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特開2024-115020多心光ファイバ心線、光ファイバケーブル、多心光ファイバ心線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115020
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】多心光ファイバ心線、光ファイバケーブル、多心光ファイバ心線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240819BHJP
   C03C 25/106 20180101ALI20240819BHJP
   C03C 25/46 20060101ALI20240819BHJP
   C03C 25/26 20180101ALI20240819BHJP
【FI】
G02B6/44 371
G02B6/44 366
G02B6/44 391
C03C25/106
C03C25/46
C03C25/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020456
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】石村 友洋
(72)【発明者】
【氏名】中島 勝
【テーマコード(参考)】
2H201
4G060
【Fターム(参考)】
2H201BB03
2H201BB06
2H201BB08
2H201BB12
2H201BB22
2H201BB23
2H201BB24
2H201BB25
2H201BB60
2H201BB67
2H201BB76
2H201BB85
2H201DD04
2H201DD06
2H201DD09
2H201DD12
2H201DD14
2H201DD15
2H201DD28
2H201DD33
2H201KK02
2H201KK17
2H201KK42C
2H201KK63
2H201MM03
2H201MM23
2H201MM32
2H201MM34
4G060AA03
4G060AC15
4G060AD43
4G060AD59
(57)【要約】
【課題】 接着剤を使用することなく、複数の光ファイバ同士を集合させて、必要時には光ファイバ心線同士の自由な移動を抑制することが可能で、光ファイバケーブルを高密度実装することが可能な多心光ファイバ心線等を提供する。
【解決手段】 光ファイバ心線3は、光ファイバ素線の外周に被覆層9が設けられた構造である。被覆層9は、最外周に配置される樹脂層であり、例えば着色層であってもよく、着色層のさらに外周に配置された樹脂層であってもよい。被覆層9には、磁性体が含まれている。多心光ファイバ心線1は、複数の光ファイバ心線が並列され、少なくとも一部の隣り合う光ファイバ心線3同士の磁性部10で吸着する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線が集合された多心光ファイバ心線であって、
前記光ファイバ心線は、光ファイバ素線の外周に被覆層が設けられ、
前記光ファイバ心線の長手方向の少なくとも一部において、前記被覆層には磁化された磁性体が含まれており、
隣り合う前記光ファイバ心線同士が、前記磁性体同士の吸着によって連結されることを特徴とする多心光ファイバ心線。
【請求項2】
前記磁性体は、前記光ファイバ心線の長手方向に対して間欠的に配置され、前記光ファイバ心線は、長手方向に対して間欠的に連結されることを特徴とする請求項1記載の多心光ファイバ心線。
【請求項3】
請求項1記載の多心光ファイバ心線を用いた光ファイバケーブルであって、
複数の前記多心光ファイバ心線をより合わせて形成されたコアと、
前記コアの外周に配置された押さえ巻きと、
前記押さえ巻きの外周に配置された引き裂き紐及びテンションメンバと、
前記押さえ巻き、前記引き裂き紐及び前記テンションメンバを外周から被覆する外被と、
を具備することを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項4】
請求項1記載の多心光ファイバ心線の製造方法であって、
長手方向の少なくとも一部において、前記光ファイバ素線に塗布装置によって前記磁性体を含む樹脂を前記光ファイバ素線の外周の少なくとも一部に被覆して前記被覆層を形成し、
複数の前記光ファイバ心線に対して、それぞれ前記磁性体を着磁して集合することを特徴とする多心光ファイバ心線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単心の光ファイバ心線が集合された多心光ファイバ心線等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量のデータを高速で伝送するための光ファイバとして、ケーブルへの収納や作業の簡易化のため、複数本の光ファイバ心線が並列に配置されて接着された光ファイバテープ心線が用いられている。光ファイバテープ心線は、並列した光ファイバ心線を全長にわたって樹脂で固着されたものが用いられている他、光ファイバ心線同士が長手方向に間欠的に接着されたものがある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-215493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような間欠接着された光ファイバテープ心線を用いれば、光ファイバ心線が高密度に実装された光ファイバケーブルにおいても、光ファイバケーブルを曲げた際に、それぞれの光ファイバ心線に大きなひずみが加わりにくい。これは、光ファイバケーブルに実装された間欠接着型光ファイバテープ心線の非接着部においては、光ファイバ心線が単心の状態で自由に動くことができるため、光ファイバケーブルの変形の柔軟さを高めることができるためである。
【0005】
一方、隣り合う光ファイバ心線同士が自由に動くことでの不具合もある。例えば、光ファイバテープ心線同士を接続する場合には、まず、光ファイバテープ心線が保持された一対の光ファイバホルダを互いに対向するように融着機にセットする。その後、光ファイバホルダから突出するそれぞれの光ファイバ心線(ガラスファイバ)の先端を突き合わせて融着することで光ファイバテープ心線同士の接続作業が完了する。
【0006】
この際、光ファイバホルダにおいては、光ファイバ心線を整列させた状態で蓋部を閉じることで光ファイバ心線が上方から押さえられて保持される。しかし、光ファイバ心線同士が自由に移動可能であるため、例えば一部の光ファイバ心線が浮き上がるなどして、うまく整列されない場合がある。この場合には、光ファイバ心線を整列させて指で押さえながら蓋部を閉じるなどの作業が必要となる。
【0007】
また、このような間欠接着型の光ファイバテープ心線は、光ファイバ心線同士を間欠的に接着する必要があるため、接着剤を塗布する必要がある。また、単心の光ファイバ心線を分離する際には、接着部を破断する作業が必要となるとともに、一度接着部を破断すると、元の光ファイバテープ心線へ戻すことはできない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、接着剤を使用することなく、複数の光ファイバ同士を集合させて、必要時には光ファイバ心線同士の自由な移動を抑制することが可能で、光ファイバケーブルを高密度実装することが可能な多心光ファイバ心線等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達するために第1の発明は、複数の光ファイバ心線が集合された多心光ファイバ心線であって、前記光ファイバ心線は、光ファイバ素線の外周に被覆層が設けられ、前記光ファイバ心線の長手方向の少なくとも一部において、前記被覆層には磁化された磁性体が含まれており、隣り合う前記光ファイバ心線同士が、前記磁性体同士の吸着によって連結されることを特徴とする多心光ファイバ心線である。
【0010】
前記磁性体は、前記光ファイバ心線の長手方向に対して間欠的に配置され、前記光ファイバ心線は、長手方向に対して間欠的に連結されてもよい。
【0011】
第1の発明によれば、光ファイバ心線の被覆層に磁性体が含まれているため、例えば磁性体(硬磁性体)を着磁することで磁化することができる。このため、必要に応じて、光ファイバ心線の接着剤を使用することなく、互いに接触させて集合させることができる。また、消磁することで自由に移動可能とすることもできる。
【0012】
例えば、光ファイバホルダに光ファイバ心線を配置する際にも、光ファイバホルダの本体部に対して磁化された光ファイバ心線が磁力で吸引されるため、浮き上がり等が抑制されてセットが容易となる。また、磁性体を消磁することで、必要に応じて磁力をなくして、光ファイバ心線同士を自由に移動可能とすることもできる。
【0013】
また、磁性体を長手方向に対して間欠的に添加することで、磁性体の使用量を削減することができる。また、全長にわたって連続して着磁させた際にも、部分的に自由に移動可能な部位を残すことができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明にかかる多心光ファイバ心線を用いた光ファイバケーブルであって、複数の前記多心光ファイバ心線をより合わせて形成されたコアと、前記コアの外周に配置された押さえ巻きと、前記押さえ巻きの外周に配置された引き裂き紐及びテンションメンバと、前記押さえ巻き、前記引き裂き紐及び前記テンションメンバを外周から被覆する外被と、を具備することを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0015】
第2の発明によれば、接着部を有していないため、必要な単心の光ファイバ心線を分離する際にも、接着部の除去作業が不要である。また、適度に光ファイバ心線同士が吸着して集合しているため、光ファイバ心線がばらけることを抑制しつつ、光ファイバ心線同士の移動が許容される。このため、光ファイバケーブルを曲げた際に、光ファイバ心線への伝送ロスの増大を抑制することができる。
【0016】
第3の発明は、第1の発明にかかる多心光ファイバ心線の製造方法であって、長手方向の少なくとも一部において、前記光ファイバ素線に塗布装置によって前記磁性体を含む樹脂を前記光ファイバ素線の外周の少なくとも一部に被覆して前記被覆層を形成し、複数の前記光ファイバ心線に対して、それぞれ前記磁性体を着磁して集合することを特徴とする多心光ファイバ心線の製造方法である。
【0017】
第3の発明によれば、容易に被覆層に磁性体が添加された多心光ファイバ心線を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、接着剤を使用することなく、複数の光ファイバ同士を集合させて、必要時には光ファイバ心線同士の自由な移動を抑制することが可能で、光ファイバケーブルを高密度実装することが可能な多心光ファイバ心線等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】多心光ファイバ心線1を示す斜視図。
図2】(a)は光ファイバ心線3の断面図、(b)は多心光ファイバ心線1の断面図。
図3】(a)は、光ファイバホルダ11を示す図、(b)、(c)は、(a)のA部の断面図。
図4】本体部13にV溝19aが設けられた状態を示す図。
図5】(a)は、光ファイバ心線3同士が集合していない状態の多心光ファイバ心線1を示す図、(b)、(c)は、光ファイバ心線3の被覆層9が着磁して磁性部10同士が吸着している状態を示す図。
図6】(a)は、光ファイバ心線3の製造方法を示す図、(b)は、多心光ファイバ心線1の着磁又は消磁を行う工程を示す図。
図7】(a)は、多心光ファイバ心線1aを示す図、(b)は、多心光ファイバ心線1bを示す図。
図8】光ファイバ心線3の他の製造方法を示す図。
図9】多心光ファイバ心線1cを示す図。
図10】(a)は、図9のA-A線断面図、(b)は、図9のB-B線断面図。
図11】塗布装置21cの構造を示す図。
図12】光ファイバケーブル30を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、多心光ファイバ心線1を示す斜視図である。多心光ファイバ心線1は、複数の単心の光ファイバ心線3が並列されて集合されたものである。なお、以下の説明において、多心光ファイバ心線1が4本の単心の光ファイバ心線3により構成される例を示すが、本発明はこれに限られず、複数の光ファイバ心線からなる多心光ファイバ心線であれば適用可能である。
【0021】
図2(a)は光ファイバ心線3の断面図、図2(b)は、多心光ファイバ心線1の断面図である。多心光ファイバ心線1は複数本の光ファイバ心線3からなり、それぞれの光ファイバ心線3は、光ファイバ素線7の外周に被覆層9が設けられた構造である。なお、光ファイバ素線7は、例えば単心のコア及びクラッドからなるガラスファイバの外周に、プライマリ及びセカンダリの樹脂が被覆されたものである。また、被覆層9は、光ファイバ心線3の最外周に配置される樹脂層であり、例えば着色層であってもよく、着色層のさらに外周に配置された他の樹脂層であってもよい。
【0022】
被覆層9には、全周・全長にわたって磁性体が含まれている。すなわち、被覆層9は磁性体配合部9aとなっており、磁性体が着磁されている場合には、被覆層9は全体が磁力を有する磁性部10となる。なお、磁性体としては、例えば金属粉末等である。また、特に説明がない限り、以下の説明では、磁性体が硬磁性体である場合について説明する。すなわち、磁性体は外部磁場がない状態でも、磁力を保持することが可能である。
【0023】
このような磁性体は、公知の着磁装置(例えば、京都機械工具株式会社製「マグネタイザ」等)を使用することで、着磁させることができるとともに、同装置を用いることで、逆に消磁することもできる。なお、以下の説明では、被覆層9において着磁されている部位(磁力を有する部位)を磁性部10とする。すなわち、磁性体配合部9aは、着磁すると磁性部10となり、消磁すると磁性部ではなくなる。
【0024】
多心光ファイバ心線1は、被覆層9(磁性体配合部9a)が着磁されて磁性部10となることで、互いの磁性部10同士が吸着して集合される。すなわち、光ファイバ心線3同士が連結して一体化する。
【0025】
次に、多心光ファイバ心線1の効果について説明する。図3(a)は、多心光ファイバ心線1同士の融着等を行う際に使用される光ファイバホルダ11を示す図であり、図3(b)は、図3(a)のA部における断面概念図である。光ファイバホルダ11は、複数の光ファイバ心線3を一括して保持することが可能であり、主に本体部13、蓋部15等から構成される。本体部13は、多心光ファイバ心線1が配置される部位であり、本体部13の幅方向の一方の側方には、本体部13に対してヒンジにより開閉可能な蓋部15が設けられる。なお、蓋部15は例えば磁石によって本体部13に対して吸着して閉じた状態を維持することができる。
【0026】
本体部13の上面(蓋部15との対向面)には、多心光ファイバ心線1を構成する各光ファイバ心線3が配置される溝19が形成される。溝19は、多心光ファイバ心線1の位置決めを行うものである。また、溝19の下方には、蓋部15の固定用の磁石とは別に、磁石17が配置される。
【0027】
次に、多心光ファイバ心線1を光ファイバホルダ11へセットする方法について説明する。まず、多心光ファイバ心線1の少なくとも先端部近傍において、被覆層9の磁性体配合部9aを着磁する。前述したように、着磁の際には公知の着磁装置を用いればよい。次に、光ファイバホルダ11の蓋部15を開き、多心光ファイバ心線1を本体部13の溝19に配置する。この際、磁石17とそれぞれの光ファイバ心線3の磁性体とを吸着させることで、光ファイバ心線3が溝19に整列して配置される。その後、蓋部15を閉じることで、蓋部15の裏面に設けられた押さえ部材で光ファイバ心線3が押さえられて光ファイバ心線3を所定の位置に保持することができる。
【0028】
なお、前述したように、磁性体が硬磁性体である場合には、部分的な着磁が可能であるが、軟磁性体の場合でも、光ファイバ心線3は磁石17によって磁化されるため、着磁させた場合と比較して吸引力は劣るが、光ファイバ心線3を溝19へ吸引させつつ配置することは可能である。同様に、磁性体が硬磁性体の場合であっても、着磁せずに光ファイバ心線3を溝19へ配置しても、磁石17によって光ファイバ心線3を溝19へ吸引させつつ(磁化しつつ)配置することも可能である。
【0029】
ここで、磁石17を本体部13に対して着脱可能としてもよい。図3(c)は、磁石17を取り外した状態を示す図である。このようにすることで、光ファイバ心線3の溝19方向への吸着力を低減(又は消失)させることができる。このため、例えば融着作業後において、光ファイバホルダ11から多心光ファイバ心線1を取り外す際には、磁石17を取り外すことで、作業が容易となる。
【0030】
なお、図4に示すように、光ファイバ心線3が配置される溝が複数のV溝19aであってもよい。この場合、それぞれのV溝19aに光ファイバ心線3が吸引されて配置される。このように、多心光ファイバ心線1を用いれば、光ファイバホルダ11へ容易に各光ファイバ心線3を配置することができる。
【0031】
なお、図示した例では、V溝19aのピッチは、多心光ファイバ心線1における光ファイバ心線3の配列ピッチ(被覆層9の外径)と略一致するがこれには限られない。例えば、V溝19aのピッチをさらに大きくして、多心光ファイバ心線1におけるピッチと、融着時における光ファイバ心線3のピッチを変えてもよい。このようにピッチ変換が可能な光ファイバホルダを用いることで、例えば、異なるピッチ同士の光ファイバ心線同士を融着することもできる。なお、V溝19aの断面形態は、必ずしも完全なV字状でなくてもよく、底部が曲線や平坦であってもよい。
【0032】
次に、多心光ファイバ心線1の他の利用方法について説明する。図5(a)は、多心光ファイバ心線1を構成する光ファイバ心線3同士が分離している状態を示す図である。例えば、磁性体配合部9aにおける磁性体が着磁されていない状態である。この状態では、光ファイバ心線3は自由に動くことが可能である。このため、多心光ファイバ心線1を曲げた際や捻じった際に、それぞれの光ファイバ心線3の大きなひずみが抑制されるが、光ファイバ心線3同士がばらけてしまい、光ファイバ心線3同士の隙間に異物が挟まるなどの恐れがある。
【0033】
これに対し、図5(b)に示すように、多心光ファイバ心線1の長手方向に対して略全長にわたって磁性体を着磁し、磁性体配合部9aを磁性部10とすることで、隣り合う光ファイバ心線3の磁性体配合部9a同士を吸着することができる。このため、光ファイバ心線3同士が集合して連結し、光ファイバ心線3同士の間の大きな隙間の形成等を抑制することができる。また、さらに複数の多心光ファイバ心線1を集合させてユニット化する際においても、光ファイバ心線3同士をばらけさせずに、容易に集合させた状態とすることができる。
【0034】
なお、磁性部10によって光ファイバ心線3同士を吸着させる場合には、接着剤で接着するような場合と異なり、隣り合う光ファイバ心線3同士を完全に接合して拘束することが無い。このため、図5(c)に示すように、光ファイバ心線3は、容易に互いの位置を移動することができ、例えば、光ファイバ心線3同士が折りたたまれるように、容易に位置を移動することができる。また、わずかな力で光ファイバ心線3同士の吸着を離すことができる。
【0035】
次に、多心光ファイバ心線1に用いられる光ファイバ心線3の製造方法について説明する。図6(a)は、光ファイバ心線3の製造工程の一部を示す概略図である。従来の公知の方法で製造された光ファイバ素線7を略筒状の塗布装置21へ通過させる。この際、塗布装置21から磁性体を含む樹脂を光ファイバ素線7の外周に被覆して被覆層9を形成する。なお、樹脂としては、例えば紫外線硬化樹脂である。
【0036】
その後、被覆層9が形成された光ファイバ素線7を硬化装置23に通過させて、被覆層9を硬化させる。硬化装置23は、被覆層9を構成する樹脂が紫外線硬化樹脂である場合には、紫外線照射装置である。得られた光ファイバ心線3は、公知の方法でボビン等に巻き取られる。以上により光ファイバ心線3を製造することができる。
【0037】
なお、多心光ファイバ心線1は、上述の方法で製造された複数の光ファイバ心線3を着磁して集合させることで形成することができる。または、複数の光ファイバ心線3を集合させてから一括して着磁してもよい。
【0038】
なお、前述したように、全長にわたって多心光ファイバ心線1を着磁する際には、図6(b)に示すように、多心光ファイバ心線1の搬送ライン上に着磁・消磁装置25を配置して、連続して着磁すればよい。また、消磁を行う際にも同様に、着磁された多心光ファイバ心線1を着磁・消磁装置25を通して、消磁することができる。なお、着磁・消磁装置25は、多心光ファイバ心線1の製造ライン上に配置されてもよい。
【0039】
また、光ファイバ心線3を製造する際、又は光ファイバ心線3を製造後、多心光ファイバ心線とする前に、全長にわたって着磁又は消磁することもできる。この場合、複数の光ファイバ心線3を予め着磁装置で着磁させた状態で集合させることで、確実に光ファイバ心線3同士を接触させて整列させることができる。
【0040】
なお、多心光ファイバ心線1の全長に磁性部10を形成するのではなく、図7(a)に示す多心光ファイバ心線1aのように、長手方向に間欠的に磁性部10(ハッチング部)を配置してもよい。図7(a)に示す例では、全周・全長にわたって磁性体配合部9aが形成されているが、その一部にのみ着磁されて磁性部10が形成される。この場合には、図6(b)の装置において、多心光ファイバ心線1が通過する際に、着磁・消磁装置25を間欠的に動作させればよい。
【0041】
また、上述した例では、長手方向の略全長にわたって、光ファイバ心線3の被覆層9に磁性体を混入させて磁性体配合部9aを形成し、長手方向の一部のみを着磁して磁性部10を形成したが、これには限られない。例えば、図7(b)に示す多心光ファイバ心線1bは、光ファイバ心線3の長手方向に対して間欠的に磁性体配合部9aが形成される。すなわち、光ファイバ心線3の長手方向に対して、一部の被覆層9には磁性体が添加され、残りの被覆層9には磁性体が添加されていなくてもよい。この場合には、図6(b)において、連続して着磁を行っても、磁性部10を間欠的に形成することができる。また、一度消磁しても、再度間欠的な磁性部10を容易に形成することができる。
【0042】
図8は、このような光ファイバ心線3を製造する工程の一例と示す概略図である。本実施形態では、図6(a)の塗布装置21に代えて、第1の塗布装置21aと第2の塗布装置21bとを用いる。図6(a)と同様に、光ファイバ素線7を塗布装置21aと塗布装置21bとに通過させて、被覆層9を形成するが、塗布装置21aと塗布装置21bとによる被覆層9の形成を交互に行う。
【0043】
ここで、光ファイバ素線7を略筒状の塗布装置21aを通過させる際に、塗布装置21aから磁性体を含む樹脂を光ファイバ素線7の外周に被覆する。一方、略筒状の塗布装置21bを通過させる際には、塗布装置21bからは磁性体を含まない樹脂を光ファイバ素線7の外周に被覆する。このようにすることで、磁性体配合部9aを長手方向に対して間欠的に配置することができる。
【0044】
すなわち、図7(a)に示す例では、長手方向に連続して配置される磁性体に対して、部分的に着磁することで磁性部10を間欠的に設けたが、図7(b)に示す例では、全長にわたって着磁を行っても、磁性部10を間欠的に配置することができる。なお、磁性体の添加されている磁性体配合部9aの部位が、例えば、磁性体が添加されていない部位に対して色が異なるようにすることで磁性体の配置位置を把握することができる。
【0045】
また、上述した例では、光ファイバ心線3の周方向の全周にわたって、被覆層9に磁性体を混入させて磁性体配合部9aを形成したが、これには限られない。例えば、図9は、多心光ファイバ心線1cを示す図であり、図10(a)は、図9のA-A線断面図であり、図10(b)は、図9のB-B線断面図である。
【0046】
多心光ファイバ心線1cは、それぞれの光ファイバ心線3の長手方向に対して間欠的に磁性体配合部9aが形成されるとともに、各磁性体配合部9aが周方向の全周に形成されずに、周方向の一部にのみ形成される。すなわち、長手方向及び周方向の一部には、磁性体が配合されていない部位が形成される。
【0047】
より詳細には、光ファイバ心線3は、長手方向に対して所定の間隔で磁性体配合部9aが配置される。また、磁性体配合部9aは、周方向の一部にのみ形成されるとともに、長手方向に対して、磁性体配合部9aの周方向位置が、交互に反対側に反転するように形成される。
【0048】
また、多心光ファイバ心線1cは、複数の光ファイバ心線3a~3d(総称して、光ファイバ心線3とする)が並列されて、隣り合う光ファイバ心線3同士が、磁性部10で吸着されて一体化されたものである。図示した例では、それぞれの隣り合う光ファイバ心線3同士の間において、光ファイバ心線3の長手方向に対する磁性体配合部9aの長さとピッチは略同一である。また、幅方向に隣り合う光ファイバ心線3の磁性体配合部9aの周方向の向きが逆向きとなる。
【0049】
すなわち、光ファイバ心線3a、3b間の磁性部10(磁性体配合部9a)の対向部と、光ファイバ心線3c、3d間の磁性部10の対向部とが、長手方向の略同一の位置に配置され、幅方向に併設される。また、光ファイバ心線3b、3c間の磁性部10の対向部は、光ファイバ心線3a、3b間の磁性部10の対向部に対して長手方向に半ピッチずれた位置に配置される。すなわち、光ファイバ心線3同士の吸着部が、長手方向に対して半ピッチずれた千鳥状に配置される。
【0050】
なお、図示したように、多心光ファイバ心線1の長手方向に対して、いずれの磁性体配合部9aも配置されていない非磁性体配合部が存在してもよい。すなわち、周方向の異なる位置に形成される磁性体配合部9a同士が、長手方向に重なり合わなくてもよい。また、逆に、多心光ファイバ心線1の長手方向に対して、いずれかの磁性体配合部9aが配置されるようにしてもよい。すなわち、周方向の異なる位置に形成される磁性体配合部9a同士が、長手方向に重なり合うようにしてもよい。
【0051】
なお、全ての隣り合う光ファイバ心線3同士の磁性体配合部9aが間欠的に配置されなくてもよい。例えば、光ファイバ心線3a、3b間は、全長にわたって磁性部10が形成され、長手方向に連続して吸着され、光ファイバ心線3b、3c間と、光ファイバ心線3c、3d間のみが長手方向に間欠的に配置された磁性体配合部9aによって吸着してもよい。また、例えば、光ファイバ心線3a、3b間のみが接着剤によって一部又は全長が接着されていてもよい。すなわち、多心光ファイバ心線1cは、光ファイバ心線3の長手方向の少なくとも一部において被覆層9に磁化された磁性体が含まれており、隣り合う光ファイバ心線3同士が、磁性体同士の吸着によって連結されていればよい。
【0052】
なお、光ファイバ心線3の周方向の一部に磁性体配合部9aを形成する際には、図11に示す塗布装置21cを用いればよい。塗布装置21cは筒状であって、周方向に分割された複数のダイス22a、22bで構成される。光ファイバ素線7を、塗布装置21cを通過させる際に、一方のダイス22aから磁性体を含む樹脂を光ファイバ素線7の外周に被覆するとともに、他方のダイス22bから磁性体を含まない樹脂を光ファイバ素線7の外周に被覆して全周にわたって被覆層9を形成する。このように、周方向に複数のダイスを配置して、その一部のダイスのみから磁性体を含む樹脂を被覆することで、周方向の一部にのみ磁性体配合部9aを形成することができる。
【0053】
例えば、塗布装置21c、塗布装置21、塗布装置21cと直列に配置し、塗布装置21cと塗布装置21とを交互に運転させる。まず、塗布装置21によって光ファイバ素線7の外周の全周に磁性体を含まない樹脂を被覆し、次に、一方の塗布装置21cによって、周方向の一部に磁性体を配合した樹脂を被覆する。次に、再度、塗布装置21によって光ファイバ素線7の外周の全周に磁性体を含まない樹脂を被覆し、次に、他方の塗布装置21cによって、周方向の一部に磁性体を配合した樹脂を被覆する。以上を繰り返すことで、長手方向に対して間欠的に、周方向の一部にのみ磁性体配合部9aを形成することができる。
【0054】
この際、一方の塗布装置21cと他方の塗布装置21cとで、ダイス22a、22bの配置を逆にすることで、磁性体配合部9aを長手方向に間欠に配置するとともに、長手方向に対して磁性体配合部9aの周方向の配置を反転させることができる。なお、周方向に複数個所の磁性体配合部9aを設けてもよい。
【0055】
次に、多心光ファイバ心線1を用いた光ファイバケーブルについて説明する。図12は、多心光ファイバ心線1を用いた光ファイバケーブル30を示す概略図である。複数の多心光ファイバ心線1が撚り合わせられて、光ファイバユニット35が形成される。また、さらに複数の光ファイバユニット35が撚り合わせられてコアが形成され、外周に押さえ巻き37が縦添え巻きで巻き付けられる。
【0056】
押さえ巻き37の外周には、一対の引き裂き紐31がコアを挟んで対向する位置に配置される。また、押さえ巻き37の外部であって、引き裂き紐31の対向位置とは異なる位置に、一対のテンションメンバ39がコアを挟んで対向する位置に配置される。押さえ巻きの外周であって、引き裂き紐31及びテンションメンバ39を一括して被覆するように外被33が形成される。なお、光ファイバケーブルの断面形態や、光ファイバ心線の心数は図示した例には限られない。
【0057】
光ファイバケーブル30においては、多心光ファイバ心線1は、全て消磁されていてもよい。すなわち、それぞれの光ファイバ心線3が自由に移動可能としてもよい。この場合には、例えば、多心光ファイバ心線1を集合させる際に、着磁・消磁装置25によってそれぞれの多心光ファイバ心線1を消磁すればよい。また、光ファイバケーブル30においては、多心光ファイバ心線1は、長手方向の少なくとも一部が着磁されていてもよい。この場合には、例えば、多心光ファイバ心線1を集合させる際に、着磁・消磁装置25によって多心光ファイバ心線1の全長の一部又は全長を着磁すればよい。
【0058】
以上、本実施形態によれば、光ファイバ心線3の被覆層9に磁性体が含まれているため、磁性体を着磁することで、光ファイバ心線3同士を互いに吸着させることができる。このため、光ファイバ心線3同士がばらけることを抑制することができる。この際、接着剤等を使用する必要が無く、また、分離する際に、接着剤を除去する必要がない。
【0059】
また、光ファイバ心線3同士を吸着させて集合させた状態でも、光ファイバ心線3は、互いに吸着された状態で自由に移動することができる。このため、折りたたまれた状態や、一列に整列した状態など、自由に集合形態を変えることができる。
【0060】
また、光ファイバホルダ11に光ファイバ心線3を保持させる際にも、磁石17が配置されているため、光ファイバ心線3の浮き上がり等が抑制され、光ファイバ心線3同士を確実に整列させることができる。この際、光ファイバ心線3の先端部近傍が着磁されていれば、より強い力で吸着させることができる。また、磁石17を取り外すことで、光ファイバ心線3を本体部13から取り外すのが容易となる。
【0061】
また、光ファイバ心線3は、必要のない場合には磁性体を消磁することで、通常の光ファイバ心線と同様に取り扱うことができる。
【0062】
また、光ファイバ心線3の長手方向に対して、磁性体を間欠的に配置することで、光ファイバ心線3の全長ではなく間欠的に磁性部10を容易に形成することができる。このため、光ファイバ心線3の長手方向に対して、間欠的に非磁性部を形成することができる。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1、1a、1b、1c………多心光ファイバ心線
3、3a~3d………光ファイバ心線
7………光ファイバ素線
9………被覆層
9a………磁性体配合部
10……磁性部
11………光ファイバホルダ
13………本体部
15………蓋部
17………磁石
19………溝
19a………V溝
21、21a、21b、21c………塗布装置
22a、22b………ダイス
23………硬化装置
25………着磁・消磁装置
30………光ファイバケーブル
31………引き裂き紐
33………外被
35………光ファイバユニット
37………押さえ巻き
39………テンションメンバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12