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特開2024-115066画像処理装置、二値化方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115066
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】画像処理装置、二値化方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/403 20060101AFI20240819BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H04N1/403
H04N1/407 740
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020529
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】宮城 徳子
【テーマコード(参考)】
5C077
【Fターム(参考)】
5C077MP01
5C077PP27
5C077PP68
5C077PQ19
5C077RR02
5C077RR06
5C077TT01
(57)【要約】
【課題】白抜けを抑制して多値画像を二値化する技術を提供すること。
【解決手段】本発明は、階調数Mの入力画像の画素値に基づきN-1個(M>N>2)の第1閾値を算出する閾値算出部と、N-1個の第1閾値と前記入力画像の画素値を比較して、前記入力画像からN値化画像を生成するN値化部と、前記入力画像の局所領域ごとの画素値及び前記N値化画像の局所領域ごとの階調値に基づき、前記入力画像を二値化した二値化画像を生成する二値化部と、を有することを特徴とする画像処理装置を提供する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
階調数Mの入力画像の画素値に基づきN-1個(M>N>2)の第1閾値を算出する閾値算出部と、
N-1個の第1閾値と前記入力画像の画素値を比較して、前記入力画像からN値化画像を生成するN値化部と、
前記入力画像の局所領域ごとの画素値及び前記N値化画像の局所領域ごとの階調値に基づき、前記入力画像を二値化した二値化画像を生成する二値化部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記N値化画像において、注目画素を中心とした局所領域内の注目画素の階調値と同じ画素値のカウント結果が第2閾値以下であり、かつ、前記局所領域内に二種類のみの階調値があるという第1条件を満たす場合、
前記二値化部は、前記N値化画像の注目画素を、注目画素の階調値とは異なるもう一つの階調値に応じて二値化する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において所定の強度以上のエッジがあるという第2条件を満たす場合、
前記二値化部は、適応二値化により前記入力画像を二値化する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記N値化画像において注目画素の階調値が第2の所定値であるという第3条件を満たす場合、
前記二値化部は、適応二値化により前記入力画像を二値化する請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記N値化画像において、注目画素を中心とした局所領域内の注目画素の階調値と同じ画素値のカウント結果が第2閾値以下 であり、かつ、前記局所領域内に二種類のみの階調値があるという第1条件を満たさず、
前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において所定の強度以上のエッジがあるという第2条件を満たさず、
前記N値化画像において注目画素の階調値が第2の所定値であるという第3条件を満たさない場合、
前記二値化部は、前記N値化画像の注目画素を前記局所領域内の階調値に対して一意に決まる値に二値化することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において所定の強度以上のエッジがあるという第2条件を満たさない場合、前記入力画像の局所領域内の濃度変化が所定より緩やかであると判断し、
更に、前記N値化画像において注目画素の階調値が第2の所定値であるという第3条件を満たさない場合、
前記二値化部は、前記N値化画像の注目画素を前記局所領域内の階調値に対して一意に決まる値に二値化することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において所定の強度以上のエッジがあるという第2条件を満たす場合、前記局所領域内にエッジが存在していると判断し、
前記二値化部は、前記入力画像の前記局所領域に適応二値化を行うことで、前記入力画像を二値化することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記閾値算出部は、階調値のヒストグラムを作成して前記ヒストグラムの極小値付近の値を前記第1閾値として検出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記閾値算出部は、前記ヒストグラムの参照範囲を変えて判別分析法を適用することにより複数の前記第1閾値を算出することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記N値化画像において、注目画素を中心とした局所領域内の注目画素の階調値と同じ階調値のカウント結果が第2閾値以下であり、かつ、前記局所領域内に二種類のみの階調値があるという第1条件を満たす場合、
前記二値化部は、注目画素を、注目画素の階調値とは異なるもう一つの階調値に応じて二値化し、
前記第1条件を満たさず、前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において注目画素を中心とした局所領域の平均値と最小値の差分の絶対値が第3閾値以上であるという第2条件を満たす場合、
前記二値化部は、適応二値化により前記入力画像を二値化し、
前記第2条件を満たさず、前記N値化画像において注目画素の階調値が第2の所定値であるという第3条件を満たす場合、
前記二値化部は、適応二値化により前記入力画像を二値化し、
前記第1条件、前記第2条件、及び、前記第3条件を満たさない場合、
前記二値化部は、注目画素の画素値を前記局所領域内の階調値に対して一意に決まる値に二値化することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
画像処理装置が行う二値化方法であって、
階調数Mの入力画像の画素値に基づきN-1個(M>N>2)の第1閾値を算出する処理と、
N-1個の第1閾値と前記入力画像の画素値を比較して、前記入力画像からN値化画像を生成する処理と、
前記入力画像の局所領域ごとの画素値及び前記N値化画像の局所領域ごとの階調値に基づき、前記入力画像を二値化した二値化画像を生成する処理と、
を実行する二値化方法。
【請求項12】
情報処理装置を、
階調数Mの入力画像の画素値に基づきN-1個(M>N>2)の第1閾値を算出する閾値算出部と、
N-1個の第1閾値と前記入力画像の画素値を比較して、前記入力画像からN値化画像を生成するN値化部と、
前記入力画像の局所領域ごとの画素値及び前記N値化画像の局所領域ごとの階調値に基づき、前記入力画像を二値化した二値化画像を生成する二値化部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、二値化方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置がスキャナ機能で読み取った画像データが多値画像の場合がある。多値画像とは白黒画像のように使える画素値が1と0の2つだけでなく、グレースケール画像やカラー画像のように、3階調以上の画素値を有する画像である。多値画像は表すことができる階調が豊かである反面、グレーの背景に文字などが埋もれてしまい、ユーザーが読みにくい場合やOCR(Optical Character Recognition/Reader)処理の精度が低下する場合がある。
【0003】
多値画像を二値化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、各画素の輝度を基に文字領域を抽出し、階調数がm(m≧3、かつ、m<n)であるm値化画像に変換し、m値化画像の各画素が各階調に対して所定個数存在するか否かに応じて、文字領域を二値化するための閾値を決定する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、二値化した場合に白抜けが発生するおそれがある。従来の技術では、文字領域を抽出して、文字領域のみm値化画像に変換してから二値化する手順を踏み、文字領域として抽出されなかった領域は原稿の地肌部分として「0」を割り当て、当該領域と、二値化された文字領域とを合成する。したがって、太文字や白抜き文字は、文字エッジ近傍のみ「1」となり太文字の文字内部や白抜き文字の文字エッジから離れた背景部分は「0」となった縁取り文字のような状態で再現される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、白抜けを抑制して多値画像を二値化する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、階調数Mの入力画像の画素値に基づきN-1個(M>N>2)の閾値を算出する閾値算出部と、N-1個の閾値と前記入力画像の画素値を比較して、前記入力画像からN値化画像を生成するN値化部と、前記入力画像の局所領域ごとの画素値及び前記N値化画像の局所領域ごとの階調値に基づき、前記入力画像を二値化した二値化画像を生成する二値化部と、を有することを特徴とする画像処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
白抜けを抑制して多値画像を二値化する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】大局二値化と適応二値化の処理結果を比較して説明する図である。
図2】二値化処理を行う装置の一例である画像処理装置又は画像処理システムを示す図である。
図3】画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】入力画像から二値化画像(白黒画像)を生成するまでの画像処理を行う一例の機能ブロック図である。
図5】閾値算出部の機能を説明する一例の機能ブロック図である。
図6】ヒストグラム作成部が作成した一例のヒストグラムを示す図である。
図7】判別分析部が3つの閾値t0,t1,t2を決定する処理を説明する一例のフローチャート図である。
図8】二値化部の機能を説明する一例の機能ブロック図である。
図9】注目画素と局所領域を説明する図である。
図10】出力部が二値化を行う処理を説明する一例のフローチャート図である。
図11】条件1を説明する図である。
図12】四値化画像の一例を示す図である。
図13図12の四値化画像が既存の技術により二値化された一例の二値化画像を示す図である。
図14図12の四値化画像が本実施形態の二値化処理により二値化された一例の二値化画像を示す図である。
図15】(a)は四値化画像の一例を示し、(b)(c)は適応二値化による二値化画像を示し、(d)は本実施形態の二値化方式による二値化画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、画像処理装置と画像処理装置が行う二値化方法について図面を参照しながら説明する。
【0010】
<二値化の種類>
まず、簡単に二値化の種類について説明する。二値化には大局二値化と適応二値化がある。
・大局的二値化とは、画像全体を同一の閾値で二値化する処理である。大局的二値化の中でも、固定閾値を使う方法(単純二値化)と、画像に応じて画像全体特徴から算出される値を閾値として使う方法(代表的なのが判別分析法による二値化)がある。
・適応二値化とは、局所領域の平均値+オフセット値を閾値として二値化する処理であり、局所領域ごとに異なる閾値で二値化する処理である。オフセット値は定数(例えば256階調の場合、5~20など)でもよいし、平均値に対する比率(例えば10%など)で決定されてもよい。
【0011】
適応二値化は、薄文字や濃い背景上の文字を潰さずに二値化できるメリットがあるが、画像内で閾値が切り替わることにより入力画像には存在しない白抜けなどのデフェクト(欠陥)が発生するデメリットがある。
【0012】
このため、多値画像から二値化画像への変換では、濃い下地上の文字の周囲に黒画素が残ってしまう、又は、濃度が均一な背景内で二値化処理の切り替えが発生して切り替え箇所が目立つ違和感の大きい画像になってしまう不都合があった。
【0013】
図1は、単純二値化と適応二値化の処理結果を比較して説明する図である。図1(a)は入力画像(多値画像)を示す。入力画像110には、濃い下地の上に文字が記載された領域111が含まれる。ここでは単純二値化で説明するが、単純二値化の問題点は、程度は違っても、大局的二値化に共通する問題点である。
【0014】
図1(b)は、領域111を単純二値化した処理結果112を示す。単純二値化では背景と文字がどちらも黒になることで生じる文字潰れが生じている。図1(c)は、領域111を適応二値化した処理結果113を示す。適応二値化では、文字潰れは生じていない。しかし、処理結果113でも、背景に黒画素(グレー)が残っており、文字が見にくい。
【0015】
図1(c)ような背景の黒画素も、適応二値化のオフセット値の設定次第で、白画素にすることは可能である。しかし、図1(d)に示すような特定の入力画像に対しては、違和感がある処理結果となる。図1(d)の入力画像120は、文字領域が文字領域より広いグレー領域で覆われている。この入力画像120が適応二値化された場合を図1(e)(f)に示す。背景のグレー領域が白になるようにオフセット値を設定すると、図1(e)に示すように、黒画素の密度が高い込み入った文字が途切れて判読性が悪くなる。逆に判読性を上げる方向にオフセット値を設定すると、図1(f)に示すように、濃度が均一な背景内で適応的に閾値が切り替わることにより白抜けが派生して違和感の大きい二値化画像になる。
【0016】
<本実施形態の二値化処理の概略>
そこで、本実施形態の画像処理装置は、多値の入力画像の二値化に際して、
A.「階調数Mの入力画像の全体特徴に基づきN-1個(M>N>2)の閾値を算出し、N-1個の閾値を入力画像に適用することで入力画像全体をN値化したN値化画像を生成し、
B.「そして、画像処理装置は、入力画像の局所領域ごとの特徴及びN値化画像の局所領域ごとの特徴に基づき入力画像全体を二値化した二値化画像を生成する。」
Bにより薄文字や濃い背景上文字を再現することができ、かつ、Aにより不自然なノイズや白抜けがないN値化画像を生成してその結果がBにも反映されるので最終出力である二値化画像でもノイズや白抜けが少ない二値化画像を生成することができる。
【0017】
すなわち、本実施形態の二値化方法は、薄文字や濃い背景上文字を再現することと、ノイズや白抜けの発生を減らすことを、両立することができる。
【0018】
なお、本実施形態では、主に、M=256、N=4として説明するが、N=8等にすることで更に白抜け等が発生しにくい二値化が可能である。
【0019】
<用語について>
二値化とは、多階調の画像を白と黒の2色(0,1)に変換する処理をいう。2色であれば、0,1は白と黒でなく別の色に割り当てられてもよい。
【0020】
階調数Mとは、入力画像の階調数であり、本実施形態では、256階調を例として説明する。
【0021】
N-1個は、N値化画像を作成するため、Nより1つ小さい閾値の数である。本実施形態では、一例として、N値化画像は四値化画像である。
【0022】
局所領域とは、二値化処理される対象の注目画素を中心とする所定数の画素を含む領域である。本実施形態では、局所領域は例えば7×7画素の領域である。
【0023】
<構成例>
図2は、二値化処理を行う装置の一例である画像処理装置20又は画像処理システム100を示す。図2(a)の画像処理装置20は、ユーザーが使用する、例えば、複合機やMFP(Multifunction Peripheral)と呼ばれる、複数の異なる機能を併せ持った装置である。画像処理装置20は、少なくともスキャナ機能を有している。スキャナとは、通信や記録のために画像や文書などをデジタル静止画像に変換する装置又は機能である。本実施形態では、デジタル静止画像はカラーでもモノクロでもよいが、二値よりも高階調の多値画像を生成できる。デジタル静止画像は、動画のスナップショットでもよい。
【0024】
画像処理装置20は、スキャナ機能の他、フアクス機能、プリント機能、及び、コピー機能等を有していてよい。画像処理装置20は、画像形成装置、印刷装置、プリンタ、又はスキャナ装置等と呼ばれてもよい。
【0025】
図2(a)の画像処理装置20は、単体で、原稿画像をスキャンして多階調の入力画像を生成し、入力画像に対し二値化処理を行うことができる。二値化処理は一例としてOCRの前処理として行われるが、OCRとは関係なく二値化処理が行われてよい。
【0026】
一方、図2(b)に示すように、入力画像の生成と本実施形態の二値化処理を異なる装置がそれぞれ行ってもよい。図2(b)は、情報処理装置40が、二値化処理を行う画像処理システム100の一例である。この画像処理システム100は、情報処理装置40と、画像処理装置20と、を有する。情報処理装置40と画像処理装置20は、施設内のLANやWi-Fi(登録商標)、又は、USBケーブルなどで通信可能に接続されている。
【0027】
ユーザーが原稿を画像処理装置20にセットしてスキャンを実行すると、画像処理装置20が多階調の入力画像を、ネットワークNを介して情報処理装置40に送信する。情報処理装置40は、画像処理装置20が原稿をスキャンして生成した多階調の入力画像を受信し、入力画像に対し二値化処理を行うことができる。
【0028】
また、図2(c)に示すように、二値化処理はワークフロー処理の一部として実行されてもよい。ワークフローとは、複数の処理(例えば、スキャン、クラウドへの保存、又はメール送信等)を組み合わせて実行する一連の処理である。例えば、機器が原稿を読み取って生成した画像データに情報処理システム60が所定の処理を行った上で、クラウドに保存したりメール送信したりするサービスが知られている。
【0029】
図2(c)は、ワークフローを実行する画像処理システム100を示す。画像処理システム100は、情報処理システム60と、画像処理装置20と、を有する。情報処理装置40は、画像処理システム100に含まれていてもいなくてもよい。情報処理システム60と画像処理装置20は、インターネット等の広域的なネットワークN1を介して通信可能に接続されている。画像処理装置20は、企業などの施設に配置されており、施設に敷設されているネットワークN2に接続されている。ネットワークN2は、LAN、Wi-Fi(登録商標)、広域イーサネット(登録商標)、又は、4G、5G、6G等の携帯電話網、などでよい。
【0030】
情報処理システム60は、一台以上のコンピュータで実現されてよい。情報処理システム60は、クラウドコンピューティングにより実現されてもよいし、単一の情報処理装置によって実現されてもよい。クラウドコンピューティングとは、特定ハードウェア資源が意識されずにネットワーク上のリソースが利用される形態をいう。情報処理システム60は、インターネット上に存在しても、オンプレミスに存在してもよい。
【0031】
画像処理装置20と情報処理システム60は、Webアプリを実行してよい。Webアプリとは、Webブラウザ上で動作するプログラミング言語(例えばJavaScript(登録商標))によるプログラムとWebサーバー側のプログラムが協調することによって動作するアプリケーションである。これに対し、画像処理装置20にインストールされなければ実行されないアプリケーションをネイティブアプリという。本実施形態に関しても、画像処理装置20で実行されるアプリケーションはWebアプリでもネイティブアプリでもよい。
【0032】
情報処理システム60は、Webアプリの画面を画像処理装置20が表示するための画面情報を生成する。画面情報は、HTML、XML、スクリプト言語、及びCSS(Cascading Style Sheet)等で記述されたプログラムであり、主にHTMLによりWebページの構造が特定され、スクリプト言語によりWebページの動作が規定され、CSSによりWebページのスタイルが特定される。
【0033】
図2(c)の形態では、画像処理装置20がスキャナ機能により入力画像を生成し、二値化処理を行い、ネットワークN1,N2を介して情報処理システム60に送信する。情報処理システム60は例えばOCR処理を行って、メール送信したりクラウドに保存したりする。
【0034】
あるいは、二値化処理を情報処理システム60が行ってもよい。画像処理装置20がスキャナ機能により入力画像を生成し、ネットワークN1,N2を介して入力画像を情報処理システム60に送信する。情報処理システム60は、受信した入力画像に対し二値化処理を行い、以降のワークフローを実行する。
【0035】
情報処理装置40は、ワークフローの実行を受け付けることもできるが、ユーザーがワークフローに関する設定(ライセンスの割り当て、初期設定など)を行うために使用されてよい。
【0036】
また、図2(b)の情報処理装置40や図2(c)の情報処理システム60が二値化処理を行う入力画像は、画像処理装置20がスキャンしたものでなくてよい。例えば、画像処理装置20はデジタルカメラやスマートフォンでもよく、これらが文書等を撮像して生成した入力画像に対し、情報処理装置40や情報処理システム60が二値化処理を行ってもよい。また、ネットワーク上の任意の画像に対し、情報処理装置40や情報処理システム60が二値化処理を行うことができる。
【0037】
なお、以下の説明では、特に言及しない場合、図2(a)の画像処理装置20が二値化処理を行うものとして説明する。
【0038】
<ハードウェア構成例>
図3は、本発明の実施形態に係る画像処理装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。図3に示すように、画像処理装置20は、コントローラ910、近距離通信回路920、エンジン制御部930、操作パネル940、ネットワークI/F950を備えている。ここで、画像処理装置20は、画像形成装置、MFP、Multifunction Peripheral/Product/Printerであってもよい。
【0039】
これらのうち、コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU901、システムメモリ(MEM-P)902、ノースブリッジ(NB)903、サウスブリッジ(SB)904、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906、ローカルメモリ(MEM-C)907、HDDコントローラ908、及び、HD909を有し、NB903とASIC906との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続した構成となっている。
【0040】
これらのうち、CPU901は、画像処理装置20の全体を制御する。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904、及びAGPバス921とを接続するためのブリッジであり、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを有する。
【0041】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM902a、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いるRAM902bとからなる。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0042】
SB904は、NB903とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDDコントローラ908及びMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC906は、PCIターゲット及びAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部931、プリンタ部932、及びファクス部933との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。なお、ASIC906には、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースが接続されていてもよい。
【0043】
近距離通信回路920は、ICカードなどに記憶されたユーザーの認証情報などを読込むためのカードリーダ920aを有する。
【0044】
操作パネル940は、ユーザーによる入力を受け付けるタッチパネル940aとテンキー940bを有する。また、タッチパネル940aは、画像処理装置20の設定画面などを表示する。
【0045】
<機能について>
次に、図4を参照して、画像処理装置20の二値化機能について詳細に説明する。図4は、入力画像から二値化画像(白黒画像)を生成するまでの画像処理を行う機能ブロック図である。なお、入力画像は、RGB画像であり、各色8bitの256階調とするが、各色10bitなどより高階調でもよいし、低階調でもよい。
【0046】
画像処理装置20は、平滑化部11、グレー処理部12、及び、多値画像処理部13を有している。また、多値画像処理部13は、閾値算出部14、N値化部15、及び二値化部16を有している。画像処理装置20が有するこれら各機能部は、画像処理装置20にインストールされた1以上のプログラムに含まれる命令をCPU901が実行することで実現される機能又は手段である。あるいは、各機能部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)やハード的な回路モジュール等により実現されてもよい。
【0047】
平滑化部11は、空間フィルタにより入力画像を平滑化する。平滑化フィルタとしては、平均化フィルタ、ガウシアンフィルタ、メディアンフィルタ、最大値フィルタ、及び最小値フィルタ等があるが、これらが適宜、使い分けて使用されてよい。平滑化により、ノイズの影響を軽減するのと、網点ドットが二値化後に黒でポツポツと残るのを減らす効果がある。
【0048】
グレー処理部12は、RGBから輝度への変換式を使って、入力画像(RGB画像)を、グレー画像(8bit,256階調)に変換する。グレー処理部12は、例えばJPEGで用いられているYCbCrのY信号への変換式を使ってグレー画像に変換する。輝度Yは0が黒に対応し255が白に対応するので、グレー処理部12は、白黒を反転して0が白に対応し255が黒に対応する画像信号に変換する。この処理は後の処理の便宜上のためである。
【0049】
多値画像処理部13は、グレー化後の8bit,256階調のグレー画像を1bit,2階調の白黒画像に変換して出力する。本実施形態では0が白で1が黒の白黒画像に変換するものとして説明するが、前段(グレー処理部12)で白黒反転しない場合は以降の説明は全てデータ論理が逆になる。
【0050】
閾値算出部14は、入力画像の画像全体特徴から3つの閾値(四値化画像の場合、N=4なのでN-1=3となる)を算出する。閾値の算出方法については後述する。
【0051】
N値化部15は、閾値算出部14が算出した3つの閾値を適用して各画素値を256階調から4階調(四値化画像)に変換する。
【0052】
二値化部16は、グレー画像の局所領域の特徴と四値化画像の局所領域の特徴に基づき、注目画素の二値化結果を0又は1に変換して出力する。二値化部16は同じ処理を、グレー画像又は四値化画像の注目画素の位置を1画素ずつずらして繰り返し行う。
【0053】
<<閾値の算出>>
次に、図5図7を参照して、閾値算出部14が行う閾値の算出方法を説明する。図5は、閾値算出部14の機能を説明する機能ブロック図である。閾値算出部14は、ヒストグラム作成部21と判別分析部22とを有している。
【0054】
ヒストグラム作成部21は、入力画像の階調ごとの度数(ヒストグラム)を作成する。ヒストグラムの一例を図6に示す。ヒストグラムを作成することで、判別分析部22が3つの閾値を算出しやすくなる。判別分析部22は、ヒストグラムに対し所定の処理を行うことで3つの閾値を算出する。詳細を図7にて説明する。
【0055】
図6は、ヒストグラム作成部21が作成したヒストグラムの一例である。図6に示すように、画素値(0~256)が横軸、度数(画素値ごとの画素数)が縦軸である。判別分析部22は、ヒストグラムの極小値又は極小値付近の値を閾値として検出しやすいので、N値化部15が類似する画素値を同じ階調値に四値化しやすくなる。図6では、判別分析部22が決定した閾値t0,t1,t2(第1閾値の一例)が示されている。
【0056】
図7は、判別分析部22が3つの閾値t0,t1,t2を決定する処理を説明するフローチャート図である。図7は、図5に示した判別分析部22のループ処理を表している。判別分析部22は3つの閾値を算出する判別分析法を、ヒストグラムの参照範囲を変えて3回行う。
【0057】
判別分析法(Discriminant Analysis Method)は、分離度という値が最大となる閾値を求める手法である。分離度はクラス間分散とクラス内分散を使って計算する。判別分析法については後述する。
【0058】
まず、判別分析部22は、1回目のループで、階調値[0,255]の範囲内すなわちヒストグラム全体で判別分析法を適用して閾値t1を算出する(S1)。
【0059】
2回目のループでは、判別分析部22は、階調値[0,t1-1]の範囲内すなわち白側の部分ヒストグラムで判別分析法を適用して閾値t0を算出する(S2)。
【0060】
3回目のループでは、判別分析部22は、階調値[t1,255]の範囲内すなわち黒側の部分ヒストグラムで判別分析法を適用して閾値t2を算出する(S3)。
【0061】
<<判別分析法>>
判別分析法について説明する。判別分析部22が、閾値tを0≦t≦255から求めるとする。0≦tの範囲を白クラスとし、画素数をω1、平均をm1、分散をδ1とする。同様にt≦255の範囲を黒クラスとし、画素数をω2、平均をm2、分散をδ2とする。そして、全画像の画素数をωt、平均をmt、分散をδtとする。
【0062】
クラス内分散は、式(1)により定義される。
【数1】
クラス間分散は、式(2)により定義される。
【数2】
全分散は、式(3)により定義される。
【数3】
分離度は、式(4)により定義される。
【数4】
閾値算出部14は、式(4)が最大になる閾値tを求めればよい。しかし全分散は閾値に関係なく一定なので、実質的に式(5)が最大になる閾値を求める。
【数5】
【0063】
<四値化>
次に、四値化処理について説明する。N値化部15は閾値t0,t1,t2を使用して、以下のように、256階調のグレー画像を四値化する。
(i) N値化部15は、グレー画像上で注目画素の画素値が[0,t0-1]の範囲内の場合は、注目画素の四値化後の階調値を0に変換する。
(ii) N値化部15は、グレー画像上で注目画素の画素値が[t0,t1-1]の範囲内の場合は、注目画素の四値化後の階調値を1に変換する。
(iii) N値化部15は、グレー画像上で注目画素の画素値が[t1,t2-1]の範囲内の場合は、注目画素の四値化後の階調値を2に変換する。
(iv) N値化部15は、グレー画像上で注目画素の画素値が[t2,255]の範囲内の場合は、注目画素の四値化後の階調値を3に変換する。
【0064】
ここでは判別分析法で算出した閾値をそのまま適用するものとして説明するが、N値化部15は、一般的によく行われるように、閾値t0~t2に定数で与えたオフセット値を加算してから四値化してもよい。
【0065】
<二値化>
次に、図8図11を参照して二値化処理について説明する。図8は、二値化部16の機能を説明する機能ブロック図である。二値化部16は、平均値算出部31、最小値算出部32、画素数カウント部33、及び、出力部34を有している。平均値算出部31と最小値算出部32には256階調のグレー画像が入力される。画素数カウント部33には4階調の四値化画像が入力される。
【0066】
図9は、注目画素と局所領域を説明する図である。本実施形態では、注目画素を中心とする7×7の画素を局所領域とする。局所領域を7×7としたのは一例であり、局所領域はより小さくてもより大きくてもよい。
【0067】
平均値算出部31は、256階調のグレー画像の局所領域(7×7画素)を参照して、49画素の平均値を算出する。
【0068】
最小値算出部32は、入力画像の局所領域(7×7画素)を参照して、49画素の最小値を求める。平均値と最小値は、その差によりエッジの有無の判断に使用される。エッジとは、画像中の明るい部分(白)と暗い部分(黒)の境界をいう。
【0069】
画素数カウント部33は、4階調の入力画像の局所領域(7×7画素)を参照して、0,1,2,3の階調ごとの画素数をカウントする。階調値0の画素数をcnt0、階調値1の画素数をcnt1、階調値2の画素数をcnt2、階調値3の画素数をcnt3とする。
【0070】
図10図15は、二値化の流れと条件1~3を説明する図である。条件1~3は、グレー画像の注目画素を0に変換するか、1に変換するかを判断するための条件である。条件1~3について詳細は後述する。
【0071】
図10は、出力部34が二値化を行う処理を説明するフローチャート図である。出力部34は、条件1(第1条件の一例)が成立するか否か判断する(S11)。
【0072】
ステップS11の判断がYesの場合、出力部34は、二値化方式1による二値化を実施する(S12)。二値化方式1については後述する。
【0073】
ステップS11の判断がNoの場合、出力部34は、条件2(第2条件の一例)が成立するか否か判断する(S13)。
【0074】
ステップS13の判断がYesの場合、出力部34は、二値化方式2による二値化を実施する(S14)。二値化方式2については後述する。
【0075】
ステップS13の判断がNoの場合、出力部34は、条件3(第3条件の一例)が成立するか否か判断する(S15)。
【0076】
ステップS15の判断がYesの場合、出力部34は、二値化方式3による二値化を実施する(S16)。二値化方式3については後述する。
【0077】
ステップS15の判断がNoの場合、出力部34は、二値化方式4による二値化を実施する(S17)。二値化方式4については後述する。
【0078】
なお、図10では、条件2の後に条件3が判断されているが、条件2よりも先に条件3が判断されてもよい。
【0079】
<条件1について>
図11は、条件1を説明する図である。
・条件1は、四値化画像において注目画素の階調値と同じ階調値のカウント結果が2以下であり、かつ、cnt0,cnt1,cnt2,cnt3のうち1以上の値を持つものが2つ(局所領域内の階調値の種類が二種類しかない)に限られる、ことである。つまり、注目画素のまわり(局所領域内)に同一の階調の画素しかなく、まわりに注目画素と同じ階調値の画素が最大1つしかないことである。よって、この条件1は、孤立点ノイズを検出するための条件である。
【0080】
なお、注目画素の階調値と同じ階調値のカウント結果が2(第2閾値の一例)以下、としたのは一例でありこの閾値は3等でもよい。また、閾値を2としたのは局所領域が49画素の場合であり、局所領域がより広い場合、注目画素の階調値と同じ階調値のカウント結果と比較される閾値も大きくなる。局所領域がより狭い場合、注目画素の階調値と同じ階調値のカウント結果と比較される閾値は小さくなる。
【0081】
図11(a)では、注目画素91(階調値1)と同じ階調値の画素数のカウント結果は2である。また、cnt0=47、cnt1=2、cnt2=0、cnt3=0である。したがって、図11(a)の局所領域は条件1を満たす。
【0082】
図11(b)では、注目画素92(階調値2)と同じの階調値の画素数のカウント結果は1である。また、cnt0=0、cnt1=0、cnt2=1、cnt3=48である。したがって、図11(b)の局所領域は条件1を満たす。
【0083】
条件1を満たす場合、出力部34は二値化方式1による二値化を実施する。二値化方式1は、四値化画像で注目画素と異なるもう一つの階調の値が0又は1ならば注目画素の二値化結果を0とし、2又は3ならば二値化結果を1とする処理である。すなわち、出力部34は、注目画素と周りの階調値が同じになるように四値化画像の注目画素を二値化する。注目画素と同じ階調の画素数は2以下なので、注目画素は局所領域内で多い方の階調値に統一される。これにより、出力部34は、孤立点ノイズを消去できる。
【0084】
図11(c)は、図11(a)の四値化画像が二値化方式1により二値化された二値化画像である。図11(a)において注目画素91と異なるもう一つの階調の値が0なので、図11(c)では注目画素91の二値化結果が0である。なお、図11(c)の局所領域は、注目画素91の1つ下の画素が次回の処理で同様に二値化された状態を示している。
【0085】
図11(d)は、図11(b)の四値化画像が二値化方式1により二値化された二値化画像である。図11(b)において注目画素92と異なるもう一つの階調の値が3なので、図11(d)では、注目画素92の二値化結果が1である。
【0086】
<条件2について>
・条件2は、(i)四値化画像において注目画素の階調値が1(第1の所定値の一例)であり、かつ、(ii)グレー画像における局所領域の平均値と最小値の差分の絶対値が閾値(第3閾値の一例)以上であること、である。なお、この閾値は例えば10などでよいが、閾値は10未満又は10超でもよい。
【0087】
条件2の(i)の条件は注目画素が比較的薄いことを求めているが、単に薄いだけでなく(ii)の条件により黒に変換したくない注目画素を除外するためのものである。条件2の(ii)の条件は、二値化結果として黒で出したくない白背景上にあるノイズ的なもの(平均値と最小値の差分の絶対値が閾値以上(例えば10以上)にならない)を黒で出さないための条件である。このようなノイズ的なものとして、比較的濃度変化が緩やかなエッジが挙げられる。例えばスキャンした紙原稿に折れ線があった場合の折れ線跡が相当する(条件2で除外される)。
【0088】
換言すると、条件2は、ノイズとまでは言えないある程度目立つエッジを黒に変換するための条件である。したがって、条件2により、比較的濃度変化が緩やかなエッジを0に変換でき(ノイズ除去)、ある程度目立つノイズでないエッジを1に変換できる。
【0089】
条件2が成立する場合、出力部34は二値化方式2によりグレー画像を二値化する。二値化方式2は適応二値化である。適応二値化は、平均値+定数で与えるオフセット値を閾値として注目画素を二値化する。なお、二値化方式2の閾値は、ノイズでないエッジを黒に変換するため(例えば、白地上の薄文字の再現性を高めるため)、次述の条件3と比較して比較的小さい値である。
【0090】
<条件3について>
・条件3は、四値化画像において、注目画素の階調値が2(第2の所定値の一例)であること、である。
【0091】
条件3は、例えば、グレー背景上にある本来は白い画素(例えば白地)を0に二値化するための条件である。
【0092】
条件3が成立する場合に、出力部34は、二値化方式3によりグレー画像を二値化する。二値化方式3も適応二値化である。二値化方式3で適用する閾値は、白抜き文字の再現性を高めるため、二値化方式2よりも大きい値に設定される。上記のように、二値化方式2で適用するオフセット値は、白地上の薄文字の再現性(黒に変換したい)を高めるため比較的小さい値に設定される。
【0093】
<条件1~3を満たさない場合>
条件1~3のいずれの条件にも合致しない注目画素の場合は、出力部34は、二値化方式4により二値化する。条件1~3のいずれの条件にも合致しない場合(孤立点ノイズでもなく、ある程度目立つエッジでもなく、グレー背景でもない)の例としては、四値化画像で局所範囲の画素が全て同じ階調値である場合がある。
【0094】
二値化方式4は、四値化画像において注目画素の階調値が0又は1ならば二値化結果を0とし、2又は3ならば二値化結果を1とする。この処理は、注目画素の画素値を局所領域内の階調値に対して一意に決まる値に二値化することに相当する。すなわち条件1~3に合致しない注目画素は、強制的に1又は0に変換される。二値化方式4は、判別分析法で算出した閾値t1でグレー画像を二値化するのと同じ二値化画像を生成する。
【0095】
<条件2や条件3に応じた二値化の効果>
図12は、四値化画像の一例を示し、図13図12の四値化画像が既存の技術により二値化された二値化画像を示す。図12のような四値化画像の場合、既存の二値化技術である判別分析法のみで二値化を行う(即ち全画素を閾値t1で二値化する)と図13の二値化画像になる。図13の二値化結果は、以下のような欠陥がある。
図12(a)の薄い部分130が白画素に二値化され、図13(a)に示すように文字(数字の「60」)が不明瞭になる。
図12(b)は文字全体が薄いので、図13(b)に示すように、二値化されると文字全体が白画素になる(文字が削除される)。
図12(c)(d)は背景が濃いので、図13(c)(d)に示すように、二値化されると全体が黒画素になる。
【0096】
これに対し、図14は、図12の四値化画像が本実施形態の二値化方法により二値化された二値化画像を示す。まず、図14(a)で図12(a)の薄い部分130がしっかり黒で再現されるのは条件2に応じた二値化の効果である。すなわち、図12(a)の四値化画像で注目画素の階調値が1の画素(薄い部分130)は、黒画素が周囲にあるため条件2を満たす。二値化方式2の閾値は比較的低いので、注目画素の階調値が1の画素は二値化処理で1(黒)になる。
【0097】
図14(b)についても同様に、薄い文字(階調値が1)がしっかり黒で再現されるのは条件2に応じた二値化の効果である。図12(b)の四値化画像で注目画素の階調値が1の画素(数字の60に対応する画素)は、背景の白地が周囲にあるため条件2を満たす。二値化方式2の閾値は比較的低いので、注目画素の階調値が1の画素は二値化処理で1(黒)になる。
【0098】
図14(c)で文字が潰れないで再現されるのは条件3に応じた二値化の効果である。すなわち、図12(c)の四値化画像で注目画素の階調値が2の画素(文字の背景)は、条件3を満たす。二値化方式3の閾値は比較的高いので、注目画素である階調値が2の画素は二値化処理で0(白)になる。なお、図12(c)の四値化画像で注目画素の階調値が2のみの画素(例えばコーナー131付近の画素)は図13(c)と同様に適応二値化で黒になる。
【0099】
図14(c)は濃い背景上の文字の二値化例であり、二値化画像が、白の縁取り文字のような二値化画像になるので白抜けが発生したと言える。しかし、二値化処理において濃い背景上の文字は少なく頻度として稀である。また、当然ながら、図13(c)のように潰れて読めなくなってしまうよりは判読性の意味で断然良い。
【0100】
図14(d)で文字が潰れないで再現されるのは条件3に応じた二値化の効果である。すなわち、図12(d)の四値化画像で注目画素の階調値が2の画素は、条件3を満たす。二値化方式3の閾値は比較的高いので、注目画素の階調値が2の画素は二値化処理で0(白)になる。四値化画像で注目画素の階調値が3の画素(数字の60の背景)は条件1~3に合致しないので二値化方式4で黒になる。
【0101】
なお、本実施例ではN値化をN=4の四値化で説明しているが、例えばN=8とした場合は図10で条件が増えて条件分岐が増えることになる。それにより、条件及び条件に応じた二値化処理を適切なものにできれば、図14(c)を図14(a)(b)のような二値化結果に近づけることができる可能性が広がる。
【0102】
<条件1~3に合致しない場合の二値化の効果>
図15を参照して、条件1~3のいずれの条件にも合致しない場合に行われる二値化方式4の効果を説明する。図15(a)は四値化画像の一例である。図15(a)の四値化画像に対して、条件2や条件3が成立した場合に適用する二値化である適応二値化を適用すると、図15(b)(c)の二値化結果になる。図15(b)(c)はどちらも適応二値化による二値化結果であるが、閾値に反映させるオフセット値が異なる。いずれにしてもノイズが出て背景が一様でなくなったり、文字内部で白抜けが発生したりする。
【0103】
一方、図15(d)は、本実施形態の二値化方式4による二値化結果を示す。図15(d)では、背景が一様になり、文字内部での白抜けも発生していない。これは、条件1~3のいずれにも合致していない場合に判別分析法と同等の二値化を適用する効果である。
【0104】
<主な効果>
本実施形態の二値化方法は、薄文字や濃い背景上文字を再現することと、ノイズや白抜けの発生を減らすことを、両立することができる。
【0105】
<その他の適用例>
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0106】
図4などの構成例は、画像処理装置20による処理の理解を容易にするために、主な機能に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって本願発明が制限されることはない。画像処理装置20の処理は、処理内容に応じて更に多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位が更に多くの処理を含むように分割することもできる。
【0107】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
<付記>
[請求項1]
階調数Mの入力画像の画素値に基づきN-1個(M>N>2)の第1閾値を算出する閾値算出部と、
N-1個の第1閾値と前記入力画像の画素値を比較して、前記入力画像からN値化画像を生成するN値化部と、
前記入力画像の局所領域ごとの画素値及び前記N値化画像の局所領域ごとの階調値に基づき、前記入力画像を二値化した二値化画像を生成する二値化部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
[請求項2]
前記N値化画像において、注目画素を中心とした局所領域内の注目画素の階調値と同じ画素値のカウント結果が第2閾値以下 であり、かつ、前記局所領域内に二種類のみの階調値があるという第1条件を満たす場合、
前記二値化部は、前記N値化画像の注目画素を、注目画素の階調値とは異なるもう一つの階調値に応じて二値化する請求項1に記載の画像処理装置。
[請求項3]
前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において所定の強度以上のエッジがあるという第2条件を満たす場合、
前記二値化部は、適応二値化により前記入力画像を二値化する請求項2に記載の画像処理装置。
[請求項4]
前記N値化画像において注目画素の階調値が第2の所定値であるという第3条件を満たす場合、
前記二値化部は、適応二値化により前記入力画像を二値化する請求項2又は3に記載の画像処理装置。
[請求項5]
前記N値化画像において、注目画素を中心とした局所領域内の注目画素の階調値と同じ画素値のカウント結果が第2閾値以下 であり、かつ、前記局所領域内に二種類のみの階調値があるという第1条件を満たさず、
前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において所定の強度以上のエッジがあるという第2条件を満たさず、
前記N値化画像において注目画素の階調値が第2の所定値であるという第3条件を満たさない場合、
前記二値化部は、前記N値化画像の注目画素を前記局所領域内の階調値に対して一意に決まる値に二値化することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
[請求項6]
前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において所定の強度以上のエッジがあるという第2条件を満たさない場合、前記入力画像の局所領域内の濃度変化が所定より緩やかであると判断し、
更に、前記N値化画像において注目画素の階調値が第2の所定値であるという第3条件を満たさない場合、
前記二値化部は、前記N値化画像の注目画素を前記局所領域内の階調値に対して一意に決まる値に二値化することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
[請求項7]
前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において所定の強度以上のエッジがあるという第2条件第2条件を満たす場合、前記局所領域内にエッジが存在していると判断し、
前記二値化部は、前記入力画像の前記局所領域に適応二値化を行うことで、前記入力画像を二値化することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
[請求項8]
前記閾値算出部は、階調値のヒストグラムを作成して前記ヒストグラムの極小値付近の値を前記第1閾値として検出する ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
[請求項9]
前記閾値算出部は、前記ヒストグラムの参照範囲を変えて判別分析法を適用することにより複数の前記第1閾値を算出することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
[請求項10]
前記N値化画像において、注目画素を中心とした局所領域内の注目画素の階調値と同じ階調値のカウント結果が第2閾値以下 であり、かつ、前記局所領域内に二種類のみの階調値があるという第1条件を満たす場合、
前記二値化部は、注目画素を、注目画素の階調値とは異なるもう一つの階調値に応じて二値化し、
前記第1条件を満たさず、前記N値化画像において注目画素の階調値が第1の所定値であり、かつ、前記入力画像において注目画素を中心とした局所領域の平均値と最小値の差分の絶対値が第3閾値以上であるという第2条件を満たす場合、
前記二値化部は、適応二値化により前記入力画像を二値化し、
前記第2条件を満たさず、前記N値化画像において注目画素の階調値が第2の所定値であるという第3条件を満たす場合、
前記二値化部は、適応二値化により前記入力画像を二値化し、
前記第1条件、前記第2条件、及び、前記第3条件を満たさない場合、
前記二値化部は、注目画素の画素値を前記局所領域内の階調値に対して一意に決まる値に二値化することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【符号の説明】
【0108】
11 平滑化部
12 グレー処理部
13 多値画像処理部
14 閾値算出部
15 N値化部
16 二値化部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【特許文献1】特開2005-072858号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15