(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115178
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】エチレン系重合用触媒
(51)【国際特許分類】
C08F 4/6592 20060101AFI20240819BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F10/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020723
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆治
(72)【発明者】
【氏名】若林 保武
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA01Q
4J100AA02P
4J100AA15Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA03
4J100DA06
4J100DA07
4J100DA09
4J100DA51
4J100DA52
4J100FA10
4J100FA19
4J100GC07
4J100GC26
4J128AA02
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD06
4J128AD08
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15A
4J128BC15B
4J128CA30A
4J128CA32A
4J128CB63A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EC01
4J128FA02
4J128GA03
4J128GA04
4J128GA06
4J128GA26
(57)【要約】
【課題】 加工性と成形体の機械物性のバランスに優れる成形体となりうるエチレン系重合体を、簡素な工程で製造可能なエチレン系重合用触媒を提供する。
【解決手段】 メタロセン錯体(A)、有機変性粘土(B)及びアルキルアルミニウム(C)を構成成分とするエチレン系重合用触媒であって、メタロセン錯体(A)が、少なくとも超高分子量ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-1)、ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-2)であり、その構成割合がメタロセン錯体(A-1)/メタロセン錯体(A-2)(物質量比)=0.05以上19以下であるエチレン系重合用触媒。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン錯体(A)、有機変性粘土(B)及びアルキルアルミニウム(C)を構成成分とするエチレン系重合用触媒であって、メタロセン錯体(A)が、少なくとも超高分子量ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-1)、ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-2)であり、その構成割合がメタロセン錯体(A-1)/メタロセン錯体(A-2)(物質量比)=0.05以上19以下であることを特徴とするエチレン系重合用触媒。
【請求項2】
メタロセン錯体(A-1)が、下記一般式(1)で示されるメタロセン錯体であることを特徴とする請求項1に記載のエチレン系重合用触媒。
【化1】
[式中、M
1はジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、X
1は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、R
1は下記一般式(2)で示されるシクロペンタジエニル基であり、
【化2】
(式中、R
4~R
7は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基である。)
R
2は下記一般式(3)で示されるフルオレニル基であり、
【化3】
(式中、R
8~R
15は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数7~30アリールアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、そのうち少なくとも一つは炭素数1~20のアルキルアミノ基または4級の炭素原子を有する炭素数4~20の炭化水素基である。)
R
3は、下記一般式(4)または下記一般式(5)で示されるR
1とR
2の架橋単位であり、
【化4】
【化5】
(式中、R
16~R
17およびR
18~R
19は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、M
2はケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
lは1~5の自然数である。]
【請求項3】
メタロセン錯体(A-2)が、下記一般式(6)または(7)で示されるメタロセン錯体であることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレン系重合用触媒。
【化6】
【化7】
[式中、M
3及びM
4はチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、X
2及びX
3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、R
20及びR
23は下記一般式(8)で表されるシクロペンタジエニル基または下記一般式(9)で表されるインデニル基であり、
【化8】
【化9】
(式中、R
25~R
28及びR
29~R
34各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基である。)
R
21及びR
24は下記一般式(10)~(12)で示されるシクロペンタジエニル基、インデニル基またはフルオレニル基であり、
【化10】
【化11】
【化12】
(式中、R
35~R
38、R
39~R
44及びR
45~R
52は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基である。)
R
22は、下記一般式(13)または下記一般式(14)で示されるR
20とR
21の架橋単位であり、
【化13】
【化14】
(式中、R
53~R
54およびR
55~R
56は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、M
5はケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
mは1~5の自然数である。]
【請求項4】
有機変性粘土(B)が、一般式(15)で示されるアルキルアンモニウム塩または一般式(16)で示されるアルキルアニリニウム塩の変性粘土または変性粘土鉱物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン系重合用触媒。
【化15】
【化16】
(式中、R
57は炭素数12~30のアルキル基または炭素数12~30のアルケニル基であり、R
58~R
59及びR
60~R
61は炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基であり、(A
1)及び(A
2)は塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンまたは酢酸イオンであり、p及びqは1~3の自然数である。)
【請求項5】
有機変性粘土(B)が、メジアン径4~30μm、かつ、モード径6~25μmを有する有機変性粘土であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン系重合用触媒。
【請求項6】
有機変性粘土(B)が、有機変性モンモリロナイトまたは有機変性ヘクトライトであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン系重合用触媒。
【請求項7】
分子量分布のピークが多峰性を示すエチレン系重合体用であることを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン系重合用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なエチレン系重合用触媒に関するものであり、さらに詳細には、高強度かつ加工性に優れ、特に分子量分布のピークが二峰性以上の多峰性を示すエチレン系重合体を簡易な装置で製造可能なエチレン系重合用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超高分子量ポリエチレンは、粘度平均分子量(Mv)で100万以上に相当する極めて高い分子量を有していることから、耐衝撃性、自己潤滑性、耐摩耗性、耐候性、耐薬品性、寸法安定性等に優れており、エンジニアリングプラスチックに匹敵する高い物性を有している。このため、各種成形方法により、ライニング材、食品工業のライン部品、機械部品、人工関節、スポーツ用品、微多孔膜等の用途への適用が試みられている。
【0003】
しかし、超高分子量ポリエチレンは、その高い分子量故に、溶融時の流動性が極めて低く、分子量が数万から約50万の範囲にある通常のポリエチレンのように混練押出により成形することは困難である。そこで、超高分子量ポリエチレンは、重合により得られた重合体粉末を直接焼結する方法、圧縮成形する方法、間歇圧縮させながら押出成形するラム押出機による成形方法、溶媒等に分散させた状態で押出成形した後、溶媒を除去する方法等の方法が行われている。しかし、これらの成形加工法は、技術的難易度が高く、成形体を得るのが困難であるという課題、さらには、高分子鎖の絡み合いによる局部的な高粘度部位の存在やポリマー粒子の流動性不足等に起因して圧縮時に疎な部分が形成されることによりウイークポイントが発生するため、得られる成形体が本来有するはずであろう機械的強度を発現することができず、機械的強度が比較的低くなるという課題があった。
【0004】
この成形体の機械的強度を上げる手段として、メタロセン触媒等の触媒を用いた分子量分布の狭い超高分子量ポリエチレンが提案されているが、メタロセン触媒から得られる超高分子量ポリエチレンには、成形品としての性能向上は見られるものの、溶融粘度が高くなるため、分子量の高くなるほどパウダーの粒界での融着不良が発生するなどして、分子量から期待される効果を十分発現することができず、製品物性のバランスに劣るという課題があった。
【0005】
この対策として、メタロセン触媒を用いて二段以上のエチレンの逐次重合を行うことにより、加工性と成形体の機械物性のバランスに優れる成形体を供給することが可能な超高分子量ポリエチレンの製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で提案されている多段の逐次重合を工業的に行う場合、複数の反応器と多数の接続配管が必要になるなど工程が複雑となるため、コストと管理の点に課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、強度、耐薬品性に優れ、かつ、伸び、靭性、耐衝撃性等にも優れる、加工性と成形体の機械物性のバランスに優れる成形体を供給することが可能なエチレン系重合体、特に分子量分布のピークが多峰性を示すエチレン系重合体を、簡素な工程で製造可能なエチレン系重合用触媒を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、触媒成分として、超高分子量ポリエチレンの製造に適したメタロセン錯体とポリエチレンの製造に適したメタロセン錯体とを特定の割合で用いることにより、一段の重合にて、加工性と成形体の機械物性のバランスに優れる成形体を供給することが可能なエチレン系重合体を容易に製造することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、メタロセン錯体(A)、有機変性粘土(B)及びアルキルアルミニウム(C)を構成成分とするエチレン系重合用触媒であって、メタロセン錯体(A)が、少なくとも超高分子量ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-1)、ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-2)であり、その構成割合がメタロセン錯体(A-1)/メタロセン錯体(A-2)(物質量比)=0.05以上19以下であることを特徴とするエチレン系重合用触媒に関するものである。
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明のエチレン系重合用触媒は、メタロセン錯体(A)、有機変性粘土(B)及びアルキルアルミニウム(C)を構成成分とするメタロセン系触媒と称される範疇に属するものである。そして、より容易な製造方法、例えば一段重合においても超高分子量ポリエチレン成分とポリエチレン成分とに由来する分子量分布のピークにおける二峰性、更に多峰性を有するエチレン系重合体の製造が可能となることから、メタロセン錯体(A)として、超高分子量ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-1)、ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-2)の少なくとも2種を組み合わせて構成成分とするものである。その際のメタロセン錯体(A-1)とメタロセン錯体(A-2)の構成割合は、(A-1)/(A-2)(物質量比)=0.05以上19以下である。ここで、物質量とはモル(mol)である。そして、(A-1)/(A-2)が0.05未満である場合、得られるエチレン系重合体は通常のポリエチレンと変わらず、機械物性の向上を望むことが困難となる。一方、19を越える場合、超高分子量ポリエチレン成分の多いものとなり、成形性に課題を発生するものとなる。なお、本発明における超高分子量ポリエチレンとは、一般的に超高分子量ポリエチレンと称される重量平均分子量100万以上のものを便宜上称する。また、ポリエチレンとは、一般的に汎用ポリエチレン(重量平均分子量数万~数十万程度)として認識されているものを便宜上称する。
【0013】
本発明のエチレン系重合用触媒を構成する超高分子量ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-1)は、超高分子量ポリエチレンの生成が可能なメタロセン錯体であればよく例えば下記一般式(1)で表されるものを挙げることができる。
【0014】
【0015】
[式中、M1はジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、X1は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、R1は下記一般式(2)で示されるシクロペンタジエニル基であり、
【0016】
【0017】
(式中、R4~R7は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基である。)
R2は下記一般式(3)で示されるフルオレニル基であり、
【0018】
【0019】
(式中、R8~R15は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数7~30アリールアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、そのうち少なくとも一つは炭素数1~20のアルキルアミノ基または4級の炭素原子を有する炭素数4~20の炭化水素基である。)
R3は、下記一般式(4)または下記一般式(5)で示されるR1とR2の架橋単位であり、
【0020】
【0021】
【0022】
(式中、R16~R17およびR18~R19は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、M2はケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
lは1~5の自然数である。]。
【0023】
該メタロセン錯体(A-1)は、上記一般式(1)で示されるメタロセン化合物であり、R1であるシクロペンタジエニル基とR2であるフルオレニル基でM1をサンドウィッチする構造をとると共に、R3によりR1とR2とを架橋した構造を有するものである。
【0024】
ここで、M1は、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、これら特定の金属原子であることにより、超高分子量ポリエチレン成分を生産効率よく製造することが可能となる。
【0025】
X1は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、これら特定の置換基であることにより分子量の非常に高いポリエチレン成分を製造することが可能となる。そして、X1の具体的例示として、例えば水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基やそれらの異性体置換基などの炭素数1~30のアルキル基、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニレニル基などの炭素数6~30のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基などの炭素数7~30のアリールアルキル基、またはメチルフェニル基、エチルフェニル基、メチルナフチル基などの炭素数7~30のアルキルアリール基、トリメチルシリル基などのアルキルシリル基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基などのアルキルアミノ基などが挙げられる。
【0026】
R1は、上記一般式(2)で示されるシクロペンタジエニル基であり、R4~R7は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、これら特定の置換基であることにより非常に分子量の高いポリエチレン成分を効率よく製造することが可能となる。そして、R4~R7の具体的例示としては、上記したX1の例示と同様のものを挙げることができ、R1の具体的例示としては、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n-ブチル-シクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、ジエチルシクロペンタジエニル基、メトキシシクロペンタジエニル基、N,N-ジメチルアミノシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基などが挙げられる。
【0027】
R2は、上記一般式(3)で示されるフルオレニル基であり、R8~R15は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数6~30のアリールアミノ基、炭素数7~30のアリールアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、そのうち少なくとも一つが炭素数1~20のアルキルアミノ基または4級の炭素原子を有する炭素数4~20の炭化水素基である。R3で示されるフルオレニル基に炭素数1~20のアルキルアミノ基または4級の炭素原子を有する炭素数4~20の炭化水素基の置換基を有することにより、該メタロセン錯体(A-1)は超高分子量ポリエチレン成分を製造可能な錯体となる。R8~R15の具体的例示としては、上記したR4~R7の例示と同様のものを挙げることができ、R2の具体的例示としては、2-tert-ブチル-9-フルオレニル基、2,7-ジ-tert-ブチル-9-フルオレニル基、2-(3,3-ジメチルプロピル)-9-フルオレニル基、2,7-ジ-(3,3-ジメチルプロピル)-9-フルオレニル基、2-メチル-7-tert-ブチル-9-フルオレニル基、2-エチル-7-tert-ブチル-9-フルオレニル基、2-メトキシ-7-tert-ブチル-9-フルオレニル基、2-エトキシ-7-tert-ブチル-9-フルオレニル基、2-N,N-ジメチルアミノ-9-フルオレニル基、2-N,N-ジエチルアミノ-9-フルオレニル基、2-N,N-ジメチルアミノ-7-tert-ブチル-9-フルオレニル基、2-N,N-ジエチルアミノ-7-tert-ブチル-9-フルオレニル基、2,7-ビス(N,N-ジメチルアミノ)-9-フルオレニル基、2,7-ビス(N,N-ジエチルアミノ)-9-フルオレニル基等を挙げることができる。
【0028】
R3は、該R1と該R2の架橋単位であり、上記一般式(4)又は上記一般式(5)で表される架橋単位であり、R16~R17及びR18~R19は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、これら特定の置換基であることにより分子量の高いポリエチレン成分を製造することが可能となる。そして、R16~R17及びR18~R19の具体的例示として、上記したX1の例示と同様のものを挙げることができる。
【0029】
そして、lは1~5の自然数である。
【0030】
該メタロセン錯体(A-1)の具体例として、例えば、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2-tert-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(tert-ブチル)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2-N,N-ジメチルアミノ-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス((N,N-ジメチル)アミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2-メチル-7-N,N-ジメチルアミノ-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2-メトキシ-7-N,N-ジメチルアミノ-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2-メチル-7-tert-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2-メトキシ-7-tert-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-tert-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(tert-ブチル)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-N,N-ジメチルアミノ-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス((N,N-ジメチル)アミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-メチル-7-N,N-ジメチルアミノ-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-メトキシ-7-N,N-ジメチルアミノ-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-メチル-7-tert-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-メトキシ-7-tert-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライドなどのジルコニウム化合物、ジルコニウム原子をハフニウム原子に変えた錯体や上記メタロセン錯体のジクロロ体をジブロモ体、ジヨード体、ジメチル体、ジエチル体、ジメトキシ体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えた化合物などを例示することができる。
【0031】
本発明のエチレン系重合用触媒を構成するポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-2)としては、ポリエチレン成分の生成が可能なメタロセン錯体であればよく、例えば下記一般式(6)または(7)で表されるものを挙げることができる。
【0032】
【0033】
【0034】
[式中、M3及びM4はチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、X2及びX3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、R20及びR23は下記一般式(8)で表されるシクロペンタジエニル基または下記一般式(9)で表されるインデニル基であり、
【0035】
【0036】
【0037】
(式中、R25~R28及びR29~R34各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基である。)
R21及びR24は下記一般式(10)~(12)で示されるシクロペンタジエニル基、インデニル基またはフルオレニル基であり、
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
(式中、R35~R38、R39~R44及びR45~R52は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基である。)
R22は、下記一般式(13)または下記一般式(14)で示されるR20とR21の架橋単位であり、
【0042】
【0043】
【0044】
(式中、R53~R54およびR55~R56は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、M5はケイ素原子、ゲルマニウム原子または錫原子である。)
mは1~5の自然数である。]。
【0045】
該メタロセン錯体(A-2)は、上記一般式(6)または(7)で示されるメタロセン化合物であり、R20とR21でM3をサンドウィッチし、さらにR22によりR20とR21とを架橋した構造を有するもの、またはR23とR24でM4をサンドウィッチする構造をとるものある。
【0046】
ここで、M3またはM4は、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子である。
【0047】
X2またはX3は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、これら特定の置換基であることによりポリエチレン成分を製造することが可能となる。そして、X2またはX3の具体的例示として、例えば水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基やそれらの異性体置換基などの炭素数1~30のアルキル基、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニレニル基などの炭素数6~30のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基などの炭素数7~30のアリールアルキル基、またはメチルフェニル基、エチルフェニル基、メチルナフチル基などの炭素数7~30のアルキルアリール基、トリメチルシリル基などのアルキルシリル基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基などのアルキルアミノ基などが挙げられる。
【0048】
R20及びR23は、上記一般式(8)及び(9)で示されるシクロペンタジエニル基またはインデニル基であり、R25~R28及びR29~R34は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、これら特定の置換基であることによりポリエチレン成分を効率よく製造することが可能となる。そして、R25~R28及びR29~R34の具体的例示としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基やそれらの異性体置換基などの炭素数1~30のアルキル基、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニレニル基などの炭素数6~30のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基などの炭素数7~30のアリールアルキル基、またはメチルフェニル基、エチルフェニル基、メチルナフチル基などの炭素数7~30のアルキルアリール基、トリメチルシリル基などのアルキルシリル基等を挙げることができ、R20及びR23の具体的例示としては、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n-ブチル-シクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、ジエチルシクロペンタジエニル基、メトキシシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、例えばインデニル基、メチルインデニル基、エチルインデニル基、ジメチルインデニル基、メトキシインデニル基、エトキシインデニル基、トリメチルシリルインデニル基などが挙げられる。
【0049】
R21及びR24は、上記一般式(10)~(12)で示されるシクロペンタジエニル基、インデニル基またはフルオレニル基であり、R24は上記一般式(11)~(12)で示されるインデニル基またはフルオレニル基であり、R35~R38、R39~R44及びR45~R52は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基である。これらの置換基を有することにより、該メタロセン錯体(A-2)は、メタロセン錯体(A-1)のように超高分子量ポリエチレン成分を生成することなく、通常のポリエチレン成分を高活性にて製造可能な錯体となる。R35~R38、R39~R44及びR45~R52の具体的例示としては、上記したR25~R28及びR29~R34の例示と同様のものを挙げることができ、R21及びR24の具体的例示としては、例えばシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n-ブチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、ジエチルシクロペンタジエニル基、メトキシシクロペンタジエニル基、トリメチルシリルシクロペンタジエニル基、インデニル基、メチルインデニル基、エチルインデニル基、ジメチルインデニル基、メトキシインデニル基、エトキシインデニル基、トリメチルシリルインデニル基などが挙げられ、R24の具体的例示としては、例えばインデニル基、メチルインデニル基、エチルインデニル基、ジメチルインデニル基、メトキシインデニル基、エトキシインデニル基、トリメチルシリルインデニル基、フルオレニル基、メチルフルオレニル基、エチルフルオレニル基、ジメチルフルオレニル基、メトキシフルオレニル基、トリメチルシリルフルオレニル基などを挙げることができる。
【0050】
R22は、該R20と該R21の架橋単位であり、上記一般式(13)又は(14)で表される架橋単位であり、R53~R54及びR55~R56は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~30の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~20のアルキルアミノ基、炭素数1~20のアルキルシリル基、炭素数2~20のアルコキシアルキレン基、炭素数3~20のジアルキルアミノアルキレン基、炭素数4~20のトリアルキルシリルアルキレン基であり、これら特定の置換基であることによりポリエチレン成分を製造することが可能となる。そして、R53~R54及びR55~R55の具体的例示として、上記したX2ないしX3の例示と同様のものを挙げることができる。
【0051】
そして、mは1~5の自然数である。
【0052】
該メタロセン錯体(A-2)の具体例として、例えば、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(ジシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレン(ジシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(ジシクロペンタジエニル)ジクロライド、ジフェニルメチレンジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレンジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド、ビスインデニルジルコニウムジクロライド、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2-メチルフルオレニル)ジクロライド、iso-プロピル(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-メチルフルオレニル)ジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジメチルフルオレニル)ジクロライドなどのジルコニウム化合物、ジルコニウム原子をチタン原子またはハフニウム原子に変えた化合物や上記メタロセン化合物のジクロロ体をジブロモ体、ジヨード体、ジメチル体、ジエチル体、ジメトキシ体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えた化合物などを例示することができ、その中でも、ポリエチレンを生産効率よく製造することが可能なエチレン系重合触媒となることからジルコニウム系化合物またはハフニウム系化合物であることが好ましい。
【0053】
また、該メタロセン錯体(A-1)及び該メタロセン錯体(A-2)はどちらも2種以上使用することも可能であり、それぞれで2種以上使用しても差し支えない。また更なるメタロセン錯体を含むものであってもよい。
【0054】
本発明のエチレン系重合用触媒を構成する有機変性粘土(B)は、有機化合物により変性された粘土であればよく、例えばイオン交換性の層間カチオンを有する粘土または粘土鉱物を一般式(15)で示されるアルキルアンモニウム塩または一般式(16)で示されるアルキルアニリニウム塩とイオン交換した粘土を挙げることができる。
【0055】
【0056】
【0057】
(式中、R57は炭素数12~30のアルキル基または炭素数12~30のアルケニル基であり、R58~R59及びR60~R61は炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基であり、(A1)及び(A2)は塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンまたは酢酸イオンであり、p及びqは1~3の自然数である。)
上記一般式(15)または(16)で示される化合物はアミンやアニリン等の塩基と酸の中和反応によって生じる塩であり、R57は炭素数12~30のアルキル基または炭素数12~30のアルケニル基であり、R57の具体的例示として、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ベヘニル基、テトラコシル基、トリアコンチル基、オレイル基を挙げることができる。R58~R59及びR60~R61は炭素数1~30のアルキル基または炭素数2~30のアルケニル基であり、R58~R59及びR60~R61の具体的例示として、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ベヘニル基、テトラコシル基、トリアコンチル基、ビニル基、アリル基、オレイル基を挙げることができる。(A1)及び(A2)は塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンまたは酢酸イオンである。上記一般式(15)の具体例としてはN,N-ジメチルドデシルアンモニウム、N,N-ジメチルオクタデシルアンモニウム、N,N-ジメチルベヘニルアンモニウム、N-メチルジオレイルアンモニウム等の塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩または酢酸塩等を挙げることができる。上記一般式(16)の具体例としてはN,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-ドデシルアニリニウム、N,N-オクタデシルアニリニウム等の塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩または酢酸塩等を挙げることができる。
【0058】
本発明のエチレン系重合用触媒を構成する有機変性粘土(B)における粒子径に制限はなく、なかでも、高活性を発現し、かつファインと呼ばれる微粉の比率が低い高品質のエチレン系重合体を提供することが可能なエチレン系重合用触媒となることから、メジアン径が4~30μm及び/またはモード径が6~25μmのものであることが好ましく、特にメジアン径が4~30μmかつモード径が6~25μmのものであることが好ましい。ここで、メジアン径とは、粉体粒度分布における50重量%累積径のことであり、モード径は最多頻度の粒子径である。なお、粉体粒度分布は、例えばレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。
【0059】
そして、該有機変性粘土(B)の粒子径を制御する際には様々な方法を選択することが可能であり、例えば変性前もしくは変性後の粘土の粉砕及び/または分級操作を挙げることができる。粉砕や分級操作についても特に制限はなく、粉砕としては乳鉢粉砕、ボールミル粉砕、ジェットミル粉砕を、分級としては篩分級、気流分級、重力分級、遠心分級、慣性分級を挙げることができるが、粉砕としてはジェットミル粉砕、分級としては気流分級が好ましい。
【0060】
該有機変性粘土(B)を構成する原料粘土または原料粘土鉱物は、層間に交換性のカチオンを多く有するスメクタイトが好ましく、安価で入手が容易なことからモンモリロナイトまたはヘクトライトが好ましい。また、該原料粘土または原料粘土鉱物にはゲル化防止剤としてピロリン酸ナトリウムやエチドロン酸ナトリウムが添加されたものであっても差し支えない。
【0061】
そして、原料粘土または原料粘土鉱物と上記一般式(15)または(16)で示される化合物により有機変性粘土(B)を調製する際にはイオン交換反応により調製することができ、該イオン交換反応は、水単独または水と有機溶剤との混合溶媒下で行うことができ、該有機溶剤としては水と混合し、上記一般式(15)または(16)で示される化合物を溶解させるものであれば特に制限はなく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランを例示することができる。水と有機溶剤との混合溶媒における両者の比に制限はなく、特にイオン交換反応が迅速に進行することから、水が20重量%以上であることが好ましい。また、イオン交換反応の温度や時間にも制限はなく、取り扱いやすさの観点から温度は20~80℃、時間は5分~3時間が好ましい。そして、イオン交換反応後に濾別、洗浄、乾燥、解砕をすることにより該有機変性粘土(B)を得ることができる。
【0062】
原料粘土または原料粘土鉱物と上記一般式(15)または(16)で示される化合物とのイオン交換反応により該有機変性粘土(B)を調製する際の物質量比は、特に高活性を発現するエチレン系重合用触媒の提供が可能となることから、原料粘土または原料粘土鉱物100g(乾燥重量)あたり、上記一般式(15)または(16)で示される化合物50~150mmolであることが好ましい。
【0063】
本発明のエチレン系重合用触媒を構成するアルキルアルミニウム(C)は、一般にアルキルアルミニウムと称される範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、その中でも、特にエチレン系重合体を粒子として生産効率よく製造することが可能なエチレン系重合用触媒となることから、下記一般式(17)で表されるアルキルアルミニウムであることが好ましい。
【0064】
【0065】
(式中、R62は炭素数1~20の炭化水素基であり、R63及びR64は各々独立して炭素数1~20の炭化水素基、水素原子または塩素原子である。)
R62~R64の炭素数1~20の炭化水素基の例示としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基などを挙げることができ、該アルキルアルミニウム(C)としては、特にメタロセン錯体を容易にアルキル化することが可能となることから、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0066】
本発明のエチレン系重合用触媒は、メタロセン錯体(A)が、少なくとも超高分子量ポリエチレン生成用であるメタロセン錯体(A-1)、ポリエチレン生成用であるメタロセン錯体(A-2)であり、その構成割合がメタロセン錯体(A-1)/メタロセン錯体(A-2)(物質量比)=0.05以上19以下のものである。そして、本発明のエチレン系重合用触媒を調製する際のメタロセン錯体(A)、有機変性粘土(B)及びアルキルアルミニウム(C)の使用割合に関して制限はなく、特にエチレン系重合体を効率よく製造できることから、メタロセン錯体(A)と該有機変性粘土(B)の比は、(A):(B)=0.001(mol):1(kg)~1(mol):1(kg)が好ましく、0.01(mol):1(kg)~0.1(mol):1(kg)が特に好ましい。また、該アルキルアルミニウム(C)とメタロセン錯体(A)の物質量比は、(C)/(A)=0.01~100000の範囲にあることが好ましく、1~100の範囲であることが特に好ましい。
【0067】
本発明のエチレン系重合用触媒の調製方法としては、少なくとも超高分子量ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-1)、ポリエチレン生成用のメタロセン錯体(A-2)、有機変性粘土(B)及びアルキルアルミニウム(C)から調製することが可能であれば如何なる方法を用いてもよい。例えばメタロセン錯体(A)、有機変性粘土(B)及びアルキルアルミニウム(C)に対して不活性な溶媒を用いて混合する方法を挙げることができる。また、これらの成分を作用・混合する順番に関しても制限はなく、特に重合活性に優れるものとなることから、該有機変性粘土(B)およびアルキルアルミニウム(C)を接触させたのちに、メタロセン錯体(A)を接触させることが好ましい。この際の処理を行う温度、処理時間に制限はない。また、メタロセン錯体(A)、有機変性粘土(B)、アルキルアルミニウム(C)のそれぞれを2種類以上用いてエチレン系重合用触媒を調製することも可能である。
【0068】
本発明のエチレン系重合用触媒は、エチレンの単独重合のみならず他のα-オレフィン、例えばプロピレン,1-ブテン,4-メチル-1-ペンテン,1-ヘキセン,1-オクテン等との共重合を行うことができ、これら重合により得られるエチレン系重合体は、単独重合体のみならず共重合体も含む意味で用いられる。
【0069】
エチレン系重合体の製造方法としては、スラリー重合、溶液重合、気相重合等を挙げることができる。また、スラリー重合や溶液重合に用いる溶媒としては、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、1-ヘキセンなどのオレフィンを溶媒として用いることもできる。その重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件については任意に選択可能であり、その中でも、効率よくエチレン系重合体を製造することが可能となることから重合温度30~90℃、重合時間10秒~20時間、重合圧力常圧~100MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能である。また、重合終了後に得られるエチレン系重合体は、粒子として、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【発明の効果】
【0070】
本発明のエチレン系重合用触媒は、加工性と成形体の機械物性のバランスに優れる成形体となりうるエチレン系重合体を、簡素な工程で製造可能となる。
【実施例0071】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
【0072】
なお、実施例中の粉砕にはジェットミル(セイシン企業社製、(商品名)CO-JET SYSTEM α MARK III)を使用した。また、諸物性は、以下に示す方法により測定した。
【0073】
-含水率の測定-
赤外線水分計(ケツト科学研究所社製、(商品名)FD-610)にて測定を行った。
【0074】
-固有粘度の測定-
ウベローデ型粘度計を用い、デカリンを溶媒として、135℃において、ポリエチレン濃度0.005wt%で測定した。
【0075】
-粒子径の測定-
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製、(商品名)MT-3300)を用い、溶媒には2-プロパノールを使用した。
【0076】
-分子量の測定-
GPC装置(東ソー(株)製、(商品名)HLC-8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製、(商品名)TSKgel GMHhr-H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、重量平均分子量(Mw)は直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0077】
-引張破壊応力、引張破壊呼びひずみの測定-
エチレン系重合体を150mm×150mmの金枠に充填し、ポリエチレンテレフタレートフィルムに挟んで、190℃で、5分間予熱した後、190℃、プレス圧力20MPaの条件にて加熱圧縮した。その後、金型温度120℃、10分間冷却し、厚さ8mmのプレスシートを得た。
【0078】
このシートから切り出した試験片を用い、引張試験機((株)エイ・アンド・ディー製、(商品名)テンシロンRTG-1210)にて、JIS K 6922-2(2005)に準拠した方法にて、引張破壊応力、引張破壊呼び歪みを測定した。
【0079】
-アイゾット衝撃強さの測定-
引張破壊応力、引張破壊呼びひずみと同じ方法で成形した圧縮成形体を用い、長さ63.5mm、幅12.7mm、厚さ6.35mmに切削したのち、後加工としてダブルノッチ(レザーノッチ、ノッチ間距離3.56mm)を付与した試験片を作製した。同試験片を用いて、ASTM D256に準拠して、ハンマー容量4J、温度23℃におけるダブルノッチアイゾット衝撃強さを測定した。
【0080】
実施例1
300mlのビーカーに、N,N-ジメチルオクチルアミン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、(商品名)リポミンDM18D)11.32g(38.0mmol)、水90ml、エタノール90ml(日本アルコール販売社製、(商品名)エキネンF-3)、濃塩酸4.0mlを入れて、60℃で攪拌した。ここに合成ヘクトライト(ビックケミー・ジャパン社製、(商品名)ラポナイトS482)を乾燥換算で30.0g加え、60℃を維持しつつ1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを濾別後、85℃で24時間乾燥させ、さらに粉砕することでメジアン径12.6μm、モード径13.4μmの有機変性粘土を39.2g得た。
【0081】
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に上記有機変性粘土20.0gとn-ヘキサン(和光純薬製、特級)を87ml入れ、次いで公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-ジメチルアミノ-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド(分子量:599.7)を0.455g(0.759mmol)、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(分子量:348.5)を0.014g(0.040mmol)及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(東ソー・ファインケム社製)114mlを添加して60℃で3時間攪拌した。1時間静置後、上澄み液を抜き取り、174mlのn-ヘキサンにて2回洗浄後、n-ヘキサンを166ml及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液8mlを加えてエチレン重合用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:11.4重量%)。
【0082】
窒素置換した内容量10lのオートクレーブにn-ヘキサンを6l、20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、上記エチレン重合用触媒の懸濁液を1.596g(固形分0.182g相当)加え、オートクレーブ内の温度が60℃を保つように調整しつつ、エチレン分圧が0.87MPa、気相中の水素濃度が280ppmになるようにエチレン及び水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。240分経過後に脱圧及び冷却を行い、スラリーを濾別乾燥することで、粒子状のエチレン重合体を1240g得た(活性6800g/g-触媒)。
【0083】
得られたエチレン重合体は、固有粘度17.6dl/g、Mw230万で、分子量分布のピークは2峰性であった。また、引張破壊強度52MPa、引張破壊呼びひずみ280%、アイゾット衝撃強さ101kJ/m2であった。
【0084】
実施例2
300mlのビーカーに、N,N-ジメチルドデシルアミン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、(商品名)リポミンDM12D)8.12g(38.0mmol)、水90ml、エタノール90ml、濃塩酸4.0mlを入れて、60℃で攪拌した。ここに合成ヘクトライト(ビックケミー・ジャパン社製、(商品名)ラポナイトRDS)を乾燥換算で30.0g加え、60℃を維持しつつ1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを濾別後、85℃で24時間乾燥させ、さらに粉砕することでメジアン径13.8μm、モード径11.7μmの有機変性粘土を36.4g得た。
【0085】
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に上記有機変性粘土20.0gとn-ヘキサンを87ml入れ、次いで公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-ジメチルアミノ-9-フルオレニル)ハフニウムジクロライド(分子量:687.0)を0.275g(0.400mmol)、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロライド(分子量:418.5)を0.167g(0.399mmol)及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液114mlを添加して60℃で3時間攪拌した。1時間静置後、上澄み液を抜き取り、174mlのn-ヘキサンにて2回洗浄後、n-ヘキサンを166ml及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液8mlを加えてエチレン重合用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:11.0重量%)。
【0086】
窒素置換した内容量10lのオートクレーブにn-ヘキサンを6l、20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、上記エチレン重合用触媒の懸濁液を2.521g(固形分0.277g相当)加え、オートクレーブ内の温度が60℃を保つように調整しつつ、エチレン分圧が0.87MPa、気相中の水素濃度が520ppmになるようにエチレン及び水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。240分経過後に脱圧及び冷却を行い、スラリーを濾別乾燥することで、粒子状のエチレン重合体を1421g得た(活性5100g/g-触媒)。
【0087】
得られたエチレン重合体は、固有粘度4.3dl/g、Mw31万で、分子量分布のピークは2峰性であった。また、引張破壊強度58MPa、引張破壊呼びひずみ240%、アイゾット衝撃強さ117kJ/m2であった。
【0088】
実施例3
300mlのビーカーに、N,N-ジメチルアニリン(特級、富士フイルム和光純薬社製)3.64g(30.0mmol)、水90ml、エタノール90mlを入れて、60℃で攪拌した。ここに合成ヘクトライト(ビックケミー・ジャパン社製、(商品名)ラポナイトS482)を乾燥換算で30.0g加え、60℃を維持しつつ1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを濾別後、85℃で24時間乾燥させ、さらに粉砕することでメジアン径4.2μm、モード径6.5μmの有機変性粘土を29.7g得た。
【0089】
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に上記有機変性粘土20.0gとn-ヘキサンを87ml入れ、次いで公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド(分子量:642.8)を0.386g(0.601mmol)、ビスインデニルジルコニウムジクロライド(分子量:392.4)を0.078g(0.199mmol)及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液114mlを添加して60℃で3時間攪拌した。1時間静置後、上澄み液を抜き取り、174mlのn-ヘキサンにて2回洗浄後、n-ヘキサンを166ml及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液8mlを加えてエチレン重合用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:11.2重量%)。
【0090】
窒素置換した内容量10lのオートクレーブにn-ヘキサンを6l、20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、上記エチレン重合用触媒の懸濁液を1.567g(固形分0.176g相当)加え、オートクレーブ内の温度が60℃を保つよう調整しつつ、エチレン分圧が0.87MPa、気相中の水素濃度が270ppmになるようにエチレン及び水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。240分経過後に脱圧及び冷却を行い、スラリーを濾別乾燥することで、粒子状のエチレン重合体を1144g得た(活性6500g/g-触媒)。
【0091】
得られたエチレン重合体は、固有粘度15.4dl/g、Mw190万で、分子量分布のピークは2峰性であった。また、引張破壊強度53MPa、引張破壊呼びひずみ270%、アイゾット衝撃強さ106kJ/m2であった。
【0092】
実施例4
300mlのビーカーに、N,N-ジオレイル-メチルアミン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、(商品名)リポミンM2O)15.96g(30.0mmol)、水90ml、エタノール90ml、濃塩酸4.0mlを入れて、60℃で攪拌した。ここに合成ヘクトライト(ビックケミー・ジャパン社製、(商品名)ラポナイトRD)を乾燥換算で30.0g加え、60℃を維持しつつ1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを濾別後、85℃で24時間乾燥させ、さらに粉砕することでメジアン径27.8μm、モード径23.5μmの有機変性粘土を42.6g得た。
【0093】
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に上記有機変性粘土20.0gとn-ヘキサンを87ml入れ、次いで公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ビス(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ハフニウムジクロライド(分子量:730.0)を0.029g(0.040mmol)、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-メチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド(分子量:570.7)を0.435g(0.762mmol)及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液114mlを添加して60℃で3時間攪拌した。1時間静置後、上澄み液を抜き取り、174mlのn-ヘキサンにて2回洗浄後、n-ヘキサンを166ml及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液8mlを加えてエチレン重合用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:11.8重量%)。
【0094】
窒素置換した内容量10lのオートクレーブにn-ヘキサンを6l、20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、上記エチレン重合用触媒の懸濁液を1.457g(固形分0.172g相当)加え、オートクレーブ内の温度が60℃を保つように調整しつつ、エチレン分圧が0.87MPa、気相中の水素濃度が110ppmになるようにエチレン及び水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。240分経過後に脱圧及び冷却を行い、スラリーを濾別乾燥することで、粒子状のエチレン重合体を1250g得た(活性7300g/g-触媒)。
【0095】
得られたエチレン重合体は、固有粘度3.7dl/g、Mw25万で、分子量分布のピークは2峰性であった。また、引張破壊強度54MPa、引張破壊呼びひずみ260%、アイゾット衝撃強さ115kJ/m2であった。
【0096】
実施例5
300mlのビーカーに、N,N-ジメチルベヘニルアミン(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、(商品名)リポミンDMD22)13.48g(38.1mmol)、水90ml、エタノール90ml、濃塩酸4.0mlを入れて、60℃で攪拌した。ここにモンモリロナイト(クニミネ工業製、(商品名)クニピア-F)を乾燥換算で30.0g加え、60℃を維持しつつ1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを濾別後、85℃で24時間乾燥させ、さらに粉砕することでメジアン径11.6μm、モード径12.3μmの有機変性粘土を41.5g得た。
【0097】
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に上記有機変性粘土20.0gとn-ヘキサンを87ml入れ、次いで公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ(tert-ブチル)-9-フルオレニル)ハフニウムジクロライド(分子量:668.9)を0.030g(0.045mmol)、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロライド(分子量:418.5)を0.316g(0.755mmol)及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液114mlを添加して60℃で3時間攪拌した。1時間静置後、上澄み液を抜き取り、174mlのn-ヘキサンにて2回洗浄後、n-ヘキサンを166ml及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液8mlを加えてエチレン重合用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:11.7重量%)。
【0098】
窒素置換した内容量10lのオートクレーブにn-ヘキサンを6l、20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、上記エチレン重合用触媒の懸濁液を1.521g(固形分0.178g相当)加え、オートクレーブ内の温度が60℃を保つように調整しつつ、エチレン分圧が0.87MPa、気相中の水素濃度が70ppmになるようにエチレン及び水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。240分経過後に脱圧及び冷却を行い、スラリーを濾別乾燥することで、粒子状のエチレン重合体を1250g得た(活性7500g/g-触媒)。
【0099】
得られたエチレン重合体は、固有粘度1.9dl/g、Mw9.6万、分子量分布のピークは2峰性であった。また、引張破壊強度51MPa、引張破壊呼びひずみ300%、アイゾット衝撃強さ118kJ/m2であった。
【0100】
実施例6
300mlのビーカーに、N,N-ジメチルアニリン4.62g(38.1mmol)、水180ml、濃塩酸4.0mlを入れて、60℃で攪拌した。ここにモンモリロナイトを乾燥換算で30.0g加え、60℃を維持しつつ1時間攪拌を続けた。得られたスラリーを濾別後、85℃で24時間乾燥させ、さらに粉砕することでメジアン径12.2μm、モード径12.8μmの有機変性粘土を32.9g得た。
【0101】
温度計と還流管が装着された300mlのフラスコを窒素置換した後に上記有機変性粘土20.0gとn-ヘキサンを87ml入れ、次いで公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-N,N-ジメチルアミノ-9-フルオレニル)ハフニウムジクロライド(分子量:599.7)を0.028g(0.047mmol)、ジメチルシリレン(ビスシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(分子量:348.5)を0.140g(0.402mmol)、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(分子量:404.5)を0.142g(0.351mmol)及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液114mlを添加して60℃で3時間攪拌した。1時間静置後、上澄み液を抜き取り、174mlのn-ヘキサンにて2回洗浄後、n-ヘキサンを166ml及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液8mlを加えてエチレン重合用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:12.1重量%)。
【0102】
窒素置換した内容量10lのオートクレーブにn-ヘキサンを6l、20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、上記エチレン重合用触媒の懸濁液を1.026g(固形分0.124g相当)加え、オートクレーブ内の温度が60℃を保つように調整しつつ、エチレン分圧が0.87MPa、気相中の水素濃度が70ppmになるようにエチレン及び水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。240分経過後に脱圧及び冷却を行い、スラリーを濾別乾燥することで、粒子状のエチレン重合体を994g得た(活性8000g/g-触媒)。
【0103】
得られたポリエチレンは、固有粘度1.4dl/g、Mw6.2万、分子量分布のピークは3峰性であった。また、引張破壊強度43MPa、引張破壊呼びひずみ260%、アイゾット衝撃強さ114kJ/m2であった。
【0104】
比較例1
温度計と還流管が装着された200mlのフラスコを窒素置換した後に実施例1で得られた有機変性粘土10.0gとn-ヘキサンを44ml入れ、次いで公知の方法で合成したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2-(ジメチルアミノ)-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを0.240g及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液57mlを添加して60℃で3時間攪拌した。1時間静置後、上澄み液を抜き取り、87mlのn-ヘキサンにて2回洗浄後、n-ヘキサンを83ml及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液4mlを加えてエチレン重合用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:11.6重量%)。
【0105】
窒素置換した内容量10lのオートクレーブにn-ヘキサンを6l、20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、上記エチレン重合用触媒の懸濁液を2.183g(固形分0.253g相当)加え、オートクレーブ内の温度が60℃を保つように調整しつつ、エチレン分圧が0.87MPa、気相中の水素濃度が280ppmになるようにエチレン及び水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。240分経過後に脱圧及び冷却を行い、スラリーを濾別乾燥することで、粒子状のポリエチレンを1011g得た(活性4700g/g-触媒)。
【0106】
得られたポリエチレンは、固有粘度19.7dl/g、Mw270万、分子量分布のピークは単峰性であった。また、引張破壊強度45MPa、引張破壊呼びひずみ130%、アイゾット衝撃強さ83kJ/m2であった。
【0107】
比較例2
温度計と還流管が装着された200mlのフラスコを窒素置換した後に実施例2で得られた有機変性粘土10.0gとn-ヘキサンを44ml入れ、次いでエチレンビスインデニルジルコニウムジクロライド0.167g及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液57mlを添加して60℃で3時間攪拌した。1時間静置後、上澄み液を抜き取り、87mlのn-ヘキサンにて2回洗浄後、n-ヘキサンを83ml及び20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液4mlを加えてエチレン重合用触媒の懸濁液を得た(固形重量分:11.5重量%)。
【0108】
窒素置換した内容量10lのオートクレーブにn-ヘキサンを6l、20%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を5.5ml、上記エチレン重合用触媒の懸濁液を2.132g(固形分0.245g相当)加え、オートクレーブ内の温度が60℃を保つように調整しつつ、エチレン分圧が0.87MPa、気相中の水素濃度が520ppmになるようにエチレン及び水素を連続的に供給し、エチレンのスラリー重合を行った。240分経過後に脱圧及び冷却を行い、スラリーを濾別乾燥することで、粒子状のポリエチレンを1006g得た(活性3600g/g-触媒)。
【0109】
得られたポリエチレンは、固有粘度1.2dl/g、Mw5.0万、分子量分布のピークは単峰性であった。また、引張破壊強度6MPa、引張破壊呼びひずみ120%、アイゾット衝撃強さ64kJ/m2であった。
本発明のエチレン系重合用触媒は、加工性と成形体の機械物性のバランスに優れる成形体となりうるエチレン系重合体を、簡素な工程で製造可能な触媒として期待されるものである。