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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115146
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】電解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 13/02 20060101AFI20240819BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240819BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240819BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C25B13/02 302
F16J15/10 D
F16J15/10 Y
F16J15/10 A
C25B9/77
C25B15/00 302A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020661
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 仁司
【テーマコード(参考)】
3J040
4K021
【Fターム(参考)】
3J040AA18
3J040BA10
3J040CA04
3J040EA04
3J040EA16
3J040EA22
3J040FA06
3J040HA12
3J040HA15
4K021AA01
4K021AA02
4K021AB01
4K021BA02
4K021CA01
4K021CA04
4K021DB04
4K021DB28
4K021DB48
4K021DB49
(57)【要約】
【課題】陽極室組立体と陰極室組立体との間の短絡を防止することができる電解装置を提供する。
【解決手段】電解装置2の電解槽ユニット4は、陽極室組立体6および陰極室組立体8を有する。陽極室組立体6は、第1の隔壁10と、第1の隔壁10の周縁に設けられた第1のフランジ12と、第1のフランジ12に付設された第1のガスケット14とを含む。陰極室組立体8は、第2の隔壁26と、第2の隔壁26の周縁に設けられた第2のフランジ28と、第2のフランジ28に付設された第2のガスケット30とを含む。第1のフランジ12と第2のフランジ28との間には、第1のフランジ12と第2のフランジ28との短絡を防止するための短絡防止手段が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極室組立体および陰極室組立体を有する電解槽ユニットが複数個配列されている電解装置であって、
前記陽極室組立体は、第1の隔壁と、前記第1の隔壁の周縁に設けられた第1のフランジと、前記第1のフランジに付設された第1のガスケットとを含み、
前記陰極室組立体は、第2の隔壁と、前記第2の隔壁の周縁に設けられた第2のフランジと、前記第2のフランジに付設された第2のガスケットとを含み、
前記第1のフランジと前記第2のフランジとの間には、前記第1のフランジと前記第2のフランジとの短絡を防止するための短絡防止手段が設けられている電解装置。
【請求項2】
前記短絡防止手段は前記第1のガスケットである、請求項1に記載の電解装置。
【請求項3】
前記第1のガスケットは、薄肉部と、前記薄肉部よりも厚肉の厚肉部とを有する、請求項1に記載の電解装置。
【請求項4】
前記第1のガスケットには、前記第1のガスケットの全周にわたって延びる線状突起が設けられている、請求項1に記載の電解装置。
【請求項5】
前記第1のフランジは、真直部と、前記真直部よりも突出する突出部とを備える、請求項1に記載の電解装置。
【請求項6】
前記短絡防止手段は前記第2のガスケットである、請求項1に記載の電解装置。
【請求項7】
前記第2のガスケットは、薄肉部と、前記薄肉部よりも厚肉の厚肉部とを有する、請求項1に記載の電解装置。
【請求項8】
前記第2のガスケットには、前記第2のガスケットの全周にわたって延びる線状突起が設けられている、請求項1に記載の電解装置。
【請求項9】
前記第2のフランジは、真直部と、前記真直部よりも突出する突出部とを備える、請求項1に記載の電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陽極室組立体および陰極室組立体を有する電解槽ユニットが複数個配列されている電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、陽極室組立体および陰極室組立体を有する電解槽ユニットが複数個配列されている電解装置が開示されている。電解槽ユニットの陽極室組立体は、第1の隔壁と、第1の隔壁の周縁に設けられた第1のフランジと、第1のフランジに付設された第1のガスケットとを含む。陰極室組立体は、第2の隔壁と、第2の隔壁の周縁に設けられた第2のフランジと、第2のフランジに付設された第2のガスケットとを含む。
【0003】
第1のガスケットと第2のガスケットとの間には、膜(たとえば、アルカリ水電解装置の場合には隔膜、食塩電解装置の場合にはイオン交換膜)が挟み込まれる。そして、所定方向に沿って配列された複数個の電解槽ユニットに所要圧力が加えられて電解装置が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-99845公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電解装置においては、第1・第2のガスケットによって、電解槽ユニットの内部から外部への気体および液体の漏出が防止されている。しかし、ガスケットの劣化などに起因して電解槽ユニットの内部から外部に気体および液体が漏れてしまった場合には、陽極室組立体と陰極室組立体との間で短絡が発生するおそれがある。また、陽極室組立体と陰極室組立体との間にネズミなどの小動物が入り込んでしまった場合にも、短絡が発生するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、陽極室組立体と陰極室組立体との間の短絡を防止することができる電解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の電解装置が提供される。すなわち、
「陽極室組立体および陰極室組立体を有する電解槽ユニットが複数個配列されている電解装置であって、
前記陽極室組立体は、第1の隔壁と、前記第1の隔壁の周縁に設けられた第1のフランジと、前記第1のフランジに付設された第1のガスケットとを含み、
前記陰極室組立体は、第2の隔壁と、前記第2の隔壁の周縁に設けられた第2のフランジと、前記第2のフランジに付設された第2のガスケットとを含み、
前記第1のフランジと前記第2のフランジとの間には、前記第1のフランジと前記第2のフランジとの短絡を防止するための短絡防止手段が設けられている電解装置」が提供される。
【0008】
好ましくは、前記短絡防止手段は前記第1のガスケットである。前記第1のガスケットは、薄肉部と、前記薄肉部よりも厚肉の厚肉部とを有するのが望ましい。前記第1のガスケットには、前記第1のガスケットの全周にわたって延びる線状突起が設けられていてもよい。前記第1のフランジは、真直部と、前記真直部よりも突出する突出部とを備えるのが好適である。
【0009】
前記短絡防止手段は前記第2のガスケットであってもよい。前記第2のガスケットは、薄肉部と、前記薄肉部よりも厚肉の厚肉部とを有するのが好都合である。前記第2のガスケットには、前記第2のガスケットの全周にわたって延びる線状突起が設けられているのが望ましい。前記第2のフランジは、真直部と、前記真直部よりも突出する突出部とを備え得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電解装置によれば、陽極室組立体と陰極室組立体との間の短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る電解装置の簡略図。
図2図1におけるII-II断面の模式図。
図3図1におけるIII-III断面の模式図。
図4図2におけるIV-IV断面の模式図。
図5図2におけるV-V断面の模式図。
図6図2におけるVI-VI断面の模式図。
図7】電解槽ユニットの第1の変形例を示す模式的部分断面図。
図8】電解槽ユニットの第2の変形例を示す模式的部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電解装置の好適実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
(電解装置2)
図1を参照して説明すると、ゼロギャップ型と称される形態の電解装置2は、複数個の電解槽ユニット4を備える。複数個の電解槽ユニット4は、図1に矢印Xで示すX軸方向(電解槽ユニット4の厚み方向)に沿って配列されるとともに、油圧プレス装置などの公知の流体圧式締付装置(図示していない。)によって、X軸方向に所要圧力が加えられる。
【0014】
なお、図1に矢印Zで示すZ軸方向は、X軸方向に直交する上下方向である。また、図2および図3に矢印Yで示すY軸方向は、X軸方向およびZ軸方向に直交する方向(電解槽ユニット4の幅方向)である。
【0015】
(電解槽ユニット4)
図4に示すとおり、電解槽ユニット4は、陽極室組立体6および陰極室組立体8を有する。陽極室組立体6の構成要素および陰極室組立体8の構成要素は、実際には相互に密接しているが、図4においては、構成要素を明確に図示するために構成要素同士を離して示している。
【0016】
(陽極室組立体6)
陽極室組立体6は、第1の隔壁10と、第1の隔壁10の周縁に設けられた第1のフランジ12と、第1のフランジ12に付設された第1のガスケット14と、第1の隔壁10とX軸方向に間隔をおいて配置された陽極16とを含む。
【0017】
(第1の隔壁10)
陽極室組立体6の第1の隔壁10は、矩形状であり、ニッケル(Ni)やチタン(Ti)などの導電性金属材料から形成され得る。
【0018】
(第1のフランジ12)
陽極室組立体6の第1のフランジ12は、全体として矩形枠形状(矩形額縁形状)であり、矩形状の第1の隔壁10の周縁に沿って設けられている。図4に示すとおり、第1のフランジ12の上側部分(第1のフランジ12の上部においてY軸方向に沿って延びる部分)は、第1の隔壁10の上端からX軸方向に突出する上板18と、上板18の突出端部から下方に延びる縦板20と、縦板20の下端から第1の隔壁10に向かってX軸方向に延びる下板22とを含む。
【0019】
第1のフランジ12の縦板20は、上板18の突出端部から下方に真直に延びる真直部20aと、真直部20aの下端から下方に向かってX軸方向(第1の隔壁10から遠ざかる方向)に傾斜して延びる傾斜部20bと、傾斜部20bの下端から下方に真直に延びる突出部20cとを有する。
【0020】
図4を参照することによって理解されるとおり、突出部20cは、第1の隔壁10から遠ざかる方向において、真直部20aよりも突出している。ただし、図示の実施形態とは異なり、縦板20の全体が真直であってもよい。
【0021】
第1のフランジ12は、第1の隔壁10と同様に、ニッケル(Ni)やチタン(Ti)などの導電性金属材料から形成され得る。第1のフランジ12は、溶接や接着、ネジ等の適宜の接合手段(図示していない)によって第1の隔壁10に固定される。
【0022】
第1のフランジ12の幅方向片側部分および幅方向他側部分(第1のフランジ12の幅方向端部においてZ軸方向に沿って延びる部分)は、第1の隔壁10が適宜屈曲されて形成され得る。
【0023】
すなわち、図5に示すように、第1の隔壁10が、矩形状の主部10aと、主部10aの端部からX軸方向に突出する内周部10bと、内周部10bの突出端から電解槽ユニット4の外周側に延びる延出部10cと、延出部10cの延出端から主部10a側に向かってX軸方向に延びる外周部10dとを含み、第1のフランジ12の幅方向片側部分および他側部分が、第1の隔壁10の内周部10b、延出部10cおよび外周部10dを有する構成であってもよい。
【0024】
また、第1のフランジ12の下側部分(第1のフランジ12の下部においてY軸方向に沿って延びる部分)も、第1のフランジ12の幅方向片側・他側部分と同様に、第1の隔壁10が適宜屈曲されて形成されていてもよい。具体的には、図6に示すとおり、第1のフランジ12の下側部分が、第1の隔壁10の内周部10b、延出部10cおよび外周部10dを備え得る。
【0025】
図5および図6に示すように、第1のフランジ12が第1の隔壁10が屈曲されて形成される場合には、第1のフランジ12の幅方向片側部分・他側部分および下側部分を補強する補強材(図示していない。)が設置され得る。
【0026】
なお、図示の実施形態とは異なり、第1のフランジ12の幅方向片側・他側部分および下側部分は、第1の隔壁10が屈曲されて形成されていなくてもよい。
【0027】
(第1のガスケット14)
図2に示すとおり、第1のガスケット14は、第1のフランジ12に対応する矩形枠形状であり、第1のフランジ12の外面に沿って付設されている。第1のガスケット14は、接着剤または両面接着テープなどによって第1のフランジ12の外面に接着される。
【0028】
図示の実施形態の第1のガスケット14の上側部分(第1のガスケット14の上部においてY軸方向に沿って延びる部分)は、図4に示すように、薄肉部14aと、薄肉部14aよりも厚肉の厚肉部14bとを有する。薄肉部14aは、縦板20の真直部20aおよび傾斜部20bに付設され、厚肉部14bは、縦板20の突出部20cに付設されている。なお、第1のガスケット14の上側部分の厚みは一定であってもよい。
【0029】
図5に示すとおり、第1のガスケット14の幅方向片側部分・他側部分(第1のガスケット14の幅方向端部においてZ軸方向に沿って延びる部分)は、第1のフランジ12の構成要素の一部をなす第1の隔壁10の延出部10cに付設されている。第1のガスケット14の幅方向片側部分・他側部分の厚みは一定であり、上記厚肉部14bの厚みと同一である。
【0030】
図6に示すように、第1のガスケット14の下側部分(第1のガスケット14の下部においてY軸方向に沿って延びる部分)は、第1のフランジ12の構成要素の一部をなす第1の隔壁10の延出部10cに付設されている。第1のガスケット14の下側部分の厚みも一定であり、上記厚肉部14bの厚みと同一である。
【0031】
図4図6に示すとおり、第1のガスケット14には、第1のガスケット14の全周にわたって延びる線状突起14cが設けられているのが好ましい。線状突起14cは、図4図6において紙面に垂直な方向に延びている。図示の実施形態では、線状突起14cは、第1のフランジ12側の面に配置されている。線状突起14cは、1個でもよいが、図4図6に示すように複数個設けられていてもよい。
【0032】
第1のガスケット14の材料としては、絶縁性を有する材料であり、たとえば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン-プロピレンゴム(EPT)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、またはクロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)のなどの耐アルカリ性を有するエラストマーが挙げられる。
【0033】
(陽極16)
陽極16は、エキスパンドメタルまたは平織金網など、多数の開口を有するシート状部材から矩形状に形成されている。図4に示すように、陽極16は、第1の隔壁10とX軸方向に間隔をおいて配置され、第1のフランジ12よりも電解槽ユニット4の内周側に位置づけられている。陽極16は、ニッケル(Ni)やチタン(Ti)などの導電性金属材料から形成され得る。そして、陽極16と第1の隔壁10との間に陽極室24が規定される。
【0034】
図示していないが、第1の隔壁10の内面には、X軸方向(図4において左方向)に突出する複数個のリブが設けられており、これら複数個のリブの突出端部に陽極16が固定されている。リブは、第1の隔壁10と同様に、ニッケル(Ni)やチタン(Ti)などの導電性金属材料から形成され得る。
【0035】
(陰極室組立体8)
図4を参照して説明を続けると、陰極室組立体8は、第2の隔壁26と、第2の隔壁26の周縁に設けられた第2のフランジ28と、第2のフランジ28に付設された第2のガスケット30と、第2の隔壁26とX軸方向に間隔をおいて配置された陰極32とを含む。
【0036】
(第2の隔壁26)
陰極室組立体8の第2の隔壁26は、矩形状であり、X軸方向において第1の隔壁10に対面している。第2の隔壁26は、ニッケル(Ni)などの導電性金属材料から形成され得る。
【0037】
(第2のフランジ28)
陰極室組立体8の第2のフランジ28は、陽極室組立体6の第1のフランジ12と同様に、全体として矩形枠形状(矩形額縁形状)である。図4に示すとおり、第2のフランジ28は、矩形状の第2の隔壁26の周縁に沿って設けられ、第1のフランジ12に対面している。
【0038】
第2のフランジ28の上側部分(第2のフランジ28の上部においてY軸方向に沿って延びる部分)は、第2の隔壁26の上端からX軸方向に突出する上板34と、上板34の突出端部から下方に延びる縦板36と、縦板36の下端から第2の隔壁26に向かってX軸方向に延びる下板38とを含む。
【0039】
第2のフランジ28の縦板36は、上板34の突出端部から下方に真直に延びる真直部36aと、真直部36aの下端から下方に向かってX軸方向(第2の隔壁26から遠ざかる方向)に傾斜して延びる傾斜部36bと、傾斜部36bの下端から下方に真直に延びる突出部36cとを有する。
【0040】
突出部36cは、第2の隔壁26から遠ざかる方向において、真直部36aよりも突出している。ただし、図示の実施形態とは異なり、縦板36の全体が真直であってもよい。
【0041】
第2のフランジ28は、第2の隔壁26と同様に、ニッケル(Ni)などの導電性金属材料から形成され得る。第2のフランジ28は、溶接や接着、ネジ等の適宜の接合手段(図示していない)によって第2の隔壁26に固定される。
【0042】
第2のフランジ28の幅方向片側部分および幅方向他側部分(第2のフランジ28の幅方向端部においてZ軸方向に沿って延びる部分)は、第2の隔壁26が適宜屈曲されて形成され得る。
【0043】
すなわち、図5に示すように、第2の隔壁26が、矩形状の主部26aと、主部26aの端部からX軸方向に突出する内周部26bと、内周部26bの突出端から電解槽ユニット4の外周側に延びる延出部26cと、延出部26cの延出端から主部26a側に向かってX軸方向に延びる外周部26dとを含み、第2のフランジ28の幅方向片側部分および他側部分が、第2の隔壁26の内周部26b、延出部26cおよび外周部26dを有する構成であってもよい。
【0044】
また、第2のフランジ28の下側部分(第2のフランジ28の下部においてY軸方向に沿って延びる部分)も、第2のフランジ28の幅方向片側・他側部分と同様に、第2の隔壁26が適宜屈曲されて形成されていてもよい。具体的には、図6に示すとおり、第2のフランジ28の下側部分が、第2の隔壁26の内周部26b、延出部26cおよび外周部26dを備え得る。
【0045】
図5および図6に示すように、第2のフランジ28が第2の隔壁26が屈曲されて形成される場合には、第2のフランジ28の幅方向片側部分・他側部分および下側部分を補強する補強材(図示していない。)が設置され得る。
【0046】
なお、図示の実施形態とは異なり、第2のフランジ28の幅方向片側・他側部分および下側部分は、第2の隔壁26が屈曲されて形成されていなくてもよい。
【0047】
(第2のガスケット30)
図3および図4に示すとおり、図示の実施形態の第2のガスケット30は、第2のフランジ28に対応する矩形枠形状であり、第2のフランジ28の外面に沿って付設されている。第2のガスケット30は、接着剤または両面接着テープなどによって第2のフランジ28の外面に接着される。
【0048】
図4に示すとおり、第2のガスケット30の上側部分(第2のガスケット30の上部においてY軸方向に沿って延びる部分)は、縦板36の突出部36cに付設され、第1のガスケット14の厚肉部14bに対面している。
【0049】
また、図5に示すように、第2のガスケット30の幅方向片側部分・他側部分(第2のガスケット30の幅方向端部においてZ軸方向に沿って延びる部分)は、第2のフランジ28の構成要素の一部をなす第2の隔壁26の延出部26cに付設され、第1のガスケット14の幅方向片側部分・他側部分に対面している。
【0050】
さらに、図6に示すように、第2のガスケット30の下側部分(第2のガスケット30の下部においてY軸方向に沿って延びる部分)も、第2のフランジ28の構成要素の一部をなす第2の隔壁26の延出部26cに付設され、第1のガスケット14の下側部分に対面している。
【0051】
図4図6に示すとおり、第2のガスケット30には、第2のガスケット30の全周にわたって延びる線状突起30cが設けられているのが好適である。線状突起30cは、図4図6において紙面に垂直な方向に延びている。図示の実施形態では、線状突起30cは、第1のガスケット14側の面に配置されている。線状突起30cは、1個でもよいが、図4図6に示すように複数個設けられていてもよい。
【0052】
第2のガスケット30の厚みは一定であり、第1のガスケット14の厚肉部14bと同一でよい。第2のガスケット30の材料は、絶縁性を有する材料であり、第1のガスケット14の材料例として列記した上記複数の材料の中から選択され得る。
【0053】
(陰極32)
陰極32は、エキスパンドメタルまたは平織金網など、多数の開口を有するシート状部材から矩形状に形成されている。陰極32は、第2の隔壁26とX軸方向に間隔をおいて配置され、第2のフランジ28よりも電解槽ユニット4の内周側に位置づけられている。陰極32は、ニッケル(Ni)などの導電性金属材料から形成され得る。
【0054】
図4図6に示すとおり、陰極32と第2の隔壁26との間には、クッション部材40および集電体42が配置されている。クッション部材40は、金属線の集合体として形成され得る全体として矩形状の弾性マットでよい。集電体42は、エキスパンドメタルまたは平織金網など、多数の開口を有する矩形のシート状部材である。クッション部材40および集電体42は、ニッケル(Ni)などの導電性金属材料から形成され得る。
【0055】
図示していないが、第2の隔壁26の内面には、X軸方向(図4において右方向)に突出する複数個のリブが設けられており、これら複数個のリブの突出端部に集電体42が固定されている。リブは、ニッケル(Ni)などの導電性金属材料から形成され得る。
【0056】
クッション部材40は、集電体42を貫通する複数個のネジによって、リブ(あるいは、リブに付設されたブラケットでもよい。)に締結され得る。陰極32は、クッション部材40および集電体42を貫通する複数個のネジによって、リブあるいは上記ブラケットに締結され得る。そして、集電体42と第2の隔壁26との間に陰極室44が規定される。
【0057】
図4図6においては、便宜上、第1のガスケット14と第2のガスケット30とをX軸方向に間隔をおいて記載しているが、実際の電解装置2においては、上記流体圧式締付装置から加えられる所要圧力によって、第1のガスケット14と第2のガスケット30とが押し合うことになる。これによって、陽極室24および陰極室44は密閉された状態となる。
【0058】
なお、第1のガスケット14の上側部分においては、厚肉部14bが第2のガスケット30と押し合い、薄肉部14aは、第2のガスケット30ないし第2のフランジ28には接触しない。
【0059】
(膜46)
図4図6に示すとおり、第1のガスケット14と第2のガスケット30との間には、矩形状の膜46が挟み込まれる。膜46は、たとえば、電解装置2がアルカリ水電解装置の場合には、イオン透過性材料の隔膜またはイオン交換膜として構成され、電解装置2が食塩電解装置の場合には、イオン交換膜として構成される。
【0060】
図示の実施形態の膜46の上端は、図4に示すように、第1のガスケット14の厚肉部14bの上端および第2のガスケット30の上端よりも上方に突出している。また、図5および図6に示すとおり、膜46の幅方向端部および下端は、第1・第2のガスケット14、30の外周縁よりも電解槽ユニット4の外周側に突出している。
【0061】
ただし、膜46のサイズについては、第1のガスケット14の厚肉部14bと第2のガスケット30との間に膜46の全周が挟み込まれる程度のサイズであればよく、膜46の周縁部が第1・第2のガスケット14、30の外周縁よりも電解槽ユニット4の外周側に突出していなくてもよい。
【0062】
(短絡防止手段)
電解装置2においては、第1のフランジ12と第2のフランジ28との間には、第1のフランジ12と第2のフランジ28との短絡を防止するための短絡防止手段が設けられている。
【0063】
図示の実施形態の短絡防止手段は、第1のガスケット14から構成されている。具体的には、第1のガスケット14の薄肉部14aが短絡防止手段として機能する。
【0064】
上記のとおり、第1・第2のガスケット14、30の上側部分においては、第1のガスケット14の厚肉部14bと第2のガスケット30とが押し合うことにより、陽極室24および陰極室44が密閉される。このように、第1のフランジ12の厚肉部14bおよび第2のガスケット30は、電解槽ユニット4に液密性および気密性をもたらす。
【0065】
一方、第1のガスケット14の薄肉部14aは、上記流体圧式締付装置から電解槽ユニット4に対して所要圧力が加えられた状態となっても、第2のフランジ28ないし第2のガスケット30などの陰極室組立体8の構成要素と接触することがなく、電解槽ユニット4に液密性および気密性をもたらすものではない。
【0066】
しかしながら、第1のガスケット14の薄肉部14aが、第1のフランジ12の縦板20の真直部20aおよび傾斜部20bに付設されていることにより、第1のフランジ12と第2のフランジ28との短絡が防止される。
【0067】
たとえば、第1・第2のガスケット14、30の劣化などに起因して、第1のフランジ12の縦板20と第2のフランジ28の縦板36との間に、陽極室24または陰極室44から気体および/または液体が漏れてしまった場合や、第1のフランジ12の縦板20と第2のフランジ28の縦板36との間にネズミなどの小動物が入り込んでしまった場合に、第1のガスケット14の薄肉部14aによって、第1のフランジ12と第2のフランジ28との短絡が防止される。
【0068】
なお、第1・第2のフランジ12、28の縦板20、36の上端よりも、膜46の上端が上方に位置していれば、第1のフランジ12と第2のフランジ28との短絡を膜46によって防止することもできる。しかしながら、電解槽ユニット4の部材の中で比較的高価な膜46を、膜46本来の用途ではない短絡防止手段として用いてしまうと、製造コストの上昇を招くことになる。他方、第1のガスケット14は、電解槽ユニット4の部材の中では、比較的安価な部材である。このため、第1のガスケット14を短絡防止手段として用いても、製造コストの過度な上昇を招くことがない。
【0069】
図示の実施形態の第1・第2のフランジ12、28の縦板20、36には、突出部20c、36cが設けられており、上記流体圧式締付装置から電解槽ユニット4に対して所要圧力が加えられた際には、突出部20cに付設された第1のガスケット14の厚肉部14bと、突出部36cに付設された第2のガスケット30とが押し合うことになる。一方、上記のとおり、第1のガスケット14の薄肉部14aは、第2のフランジ28ないし第2のガスケット30とは接触しない。
【0070】
このため、縦板20、36に突出部20c、36cが設けられておらず、縦板20、36の全体が真直であって、縦板20、36の全面にガスケットが付設されている場合と比較して、図示の実施形態では、第1のガスケット14と第2のガスケット30とのシール面の面積が小さくなる。
【0071】
したがって、図示の実施形態では、第1のガスケット14と第2のガスケット30とのシール面の面圧が高くなり、陽極室24および陰極室44から気体・液体が漏れにくくなっている。このように図示の実施形態では、第1のフランジ12と第2のフランジ28との短絡を防止可能であるとともに、シール面の高い面圧を実現することができる。
【0072】
また、図示の実施形態では、第1のガスケット14と第2のガスケット30とが押し合った際に、第1のガスケット14の線状突起14cおよび第2のガスケット30の線状突起30cが局部的に潰れるため、電解槽ユニット4の液密性および気密性が一層高くなる。
【0073】
なお、図示の実施形態とは反対に、第1のガスケット14の線状突起14cが第2のガスケット30側の面に設けられ、第2のガスケット30の線状突起30cが第2のフランジ28側の面に設けられていてもよい。
【0074】
また、第1のガスケット14の線状突起14cまたは第2のガスケット30の線状突起30cのいずれか一方が設けられていれば、液密性および気密性の向上に寄与するが、線状突起14c、30cの双方が設けられている方が、液密性および気密性の向上の点で好ましい。
【0075】
上記のとおり、図示の実施形態においては、膜46の上端が、第1のガスケット14の厚肉部14bの上端および第2のガスケット30の上端よりも上方に突出している。また、第1のガスケット14の薄肉部14aと第2のフランジ28とは接触しないようになっている。
【0076】
したがって、図示の実施形態においては、電解槽ユニット4を組み立てる際に、第1のガスケット14の薄肉部14aと第2のフランジ28との間のスペースを利用して、膜46の位置を調整することができるようになっており、組立性が良好である。
【0077】
以上のとおりであり、図示の実施形態の電解装置2においては、第1のガスケット14の薄肉部14aにより、陽極室組立体6と陰極室組立体8との間の短絡を防止することができる。
【0078】
(変形例)
上述した形態の電解槽ユニット4においては、陽極室組立体6の第1のガスケット14の薄肉部14aが短絡防止手段となっているが、図7に示すように、陰極室組立体8の第2のガスケット30が短絡防止手段となっていてもよい。
【0079】
図7に示す形態においては、第2のガスケット30は、第2のフランジ28に対応する矩形枠形状であり、第2のフランジ28の外面に沿って付設されている。第2のガスケット30の上側部分は、薄肉部30aと、薄肉部30aよりも厚肉の厚肉部30bとを有し、薄肉部30aは、縦板36の真直部36aおよび傾斜部36bに付設され、厚肉部30bは、縦板36の突出部36cに付設されている。そして、薄肉部30aによって短絡防止手段が構成されている。
【0080】
また、図8に示すように、第1のガスケット14の薄肉部14aおよび第2のガスケット30の薄肉部30aのそれぞれが短絡防止手段を構成するようになっていてもよい。この場合には、第1・第2のガスケット14、30が同一の形態でよいため、部品共通化によって部品管理が容易である。
【0081】
なお、図示していないが、第1・第2の変形例のいずれにおいても、第1のガスケット14と同様に、第2のガスケット30の厚みは一定であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
2:電解装置
4:電解槽ユニット
6:陽極室組立体
8:陰極室組立体
10:第1の隔壁
12:第1のフランジ
14:第1のガスケット
14a:薄肉部
14b:厚肉部
14c:線状突起
20:縦板
20a:真直部
20b:傾斜部
20c:突出部
26:第2の隔壁
28:第2のフランジ
30:第2のガスケット
30a:薄肉部
30b:厚肉部
30c:線状突起
36:縦板
36a:真直部
36b:傾斜部
36c:突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
図5および図6に示すように、第1の隔壁10が屈曲されて第1のフランジ12が形成される場合には、第1のフランジ12の幅方向片側部分・他側部分および下側部分を補強する補強材(図示していない。)が設置され得る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
図5および図6に示すように、第2の隔壁26が屈曲されて第2のフランジ28が形成される場合には、第2のフランジ28の幅方向片側部分・他側部分および下側部分を補強する補強材(図示していない。)が設置され得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1