(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114784
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】植物病害防除組成物及び植物病害防除方法
(51)【国際特許分類】
A01N 43/58 20060101AFI20240816BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240816BHJP
A01N 43/54 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A01N43/58 A
A01P3/00
A01N43/54 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024101917
(22)【出願日】2024-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 真
(57)【要約】
【課題】植物病害に対する優れた防除効力を有する組成物及び植物病害の防除方法を提供すること。
【解決手段】下記式(I)
で示される化合物と、メパニピリムとを含有する植物病害防除組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
で示される化合物と、メパニピリムとを含有する植物病害防除組成物。
【請求項2】
前記式(I)で示される化合物とメパニピリムとの重量比が、1:0.01~1:100の範囲である請求項1に記載の植物病害防除組成物。
【請求項3】
前記式(I)で示される化合物とメパニピリムとの有効量を植物または植物を栽培する土壌に処理する工程を含む植物病害防除方法。
【請求項4】
前記式(I)で示される化合物とメパニピリムとの有効量を種子に処理する工程を含む植物病害防除方法。
【請求項5】
前記式(I)で示される化合物とメパニピリムとの組合せの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害防除組成物及び植物病害防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、植物病害防除組成物の有効成分として、多くの化合物が検討されている。特許文献1には、植物病害防除活性を有する化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、植物病害に対する優れた防除効力を有する組成物及び植物病害防除方法を提
供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、植物病害に対する優れた防除効力を有する組成物及び植物病害防除方法を
見出すべく検討の結果、下記式(I)で示される化合物と、メパニピリムとを含有する組成物が、植物病害に対して優れた防除効力を有することを見出した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 下記式(I)
で示される化合物と、メパニピリムとを含有する植物病害防除組成物。
[2] 前記式(I)で示される化合物とメパニピリムとの重量比が、1:0.01~1:100の範囲である[1]に記載の植物病害防除組成物。
[3] 前記式(I)で示される化合物とメパニピリムとの有効量を植物または植物を栽培する土壌に処理する工程を含む植物病害防除方法。
[4] 前記式(I)で示される化合物とメパニピリムとの有効量を種子に処理する工程を含む植物病害防除方法。
[5] 前記式(I)で示される化合物とメパニピリムとの組合せの使用。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、植物病害を防除することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の植物病害防除組成物(以下、本発明組成物と記す。)は、前記式(I)で示される化合物(CAS RN(登録商標):1358061-55-8。以下、本化合物と記す。)と、メパニピリム(mepanipyrim、CAS RN(登録商標):110235-47-7。以下、本成分と記す。)とを含有する。
【0008】
本化合物は、例えば特許文献1に記載される公知の化合物であり、これに記載の方法により製造することができる。また、本化合物は、ピリダクロメチルとして知られている。
【0009】
メパニピリムは、例えばThe Pesticide Manual、第19 版(ISBN 978-1-9998966-5-2)、BCPC刊に記載される公知の化合物であり、市販の薬剤から得ることができる。
【0010】
本発明組成物における本化合物と本成分との重量比は、通常、1:0.01~1:100、好ましくは1:0.05~1:20、より好ましくは1:0.2~1:5である。
具体的には、例えば、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、2:9、1:4、2:7、3:10、1:3、3:8、2:5、3:7、4:9、1:2、5:9、4:7、3:5、5:8、2:3、7:10、5:7、3:4、7:9、4:5、5:6、6:7、7:8、8:9、9:10、1:1、10:9、9:8、8:7、7:6、6:5、5:4、9:7、4:3、7:5、10:7、3:2、8:5、5:3、7:4、9:5、2:1、9:4、7:3、5:2、8:3、3:1、10:3、7:2、4:1、9:2、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1である。
【0011】
本発明組成物は、本化合物と本成分との混合物そのものでもよいが、本発明組成物は、通常、本化合物、本成分及び不活性担体を混合し、必要に応じて界面活性剤やその他の製剤用補助剤を添加して、油剤、乳剤、フロアブル剤、水和剤、顆粒水和剤、粉剤、粒剤等に製剤化された製剤である。ここで、フロアブル剤(FL、flowable)とは、懸濁(サスペンション)製剤、あるいはゾル剤等とも呼ばれ、溶媒(通常は、水)に固体原体を細かい粒子として懸濁させた製剤である。英名では、flowableまたはsuspension concentrate(SC)と呼ばれる。かかる製剤は、そのまま、またはその他の不活性成分を添加して植物病害防除剤として使用することができる。
本発明組成物には、本化合物及び本成分が、これらの合計として、通常0.1~99重量%、好ましくは0.2~90重量%、さらに好ましくは1~80重量%含有される。
【0012】
製剤化の際に用いられる不活性担体としては、固体担体及び液体担体が挙げられ、固体担体としては、例えばカオリンクレー、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、モンモリロナイト、酸性白土、パイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石等の鉱物、トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉等の天然有機物、尿素等の合成有機物、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム等の塩類、合成含水酸化珪素等の合成無機物等からなる微粉末あるいは粒状物が挙げられる。また、液体担体としては、例えばキシレン、アルキルベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、ダイズ油、綿実油等の植物油、石油系脂肪族炭化水素類、エステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル及び水が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル塩、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド重縮合物等の陰イオン界面活性剤及びポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル等の非イオン界面活性剤、及びアルキルトリメチルアンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤が挙げられる。スルホン酸塩、硫酸エステル塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル塩における塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
その他の製剤用補助剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、アラビアガム、アルギン酸及びその塩、CMC(カルボキシメチルセルロ-ス)、キサンタンガム等の多糖類、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルミナゾル等の無機物、消泡剤、防腐剤、着色剤及びPAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)等の安定化剤が挙げられる。
【0013】
本発明組成物はまた、本化合物と本成分とを各々前記した方法により製剤化した上で、必要に応じて水で希釈してそれぞれの製剤またはそれらの希釈液を混合することにより調製することもできる。
【0014】
本発明組成物は、さらに他の1種以上の殺菌剤及び/または殺虫剤を含有していてもよい 。
【0015】
本発明組成物を、植物または植物を栽培する土壌に処理することにより植物病害を防除することができる。
【0016】
本発明により防除できる植物病害としては、例えば次の病害が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
イネの病害:いもち病(Magnaporthe grisea)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、ばか苗病(Gibberella fujikuroi)。
コムギの病害:うどんこ病(Erysiphe graminis)、赤かび病(Fusarium graminearum、F. avenaceum、F. culmorum、Microdochium nivale)、赤さび病(P. recondita))、紅色雪腐病(Microdochium nivale、M. majus)、雪腐褐色小粒菌核病(Typhula incarnata)、雪腐黒色小粒菌核病(Typhula ishikariensisi)、裸黒穂病(Ustilago tritici)、なまぐさ黒穂病(Tilletia caries、T. controversa)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、ふ枯病(Stagonospora nodorum)、黄斑病(Pyrenophora tritici-repentis)。
オオムギの病害:うどんこ病(Erysiphe graminis)、赤かび病(Fusarium graminearum、F. avenaceum、F. culmorum、Microdochium nivale)、さび病(Puccinia striiformis、P.graminis、P.hordei)、裸黒穂病(Ustilago nuda)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、網斑病(Pyrenophora teres)、斑点病(Cochliobolus sativus)、斑葉病(Pyrenophora graminea)、リゾクトニア属菌による苗立枯れ病(Rhizoctonia solani)。
トウモロコシの病害:黒穂病(Ustilago maydis)、ごま葉枯病(Cochliobolus heterostrophus)、ひょう紋病(Gloeocercospora sorghi)、グレイリーフスポット病(Cercospora zeae-maydis) 、リゾクトニア属菌による苗立枯れ病(Rhizoctonia solani)。
【0018】
カンキツ類の病害:黒点病(Diaporthe citri)、そうか病(Elsinoe fawcetti)、果実腐敗病(Penicillium digitatum, P. italicum)。
リンゴの病害:モニリア病(Monilinia mali)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、赤星病(Gymnosporangium yamadae)、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、斑点落葉病(Alternaria alternata apple pathotype)、黒星病(Venturia inaequalis)、褐斑病(Diprocarpon mari)、炭そ病(Colletotrichum gloeosporioides種複合体、Colletotrichum acutatum種複合体)、輪紋病(Botryosphaeria kuwatsukai、Botryosphaeria dothidea)、灰色かび病(Botrytis cinerea)。
ナシの病害:黒星病(Venturia nashicola, V. pirina)、黒斑病(Alternaria alternata Japanese pear pathotype)、赤星病(Gymnosporangium asiaticum)。
モモの病害:灰星病(Monilinia fructicola)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、フォモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)。
ブドウの病害:黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Colletotrichum gloeosporioides種複合体、Colletotrichum acutatum種複合体)、うどんこ病(Uncinula necator)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)、ブラックロット病(Guignardia bidwellii)、灰色かび病(Botrytis cinerea)。
カキの病害:炭そ病(Gloeosporium kaki)、落葉病(Cercospora kaki, Mycosphaerella nawae)、うどんこ病(Phyllactinia kakicola)。
ウリ類の病害:炭そ病(Colletotrichum lagenarium)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea、Podosphaera xanthii)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)。
トマトの病害:輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Fulvia fulva)、すすかび病(Pseudocercospora fuligena)、うどんこ病(Leveillula taurica、Pseudoidium neolycopersic)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)。
ナスの病害:褐紋病(Phomopsis vexans)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、黒枯病(Corynespora melongenae)、すすかび病(Mycovellosiella nattrassii)、褐色斑点病(Thanatephorus cucumeris)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)。
ピーマンの病害:斑点病(Cercospora capsici)、炭疽病(Colletotrichum gloeosporioides種複合体、Colletotrichum acutatum種複合体)、うどんこ病(Leveillula taurica)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)
アブラナ科野菜の病害:黒斑病(Alternaria japonica)、白斑病(Cercosporella brassicae)、黒すす病(Alternaria brassicicola)。
ネギの病害:さび病(Puccinia allii)、葉枯病(Stemphylium vesicarium、Stemphylium botryosum)、黒腐菌核病(Sclerotium cepivorum)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、白斑葉枯病(Botrytis squamosa)。
【0019】
ダイズの病害:紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseolorum var. sojae)、褐紋病(Septoria glycines)、斑点病(Cercospora sojina)、さび病( Phakopsora pachyrhizi)、うどんこ病(Microsphaera diffusa)、リゾクトニア属菌による苗立枯れ病(Rhizoctonia solani)、褐色輪紋病(Corynespora casiicola)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)。
インゲンの病害:炭そ病(Colletotrichum lindemthianum)、さび病(Uromyces appendiculatus)。
エンドウの病害:うどんこ病(Erysiphe pisi)、根腐病(Fusarium solani)。
ラッカセイの病害:黒渋病(Cercospora personata)、褐斑病(Cercospora arachidicola)、白絹病(Sclerotium rolfsii)。
ジャガイモの病害:夏疫病(Alternaria solani)、疫病(Phytophthora infestans)、緋色腐敗病(Phytophthora erythroseptica)、粉状そうか病(Spongospora subterranean f. sp. subterranea)。
イチゴの病害:うどんこ病(Sphaerotheca humuli)、炭そ病(Colletotrichum gloeosporioides種複合体、Colletotrichum acutatum種複合体)、灰色かび病(Botrytis cinerea)。
ヤマノイモの病害:葉渋病(Cylindrosporium dioscoreae)、根腐病(Rhizoctonia solani)、青かび病(Penicillium sp.)。
チャの病害:網もち病(Exobasidium reticulatum)、白星病(Elsinoe leucospila)、輪斑病(Pestalotiopsis sp.)、炭そ病(Colletotrichum theae-sinensis)。
タバコの病害:赤星病(Alternaria longipes)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、炭そ病(Colletotrichum tabacum)。
ナタネの病害:菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、リゾクトニア属菌による苗立枯れ病(Rhizoctonia solani)。
ワタの病害;リゾクトニア属菌による苗立枯れ病(Rhizoctonia solani)。
テンサイの病害:褐斑病(Cercospora beticola)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris)、根腐病(Thanatephorus cucumeris)。
サツマイモの病害:つる割病(Fusarium oxysporum f. sp. batatas)、基腐病(Diaporthe destruens)、黒斑病(Ceratocystis fimbriata)。
シバの病害:ダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)、ブラウンパッチ病、ラージパッチ病(Rhizoctonia solani)、炭疽病(Colletotrichum caudatum)。
バラの病害:黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa)。
キク及びキク科野菜の病害:褐斑病(Septoria chrysanthemi-indici)、白さび病(Puccinia horiana)、灰色かび病(Botrytis cinerea)。
ダイコンの病害:黒斑病(Alternaria brassicicola)。
バナナの病害:シガトカ病(Mycosphaerella fijiensis、Mycosphaerella musicola)。
果樹の病害:白紋羽病(Rosellinia necatrix)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)。
Aspergillus属、Penicillium属、Fusarium属、Gibberella属、Tricoderma属、Thielaviopsis属、Rhizopus属、Mucor属、Corticium属、Phoma属、Rhizoctonia属、及びDiplodia属菌等によって引き起こされる、各種作物の種子病害または生育初期の病害。
【0020】
本発明組成物を使用できる植物としては、例えば次の植物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
農作物:トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ソルガム、ワタ、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ピーナッツ、ソバ、テンサイ、ナタネ、ヒマワリ、サトウキビ、タバコ等、
野菜;ナス科野菜(ナス、トマト、ジャガイモ、トウガラシ、ピーマン等)、ウリ科野菜(キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン、スカッシュ等)、アブラナ科野菜(ダイコン、カブ、セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー等)、キク科野菜(ゴボウ、シュンギク、アーティチョーク、レタス等)、ユリ科野菜(ネギ、タマネギ、ニンニク、アスパラガス)、セリ科野菜(ニンジン、パセリ、セロリ、アメリカボウフウ等)、アカザ科野菜(ホウレンソウ、フダンソウ、テンサイ等)、シソ科野菜(シソ、ミント、バジル等)、イチゴ、サツマイモ、ヤマノイモ、サトイモ等、
花卉、
観葉植物、
シバ、
果樹:仁果類(リンゴ、セイヨウナシ、ニホンナシ、カリン、マルメロ等)、核果類(モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン等)、カンキツ類(ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ等)、堅果類(クリ、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ等)、液果類(ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー等)、ブドウ、カキ、オリーブ、ビワ、バナナ、コーヒー、ナツメヤシ、ココヤシ等、
果樹以外の樹;チャ、クワ、花木、街路樹(トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ)等。
【0022】
前記した植物とは、遺伝子組換え技術により耐性を付与された植物であってもよい。
【0023】
本発明の植物病害防除方法(以下、本発明防除方法と記す。)は、本化合物と本成分との有効量を植物または植物を栽培する土壌に処理することにより行われる。かかる植物としては、例えば、植物の茎葉、植物の種子及び植物の球根が挙げられる。なお、ここでの球根とは、鱗茎、球茎、根茎、塊茎、塊根及び担根体を意味する。
【0024】
本発明防除方法において、本化合物及び本成分は同時期に別々に植物または植物を栽培する土壌に処理されてもよいが、通常は処理時の簡便性の観点から、本発明組成物として処理される。
【0025】
本発明防除方法における、本化合物と本成分との処理量は、処理する植物の種類、防除対象である植物病害の種類や発生頻度、製剤形態、処理時期、処理方法、処理場所、気象条件等によっても異なるが、植物の茎葉に処理する場合または植物を栽培する土壌に処理する場合は、本化合物と本成分との合計量で、1000m 2あたり、通常1~500g、好ましくは2~200g、より好ましくは10~100g(具体的には、例えば、10g、20g、30g、40g、50g、60g、70g、100g)である。また、本化合物と本成分との処理量は、種子に処理する場合は、本化合物と本成分との合計量で、種子1kgあたり、通常0.01~20g、好ましくは0.1~3g(具体的には、例えば、0.1g、0.5g、1g、1.5g、2g、2.5g、3g)である。
製剤形態が、乳剤、水和剤、フロアブル剤である場合は、本化合物及び本成分の合計での濃度が、通常10~10000ppm、好ましくは50~1000ppm(具体的には、例えば、50ppm、100ppm、150ppm、200ppm、300pm、400ppm、500ppm、700ppm、1000ppm)となるように、水で希釈して処理する。製剤形態が、粉剤、粒剤である場合は、通常、希釈することなくそのまま処理する。
【0026】
本発明防除方法において、本化合物及び本成分の処理方法としては、例えば、茎葉処理、土壌処理、根部処理及び種子処理が挙げられる。
【0027】
かかる茎葉処理としては、例えば、茎葉散布により、栽培されている植物の表面に本化合物及び本成分を処理する方法が挙げられる。
かかる土壌処理としては、例えば、土壌散布、土壌混和及び土壌への本化合物及び本成分を含有する薬液の潅注が挙げられる。
かかる根部処理としては、例えば、本化合物及び本成分を含有する薬液に植物の全体または根部を浸漬する方法、及び、本化合物と本成分と固体担体とを含有する固体製剤を植物の根部に付着させる方法が挙げられる。
かかる種子処理としては、例えば、植物病害から保護しようとする植物の種子または球根に本発明組成物を処理する方法が挙げられ、詳しくは、例えば本発明組成物の懸濁液を霧状にして種子表面若しくは球根表面に吹きつける吹きつけ処理、本発明組成物の水和剤、乳剤またはフロアブル剤に、少量の水を加える若しくはそのままで、種子または球根に塗布する塗沫処理、本発明組成物の溶液に一定時間種子を浸漬する浸漬処理、フィルムコート処理及びペレットコート処理が挙げられる。
【0028】
茎葉処理について、より具体的には、以下の態様が挙げられる。
〔態様1〕キュウリの定植15日後に、本化合物及び本成分を含有するフロアブル剤を水で希釈して得られる散布液(散布液中の本化合物濃度:132ppm、散布液中の本成分濃度:100ppm)を、キュウリの茎葉部に散布する(散布液量:150L/ha)。
〔態様2〕トマトの定植15日後に、本化合物及び本成分を含有するフロアブル剤を水で希釈して得られる散布液(散布液中の本化合物濃度:132ppm、散布液中の本成分濃度:100ppm)を、トマトの茎葉部に散布する(散布液量:200L/ha)。
〔態様3〕イチゴ親株の定植15日後に、本化合物及び本成分を含有するフロアブル剤を水で希釈して得られる散布液(散布液中の本化合物濃度:132ppm、散布液中の本成分濃度:100ppm)を、イチゴの茎葉部に散布する(散布液量:100L/ha)。
〔態様4〕イチゴの定植45日後に、本化合物及び本成分を含有するフロアブル剤を水で希釈して得られる散布液(散布液中の本化合物濃度:132ppm、散布液中の本成分濃度:100ppm)を、イチゴの茎葉部に散布する(散布液量:100L/ha)。
〔態様5〕ピーマンの定植30日後に、本化合物及び本成分を含有するフロアブル剤を水で希釈して得られる散布液(散布液中の本化合物濃度:132ppm、散布液中の本成分濃度:100ppm)を、イチゴの茎葉部に散布する(散布液量:100L/ha)。
【実施例0029】
以下、本発明を製剤例及び試験例にてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例の
みに限定されるものではない。
【0030】
製剤例を示す。なお、製剤例において部とは重量部を表す。
【0031】
製剤例1
本化合物 23.30質量部、本成分 18.00質量部、界面活性剤I 10.0質量部、消泡剤 0.20質量部、及びイオン交換水 28.50質量部を混合し、得られる混合物にガラスビーズを入れて、撹拌機(スリーワンモーター、ヤマト科学社製)を用いて湿式粉砕し、粉砕懸濁液(80質量部)を得る。
また、増粘剤I 0.08質量部、増粘剤II 0.16質量部及び防腐剤 0.20質量部をイオン交換水 19.56質量部に加え、2時間撹拌を継続して増粘液(20質量部)を得る。
当該粉砕懸濁液 80質量部と、当該増粘液 20質量部とを混合してフロアブル剤を得る。
【0032】
製剤例2~7
表1に示す組成になるように、実施例1に記載の方法に準じて粉砕懸濁液及び増粘液をそれぞれ調製し、これらを混合することにより、それぞれフロアブル剤を得る。なお、表1において、各配合成分の数値の単位は質量部である。
【0033】
【0034】
製剤例1~7に記載の配合成分の詳細は次のとおりである。
〔1〕界面活性剤I:ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルリン酸エステルカリウム塩 40質量%及びプロピレングリコール 60質量%の混合物(ソプロフォールFLK、ソルベイ日華社製)
〔2〕界面活性剤II:リグニンスルホン酸ナトリウム塩(REAX 85A、Ingevity社製)
〔3〕界面活性剤III:ショ糖ラウリン酸エステル(ニューカルゲンFS-100、竹本油脂社製)
〔4〕界面活性剤IV:ポリオキシアルキレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル塩(ニューカルゲンFS-3PG、竹本油脂社製)
〔5〕増粘剤I:キサンタンガム(ケルザンS Plus、CP Kelco社製)
〔6〕増粘剤II:ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガムR、バンダービルト社製)
〔7〕防腐剤:有効成分として1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンを含む防腐剤(プロキセルGXL(S)、Lonza社製)
〔8〕消泡剤:シリコーン系消泡剤(XIAMETER ACP-1500 Antifoam Compound、東レ・ダウコーニング社製)
【0035】
次に、本発明の効果を試験例で示す。
【0036】
試験例1
キュウリうどんこ病(Podosphaera xanthii)に対する防除試験
プラスチックポットに土壌を詰め、そこにキュウリ(品種;相模半白)を播種し、温室内で12日間生育させる。製剤例1~7のいずれかで得られるフロアブル剤を水で希釈し、本化合物132ppmと本成分を100ppm含有する希釈液を得る。当該希釈液を上記キュウリ葉面に充分付着するように、200L/10a相当の液量で茎葉散布する。散布後植物を風乾し、キュウリうどんこ病菌胞子をふりかけ接種する(これを処理区とする。)。
一方、希釈液を茎葉散布しないこと以外は処理区と同様にキュウリを生育させ、キュウリうどんこ病菌胞子をふりかけ接種する(これを無処理区とする。)。
接種後、植物を昼間24℃、夜間20℃の温室で8日間栽培した後、病斑面積を調査する。処理区及び無処理区それぞれの病斑面積から、[式1]により処理区の効力を求める。
その結果、処理区において、キュウリうどんこ病に対する防除効果を確認できる。
[式1]
【0037】
試験例2
トマト葉かび病(Fulvia fulva)に対する防除試験
プラスチックポットに土壌を詰め、そこにトマト(品種;パティオ)を播種し、温室内で3週間生育させる。製剤例1~7のいずれかで得られるフロアブル剤を水で希釈し、本化合物132ppmと本成分100ppmを含有する希釈液を得る。当該希釈液を上記トマト葉面に充分付着するように、200L/10a相当の液量で茎葉散布する。散布後にトマトを風乾し、トマト葉かび病菌胞子の水懸濁液を噴霧接種する(これを処理区とする。)。
一方、希釈液を茎葉散布しないこと以外は処理区と同様にトマトを生育させ、トマト葉かび病菌胞子の水懸濁液を噴霧接種する(これを無処理区とする。)。
接種後、植物を昼間24℃、夜間20℃の温室内で多湿下に3日間置き、次に温室内で14日間栽培した後、病斑面積を調査する。処理区及び無処理区それぞれの病斑面積から、[式1]により処理区の効力を求める。
その結果、処理区において、トマト葉かび病に対する防除効果を確認できる。