(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115005
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】プラズマ計測装置およびプラズマ計測方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/00 20060101AFI20240819BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H05H1/00 A
H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020431
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 剛
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 成則
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 明希夫
(72)【発明者】
【氏名】比村 治彦
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB05
2G084BB14
2G084BB35
2G084CC04
2G084CC06
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD20
2G084DD25
2G084DD34
2G084DD48
2G084EE06
2G084FF14
2G084FF38
2G084FF39
2G084FF40
2G084HH02
2G084HH09
2G084HH20
2G084HH25
2G084HH28
2G084HH30
2G084HH34
2G084HH35
2G084HH36
2G084HH42
2G084HH52
(57)【要約】
【課題】処理容器内のプラズマの分布に与える影響を抑えつつ、処理容器内のプラズマの分布を精度よく計測する。
【解決手段】プラズマ計測装置は、レンズアレイと、センサと、制御部とを備える。レンズアレイは、プラズマ処理装置の処理容器の側壁に配置可能であり、大きさが異なる複数のレンズが配置されている。センサは、処理容器内のプラズマが発する光をレンズアレイを介して取り込み、取り込んだ光を電気信号に変換するように構成される。制御部は、センサによって変換された電気信号を用いて、インテグラルフォトグラフィにより処理容器内のプラズマの三次元分布の情報を生成するように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置の処理容器の側壁に配置可能であり、大きさが異なる複数のレンズが配置されたレンズアレイと、
前記処理容器内のプラズマが発する光を前記レンズアレイを介して取り込み、取り込んだ光を電気信号に変換するように構成されるセンサと、
前記電気信号を用いて、インテグラルフォトグラフィにより前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報を生成するように構成される制御部と
を備えるプラズマ計測装置。
【請求項2】
前記レンズアレイは、
複数の第1のレンズと、
前記第1のレンズの間に配置され、前記第1のレンズよりも小さい複数の第2のレンズとを有する請求項1に記載のプラズマ計測装置。
【請求項3】
複数の前記第1のレンズの中の少なくとも一部のレンズおよび複数の前記第2のレンズの中の少なくとも一部のレンズには、第1の範囲の波長の光を通過させる第1のフィルタが設けられている請求項2に記載のプラズマ計測装置。
【請求項4】
複数の前記第1のレンズの中の他の一部のレンズおよび複数の前記第2のレンズの中の他の一部のレンズには、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の波長の光を通過させる第2のフィルタが設けられる請求項3に記載のプラズマ計測装置。
【請求項5】
第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとを有するレンズアレイモジュールをさらに備え、
前記第1のレンズアレイには、第1の範囲の波長の光を通過させる第1のフィルタが設けられ、
前記第2のレンズアレイには、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の波長の光を通過させる第2のフィルタが設けられる請求項2に記載のプラズマ計測装置。
【請求項6】
第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとを有するレンズアレイモジュールをさらに備え、
前記第1のレンズアレイに配置された複数のレンズと、前記第2のレンズアレイに配置された複数のレンズとは、大きいレンズと小さいレンズとの大きさの比率および配置の少なくともいずれかが異なる請求項2から5のいずれか一項に記載のプラズマ計測装置。
【請求項7】
前記レンズアレイは、第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとを有し、
前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとは、前記第1のレイズアレイに含まれるそれぞれの第1のレンズと前記第2のレイズアレイに含まれるそれぞれの第1のレンズとが対応し、前記第1のレイズアレイに含まれるそれぞれの第2のレンズと前記第2のレイズアレイに含まれるそれぞれの第2のレンズとが対応するように、前記処理容器と前記センサとの間に重ねて配置され、
前記第1のレンズアレイと前記第2のレイズアレイとの間の距離が変更可能である請求項2に記載のプラズマ計測装置。
【請求項8】
前記レンズアレイに配置されるそれぞれのレンズの内部には空洞が設けられており、
一部のレンズの前記空洞内には、他の一部のレンズの前記空洞内に充填される流体とは屈折率が異なる流体が充填される請求項1に記載のプラズマ計測装置。
【請求項9】
前記レンズアレイに配置されるそれぞれのレンズの内部には空洞が設けられており、
一部のレンズの前記空洞内には、他の一部のレンズの前記空洞内に充填される流体とは光の透過率が異なる流体が充填される請求項1に記載のプラズマ計測装置。
【請求項10】
前記レンズアレイに配置されるそれぞれのレンズの内部には空洞が設けられており、
一部のレンズの前記空洞内には、他の一部のレンズの前記空洞内に充填される流体とは透過する波長の範囲が異なる流体が充填される請求項1に記載のプラズマ計測装置。
【請求項11】
前記制御部は、
a) 前記プラズマ処理装置に設定される複数のレシピの情報と、前記レンズアレイおよび前記センサを用いて計測された、それぞれの前記レシピの情報に従って前記プラズマ処理装置が基板を処理する際の前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報とのセットを学習データとする機械学習により学習モデルを生成する工程と、
b) 一部のレシピの情報とプラズマの三次元分布の情報とを受け付ける工程と、
c) 前記学習モデルを用いて、受け付けたプラズマの三次元分布の情報に対応するレシピの情報を出力する工程と
を実行するように構成される請求項1に記載のプラズマ計測装置。
【請求項12】
前記制御部は、
d) 前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報と、前記レンズアレイおよび前記センサを用いて計測された、前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報に従って前記プラズマ処理装置が基板を処理する際の前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報とのセットを学習データとする転移学習により学習モデルを更新する工程
をさらに実行するように構成される請求項11に記載のプラズマ計測装置。
【請求項13】
前記制御部は、
a) 前記プラズマ処理装置に設定される複数のレシピの情報と、前記レンズアレイおよび前記センサを用いて計測された、それぞれの前記レシピの情報に従って前記プラズマ処理装置が基板を処理する際の前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報と、それぞれの前記レシピの情報に従って前記プラズマ処理装置によって処理された基板の処理結果の情報とのセットを学習データとする機械学習により学習モデルを生成する工程と、
b) 一部のレシピの情報と基板の処理結果の情報を受け付ける工程と、
c) 前記学習モデルを用いて、前記基板の処理結果の情報に対応するレシピの情報を出力する工程と
を実行するように構成される請求項1に記載のプラズマ計測装置。
【請求項14】
前記制御部は、
d) 前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報と、前記レンズアレイおよび前記センサを用いて計測された、前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報に従って前記プラズマ処理装置が基板を処理する際の前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報と、前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報に従って前記プラズマ処理装置によって処理された基板の処理結果の情報とのセットを学習データとする転移学習により学習モデルを更新する工程
をさらに実行するように構成される請求項13に記載のプラズマ計測装置。
【請求項15】
プラズマ処理装置の処理容器の側壁に配置可能であり、大きさが異なる複数のレンズが配置されたレンズアレイと、
前記処理容器内のプラズマが発する光を前記レンズアレイを介して取り込み、取り込んだ光を電気信号に変換するように構成されるセンサと、
制御部とを備えるプラズマ計測装置におけるプラズマ計測方法であって、
前記制御部は、
A)前記レンズアレイおよび前記センサを介して、前記処理容器内のプラズマが発する光に対応する電気信号を取得する工程と、
B)前記電気信号を用いて、インテグラルフォトグラフィにより前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報を生成する工程と
を実行するプラズマ計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、プラズマ計測装置およびプラズマ計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、「半導体プラズマ処理チャンバ内での、プラズマ発光の二次元分布を計測する方法、演算方法、システム及び装置が開示される。取得されたプラズマ発光の二次元分布は、プラズマ中に存在する関心がある特定の化学種の濃度の二次元分布を推測するのに用いられる。これによりプロセス開発や、新規かつ改善されたプロセスツール開発にも有用な手段が提供される。開示された技術は、演算的には単純かつ低廉であり、光学強度の周方向の変動を許容する基底関数の合計という想定光学強度分布の拡張利用を含む。」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、処理容器内のプラズマの分布に与える影響を抑えつつ、処理容器内のプラズマの分布を精度よく計測することができるプラズマ計測装置およびプラズマ計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面におけるプラズマ計測装置は、レンズアレイと、センサと、制御部とを備える。レンズアレイは、プラズマ処理装置の処理容器の側壁に配置可能であり、大きさが異なる複数のレンズが配置されている。センサは、処理容器内のプラズマが発する光をレンズアレイを介して取り込み、取り込んだ光を電気信号に変換するように構成される。制御部は、センサによって変換された電気信号を用いて、インテグラルフォトグラフィにより処理容器内のプラズマの三次元分布の情報を生成するように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、処理容器内のプラズマの分布に与える影響を抑えつつ、処理容器内のプラズマの分布を精度よく計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、プラズマ処理システムの構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、マイクロ波放射機構の配置の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、プラズマ計測装置の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、レンズの配置の一例を示す拡大図である。
【
図5】
図5は、レンズの配置の他の例を示す拡大図である。
【
図6】
図6は、レンズの配置の他の例を示す拡大図である。
【
図7】
図7は、レンズの配置の他の例を示す拡大図である。
【
図8】
図8は、レンズの配置の他の例を示す拡大図である。
【
図9】
図9は、制御部の機能を実現するコンピュータの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態におけるプラズマの分布の情報を収集する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1の実施形態における基板の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2の実施形態における学習モデル生成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第2の実施形態における基板の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、第2の実施形態における基板の処理の他の例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、レンズアレイモジュールの一例を示す図である。
【
図16】
図16は、レンズアレイモジュールの他の例を示す図である。
【
図17】
図17は、複数のレンズアレイを用いる場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、プラズマ計測装置およびプラズマ計測方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示されるプラズマ計測装置およびプラズマ計測方法が限定されるものではない。
【0009】
ところで、処理容器内で生成されたプラズマにより基板に処理を行う場合、プラズマの分布の均一性は、基板の処理の均一性に大きく影響を与える。そのため、処理容器内でプラズマの分布を均一に保つことは重要である。しかし、プラズマの状態を外部から観察するために、処理容器の壁面に観察用の窓が設けられると、処理容器の壁面に不連続な部分が存在するためにプラズマの分布を均一に保つことが難しくなる。そのため、プラズマの状態を外部から観察するための窓は、少ない方が好ましい。
【0010】
また、特許文献1の技術では、処理容器内のプラズマの平面的な二次元の分布が計測されるが、プラズマは、高さ方向にも分布している。そのため、処理容器内のプラズマの挙動をより正確に計測するためには、プラズマの三次元分布を計測することが求められる。
【0011】
そこで、本開示は、処理容器内のプラズマの分布に与える影響を抑えつつ、処理容器内のプラズマの分布を精度よく計測することができるプラズマ計測装置およびプラズマ計測方法を提供する。
【0012】
(第1の実施形態)
[プラズマ処理システム10の構成]
図1は、プラズマ処理システム10の構成の一例を示す概略図である。プラズマ処理システム10は、プラズマ処理装置100およびプラズマ計測装置20を備える。プラズマ処理装置100は、プラズマを用いて、処理容器内の基板に対して予め定められた膜を形成する処理を実行する。プラズマ計測装置20は、プラズマ処理装置100で基板の処理が実行される際に処理容器内に生成されているプラズマの三次元分布を計測する。
【0013】
[プラズマ処理装置100の構成]
プラズマ処理装置100は、処理容器101と、載置台102と、ガス供給機構103と、排気装置104と、マイクロ波導入装置105と、制御部190とを有する。
【0014】
処理容器101は、処理容器101の内部に、略円筒状の処理空間を提供する。処理容器101の処理空間内には、基板が載せられる載置台102が設けられている。ガス供給機構103は、処理容器101内にガスを供給する。排気装置104は、処理容器101内のガスを排気する。マイクロ波導入装置105は、処理容器101内にプラズマを生成させるためのマイクロ波を発生させると共に、処理容器101内にマイクロ波を供給する。制御部190は、プラズマ処理装置100の各部を制御する。
【0015】
処理容器101は、例えばアルミニウムおよびその合金等の金属材料によって略円筒形状に形成されている。処理容器101は、天壁部111と、底壁部113と、天壁部111および底壁部113を連結する側壁部112とを有する。
【0016】
天壁部111には、マイクロ波導入装置105のマイクロ波放射機構143及びガスノズル123が嵌め込まれる複数の開口部が設けられている。側壁部112には、処理容器101に隣接する搬送室(図示せず)との間で基板Wの搬入および搬出を行うための開口114が形成されている。開口114は、ゲートバルブ115により開閉される。また、側壁部112において、載置台102よりも上側となる位置には、複数のガスノズル124が設けられている。
【0017】
また、側壁部112には、処理容器101の内部に生成されたプラズマを、処理容器101の外部から観察するための窓117が設けられている。窓117は、石英等の光を透過可能な部材により形成されている。窓117を通過したプラズマの光は、プラズマ計測装置20によって計測される。本実施形態では、側壁部112に窓117が1つ設けられている。そのため、側壁部112に複数の窓が設けられる場合に比べて、処理容器101の内部に生成されるプラズマの分布の均一性の低下を抑えることができる。
【0018】
底壁部113には、開口部が設けられており、該開口部には、排気管116を介して、真空ポンプおよび圧力制御バルブを有する排気装置104が設けられている。排気装置104の真空ポンプにより排気管116を介して処理容器101内のガスが排気される。処理容器101内の圧力は、排気装置104の圧力制御バルブにより制御される。
【0019】
載置台102は、表面に陽極酸化処理が施されたアルミニウムまたはセラミックス材料(例えば窒化アルミニウム)等の誘電体により略円板状に形成されている。載置台102の上面に基板Wが載せられる。載置台102は、処理容器101の底部中央から上方に延びる略円筒状の窒化アルミニウム等のセラミックスからなる支持部材120および基部部材121により支持されている。
【0020】
ガス供給機構103は、各種のガスを処理容器101内に供給する。ガス供給機構103は、ガスノズル123と、ガスノズル124と、ガス供給配管125と、ガス供給部127とを有している。ガスノズル123は、処理容器101の天壁部111に形成された開口部に嵌め込まれている。ガスノズル124は、処理容器101の側壁部112に形成された開口部に嵌め込まれている。ガス供給部127は、ガス供給配管125を介してそれぞれのガスノズル123およびガスノズル124と接続されている。ガス供給部127は、各種のガスの供給源を有する。また、ガス供給部127は、各種のガスの供給開始および供給停止を行う開閉バルブや、ガスの流量を調整する流量調整機構を有する。
【0021】
マイクロ波導入装置105は、マイクロ波出力部130と、アンテナユニット140とを有する。マイクロ波出力部130は、マイクロ波を生成するとともに、マイクロ波を複数の経路に分配して出力する。アンテナユニット140は、マイクロ波出力部130から出力されたマイクロ波を処理容器101内に供給する。
【0022】
マイクロ波出力部130は、マイクロ波電源と、マイクロ波発振器と、アンプと、分配器とを有する。マイクロ波発振器は、例えば860MHzのマイクロ波を生成する。なお、マイクロ波の周波数は、860MHzに限らず、2.45GHz、8.35GHz、5.8GHz、1.98GHz等、700MHz~10GHzの範囲のものを用いることができる。アンプは、マイクロ波発振器によって生成されたマイクロ波を増幅する。分配器は、アンプによって増幅されたマイクロ波を、入力側と出力側のインピーダンスを整合させながら、複数の経路に分配する。
【0023】
アンテナユニット140は、複数のアンテナモジュールを有する。それぞれのアンテナモジュールは、アンプ部142と、マイクロ波放射機構143とを有する。アンプ部142は、分配されたマイクロ波を増幅してマイクロ波放射機構143へ出力する。マイクロ波放射機構143は、天壁部111に設けられている。マイクロ波放射機構143は、アンプ部142から出力されたマイクロ波を処理容器101内に放射する。
【0024】
複数のマイクロ波放射機構143は、例えば
図1に示されるように、天壁部111に設けられている。マイクロ波放射機構143の下面側には、天壁部111に嵌め込まれているマイクロ波透過板163が設けられている。マイクロ波透過板163の下面は、処理容器101の内部空間に露出している。マイクロ波透過板163を透過したマイクロ波は、処理容器101内に供給されたガスを励起し、処理容器101内にプラズマを生成する。
【0025】
図2は、マイクロ波放射機構143の配置の一例を示す図である。本実施形態において、天壁部111には、例えば
図2に示されるように、マイクロ波放射機構143が7個設けられている。
図2の例では、6個のマイクロ波放射機構143が正六角形の頂点の位置に配置され、さらに1個のマイクロ波放射機構143が正六角形の中心位置に配置されている。また、天壁部111には、7個のマイクロ波放射機構143にそれぞれ対応してマイクロ波透過板163が配置されている。これら7個のマイクロ波透過板163は、隣接するマイクロ波透過板163が等間隔になるように配置されている。また、ガス供給機構103の複数のガスノズル123は、中央のマイクロ波透過板163の周囲を囲むように配置されている。なお、天壁部111に設けるアンテナモジュールの数は、6個以下であってもよく、8個以上であってもよい。
【0026】
アンテナユニット140は、各アンテナモジュールのアンプ部142を制御することで、各アンテナモジュールのマイクロ波放射機構143から放射されるマイクロ波の電力を調整することができる。例えば、中央のマイクロ波放射機構143から放射されるマイクロ波の電力と、周辺の6個のマイクロ波放射機構143から放射されるマイクロ波の電力の比を制御することにより、基板Wの径方向におけるマイクロ波の分布を制御することができる。また、周辺の6個のマイクロ波放射機構143において、マイクロ波の電力の比を制御することにより、基板Wの周方向におけるマイクロ波の分布を制御することができる。
【0027】
上記のように構成されたプラズマ処理装置100は、制御部190によって、動作が統括的に制御される。制御部190は、メモリ、プロセッサ、および入出力インターフェイスを有する。メモリ内には、プラズマ処理を行う際の条件等を含むレシピ等のデータやプログラム等が格納される。入出力インターフェイスは、プラズマ処理装置100の各部と制御信号の送受信を行う機能と、ユーザからプラズマ処理に用いられるレシピの設定を受け付ける機能とを有する。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはSSD(Solid State Drive)等である。プロセッサは、メモリから読み出されたプログラムを実行することで、メモリ内に格納されたレシピ等のデータおよび/またはユーザから受け付けたレシピ等のデータに基づいて、入出力インターフェイスを介してプラズマ処理装置100の各部を制御する。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)等である。
【0028】
[プラズマ計測装置20の構成]
図3は、プラズマ計測装置20の一例を示す図である。プラズマ計測装置20は、レンズアレイ21、センサ22、および制御部23を有する。センサ22と制御部23とは、信号ケーブル24を介して接続されている。
【0029】
レンズアレイ21は、例えば
図4に示されるように、異なる大きさの複数のレンズが配置されている。
図4の例では、レンズアレイ21は、大きさが異なる2種類のレンズ210およびレンズ211を有している。レンズ210は第1のレンズの一例であり、レンズ211は第2のレンズの一例である。
【0030】
レンズ210は、レンズ211よりも大きい。本実施形態において、レンズ211は、レンズ210の間に配置されている。これにより、同一の大きさのレンズのみが配置される場合に比べて、同一の領域により多くのレンズを配置することができる。例えば、同一の大きさのレンズのみが配置される場合、レンズの充填率は、正方配置で約0.785、六方配置で約0.907である。一方、
図4の例におけるレンズの充填率は、約0.911である。これにより、本実施形態のレンズアレイ21は、より多くの光を取り込むことができ、レンズアレイ21の小型化も可能となる。
【0031】
また、
図4の例において、レンズ210に対するレンズ211の大きさの比は約0.64である。なお、レンズ210およびレンズ211の配置および大きさの比は、
図4の例に限られず、例えば
図5や
図6のような配置および大きさの比であってもよい。
図5の例では、レンズ210に対するレンズ211の大きさの比は、約0.39である。
図6の例では、レンズ210に対するレンズ211の大きさの比は、約0.10である。
【0032】
レンズ210とレンズ211との大きさの差が大きくなる程、レンズ210を介して検出可能な光量の範囲と、レンズ211を介して検出可能な光量の範囲の差が大きくなる。そのため、レンズ210を介して検出可能な光量の範囲と、レンズ211を介して検出可能な光量の範囲との重なりを維持する範囲で、レンズアレイ21を介して検出可能な光量のダイナミックレンジを大きくすることができる。また、小さなレンズ211は、大きなレンズ210よりも焦点深度が長く、ピントが合う範囲が長い。そのため、レンズアレイ21全体としてピントを合わせやすいという効果も得られる。
【0033】
なお、レンズ210およびレンズ211の厚みはその強度が保たれる範囲で薄く形成することが望ましい。また、それぞれのレンズにおける焦点距離は、測定対象に応じて適宜設定され、例えば1mm~10mmの範囲が望ましい。また、望ましい焦点距離が得られるのであれば、レンズの厚みや光量などは限定されない。
【0034】
また、
図4~
図6に例示されたレンズアレイ21は、大きさが異なる2種類のレンズ210およびレンズ211を有するが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、レンズアレイ21は、大きさが異なる3種類以上のレンズを有していてもよい。大きさが異なる3種類のレンズを有するレンズアレイ21の例としては、例えば
図7に示されるようなレンズアレイ21が考えられる。
図7に例示されたレンズアレイ21は、レンズ210と、レンズ210よりも小さいレンズ211と、レンズ211よりも小さいレンズ212とを有する。また、大きさが異なる4種類のレンズを有するレンズアレイ21の例としては、例えば
図8に示されるようなレンズアレイ21が考えられる。
図8に例示されたレンズアレイ21は、レンズ210と、レンズ210よりも小さいレンズ211と、レンズ211よりも小さいレンズ212と、レンズ212よりも小さいレンズ213とを有する。
【0035】
また、レンズアレイ21には、特定の範囲の波長の光を通過させることができるフィルタが設けられてもよい。このようなフィルタは、例えばレンズの表面に設けられてもよく、レンズ自体が特定の範囲の波長の光を通過させることができる色素によって着色されてもよい。これにより、特定の範囲の波長の光を発するプラズマの三次元分布を精度よく計測することができる。また、レンズアレイ21に配置される複数のレンズ210およびレンズ211の中の一部のレンズ210およびレンズ211には、第1の範囲の波長の光を通過させることができる第1のフィルタが設けられてもよい。また、レンズアレイ21に配置される複数のレンズ210およびレンズ211の中の他の一部のレンズ210およびレンズ211には、第1の範囲とは異なる第2の範囲の波長の光を通過させることができる第2のフィルタが設けられてもよい。これにより、第1の範囲の波長の光を発するプラズマの三次元分布と、第2の範囲の波長の光を発するプラズマの三次元分布とを、それぞれ別々に計測することができる。
【0036】
センサ22は、処理容器101内のプラズマが発する光をレンズアレイ21に配置されたレンズ210およびレンズ211のそれぞれを介して取り込み、取り込んだ光を電気信号に変換するように構成されている。センサ22は、光から変換された電気信号を、信号ケーブル24を介して制御部23へ出力する。
【0037】
制御部23は、センサ22によって変換された電気信号を用いて、インテグラルフォトグラフィにより処理容器101内のプラズマの三次元分布の情報を生成するように構成される。以下、制御部23によって実行されるインテグラルフォトグラフィの一例について説明する。
【0038】
ここで、対象物の三次元の輝度分布をg(x,y,z)とし、撮影で得られた二次元画像の輝度の強度をI(X,Y)とする。以下では、I(X,Y)からg(x,y,z)を見積もる方法について、「ライトフィールドとデコンボリューション」および「直交関数による基底分解」の二つの手法について説明する。
【0039】
1. ライトフィールドとデコンボリューション
1.1 ライトフィールド
視差を持って撮影された複数個の像について、仮想空間上で同じ位置関係のレンズを通して光線追跡を行う。このような計算上での仮想的な光線追跡の結果得られる光線で描かれた三次元空間での場をライトフィールドという。ライトフィールドの強度分布K(x,y,z)は、点(X
i,Y
i)上の強度I(X
i,Y
i)の寄与の足し算に比例し、比例定数をγとすると、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0040】
上記の式(1)において、γは受光と光線追跡における光強度のモデルによって決まる係数である。一例として、入射角による光束の変化、および、距離による減衰を考慮すると、係数γは、以下の式(2)で表される。
【数2】
上記の式(2)において、r
iは(X
i,Y
i)と(x,y,z)との間の距離であり、θ
iは光と視線軸のなす角度である。また、上記の式(1)において、S
iは、i番目のレンズが視野の中に存在するかどうかを表す関数であり、以下の関係式(3)で与えられる。
【数3】
【0041】
得られたライトフィールドをボクセルに分割する。
【数4】
上記の式(4)において、<K(x,y,z)>は、m番目のボクセルについて、Kの体積平均の値をとったものである。
【0042】
1.2 デコンボリューション
次に、ボクセル化されたライトフィールドにデコンボリューションを適用する。ライトフィールドK
mは、真の値gが広がったものの和となっているので、以下の式(5)のように表すことができる。
【数5】
上記式(5)において、g
kはk番目のボクセルの真の値であり、p(m,k)はk番目のボクセルからm番目のボクセルに分配される割合、すなわち点広がり関数を表している。n番目のボクセルからm番目のボクセルへ分配された光強度の推定量
【数6】
は、以下の式(6)のように表すことができる。
【数7】
【0043】
ここで、n番目のボクセルでの真値の推定値
【数8】
は、本来ボクセルnにあるべきであった光強度が、他のボクセルmに分配された光強度の推定量
【数9】
の各ボクセルの総和で求められるため、以下の式(7)のように表すことができる。
【数10】
【0044】
ここで、
【数11】
は、n番目のボクセルにおいて見積もられた輝度の値である。もし、p(m,k)が既知であるなら、以下の式(8)に基づく試行計算で真の値を評価することができる。
【数12】
上記式(8)において、上付き文字
(t)は、t回目の試行で得られている値であることを示す。
【0045】
上記の点広がり関数pが既知でない場合が存在しうる。その場合は、ライトフィールドおよび撮像系の効果を全て内包した点広がり関数pを同定する必要がある。アプローチとして考えられるのは、点広がり関数pを例えばガウス分布p
(0)などと仮定し、ガウス分布p
(0)の下でデコンボリューションを行う。そして、得られた
【数13】
の分布を固定し、点広がり関数pを試行で求める。これらを繰り返して、
【数14】
と点広がり関数pとを更新していく。
【0046】
1.3 手順
以上の手順をまとめると、以下のようになる。
[1]撮影画像から光線追跡をすることでライトフィールドを作成する。
[2]作成されたライトフィールドに対して、点広がり関数pを用いたデコンボリューションを適用する。
[3]点広がり関数pが未知の場合は、デコンボリューションの結果から点広がり関数pを更新し、上記[2]を行う。
[4]最終的に輝度の三次元分布g(x,y,z)を得る。
【0047】
2. 直交関数による基底分解
まず、撮影対象となるg(x,y,z)を要素数M
g個のボクセルベクトルgで表す。そして、レンズアレイ21を通してプラズマを撮影し、撮影した画像I(X,Y)は要素数N
I個の画像ベクトルIと表す。レンズやセンサの配置で決まるNI×Mgの幾何変換行列Pを用いることにより、画像ベクトルIは、下記の式(9)のように、ボクセルベクトルgの式で表すことができる。
【数15】
【0048】
また、光源分布gが要素数M
g個の基底関数ベクトルf
iの和で表されると仮定すると、光源分布gは、下記の式(10)のように表すことができる。
【数16】
そして、係数ベクトルs=(s
1,s
2,・・・s
n)を求めることで、光源分布gを求めることができる。
【0049】
ここで、ある基底関数ベクトルf
iが作る基底画像ベクトルA
iは、下記の式(11)のように表すことができる。
【数17】
【0050】
これにより、以下の関係式(12)が成り立つ。
【数18】
したがって、撮影で得られた画像Iは、基底画像Aの重ね合わせで表現することができる。そして、係数sを求めることにより、元の三次元分布gを決定することができる。
【0051】
2.1 直交関数
基底として用いる関数は、直交関数であれば原理的には何でも良いが、三次元の円筒状の処理容器101を使用する場合は、周期境界条件を持つθ方向にはFourier級数を用い、壁で輝度が0になると仮定すると半径方向にはBessel関数を用いる。また、プラズマ源がz方向(高さ方向)に存在する場合は、プラズマ源ではない方向も0の境界条件としてBessel関数を適用することで、基底関数fは、下記の式(13)のように表すことができる。基底関数fは周期性があり、0点を複数持てばよく、Bessel関数で展開されることに限定されるわけではない。
【数19】
ここでrは規格化小半径、zは規格化高さ、J
mおよびJ
tはm次およびt次のBessel関数の次数、λ
kはBessel関数のk番目の0点である。
【0052】
2.2 正則化
推測法は不完全な逆問題であるため、Ridge回帰やLasso回帰などの正則化を用いる。一例として、Ridge回帰を下記の式(14)に示す。
【数20】
【0053】
上記の式(14)において、minL(s,α)をとるsを
【数21】
と表す。ここでは、残留誤差が最も小さくなるときのαを求めればよい。そして、求めた
【数22】
を用いることで、下記の式(15)で表される元の三次元分布を評価する。
【数23】
【0054】
2.3 手順
以上の手順をまとめると、以下のようになる。
[1]撮影対象、レンズ、カメラの相対位置から、事前に幾何変換行列Pと、基底関数fが作る基底画像Aを計算しておく。
[2]正則化手法により、撮影された画像を基底画像の足し合わせで表現できる係数ベクトルsを決定する。
[3]得られた係数ベクトルsから輝度の三次元分布g(x,y,z)を得る。
【0055】
上記のような制御部23の機能は、例えば
図9に示されるような構成のコンピュータ90により実現される。
図9は、制御部23の機能を実現するコンピュータ90の一例を示す図である。コンピュータ90は、CPU91、RAM92、ROM93、補助記憶装置94、通信I/F(インターフェイス)95、入出力I/F96、およびメディアI/F97を備える。
【0056】
CPU91は、ROM93または補助記憶装置94に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM93は、コンピュータ90の起動時にCPU91によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ90のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0057】
補助記憶装置94は、例えばHDDまたはSSD等であり、CPU91によって実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を格納する。CPU91は、当該プログラムを、補助記憶装置94から読み出してRAM92上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。
【0058】
通信I/F95は、LAN等の通信回線を介してプラズマ処理装置100等の他の装置との間で通信を行う。通信I/F95は、通信回線を介して他の装置からデータを受信してCPU91へ送り、CPU91が生成したデータを、通信回線を介して他の装置へ送信する。
【0059】
CPU91は、入出力I/F96を介して、センサ22およびディスプレイ等の出力装置を制御する。CPU91は、入出力I/F96を介して、センサ22から入力された信号を取得してCPU91へ送る。また、CPU91は、生成したデータを、入出力I/F96を介して出力装置へ出力する。
【0060】
メディアI/F97は、記録媒体98に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、補助記憶装置94に格納する。記録媒体98は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0061】
コンピュータ90のCPU91は、RAM92上にロードされたプログラムを実行することにより、プラズマ計測装置20の制御部23の機能を実現する。コンピュータ90のCPU91は、RAM92上にロードされるプログラムを、記録媒体98から読み取って補助記憶装置94に格納するが、他の例として、他の装置から、通信回線を介してプログラムを取得して補助記憶装置94に格納してもよい。あるいは、コンピュータ90のCPU91は、他の装置から、通信回線を介してプログラムを取得し、取得したプログラムをRAM92上にロードして実行してもよい。
【0062】
[プラズマの分布の情報を収集する処理]
本実施形態では、基板Wに対してプラズマを用いた処理が行われる前に、プラズマ計測装置20を用いて予め計測されたプラズマの三次元分布の情報が収集される。
図10は、第1の実施形態におけるプラズマの分布の情報を収集する処理の一例を示すフローチャートである。
【0063】
まず、プラズマ処理装置100は、制御部190を介して、ユーザからプラズマ処理に用いられるレシピの設定を受け付ける(S10)。設定されたレシピは、プラズマ計測装置20にも入力される。プラズマ処理に用いられるレシピに含まれる情報としては、例えば、プラズマ処理装置100の構造に関する情報、処理容器101内の圧力、処理に用いられるガスの種類、それぞれのガスの流量、基板Wの温度、処理容器101の各部の温度、それぞれのマイクロ波放射機構143から放射されるマイクロ波の電力、それぞれのマイクロ波放射機構143から放射されるマイクロ波の周波数、および、形成される膜の構成等が挙げられる。
【0064】
次に、設定されたレシピに従って、プラズマを用いた基板Wの処理が開始される(S11)。ステップS11では、ガス供給機構103から処理容器101内に処理ガスが供給され、マイクロ波導入装置105から処理容器101内にマイクロ波が供給され、処理容器101内において処理ガスがプラズマ化される。そして、生成されたプラズマにより、実験用の基板Wに対して処理が行われる。
【0065】
次に、プラズマ計測装置20は、処理容器101内のプラズマの分布を計測する(S12)。ステップS12では、プラズマ計測装置20のセンサ22は、処理容器101の側壁部112に設けられた窓117において、レンズアレイ21を介してプラズマからの光を取り込む。そして、センサ22は、レンズアレイ21を介して取り込まれた光を電気信号に変換する。そして、プラズマ計測装置20の制御部23は、センサ22によって変換された電気信号を用いて、前述のインテグラルフォトグラフィにより処理容器101内のプラズマの三次元分布の情報を生成する。レンズアレイ21およびセンサ22を介して、制御部23がプラズマ計測装置20の処理容器101内のプラズマが発する光に対応する電気信号を取得する処理は、工程A)の一例である。また、レンズアレイ21およびセンサ22を介して取得した電気信号を用いて、制御部23がインテグラルフォトグラフィにより処理容器101内のプラズマの三次元分布の情報を生成する処理は、工程B)の一例である。
【0066】
次に、基板Wの処理が終了すると(S13)、プラズマ計測装置20は、プラズマの分布の計測結果をメモリに保存する(S14)。ステップS14では、ステップS10において設定されたレシピに対応付けて、プラズマの三次元分布の情報が、プラズマの分布の計測結果の情報として保存される。そして、本フローチャートに示された処理は終了する。
【0067】
なお、プラズマの分布の計測結果の情報には、実験用の基板Wの処理結果の情報が対応付けられてもよい。基板Wの処理結果の情報としては、例えば膜厚の均一性を示す情報等が挙げられる。これにより、処理結果の情報から、対応するプラズマの分布の計測結果およびレシピを特定することができる。
【0068】
図10に例示された処理は、複数の異なるレシピについて実行される。また、ステップS14では、基板Wの処理結果が予め定められた基準を満たす場合にのみ、プラズマの分布の計測結果およびレシピが保存されるようにしてもよい。
【0069】
[基板Wの処理]
図11は、第1の実施形態における基板Wの処理の一例を示すフローチャートである。
図11に例示されたプラズマ処理では、
図10に例示された処理によって収集されたプラズマの分布の計測結果が用いられる。
【0070】
まず、プラズマ処理装置100は、制御部190を介して、ユーザからプラズマ処理に用いられるレシピの設定を受け付ける(S20)。設定されたレシピは、プラズマ計測装置20にも入力される。そして、設定されたレシピに従って、プラズマを用いた基板Wの処理が開始される(S21)。そして、プラズマ計測装置20は、処理容器101内のプラズマの分布を計測する(S22)。
【0071】
次に、プラズマ計測装置20は、計測されたプラズマの分布と共に、同一のレシピを用いて過去に計測されたプラズマの分布を出力する(S23)。ステップS23では、プラズマ計測装置20は、ステップS20においてプラズマ処理装置100に設定されたレシピに対応するプラズマの分布であって、
図10に例示された処理によって予め収集されたプラズマの分布をメモリ内から読み出す。そして、プラズマ計測装置20は、ステップS22において計測されたプラズマの分布と共に、メモリから読み出されたプラズマの分布をディスプレイ等に出力する。
【0072】
次に、ユーザは、計測されたプラズマの分布と、同一のレシピにおいて過去に計測されたプラズマの分布とに基づいて、プラズマ処理装置100に設定されるレシピに含まれるパラメータを調整する(S24)。プラズマの分布と、基板Wの処理結果との間には密接な関係があり、プラズマの分布が同一であれば、基板Wの処理結果も同一になる可能性が高い。そのため、ユーザは、例えば、計測されたプラズマの分布が、同一のレシピにおいて過去に計測されたプラズマの分布に近付くように、プラズマ処理装置100に設定されるレシピに含まれるパラメータを調整する。従って、ステップS23において出力される、過去に計測されたプラズマの分布は、基板Wの処理結果が予め定められた基準を満たす場合のプラズマの分布であることが好ましい。
【0073】
そして、基板Wの処理が終了した場合(S25)、本フローチャートに示されたプラズマ処理が終了する。
【0074】
本実施形態では、大きさが異なる複数のレンズが配置されているレンズアレイ21を用いて処理容器101内のプラズマから発せられる光を取り込み、取り込んだ光に基づいてインテグラルフォトグラフィによりプラズマの三次元分布を計測する。これにより、処理容器101内のプラズマの分布を精度よく計測することができる。これにより、計測されたプラズマの分布をモニタしながらプラズマ処理装置100に設定されるレシピに含まれるパラメータを調整することで、処理容器101内のプラズマの分布を精度よく調整することができる。
【0075】
なお、
図10に示された処理は、プラズマ処理装置100の型式毎に実施され、
図11のステップS23において出力される、過去に計測されたプラズマの分布は、同一の型式のプラズマ処理装置100において計測されたものであってもよい。これにより、プラズマ処理装置100の型式毎の装置の特性のずれを抑制することができる。
【0076】
また、
図10に示された処理は、プラズマ処理装置100毎に実施され、
図11のステップS23において出力される、過去に計測されたプラズマの分布は、同一のプラズマ処理装置100において計測されたものであってもよい。これにより、プラズマ処理装置100毎の機差を抑制することができる。
【0077】
以上、第1の実施形態について説明した。上記したように、本実施形態におけるプラズマ計測装置20は、レンズアレイ21と、センサ22と、制御部23とを備える。レンズアレイ21は、プラズマ処理装置100の処理容器101の側壁に配置可能であり、大きさが異なる複数のレンズが配置されている。センサ22は、処理容器101内のプラズマが発する光をレンズアレイ21を介して取り込み、取り込んだ光を電気信号に変換するように構成される。制御部23は、センサ22によって変換された電気信号を用いて、インテグラルフォトグラフィにより処理容器101内のプラズマの三次元分布の情報を生成するように構成される。これにより、処理容器101内のプラズマの分布に与える影響を抑えつつ、処理容器101内のプラズマの分布を精度よく計測することができる。
【0078】
また、上記した実施形態において、レンズアレイ21は、複数のレンズ210と、レンズアレイ21の間に配置され、レンズ210よりも小さい複数のレンズ211とを有する。これにより、レンズアレイ21は、より多くの光を取り込むことができ、レンズアレイ21を小型化することができる。
【0079】
また、上記した実施形態において、複数のレンズ210の中の少なくとも一部のレンズ210および複数のレンズ211の中の少なくとも一部のレンズ211には、第1の範囲の波長の光を通過させる第1のフィルタが設けられていてもよい。これにより、特定の範囲の波長の光を発するプラズマの三次元分布を精度よく計測することができる。
【0080】
また、上記した実施形態において、複数のレンズ210の中の他の一部のレンズ210および複数のレンズ211の中の他の一部のレンズ211には、第1の範囲とは異なる第2の範囲の波長の光を通過させる第2のフィルタが設けられていてもよい。これにより、第1の範囲の波長の光を発するプラズマの三次元分布と、第2の範囲の波長の光を発するプラズマの三次元分布とを、それぞれ別々に精度よく計測することができる。
【0081】
また、本実施形態におけるプラズマ計測方法は、プラズマ計測装置20におけるプラズマ計測方法であって、制御部23が工程A)および工程B)を実行する。工程A)では、制御部23は、レンズアレイ21およびセンサ22を介して、処理容器101内のプラズマが発する光に対応する電気信号を取得する。工程B)では、制御部23は、レンズアレイ21およびセンサ22を介して取得した電気信号を用いて、インテグラルフォトグラフィにより処理容器101内のプラズマの三次元分布の情報を生成する。これにより、処理容器101内のプラズマの分布に与える影響を抑えつつ、処理容器101内のプラズマの分布を精度よく計測することができる。
【0082】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、同一のレシピを用いて過去に計測されたプラズマの分布を参照し、今回の処理においてもプラズマが同一の分布になるように、ユーザがレシピに含まれるパラメータを調整する。これに対し、本実施形態では、レシピの一部の情報と共に、プラズマの分布を示す情報が入力された場合に、その分布となるレシピを出力する。これにより、ユーザの経験や勘によらず、所望のプラズマの分布を実現するレシピを特定することができる。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0083】
本実施形態では、プラズマ計測装置20の制御部23によって実行される処理が第1の実施形態とは異なる。本実施形態では、制御部23は、機械学習により、レシピとそのレシピによって生成されたプラズマの分布とのセットを学習データとして学習させた学習モデルを生成する。そして、制御部23は、生成された学習モデルを用いて、レシピの一部の情報と希望するプラズマの分布の情報とから設定すべきレシピを生成する。そして、生成されたレシピを用いて基板Wの処理が実行される。以下では、学習モデルを生成する処理と、基板Wの処理とに分けて説明する。
【0084】
[学習モデル生成処理]
図12は、第2の実施形態における学習モデル生成処理の一例を示すフローチャートである。
【0085】
まず、プラズマ計測装置20の制御部23は、プラズマ処理装置100の制御部190に、プラズマ処理に用いられるレシピを設定する(S30)。制御部190は、設定されたレシピに従ってプラズマ処理装置100を制御し、実験用の基板Wに対して処理を開始する(S21)。そして、プラズマ計測装置20は、処理容器101内のプラズマの分布を計測する(S32)。
【0086】
基板Wの処理が終了した場合(S33)、制御部23は、プラズマの分布の計測結果を、ステップS30において設定されたレシピに対応付けてメモリに保存する(S34)。ステップS34では、基板Wの処理結果(例えば処理の均一性等の情報)も併せてレシピに対応付けてメモリに保存されてもよい。
【0087】
そして、制御部23は、データ収集を終了するか否かを判定する(S35)。データ収集を終了しない場合(S35:No)、制御部23は、レシピに含まれる一部のパラメータを変更することにより、レシピを変更する(S36)。そして、再びステップS30に示された処理が実行される。
【0088】
一方、データ収集を終了する場合(S35:Yes)、制御部23は、収集されたレシピとそのレシピによって生成されたプラズマの分布とのセットを学習データとする機械学習により学習モデルを生成する(S37)。ステップS37は、工程a)の一例である。機械学習の手法としては、例えば線形回帰およびロジスティック回帰等の一般的な回帰分析法を用いることができる。そして、制御部23は、生成された学習モデルをメモリに保存する(S38)。そして、本フローチャートに示された学習モデル生成処理が終了する。
【0089】
ここで、プラズマの分布と、基板Wの処理結果との間には密接な関係があり、プラズマの分布が同一であれば、基板Wの処理結果も同一になる可能性が高い。そのため、本実施形態において、ユーザは、シミュレーション等により、基板Wの処理結果が所望の結果となるようなプラズマの分布を別途計算し、プラズマ計測装置20に入力する。プラズマ計測装置20は、学習モデルを用いて、入力されたプラズマの分布を実現することができるレシピを出力する。これにより、ユーザの経験や勘によらず、所望のプラズマの分布を実現するレシピを容易に特定することができる。
【0090】
また、レシピに含まれるパラメータは、プラズマ処理装置100の構造に関する情報、処理容器101内の圧力、処理に用いられるガスの種類、それぞれのガスの流量、基板Wの温度、処理容器101の各部の温度、それぞれのマイクロ波放射機構143から放射されるマイクロ波の電力、それぞれのマイクロ波放射機構143から放射されるマイクロ波の周波数、および、形成される膜の構成等、多岐にわたる。また、プラズマの分布は三次元の座標の集合で表される。そのため、レシピの情報およびプラズマの分布の情報には特徴量が多い。そのため、レシピとそのレシピによって生成されたプラズマの分布とのセットを学習データとして学習させることで、学習モデルを精度よく生成することができる。
【0091】
[基板Wの処理]
図13は、第2の実施形態における基板Wの処理の一例を示すフローチャートである。
【0092】
まず、プラズマ計測装置20の制御部23は、プラズマ処理システム10のユーザから、レシピの一部の情報と共に、希望するプラズマの分布の情報を受け付ける(S40)。ステップS40は、工程b)の一例である。レシピの一部の情報とは、例えば、プラズマ処理装置100の構造に関する情報、使用されるガスの種類、供給されるマイクロ波の周波数、および形成される膜の構成等である。
【0093】
次に、制御部23は、
図12で説明した処理によって生成された学習モデルを用いて、ステップS40において受け付けた、レシピの一部の情報と、プラズマの分布の情報とに対応するレシピをプラズマ処理装置100の制御部190へ出力する(S41)。ステップS41は、工程c)の一例である。
【0094】
次に、制御部190は、プラズマ計測装置20から出力されたレシピを設定し(S42)、設定されたレシピに従ってプラズマ処理装置100の各部を制御することにより、プラズマを用いた基板Wの処理を実行する(S43)。そして、本フローチャートに示された基板Wの処理は終了する。
【0095】
なお、プラズマ計測装置20の制御部23は、ステップS41において、ディスプレイ等の出力装置にレシピの情報を出力してもよい。この場合、プラズマ処理システム10のユーザは、ステップS42において、出力されたレシピの情報に従って、レシピの情報を、プラズマ処理装置100の制御部190に設定する。
【0096】
[学習モデルの更新処理]
プラズマ処理装置100によって基板Wに対する処理が繰り返されると、プラズマ処理装置100の部品に堆積物が蓄積したり、プラズマ処理装置100の部品が消耗または劣化することにより、処理容器101内の状態が徐々に変化する。処理容器101内の状態が変化すると、同じレシピで処理を行ったとしても、処理容器101内のプラズマの分布が変化する。処理容器101内のプラズマの分布が変化すると、プラズマを用いた基板Wの処理結果も変化する。そのため、プラズマ処理装置100の状態の変化に合わせて、学習モデルを更新することが好ましい。以下では、学習モデルの更新を含む基板Wの処理の一例について説明する。
【0097】
図14は、第2の実施形態における基板の処理の他の例を示すフローチャートである。
【0098】
まず、プラズマ計測装置20の制御部23は、プラズマ処理システム10のユーザから、レシピの一部の情報と共に、希望するプラズマの分布の情報を受け付ける(S50)。そして、制御部23は、
図12で説明した処理によって生成された学習モデルを用いて、ステップS50において受け付けた、レシピの一部の情報と、プラズマの分布の情報とに対応するレシピをプラズマ処理装置100の制御部190へ出力する(S51)。そして、制御部190は、プラズマ計測装置20から出力されたレシピを設定し(S52)、設定されたレシピに従ってプラズマ処理装置100の各部を制御することにより、基板Wに対するプラズマ処理を開始する(S53)。そして、プラズマ計測装置20は、処理容器101内のプラズマの分布を計測する(S54)。
【0099】
基板Wの処理が終了した場合(S55)、制御部23は、ステップS51において出力されたレシピと、プラズマの分布の計測結果とを用いて、学習モデルを更新する(S56)。ステップS56は、工程d)の一例である。そして、本フローチャートに示された基板Wの処理は終了する。
【0100】
ステップS56では、ステップS51において出力されたレシピと、プラズマの分布の計測結果とのセットを学習データとして用いた転移学習により、学習モデルを更新する。ステップS54において計測されたプラズマの分布には、プラズマ処理装置100の状態の僅かな変化が反映されていると考えられる。そのため、ステップS54において計測されたプラズマの分布を用いて学習モデルを転移学習させることにより、プラズマ処理装置100の状態の変化に沿った学習モデルを維持することができる。
【0101】
以上、第2の実施形態について説明した。上記したように、本実施形態におけるプラズマ計測装置20の制御部23は、工程a)、b)、およびc)を実行するように構成される。工程a)では、制御部23は、プラズマ処理装置100に設定される複数のレシピの情報と、レンズアレイ21およびセンサ22を用いて計測された、それぞれのレシピの情報に従ってプラズマ処理装置100が基板Wを処理する際の処理容器101内のプラズマの三次元分布の情報とのセットを学習データとする機械学習により学習モデルを生成する。工程b)では、制御部23は、プラズマの三次元分布の情報を受け付ける。工程c)では、制御部23は、生成された学習モデルを用いて、受け付けたプラズマの三次元分布の情報に対応するレシピの情報を出力する。これにより、ユーザの経験や勘によらず、所望のプラズマの分布を実現するレシピを特定することができる。
【0102】
また、上記した実施形態において、制御部23は、工程d)をさらに実行するように構成される。工程d)では、制御部23は、プラズマ処理装置100に入力されたレシピの情報と、レンズアレイ21およびセンサ22を用いて計測された、プラズマ処理装置100に入力されたレシピの情報に従ってプラズマ処理装置100が基板Wを処理する際の処理容器101内のプラズマの三次元分布の情報とのセットを学習データする転移学習により学習モデルを更新する。これにより、プラズマ処理装置100の状態の変化に沿った学習モデルを維持することができる。
【0103】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0104】
例えば、上記した第2の実施形態では、プラズマ計測装置20は、入力されたプラズマの分布に対して、学習モデルを用いて、その分布を実現することができるレシピを出力する。しかし、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、プラズマ計測装置20は、基板Wの処理結果の情報からレシピの情報を出力するようにしてもよい。
【0105】
例えば、
図12のステップS34において、基板Wの処理結果(例えば処理の均一性等の情報)の情報が、プラズマの分布の情報と共にレシピに対応付けてメモリに保存される。そして、
図12のステップS37では、収集されたレシピと、そのレシピを用いて計測されたプラズマの分布とのセットを第1の学習データとして機械学習させた第1の学習モデルが生成される。また、
図12のステップS37では、計測されたプラズマの分布と基板Wの処理結果とのセットを第2の学習データとして機械学習させた第2の学習モデルが生成される。そして、
図13のステップS40では、プラズマ計測装置20の制御部23は、レシピの一部の情報と共に、基板Wの処理結果の情報を受け付け、第2の学習モデルを用いて、レシピの一部の情報と、基板Wの処理結果の情報とに対応するプラズマの分布を特定する。そして、制御部23は、第1の学習モデルを用いて、レシピの一部の情報と、第2の学習モデルを用いて特定されたプラズマの分布とに対応するレシピをプラズマ処理装置100の制御部190へ出力する。これにより、ユーザの経験や勘によらず、希望する基板Wの処理結果が得られるレシピを特定することができる。なお、第1の学習モデルおよび第2の学習モデルについても、基板Wの処理が実行される毎に、プラズマの分布の測定結果を用いて転移学習により更新されてもよい。
【0106】
また、上記した各実施形態におけるレンズアレイ21に代えて、例えば
図15に示されるようなレンズアレイモジュール215が設けられてもよい。レンズアレイモジュール215は、レンズの大きさの比率および配置が異なる複数のレンズアレイ21a~21dを有する。複数のレンズアレイ21a~21dの中の1つのレンズアレイは第1のレンズアレイの一例であり、他の一つのレンズアレイは第2のレイズアレイの一例である。
図15の例では、レンズアレイモジュール215が回転することにより、プラズマ処理装置100とセンサ22との間に配置されるレンズアレイ21を容易に変更することができる。これにより、処理容器101内に生成されるプラズマの光量に応じて、レンズアレイ21のダイナミックレンジを容易に変更することができる。
【0107】
また、レンズアレイモジュール215は、例えば
図16に示されるような構成であってもよい。
図16の例では、レンズアレイモジュール215がレンズアレイ21a~21dの配列方向に移動することにより、プラズマ処理装置100とセンサ22との間に配置されるレンズアレイ21を容易に変更することができる。
【0108】
なお、
図15および
図16の例では、レンズアレイモジュール215に4個のレンズアレイ21a~21dが設けられているが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、レンズアレイモジュール215に設けられるレンズアレイ21の個数は、3個以下であってもよく、5個以上であってもよい。また、
図15および
図16の例における複数のレンズアレイ21a~21dは、レンズの大きさの比率および配置が異なるが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、レンズアレイ21a~21dの少なくとも2個は、レンズの大きさの比率および配置が同一であってもよい。ただし、レンズの大きさの比率および配置が同一のレンズアレイ21については、屈折率、透過する光の波長の範囲、および光の透過率の少なくともいずれかが異なっていることが好ましい。例えば、レンズの大きさの比率および配置が同一のレンズアレイ21の中の一部のレンズアレイ21には、第1の範囲の波長の光を通過させる第1のフィルタが設けられてもよい。また、他の一部のレンズアレイ21には、第1の範囲とは異なる第2の範囲の波長の光を通過させる第2のフィルタが設けられてもよい。これにより、レンズアレイモジュール215を回転または移動させることで、レンズアレイ21の屈折率、透過する光の波長の範囲、および光の透過率の少なくともいずれかを容易に変更することができる。
【0109】
また、上記した各実施形態では、センサ22と処理容器101との間に1個のレンズアレイ21が設けられるが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、例えば
図17に示されるように、センサ22と処理容器101との間に、複数のレンズアレイ21aおよびレンズアレイ21bが配置されてもよい。
図17の例では、レンズアレイ21aのレンズ210aおよびレンズ211bは全て凸レンズで構成され、レンズアレイ21bのレンズ210aおよびレンズ211bは全て凹レンズで構成されている。レンズアレイ21aおよびレンズアレイ21bは、レンズアレイ21aのレンズ210aとレンズアレイ21bのレンズ210bとが対応し、レンズアレイ21aのレンズ211aとレンズアレイ21bのレンズ211bとが対応する位置となるように配置される。これにより、レンズアレイ21aとレンズアレイ21bとの間の距離Lを変更することにより、レンズアレイ21aおよびレンズアレイ21bを介した焦点距離を容易に変更することができる。レンズアレイ21aは第1のレンズアレイの一例であり、レンズアレイ21bは第2のレンズアレイの一例である。なお、
図17の例では、2個のレンズアレイが重なるように配置されるが、他の形態として、3個以上のレンズアレイが重なるように配置されてもよい。
【0110】
また、レンズアレイ21に配置されたそれぞれのレンズ200は、例えば
図18に示されるように、空洞201が形成され、空洞201内には、配管202を介して供給される流体が充填されてもよい。流体は、例えば気体または液体である。レンズ200内に屈折率、透過する光の波長の範囲、および光の透過率の少なくともいずれかが異なる流体を充填することにより、レンズ200の屈折率、透過する光の波長の範囲、および光の透過率の少なくともいずれかを容易に変更することができる。また、レンズアレイ21に配置される複数のレンズ200の中の一部のレンズ200と、他の一部のレンズ200とで、異なる流体を充填してもよい。これにより、1つのレンズアレイ21において、屈折率、透過する光の波長の範囲、および光の透過率の少なくともいずれかが異なる複数のレンズ200を容易に準備することができる。
【0111】
また、レンズアレイ21に配置されたそれぞれのレンズは、印加される電圧により屈折率が変化する電気光学結晶を用いて形成されてもよい。これにより、レンズアレイ21に配置されたそれぞれのレンズの屈折率を容易に変更することができる。
【0112】
また、上記した各実施形態では、プラズマを用いて成膜を行うプラズマ処理装置100を例に説明したが、プラズマ計測装置20によってプラズマの分布が測定される装置は、成膜を行う装置に限られない。プラズマ計測装置20によってプラズマの分布が測定される装置は、基板Wに対してプラズマを用いた処理を行う装置であれば、エッチング装置や改質装置等であってもよい。
【0113】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0114】
また、上記の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0115】
(付記1)
プラズマ処理装置の処理容器の側壁に配置可能であり、大きさが異なる複数のレンズが配置されたレンズアレイと、
前記処理容器内のプラズマが発する光を前記レンズアレイを介して取り込み、取り込んだ光を電気信号に変換するように構成されるセンサと、
前記電気信号を用いて、インテグラルフォトグラフィにより前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報を生成するように構成される制御部と
を備えるプラズマ計測装置。
(付記2)
前記レンズアレイは、
複数の第1のレンズと、
前記第1のレンズの間に配置され、前記第1のレンズよりも小さい複数の第2のレンズとを有する付記1に記載のプラズマ計測装置。
(付記3)
複数の前記第1のレンズの中の少なくとも一部のレンズおよび複数の前記第2のレンズの中の少なくとも一部のレンズには、第1の範囲の波長の光を通過させる第1のフィルタが設けられている付記2に記載のプラズマ計測装置。
(付記4)
複数の前記第1のレンズの中の他の一部のレンズおよび複数の前記第2のレンズの中の他の一部のレンズには、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の波長の光を通過させる第2のフィルタが設けられる付記3に記載のプラズマ計測装置。
(付記5)
第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとを有するレンズアレイモジュールをさらに備え、
前記第1のレンズアレイには、第1の範囲の波長の光を通過させる第1のフィルタが設けられ、
前記第2のレンズアレイには、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の波長の光を通過させる第2のフィルタが設けられる付記2に記載のプラズマ計測装置。
(付記6)
第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとを有するレンズアレイモジュールをさらに備え、
前記第1のレンズアレイに配置された複数のレンズと、前記第2のレンズアレイに配置された複数のレンズとは、大きいレンズと小さいレンズとの大きさの比率および配置の少なくともいずれかが異なる付記2から5のいずれか一つに記載のプラズマ計測装置。
(付記7)
前記レンズアレイは、第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとを有し、
前記第1のレンズアレイと前記第2のレンズアレイとは、前記第1のレイズアレイに含まれるそれぞれの第1のレンズと前記第2のレイズアレイに含まれるそれぞれの第1のレンズとが対応し、前記第1のレイズアレイに含まれるそれぞれの第2のレンズと前記第2のレイズアレイに含まれるそれぞれの第2のレンズとが対応するように、前記処理容器と前記センサとの間に重ねて配置され、
前記第1のレンズアレイと前記第2のレイズアレイとの間の距離が変更可能である付記2から4のいずれか一つに記載のプラズマ計測装置。
(付記8)
前記レンズアレイに配置されるそれぞれのレンズの内部には空洞が設けられており、
一部のレンズの前記空洞内には、他の一部のレンズの前記空洞内に充填される流体とは屈折率が異なる流体が充填される付記1から7のいずれか一つに記載のプラズマ計測装置。
(付記9)
前記レンズアレイに配置されるそれぞれのレンズの内部には空洞が設けられており、
一部のレンズの前記空洞内には、他の一部のレンズの前記空洞内に充填される流体とは光の透過率が異なる流体が充填される付記1から8のいずれか一つに記載のプラズマ計測装置。
(付記10)
前記レンズアレイに配置されるそれぞれのレンズの内部には空洞が設けられており、
一部のレンズの前記空洞内には、他の一部のレンズの前記空洞内に充填される流体とは透過する波長の範囲が異なる流体が充填される付記1から9のいずれか一つに記載のプラズマ計測装置。
(付記11)
前記制御部は、
a) 前記プラズマ処理装置に設定される複数のレシピの情報と、前記レンズアレイおよび前記センサを用いて計測された、それぞれの前記レシピの情報に従って前記プラズマ処理装置が基板を処理する際の前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報とのセットを学習データとする機械学習により学習モデルを生成する工程と、
b) 一部のレシピの情報とプラズマの三次元分布の情報とを受け付ける工程と、
c) 前記学習モデルを用いて、受け付けたプラズマの三次元分布の情報に対応するレシピの情報を出力する工程と
を実行するように構成される付記1から10のいずれか一つに記載のプラズマ計測装置。
(付記12)
前記制御部は、
d) 前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報と、前記レンズアレイおよび前記センサを用いて計測された、前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報に従って前記プラズマ処理装置が基板を処理する際の前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報とのセットを学習データとする転移学習により学習モデルを更新する工程
をさらに実行するように構成される付記11に記載のプラズマ計測装置。
(付記13)
前記制御部は、
a) 前記プラズマ処理装置に設定される複数のレシピの情報と、前記レンズアレイおよび前記センサを用いて計測された、それぞれの前記レシピの情報に従って前記プラズマ処理装置が基板を処理する際の前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報と、それぞれの前記レシピの情報に従って前記プラズマ処理装置によって処理された基板の処理結果の情報とのセットを学習データとする機械学習により学習モデルを生成する工程と、
b) 一部のレシピの情報と基板の処理結果の情報を受け付ける工程と、
c) 前記学習モデルを用いて、前記基板の処理結果の情報に対応するレシピの情報を出力する工程と
を実行するように構成される付記1から10のいずれか一つに記載のプラズマ計測装置。
(付記14)
前記制御部は、
d) 前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報と、前記レンズアレイおよび前記センサを用いて計測された、前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報に従って前記プラズマ処理装置が基板を処理する際の前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報と、前記プラズマ処理装置に入力されたレシピの情報に従って前記プラズマ処理装置によって処理された基板の処理結果の情報とのセットを学習データとする転移学習により学習モデルを更新する工程
をさらに実行するように構成される付記13に記載のプラズマ計測装置。
(付記15)
プラズマ処理装置の処理容器の側壁に配置可能であり、大きさが異なる複数のレンズが配置されたレンズアレイと、
前記処理容器内のプラズマが発する光を前記レンズアレイを介して取り込み、取り込んだ光を電気信号に変換するように構成されるセンサと、
制御部とを備えるプラズマ計測装置におけるプラズマ計測方法であって、
前記制御部は、
A)前記レンズアレイおよび前記センサを介して、前記処理容器内のプラズマが発する光に対応する電気信号を取得する工程と、
B)前記電気信号を用いて、インテグラルフォトグラフィにより前記処理容器内のプラズマの三次元分布の情報を生成する工程と
を実行するプラズマ計測方法。
【符号の説明】
【0116】
W 基板
10 プラズマ処理システム
100 プラズマ処理装置
101 処理容器
102 載置台
103 ガス供給機構
104 排気装置
105 マイクロ波導入装置
111 天壁部
112 側壁部
113 底壁部
114 開口
116 排気管
117 窓
120 支持部材
121 基部部材
123 ガスノズル
124 ガスノズル
125 ガス供給配管
127 ガス供給部
130 マイクロ波出力部
140 アンテナユニット
142 アンプ部
143 マイクロ波放射機構
163 マイクロ波透過板
190 制御部
20 プラズマ計測装置
200 レンズ
201 空洞
202 配管
21 レンズアレイ
210 レンズ
211 レンズ
212 レンズ
213 レンズ
215 レンズアレイモジュール
22 センサ
23 制御部
24 信号ケーブル
90 コンピュータ
91 CPU
92 RAM
93 ROM
94 補助記憶装置
95 通信I/F
96 入出力I/F
97 メディアI/F
98 記録媒体