75質量%である、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項9】
少なくとも下記一般式(1)、又は(2)で示されるアミン化合物(A)と、下記一般式(3)示されるアミン化合物(B)と、気体、液体、又は固体状の二酸化炭素と、を混合することを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物の製造方法。
【化6】
[上記式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。a及びbは、各々独立して、0又は1を表す。]
【化7】
[上記式中、Rは、各々独立して、炭素数1~3のアルキル基を表す。]
【化8】
[上記式中、R、及びRは、各々独立して、炭素数2~3のアルキレン基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を分離するための二酸化炭素分離用組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題のため、二酸化炭素の分離・回収が注目されており、そのための二酸化炭素吸収液の開発が盛んにおこなわれている。
【0003】
二酸化炭素吸収液として、モノエタノールアミン水溶液が最も一般的である。モノエタノールアミンは、安価で工業的に入手しやすいが、120℃以上の高温にしないと、低温で吸収した二酸化炭素を放散しないという特性がある。
【0004】
そのため、モノエタノールアミンより二酸化炭素放散温度が低く、二酸化炭素回収のためのエネルギー消費が少ない二酸化炭素吸収液の開発がおこなわれている。例えば、N-メチルジエタノールアミン系吸収液が提案されている(例えば、特許文献1)。また、N-メチルジエタノールアミンに活性化剤としてピペラジンを混合させ、水に溶解させた二酸化炭素吸収液の開発が行われている(例えば、特許文献2)。
【0005】
前記特許文献2記載のピペラジン含有洗浄剤については、5~10℃付近でピペラジンが析出して洗浄液のポンプ輸送が困難になるという課題があった。当該課題を解決する手段として、ピペラジンを高濃度で含有する水溶液であって、常温付近でもピペラジンが析出することなく安定して溶解している溶液を製造する方法が報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006-528062号公報
【特許文献2】特開昭52-63171号公報
【特許文献3】特開2008-56642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術に記載されたピペラジン含有水溶液については、冬季屋外等の氷点下の低温下では、溶液全体が凝固してしまうという課題があり、その解決が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の[1]~[9]に存する。
【0010】
[1]
下記一般式(1)、又は(2)で示されるアミン化合物(A)と下記一般式(3)示されるアミン化合物(B)と二酸化炭素を含む(前記アミン化合物(A)及びアミン化合物(B)は、各々独立して、炭酸塩又はカルバミン酸塩を形成していてもよい)、ことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
[上記式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。a及びbは、各々独立して、0又は1を表す。]
【0013】
【化2】
【0014】
[上記式中、Rは、各々独立して、炭素数1~3のアルキル基を表す。]
【0015】
【化3】
【0016】
[上記式中、R、及びRは、各々独立して、炭素数2~3のアルキレン基を表す。]
[2]
上記のアミン化合物(A)が、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンからなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物(A)である、上記[1]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0017】
[3]
上記のアミン化合物(B)が、ピペラジン、又はホモピペラジンである、上記[1]又は[2]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0018】
[4]
アミン化合物(A)、及びアミン化合物(B)の総物質量100物質量部(モル部)に対して、二酸化炭素の物質量が10~150物質量部(モル部)である、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0019】
[5]
アミン化合物(A)とアミン化合物(B)の組成比について、アミン化合物(A)100質量部に対して、アミン化合物(B)が5~1000質量部である、上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0020】
[6]
さらに下記一般式(4)又は(5)で示されるアミン化合物(C)を含む、上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0021】
【化4】
【0022】
[上記式中、R、及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、総炭素数が5~11の2,3-ジアルコキシプロピル基、炭素数2~7のアミノアルキル基、又は炭素数4~10のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は環を形成したシクロアルキル基でもよい。]
【0023】
【化5】
【0024】
[上記式中、Rは、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、総炭素数が5~11の2,3-ジアルコキシプロピル基、炭素数2~7のアミノアルキル基、又は炭素数4~10のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は環を形成したシクロアルキル基でもよい。R、及びRは、各々独立して、炭素数2~3のアルキレン基を表す。]
[7]
上記のアミン化合物(C)が、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、1-(アミノエチルアミノ)-2,3-ジヒドロキシプロパン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物(C)である、前記の[6]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0025】
[8]
さらに水を含み、当該水の濃度が、水を含んだ状態の二酸化炭素分離用組成物全体の30~75質量%である、上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0026】
[9]
少なくとも下記一般式(1)、又は(2)で示されるアミン化合物(A)と、下記一般式(3)示されるアミン化合物(B)と、気体、液体、又は固体状の二酸化炭素と、を混合することを特徴とする、上記[1]に記載の二酸化炭素分離用組成物の製造方法。
【0027】
【化6】
【0028】
[上記式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。a及びbは、各々独立して、0又は1を表す。]
【0029】
【化7】
【0030】
[上記式中、Rは、各々独立して、炭素数1~3のアルキル基を表す。]
【0031】
【化8】
【0032】
[上記式中、R、及びRは、各々独立して、炭素数2~3のアルキレン基を表す。]
【発明の効果】
【0033】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、従来公知の材料に比べて凝固点が低く、氷点下における液状維持及び保存安定性に優れるという特長があり、製造された二酸化炭素分離用組成物の輸送時又は保管時の凍結を回避することができるという効果を奏する。
【0034】
前記の凍結を回避することができれば、当該凍結に伴う輸送容器又は保管容器の変形又は破損等の危害を低減することができるという効果を奏する為、本発明は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0036】
上記の通り、ピペラジンなどの環状2級アミンは水に対する溶解度が低く、これらを含有する従来公知の二酸化炭素吸収液は、冬期屋外等の低温下、特に氷点下では液全体が凝固してしまう課題があった。
【0037】
二酸化炭素吸収液が凝固してしまった場合、当該液の輸送又は保管していた容器を変形又は破損させるというリスクが高い。また、輸送中又は保管中に二酸化炭素吸収液が凝固してしまった場合、当該液を二酸化炭素分離・回収プラントに投入する際に、前記輸送容器又は保管容器全体を加温して再溶解させる必要があるが、そのような設備はあまり一般的ではない。このため、従来公知の二酸化炭素吸収液については、その凝固を防止するために、特に冬季において、厳密な温度管理が要求されるという課題があった。
【0038】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、従来公知の二酸化炭素吸収液に比べて凝固点が低く、氷点下における液状維持及び保存安定性に優れるという特長があり、厳密な温度管理の必要が不要になるという点で、顕著な効果を奏するものである。
【0039】
まず、本発明の二酸化炭素分離用組成物について説明する。
【0040】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、下記一般式(1)、又は(2)で示されるアミン化合物(A)と下記一般式(3)示されるアミン化合物(B)と二酸化炭素を含む(前記アミン化合物(A)及びアミン化合物(B)は、各々独立して、炭酸塩又はカルバミン酸塩を形成していてもよい)、ことを特徴とする。
【0041】
また、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、さらに、上記の一般式(4)又は(5)で示されるアミン化合物(C)を含んでもよい(前記アミン化合物(C)は、炭酸塩又はカルバミン酸塩を形成していてもよい)。
【0042】
本発明において上記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、及び(5)で示されるアミン化合物は、いずれも二酸化炭素を吸収したり、放散したりする役割を担う(例えば、国際出願公開WO2021/153650 A1、特開2022-101908、又は特開2022-168949等参照)。このため、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、二酸化炭素の分離・回収剤としての能力を有する。
【0043】
上記一般式(1)において、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。a及びbは、各々独立して、0又は1を表す。
【0044】
a及びbは、各々独立して、0又は1を表す。すなわち、a+b=0、1、又は2の関係を満たす。
【0045】
a=1且つb=1のとき、上記の一般式(1)は下記一般式(1a)で示される。
【0046】
【化9】
【0047】
[上記式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。]
a=0且つb=1のとき、上記の一般式(1)は下記一般式(1b)で示される。
【0048】
【化10】
【0049】
[上記式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。]
a=0且つb=0のとき、上記の一般式(1)は下記一般式(1c)で示される。
【0050】
【化11】
【0051】
[上記式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。]
上記の一般式(1)で表されるアミン化合物については、凝固抑制に優れる点で、a=0且つb=1のとき、又はa=0且つb=0のときが好ましい。すなわち一般式(1b)、又は(1c)で示されるアミン化合物であることが好ましい。
【0052】
上記の一般式(1)、(1a)、(1b)、及び(1c)において、R~Rは、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基を挙げることができる。これらのうち、凝固抑制に優れる点で、R~Rは、各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましく、全てが水素原子であることがより好ましい。
【0053】
一般式(1)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物(例示化合物1~23)を挙げる事ができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0054】
【化12】
【0055】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物については、凝固抑制に優れる点で、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(R=R=R=R=R=R=水素原子、a=0、b=1)又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(R=R=R=R=R=R=水素原子、a=0、b=0)であることが好ましい。すなわち、下記の例示化合物1、又は13で表されるアミン化合物であることが好ましい。
【0056】
【化13】
【0057】
上記一般式(2)において、Rは、各々独立して、炭素数1~3のアルキル基を表す。
【0058】
上記一般式(2)において、Rは、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、各々独立して、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基を挙げることができる。これらのうち、凝固抑制に優れる点で、Rは、全てがメチル基であることが好ましい。
【0059】
上記一般式(2)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジンを挙げることができる。
【0060】
なお、アミン化合物(A)については、凝固抑制に優れる点で、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンからなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物(A)であることが好ましい。
【0061】
上記一般式(3)において、R、及びRは、各々独立して、炭素数2~3のアルキレン基を表す。
【0062】
上記一般式(3)において、R、及びRは、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、各々独立して、エチレン基、又はプロピレン基を挙げることができる。当該R、及びRについては、凝固抑制に優れる点で、各々独立して、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、又は1,3-プロピレン基であることが好ましく、R、及びRが、同一の基であって、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、又は1,3-プロピレン基であることがより好ましく、同一の基であって、1,2-エチレン基であることがより好ましい。
【0063】
上記一般式(3)で示されるアミン化合物(B)の具体例としては、例えば、ピペラジン、又はホモピペラジンを挙げることができる。
【0064】
【化14】
【0065】
なお、アミン化合物(B)については、凝固抑制に優れる点で、ピペラジン、又はホモピペラジンであることが好ましい。
【0066】
上記一般式(4)において、R、及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、総炭素数が5~11の2,3-ジアルコキシプロピル基、炭素数2~7のアミノアルキル基、又は炭素数4~10のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は環を形成したシクロアルキル基でもよい。
【0067】
また、上記一般式(5)において、Rは、炭素数1~6のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、総炭素数が5~11の2,3-ジアルコキシプロピル基、炭素数2~7のアミノアルキル基、又は炭素数4~10のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は環を形成したシクロアルキル基でもよい。R、及びRは、各々独立して、炭素数2~3のアルキレン基を表す。
【0068】
前記の炭素数1~6のアルキル基(シクロアルキル基でもよい)については、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、sec-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-へキシル基、sec-へキシル基、イソへキシル基、tert-へキシル基、又はシクロへキシル基等を挙げることができる。
【0069】
上記の総炭素数が5~11の2,3-ジアルコキシプロピル基については、特に限定するものではないが、例えば、2,3-ジメトキシプロピル基(総炭素数5)、2,3-ジエトキシプロピル基(総炭素数7)、2,3-ジプロポキシプロピル基(総炭素数9)、又は2,3-ジブトキシプロピル基(総炭素数11)等を例示することができる。
【0070】
上記の炭素数2~7のアミノアルキル基(アルキル基はシクロアルキル基でもよい)については、特に限定するものではないが、例えば、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、又は4-アミノブチル基等を例示することができる。
【0071】
上記の炭素数4~10のヒドロキシアルキル基(アルキル基はシクロアルキル基でもよい)については、特に限定するものではないが、例えば、2-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシペンチル基、2-ヒドロキシへキシル基、2-ヒドロキシヘプチル基、2-ヒドロキシシクロペンチル基、2-ヒドロキシシクロへキシル基、2-ヒドロキシシクロヘプチル基、2-ヒドロキシシクロオクチル基、2-ヒドロキシシクロノニル基、又は2-ヒドロキシシクロデシル基等を例示することができる。
【0072】
前記の炭素数2~3のアルキレン基については、特に限定するものではないが、例えば、エチレン基、又はプロピレン基を挙げることができ、より詳細には、例えば、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、又は1,3-プロピレン基を挙げることができる。
【0073】
本発明の一般式(4)におけるR、及びRについては、二酸化炭素の吸脱着効率に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-アミノエチル基、又は3-アミノプロピル基であることが好ましい。
【0074】
本発明の一般式(5)におけるRについては、二酸化炭素の吸脱着効率に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2-アミノエチル基、又は3-アミノプロピル基であることが好ましい。
【0075】
本発明の一般式(5)におけるR、及びRについては、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、各々独立して、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、又は1,3-プロピレン基であることが好ましく、同一の基であって、1,2-エチレン基、1,2-プロピレン基、又は1,3-プロピレン基であることがより好ましく、同一の基であって、1,2-エチレン基であることがより好ましい。
【0076】
本発明の一般式(5)で示されるアミン化合物については、下記の一般式(5a)で示されるアミン化合物であることが好ましい。
【0077】
【化15】
【0078】
[上記式中、Rは、一般式(5)におけるRと同義である。]
一般式(4)、又は(5)で示されるアミン化合物(C)の具体例としては、例えば、シクロへキシルアミン、ジシクロへキシルアミン、N-メチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、N-メチル―1,3―ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,2-ジアミノエタン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、N-(3-アミノプロピル)-2-アミノエタノール、N-(2-アミノプロピル)-2-アミノエタノール、N-(4-アミノブチル)-2-アミノエタノール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロパノール、N-(3-アミノプロピル)-3-アミノプロパノール、N-(2-アミノプロピル)-3-アミノプロパノール、N-(4-アミノブチル)-3-アミノプロパノール、N-(2-アミノエチル)-4-アミノブタノール、N-(3-アミノプロピル)-4-アミノブタノール、N-(2-アミノプロピル)-4-アミノブタノール、N-(4-アミノブチル)-4-アミノブタノール、N-(2-アミノシクロペンチル)-2-アミノエタノール、N-(3-アミノシクロペンチル)-2-アミノエタノール、N-(2-アミノシクロへキシル)-2-アミノエタノール、N-(3-アミノシクロへキシル)-2-アミノエタノール、N-(4-アミノシクロへキシル)-2-アミノエタノール、N-(2-アミノシクロペンチル)-3-アミノプロパノール、N-(3-アミノシクロペンチル)-3-アミノプロパノール、N-(2-アミノシクロへキシル)-3-アミノプロパノール、N-(3-アミノシクロへキシル)-3-アミノプロパノール、N-(4-アミノシクロへキシル)-3-アミノプロパノール、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-(3-アミノプロピル)ピペラジン、又はN-(2、3-ジヒドロキシプロピル)ピペラジン等を挙げることができる。
【0079】
なお、上記のアミン化合物(C)については、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、1-(アミノエチルアミノ)-2,3-ジヒドロキシプロパン、及びエチレンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物(C)であることが好ましく、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及び1-(アミノエチルアミノ)-2,3-ジヒドロキシプロパンからなる群より選ばれる少なくとも一つのアミン化合物(C)であることがより好ましい。
【0080】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、上述の通り、上記アミン化合物(A)と上記アミン化合物(B)と二酸化炭素を含有する(前記アミン化合物(A)及びアミン化合物(B)は、各々独立して、炭酸塩又はカルバミン酸塩を形成していてもよい)ことを特徴とする。
【0081】
一般的に、アミン化合物は二酸化炭素と相互作用してアミン炭酸塩やカルバミン酸塩を形成することが知られている。当該アミン炭酸塩及びアミンカルバミン酸塩については、アミン化合物及び二酸化炭素の混合物との化学平衡状態にあり、加熱や減圧等の物理力を加えることよって前記化学平衡をアミン化合物と二酸化炭素の単純組成物側に偏らせることができる。
【0082】
このため、本発明の二酸化炭素分離用組成物が、アミン化合物(A)及び/又はアミン化合物(B)の炭酸塩及び/又はカルバミン酸塩を含有する場合、本発明の二酸化炭素分離用組成物におけるアミン化合物(A)、アミン化合物(B)、及び二酸化炭素の含有量や組成比(質量比、又はモル比等)については、アミン化合物(A)の炭酸塩及び/又はカルバミン酸塩をアミン化合物(A)と二酸化炭素の単純組成物とみなし、アミン化合物(B)の炭酸塩及び/又はカルバミン酸塩をアミン化合物(B)と二酸化炭素の単純組成物とみなした上で、規定される。
【0083】
本発明の二酸化炭素分離用組成物における上記アミン化合物(A)の含有量は、特に限定するものではないが、前記二酸化炭素分離用組成物全体を100質量%として、2~60質量%であることが好ましく、3~50質量%であることがより好ましく、3~35質量%であることがより好ましく、3~25質量%であることがより好まし、3~20質量%であることがより好まし、3~15質量%であることがより好ましい。
【0084】
本発明の二酸化炭素分離用組成物における上記アミン化合物(B)の含有量は、特に限定するものではないが、前記二酸化炭素分離用組成物全体を100質量%として、3~60質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましく、8~35質量%であることがより好ましい。
【0085】
本発明の二酸化炭素分離用組成物における二酸化炭素の含有量は、特に限定するものではないが、前記二酸化炭素分離用組成物全体を100質量%として、1~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、1~15質量%であることがより好ましい。
【0086】
本発明の二酸化炭素分離用組成物において、上記アミン化合物(A)と上記アミン化合物(B)の組成比については、特に限定するものではないが、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、アミン化合物(A)100質量部に対して、アミン化合物(B)が、1~1000質量部であることが好ましく、5~1000質量部であることがより好ましく、5~900質量部であることがより好ましく、10~700質量部であることがより好ましく、20~500質量部であることがより好ましく、50~250質量部であることがより好ましい。
【0087】
本発明の二酸化炭素分離用組成物における二酸化炭素の含有量としては、特に限定するものではないが、例えば、アミン化合物(A)、及び(B)の総物質量、100物質量部(モル部)に対して、二酸化炭素が、1~200物質量部(モル部)であることが好ましく、5~175物質量部(モル部)であることがより好ましく、10~150物質量部(モル部)であることがより好ましく、20~120物質量部(モル部)であることがより好ましく、30~110物質量部(モル部)であることがより好ましい。
【0088】
なお、本発明の二酸化炭素分離用組成物が、アミン化合物(A)、及び(B)以外のアミン化合物(例えば、後述するアミン化合物(C)又はその他のアミン化合物)を含有する、又はしないに拘らず、本発明の二酸化炭素分離用組成物が含有するすべてのアミン化合物(以下、「総アミン化合物」と記載する)の含有量と本発明の二酸化炭素分離用組成物が含有する二酸化炭素の含有量の比率については、特に限定するものではないが、総アミン化合物の総物質量100物質量部(モル部)に対して、二酸化炭素が、1~200物質量部(モル部)であることが好ましく、5~175物質量部(モル部)であることがより好ましく、10~150物質量部(モル部)であることがより好ましく、20~120物質量部(モル部)であることがより好ましく、30~110物質量部(モル部)であることがより好ましい。
【0089】
なお、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、さらにアミン化合物(C)を含んでいてもよい。
【0090】
本発明の二酸化炭素分利用組成物がアミン化合物(C)を含有する場合、当該アミン化合物(C)については、炭酸塩又はカルバミン酸塩を形成していてもよい。
【0091】
本発明の二酸化炭素分離用組成物が、アミン化合物(C)の炭酸塩又はカルバミン酸塩を含有する場合、本発明の二酸化炭素分離用組成物におけるアミン化合物(C)、及び二酸化炭素の含有量や組成比(質量比、又はモル比等)については、前記のアミン化合物(C)の炭酸塩又はカルバミン酸塩をアミン化合物(C)と二酸化炭素の単純組成物とみなした上で、規定される。
【0092】
本発明の二酸化炭素分離用組成物がアミン化合物(C)を含有する場合、当該アミン化合物(C)の含有量は、特に限定するものではないが、当該アミン化合物(C)を含有した状態における二酸化炭素分離用組成物全体を100質量%として、2~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることがより好ましい。
【0093】
本発明の二酸化炭素分離用組成物がアミン化合物(C)を含有する場合、前記二酸化炭素分離用組成物における二酸化炭素の含有量としては、特に限定するものではないが、例えば、アミン化合物(A)、アミン化合物(B)、及びアミン化合物(C)の総物質量、100物質量部(モル部)に対して、二酸化炭素が、1~200物質量部(モル部)であることが好ましく、5~175物質量部(モル部)であることがより好ましく、10~150物質量部(モル部)であることがより好ましく、20~120物質量部(モル部)であることがより好ましく、30~110物質量部(モル部)であることがより好ましい。
【0094】
さらに、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、アミン化合物(A)、アミン化合物(B)、又はアミン化合物(C)とは異なるアミン化合物(以下、「その他のアミン化合物」と記載する)を含んでいてもよい。
【0095】
本発明の二酸化炭素分利用組成物が前記のその他のアミン化合物を含有する場合、当該その他のアミン化合物については、炭酸塩又はカルバミン酸塩を形成していてもよい。
【0096】
本発明の二酸化炭素分離用組成物が、その他のアミン化合物の炭酸塩又はカルバミン酸塩を含有する場合、本発明の二酸化炭素分離用組成物におけるその他のアミン化合物、及び二酸化炭素の含有量や組成比(質量比、又はモル比等)については、前記のその他のアミン化合物の炭酸塩又はカルバミン酸塩をその他のアミン化合物と二酸化炭素の単純組成物とみなした上で、規定される。
【0097】
本発明の二酸化炭素分離用組成物がその他のアミン化合物を含有する場合、当該その他のアミン化合物の含有量は、特に限定するものではないが、当該その他のアミン化合物を含有した状態における二酸化炭素分離用組成物全体を100質量%として、2~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることがより好ましい。
【0098】
本発明の二酸化炭素分離用組成物が、その他のアミン化合物を含有する場合、前記二酸化炭素分離用組成物における二酸化炭素の含有量としては、特に限定するものではないが、例えば、アミン化合物(A)、アミン化合物(B)、及びその他のアミン化合物の総物質量100物質量部(モル部)に対して、二酸化炭素が、1~200物質量部(モル部)であることが好ましく、5~175物質量部(モル部)であることがより好ましく、10~150物質量部(モル部)であることがより好ましく、20~120物質量部(モル部)であることがより好ましく、30~110物質量部(モル部)であることがより好ましい。
【0099】
また、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、さらに水を含んでもよく、当該水の含有量については、水を含んだ状態の二酸化炭素分離用組成物全体を100質量%として、30~75質量%であることが好ましく、35~70質量%であることがより好ましく、40~65質量%であることがより好ましい。
【0100】
本発明の二酸化炭素分離用組成物については、さらに、水以外の溶媒(以下、「有機溶媒」と記す。)を含んでいてもよい。当該有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、又はエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0101】
前記の有機溶媒の含有量については、有機溶媒を含んだ状態の二酸化炭素分離用組成物全体を100質量%として、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0102】
本発明の二酸化炭素分離用組成物については、上記に記載していない成分を更に含んでいてもよい。当該成分としては、界面活性剤、消泡剤、又は酸化防止剤等が挙げられる。
【0103】
本発明の二酸化炭素分離用組成物における全アミン化合物(アミン化合物(A)、アミン化合物(B)、アミン化合物(C)、及びその他のアミン化合物の全量)の含有量については、単位質量当たりの二酸化炭素放散量を増やすという観点から、前記の全アミン化合物を含んだ状態の二酸化炭素分離用組成物全量を100質量%として、10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましく、25~50質量%であることがより好ましい。
【0104】
本発明の二酸化炭素分離用組成物に含まれる二酸化炭素については、上述した各種アミン化合物等と混和した状態であれば、どのような形態で含有されていてもよい。
【0105】
なお、本発明の二酸化炭素分離用組成物中の二酸化炭素については、加熱することによって組成物系中から放出されるため、この放出量を測定することによって、当該二酸化炭素の含有量を確認することができる。
【0106】
また、本発明の二酸化炭素分離用組成物中の二酸化炭素含有量については、全有機炭素計又は核磁気共鳴装置を用いることによっても確認することができる。
【0107】
本発明の二酸化炭素分離用組成物については、少なくとも、上記のアミン化合物(A)と、上記のアミン化合物(B)と、気体、液体、又は固体状の二酸化炭素と、を混合することによって製造することができ、少なくとも、上記のアミン化合物(A)と、上記のアミン化合物(B)と、二酸化炭素を含む気体又はドライアイスと、を混合することによって製造することが好ましい。
【0108】
上記製造方法において、さらに、上記のアミン化合物(C)、上記のその他のアミン化合物、水、及び/又は上記の有機溶媒を、同時に、又は別途、混合してもよい。
【0109】
なお、アミン化合物(A)、アミン化合物(B)、気体、液体、若しくは固体状の二酸化炭素、アミン化合物(C)、その他のアミン化合物、水、及び/又は上記の有機溶媒を順次混合する場合、その順番については、特に限定されない。
【0110】
本発明の二酸化炭素分離用組成物、又はその製造方法において、上記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)で示されるアミン化合物、又はその他のアミン化合物については、市販のものを用いることもできるし、公知の方法により合成したものを用いることもできる。また、これらのアミン化合物の純度としては、特に限定するものではないが、いずれも、それぞれ、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0111】
少なくとも、上記のアミン化合物(A)と、上記のアミン化合物(B)と、気体、液体、又は固体状の二酸化炭素を混合するとき、混合させて得られる本発明の二酸化炭素分離用組成物については、0℃以下、大気圧下で、液体であることが好ましい。
【0112】
前記の気体、液体、若しくは固体状の二酸化炭素については、操作性に優れる点で、二酸化炭素を含むガスであることが好ましい。
【0113】
前記の気体、液体、若しくは固体状の二酸化炭素として、二酸化炭素を含むガスを用いる場合、少なくとも、上記のアミン化合物(A)と、上記のアミン化合物(B)と、二酸化炭素を含むガスと、を混合する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。公知の方法としては、例えば、バブリング法、又は充填塔若しくは棚段塔を用いた対向接触法などが挙げられる。
【0114】
上記の二酸化炭素を含むガスについては、純粋な二酸化炭素ガスであってもよいし、二酸化炭素とその他ガスを含む混合ガスであってもよい。前記のその他のガスとしては、特に限定するものではないが、例えば、大気、窒素、酸素、水素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、一酸化炭素、水蒸気、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、ブタジエン、又は窒素酸化物等が挙げられる。
【0115】
少なくとも、上記のアミン化合物(A)と、上記のアミン化合物(B)と、気体、液体、又は固体状の二酸化炭素と、を混合する方法としては、特に制限するものではないが、例えば、少なくとも、上記のアミン化合物(A)と、上記のアミン化合物(B)と、気体、液体、又は固体状の二酸化炭素を-30℃~80℃の範囲で調温しながら、混合撹拌する方法が挙げられる。
【0116】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、二酸化炭素を含むガスを接触させることによって二酸化炭素を高選択的に吸収することができ、引き続いて高温及び/又は減圧することにより、吸収された二酸化炭素を放散させる作用を示す。このため、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、二酸化炭素分離剤として用いられる。また、このような二酸化炭素の分離操作について、以下、二酸化炭素分離プロセスとも称す。
【0117】
前記の二酸化炭素分離プロセスにおいて、二酸化炭素を含むガスを本発明の二酸化炭素分離用組成物に接触させる方法については、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。公知の方法としては、バブリング法や、充填塔又は棚段塔を用いた対向接触法などが挙げられる。
【0118】
二酸化炭素分離プロセスにおいて、二酸化炭素を含むガスを本発明の二酸化炭素分離用組成物に吸収させる際の温度としては、特に制限するものではないが、通常0℃~50℃の範囲を挙げることができる。
【0119】
二酸化炭素分離プロセスにおいて、二酸化炭素を本発明の二酸化炭素分離用組成物から放散させる温度は、特に制限するものではないが、通常60~150℃の範囲を挙げることができる。但し、エネルギー低減の観点から、100℃以下とすることが好ましい。
【0120】
また、本発明の二酸化炭素分離用組成物については、これを任意の担体に担持又は添着させてなる二酸化炭素吸収放散剤として用いることができる。
【0121】
前記の担体としては、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、多孔性ガラス、活性炭、ポリメチルメタクリレート系の多孔性樹脂、又は繊維などを用いることができる。
【0122】
前記のシリカとしては、結晶性と非結晶性(アモルファス)があり、細孔を有するゼオライト状のシリカ、メソポーラスシリカなど多種知られている。本発明の二酸化炭素吸収放散剤において、使用できるシリカには特に制限はなく、工業的に流通しているものを使用することができるが、表面積が大きいシリカが好ましい。
【0123】
担体を用いた二酸化炭素吸収放散剤における二酸化炭素分離用組成物の担持量は、二酸化炭素の吸収量に優れる点で、二酸化炭素分離用組成物が担持された状態の担体重量に対し5~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましい。
【0124】
担体を用いた二酸化炭素吸収放散剤に含まれる水の量は、吸収する二酸化炭素に対し等モル以上が好ましい。水の量が二酸化炭素に対し等モル以上であると、二酸化炭素の放散エネルギーが余り大きくならない点で好ましい。
【0125】
上記の二酸化炭素分離プロセスにおいて用いられる二酸化炭素を含むガスについては、純粋な二酸化炭素ガスであってもよいし、二酸化炭素とその他ガスを含む混合ガスであってもよい。前記のその他のガスとしては、特に限定するものではないが、例えば、大気、窒素、酸素、水素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、一酸化炭素、水蒸気、メタン、又は窒素酸化物等が挙げられる。
【0126】
なお、前記の二酸化炭素分離プロセスにおいて用いられる二酸化炭素を含むガスについては、燃焼排ガスであることがより好ましい。当該二酸化炭素を含む混合ガスについては、二酸化炭素濃度が5容積%以上であることが好ましく、より好ましくは10容積%以上であることが望ましい。
【0127】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、特に限定するものではないが、例えば、火力発電所、鉄鋼プラント、及びセメント工場などで発生する燃焼排ガスからの二酸化炭素の分離や、水蒸気改質プロセスで得られる水蒸気改質ガスからの二酸化炭素の分離に用いることができる。
【実施例0128】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0129】
以下の実施例における、二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(モル比)は、核磁気共鳴分析装置を用いた逆ゲート付きデカップリング法によって測定される、アミン化合物由来のピークと二酸化炭素由来のピークの積分比率から算出した。
【0130】
[実施例1]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)5g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)35g、及び純水60gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。水浴で40℃に調温した前記溶液に140mL/分の二酸化炭素ガスと560mL/分の窒素ガスの混合気体を吹き込んで二酸化炭素ガスを吸収させた後、ガス吸収瓶を60℃に調温し、200mL/分の窒素ガスを吹き込んで、一旦吸収させた二酸化炭素ガスを一部追い出し、前記溶液中に溶解した二酸化炭素量が12.8gに到達した時点で追い出しを停止した。なお、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて二酸化炭素ガスの吸収量及び追出量をモニタリングした。このとき、前記溶液中の二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(二酸化炭素のモル数÷総アミン化合物のモル数)は0.66であった。
【0131】
得られた溶液(本発明の二酸化炭素分離用組成物に該当)の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、2本の保存試験用サンプルを作製した。1本を20℃(恒温室)で一週間静置させ、もう1本を-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。両サンプルとも、ピペラジンの析出は無く、溶液の凝固も無く、液体状態を保っていた。
【0132】
[実施例2]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)10g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)30g、及び純水60gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。水浴で40℃に調温した前記溶液に140mL/分の二酸化炭素ガスと560mL/分の窒素ガスの混合気体を吹き込んで二酸化炭素ガスを吸収させた後、ガス吸収瓶を60℃に調温し、200mL/分の窒素ガスを吹き込んで、一旦吸収させた二酸化炭素ガスを一部追い出し、前記溶液中に溶解した二酸化炭素量が8.7gに到達した時点で追い出しを停止した。なお、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて二酸化炭素ガスの吸収量及び追出量をモニタリングした。このとき、前記溶液中の二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(二酸化炭素のモル数÷総アミン化合物のモル数)は0.47であった。
【0133】
得られた溶液(本発明の二酸化炭素分離用組成物に該当)の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、2本の保存試験用サンプルを作製した。1本を20℃(恒温室)で一週間静置させ、もう1本を-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。両サンプルとも、ピペラジンの析出は無く、溶液の凝固も無く、液体状態を保っていた。
【0134】
[実施例3]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)20g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)20g、及び純水60gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。水浴で40℃に調温した前記溶液に140mL/分の二酸化炭素ガスと560mL/分の窒素ガスの混合気体を吹き込んで二酸化炭素ガスを吸収させた後、ガス吸収瓶を60℃に調温し、200mL/分の窒素ガスを吹き込んで、一旦吸収させた二酸化炭素ガスを一部追い出し、前記溶液中に溶解した二酸化炭素量が7.4gに到達した時点で追い出しを停止した。なお、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて二酸化炭素ガスの吸収量及び追出量をモニタリングした。このとき、前記溶液中の二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(二酸化炭素のモル数÷総アミン化合物のモル数)は0.45であった。
【0135】
得られた溶液(本発明の二酸化炭素分離用組成物に該当)の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、2本の保存試験用サンプルを作製した。1本を20℃(恒温室)で一週間静置させ、もう1本を-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。両サンプルとも、ピペラジンの析出は無く、溶液の凝固も無く、液体状態を保っていた。
【0136】
[実施例4]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)10g、N-(2-アミノエチル)ピペラジン(東京化成工業製)15g、及び純水60gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。水浴で40℃に調温した前記溶液に140mL/分の二酸化炭素ガスと560mL/分の窒素ガスの混合気体を吹き込んで二酸化炭素ガスを吸収させた後、ガス吸収瓶を60℃に調温し、200mL/分の窒素ガスを吹き込んで、一旦吸収させた二酸化炭素ガスを一部追い出し、前記溶液中に溶解した二酸化炭素量が5.9gに到達した時点で追い出しを停止した。なお、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて二酸化炭素ガスの吸収量及び追出量をモニタリングした。このとき、前記溶液中の二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(二酸化炭素のモル数÷総アミン化合物のモル数)は0.40であった。
【0137】
得られた溶液(本発明の二酸化炭素分離用組成物に該当)の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、2本の保存試験用サンプルを作製した。1本を20℃(恒温室)で一週間静置させ、もう1本を-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。両サンプルとも、ピペラジンの析出は無く、溶液の凝固も無く、液体状態を保っていた。
【0138】
[実施例5]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)5g、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(東京化成工業製)27g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)15g、及び純水53gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。水浴で60℃に調温した前記溶液に10mL/分の二酸化炭素ガスと690mL/分の窒素ガスの混合気体を吹き込み、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて二酸化炭素ガス吸収量をモニタリングした。前記溶液中に溶解した二酸化炭素量が4.8gに到達した時点で吹き込みを停止した。このとき、前記溶液中の二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(二酸化炭素のモル数÷総アミン化合物のモル数)は0.30であった。
【0139】
得られた溶液(本発明の二酸化炭素分離用組成物に該当)の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、2本の保存試験用サンプルを作製した。1本を20℃(恒温室)で一週間静置させ、もう1本を-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。両サンプルとも、ピペラジンの析出は無く、溶液の凝固も無く、液体状態を保っていた。
【0140】
[実施例6]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)5g、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(東京化成工業製)22g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)20g、及び純水53gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。水浴で60℃に調温した前記溶液に10mL/分の二酸化炭素ガスと690mL/分の窒素ガスの混合気体を吹き込み、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて二酸化炭素ガス吸収量をモニタリングした。前記溶液中に溶解した二酸化炭素量が6.0gに到達した時点で吹き込みを停止した。このとき、前記溶液中の二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(二酸化炭素のモル数÷総アミン化合物のモル数)は0.35であった。
【0141】
得られた溶液(本発明の二酸化炭素分離用組成物に該当)の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、2本の保存試験用サンプルを作製した。1本を20℃(恒温室)で一週間静置させ、もう1本を-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。両サンプルとも、ピペラジンの析出は無く、溶液の凝固も無く、液体状態を保っていた。
【0142】
[実施例7]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)5g、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(東京化成工業製)32g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)10g、及び純水53gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。水浴で80℃に調温した前記溶液に10mL/分の二酸化炭素ガスと690mL/分の窒素ガスの混合気体を吹き込み、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて二酸化炭素ガス吸収量をモニタリングした。前記溶液中に溶解した二酸化炭素量が1.7gに到達した時点で吹き込みを停止した。このとき、前記溶液中の二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(二酸化炭素のモル数÷総アミン化合物のモル数)は0.11であった。
【0143】
得られた溶液(本発明の二酸化炭素分離用組成物に該当)の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、2本の保存試験用サンプルを作製した。1本を20℃(恒温室)で一週間静置させ、もう1本を-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。両サンプルとも、ピペラジンの析出は無く、溶液の凝固も無く、液体状態を保っていた。
【0144】
[実施例8]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)10g、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(東京化成工業製)22g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)15g、及び純水53gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。水浴で60℃に調温した前記溶液に10mL/分の二酸化炭素ガスと690mL/分の窒素ガスの混合気体を吹き込み、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて二酸化炭素ガス吸収量をモニタリングした。前記溶液中に溶解した二酸化炭素量が5.1gに到達した時点で吹き込みを停止した。このとき、前記溶液中の二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(二酸化炭素のモル数÷総アミン化合物のモル数)は0.31であった。
【0145】
得られた溶液(本発明の二酸化炭素分離用組成物に該当)の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、2本の保存試験用サンプルを作製した。1本を20℃(恒温室)で一週間静置させ、もう1本を-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。両サンプルとも、ピペラジンの析出は無く、溶液の凝固も無く、液体状態を保っていた。
【0146】
[比較例1]
50℃の温水120gにピペラジン(東京化成工業製、無水品)40gとN-メチルジエタノールアミン(富士フイルム和光純薬工業製)40gを溶解してピペラジンを20重量%およびN-メチルジエタノールアミンを20重量%含む水溶液を製造した。液温を40℃にした後、COを20%含むガスを毎分300ml/分でガラス製ボール状フイルターを通して1時間分吹込んだ。この時得られた液中に吸収されたCOは無機炭素量をカスクロマトグラフ式の全有機炭素計で測定した結果5.9gであり、液中のピペラジンに対する比率は0.289mol/molであった。なお、このとき、前記溶液中の二酸化炭素と総アミン化合物の物質量比(二酸化炭素のモル数÷総アミン化合物のモル数)は0.17であった。
【0147】
得られた溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、2本の保存試験用サンプルを作製した。1本を20℃(恒温室)で一週間静置させ、もう1本を-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。両サンプルとも、ピペラジンの析出は無かった。20℃で静置したサンプルは液状を維持していたが、-5℃で静置したサンプルについては、溶液全体が凝固した。
【0148】
[比較例2]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)20g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)20g、及び純水60gを200mLのサンプル瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。溶液全体が凝固した。
【0149】
[比較例3]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)30g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)10g、及び純水60gを200mLのサンプル瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。溶液全体が凝固した。
【0150】
[比較例4]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)15g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)10g、N-(2-アミノエチル)ピペラジン(東京化成工業製)15g、及び純水60gを200mLのサンプル瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。溶液全体が凝固した。
【0151】
[比較例5]
N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(東京化成工業製)20g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)20g、及び純水60gを200mLのサンプル瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。溶液全体が凝固した。
【0152】
[比較例6]
N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(東京化成工業製)27g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)10g、及び純水63gを200mLのサンプル瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。溶液全体が凝固した。
【0153】
[比較例7]
N-メチルジエタノールアミン(富士フイルム和光純薬工業製)5g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)35g、及び純水60gを200mLのサンプル瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。溶液全体が凝固した。
【0154】
[比較例8]
N-メチルジエタノールアミン(富士フイルム和光純薬工業製)30g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)10g、及び純水60gを200mLのサンプル瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。溶液全体が凝固した。
【0155】
[比較例9]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー製)5g、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン(東京化成工業製)32g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)10g、及び純水53gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。溶液全体が凝固した。
【0156】
[比較例10]
ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(東京化成工業製)20g、ピペラジン(東京化成工業製、無水品)20g、及び純水60gを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で40℃に調温し、混合攪拌して均一な溶液を得た。溶液の一部を20mLのサンプル瓶に充填し、-5℃(低温恒温室)で一週間静置させた。溶液全体が凝固した。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0162】
実施例1~8、及び比較例1~10から明らかなように、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、氷点下で凝固するという従来技術の課題を解決するものである。このため、本発明の二酸化炭素分離用組成物は、氷点下でも安定な液体として取り扱うことが可能である点で、産業上極めて有用なものである。