(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115161
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】内視鏡システム及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/06 20060101AFI20240819BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A61B1/06 612
A61B1/045 632
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020686
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出村 崇徳
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161CC06
4C161DD03
4C161GG01
4C161LL02
4C161MM05
4C161NN01
4C161QQ09
4C161RR02
4C161RR23
(57)【要約】
【課題】駆動電流のばらつきがあっても目標光量通りの照明光を照射し、精度が高く、安定した撮像を行う内視鏡システム及びその作動方法を提供する。
【解決手段】あらかじめ設定した光源の目標駆動電流値よりも大きい値である、駆動電流値を決定し、定められた露光期間よりも短期間である光源の発光期間において、駆動電流値に応じた発光量で、光源から照明光を発光させ、発光期間内に、一定期間ごとの光源からの光の一部である受光量の取得を複数回行い、受光量に基づいて、一定期間ごとの発光量である積算光量を算出し、積算光量の合計値があらかじめ設定した目標積分光量に達した場合、照明光を所定期間消灯させ、発光期間ごとに観察対象を撮像した撮像画像を取得し、複数の撮像画像から、1つの観察画像を生成する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を有する少なくとも1つの光源と、
前記光源からの光の一部を受光して受光量を検出する光検出器と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
あらかじめ設定した前記光源の目標駆動電流値よりも大きい値である、駆動電流値を決定し、
定められた露光期間よりも短期間である前記光源の発光期間において、前記駆動電流値に応じた発光量で、前記光源から照明光を発光させ、
前記発光期間内に、一定期間ごとの前記光検出器からの前記受光量の取得を複数回行い、
前記受光量に基づいて、前記一定期間ごとの前記発光量である積算光量を算出し、
前記積算光量の合計値があらかじめ設定した目標積分光量に達した場合、前記照明光を所定期間消灯させ、
前記発光期間で観察対象を撮像した撮像画像を取得し、
前記発光期間ごとに取得した複数の前記撮像画像から、1つの観察画像を生成する内視鏡システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記照明光を、前記目標駆動電流値から一定倍率で増加させた前記駆動電流値により発光させる請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記照明光を、前記目標駆動電流値から固定値で増加させた前記駆動電流値により発光させる請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記照明光を、前記目標駆動電流値が閾値以上の場合に第1倍率で増加させ、
前記目標駆動電流値が閾値未満の場合に前記第1倍率よりも高倍率である第2倍率で増加させた前記駆動電流値により発光させる請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記照明光を、前記目標駆動電流値が閾値以上の場合に一定倍率で増加させ、
前記目標駆動電流値が閾値未満の場合に固定値で増加させた前記駆動電流値により発光させる請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記照明光の発光タイミングを前記定められた露光期間の終了に合わせて設定する請求項1ないし5いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記一定期間は、0.5μs以上100μs以下である請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記目標駆動電流値の設定値と、前記光源に伝達する駆動電流の実測値とのばらつきを取得し、
前記ばらつきに基づいて、前記駆動電流値の下限値を設定する請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記下限値に応じて、前記目標駆動電流値に対する前記駆動電流値の増加方法を決定する請求項8記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記光源の発光と消灯に代えて、前記光源が発光を継続した状態で、シャッター制御により撮像センサに入射する光の露光を制御させる請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記半導体発光素子は、レーザダイオードまたは発光ダイオードである請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記プロセッサは、
異なる波長の光である第1照明光と第2照明光を、それぞれの前記駆動電流値に応じて発光させる請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項13】
半導体発光素子を有する少なくとも1つの光源と、
前記光源からの光の一部を受光して受光量を検出する光検出器と、を備える内視鏡システムであって、
あらかじめ設定した前記光源の目標駆動電流値よりも大きい値である、駆動電流値を決定するステップと、
定められた露光期間よりも短期間である前記光源の発光期間において、前記駆動電流値に応じた発光量で、前記光源から照明光を発光させるステップと、
前記発光期間内に、一定期間ごとの前記光検出器からの前記受光量の取得を複数回行うステップと、
前記受光量に基づいて、前記一定期間ごとの前記発光量である積算光量を算出するステップと、
前記積算光量の合計値があらかじめ設定した目標積分光量に達した場合、前記照明光を所定期間消灯させるステップと、
前記発光期間で観察対象を撮像した撮像画像を取得するステップと、
前記発光期間ごとに取得した複数の前記撮像画像から、1つの観察画像を生成するステップと、を有する内視鏡システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡システム及びその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療分野において、内視鏡システムを用いた診断等が広く行われており、内視鏡システムが備える内視鏡用光源装置の光源には、省エネルギー化、長寿命化、および狭帯域光観察に有用な特定の色の光を発するレーザダイオード(LD:Laser Diode)または発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等の半導体光源が用いられつつある。
【0003】
内視鏡システムを用いた診断には、観察対象に対して種々の観察方法が提案されている。例えば、1種類の撮像フレームから得られる1または複数の撮像画像を用いて観察画像を生成するシングルフレーム観察モードと、複数種類の撮像フレームから得られる複数の撮像画像を用いて1つの観察画像を生成するマルチフレーム観察モードの2種類の観察モードがある。マルチフレーム観察モードでは、複数の光源の点灯と消灯(発光タイミング)を制御して照明光ごとに観察対象の撮像を行う観察モードであり、例として、特許文献1の内視鏡システムがある。
【0004】
特許文献1の内視鏡システムでは、マルチフレーム観察モードにおいて、照明光ごとに取得した画像間の画像信号比を一定にする技術がある。予め定めた一定期間において、光検出器で検出した光量と目標光量の差を算出し、照明光の消灯タイミングを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の光量制御では、消灯タイミングの調整により露光時間内の積分光量を調整するが、露光時間のみの光量制御では、デバイスごとの駆動電流のばらつきにより生じる画質の低下を防げない。特許文献1には、半導体光源の駆動電流のばらつきを吸収できず、積算光量がばらつく。積算光量のばらつきが大きくなると、同じ被写体に対してセンサが捉える画像が変わってしまい、マルチフレームによる観察画像を作成する際に画質が低くなる。なお、低光量時の光出力では積算光量に与える影響が大きくなる。
【0007】
本発明は、駆動電流のばらつきがあっても目標光量通りの照明光を照射し、精度が高く、安定した撮像を行う内視鏡システム及びその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡システムは、半導体発光素子を有する少なくとも1つの光源と、光源からの光の一部を受光して受光量を検出する光検出器と、プロセッサと、を備え、プロセッサは、あらかじめ設定した光源の目標駆動電流値よりも大きい値である、駆動電流値を決定し、定められた露光期間よりも短期間である光源の発光期間において、駆動電流値に応じた発光量で、光源から照明光を発光させ、発光期間内に、一定期間ごとの光検出器からの受光量の取得を複数回行い、受光量に基づいて、一定期間ごとの発光量である積算光量を算出し、積算光量の合計値があらかじめ設定した目標積分光量に達した場合、照明光を所定期間消灯させ、発光期間で観察対象を撮像した撮像画像を取得し、発光期間ごとに取得した複数の撮像画像から、1つの観察画像を生成する。
【0009】
照明光を、目標駆動電流値から一定倍率で増加させた駆動電流値により発光させることが好ましい。
【0010】
照明光を、目標駆動電流値から固定値で増加させた駆動電流値により発光させることが好ましい。
【0011】
照明光を、目標駆動電流値が閾値以上の場合に第1倍率で増加させ、目標駆動電流値が閾値未満の場合に第1倍率よりも高倍率である第2倍率で増加させた駆動電流値により発光させることが好ましい。
【0012】
照明光を、目標駆動電流値が閾値以上の場合に一定倍率で増加させ、目標駆動電流値が閾値未満の場合に固定値で増加させた駆動電流値により発光させることが好ましい。
【0013】
照明光の発光タイミングを定められた露光期間の終了に合わせて設定することが好ましい。
【0014】
一定期間は、0.5μs以上100μs以下であることが好ましい。
【0015】
目標駆動電流値の設定値と、前記光源に伝達する駆動電流の実測値とのばらつきを取得し、ばらつきに基づいて、駆動電流値の下限値を設定することが好ましい。
【0016】
下限値に応じて目標駆動電流値に対する駆動電流値の増加方法を決定することが好ましい。
【0017】
光源の発光と消灯に代えて、光源が発光を継続した状態で、シャッター制御により撮像センサに入射する光の露光を制御させることが好ましい。
【0018】
半導体発光素子は、レーザダイオードまたは発光ダイオードであることが好ましい。
【0019】
異なる波長の光である第1照明光と第2照明光を、それぞれの駆動電流値に応じて発光させることが好ましい。
【0020】
本発明の内視鏡システムの作動方法は、半導体発光素子を有する少なくとも1つの光源と、光源からの光の一部を受光して受光量を検出する光検出器と、を備える内視鏡システムであって、あらかじめ設定した光源の目標駆動電流値よりも大きい値である、駆動電流値を決定するステップと、定められた露光期間よりも短期間である光源の発光期間において、駆動電流値に応じた発光量で、光源から照明光を発光させるステップと、発光期間内に、一定期間ごとの光検出器からの受光量の取得を複数回行うステップと、受光量に基づいて、一定期間ごとの発光量である積算光量を算出するステップと、積算光量の合計値があらかじめ設定した目標積分光量に達した場合、照明光を所定期間消灯させるステップと、発光期間で観察対象を撮像した撮像画像を取得するステップと、発光期間ごとに取得した複数の撮像画像から、1つの観察画像を生成するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、駆動電流のばらつきがあっても目標光量通りの照明光を照射し、精度が高く、安定した撮像が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】内視鏡システムの機能を示すブロック図である。
【
図3】光検出器が光源の発光の一部を受光する説明図である。
【
図4】光源装置におけるフィードバック制御の説明図である。
【
図5】(A)は目標光量と、露光期間及び照明光の光量の関係を示す説明図であり、(B)は駆動電流値と照明光の光量の関係を示す説明図である。
【
図6】(A)グローバル露光期間を考慮した場合の目標光量と、露光期間及び照明光の光量の関係を示す説明図であり、(B)はグローバル露光期間を考慮した場合の駆動電流値と照明光の光量の関係を示す説明図である。
【
図7】駆動電流値のばらつきにより生じる発光量のばらつきの説明図である。
【
図8】目標発光量よりも大きい発光量で目標積分光量を発光させる説明図である。
【
図9】サンプリング周期ごとに発光量を積算して取得する積算光量の説明図である。
【
図10】2種類の光源を有する光源装置の構成の説明図である。
【
図11】2種類の光源を有する光源装置におけるフィードバック制御の説明図である。
【
図12】目標発光量でマルチフレーム発光した発光パターンの説明図である。
【
図13】目標発光量から一定倍率増加させる発光パターンの説明図である。
【
図14】目標発光量から固定値を増加させる発光パターンの説明図である。
【
図15】目標発光量の光量に応じて増加率を変化させる発光パターンの説明図である。
【
図16】目標発光量から一定倍率と固定値を増加させる発光パターンの説明図である。
【
図17】グローバル露光期間の終了タイミングに合わせて光量を増加させる発光パターンの説明図である。
【
図18】本発明の光量制御の一連の流れを示すフローチャートである。
【
図19】4種類の光源を有する光源部の構成の説明図である。
【
図20】4種類の光源を有する光源装置におけるフィードバック制御の説明図である。
【
図21】4種類の光源による照明光における波長帯域の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態の内視鏡システム10は、内視鏡11と、光源装置12と、プロセッサ装置13と、ディスプレイ14と、ユーザインターフェース(UI)15とを有する。内視鏡11は、光源装置12と光学的に接続され、且つ、プロセッサ装置13と電気的に接続される。光源装置12は、照明光を内視鏡11に供給する。
【0024】
内視鏡11は、照明光を照明し、観察対象を撮像して内視鏡画像を取得する。内視鏡11は、観察対象を有する生体内(被検体内)に挿入される挿入部11aと、挿入部11aの基端部分に設けられた操作部11bを有している。挿入部11aの先端側には湾曲部11c及び先端部11dが設けられている。湾曲部11cは、操作部11bで操作することにより所望の方向に湾曲動作する。先端部11dは、照明光を観察対象に向けて照射し、且つ、観察対象からの反射光を受光して観察対象を撮像する。操作部11bには、モードの切替操作に用いるモード切替スイッチ11eが設けられている。
【0025】
プロセッサ装置13は、ディスプレイ14及びユーザインターフェース15と電気的に接続される。プロセッサ装置13は、内視鏡11からの画像信号を受信し、画像信号に基づいて各種処理を行う。プロセッサ装置13には、画像および画像情報等を記録する外付けの記録部(図示せず)を接続してもよい。ディスプレイ14は、プロセッサ装置13で画像処理された、観察対象を撮像した画像や画像情報等を出力表示する。ユーザインターフェース15は、キーボード、マウス、タッチパッド、マイク、フットペダル等を有し、機能設定等の入力操作を受け付ける機能を有する。
【0026】
内視鏡システム10は、観察部位を観察するための通常観察と、観察部位における特定の構造を強調して観察するための特殊観察が実行可能である。特殊観察では、特定の構造を強調するために特定の波長の照明光を照射したフレームを含む複数のフレームを撮像し、1枚の観察画像を生成する。生成した観察画像は、ディスプレイ14に表示する。
【0027】
図2に示すように、内視鏡システム10において、光源装置12はライトガイド29を介して、射出した照明光を内視鏡11に伝搬し、内視鏡11は照明光を用いて撮像した画像信号をプロセッサ装置13に送信し、プロセッサ装置13はディスプレイ14に表示する画像を生成する。
【0028】
光源装置12は、主波長の異なる複数の照明光を射出し、かつ射出した照明光の光量を検出する光源部20と、所定期間における照明光の積算光量を計測し、積算光量と目標光量の差を取得する計測部22と、光源部20の発光タイミングおよび発光量等を制御する駆動電流(駆動信号)を生成し、光源部20に供給して光を出射させる光量制御部24とを備える。なお、目標光量は、照明光の発光量の目標値である。
【0029】
計測部22及び光量制御部24の機能は、光源部20の備わる光源制御用プロセッサ(図示しない)により実現し、光源部20が射出する照明光を制御する。なお、光源装置12とプロセッサ装置13が電気的に接続している場合は、光源制御用プロセッサの代わりに中央制御部によって光源制御用プロセッサの機能を実現させてもよい。
【0030】
光源部20が発する光は、ライトガイド29に入射される。ライトガイド29は、内視鏡11及びユニバーサルコード(内視鏡11と、光源装置12及びプロセッサ装置13を接続するコード)に内蔵されている。ライトガイド29は、光源部20からの光を、内視鏡11の先端部11dまで伝搬する。
【0031】
内視鏡11の先端部11dには、照明光学系30と撮像光学系40が設けられている。照明光学系30は照明レンズ32を有しており、ライトガイド29によって伝搬した照明光は照明レンズ32を介して観察対象に照射される。撮像光学系40は、対物レンズ42及び撮像センサ44を有している。照明光が照射された観察対象から戻る照明光の反射光は、対物レンズ42を介して撮像センサ44に入射する。これにより、カラー撮像センサである撮像センサ44に観察対象の像が結像される。
【0032】
撮像制御部45は、モード切替スイッチ11eや、プロセッサ装置13を介したユーザインターフェース15による指示等、及び光量制御部24からの信号に応じて撮像センサ44を駆動制御し、観察モードのモード切替及び各モードにおける撮像の制御を行う。撮像の制御では、撮像センサ44の電子シャッター(図示しない)におけるシャッター速度の設定による露光期間の調整等を行う。モード切替を行う場合は、光量制御部24を介して出射する照明光を切り替える。
【0033】
撮像センサ44は、シングルフレーム観察モードの場合、撮像フレームの長さは一定であるため、蓄積期間と読出期間を一定の時間ごとに、例えば、1/60秒ごとに交互に繰り返すように制御される。電子シャッターのシャッター速度を変更し、撮像フレームの長さを調整してもよい。
【0034】
撮像センサ44としては、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)センサ等の光電変換素子が用いられる。撮像センサ44では、例えば、1フレームの取得期間内で、受光した光を光電変換して、画素ごとに受光量に応じた信号電荷を蓄積する蓄積動作と、蓄積した信号電荷を読み出す読み出し動作を行う。撮像センサ44から読み出される画素ごとの信号電荷は、電圧信号に変換されて、CDS/AGC(Correlated Double Sampling/Automatic Gain Control)回路46に入力される。光源装置12は、撮像センサ44の蓄積動作のタイミングに合わせて照明光を生成し、ライトガイド29に入射させる。
【0035】
撮像センサ44の各画素には、B(青色)カラーフィルタを有するB画素(青色画素)、G(緑色)カラーフィルタを有するG画素(緑色画素)、R(赤色)カラーフィルタを有するR画素(赤色画素)のいずれかが設けられている。例えば、撮像センサ44は、B画素とG画素とR画素の画素数の比率が、1:2:1であるベイヤー配列のカラー撮像センサであることが好ましい。
【0036】
Bカラーフィルタは、主として青色帯域の光、具体的には、波長帯域が380~560nm(青色透過帯域)の光を透過させる。透過率が最大となるピーク波長は460~470nm付近に存在する。Gカラーフィルタは、主として緑色帯域の光、具体的には、波長帯域が450~630nm(緑色透過帯域)の光を透過させる。Rカラーフィルタは、主として赤色帯域の光、具体的には580~760nm(赤色透過帯域)の光を透過させる。
【0037】
また、原色の撮像センサ44の代わりに、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びG(グリーン)の補色フィルタを備えた補色撮像センサを用いても良い。補色撮像センサを用いる場合には、CMYGの4色の画像信号が出力されるので、補色-原色色変換によって、CMYGの4色の画像信号をRGBの3色の画像信号に変換することにより、撮像センサ44と同様のRGB各色の画像信号を得ることができる。
【0038】
CDS/AGC回路46は、撮像センサ44から得られるアナログの画像信号に相関二重サンプリング(CDS)や自動利得制御(AGC)を行う。CDS/AGC回路46を経た画像信号は、A/D(Analog/Digital)コンバータ48により、デジタルの画像信号に変換される。A/D変換後のデジタル画像信号がプロセッサ装置13に入力される。
【0039】
プロセッサ装置13には、各処理に関するプログラムがプログラム用メモリ(図示しない)に組み込まれている。プロセッサによって構成される中央制御部(図示しない)がプログラム用メモリ内のプログラムを実行することによって、画像信号取得部50と、DSP(Digital Signal Processor)51と、ノイズ低減部52と、画像処理部53と、表示制御部56の機能が実現する。
【0040】
画像信号取得部50は、撮像制御部45によって駆動制御された内視鏡11から入力される画像信号を受信し、受信した画像信号をDSP51に送信する。表示制御部56は、画像処理部53から取得した、表示する画像の画像信号をディスプレイ14に送信する。
【0041】
DSP51は、受信した画像信号に対して、欠陥補正処理、オフセット処理、ゲイン補正処理、リニアマトリクス処理、ガンマ変換処理、デモザイク処理、及びYC変換処理等の各種信号処理を行う。欠陥補正処理では、撮像センサ44の欠陥画素の信号が補正される。オフセット処理では、欠陥補正処理を施した画像信号から暗電流成分を除かれ、正確な零レベルを設定される。ゲイン補正処理は、オフセット処理後の各色の画像信号に特定のゲインを乗じることにより各画像信号の信号レベルを整える。ゲイン補正処理後の各色の画像信号には、色再現性を高めるリニアマトリクス処理が施される。
【0042】
その後、ガンマ変換処理によって、各画像信号の明るさや彩度が整えられる。リニアマトリクス処理後の画像信号には、デモザイク処理(等方化処理、同時化処理とも言う)が施され、補間により各画素の欠落した色の信号を生成される。デモザイク処理によって、全画素がRGB各色の信号を有するようになる。DSP51は、デモザイク処理後の各画像信号にYC変換処理を施し、輝度信号Yと色差信号Cb及び色差信号Crをノイズ低減部52に出力する。
【0043】
ノイズ低減部52は、DSP51でデモザイク処理等を施した画像信号に対して、例えば移動平均法やメディアンフィルタ法等によるノイズ低減処理を施す。ノイズを低減した画像信号は、画像処理部53に入力される。
【0044】
画像処理部53は、設定されている観察モードに応じて、ノイズ低減部52からの画像信号の処理を切り替える。本実施形態では、観察モードが、シングルフレーム観察モードにセットされている場合にはシングルフレーム画像処理を実行し、マルチフレーム観察モードに設定されている場合にはマルチフレーム画像処理を実行する。
【0045】
画像処理部53は、いずれの画像処理であっても、入力した1フレーム分の画像信号に対して、さらに3×3のマトリックス処理、階調変換処理、3次元LUT(Look Up Table)処理等の色変換処理を施す。そして、色変換処理済みのRGB画像データに対して、各種色彩強調処理を施す。この色彩強調処理済みのRGB画像データに対して、空間周波数強調等の構造強調処理を施す。シングルフレーム画像処理では、構造強調処理を施したRGB画像データを、通常光観察画像として表示制御部56に入力される。マルチフレーム画像処理では、構造強調処理を施した複数のRGB画像データから、照明光に基づいて1つの特殊光観察画像を生成する。生成した特殊光観察画像は表示制御部56に入力される。
【0046】
表示制御部56は、画像処理部53からの通常光観察画像、又は特殊光観察画像を順次取得し、ディスプレイ14上においてフルカラーの表示を可能にする映像信号に変換する。変換済みの映像信号はディスプレイ14に出力表示される。これにより、医師等は観察画像の静止画または動画を用いて観察対象を観察できる。
【0047】
本実施形態の内視鏡システム10は、上述したように、観察中の照明光は連続点灯し、通常観察に用いるシングルフレーム観察モードと、少なくとも2種類の波長の異なる照明光を短時間の消灯し、点灯する動作を繰り返し、血管強調観察などの特殊観察に用いるマルチフレーム観察モードの2種類の観察モードを有する。光量制御部24の制御は、各モードによって異なっており、各光源の点灯又は消灯、点灯時の発光量は独立に制御される。また、撮像フレームに同期して、シャッター開閉が制御されることが好ましい。
【0048】
シングルフレーム観察モードでは、観察部位の全体の観察に適した通常観察画像が表示画像として生成される。通常観察においては、観察中に連続点灯しておりシャッター開閉等により露光期間を調節する。
【0049】
マルチフレーム観察モードにおいては、異なる波長の照明光を短時間で消灯し、点灯するストロボ発光を行う。マルチフレーム観察モードにおいて、異なる波長の照明光を用いた複数の撮像画像から高い画質の観察画像を得るために、照明光に応じて露光時間を調節し、デバイスごとの駆動電流のばらつきによる各フレームの光量のばらつきを抑制し、フレーム間の画像信号比を一定にする。照明光が発光する光量が小さいほど、ばらつきの影響は大きくなる。
【0050】
光量制御部24では、光源部20の発光タイミング、および発光量等を制御する制御信号を生成し、制御信号に応じた駆動電流(駆動信号)を各光源に供給して光を出射させる。光量制御部24は、計測部22から取得した光量測定信号と、目標積分光量とを比較し、比較結果に基づいて駆動電流を調整する。
【0051】
図3に示すように、光源部20では、光源25に対応する光検出器26が、光源25が発光した光量の光量測定信号を取得する。任意の光源25の付近には、レンズL、ビームスプリッタS、光検出器26が備えられる。レンズLは光源25から出射した光を平行光に整え、ビームスプリッタSは平行光の一部を所定割合で反射し、光検出器26はビームスプリッタSが反射した光を受光し、受光量として検出する。ビームスプリッタSを透過する平行光は、平行光を絞るレンズLgを介して、入射光Eaとしてライトガイド29に入射する。なお、以下に説明する各光源25が発光する光量は、ビームスプリッタSで反射せずに透過し、ライトガイド29に入射した分の光量を示す。1つの光源で発光を切り替えて異なる照明光を出射する場合は、ビームスプリッタSが反射する波長帯域とその反射率を把握する必要がある。
【0052】
光源25は、光量制御部24が発する駆動電流に応じて発光を行う。発光における光量の大きさは、駆動電流値によって決定される。光検出器26は、例えばフォトダイオードPD(Photo diode)で構成されており、フォトダイオードPDが受光した光量に応じた電流が電圧変換され、ADC(Analog to Digital Converter)で16ビット等のデジタル値に変換される。光検出器26が検出した受光量の情報は、計測部22に送信される。
【0053】
図4に示すように、光源装置12では、光量制御部24が光源部20に伝達させる駆動電流の調整を行うフィードバック制御を実施して、光量制御を行う。光量制御部24には、目標発光量や目標積分光量が記憶されているか、またはプロセッサ装置13から入力される。光検出器26は、レーザダイオードまたは発光ダイオードである光源25が発した射出光の一部を受光し、受光量として検出、計測部22に送信する。計測部22は、取得した光量測定信号から一定期間ごとに検出した各光源25の発光量の情報を、計測する。光量制御部24は、発光量に基づいて、光量制御を行う。
【0054】
光源装置12における光源部20には、各光源の発光素子を冷却するヒートシンク等の冷却部材を備える。光源装置12は、光量制御部24から光源25に伝達する駆動電流を測定する駆動電流測定器(図示しない)を備え、駆動電流値の設定値と実測値を取得することが好ましい。これにより、設定値と実測値の差を駆動電流値のばらつきとして検出できる。
【0055】
図3及び
図4の光源25における射出光は、ライトガイド29への入射し照明及び受光量の検出に用いられる。複数の光源25を用いて複数の光をライトガイド29に入射させる場合は、後述する合波部材を用いて光を反射させる。合波部材は特定の波長の光を反射し、それ以外の波長の光を透過させる性質を有する。
【0056】
1フレーム中の発光において、露光期間で発光した光量の合計値である積分光量は、撮像センサ44が露光する光量として算出できる。露光期間中の駆動電流を発生させるための制御信号は一定値に設定し、光出力は同じ値を維持する。各フレームの発光は、発光パターンに応じてあらかじめ設定した、撮像に必要な積分光量である目標積分光量ILに達した場合、停止するように制御することにより、一定の明るさで撮像できる。
【0057】
図5(A)に示すように、目標積分光量ILの発光を行う1フレーム中の発光において、露光期間T1で発光量E1の発光が行われた場合はE1×T1の値が目標積分光量ILとなり、撮像センサ44に与える光量となる。発光量は、単位時間当たりに発光する光出力の大きさを示す。
図5(B)に示すように、光源25が発光量E1で発光する場合、光量制御部24から駆動電流値C1である駆動電流が光源25に伝達されることで、光源25は駆動電流に応じた発光量E1で発光する。発光量と駆動電流値は、定義線DFXに示すような、比例関係である。
【0058】
ただし、ストロボ発光によって撮像する内視鏡11の撮像センサ44には、全ての有効画素に対して共通して同じ光が露光される許容期間、すなわち連続露光できる期間を定められた、グローバル露光期間が存在する。グローバル露光期間T0を超えて撮像センサ44に露光が行われると、撮像した画像にグラデーションや色ずれが生じるため、1フレーム中の発光はグローバル露光期間を超えない期間で発光を行う。光源の消灯と点灯に代えて、光源部20が発光を継続した状態で、撮像センサ44のシャッター制御により露光を制御してし、点灯と消灯の切り替えとしてもよい。なお、消灯した場合は、所定期間消灯を継続させる。
【0059】
駆動電流値が小さいと発光量の値も同様に小さくなるため、積分光量に達するまでの期間が長くなる。そのため、グローバル露光期間などの定められた期間よりも短い時間で発光による積分光量を目標積分光量に到達させる場合は、発光量の下限値を設定する。発光量は、駆動電流値に応じたものとなるため、光量制御部24が光源に伝達する駆動電流値の下限値を設定することにより、発光量の下限値が決定する。光源部20に伝達する駆動電流値Cの下限を設けることが好ましい。
【0060】
図6(A)に示すように、1フレーム中の発光において、グローバル露光期間T0において目標積分光量ILを達成するために必要な発光量Eの値を、目標発光量E0とすると、E0×T0の値が目標積分光量ILとなる。
図5(A)の発光量E1が目標発光量E0よりも小さい値である場合、目標積分光量ILに達するための露光期間T1はグローバル露光期間T0よりも長い期間となる。そのため、グローバル露光期間T0よりも短期間の発光で積分光量を目標積分光量ILに達成させるためには、発光量が常に一定以上の値で照射するように最低値を設けることが好ましい。
図6(B)に示すように、発光量は、駆動電流値Cに応じて増減するため、発光量Eと駆動電流値Cの最低値と連動し、最低値を設定した場合の発光量E及び駆動電流値Cのとりうる値は、定義線DFYのようになる。
【0061】
図7(A)に示すように、各フレームにおいて、グローバル露光期間T0において目標積分光量ILを撮像センサ44に与える場合、光源部20が目標発光量E0で発光するように光量制御部24から駆動電流を伝達する。ただし、制御信号に応じた駆動電流を光源部20に伝達する際に、駆動電流のばらつきが発生する。
図7(B)に示すように、駆動電流のばらつきがある場合、光量制御部24が目標発光量E0となるように制御しても実際の発光量は、目標発光量E0を上回ったり、下回ったりするためグローバル露光期間T0で得られる積分光量ILaは、目標積分光量ILとは異なる値になりうる。積分光量のばらつきは、撮像画像間の明るさの比率等が不安定になる撮像ばらつきに繋がり、複数の撮像画像から1枚の観察画像を取得する際に、光量比に基づく合成の精度が悪くなる。
【0062】
駆動電流ばらつきの影響を受けずに、グローバル露光期間T0内に目標積分光量ILを達成したフレームを取得するには、目標発光量E0よりも大きい発光量でグローバル露光期間T0よりも短い露光期間で露光させ、目標積分光量ILに達したら発光を停止させるように光量制御する手法が挙げられる。光源25に対応する光検出器26を用いて、検出したPD受光値により各フレームの光量の信号をモニターし、一定期間ごとの受光量を積算光量として計測し、目標積分光量ILに達したタイミングを検出し、発光の停止を制御する。また、APCによるフィードバック制御を用いて1フレーム中の積分光量の計測を行う。
【0063】
図8に示すように、グローバル露光期間T0内に確実に積分光量を目標積分光量ILで受光するために、光源部20において、目標発光量E0よりも大きい発光量E2で発光する。発光量E2は、駆動電流のばらつきが生じても目標発光量E0以下にはならないように、ばらつきの振れ幅などから決定することが好ましい。目標発光量E0よりも高光量で発光することで、ばらつきにより発光量が減少しても、グローバル露光期間T0よりも短期間で目標積分光量ILを達成できる。目標発光量E0から変更した発光量E2は、ばらつきの最大値よりも大きい値となるように、下限値を設定することが好ましい。
【0064】
積分光量が目標積分光量ILよりも大きい値となるのを防ぐために、積分光量を、積算光量としてリアルタイムで計測し、目標積分光量ILを達成したタイミングで発光を終了させる。撮像フレーム中の発光量を、グローバル露光期間よりも短い一定期間であるサンプリング周期で小刻みに測定し、取得した積算光量を計測する。例えば、グローバル露光期間10msに対し、サンプリング周期1μsや4μsで一定期間ごとの測定をする。
【0065】
図9に示すように、設定したサンプリング周期p秒ごとに発光量を計測し、合計値が目標積分光量ILに達した時点で発光を停止する。具体的には、目標発光量E0より高く設定した発光量E2による発光を、サンプリング周期p秒ごとに計測し、発光量を積算した積算光量ALnを求める。積算光量ALnは、サンプリング周期p秒をn回計測した発光量の積算値である。積算光量AL1は、n=1、すなわち1回のサンプリング周期p秒で得られた発光量であり、積算光量AL2は、n=2、すなわち2回のサンプリング周期p秒で得られた合計の発光量である。同様に、サンプリング周期p秒を3回経た際に得られた合計の発光量は積算光量AL3となる。積算光量ALnが目標積分光量ILに達した時点で発光を停止させる制御を、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて実施する。
【0066】
目標積分光量ILに達するまでに要したn回のサンプリング周期p秒の合計時間であるp×n秒間が露光期間T2となる。サンプリング周期が短い間隔であるほど積算光量ALnを細かく計測できるため、積算光量ALnが目標積分光量ILとの差異が小さいタイミングで発光を停止できる。
【0067】
光量制御部24は、目標積分光量ILから算出される目標駆動電流値C0より大きい駆動電流値で光源部20の各光源を駆動させ、グローバル露光期間内に目標積算光量が得られるようにする。積分光量の制御は、発光量を一定期間ごとに読み取り、目標光量に達したらそのフレームにおける発光を停止させる。例えばサンプリング周期pは0.5μs~100μsのいずれかの期間を設定する。発光量E2を発光させ、グローバル露光期間T0内に目標光量を得るために、光量制御部24はサンプリング周期ごとに目標駆動電流値C0より大きい値となる駆動電流を光源部20に伝達させる制御を行う。
【0068】
駆動電流値のばらつきに関して、高光量時では、積分光量に与える影響は比較的小さくなるが、低光量時では積分光量に占める光出力のばらつきが大きくなる。そのため、発光期間と発光量を一定となるように設定しても各フレームにおける積分光量が異なり、積算光量を合計した積分光量が計算値通りにならず、明るさがばらつく。
【0069】
マルチフレーム観察モードでは、複数の異なる照明光のフレーム(撮像画像)による観察画像の生成において、照射する相互間の積分光量の比率を一定に制御することにより、撮像センサ44が受光する相互間の受光量の比率が一定となる。したがって、複数のフレームにおいて、それぞれのR画素値、G画素値、およびB画素値の比率が同じになり、相互間の画像信号比が一定となる。そのため、光量制御部24は、露光期間をグローバル露光期間T0内に留めることに加え、積分光量が過不足なく目標積分光量ILに達するように1フレーム中の光量を制御する。
【0070】
発光量の増加には、目標発光量E0から倍率で変化させるパターンや、固定値で変化させるパターンなどが考えられ、複数のパターンを使い分けることが好ましい。光源部20において、2種類の照明光の光量制御を行う場合を例に説明する。マルチフレーム観察では、照明光ごとに観察対象の画像を取得しても、複数の画像における相互間の画像信号比を一定にする。
【0071】
2種類の照明光を用いたマルチフレーム観察では、異なる波長帯域の照明光を発光する1つの光源25を有する光源部20(
図3、
図4参照)による発光や、以下に記すように、1種類ずつ異なる波長帯域の照明光を発光する、レーザダイオードまたは発光ダイオードである第1光源25a、第2光源25bを有する光源部20(
図10、
図11参照)による発光が考えられる。
【0072】
図10に示すように、光源部20において、光量制御部24が発する駆動電流により各々独立に、光量および消灯タイミング等を制御される第1光源25a及び第2光源25bには、それぞれ第1光検出器26a、第2光検出器26bが設けられている。第1光源25aが出射する第1光は、
図3で示した光源25と同様に、ビームスプリッタSにより一部反射し、第1光検出器26aが反射光を受光し、残りの第1光がレンズLGを介してライトガイド29に入射する。また第2光源25bが出射する第2光は、第1光と同様に、反射光を第2光検出器26bが受光し、残りの第2光もレンズLgを介してライトガイド29に入射するが、第1光とは異なる位置から出射されるため合波部材Cmを用いる必要がある。
図10における合波部材Cmは、第1光は透過し、第2光は反射するものを用いる。レンズLgを介した第1光と第2光は入射光Ebとしてライトガイド29に入射する。
【0073】
合波部材Cmは、ダイクロイックミラーまたはダイクロイックプリズム等であり、波長に応じて光を透過又は反射させることで光を合波し、ライトガイド29に入射することができる。合波部材Cmの反射又は透過させる光の波長は任意に設定できる。合波部材Cmは、ビームスプリッタSを透過した光の光路上、すなわちビームスプリッタSを挟んだ各光源及びレンズLの反対側であればよく、合波ができるのであれば合波部材Cmの設置位置は特に限定しない。
【0074】
図11に示すように、異なる2つの光源25a、25bと、各光源に対応する光検出器26a、26bを有する光源部20は、光量制御部24から駆動電流を受け付ける。各光源は駆動電流値に応じた発光を行い、各光検出器は検出した受光量の情報を光量制御部24及び計測部22に伝達する。
【0075】
シングルフレーム観察モードでは、第1光源25aと、第2光源25bを同時に点灯、又はいずれか一方のみを点灯することによる発光で、白色光の照明である通常画像の撮像を行う。いずれか一方のみを点灯する場合は、白色光などの広帯域光であることが好ましく、両方を点灯する場合は、2種類の発光を合わせることで白色光などの広帯域光となることが好ましい。
【0076】
マルチフレーム観察モードでは、第1照明光と第2照明光を交互に、又は一定のパターンで点灯と消灯を切り替えるマルチフレーム発光を行う。第1照明光と第2照明光は、一方が広帯域光かつもう一方が特殊光であってもよいし、第1照明光と第2照明光を組み合わせることで広帯域光となる組み合わせでもよい。第1照明光と第2照明光の波長帯域は、異なる波長帯域であってもよいし、同じ波長帯域であってもよい。
【0077】
なお、グローバル露光期間T0内に目標積分光量ILを得られる場合であっても、発光量が低すぎると、消灯状態から点灯状態に切り替わる際に、時間がかかる場合や、発光量に対するばらつきの振れ幅の割合が大きくなる場合がある。そのため、低光量の発光は、最低値を設定し、一定の発光量以上は維持することは好ましい。
【0078】
図12に示すように、第1照明光と第2照明光の点灯と消灯を交互に切り替える発光において、例えば、グローバル露光期間T0が10msであり、目標発光量が100、露光期間が10msである第1照明光と、目標発光量が40、露光期間が5msである第2照明光で交互に発光するパターンがある。縦軸が第1照明光と第2照明光におけるそれぞれの発光量である第1発光量と第2発光量であり、横軸が時間である。1フレームごとに照明光を切り替える場合は、第Nフレームでは第1照明光による発光を行い、第N+1フレームでは第2照明光による発光、第N+2フレームでは第Nフレームと同様に第1照明光による発光、第N+3フレームでは第N+1フレームと同様に第2照明光による発光を行う。目標発光量は、各フレームで目標駆動電流値の通りに照明光を発光した場合の発光量である。積算光量の合計値である積分光量は、各フレームにおいて斜線で囲った範囲である。
【0079】
これに対し、駆動電流のばらつきがあっても、確実にグローバル露光期間内に目標積分光量を取得するために、各照明光の目標発光量を増加させた発光パターンで発光を行う。発光量は、各照明光の発光における相対的な数値であり、単位は特に限定しない。なお、光量のばらつきの表示は省略する。
【0080】
図13~
図17に示すように、マルチフレーム観察モードにおける第1発光量と第2発光量の5つの光量増加のパターンを、第1~第5パターンとして説明する。また、
図13~
図17における光量のばらつきの表示も、
図12と同様に省略する。なお、
図12に示した、目標駆動電流値の通りに発光した場合の発光量を、点線で表す。
【0081】
図13に示すように、第1パターンでは、発光量を通常値から一定倍率で増加させる。例えば目標発光量に対して10%増加させることで、第1発光量を110、第2発光量を44にする。
【0082】
図14に示すように、第2パターンでは、発光量を通常値から固定値で増加させる。例えば光量を増加させることで、第1発光量を105、第2発光量を45にする。
【0083】
図15に示すように、第3パターンでは、発光量に応じて光量増加率を変化させて通常値から増加させる。撮像ばらつきは、低光量であるほうが大きくなるため、光量の通常値が低い発光に対する増加率を高く設定する。例えば光量が50以下の場合は、20%増加させ、51以上の場合は10%増加させることで、第1発光量を110、第2発光量を48に設定する。
【0084】
図16に示すように、第4パターンでは、目標発光量が一定値以下では固定値にし、固定値より大きい値では発光量を一定倍率、通常値から増加させる。例えば目標発光量が50以下の場合は、55に固定し、51以上である場合は10%増加させることで、第1発光量を110、第2発光量を55に設定する。
【0085】
図17に示すように、第5パターンでは、第1~第4パターンとは異なり、グローバル露光期間T0の終了に合わせた発光を行う。発光量の増加方法は、第1~第4パターンのいずれかの方法であってもよい。
図17では、第2パターンで固定値として発光量を10ずつ増加させた例を用いる。なお、駆動電流のばらつきによる影響を考慮してグローバル露光期間T0の終了時よりも少し前のタイミングに発光が終わるように発光タイミングを調整する。
【0086】
いずれの発光パターンであっても、各フレームの照明光で観察対象を照射し、撮像センサ44により撮像を行うことで撮像画像を取得し、異なる照明光による複数の撮像画像を用いて1つの観察画像を生成する。マルチフレーム観察モードでは、連続する異なる照明光の発光を行ったフレームの撮像画像、例えば第Nフレームの撮像画像と、第N+1フレームの撮像画像から1つの観察画像を生成することができる。なお、複数の撮像画像から観察画像を生成する方法は、他の方法であってもよい。
【0087】
図18に示すフローチャートに沿って、本実施形態の内視鏡システム10におけるストロボ発光時の光量制御を行う動作の一連の流れについて説明する。内視鏡システム10は、内視鏡11、プロセッサ装置13、又は光源装置12のいずれかに対するユーザ操作により、観察モードをマルチフレーム観察モードに設定する(ステップST110)。マルチフレーム観察モードに切り替わることにより、マルチフレーム観察モードにおける発光パターンに含まれる各フレームの目標発光量の情報を取得する(ステップST120)。目標駆動電流値などの目標発光量の情報に基づいて、マルチフレーム観察モードにおける発光パターンと同様の照明光において、駆動電流値を決定して目標発光量よりも大きい発光量となる発光を開始する(ステップST130)。なお、発光パターンの決定は、あらかじめ第1~第5パターンなどを登録しておき、登録内容から変更がある場合にユーザ操作等で変更を行っても良し、発光開始する際にその都度設定してもよい。
【0088】
マルチフレーム観察モードの発光を開始すると、光検出器26が、対応する光源25の照明光を受光して検出する(ステップST140)。計測部22は、光検出器26から発光期間内にサンプリング周期ごとの受光量の取得を、複数回行い、受光量から光源の発光量を算出する(ステップST150)。また、計測部22は、発光期間内のサンプリング周期ごとの発光量を積算した積算光量を取得する(ステップST160)。光量制御部24により積算光量の合計値である積分光量が目標積分光量ILの到達時に、発光を停止する(ステップST170)。次のフレームでも連続して同じ光源で発光する場合(ステップST180でY)は、同様の発光を繰り返す(ステップST130)。
【0089】
次のフレームにおいて、同じ光源で発光しない場合(ステップST180でN)、かつ異なる光源に切り替える場合(ステップST190でY)は、切り替えた光源における目標発光量を取得し、それよりも大きい発光量で発光を行う(ステップST120)。次のフレームにおいて、同じ光源で発光しない場合(ステップST180でN)、かつ異なる光源に切り替えも行わない場合(ステップST190でN)は、マルチフレーム観察モードからシングルフレーム観察モードに切り替え、一連の流れを終了する(ステップST200)。発光期間は、撮像を行う露光期間であり、発光期間ごとに取得した複数の撮像画像から1つの観察画像を生成する。なお、シングルフレーム観察モードへの切り替えではなく、そのまま内視鏡観察を終了してもよい。
【0090】
上記フローチャートのマルチフレーム観察モードでは、各フレームで発光を行う内容であり、非発光のフレームを含まない、各フレームは第1照明光又は第2照明光のいずれかが発光する発光パターンとしているが、発光を行わないフレームをマルチフレーム観察モードにおける発光パターンに含んでいてもよい。
【0091】
実施例として2種類の照明光を発光する2つの光源を備えた光源装置12について説明したが、それよりも多くの種類の照明光を発光する光源装置12を用いてもよい。例えば、互いに異なる波長帯域の光を発光する4種類の光源を備えた光源装置12におけるマルチフレーム観察モードを実施してもよい。以下に、4種類の光源を用いた光源装置について説明する。
【0092】
図19に示すように、4種類の光源を備えた光源装置12では、第1光源25a、第2光源25b、第3光源25c、及び第4光源25dと、各光源に対応する第1光検出器26a、第2光検出器26b、第3光検出器26c、及び第4光検出器26dが備わる。光源部20では、
図3と同様に、各光検出器はビームスプリッタSにより一部反射した対応する光源からの光を受光し、反射しなかった光はレンズLgを介してライトガイド29に入射する入射光Ecとなる。第2光~第4光も、第1光の場合と同様にレンズLgを介してライトガイド29に入射するが、第1光とは異なる位置から出射されるため、合波部材Cmを用いてライトガイド29に入射させる必要がある。複数の合波部材Cmにおけるそれぞれの透過及び反射する帯域幅については、第2~第4光がライトガイド29に入射するものであればよい。
【0093】
図20に示すように、第1光源25a~第4光源25dを有する光源部20は、光量制御部24から、各々独立に光量および消灯タイミング等を制御する駆動電流を受け付ける。各光源25a~25dは駆動電流値に応じた発光を行い、各光検出器26a~26dは検出した受光量の情報を光量制御部24及び計測部22に伝達する。消灯タイミングの決定には、各光検出器が検出した、各光源から出射された光の反射光を受光した受光量を用いる。
【0094】
図21に示すように、互いに異なる波長の光を発光する4種類の光源の例として、第1光として赤色光Rを発光する第1光源25a、第2照明光として緑色光Gを発する第2光源25b、第3光として青色光Bを発する第3光源25c、及び第4光として紫色光Vを発する第4光源25dを備えた光源装置12がある。
【0095】
シングルフレーム観察モードでは、各光源を同時に点灯することによって、第1~第4光を同時に発光し、白色光の照明である通常画像の撮像を行う。マルチフレーム観察モードでは、第1光~第4光の発光を少なくとも2種類以上の発光パターンで点灯と消灯を切り替えるマルチフレーム発光を行う。発光パターンとしては、第1光~第3光を同時発光するフレームと、第4光のみを発光するフレームを交互に繰り返し、表示画像を作成する。第4光を異なるフレームで発光することで、第4光のみを強調した観察画像が得られる。
【0096】
4種類の互いに異なる波長の光を発する光源を備える光源装置12に限らず、3種類や5種類以上の光源を用いてもよい。また、発光する波長の帯域も、用途に応じて適宜変更することが好ましい。例えば、青色光Bに代えて、短波長青色光を発光する光源と、長波長青色光を発光する光源を用いてもよい。
【0097】
上記実施形態において、計測部22、光量制御部24、撮像制御部45、画像信号取得部50、DSP51、ノイズ低減部52、画像処理部53、表示制御部56といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0098】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGA、CPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせ等)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0099】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(Circuitry)である。また、記憶部のハードウェア的な構造はHDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【符号の説明】
【0100】
10 内視鏡システム
11 内視鏡
11a 挿入部
11b 操作部
11c 湾曲部
11d 先端部
11e モード切替スイッチ
12 光源装置
13 プロセッサ装置
14 ディスプレイ
15 ユーザインターフェース
20 光源部
22 計測部
24 光量制御部
25 光源
25a 第1光源
25b 第2光源
25c 第3光源
25d 第4光源
26 光検出器
26a 第1光検出器
26b 第2光検出器
26c 第3光検出器
26d 第4光検出器
29 ライトガイド
30 照明光学系
32 照明レンズ
40 撮像光学系
42 対物レンズ
44 撮像センサ
45 撮像制御部
46 CDS/AGC回路
48 A/Dコンバータ
50 画像信号取得部
51 DSP
52 ノイズ低減部
53 画像処理部
56 表示制御部
AL1 積算光量
AL2 積算光量
AL3 積算光量
ALn 積算光量
B 青色光
Cm 合波部材
DFX 定義線
DFY 定義線
Ea 入射光
Eb 入射光
Ec 入射光
G 緑色光
IL 目標積分光量
ILa 積分光量
L レンズ
Lg レンズ
R 赤色光
S ビームスプリッタ
ST110~ST200 ステップ
V 紫色光